説明

断熱材

【課題】軽量で、耐熱性、ガス吸着性を有する断熱材を提供しようとする。
【解決手段】流動性あるいは塑性を有し、凝固して固形物となる組成物であって、微細形状の炭と焼き物の粉とが1:10〜10:1で混合されてなる混合物、前記混合物に対して20〜60重量%のセメント、前記セメントに対して0.1〜10重量%の凝固剤、前記流動性あるいは塑性を前記組成物に付与するための水、を含んでなる組成物であり、前記組成物が凝固されてなる断熱材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭を含有する断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭等の吸着能を有する材料は粉粒体であるので、用途に適した形状に成形して用いることが試みられてきた。
【0003】
一例として、粒径がほぼ1mm以下の木炭又は竹炭、その混合物に粘土を配合し、よく混ぜた後、湿式成形が可能な程度の水を添加、混錬して任意の形状、サイズに成形し、その成形品を炭焼き窯の中に入れ、木炭、竹炭を酸化、灰化させないで焼結固化する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
この方法は焼結に大規模な装置と多大なエネルギコストを要するので製造コスト高であり、用途が限定される。
また、セメントと炭と石炭灰との混合物に水を添加して硬化させ、透水機能、吸水機能、水質浄化機能の何れか一又は複数の機能を具備するブロック状とした透水性ブロックが開示されている。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
この方法で得られる透水性ブロックは、実用上充分な強度を得るためにはセメントの含有比率を高くすることが必要で、壁材や携帯可能な用品に用いる断熱材としては重さに難がある。
【0006】
さらに、紙片を水の中に解繊せしめた紙繊維に適量の水と共に籾殻炭、又は、木炭や竹炭等を粒状に粉砕した各種炭化物を流動状に混合せしめた混合溶液を脱水可能な任意形状の形枠内に流動せしめて板状のフィルタ素材とした後、脱水・乾燥処理して形成したフィルタが開示されている。(例えば、特許文献3参照)
【0007】
この方法で得られる成形体は難燃性に乏しく、用途が限定される。
【特許文献1】特開2004−339042号公報
【特許文献2】特開2005−145771号公報
【特許文献3】特開2002−219314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、軽量で、耐熱性、ガス吸着性を有する断熱材を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、流動性あるいは塑性を有し、凝固して固形物となる組成物であって、
微細形状の炭と焼き物の粉とが1:10〜10:1で混合されてなる混合物、
前記混合物に対して20〜60重量%のセメント、
前記セメントに対して0.1〜10重量%の凝固剤、
前記流動性あるいは塑性を前記組成物に付与するための水
を含んでなる組成物であることにある。
【0010】
前記凝固剤は、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化第二鉄、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウムを含み得る。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、前記組成物が凝固されてなる断熱材であることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、軽量で、耐熱性、ガス吸着性を有する断熱材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の断熱材は、組成物が凝固されてなる断熱材であって、
微細形状の炭と焼き物の粉とが1:10〜10:1で混合されてなる混合物、
前記混合物に対して20〜60重量%のセメントと、
前記セメントに対して0.1〜10重量%の凝固剤と、
前記組成物に流動性あるいは塑性を付与するための水と
を含んでなる組成物が凝固されてなる断熱材である。
【0014】
組成物に流動性あるいは塑性を付与するための水は、混合物とセメントとの総重量に対して30〜70重量%であることが好ましいが、組成物の流動性あるいは塑性を成形性のうえで考慮して適宜決定される。
【0015】
組成物は予備成形されて、もしくは型枠に投入されて、凝固して固形物となる。
【0016】
本発明の断熱材は優れた耐熱性を有するとともに軽量でかつ優れたガス吸着性を有する。この優れたガス吸着性は焼き物が多孔質であることによってもたらされる。あるいは焼き物と炭が多孔質であることによってもたらされる。
【0017】
炭の粉は、樹脂系の接着剤をバインダとして板状に成形すればガス吸着性を有する成形体を得ることができるが、このようにして得られた成形体は耐熱性に欠ける。また、セメントや生コンクリートをバインダとして板状に成形することもできるが、セメントや生コンクリートの比率が重量比で2/3以上と高くしないと成形体の強度が実用上充分でなく、このようにして得られた成形体は構造が密で比重も高い。
【0018】
本発明の断熱材は、微細形状の炭と焼き物の粉とが1:10〜10:1で混合されてなる混合物を、セメントをバインダとして固化させた成形物であり、微細形状の炭に焼き物の粉を混合することにより、成形物は強度が高く、かつ軽量となった。強度の向上は、セメントと焼き物との接触面での親和性および、焼き物の多孔質性による固化したセメントと焼き物とのアンカー効果によってもたらされる。これにより、成形体は構造がポーラスで比重も低いにもかかわらず実用上充分な強度を有する。成形体の低い比重は、構成要素である炭や焼き物の多孔質によってもたらされ、また、成形体中の微細形状の炭や焼き物の粒子のパッキング状態が密でない状態で成形されていることによりもたらされる。
【0019】
上記混合物は微細形状の炭と焼き物の粉とが1:3〜3:1で混合されてなることが強度と軽量化とガス吸着性のバランスが良好でさらに好ましい。
【0020】
組成物中のセメントの比率が、前記混合物に対して20〜60重量%の範囲を超えて大きくなると、断熱材の比重が過大となり好ましくない。組成物中のセメントの比率が、前記混合物に対して20〜60重量%の範囲を超えて小さくなると、断熱材の強度が不足する。
【0021】
さらに、セメントの凝固剤として無機塩水溶液を用いることにより、組成物中のセメントの重量比が小さくとも充分な強度の成形体が得られた。また、成形体中の微細形状の炭や焼き物の粒子のパッキング状態が密でない状態で成形されていても充分な強度の成形体が得られた。
【0022】
本発明の断熱材は、優れた耐熱性、軽量性、ガス吸着性を活かして建造物の壁面構造物として好適に使用される。この壁面の施行は、上記組成物を壁面の基面に所定の厚さや形状に塗布して自然凝固させればよく、きわめて簡単に施行できる。あるいは、予め所定の型枠に投入して煉瓦状もしくはタイル状に凝固させた後、壁面に敷設してもよい。
【0023】
さらに、本発明の断熱材は、ガスの直火に当てて30分以上の長時間にわたり加熱するサイクルを繰り返しても目立った欠損は生じないという優れた直火耐熱性を有するので、軽量なホットプレートとして焼肉用等に好適に用いられる。
【0024】
本発明の断熱材は、空中の水蒸気即ち湿気を可逆的に吸脱着するので、本発明の断熱材による壁面が施行された建造物は、室内の調湿機能を有する。また、室内の臭気成分やシックハウス症候群の原因であるアルデヒド等の揮発性化学物質を吸着する働きもある。またさらに、炭という可燃物を成分としているにもかかわらず、不燃性であり壁材として優れた耐熱性と断熱性を有する。
【0025】
本明細書においては、炭は有機物を無酸素あるいは貧酸素雰囲気で加熱して炭素化したものをいう。本発明の断熱材に用いられる微細形状の炭は、木炭、竹炭、活性炭等、植物や有機物を乾留して得られた炭を粉砕、破砕等により、あるいは炭素繊維を粉砕、破砕等により短い繊維にしたものであることが好ましい。とくに、木炭の製造過程で発生する粉状の炭が好適に用いられる。この粉体の粒子の径は0.01〜5mmであることが好ましい。粒子の平均径は0.1〜2mmであることが好ましい。炭素繊維は粉砕や破砕せずに用いてもよい。
【0026】
本発明の断熱材に用いられる焼き物の粉は、磁器、陶器、セッ器、土器等の微細な多孔を有する焼き物を粉砕、破砕等により粉体化したものである。この粉体の粒子の径は0.01〜8mmであることが好ましい。粒子の平均径は0.5〜4mmであることが軽量かつ高強度の断熱材を得るうえで好ましい。焼き物としてはセッ器、土器が軽量かつ高強度の断熱材を得るうえで好ましく、例えば瓦であることが好ましい。また、セッ器は高強度の断熱材を得るうえで土器に勝る。また、軽量の断熱材を得るうえでセッ器、土器は磁器、陶器に比べて勝る。
【0027】
本発明の断熱材を形成するための上記組成物には、強度をさらに向上させるため金属繊維やセラミック繊維等の無機繊維が混合されてもよい。
【0028】
本発明の断熱材を形成するための上記組成物に用いられるセメントとしてはとくに限定されないが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等が例示される。
【0029】
本発明の断熱材を形成するための上記組成物に用いられる凝固剤は、一般のセメント急結剤であれば特に限定されるものではない。例えば、無機塩系ではアルミン酸ソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、硫酸カルシウム、鉱物系ではアルミン酸カルシウム類、カルシウムサルフォアルミネート、有機質系ではグリセリン、トリエタノールアミンなどが使用される。なかでも、無機塩系が好ましい。
【0030】
また、前記凝固剤が、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化第二鉄、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウムを含む無機塩であることが断熱材の強度を向上させるうえで好ましい。この無機塩を凝固剤として用いることにより、組成物中のセメントの比率を少なくすることができ、断熱材の比重をさらに軽くすることができる。また、前記凝固剤が、さらに塩化ナトリウム、硫酸第一鉄を含む無機塩であることが断熱材の強度を向上させるうえでさらに好ましい。
【0031】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【実施例1】
【0032】
屋根瓦の粉砕物(平均粒径1mm)80重量部
木炭の粉砕物(平均粒径0.5mm)80重量部
普通ポルトランドセメント200重量部、
硫酸カルシウム1重量部、
アルミン酸ソーダ1重量部
に水450重量部を加えて混練し通常のモルタル程度の硬さと塑性を有する素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる本発明の断熱材を得た。
【0033】
この断熱材のみかけ比重は1.23であった。断熱材を1mの高さからコンクリートの床面に自然落下させたが割れなかった。また、この断熱材の一面を通常の家庭用ガスコンロの直火に当てて30分加熱後放置して冷却するサイクルを10回くりかえしたが、この繰り返し後、直火に当たった面に凹み等の目立った欠損は認められなかった。
【実施例2】
【0034】
屋根瓦の粉砕物(3mmアンダー)2200重量部
木炭の粉砕物(平均粒径0.5mm)930重量部
普通ポルトランドセメント1000重量部、
塩化カルシウム2量部、塩化カリウム2重量部、塩化第二鉄2重量部、酸化マグネシウム2重量部、塩化マグネシウム2量部、塩化アンモニウム2重量部、
水2500重量部
からなる組成物を混練し素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる本発明の断熱材を得た。
【0035】
この断熱材のみかけ比重は1.03であった。断熱材を1mの高さからコンクリートの床面に自然落下させたが割れなかった。また、この断熱材の一面を通常の家庭用ガスコンロの直火に当てて30分加熱後放置して冷却するサイクルを10回くりかえしたが、この繰り返し後、直火に当たった面に凹み等の目立った欠損は認められなかった。
【実施例3】
【0036】
屋根瓦の粉砕物(3mmアンダー)2400重量部
木炭の粉砕物(平均粒径0.5mm)950重量部
普通ポルトランドセメント1000重量部、
塩化カルシウム2重量部、塩化カリウム2重量部、塩化第二鉄2重量部、酸化マグネシウム2重量部、塩化マグネシウム2重量部、塩化アンモニウム2重量部、塩化ナトリウム1重量部、硫酸第一鉄1重量部、
水2500重量部からなる組成物を混練し素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる本発明の断熱材を得た。
【0037】
この断熱材のみかけ比重は1.01であった。断熱材を1mの高さからコンクリートの床面に自然落下させたが割れなかった。また、この断熱材の一面を通常の家庭用ガスコンロの直火に当てて30分加熱後放置して冷却するサイクルを10回くりかえしたが、この繰り返し後、直火に当たった面に凹み等の目立った欠損は認められなかった。
【実施例4】
【0038】
屋根瓦の粉砕物(平均粒径1mm)100重量部
木炭の粉砕物(平均粒径1.5mm)50重量部
炭素繊維(アスペクト比1000:1)50重量部
普通ポルトランドセメント200重量部、
硫酸カルシウム1重量部、
アルミン酸ソーダ1重量部
に水500重量部を加えて混練し通常のモルタル程度の硬さと塑性を有する素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる本発明の断熱材を得た。
【0039】
この断熱材のみかけ比重は1.25であった。断熱材を1mの高さからコンクリートの床面に自然落下させたが割れなかった。また、この断熱材の一面を通常の家庭用ガスコンロの直火に当てて30分加熱後放置して冷却するサイクルを10回くりかえしたが、この繰り返し後、直火に当たった面に凹み等の目立った欠損は認められなかった。
【0040】
[比較例1]
木炭の粉砕物(平均粒径0.5mm)100重量部
普通ポルトランドセメント300重量部、
硫酸カルシウム1重量部、
アルミン酸ソーダ1重量部
に水750重量部を加えて混練し通常のモルタル程度の硬さと塑性を有する素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる断熱材を得た。この断熱材のみかけ比重は1.73であった。
【0041】
[比較例2]
木炭の粉砕物(平均粒径0.5mm)200重量部
普通ポルトランドセメント200重量部、
硫酸カルシウム1重量部、
アルミン酸ソーダ1重量部
に水500重量部を加えて混練し通常のモルタル程度の硬さと塑性を有する素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる断熱材を得た。この断熱材のみかけ比重は1.53であった。断熱材を1mの高さからコンクリートの床面に自然落下させたら角が欠けた。また、この断熱材の一面を通常の家庭用ガスコンロの直火に当てて30分加熱後放置して冷却するサイクルを10回くりかえしたら、直火に当たった面に大きな凹みが出来た。
【0042】
[比較例3]
木炭の粉砕物(平均粒径0.5mm)100重量部
砂利(平均径10mm)100重量部
普通ポルトランドセメント200重量部、
硫酸カルシウム1重量部、
アルミン酸ソーダ1重量部
に水500重量部を加えて混練し通常のモルタル程度の硬さと塑性を有する素地を作った。
この素地を型枠に投入して8時間静置して凝固させ成形体5cm×10cm×2.5cmのサイズの直方体の成形体からなる断熱材を得た。この断熱材のみかけ比重は1.51であった。断熱材を1mの高さからコンクリートの床面に自然落下させたら角が欠けた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の断熱材は、壁装材に限らず耐熱性、軽量性を必要とする器材用の材料として広く適用できる。とくに、アスベスト使用の断熱材の代替として好適に用いられる。なかでも、ブレーキシューとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性あるいは塑性を有し、凝固して固形物となる組成物であって、
微細形状の炭と焼き物の粉とが1:10〜10:1で混合されてなる混合物、
前記混合物に対して20〜60重量%のセメント、
前記セメントに対して0.1〜10重量%の凝固剤、
前記流動性あるいは塑性を前記組成物に付与するための水
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記凝固剤が、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化第二鉄、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウムを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物が凝固されてなる断熱材。

【公開番号】特開2007−302486(P2007−302486A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129773(P2006−129773)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(504398454)株式会社アオヤマエコシステム (8)
【Fターム(参考)】