説明

断熱枠材および建具

【課題】カシメによる変形を抑制しつつ断面形態の自由度を高めることができる断熱枠材および建具を提供すること。
【解決手段】カシメ片21Bの先端面部214が断熱部材23の第1傾斜面部234に当接することで、カシメ片21Bの基端側連結部216に発生する応力を抑制することができる。従って、金属部材21を中空(ホロー)形状などの剛性の高い形状としなくてもよくなり、任意の断面形態を有する部材が利用可能になって断熱枠材20の設計自由度を高めることができるとともに、カシメ装置の構造や作業工程が簡単化できて製造コストを抑制することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱枠材および建具に関し、詳しくは、断熱部材を介して金属部材同士が連結された断熱枠材、この断熱枠材を有して構成された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の金属部材(アルミ形材)と、これらを連結する樹脂製の断熱部材(断熱ブリッジ)とを有して構成され、金属部材の一部をカシメることで断熱部材と係合させて一体化された断熱形材(断熱枠材)が知られ、サッシ窓等の建具に利用されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された断熱形材は、金属製の一側部材および他側部材の各々の両端部に受け片およびカシメ片を一対で形成しておき、受け片とカシメ片の間に断熱部材を位置させた状態で、カシメローラを用いてカシメ片を受け片に向かって変形させる(カシメる)ことで、これらで断熱部材を挟持して一側部材、他側部材および断熱部材を一体化したものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−177441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたような従来の断熱形材では、カシメる際に一側部材および他側部材が変形しないように、受け片の背面側に当接して反力を受けるマンドレルを一側部材と他側部材との間に設置する必要があり、断熱形材の断面形態が制約を受けるという問題がある。また、従来の断熱形材では、一側部材や他側部材の本体の両端部にカシメ片が形成され、その外側からカシメる構成となっているが、カシメ片位置を超えて本体を片持ち状に延長した断面形態の部材であった場合には、カシメによって片持ち状の先端側が内側に傾くように変形する可能性があり、この点でも断熱形材の断面形態が制約を受けてしまう。
【0005】
本発明の目的は、カシメによる変形を抑制しつつ断面形態の自由度を高めることができる断熱枠材および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の断熱枠材は、第1および第2の金属部材と、これらの金属部材同士を連結する断熱部材とを備えた断熱枠材であって、前記第1および第2の金属部材の対向面には、それぞれ一方の対向面から他方の対向面に向かって突出した一対のカシメ片および受け片が形成され、これらのカシメ片と受け片との間に前記断熱部材の端部を位置させた状態で、当該カシメ片を当該受け片に向かって変形させることで当該断熱部材の端部が挟持され、前記カシメ片および受け片には、それぞれ前記断熱部材を挟んで互いに対向する位置にカシメ片係合突部および受け片係合突部が形成され、前記カシメ片における前記カシメ片係合突部の背面側には、変形のために押圧される押圧面部が設けられ、当該カシメ片の先端側には、前記押圧面部に連続して前記カシメ片係合突部の側に向かって延びる先端面部が設けられ、前記断熱部材の端部側には、前記第1および第2の金属部材の対向面に当接する当接面部と、前記カシメ片係合突部に係合される第1被係合面部と、前記受け片係合突部に係合される第2被係合面部とから形成された係合端部が設けられるとともに、前記第1被係合面部に交差して前記係合端部から離れる方向に延び、かつ前記カシメ片のカシメ方向に対して傾斜した傾斜面部が設けられ、前記カシメ片を変形させることで、前記カシメ片係合突部および前記受け片係合突部がそれぞれ前記断熱部材の第1被係合面部および第2被係合面部に係合するとともに、前記カシメ片の先端面部が前記傾斜面部に当接して前記第1および第2の金属部材と前記断熱部材とが接合されたことを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、カシメ片をカシメることでカシメ片係合突部および受け片係合突部を断熱部材の第1被係合面部および第2被係合面部に係合させ、カシメ片と受け片とで係合端部を挟持するとともに、カシメ片の先端面部を断熱部材の傾斜面部に当接させることで、カシメ片における対向面側の端部(基端部)に発生する応力を抑制することができる。すなわち、傾斜面部に先端面部を当接させることで、カシメ片の先端から基端に向かう圧縮力が作用し、この圧縮力によってカシメ片係合突部が第1被係合面部に押圧されることとなるため、この押圧力がカシメ片係合突部の係合力に加えられる。これにより、カシメ片をカシメ装置によって高い押圧力で大きく変形させなくても、所定の連結強度を発揮させるのに必要な係合力が得られるので、カシメ片の基端部に発生する応力が抑制され、第1および第2の金属部材の変形を抑制することができ、変形を抑制するための装置(従来のマンドレル等)や金属部材の形態(カシメ片を端部に設けたり、中空状にしたり等)が不要にできる。従って、任意の断面形態を有する金属部材が利用可能になって断熱枠材の自由度を高めることができるとともに、カシメ装置の構造や作業工程が簡単化できて製造コストを抑制することもできる。
【0008】
この際、本発明の断熱枠材では、前記カシメ片の先端側において、前記先端面部と前記カシメ片係合突部との間には、当該カシメ片の基端側に向かって凹んだ凹み部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、カシメ片の先端側における先端面部とカシメ片係合突部との間に凹み部を形成したことで、先端面部と断熱部材の傾斜面部との当接位置と、カシメ片係合突部と第1被係合面部との係合位置とを、凹み部の寸法分だけ離隔させて先端面部を確実に傾斜面部に当接させることができる。従って、前述したような先端面部の圧縮力による係合力の増加作用が確実に発揮でき、カシメ片の基端部に発生する応力をより確実に抑制することができる。
【0009】
さらに、本発明の断熱枠材では、前記断熱部材には、前記第2被係合面部に交差して前記係合端部から離れる方向に延び、かつ前記カシメ方向に対して傾斜した第2傾斜面部が設けられ、この第2傾斜面部と前記受け片の先端部とが当接可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、断熱部材に形成した第2傾斜面部に受け片の先端部を当接させることで、カシメ片の先端面部を断熱部材の傾斜面部に当接させたのと同様の作用が受け片においても発揮でき、受け片係合突部の係合力を増加させることができる。従って、受け片の基端部に発生する応力を抑制して第1および第2の金属部材の変形を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の断熱枠材では、前記断熱部材は、両端側に形成された前記傾斜面部同士を連結する第1中間面部および前記第2傾斜面部同士を連結する第2中間面部と、これら第1および第2の中間面部の間に設けられる中空部とを有して形成され、前記カシメ片を変形させた状態において、前記押圧面部が前記第1中間面部よりも突出した位置に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、中空部を有した断熱部材を用いることで、所定の強度や剛性を確保した上で断熱部材の断面積が小さくでき、原材料の使用量が節約できる。さらに、カシメ片の押圧面部が第1中間面部よりも突出した位置に設けられていることで、カシメ装置が第1中間面部(断熱部材)に当接することがなくなり、カシメ片をカシメる際における断熱部材の破損を防止することができる。また、押圧面部の第1中間面部からの突出寸法をできるだけ小さく設定することで、断熱部材の破損を防止しつつ、製造された断熱枠材表面の凹凸を小さくすることができ、外観意匠性を向上させることができる。
【0011】
一方、本発明の建具は、窓枠と、この窓枠に支持される障子とを有した建具であって、前記窓枠を構成する枠材と、前記障子を構成する框材との少なくとも一方が前記いずれかの断熱枠材を有して構成されていることを特徴とする。
以上の本発明によれば、前述の断熱枠材と同様の作用効果を得ることができ、建具の設計自由度が向上できるとともに、製造コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建具である嵌め殺し窓1を示す縦断面図である。
図1において、嵌め殺し窓1は、建物の外壁開口部に設けられる建具であり、外壁開口部に固定される窓枠2と、この窓枠2に支持される障子10とを備えて構成されている。窓枠2は、上枠3、下枠4、および左右の縦枠5を四周枠組みして構成されている。一方、障子10は、上框11、下框12、および左右の縦框13を四周框組みした内部に、ガラスパネル14を設けて構成されている。
【0013】
窓枠2の上枠3は、それぞれアルミ形材製の室内部材3Aおよび室外部材3Bと、これらを連結する樹脂製の断熱部材(断熱ブリッジ)3Cとで構成されている。上枠3の室内部材3Aに障子10の上框11が係合されている。下枠4は、それぞれアルミ形材製の室内部材4Aおよび室外部材4Bと、これらを連結する2つの樹脂製の断熱部材(断熱ブリッジ)4C,4Dとで構成されている。下枠4の室内部材4Aは、下枠延出片4Eを有して形成され、この下枠延出片4Eに障子10の下框12が係合されている。なお、縦枠5は、図示を省略するが上枠3と略同様の構成を有し、この縦枠5に障子10の縦框13が係合されている。
以上の上枠3、下枠4(および縦枠5)は、室内部材3A,4Aおよび室外部材3B,4Bをカシメることで断熱部材3C,4Cと連結され、一体の断熱枠材として機能するように構成されている。
【0014】
一方、障子10の上框11は、それぞれアルミ形材製の室内部材11Aおよび室外部材11Bと、これらを連結する樹脂製の断熱部材(断熱ブリッジ)11Cと、室内部材11Aに係合されてガラスパネル14の室内面に当接する押縁材11Dとで構成されている。室外部材11Bは、延出片11Eを有して形成され、この延出片11Eと押縁材11Dとでガラスパネル14を保持している。なお、縦框13は、図示を省略するが上框11と略同様の構成を有して形成され、ガラスパネル14を保持できるようになっている。また、下框12は、それぞれアルミ形材製の室内部材12Aおよび室外部材12Bと、これらを連結する樹脂製の断熱部材(断熱ブリッジ)12Cとで構成されている。室内部材12Aには、見付け方向内側に延びる延出片12Dが形成され、室外部材12Bには、その室外側端部から見付け方向内側に延びる延出片12Eが形成され、これらの延出片12D,12Eでガラスパネル14の下端縁を保持している。
【0015】
以上の上框11、下框12および縦框13の構造および製造方法について、図2および図3も参照して詳しく説明する。なお、図2および図3においては、上框11、下框12および縦框13のうち、下框12について説明するが、上框11および縦框13の構造および製造方法も下框12と同様であるため図示を省略する。
ここで、図2は、断熱枠材20としての下框12を拡大して示す断面図である。図3は、断熱枠材20の製造工程を示す断面図である。
【0016】
断熱枠材20としての下框12において、室内部材12Aによって第1金属部材21が構成され、室外部材12Bによって第2金属部材22が構成され、これらの第1金属部材21と第2金属部材22とが断熱部材23(断熱部材12C)で連結されている。第1金属部材21は、第2金属部材22と対向する対向面21Aと、この対向面21Aから第2金属部材22に向かって突出する一対のカシメ片21Bおよび受け片21Cとを有して形成されている。そして、下框12の延出片12Dによって第1金属部材21の自由端部21Dが構成されている。一方、第2金属部材22は、第1金属部材21と対向する対向面22Aと、この対向面22Aから第1金属部材22に向かって突出する一対のカシメ片22Bおよび受け片22Cとを有して形成されている。
【0017】
第1金属部材21および第2金属部材22のカシメ片21B,22Bと受け片21C,22Cとは、それぞれ図2および図3に示すように、断熱部材23を挟んで互いに対向する位置にカシメ片係合突部211,221と受け片係合突部212,222とを有して形成されている。また、カシメ片21B,22Bにおけるカシメ片係合突部211,221の背面側には、カシメ装置の一部であるカシメディスクDによって押圧される押圧面部213,223が形成されている。さらに、カシメ片21B,22Bの先端側には、押圧面部213,223に連続してカシメ片係合突部211,221の側に向かって延びる先端面部214,224が形成され、この先端面部214,224とカシメ片係合突部211,221との間には、カシメ片21B,22Bの基端側に向かって凹んだ凹み部215,225が形成されている。以上のカシメ片係合突部221、押圧面部223、先端面部214,224および凹み部215,225を有して先端部が形成されたカシメ片21B,22Bは、先端部よりも断面寸法が小さく形成された基端側連結部216,226を介して対向面22Aに一体に連結されている。また、受け片21C,22Cの先端側には、カシメ片21B,22Bの先端面部214,224と略同様の第2先端面部217,227が形成されている。
【0018】
また、断熱部材23は、中空状の断熱部材本体23Aと、この断熱部材本体23Aの第1金属部材21側端に形成された第1係合端部23Bと、断熱部材本体23Aの第2金属部材22側端に形成された第2係合端部23Cとを有して形成されている。第1および第2の係合端部23B,23Cは、それぞれ対向面21A,22Aに当接する当接面部231と、カシメ片係合突部211,221に係合される第1被係合面部232と、受け片係合突部212,222に係合される第2被係合面部233とから断面略三角形状に形成されている。また、断熱部材本体23Aには、第1被係合面部232に交差して延びかつ当接面部231に対して傾斜した第1傾斜面部(傾斜面部)234と、第2被係合面部233に交差して延びかつ当接面部231に対して傾斜した第2傾斜面部235とが設けられている。そして、断熱部材本体23Aは、第1傾斜面部234同士を連結する第1中間面部236と、第2傾斜面部235同士を連結する第2中間面部237と、これら第1および第2の中間面部236,237の間に設けられる中空部238とを有して形成されている。第1傾斜面部234は、カシメ片21B,22Bのカシメ方向に対しても傾斜して設けられるとともに、カシメ片21B,22Bの先端面部214,224と当接可能になっている。一方、第2傾斜面部235は、受け片21C,22Cの第2先端面部217,227と当接可能になっている。
【0019】
以上のような第1金属部材21および第2金属部材22のカシメ片21B,22Bは、図3(A)に示す変形前の状態から、図2に示すように、カシメディスクDによって押圧面部213,223が押圧されることで、図2および図3(B)に示すように、カシメ片係合突部211,221が断熱部材23の第1被係合面部232に係合する位置まで変形する。この際、カシメ片21B,22Bの先端面部214,224が断熱部材23の第1傾斜面部234に当接するとともに、受け片21C,22Cの受け片係合突部212,222が断熱部材23の第2被係合面部233に係合し、かつ第2先端面部217,227が第2傾斜面部235に当接するようになっている。また、変形したカシメ片21B,22Bの押圧面部213,223は、断熱部材23の第1中間面部236よりもカシメディスクD側に突出した状態となっている。以上のカシメにより断熱部材23の第1係合端部23Bが第1金属部材21のカシメ片21Bおよび受け片21Cに挟持され、断熱部材23の第2係合端部23Cが第2金属部材22のカシメ片22Bおよび受け片22Cに挟持され、これにより第1金属部材21および第2金属部材22と断熱部材23とが連結されるようになっている。
【0020】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、カシメ片21B,22Bの先端面部214,224が断熱部材23の第1傾斜面部234に当接することで、カシメ片21B,22Bの基端側連結部216,226に発生する応力を抑制することができる。すなわち、先端面部214,224が当接した反力によってカシメ片係合突部211,221が第1被係合面部232に押圧され、係合力が高められるので、カシメディスクDによって押圧面部213,223を過度に押圧する必要がなくなり、カシメ片21B,22Bの基端側連結部216,226や第1および第2の金属部材21,22全体に発生する応力が抑制できる。従って、第1および第2の金属部材21,22を中空(ホロー)形状などの剛性の高い形状としなくてもよくなり、任意の断面形態を有する部材が利用可能になって断熱枠材20の設計自由度を高めることができるとともに、カシメ装置の構造や作業工程が簡単化できて製造コストを抑制することもできる。
【0021】
(2)また、カシメ片21B,22Bの先端側に凹み部215,225が形成されているので、先端面部214,224と断熱部材23の第1傾斜面部234との当接位置と、カシメ片係合突部211,221と第1被係合面部232との係合位置とを離隔させ、先端面部214,224を確実に第1傾斜面部234に当接させることができる。従って、先端面部214,224が当接した反力によるカシメ片係合突部211,221の係合力の増加作用が確実に発揮でき、カシメ片21B,22Bの基端側連結部216,226に発生する応力をより確実に抑制することができる。
【0022】
(3)また、受け片21C,22C側において、断熱部材23の第2傾斜面部235に受け片21C,22Cの第2先端面部217,227を当接させることで、カシメ片21B,22Bと同様の作用が受け片21C,22Cにおいても発揮でき、受け片係合突部212,222の係合力を増加させることができる。従って、受け片21C,22Cの基端部に発生する応力を抑制して第1および第2の金属部材21,22の変形を抑制することができる。
【0023】
(4)また、変形したカシメ片21B,22Bの押圧面部213,223が断熱部材23の第1中間面部236よりもカシメディスクD側に突出して位置しているので、カシメディスクDが断熱部材23に当接することがなくなり、カシメ片21B,22Bをカシメる際の断熱部材23の破損を防止することができる。また、押圧面部213,223の第1中間面部236からの突出寸法をできるだけ小さく設定することで、断熱部材23の破損を防止しつつ、製造された断熱枠材20表面の凹凸を小さくすることができ、外観意匠性を向上させることができる。
【実施例】
【0024】
以下、前記実施形態の断熱枠材20に関し、カシメ時の応力を数値解析により算出した実施例について、図4に基づいて説明する。
図4は、本発明の実施例に係る断熱枠材20の応力および変形の状態を示す図である。
ここで、応力の数値解析としては、有限要素法による応力解析(FEM解析)を用い、解析モデルとしては、前記実施形態の断熱枠材20をモデル化しカシメ片22Bの先端形状の異なる2つのモデル(第1および第2実施例)を採用した。すなわち、第1実施例と第2実施例とでは、カシメ片21B,22Bの先端面部214,224の突出寸法が相違し、第1実施例の先端面部214,224は、第2実施例の場合よりも0.2mmだけ大きな突出寸法とされている。また、各実施例における解析条件としては、第1および第2の金属部材21,22と断熱部材23とが所定の連結強度となる状態まで、カシメ片21B,22Bを変形させ、所定の連結強度状態の断面応力と、各部の変形とを算出した。
【0025】
〔第1実施例〕
第1実施例の断熱枠材20では、第1金属部材21の自由端部21Dの変形量δが0.3mm(図中右向き)となっている。この変形量としては、製品の性能上および外観上、問題のないことが確認できた。また、カシメ片21B,22Bの基端側連結部216,226における応力が小さくなっているとともに、先端面部214,224に反力が発生していることが確認できた。
【0026】
〔第2実施例〕
第2実施例の断熱枠材20では、第1金属部材21の自由端部21Dの変形量δが0.8mm(図中右向き)となっている。この変形量としては、製品の性能上および外観上、、大きな問題となることはないが、第1実施例の場合よりも大きくなることが分かった。また、カシメ片21B,22Bの基端側連結部216,226における応力が第1実施例の場合よりも大きくなっており、先端面部214,224に発生する反力は、第1実施例の場合よりも小さいことが確認できた。
【0027】
以上の第1実施例および第2実施例における解析結果から、カシメ片21B,22Bの先端面部214,224を断熱部材23の第1傾斜面部234に当接させることで、第1金属部材21および第2金属部材22の応力および変形が抑制されることが確認できた。そして、応力および変形の抑制作用に対して先端面部214,224の突出寸法の影響が大きく、つまり先端面部214,224をより強く当接させることで変形の抑制が効果的に実現できることが確認できた。
【0028】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、嵌め殺し窓1の障子10を構成する上框11、下框12、および左右の縦框13に基づいて説明したが、これに限られない。すなわち、本発明の建具としては、嵌め殺し窓1に限らず、任意の開閉形式の窓や出入り口であってもよい。また、本発明の断熱枠材としては、障子の框材に限らず、窓枠の枠材に用いることも可能であり、その他、中桟や縦骨、方立、無目など様々な部位への適用が可能である。
【0029】
また、前記実施形態においては、中空部238を有して形成された断熱枠材20を採用したが、本発明の断熱枠材を構成する断熱枠材としては、前述したような係合端部23B,23Cと、カシメ片21B,22B側に設けられた傾斜面部(第1傾斜面部234)とを少なくとも有していればよく、受け片21C,22C側の第2傾斜面部235や、第1および第2の中間面部236,237は必須ではない。すなわち、前記実施形態における図2で示す下枠4の断熱部材4Cのように、カシメ片21B,22B側に屈曲した断面形状を有した断熱部材であってもよい。
【0030】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図2】前記建具に用いられる本発明の断熱枠材を示す断面図である。
【図3】前記断熱枠材の製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る断熱枠材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…嵌め殺し窓(建具)、2…窓枠、10…障子、11…上框、12…下框、13…縦框、20…断熱枠材、21…第1金属部材、22…第2金属部材、23…断熱部材、21A,22A…対向面、21B,22B…カシメ片、21C,22C…受け片、23B,23C…係合端部、211,221…カシメ片係合突部、212,222…受け片係合突部、213,223…押圧面部、214,224…先端面部、215,225…凹み部、217,227…第2先端面部、231…当接面部、232…第1被係合面部、233…第2被係合面部、234…第1傾斜面部(傾斜面部)、235…第2傾斜面部、236…第1中間面部、237…第2中間面部、238…中空部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の金属部材と、これらの金属部材同士を連結する断熱部材とを備えた断熱枠材であって、
前記第1および第2の金属部材の対向面には、それぞれ一方の対向面から他方の対向面に向かって突出した一対のカシメ片および受け片が形成され、これらのカシメ片と受け片との間に前記断熱部材の端部を位置させた状態で、当該カシメ片を当該受け片に向かって変形させることで当該断熱部材の端部が挟持され、
前記カシメ片および受け片には、それぞれ前記断熱部材を挟んで互いに対向する位置にカシメ片係合突部および受け片係合突部が形成され、前記カシメ片における前記カシメ片係合突部の背面側には、変形のために押圧される押圧面部が設けられ、当該カシメ片の先端側には、前記押圧面部に連続して前記カシメ片係合突部の側に向かって延びる先端面部が設けられ、
前記断熱部材の端部側には、前記第1および第2の金属部材の対向面に当接する当接面部と、前記カシメ片係合突部に係合される第1被係合面部と、前記受け片係合突部に係合される第2被係合面部とから形成された係合端部が設けられるとともに、前記第1被係合面部に交差して前記係合端部から離れる方向に延び、かつ前記カシメ片のカシメ方向に対して傾斜した傾斜面部が設けられ、
前記カシメ片を変形させることで、前記カシメ片係合突部および前記受け片係合突部がそれぞれ前記断熱部材の第1被係合面部および第2被係合面部に係合するとともに、前記カシメ片の先端面部が前記傾斜面部に当接して前記第1および第2の金属部材と前記断熱部材とが接合された断熱枠材。
【請求項2】
前記カシメ片の先端側において、前記先端面部と前記カシメ片係合突部との間には、当該カシメ片の基端側に向かって凹んだ凹み部が形成されている請求項1に記載の断熱枠材。
【請求項3】
前記断熱部材には、前記第2被係合面部に交差して前記係合端部から離れる方向に延び、かつ前記カシメ方向に対して傾斜した第2傾斜面部が設けられ、この第2傾斜面部と前記受け片の先端部とが当接可能に構成されている請求項1または請求項2に記載の断熱枠材。
【請求項4】
前記断熱部材は、両端側に形成された前記傾斜面部同士を連結する第1中間面部および前記第2傾斜面部同士を連結する第2中間面部と、これら第1および第2の中間面部の間に設けられる中空部とを有して形成され、
前記カシメ片を変形させた状態において、前記押圧面部が前記第1中間面部よりも突出した位置に設けられている請求項3に記載の断熱枠材。
【請求項5】
窓枠と、この窓枠に支持される障子とを有した建具であって、
前記窓枠を構成する枠材と、前記障子を構成する框材との少なくとも一方が請求項1から請求項4のいずれかに記載の断熱枠材を有して構成されている建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−133129(P2009−133129A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310668(P2007−310668)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】