断続的通信環境におけるデータ転送装置、その方法及びそのためのプログラム
【課題】断続的通信環境において、格納データ量を増大することなく、全てのノードに通信可能なデータ転送装置を提供する。
【解決手段】物理的に孤立したローカルなLANが複数存在し、これらが、グローバルネットワークを介して通信する場合、LANのアクセスポイントとグローバルネットワークのアクセスポイント間を橋渡しするForwarderが存在する。Forwarderは、LANのアクセスポイントから受信したデータを格納し、グローバルネットワークのアクセスポイントと通信に可能になったとき、このデータを送信する。LANのアクセスポイントは、送信先ごとに、どのForwarderが特定の送信先までデータを確実に搬送できるかを判断し、送信先まで搬送できる可能性の高いForwarderを選択して、Forwarderにデータを送信する。
【解決手段】物理的に孤立したローカルなLANが複数存在し、これらが、グローバルネットワークを介して通信する場合、LANのアクセスポイントとグローバルネットワークのアクセスポイント間を橋渡しするForwarderが存在する。Forwarderは、LANのアクセスポイントから受信したデータを格納し、グローバルネットワークのアクセスポイントと通信に可能になったとき、このデータを送信する。LANのアクセスポイントは、送信先ごとに、どのForwarderが特定の送信先までデータを確実に搬送できるかを判断し、送信先まで搬送できる可能性の高いForwarderを選択して、Forwarderにデータを送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の実施形態は、断続的通信環境においてデータ転送を実現させるデータ転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、センサの技術的進歩は目覚しく、センサ市場は産業分野・民生分野だけでなく医療分野・環境分野等の新しい分野へ急速に広がりを見せている。また、センサをネットワークに接続するセンサネットワーク技術の発展により、センサがネットワークに接続される環境が整いつつある。
【0003】
センサがネットワークに接続されることで、センサが提供するセンサ情報をほぼリアルタイムに活用できたり、多数のセンサ情報の収集が容易となるため、複数のセンサ情報からコンテキスト情報といった高度の情報を生成したりすることが可能となる。これにより、従来にはない新しいサービスを創出することが可能な時代背景となっている。
【0004】
このような環境におけるサービスの例として、「家庭内や事務所内の電力利用状況をセンサで収集・集約することで無駄な電力を可視化し、CO2排出や消費電力の削減を支援するサービス」や「気温や湿度・照度などの情報を収集する複数のセンサを農場に設置し、収集したセンサ情報から農場状況を可視化する農業支援サービス」などが提案されている。
【0005】
しかしながら、今後、多種多様な大量のセンサが世界各地に配置されることを考えると、全てのセンサが常時ネットワーク(インターネット)に接続しているような状況は考えにくい。このように、必ずしも常時ネットワークに接続していないセンサのセンサ情報を収集する事がセンサネットワークを形成する上での大きな課題となっている。この課題の解決の手段として、いくつかの技術が考えられるが、中でもDelay/Disruption-Tolerant Networking (DTN)の技術が有効であると考えられる。
【0006】
図1及び図2は、DTN技術を説明する図である。
大きな伝送遅延が生じたり、通信の切断が多発したりするような、従来のネットワーク技術の適用が困難な通信環境下においても、信頼性あるデータ転送を実現する通信方式としてDTNが提案されている。RFC4838ではDTNのアーキテクチャ概要がまとめられている。
DTNは物理的なリンクが常に存在するとは限らない通信環境を想定しており、Store-And-Forward方式でデータを転送していく。
【0007】
図1は、Store-And-Forward方式のデータ転送を説明する図である。断続的通信環境においては、ルータ、アクセスポイント、ユーザ端末やサーバ等のネットワークノード(Node A〜Node D)の間は、断続的に物理回線が切断される状況となっている。そこで、Store-And-Forward方式のデータ転送では、物理的に回線が切断されている間は、各ノードで送信すべきデータを格納しておき、ノード間の物理回線が接続された際に、格納されていた全てのデータを送信するという動作を行なう。
【0008】
図2は、インターネットとDTNのプロトコルスタックを示す図である。
インターネットアーキテクチャでは、図2(a)に示されるように、送信元と送信先は、Application Layerで接続されている。また、送信元と送信先を接続するルータ間などはNetwork Layerで接続される。Application Layerで接続される送信元と送信先の間で、データは、Physical Layerの物理回線を介して常時接続されるルータによって中継される。ルータ等の中継装置においては、Network Layerにおいてデータを転送することによって、送信元と送信先の通信を可能としている。
【0009】
一方、DTNアーキテクチャでは、Bundleレイヤと呼ばれる新しいプロトコルレイヤによってStore-And-Forward方式を実現している。図2(b)に示される、Bundleレイヤを持つノード(DTN host/DTN router/DTN gateway)はDTNノードと呼ばれ、特にDTN routerやDTN gatewayをForwarderと呼ぶ。DTNアーキテクチャにおいては、DTNノード間は、断続的に物理回線が切断する環境を想定している。したがって、Forwarderは、Bundleレイヤにおいて、通信を一旦終端し、転送データを自身の記憶域に一旦格納する。そして、物理回線が接続される状態となったとき、記憶域に格納した転送データを、隣のDTNノードに転送する。
【0010】
元々DTNは惑星間通信における通信方法として研究されていたものであるが、現在では災害発生時の通信手段、インターネットに接続できない地域での通信手段、通常のネットワークに接続していないセンサ等のセンサ情報を収集する手段としても期待されている。
【0011】
従来技術には、大気の汚染状況を測定するユニットをネットワーク経由で制御するものや、センサネットワークの監視装置間で多量のデータを送受信可能とするものや、高感度の無線機能を有する低消費電力のセンサノードや、設定・運用を容易にしたセンサネットワークなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−281671号公報
【特許文献2】特開2006―295956号公報
【特許文献3】特開2008−28756号公報
【特許文献4】特開2009−294814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように、Store-And-Forward型通信を実現するためのアーキテクチャについては既に定義されているが、ルーティングアルゴリズムに関してはまだ選択が行なわれておらず、様々な研究機関で検討されている状況である。
【0014】
DTNにおいて効率的なデータ転送(早く、無駄なく、確実なデータ転送)を考えた場合、どのようなルーティング方式を選択するかが極めて重要となる。ルーティング方式としては、例えば、Epidemic Routing方式やMessage Ferry方式が提案されている。
【0015】
図3及び図4は、DTNにおける従来のルーティング方式を説明する図である。
図3に示されるように、Epidemic Routing方式は個々のDTNノードがランダムに移動し、物理回線が接続された場合に、データのコピーを物理回線が接続された全てのノードに配信する方式である。
【0016】
図3においては、全てのノードが移動ノードである。図3の(1)において、送信元ノード(src)からデータを送信するとする。(1)の状態では、いずれのノードとも物理回線は接続されていない。(2)において、Node 3が移動し、srcに近づいてきたことにより物理回線が接続されると、srcは、Node 3にデータを送信する。(3)においては、Node 3が移動し、Node 4に近づいたことにより物理回線が接続されたので、Node 3はNode 4にデータを送信する。(4)においては、Node 4が移動し、Node 2に近づいて物理回線が接続されたので、Node 4は、Node 2にデータを転送する。また、srcが移動し、Node 5に近づき物理回線が接続されたので、srcは、Node 5にデータを転送する。(5)においては、Node 2が移動し、送信先ノード(dst)に近づき物理回線が接続されたので、Node 2は、dstにデータを送信する。また、Node 3は、移動してNode 1に近づき物理回線が接続されたので、Node 1にデータを送信する。これにより、srcからdstへのデータの転送が終了する。
【0017】
以上のように、各ノードは、移動することによって物理回線が接続された相手ノード全てにデータを送信する。したがって、送信元ノードから送信先ノードにいたる経路以外でもデータの転送が起こり、転送されたデータは各ノードに格納される。
【0018】
図4に示されるように、Message Ferry方式は、固定ノード間を巡回する移動ノードを用いてデータを交換する方式である。
図4に示されるように、この場合は、固定ノードと移動(巡回)ノードとが存在する。巡回ノードは、定期的に同じルートを巡回するものである。図3の(1)にあるように、送信元ノード(src)からデータを転送する場合、Node 2が巡回ノードであり、巡回移動の際にsrcの近くに来れば、物理回線が接続される。(2)にあるように、Node 2がsrcの近くに来て、物理回線が接続されると、srcは、Node 2にデータを転送する。Node 2は、巡回の際に送信先ノード(dst)にも近づき物理回線を接続する。したがって、(3)にあるように、Node 2がdstに近づいて物理回線が接続された場合に、Node 2はdstにデータを転送する。これにより、srcからdstへのデータの転送が終了する。
【0019】
Message Ferry方式の巡回ノードは、具体的には、路線バスや鉄道などがなりえる。
Epidemic Routing方式は、全てのノードにデータをコピーするため、ネットワーク上のトラフィックが増大してしまい、各ノードに蓄積するデータ量が増大するという問題がある。
【0020】
また、Message Ferry方式は、巡回ノードの存在が前提となっており、巡回ノードが存在しない場合(巡回ノードの巡回範囲にいないノードが通信を行う場合)には適用できないという問題がある。
【0021】
以下の実施形態においては、断続的通信環境において、格納データ量を増大することなく、全てのノードに通信可能なデータ転送装置およびデータ転送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下の実施形態の一側面におけるデータ転送装置は、相互の通信回線が物理的に切断されている、通信ノードが相互に接続された複数のネットワークが、該ネットワークの間を移動する移動ノードを介して、ネットワーク間でデータの転送を行う断続的通信環境下におけるデータ転送装置であって、該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースと、該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成する移動ノード一覧生成部と、該一覧から、データを送信したい送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードを選択し、該送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードに送信先へのデータを転送するデータ転送部とを備える。
【発明の効果】
【0023】
以下の実施形態によれば、断続的通信環境において、格納データ量を増大することなく、全てのノードに通信可能なデータ転送装置及びデータ転送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】DTN技術を説明する図(その1)である。
【図2】DTN技術を説明する図(その2)である。
【図3】DTNにおける従来のルーティング方式を説明する図(その1)である。
【図4】DTNにおける従来のルーティング方式を説明する図(その2)である。
【図5】本実施形態のネットワーク環境を説明する図である。
【図6】Forwarderと無線LAN Access-Pointが有するデータについて説明する図(その1)である。
【図7】Forwarderと無線LAN Access-Pointが有するデータについて説明する図(その2)である。
【図8】Forwarderの選択及びデータの流れを説明する図である。
【図9】本実施形態のアクセスポイントの処理を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態のForwarderとアクセスポイントとの間の通信シーケンスである。
【図11】Forwarderの行動履歴の更新動作のタイミングを説明するシーケンス図(その1)である。
【図12】Forwarderの行動履歴の更新動作のタイミングを説明するシーケンス図(その2)である。
【図13】Forwarderのブロック構成図である。
【図14】アクセスポイントAPのブロック構成図である。
【図15】本実施形態を学校での連絡通信網へ適用した例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施形態では、物理的回線が相互に接続されていない孤立したLAN(Local Access Network)などのアクセスポイントに接続したことのある移動ノードの履歴を蓄積共有し、保持した履歴から異なるアクセスポイント間を橋渡しする移動ノードを選択し、選択された移動ノードを使ってパケットを転送する。
【0026】
図5は、本実施形態のネットワーク環境を説明する図である。
グローバルネットワーク10(例えばインターネット)に接続されておらず、断続的通信環境(DTN網)を含む、LANで構成されるセンサネットワークA/B/C/Dが存在する。
【0027】
センサネットワークA/B/C/Dとグローバルネットワーク10(例えばインターネット)との境界において、断続的通信環境(DTN網)を繋ぐDTN-Gatewayとしての機能を兼ね備えた、センサネットワークA/B/C/Dに固定の無線LAN Access-Point (AP1〜10)が機能している(DTN網におけるトランスポート層は任意の無線アクセスレイヤで実現され、DTN-Gatewayは図2のようなプロトコルスタックを有するとする)。
【0028】
グローバルネットワーク10上には、センサネットワークA/B/C/Dに属するセンサノードa〜fで収集されたセンサ情報を統合管理する統合情報管理DB11が存在している。
統合情報管理DB11は、センサネットワークA/B/C/Dの網構成情報や移動ノードとしてのForwarderの行動履歴や属性情報など、DTN網にてデータを蓄積運搬するために必要となる情報を保持する。
【0029】
センサネットワークA/B/C/Dに固定の無線LAN Access-Pont(AP1〜10)に接近した、移動ノードとしてのForwarderは、過去に立ち寄ったセンサネットワークA/B/C/Dの網構成情報(アクセスしたAPや網の構成情報および、網内に存在するセンサ等の通信可能ノードの情報)をForwarderの行動履歴情報として、後述のForwarder内の管理データベース23に記録する機能を持つ。
【0030】
無線LAN Access-Pont(AP1〜10)は、Forwarderの行動履歴情報をForwarderから読み込み、ローカル情報管理DB12に記録する機能を持つ。
無線LAN Access-Point(AP1〜10)は、ローカル情報管理DB12の行動履歴から、メッセージの到達可能性の高いForwarderの一覧情報を抽出し、通信データと共に該一覧情報をForwarderへ伝達する手段を具備する機能を持つ。
【0031】
Forwarder と無線LAN Access-Pont(AP1〜10)は、無線で通信し、Forwarderは、無線LAN Access-Pont(AP1〜10)の無線エリアに入り次第、通信を開始できるように常に通信可能な状態でいる。
【0032】
図6及び図7は、Forwarderと無線LAN Access-Pointが有するデータについて説明する図である。
図6は、Forwarderの管理データを示す。
【0033】
Forwarderは、Forwarder自身の行動履歴情報を保持する。
行動履歴情報には、アクセスしたネットワークの識別子(アクセスネットワーク識別子、例:センサネットワークA)、該ネットワークへのアクセス履歴(アクセス開始/終了時刻)、アクセスしたAP(Access Point)の識別子(アクセスAP識別子)、収容センサ端末情報(アクセスネットワーク網構成情報、例:IPアドレスなど)、AP(Access Point)構成情報が保持される。
【0034】
図7は、センサネットワーク/グローバルネットワークのAP(Access Point)の管理データを示す。
Access-Pointの管理データには、Forwarderの識別子に対応させたForwarderの行動履歴情報として、アクセスしたネットワーク識別子(アクセスネットワーク識別子、例:センサネットワークA)、該ネットワークへのアクセス状態にあった累積時間(アクセストータル時間)、該ネットワークへのアクセス回数(アクセス回数)、該ネットワークへのアクセス履歴(アクセス開始/終了時刻)、収容センサ端末情報(IPアドレスなど、該アクセスネットワーク網構成情報)、AP(Access Point)構成情報が保持される。また、別管理データとして、あて先ごとに到達確度が高いForwarderの一覧を保持する。
【0035】
到達確度は、過去の実績より該Forwarderが一定時間内にデータ送信した際にあて先ノードにデータが到達する確率を求めることによって得られる。例えば、以下のような式によって計算される。
(到達確度)=(一定時間内に要求送信先までデータを運搬した回数)/(一定時間内のデータ運搬回数)
(一定時間内に要求送信先までデータを運搬した回数)は、一定時間内に、Forwarderが受け取ったデータを送信先が接続されている無線LANのアクセスポイントに転送できた回数である。(一定時間内のデータ運搬回数)は、一定時間内に、Forwarderが転送データを受信した回数である。Forwarderは、転送データを受け取っても、必ずしも送信先の無線LANまでデータを運搬できるとは限らないので、上記式では、分母の方が一般に大きな値となる。
【0036】
そして、例えば、到達確度が、閾値0.5以上といった場合に到達確度が高いと判断する。
この閾値の値は、データ搬送するForwarderの数を調整するためのもので、閾値を下げれば通常のDTN通信のEpidemic Routing方式に近くなる。
【0037】
しかし、常に到達確度が高いForwarderがあるとは限らないために、低い到達確度のForwarderでもデータ搬送を依頼できるように、閾値の値を調整するようにする。
閾値の値の決め方は、ネットワーク管理者やユーザ等が、ネットワーク内のForwarderの状況や搬送するデータ内容に応じて決定する。
【0038】
Forwarderの一覧内のエントリ数が少ない場合には、Epidemic Routing方式や、Message Ferry方式を用いる。
各アクセスポイントAPで保持するForwarder一覧は、事前に固定値にするなども可能であるが、DTN通信の実績により到達確度が更新されることを想定した場合、DTN通信が未実施の場合、すなわち初期状態では、通常のDTN通信方法であるEpidemic Routing方式や、Message Ferry方式を用いてDTN通信を行うことで各Forwarderの通信実績(有効なForwarder一覧)を作る。
【0039】
以上のように、物理的なリンクの存在しない網の構成情報を得、DTNを介しての送信先に応じて到達する可能性の高いForwarderを選択するようにする。
以下の手順により物理的なリンクの存在しない網の構成情報を得ることできる。
【0040】
図5に戻って説明すると、Forwarder-Aは、センサネットワークC内のAP-4の近隣を通過し、センサネットワークCのセンサ情報や網構成情報を取得し、該ネットワークへのアクセス記録を行動履歴情報として保持する。
【0041】
Forwarder-Aが、グローバルネットワーク10のAP-Iの近隣を通過することで、統合情報管理DB11にその行動履歴と網構成情報の同期処理を行う。これにより、統合情報管理DB11にセンサネットワークCの網構成情報やForwarder-Aの行動履歴情報が蓄積される。
【0042】
同様にセンサネットワークAやB、Dおよびグローバルネットワーク10についても、近隣を通過するForwarderを介して網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報の同期が統合情報管理DB11とローカル情報管理DB12との間で行われる。
【0043】
統合情報管理DB11に蓄積されたそれぞれのセンサネットワークの網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報は、グローバルネットワーク10内のAP-Iより自動または手動で各センサネットワークのローカル情報管理DB12へ配信され、各センサネットワークの網構成情報や各Forwarderの行動履歴情報が共有できるようになる。
【0044】
以上により、グローバルネットワーク10や各センサネットワークA/B/C/Dにおいて物理的なリンクが存在しないネットワークの網構成情報を得ることができる。
DTNの送信先に応じて到達する可能性の高いForwarderを選択する構成は、以下のようにして得られる。
【0045】
図8は、Forwarderの選択及びデータの流れを説明する図である。
なお、図8において、図5と同じ構成要素には同じ参照符号を付す。
以下のように情報を伝達することで、DTN技術における既存ルーティングの課題を解決するForwarderの選択方式を実現する。
【0046】
センサネットワークLAN-Aより、グローバルネットワーク10へセンサ情報のアップロードを行う通信が発生したとする。
その際、通信のゲートウェイとなるLAN-AのアクセスポイントAP-1にて、「送信先ネットワークへの到達可能性が高いForwarder一覧」(以下、Forwarder一覧)がローカル情報管理DB12から抽出される。アクセスポイントAP-1は、Forwarder行動履歴の、アクセスしたAPのネットワーク識別子から送信先ノードのネットワークを検索し、ネットワーク識別子を順次たどって、自ネットワーク識別子にいたるForwarderを抽出する。そして、Forwarder一覧は、Forwarderの送信先ネットワークへのアクセス回数から、到達確度を演算し、到達確度の大きいForwarderから順に一覧にすることによって生成される。
【0047】
センサネットワークLAN-AのアクセスポイントAP-1は、抽出したForwarder一覧に記載の全てのForwarderに対しペイロードデータ(センサ情報のアップロードにおける通信データ)と共に、Forwarder一覧を伝達(図1記載のStore-And-Forward方式による)する。
【0048】
ペイロードデータを伝達されたForwarder-Aは、一覧に記載されているForwarder-Bに遭遇した場合、自らが保持するペイロードデータに加えForwarder一覧を伝達する。これを繰り返すことにより送信先ネットワークへのデータの到達効率をより高いものとする。
【0049】
上記の方法により、任意のセンサネットワークで収集されたセンサ情報をグローバルネットワーク10に属する統合情報管理DB11へ集積させるため、各センサネットワークよりグローバルネットワーク10へ到達可能性が高い(到達確度の高い)Forwarderを選択し、データの送信先への到達効率の高いDTN通信を実現することができる。また、同様な方法でグローバルネットワーク10から、各ローカルネットワークLAN-A〜LAN-Dへも通信が可能となる。
【0050】
アクセスポイントによるForwarder選択手順は以下の通りである。
送信元アクセスポイントは、送信先のアクセスポイントに対する到達確度を、送信先のアクセスポイントへのアクセストータル時間、アクセス回数、アクセス履歴を基に後述する図14のフォワーダ行動予測部34において計算する。
【0051】
送信元アクセスポイントは、メッセージの宛先に対応するForwarder一覧を参照して、到達確度が高いと判断したForwarderに対してメッセージを送信する。
判断方法の例としては、Forwarder一覧上で上位3番目以内、あるいは確度が閾値0.5以上の場合といった基準が考えられる。Forwarder一覧内のエントリ数が少ない(閾値以下の)場合には、Epidemic Routing方式や、Message Ferry方式といった従来方式によりForwarderを選択する。
【0052】
図9は、本実施形態のアクセスポイントの処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、アクセスポイントに対し、送信先に対してデータを搬送してもらいたい旨の要求が出される。ステップS11において、Forwarder一覧からForwarderのデータを抽出し、ステップS12において、当該Forwarderについて到達確度が基準を満たすか否かを判断する。判断の結果、基準を満たさない場合には、そのForwarderはデータ搬送依頼の対象外であるとして、ステップS11に戻り、他のForwarderのデータを抽出する。判断の結果、基準を満たす場合には、そのForwarderはデータ搬送依頼対象であるとして、ステップS13において、そのForwarderにデータ搬送を依頼することを決定する。ステップS14において、決定されたForwarderに対しデータを送信する。
【0053】
図10は、本実施形態のForwarderとアクセスポイントとの間の通信シーケンスである。
まず、Forwarderは、アクセスポイントAPの無線エリアに入った場合に、アクセスポイントAPとのネゴシエーションを開始する。アクセスポイントAPは、Forwarderが本実施形態のDTNに属するForwarderであることを認識すると(Forwarderの識別子が予め登録されたものであることを判断すると)、Forwarderにアクセス情報の更新を依頼する。Forwarderは、アクセスポイントAPに対し、アクセス情報としてのForwarder行動履歴、及び、アクセスポイントAPが属するLANの情報の取得要求を送る。アクセスポイントAPは、当該要求にしたがって、全Forwarderの行動履歴と、これに含まれるアクセスポイントAPが属するLANの情報を、Forwarderに通知する。
【0054】
Forwarderは、アクセスポイントAPから送られてきたForwarder行動履歴とLAN情報を保持する。アクセスポイントAPは、送信データを持っており、かつ、当該ForwarderがForwarder一覧から選択された、搬送対象のForwarderである場合には、送信データを当該Forwarderに送る。Forwarderは、送信データを保持し、移動する。Forwarderは、移動して他のアクセスポイントAPと無線通信可能となった場合には、このアクセスポイントAPが、送信先ノードが接続されたLANのアクセスポイントAPであるか否かを判断する。そして、送信先ノードが接続されたLANのアクセスポイントAPである場合には、保持している送信データを送信する。送信したデータは、一定時間後に消去する。この一定時間は、システムの設計者が適宜設定する。
【0055】
図11及び図12は、Forwarderの行動履歴の更新動作のタイミングを説明するシーケンス図である。
図11は、グローバルネットワークから各ローカルネットワークへの通信発生時にForwarderの行動履歴を更新する場合のシーケンス図である。
【0056】
センサ情報の収集要求などグローバルネットワークから各ローカルネットワークへの通信が発生した際に、グローバルネットワークで保持する統合情報管理DBに蓄積されたそれぞれのセンサネットワークの網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報を通信データに合わせて送ることで、通信先のローカルネットワークのアクセスポイントAPで保持する各Forwarderの行動履歴情報が更新される。
【0057】
グローバルネットワークのアクセスポイントAPからローカルネットワークへの通信が発生すると、Forwarderに対し、統合情報管理DBから、網構成情報、Forwarderの行動履歴を読み出し、通信データに付与してデータを送信する。Forwarderは、受信したデータを蓄積し、移動する。Forwarderは、ローカルネットワークのアクセスポイントAPに接近し、無線通信が可能となった場合には、ローカル情報管理DBの全Forwarder行動履歴、全アクセスポイントAPのLAN情報の更新を行なう。ここでは、ローカルネットワークのアクセスポイントAPは1つだけ記載されているが、実際には、Forwarderが遭遇する全てのローカルネットワークのアクセスポイントAPについて同様の動作を行なう。
【0058】
図12は、グローバルネットワークのアクセスポイントAPが周期的に各ローカルネットワークへ情報配信を実施するときにForwarderの行動履歴を更新する場合のシーケンス図である。
【0059】
グローバルネットワークの制御部にて周期的に各ローカルネットワークへの通信を発生させる機能を持たせ、グローバルネットワークで保持する統合情報管理DBに蓄積されたそれぞれのセンサネットワークの網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報を各ローカルネットワークへ配信することで各ローカルネットワークのアクセスポイントAPで保持する各Forwarderの行動履歴情報を周期的に更新する。
【0060】
あるいは、周期でなく非周期的に単発の通信を発生させることによって、各ローカルネットワークのアクセスポイントAPで保持する各Forwarderの行動履歴情報を周期的に更新するようにしても良い。
【0061】
グローバルネットワークのアクセスポイントAPは、自律的且つ周期的に、あるいは、非周期的にダミーデータを各ローカルネットワーク宛に配信する。このとき、統合情報管理DBより網構成情報、Forwarderの行動履歴情報を読み出し、通信データに付与してデータ送信を行なう。移動することによってグローバルネットワークのアクセスポイントAPに接近したForwarderは、グローバルネットワークのアクセスポイントAPからデータを受け取ると、データを蓄積して移動する。当該Forwarderが、移動することによってローカルネットワークのアクセスポイントAPに接近し通信可能となった場合には、ローカル情報管理DBの全Forwarder行動履歴、全アクセスポイントAPのLAN情報の更新を行なう。ここでは、ローカルネットワークのアクセスポイントAPは1つだけ記載されているが、実際には、Forwarderが遭遇する全てのローカルネットワークのアクセスポイントAPについて同様の動作を行なう。
【0062】
図13は、Forwarderのブロック構成図である。
制御部20は、データ管理部21、通信機能部22、管理データベース23、媒体ドライブ24を制御する。通信機能部22は、他のForwarderあるいはアクセスポイントAPと無線で通信を行う。データ管理部21は、通信機能部22が受信したデータを管理データベース23に格納したり、管理データベース23から読み出したデータを、通信機能部22を介して、送信させたりする。管理データベース23に格納されるデータは、通信データのほか、Forwarder行動履歴、網構成情報などがある。また、制御部20は、本実施形態の動作を行なう制御プログラムによって動作するが、これは、DVD、CD−ROM、Blu−ray、フレキシブルディスク、ICメモリ等の可搬記録媒体25に記録されていてもよく、この場合、媒体ドライブ24によって制御プログラムを読み込んで実行する。
【0063】
図14は、アクセスポイントAPのブロック構成図である。
制御部30は、データ管理部31、通信機能部32、フォワーダリスト抽出部33、フォワーダ行動予測部34、管理データベース37、媒体ドライブ35を制御する。通信機能部32は、無線回線を使って、Forwarderと通信を行う。データ管理部31は、通信機能部32が受信したデータを管理データベース37に格納したり、管理データベース37から読み出したデータを、通信機能部32を介して、送信させたりする。フォワーダ行動予測部34は、Forwarder行動履歴から、送信先ごとにForwarderの到達確度を演算する。フォワーダリスト抽出部33は、フォワーダ行動予測部34が演算した到達確度に基づいて、Forwarder一覧を生成する。管理データベース37には、通信データのほか、Forwarderから受け取ったForwarder行動履歴、網構成情報、Forwarder一覧などが格納される。制御部30は、本実施形態の動作を行なう制御プログラムによって動作するが、これは、DVD、CD−ROM、Blu−ray、フレキシブルディスク、ICメモリ等の可搬記録媒体36に記録されていてもよく、この場合、媒体ドライブ35によって制御プログラムを読み込んで実行する。
【0064】
図15は、本実施形態を学校での連絡通信網へ適用した例を説明する図である。
図15では、生徒-B(Forwarder-B)が通学時に生徒-A(Forwarder-A)を誘い(AP-1にアクセス)、一緒に正門から登校(AP-6にアクセス)、裏門から下校(AP-5にアクセス)し、生徒-Aと別れて生徒-Bが帰宅した際のForwarder-Bの行動によって、それぞれのアクセスポイントAPにアクセス記録が残っていく様子とForwarder-Bの行動履歴が蓄積されていく様子を表している。
【0065】
生徒-B(Forwarder-B)が持つ行動履歴、各校区のアクセスポイントAPで持つForwarderのアクセス記録やLAN構成情報は、各Forwarderによって、F小学校校内網40にある統合情報管理DB41に蓄積される。F小学校校内網40にあるアクセスポイントAP-5,AP-6は、統合情報管理DB41に蓄積されている各Forwarderの行動履歴や各校区のLAN情報を各校区のアクセスポイントAPに対して任意のタイミングで配信することで各校区でも情報を共有することが可能となる。このことにより各校区からF小学校校内網40へのDTN通信時や各校区間のDTN通信時に到達確度の高いForwarderを選択することが可能となる。
【0066】
このケースの場合は、DTN通信のデータおよびForwarderリストはF小学校のネットワーク属性を持つForwarder(つまりはF小の生徒・職員またはその父兄等)間でのみ伝達可能とすることにより、通信の範囲を限定しながらも各校区から校内網への通信を可能としている。
【0067】
このケースでは、DTNネットワークの範囲が近隣の地域なので、各々の校区網並びに校内網はインターネットに接続されていると考えられるが、本実施形態のForwarder選択方式を用いたDTN通信網を形成することにより、時間・空間共に閉ざされた区域にのみ適用可能な閉鎖網を形成する事が可能となる。
【0068】
特に、各校区のネットワークごとに特定のネットワークに属していることを示すネットワーク属性を持つことで、グローバルネットワーク(F小学校校内網)に接続しないローカルな複数拠点のネットワーク内でのデータ送受信が可能になる。すなわち、グローバルネットワークと切り離されていることで閉鎖網を構成することができる。そして、ネットワーク属性を意識したForwarderでは、他ネットワークのデータ搬送を行うこともなく、部外者への情報漏えいも防ぐことができることからセキュリティを保つことができる。
【0069】
例えば、F小学校と別にG小学校の校区では別のネットワーク属性で持つとした場合、それぞれに属するForwarderは、F小学校とG小学校の情報を混在させることなく、それぞれの属性に応じたデータのみ搬送を行うことができ、個人情報の漏えい等を防ぐことができる。
【0070】
本実施形態のForwarder選択方式を採用することにより、Forwarderの行動履歴を元に、目的のネットワークへの到達可能性の高いForwarderを抽出・伝達する事ができる。これにより、従来のEpidemic Routing方式に対し、かなり高い効率で情報伝達が可能となり、各々のForwarderにおいて到達可能性の非常に低い(いわば不要な)大量の通信データの保持が不要となる。その結果、Forwarderが多くのDTN通信のデータを搬送する事が可能となり網全体のDTN通信のデータ容量が増大する。
【0071】
また、Message Ferry方式に見られる巡回行動をとっている特定のForwarderが存在しない場合においても、利用可能な(目的の通信相手への情報伝達可能な)Forwarderの抽出を可能とし、DTN通信が可能な範囲をより広範囲なものとすることができる。
【0072】
したがって、物理的に切り離されたセンサネットワークにおけるセンサ情報などの統合管理を可能にする。
また、Forwarderの選択を一定のルールで絞り込むことで、セキュリティを保った閉鎖網の形成が可能となる。
【符号の説明】
【0073】
10 グローバルネットワーク
11 統合情報管理DB
12 ローカル情報管理DB
20、30 制御部
21、31 データ管理部
22、32 通信機能部
23、37 管理データベース
24、35 媒体ドライブ
25、36 可搬記録媒体
33 フォワーダリスト抽出部
34 フォワーダ行動予測部
【技術分野】
【0001】
以下の実施形態は、断続的通信環境においてデータ転送を実現させるデータ転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、センサの技術的進歩は目覚しく、センサ市場は産業分野・民生分野だけでなく医療分野・環境分野等の新しい分野へ急速に広がりを見せている。また、センサをネットワークに接続するセンサネットワーク技術の発展により、センサがネットワークに接続される環境が整いつつある。
【0003】
センサがネットワークに接続されることで、センサが提供するセンサ情報をほぼリアルタイムに活用できたり、多数のセンサ情報の収集が容易となるため、複数のセンサ情報からコンテキスト情報といった高度の情報を生成したりすることが可能となる。これにより、従来にはない新しいサービスを創出することが可能な時代背景となっている。
【0004】
このような環境におけるサービスの例として、「家庭内や事務所内の電力利用状況をセンサで収集・集約することで無駄な電力を可視化し、CO2排出や消費電力の削減を支援するサービス」や「気温や湿度・照度などの情報を収集する複数のセンサを農場に設置し、収集したセンサ情報から農場状況を可視化する農業支援サービス」などが提案されている。
【0005】
しかしながら、今後、多種多様な大量のセンサが世界各地に配置されることを考えると、全てのセンサが常時ネットワーク(インターネット)に接続しているような状況は考えにくい。このように、必ずしも常時ネットワークに接続していないセンサのセンサ情報を収集する事がセンサネットワークを形成する上での大きな課題となっている。この課題の解決の手段として、いくつかの技術が考えられるが、中でもDelay/Disruption-Tolerant Networking (DTN)の技術が有効であると考えられる。
【0006】
図1及び図2は、DTN技術を説明する図である。
大きな伝送遅延が生じたり、通信の切断が多発したりするような、従来のネットワーク技術の適用が困難な通信環境下においても、信頼性あるデータ転送を実現する通信方式としてDTNが提案されている。RFC4838ではDTNのアーキテクチャ概要がまとめられている。
DTNは物理的なリンクが常に存在するとは限らない通信環境を想定しており、Store-And-Forward方式でデータを転送していく。
【0007】
図1は、Store-And-Forward方式のデータ転送を説明する図である。断続的通信環境においては、ルータ、アクセスポイント、ユーザ端末やサーバ等のネットワークノード(Node A〜Node D)の間は、断続的に物理回線が切断される状況となっている。そこで、Store-And-Forward方式のデータ転送では、物理的に回線が切断されている間は、各ノードで送信すべきデータを格納しておき、ノード間の物理回線が接続された際に、格納されていた全てのデータを送信するという動作を行なう。
【0008】
図2は、インターネットとDTNのプロトコルスタックを示す図である。
インターネットアーキテクチャでは、図2(a)に示されるように、送信元と送信先は、Application Layerで接続されている。また、送信元と送信先を接続するルータ間などはNetwork Layerで接続される。Application Layerで接続される送信元と送信先の間で、データは、Physical Layerの物理回線を介して常時接続されるルータによって中継される。ルータ等の中継装置においては、Network Layerにおいてデータを転送することによって、送信元と送信先の通信を可能としている。
【0009】
一方、DTNアーキテクチャでは、Bundleレイヤと呼ばれる新しいプロトコルレイヤによってStore-And-Forward方式を実現している。図2(b)に示される、Bundleレイヤを持つノード(DTN host/DTN router/DTN gateway)はDTNノードと呼ばれ、特にDTN routerやDTN gatewayをForwarderと呼ぶ。DTNアーキテクチャにおいては、DTNノード間は、断続的に物理回線が切断する環境を想定している。したがって、Forwarderは、Bundleレイヤにおいて、通信を一旦終端し、転送データを自身の記憶域に一旦格納する。そして、物理回線が接続される状態となったとき、記憶域に格納した転送データを、隣のDTNノードに転送する。
【0010】
元々DTNは惑星間通信における通信方法として研究されていたものであるが、現在では災害発生時の通信手段、インターネットに接続できない地域での通信手段、通常のネットワークに接続していないセンサ等のセンサ情報を収集する手段としても期待されている。
【0011】
従来技術には、大気の汚染状況を測定するユニットをネットワーク経由で制御するものや、センサネットワークの監視装置間で多量のデータを送受信可能とするものや、高感度の無線機能を有する低消費電力のセンサノードや、設定・運用を容易にしたセンサネットワークなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−281671号公報
【特許文献2】特開2006―295956号公報
【特許文献3】特開2008−28756号公報
【特許文献4】特開2009−294814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように、Store-And-Forward型通信を実現するためのアーキテクチャについては既に定義されているが、ルーティングアルゴリズムに関してはまだ選択が行なわれておらず、様々な研究機関で検討されている状況である。
【0014】
DTNにおいて効率的なデータ転送(早く、無駄なく、確実なデータ転送)を考えた場合、どのようなルーティング方式を選択するかが極めて重要となる。ルーティング方式としては、例えば、Epidemic Routing方式やMessage Ferry方式が提案されている。
【0015】
図3及び図4は、DTNにおける従来のルーティング方式を説明する図である。
図3に示されるように、Epidemic Routing方式は個々のDTNノードがランダムに移動し、物理回線が接続された場合に、データのコピーを物理回線が接続された全てのノードに配信する方式である。
【0016】
図3においては、全てのノードが移動ノードである。図3の(1)において、送信元ノード(src)からデータを送信するとする。(1)の状態では、いずれのノードとも物理回線は接続されていない。(2)において、Node 3が移動し、srcに近づいてきたことにより物理回線が接続されると、srcは、Node 3にデータを送信する。(3)においては、Node 3が移動し、Node 4に近づいたことにより物理回線が接続されたので、Node 3はNode 4にデータを送信する。(4)においては、Node 4が移動し、Node 2に近づいて物理回線が接続されたので、Node 4は、Node 2にデータを転送する。また、srcが移動し、Node 5に近づき物理回線が接続されたので、srcは、Node 5にデータを転送する。(5)においては、Node 2が移動し、送信先ノード(dst)に近づき物理回線が接続されたので、Node 2は、dstにデータを送信する。また、Node 3は、移動してNode 1に近づき物理回線が接続されたので、Node 1にデータを送信する。これにより、srcからdstへのデータの転送が終了する。
【0017】
以上のように、各ノードは、移動することによって物理回線が接続された相手ノード全てにデータを送信する。したがって、送信元ノードから送信先ノードにいたる経路以外でもデータの転送が起こり、転送されたデータは各ノードに格納される。
【0018】
図4に示されるように、Message Ferry方式は、固定ノード間を巡回する移動ノードを用いてデータを交換する方式である。
図4に示されるように、この場合は、固定ノードと移動(巡回)ノードとが存在する。巡回ノードは、定期的に同じルートを巡回するものである。図3の(1)にあるように、送信元ノード(src)からデータを転送する場合、Node 2が巡回ノードであり、巡回移動の際にsrcの近くに来れば、物理回線が接続される。(2)にあるように、Node 2がsrcの近くに来て、物理回線が接続されると、srcは、Node 2にデータを転送する。Node 2は、巡回の際に送信先ノード(dst)にも近づき物理回線を接続する。したがって、(3)にあるように、Node 2がdstに近づいて物理回線が接続された場合に、Node 2はdstにデータを転送する。これにより、srcからdstへのデータの転送が終了する。
【0019】
Message Ferry方式の巡回ノードは、具体的には、路線バスや鉄道などがなりえる。
Epidemic Routing方式は、全てのノードにデータをコピーするため、ネットワーク上のトラフィックが増大してしまい、各ノードに蓄積するデータ量が増大するという問題がある。
【0020】
また、Message Ferry方式は、巡回ノードの存在が前提となっており、巡回ノードが存在しない場合(巡回ノードの巡回範囲にいないノードが通信を行う場合)には適用できないという問題がある。
【0021】
以下の実施形態においては、断続的通信環境において、格納データ量を増大することなく、全てのノードに通信可能なデータ転送装置およびデータ転送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下の実施形態の一側面におけるデータ転送装置は、相互の通信回線が物理的に切断されている、通信ノードが相互に接続された複数のネットワークが、該ネットワークの間を移動する移動ノードを介して、ネットワーク間でデータの転送を行う断続的通信環境下におけるデータ転送装置であって、該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースと、該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成する移動ノード一覧生成部と、該一覧から、データを送信したい送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードを選択し、該送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードに送信先へのデータを転送するデータ転送部とを備える。
【発明の効果】
【0023】
以下の実施形態によれば、断続的通信環境において、格納データ量を増大することなく、全てのノードに通信可能なデータ転送装置及びデータ転送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】DTN技術を説明する図(その1)である。
【図2】DTN技術を説明する図(その2)である。
【図3】DTNにおける従来のルーティング方式を説明する図(その1)である。
【図4】DTNにおける従来のルーティング方式を説明する図(その2)である。
【図5】本実施形態のネットワーク環境を説明する図である。
【図6】Forwarderと無線LAN Access-Pointが有するデータについて説明する図(その1)である。
【図7】Forwarderと無線LAN Access-Pointが有するデータについて説明する図(その2)である。
【図8】Forwarderの選択及びデータの流れを説明する図である。
【図9】本実施形態のアクセスポイントの処理を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態のForwarderとアクセスポイントとの間の通信シーケンスである。
【図11】Forwarderの行動履歴の更新動作のタイミングを説明するシーケンス図(その1)である。
【図12】Forwarderの行動履歴の更新動作のタイミングを説明するシーケンス図(その2)である。
【図13】Forwarderのブロック構成図である。
【図14】アクセスポイントAPのブロック構成図である。
【図15】本実施形態を学校での連絡通信網へ適用した例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施形態では、物理的回線が相互に接続されていない孤立したLAN(Local Access Network)などのアクセスポイントに接続したことのある移動ノードの履歴を蓄積共有し、保持した履歴から異なるアクセスポイント間を橋渡しする移動ノードを選択し、選択された移動ノードを使ってパケットを転送する。
【0026】
図5は、本実施形態のネットワーク環境を説明する図である。
グローバルネットワーク10(例えばインターネット)に接続されておらず、断続的通信環境(DTN網)を含む、LANで構成されるセンサネットワークA/B/C/Dが存在する。
【0027】
センサネットワークA/B/C/Dとグローバルネットワーク10(例えばインターネット)との境界において、断続的通信環境(DTN網)を繋ぐDTN-Gatewayとしての機能を兼ね備えた、センサネットワークA/B/C/Dに固定の無線LAN Access-Point (AP1〜10)が機能している(DTN網におけるトランスポート層は任意の無線アクセスレイヤで実現され、DTN-Gatewayは図2のようなプロトコルスタックを有するとする)。
【0028】
グローバルネットワーク10上には、センサネットワークA/B/C/Dに属するセンサノードa〜fで収集されたセンサ情報を統合管理する統合情報管理DB11が存在している。
統合情報管理DB11は、センサネットワークA/B/C/Dの網構成情報や移動ノードとしてのForwarderの行動履歴や属性情報など、DTN網にてデータを蓄積運搬するために必要となる情報を保持する。
【0029】
センサネットワークA/B/C/Dに固定の無線LAN Access-Pont(AP1〜10)に接近した、移動ノードとしてのForwarderは、過去に立ち寄ったセンサネットワークA/B/C/Dの網構成情報(アクセスしたAPや網の構成情報および、網内に存在するセンサ等の通信可能ノードの情報)をForwarderの行動履歴情報として、後述のForwarder内の管理データベース23に記録する機能を持つ。
【0030】
無線LAN Access-Pont(AP1〜10)は、Forwarderの行動履歴情報をForwarderから読み込み、ローカル情報管理DB12に記録する機能を持つ。
無線LAN Access-Point(AP1〜10)は、ローカル情報管理DB12の行動履歴から、メッセージの到達可能性の高いForwarderの一覧情報を抽出し、通信データと共に該一覧情報をForwarderへ伝達する手段を具備する機能を持つ。
【0031】
Forwarder と無線LAN Access-Pont(AP1〜10)は、無線で通信し、Forwarderは、無線LAN Access-Pont(AP1〜10)の無線エリアに入り次第、通信を開始できるように常に通信可能な状態でいる。
【0032】
図6及び図7は、Forwarderと無線LAN Access-Pointが有するデータについて説明する図である。
図6は、Forwarderの管理データを示す。
【0033】
Forwarderは、Forwarder自身の行動履歴情報を保持する。
行動履歴情報には、アクセスしたネットワークの識別子(アクセスネットワーク識別子、例:センサネットワークA)、該ネットワークへのアクセス履歴(アクセス開始/終了時刻)、アクセスしたAP(Access Point)の識別子(アクセスAP識別子)、収容センサ端末情報(アクセスネットワーク網構成情報、例:IPアドレスなど)、AP(Access Point)構成情報が保持される。
【0034】
図7は、センサネットワーク/グローバルネットワークのAP(Access Point)の管理データを示す。
Access-Pointの管理データには、Forwarderの識別子に対応させたForwarderの行動履歴情報として、アクセスしたネットワーク識別子(アクセスネットワーク識別子、例:センサネットワークA)、該ネットワークへのアクセス状態にあった累積時間(アクセストータル時間)、該ネットワークへのアクセス回数(アクセス回数)、該ネットワークへのアクセス履歴(アクセス開始/終了時刻)、収容センサ端末情報(IPアドレスなど、該アクセスネットワーク網構成情報)、AP(Access Point)構成情報が保持される。また、別管理データとして、あて先ごとに到達確度が高いForwarderの一覧を保持する。
【0035】
到達確度は、過去の実績より該Forwarderが一定時間内にデータ送信した際にあて先ノードにデータが到達する確率を求めることによって得られる。例えば、以下のような式によって計算される。
(到達確度)=(一定時間内に要求送信先までデータを運搬した回数)/(一定時間内のデータ運搬回数)
(一定時間内に要求送信先までデータを運搬した回数)は、一定時間内に、Forwarderが受け取ったデータを送信先が接続されている無線LANのアクセスポイントに転送できた回数である。(一定時間内のデータ運搬回数)は、一定時間内に、Forwarderが転送データを受信した回数である。Forwarderは、転送データを受け取っても、必ずしも送信先の無線LANまでデータを運搬できるとは限らないので、上記式では、分母の方が一般に大きな値となる。
【0036】
そして、例えば、到達確度が、閾値0.5以上といった場合に到達確度が高いと判断する。
この閾値の値は、データ搬送するForwarderの数を調整するためのもので、閾値を下げれば通常のDTN通信のEpidemic Routing方式に近くなる。
【0037】
しかし、常に到達確度が高いForwarderがあるとは限らないために、低い到達確度のForwarderでもデータ搬送を依頼できるように、閾値の値を調整するようにする。
閾値の値の決め方は、ネットワーク管理者やユーザ等が、ネットワーク内のForwarderの状況や搬送するデータ内容に応じて決定する。
【0038】
Forwarderの一覧内のエントリ数が少ない場合には、Epidemic Routing方式や、Message Ferry方式を用いる。
各アクセスポイントAPで保持するForwarder一覧は、事前に固定値にするなども可能であるが、DTN通信の実績により到達確度が更新されることを想定した場合、DTN通信が未実施の場合、すなわち初期状態では、通常のDTN通信方法であるEpidemic Routing方式や、Message Ferry方式を用いてDTN通信を行うことで各Forwarderの通信実績(有効なForwarder一覧)を作る。
【0039】
以上のように、物理的なリンクの存在しない網の構成情報を得、DTNを介しての送信先に応じて到達する可能性の高いForwarderを選択するようにする。
以下の手順により物理的なリンクの存在しない網の構成情報を得ることできる。
【0040】
図5に戻って説明すると、Forwarder-Aは、センサネットワークC内のAP-4の近隣を通過し、センサネットワークCのセンサ情報や網構成情報を取得し、該ネットワークへのアクセス記録を行動履歴情報として保持する。
【0041】
Forwarder-Aが、グローバルネットワーク10のAP-Iの近隣を通過することで、統合情報管理DB11にその行動履歴と網構成情報の同期処理を行う。これにより、統合情報管理DB11にセンサネットワークCの網構成情報やForwarder-Aの行動履歴情報が蓄積される。
【0042】
同様にセンサネットワークAやB、Dおよびグローバルネットワーク10についても、近隣を通過するForwarderを介して網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報の同期が統合情報管理DB11とローカル情報管理DB12との間で行われる。
【0043】
統合情報管理DB11に蓄積されたそれぞれのセンサネットワークの網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報は、グローバルネットワーク10内のAP-Iより自動または手動で各センサネットワークのローカル情報管理DB12へ配信され、各センサネットワークの網構成情報や各Forwarderの行動履歴情報が共有できるようになる。
【0044】
以上により、グローバルネットワーク10や各センサネットワークA/B/C/Dにおいて物理的なリンクが存在しないネットワークの網構成情報を得ることができる。
DTNの送信先に応じて到達する可能性の高いForwarderを選択する構成は、以下のようにして得られる。
【0045】
図8は、Forwarderの選択及びデータの流れを説明する図である。
なお、図8において、図5と同じ構成要素には同じ参照符号を付す。
以下のように情報を伝達することで、DTN技術における既存ルーティングの課題を解決するForwarderの選択方式を実現する。
【0046】
センサネットワークLAN-Aより、グローバルネットワーク10へセンサ情報のアップロードを行う通信が発生したとする。
その際、通信のゲートウェイとなるLAN-AのアクセスポイントAP-1にて、「送信先ネットワークへの到達可能性が高いForwarder一覧」(以下、Forwarder一覧)がローカル情報管理DB12から抽出される。アクセスポイントAP-1は、Forwarder行動履歴の、アクセスしたAPのネットワーク識別子から送信先ノードのネットワークを検索し、ネットワーク識別子を順次たどって、自ネットワーク識別子にいたるForwarderを抽出する。そして、Forwarder一覧は、Forwarderの送信先ネットワークへのアクセス回数から、到達確度を演算し、到達確度の大きいForwarderから順に一覧にすることによって生成される。
【0047】
センサネットワークLAN-AのアクセスポイントAP-1は、抽出したForwarder一覧に記載の全てのForwarderに対しペイロードデータ(センサ情報のアップロードにおける通信データ)と共に、Forwarder一覧を伝達(図1記載のStore-And-Forward方式による)する。
【0048】
ペイロードデータを伝達されたForwarder-Aは、一覧に記載されているForwarder-Bに遭遇した場合、自らが保持するペイロードデータに加えForwarder一覧を伝達する。これを繰り返すことにより送信先ネットワークへのデータの到達効率をより高いものとする。
【0049】
上記の方法により、任意のセンサネットワークで収集されたセンサ情報をグローバルネットワーク10に属する統合情報管理DB11へ集積させるため、各センサネットワークよりグローバルネットワーク10へ到達可能性が高い(到達確度の高い)Forwarderを選択し、データの送信先への到達効率の高いDTN通信を実現することができる。また、同様な方法でグローバルネットワーク10から、各ローカルネットワークLAN-A〜LAN-Dへも通信が可能となる。
【0050】
アクセスポイントによるForwarder選択手順は以下の通りである。
送信元アクセスポイントは、送信先のアクセスポイントに対する到達確度を、送信先のアクセスポイントへのアクセストータル時間、アクセス回数、アクセス履歴を基に後述する図14のフォワーダ行動予測部34において計算する。
【0051】
送信元アクセスポイントは、メッセージの宛先に対応するForwarder一覧を参照して、到達確度が高いと判断したForwarderに対してメッセージを送信する。
判断方法の例としては、Forwarder一覧上で上位3番目以内、あるいは確度が閾値0.5以上の場合といった基準が考えられる。Forwarder一覧内のエントリ数が少ない(閾値以下の)場合には、Epidemic Routing方式や、Message Ferry方式といった従来方式によりForwarderを選択する。
【0052】
図9は、本実施形態のアクセスポイントの処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、アクセスポイントに対し、送信先に対してデータを搬送してもらいたい旨の要求が出される。ステップS11において、Forwarder一覧からForwarderのデータを抽出し、ステップS12において、当該Forwarderについて到達確度が基準を満たすか否かを判断する。判断の結果、基準を満たさない場合には、そのForwarderはデータ搬送依頼の対象外であるとして、ステップS11に戻り、他のForwarderのデータを抽出する。判断の結果、基準を満たす場合には、そのForwarderはデータ搬送依頼対象であるとして、ステップS13において、そのForwarderにデータ搬送を依頼することを決定する。ステップS14において、決定されたForwarderに対しデータを送信する。
【0053】
図10は、本実施形態のForwarderとアクセスポイントとの間の通信シーケンスである。
まず、Forwarderは、アクセスポイントAPの無線エリアに入った場合に、アクセスポイントAPとのネゴシエーションを開始する。アクセスポイントAPは、Forwarderが本実施形態のDTNに属するForwarderであることを認識すると(Forwarderの識別子が予め登録されたものであることを判断すると)、Forwarderにアクセス情報の更新を依頼する。Forwarderは、アクセスポイントAPに対し、アクセス情報としてのForwarder行動履歴、及び、アクセスポイントAPが属するLANの情報の取得要求を送る。アクセスポイントAPは、当該要求にしたがって、全Forwarderの行動履歴と、これに含まれるアクセスポイントAPが属するLANの情報を、Forwarderに通知する。
【0054】
Forwarderは、アクセスポイントAPから送られてきたForwarder行動履歴とLAN情報を保持する。アクセスポイントAPは、送信データを持っており、かつ、当該ForwarderがForwarder一覧から選択された、搬送対象のForwarderである場合には、送信データを当該Forwarderに送る。Forwarderは、送信データを保持し、移動する。Forwarderは、移動して他のアクセスポイントAPと無線通信可能となった場合には、このアクセスポイントAPが、送信先ノードが接続されたLANのアクセスポイントAPであるか否かを判断する。そして、送信先ノードが接続されたLANのアクセスポイントAPである場合には、保持している送信データを送信する。送信したデータは、一定時間後に消去する。この一定時間は、システムの設計者が適宜設定する。
【0055】
図11及び図12は、Forwarderの行動履歴の更新動作のタイミングを説明するシーケンス図である。
図11は、グローバルネットワークから各ローカルネットワークへの通信発生時にForwarderの行動履歴を更新する場合のシーケンス図である。
【0056】
センサ情報の収集要求などグローバルネットワークから各ローカルネットワークへの通信が発生した際に、グローバルネットワークで保持する統合情報管理DBに蓄積されたそれぞれのセンサネットワークの網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報を通信データに合わせて送ることで、通信先のローカルネットワークのアクセスポイントAPで保持する各Forwarderの行動履歴情報が更新される。
【0057】
グローバルネットワークのアクセスポイントAPからローカルネットワークへの通信が発生すると、Forwarderに対し、統合情報管理DBから、網構成情報、Forwarderの行動履歴を読み出し、通信データに付与してデータを送信する。Forwarderは、受信したデータを蓄積し、移動する。Forwarderは、ローカルネットワークのアクセスポイントAPに接近し、無線通信が可能となった場合には、ローカル情報管理DBの全Forwarder行動履歴、全アクセスポイントAPのLAN情報の更新を行なう。ここでは、ローカルネットワークのアクセスポイントAPは1つだけ記載されているが、実際には、Forwarderが遭遇する全てのローカルネットワークのアクセスポイントAPについて同様の動作を行なう。
【0058】
図12は、グローバルネットワークのアクセスポイントAPが周期的に各ローカルネットワークへ情報配信を実施するときにForwarderの行動履歴を更新する場合のシーケンス図である。
【0059】
グローバルネットワークの制御部にて周期的に各ローカルネットワークへの通信を発生させる機能を持たせ、グローバルネットワークで保持する統合情報管理DBに蓄積されたそれぞれのセンサネットワークの網構成情報やそれぞれのForwarderの行動履歴情報を各ローカルネットワークへ配信することで各ローカルネットワークのアクセスポイントAPで保持する各Forwarderの行動履歴情報を周期的に更新する。
【0060】
あるいは、周期でなく非周期的に単発の通信を発生させることによって、各ローカルネットワークのアクセスポイントAPで保持する各Forwarderの行動履歴情報を周期的に更新するようにしても良い。
【0061】
グローバルネットワークのアクセスポイントAPは、自律的且つ周期的に、あるいは、非周期的にダミーデータを各ローカルネットワーク宛に配信する。このとき、統合情報管理DBより網構成情報、Forwarderの行動履歴情報を読み出し、通信データに付与してデータ送信を行なう。移動することによってグローバルネットワークのアクセスポイントAPに接近したForwarderは、グローバルネットワークのアクセスポイントAPからデータを受け取ると、データを蓄積して移動する。当該Forwarderが、移動することによってローカルネットワークのアクセスポイントAPに接近し通信可能となった場合には、ローカル情報管理DBの全Forwarder行動履歴、全アクセスポイントAPのLAN情報の更新を行なう。ここでは、ローカルネットワークのアクセスポイントAPは1つだけ記載されているが、実際には、Forwarderが遭遇する全てのローカルネットワークのアクセスポイントAPについて同様の動作を行なう。
【0062】
図13は、Forwarderのブロック構成図である。
制御部20は、データ管理部21、通信機能部22、管理データベース23、媒体ドライブ24を制御する。通信機能部22は、他のForwarderあるいはアクセスポイントAPと無線で通信を行う。データ管理部21は、通信機能部22が受信したデータを管理データベース23に格納したり、管理データベース23から読み出したデータを、通信機能部22を介して、送信させたりする。管理データベース23に格納されるデータは、通信データのほか、Forwarder行動履歴、網構成情報などがある。また、制御部20は、本実施形態の動作を行なう制御プログラムによって動作するが、これは、DVD、CD−ROM、Blu−ray、フレキシブルディスク、ICメモリ等の可搬記録媒体25に記録されていてもよく、この場合、媒体ドライブ24によって制御プログラムを読み込んで実行する。
【0063】
図14は、アクセスポイントAPのブロック構成図である。
制御部30は、データ管理部31、通信機能部32、フォワーダリスト抽出部33、フォワーダ行動予測部34、管理データベース37、媒体ドライブ35を制御する。通信機能部32は、無線回線を使って、Forwarderと通信を行う。データ管理部31は、通信機能部32が受信したデータを管理データベース37に格納したり、管理データベース37から読み出したデータを、通信機能部32を介して、送信させたりする。フォワーダ行動予測部34は、Forwarder行動履歴から、送信先ごとにForwarderの到達確度を演算する。フォワーダリスト抽出部33は、フォワーダ行動予測部34が演算した到達確度に基づいて、Forwarder一覧を生成する。管理データベース37には、通信データのほか、Forwarderから受け取ったForwarder行動履歴、網構成情報、Forwarder一覧などが格納される。制御部30は、本実施形態の動作を行なう制御プログラムによって動作するが、これは、DVD、CD−ROM、Blu−ray、フレキシブルディスク、ICメモリ等の可搬記録媒体36に記録されていてもよく、この場合、媒体ドライブ35によって制御プログラムを読み込んで実行する。
【0064】
図15は、本実施形態を学校での連絡通信網へ適用した例を説明する図である。
図15では、生徒-B(Forwarder-B)が通学時に生徒-A(Forwarder-A)を誘い(AP-1にアクセス)、一緒に正門から登校(AP-6にアクセス)、裏門から下校(AP-5にアクセス)し、生徒-Aと別れて生徒-Bが帰宅した際のForwarder-Bの行動によって、それぞれのアクセスポイントAPにアクセス記録が残っていく様子とForwarder-Bの行動履歴が蓄積されていく様子を表している。
【0065】
生徒-B(Forwarder-B)が持つ行動履歴、各校区のアクセスポイントAPで持つForwarderのアクセス記録やLAN構成情報は、各Forwarderによって、F小学校校内網40にある統合情報管理DB41に蓄積される。F小学校校内網40にあるアクセスポイントAP-5,AP-6は、統合情報管理DB41に蓄積されている各Forwarderの行動履歴や各校区のLAN情報を各校区のアクセスポイントAPに対して任意のタイミングで配信することで各校区でも情報を共有することが可能となる。このことにより各校区からF小学校校内網40へのDTN通信時や各校区間のDTN通信時に到達確度の高いForwarderを選択することが可能となる。
【0066】
このケースの場合は、DTN通信のデータおよびForwarderリストはF小学校のネットワーク属性を持つForwarder(つまりはF小の生徒・職員またはその父兄等)間でのみ伝達可能とすることにより、通信の範囲を限定しながらも各校区から校内網への通信を可能としている。
【0067】
このケースでは、DTNネットワークの範囲が近隣の地域なので、各々の校区網並びに校内網はインターネットに接続されていると考えられるが、本実施形態のForwarder選択方式を用いたDTN通信網を形成することにより、時間・空間共に閉ざされた区域にのみ適用可能な閉鎖網を形成する事が可能となる。
【0068】
特に、各校区のネットワークごとに特定のネットワークに属していることを示すネットワーク属性を持つことで、グローバルネットワーク(F小学校校内網)に接続しないローカルな複数拠点のネットワーク内でのデータ送受信が可能になる。すなわち、グローバルネットワークと切り離されていることで閉鎖網を構成することができる。そして、ネットワーク属性を意識したForwarderでは、他ネットワークのデータ搬送を行うこともなく、部外者への情報漏えいも防ぐことができることからセキュリティを保つことができる。
【0069】
例えば、F小学校と別にG小学校の校区では別のネットワーク属性で持つとした場合、それぞれに属するForwarderは、F小学校とG小学校の情報を混在させることなく、それぞれの属性に応じたデータのみ搬送を行うことができ、個人情報の漏えい等を防ぐことができる。
【0070】
本実施形態のForwarder選択方式を採用することにより、Forwarderの行動履歴を元に、目的のネットワークへの到達可能性の高いForwarderを抽出・伝達する事ができる。これにより、従来のEpidemic Routing方式に対し、かなり高い効率で情報伝達が可能となり、各々のForwarderにおいて到達可能性の非常に低い(いわば不要な)大量の通信データの保持が不要となる。その結果、Forwarderが多くのDTN通信のデータを搬送する事が可能となり網全体のDTN通信のデータ容量が増大する。
【0071】
また、Message Ferry方式に見られる巡回行動をとっている特定のForwarderが存在しない場合においても、利用可能な(目的の通信相手への情報伝達可能な)Forwarderの抽出を可能とし、DTN通信が可能な範囲をより広範囲なものとすることができる。
【0072】
したがって、物理的に切り離されたセンサネットワークにおけるセンサ情報などの統合管理を可能にする。
また、Forwarderの選択を一定のルールで絞り込むことで、セキュリティを保った閉鎖網の形成が可能となる。
【符号の説明】
【0073】
10 グローバルネットワーク
11 統合情報管理DB
12 ローカル情報管理DB
20、30 制御部
21、31 データ管理部
22、32 通信機能部
23、37 管理データベース
24、35 媒体ドライブ
25、36 可搬記録媒体
33 フォワーダリスト抽出部
34 フォワーダ行動予測部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のノードと通信する通信部と、該通信部で通信するデータを蓄積する蓄積部とを有する移動ノードを含み、前記移動ノードの移動によって断続的通信が行われるデータ転送装置であって、
該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースと、
該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成する移動ノード一覧生成部と、
前記移動ノードと接続した場合に、該接続した移動ノードに基づいて該一覧から送信先を検索し、該接続した移動ノードに検索した送信先へ送信するデータを転送するデータ転送部と、
を備えることを特徴とするデータ転送装置。
【請求項2】
前記行動履歴は、前記移動ノードが通信した通信ノードに接続されるネットワークの識別子と、該移動ノードの識別子と、該ネットワークに接続される通信ノードとの通信回数を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項3】
前記行動履歴は、全ての移動ノードについて、複数の前記ネットワークのうちの1つに設けられた統合情報管理データベースにおいて管理され、前記移動ノードを介して、前記管理データベースの行動履歴と同期が取られることを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項4】
前記統合管理データベースには、前記移動ノードの行動履歴の一部として前記ネットワークの網構成情報が格納されることを特徴とする請求項3に記載のデータ転送装置。
【請求項5】
前記行動履歴は、前記移動ノードが前記ネットワークに接続される通信ノードと通信する際に記録されることを特徴とする請求項2に記載のデータ転送装置。
【請求項6】
前記複数のネットワークは、通信ノードとしてセンサが接続されたセンサネットワークとインターネットを含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項7】
前記送信先へデータを到達させる可能性は、一定時間内に前記移動ノードがデータを受信した回数に対する、該一定時間内に該移動ノードが送信先へデータを転送した回数の比であることを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項8】
他のノードと通信する通信部と、該通信部で通信するデータを蓄積する蓄積部とを有する移動ノードを含み、前記移動ノードの移動によって断続的通信が行われる、該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースを備えたデータ転送装置のデータ転送方法であって、
該データ転送装置は、
該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成し、
前記移動ノードと接続した場合に、該接続した移動ノードに基づいて該一覧から送信先を検索し、該接続した移動ノードに検索した送信先へ送信するデータを転送する、
ことを特徴とするデータ転送方法。
【請求項9】
他のノードと通信する通信部と、該通信部で通信するデータを蓄積する蓄積部とを有する移動ノードを含み、前記移動ノードの移動によって断続的通信が行われる、該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースを備えたデータ転送装置にデータ転送処理を実行させるプログラムであって、
該データ転送装置に、
該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成させ、
前記移動ノードと接続した場合に、該接続した移動ノードに基づいて該一覧から送信先を検索し、該接続した移動ノードに検索した送信先へ送信するデータを転送させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項1】
他のノードと通信する通信部と、該通信部で通信するデータを蓄積する蓄積部とを有する移動ノードを含み、前記移動ノードの移動によって断続的通信が行われるデータ転送装置であって、
該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースと、
該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成する移動ノード一覧生成部と、
前記移動ノードと接続した場合に、該接続した移動ノードに基づいて該一覧から送信先を検索し、該接続した移動ノードに検索した送信先へ送信するデータを転送するデータ転送部と、
を備えることを特徴とするデータ転送装置。
【請求項2】
前記行動履歴は、前記移動ノードが通信した通信ノードに接続されるネットワークの識別子と、該移動ノードの識別子と、該ネットワークに接続される通信ノードとの通信回数を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項3】
前記行動履歴は、全ての移動ノードについて、複数の前記ネットワークのうちの1つに設けられた統合情報管理データベースにおいて管理され、前記移動ノードを介して、前記管理データベースの行動履歴と同期が取られることを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項4】
前記統合管理データベースには、前記移動ノードの行動履歴の一部として前記ネットワークの網構成情報が格納されることを特徴とする請求項3に記載のデータ転送装置。
【請求項5】
前記行動履歴は、前記移動ノードが前記ネットワークに接続される通信ノードと通信する際に記録されることを特徴とする請求項2に記載のデータ転送装置。
【請求項6】
前記複数のネットワークは、通信ノードとしてセンサが接続されたセンサネットワークとインターネットを含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項7】
前記送信先へデータを到達させる可能性は、一定時間内に前記移動ノードがデータを受信した回数に対する、該一定時間内に該移動ノードが送信先へデータを転送した回数の比であることを特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項8】
他のノードと通信する通信部と、該通信部で通信するデータを蓄積する蓄積部とを有する移動ノードを含み、前記移動ノードの移動によって断続的通信が行われる、該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースを備えたデータ転送装置のデータ転送方法であって、
該データ転送装置は、
該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成し、
前記移動ノードと接続した場合に、該接続した移動ノードに基づいて該一覧から送信先を検索し、該接続した移動ノードに検索した送信先へ送信するデータを転送する、
ことを特徴とするデータ転送方法。
【請求項9】
他のノードと通信する通信部と、該通信部で通信するデータを蓄積する蓄積部とを有する移動ノードを含み、前記移動ノードの移動によって断続的通信が行われる、該移動ノードの行動履歴を格納する管理データベースを備えたデータ転送装置にデータ転送処理を実行させるプログラムであって、
該データ転送装置に、
該移動ノードの行動履歴から、送信先ごとに、送信先へデータを到達させる可能性の高い該移動ノードの一覧を生成させ、
前記移動ノードと接続した場合に、該接続した移動ノードに基づいて該一覧から送信先を検索し、該接続した移動ノードに検索した送信先へ送信するデータを転送させる、
ことを特徴とするプログラム。
【図1】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−253450(P2012−253450A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122660(P2011−122660)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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