説明

新しい免疫防御性インフルエンザ抗原及びそのワクチン接種への使用

【課題】自然状態では存在しない新しい免疫防御性インフルエンザ抗原、更に、ワクチン接種のための抗原の使用及び抗原を調製する方法及びワクチンを提供する。
【解決手段】少なくとも保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分又はその機能的フラグメント、及び提示性(ポリ)ペプチド若しくはグリカン、偽ペプチド、合成ポリマーのような非ペプチド性構造体又は提示性担体を含むインフルエンザ抗原を取得。更に、1種以上の賦形剤を配合して、インフルエンザに対するワクチンとする。該抗原は宿主細胞によって調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然状態では存在しない新しい免疫防御性インフルエンザ抗原に関する。本発明は、更に、ワクチン接種のための抗原の使用及び抗原を調製する方法のみならずそれらを含有するワクチンに関する。
【0002】
インフルエンザは、ミクソウイルス群のRNAウイルスが引き起こす。インフルエンザウイルスは、核タンパク質及び基質タンパク質の抗原性の相違に基づき3つの型(A,B及びC)に分類することができる。タイプCが7本のRNAセグメントを有するのに対しタイプA型およびB型インフルエンザウイルスはそれぞれ8本のRNAセグメントを含有する。A型インフルエンザが最有力であり、また、例えばブタや馬のような動物に対してだけでなくヒトに対しても病原性である。
【0003】
B型インフルエンザは、ヒトで疾病を引き起こす。C型インフルエンザは、あまり重篤でなく、ヒト及びブタから単離される。このウイルスは、空気、多くは咳及びくしゃみの間に吐出された水滴を介して伝播する。インフルエンザウイルスは、通常咳、高熱及び筋肉痛を伴う気道の感染症を引き起こす。
【0004】
インフルエンザ感染症は、感染個体の死因となることはまずないが、病的状態は重篤になる可能性がある。それゆえに、インフルエンザ流行は、結果として実質的な経済損失となる。更に、インフルエンザ感染は、例えば心臓麻痺の苦しみを有する人、CARA患者又は高齢者のような特定集団にとってはより危険である可能性がある。インフルエンザワクチンは、それゆえ多いに望ましい。
【0005】
A型インフルエンザウイルスは、その膜内に、免疫原性は高いが極めて変化しやすい2つのタンパク質、すなわちヘマグルチニンとノイラミニダーゼを含有する。これらの2つのタンパク質の可変性のため、広域で持続するA型インフルエンザワクチンは、これまで開発されなかった。通常使用されるインフルエンザワクチンは、ウイルスの抗原ドリフトに追随するため殆ど毎年適応させなければならない。この状況で、ワクチンは免疫した人の約80%を守ることができる。ウイルスに、抗原シフトとして知られる、より劇的な変化が生じた場合は、ワクチンは、もはや防御するものではない。
【0006】
急速に変化するヘマグルチニン及び/又はノイラミニダーゼに基づかず、それゆえそれらに基づく周知の抗原及びワクチンの不都合のないワクチンに使用するための新しい免疫防御性の抗体を提供することが本発明の目的である。
【0007】
本発明につながる研究で、防御を誘発することができる、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ以外の、良く保存されたインフルエンザの膜タンパク質が発見された。この研究方法に特に有用なのは膜タンパク質M2である。
【0008】
M2 mRNAは、A型インフルエンザウイルスの第7RNAセグメントがコードする。それはスプライスされたmRNAによりコードされる(Lamb et al., 1981)。ヘマグルチニンやノイラミニダーゼのように、M2タンパク質は、A型インフルエンザウイルスの不可欠な膜タンパク質である。しかし、このタンパク質はとても小さく、たった97アミノ酸長である。アミノ末端の24個のアミノ酸は膜表面の外側に露出しており、19個のアミノ酸は脂質2重層にかかり、残りの54残基は膜の細胞質側に位置する(Lamb el al., 1985)。
【0009】
M2タンパク質は、A型インフルエンザ感染細胞の細胞表面で多量に発現する(Lamb et al., 1985)。このタンパク質は、ウイルス粒子自身の膜でも見出されるが、極めて少量であり、ウイルス粒子あたりM2が14〜68分子である(Zebedee and Lamb, 1988)。M2タンパク質は、位置50のシステインへのパルミチン酸の付加により翻訳後修飾される(Sugrue et al., 1990)。
【0010】
M2タンパク質は、非共有結合の相互作用により結合する、ジスルフィド結合した2個の2量体からなるホモ4量体である(Sugrue and Hay, 1991)。部位特異的突然変異誘発により、Holsinger and Lamb (1991)は、位置17および19のシステイン残基はジスルフィド架橋形成に含まれることを証明した。位置17のシステインだけが、分析した全てのウイルスに存在し、それゆえ、おそらくこれが最重要残基であると思われる。システイン19も存在するウイルス株では、2番目のジスルフィド架橋が、同じ2量体内(すでにCys17−Cys17で連結された)か他の2量体と形成されるかは不明である。
【0011】
M2タンパク質配列と並べることにより、A型インフルエンザウイルスの異なるヒト系統から単離された、M2タンパク質の細胞外部分の著しい保存が、明らかとなった(Table 1)。1933年に最初のヒトA型インフルエンザ株、A/WS/33(H1N1)、が単離されてから、最近配列決定されたウイルスA/Guangdong/39/89(H3N2)まで、M2タンパク質の細胞外ドメインでは、アミノ酸変化が全く観察されていない。2系統のウイルス株がこの保存傾向にあてはまらない、1個のアミノ酸変化を示すA/PR/8/34と3個のアミノ酸相違を示すA/Fort Monmouth/1/47(H1N1)である。これら2つの株は、多分、進化系統樹の横枝を意味するのだろう。
【0012】
Table 1はウイルス株A/WSN/33(Markushin et al. (1988))、A/PR/8/34(Allen et al. (1980)、Winter and Fields(1980) )、A/WS/33、A/Fort Warren/1/50、A/Singapore/1/57及びA/Port Chalmers/1/73(全てZebedee and Lamb(1989)に記載)、A/Udorn/72(Lamb and Lai(1981))、A/Leningrad/134/57(Klimov et al.(1992))、A/Ann Arbor/6/60(Cox et al.(1988))、A/Bangkok/1/79(Ortin et al.(1983))、A/New York/83(Belshe et al. (1988))、A/Fort Monmouth/1/47(EMBL U02084)、A/USSR/90/77(EMBL X53029)及びA/Guangdong/39/89(EMBL L 18999)のA型インフルエンザM2タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸配列の概要を示す。
【0013】
【表1】

【0014】
膜タンパク質のこの型の保存された形質は、ワクチン開発の良き候補とすることができることを本発明者は予想する。原則として、抗M2抗体の防御能は既知である。実験データは、抗M2タンパク質(14C2)細胞外部分のモノクローナル抗体は、ウイルスの伝播を縮小することができることを実証するが、in vitroではウイルスの感染力は減少しない(Zebedee and Lamb, 1988)。
【0015】
更に、受動投与したモノクローナル抗体(14C2)は、マウスの肺でのウイルス増殖を阻害することができることが証明された(Treanor et al., 1990)。両研究方法とも、抗M2抗体の投与に依存する。しかし、反復投与での異種免疫グロブリンの免疫原性は、身体からの抗体除去となり、こうして処置の効力の減少につながることから、感染に対する防御手段としてのモノクローナル抗体の受動投与は、好ましくは回避する。
【0016】
相同抗体でも抗イディオタイプ抗体を誘発する。更に、ウイルスに感染したヒトは抗M2抗体を有するが、これらは感染を防御しない(その濃度かその特性のどちらかが、効果付与に十分でない)。これが、抗M2抗体の受動投与がヒトにおける使用に適切である見込みをなくす。この抗原に基づくヒトのワクチンを開発する試みが消え去ることも教示する。
【0017】
最近、同種又は異種ウイルスの感染に対するマウスの防御が説明された(Slepushikin et al., 1995)。この著者等は、不完全フロイントアジュバントと免疫化のための完全M2タンパク質を発現するSf9細胞の膜抽出物を使用した。しかし、ヒトに禁止される非常に強力なフロイントアジュバントの使用に基づくことより、この方法もまたヒトのワクチン接種には適切でない。
【0018】
要約すれば、インフルエンザに対する防御を提供するための抗体の使用は、好ましくは控えるべきである。更に、抗体での予防処置は、ヒトに効果的でありそうもない。ヒトに使用することができない不完全フロイントアジュバントに依存しており、高等動物では禁忌であることより、記載されたようにヒトの完全M2タンパク質での免疫化は現実的でない。
【0019】
したがって、既存のものに代わるインフルエンザ抗原を提供するための本発明の目的は、広範なスペクトルのインフルエンザ株に対する十分な免疫防御性であり、フロイントアジュバントに依存せず、ヒトに使用することができることである。
【0020】
本発明によって、自然状態では存在しない、新規性のある抗原を調製することが可能であることが今見出される。このためには、保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分又はその機能的断片を、例えばタンパク質である提示性担体に融合する。保存されたインフルエンザ膜タンパク質は、例えばよく保存されたM2タンパク質の細胞外部分である。
【0021】
膜タンパク質は、好ましくは、提示性担体として提示性(ポリ)ペプチドに遺伝子的に融合し、ここでこの(ポリ)ペプチドは細胞外部分を安定化し、驚いたことに、こうして得られた融合物の免疫原性を増強する。提示性(ポリ)ペプチドが、細胞外部分を野生型構造にさせ、こうしてウイルス上及び感染細胞上でも見出せる形態で抗原を提示すると考えられる。
【0022】
‘保存されたインフルエンザ膜タンパク質の機能的断片’とは、機能的断片を受け入れない同一種類の対照部分で見出されるより、種類の試験部分に免疫防御的用量を投与する場合に、統計的に有意なより高い免疫防御性を誘発することができる断片をいう。
【0023】
本発明の一つの実施態様では、M2タンパク質の23アミノ酸の細胞外部分をヒトB型肝炎ウイルスコアタンパク質のアミノ末端に融合させた。こうして、遊泳N末端が細胞外環境に伸長する場合に、ウイルス粒子及び感染細胞中のM2タンパク質の野生型構造を模倣する。
【0024】
代わりの提示性(ポリ)ペプチドは、複数のC3dドメイン(Dempsey et al., 1996)、破傷風毒素フラグメントC又は酵母Ty粒子である。‘提示性(ポリ)ペプチド’は周囲に対し実質的に野生型形状である細胞外部分を呈示することができるすべての1個以上のアミノ酸を包含することを意味する。
【0025】
代わるものとして、提示性担体は、グリカン、ポリエチレングリコール、擬ペプチド(peptide mimetics)、合成ポリマー等のような非ペプチド構造体であることができる。
【0026】
適切な受容細胞における新規な抗原の発現後、それ自体(受容細胞に依存する)か、又は膜フラグメントの部分若しくは遊離形態のいずれかで用いることができる。
【0027】
用語‘提示性担体’は、(ポリ)ペプチド等の、全ての種類の提示性分子を表示するため用いる。
【0028】
抗原及び提示性(ポリ)ペプチドのコード情報を含んでいる遺伝子構築は、上記のような新しい抗原を調製するため用いることができるのみならず、場合によっては、適切な転写及び/又は翻訳制御配列存在下、DNAワクチン中又はワクシニアベースワクチン中で使用することもできることは当業者には明らかであろう。
【0029】
提示性(ポリ)ペプチドは、単一の又は多コピーの状態で融合生成物中に取り込まれることができる。補体タンパク質第3フラグメントd(C3d)は、好ましくは、より多いコピー数、好ましくは3コピー以上で用いられる。
【0030】
本発明の好ましい実施態様では、融合タンパク質は更に適切な内部部位(Schoedel et al., 1992)又はC末端(Borisova et al., 1989)において付加的なペプチドを含むことができる。この付加的なペプチドは、抗原の防御能力のさらなる増大を目的とし、例えばヘルパーT細胞エピトープ又は細胞障害性T細胞エピトープでありえる。
【0031】
本発明の抗原は、場合により、適切な転写及び/又は翻訳及び/又は分泌制御配列の存在下で、少なくとも保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分又はその機能的フラグメントの遺伝子構築、及び場合により、それに操作可能に結合した提示性(ポリ)ペプチドをコードする配列を調製し、適切な受容細胞内のこの遺伝子構造体に結合し、受容細胞内の遺伝子構造物を発現し、及び場合により受容細胞又はその培地から単離することによって得られる。
【0032】
転写及び/又は翻訳及び/又は分泌制御配列の必要条件は、遺伝子がベクター内に組み込まれるべきかどうか又は受容細胞のゲノム内への組み込みがこれらのシグナルがすでに用意されている位置であるかどうかに依存する。
【0033】
提示性(ポリ)ペプチドのコード配列は、融合タンパク質が抗原とペプチド性構造体との融合である場合、又もし所望ならばDNA構造体中の2個の構造体を直接結合する場合にのみ存在する。全ての他の例では、提示性担体を異なる方法で抗原に追加することもできる。
【0034】
適切な受容細胞は、例えばE. coli, Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、酵母(例えばPichia pastoris)、昆虫細胞(例えばSf9)、哺乳類細胞(例えばVero細胞)等から選択される。L. lactisの場合、抗原を単離するのでなく、改変された細菌を鼻腔内又は経口で直接用いることができることを必要とする。
【0035】
本発明は、少なくとも本発明の抗原を含むワクチンに更に関する。この抗原は、単離した形態又は膜フラグメントの部分として若しくは受容細胞上に発現された状態であることができる。本発明の抗原は、適切な賦形剤と一緒に用いることができる。
【0036】
ワクチン設計の当業者は、適切な賦形剤を選択することができる。ガイダンスを例えばMethods in molecular medicine: Vaccine Protocols (1996). Eds. Robinson, A., Farrar, G.H. and Wilblin, C.N. Humana Press, Totowa, New Jersey, USAに見出すことができる。
【0037】
本発明の抗原は、単独で又はノイラミニダーゼ、ヘマグルチニン若しくはもとのままのM2のような1種以上の他のインフルエンザ抗原と組み合わせて使用することができる。
【0038】
更に、本発明はインフルエンザに対するワクチンの調製における抗原の使用に関する。ワクチンは、例えば融合生成物を含んでいるワクチンのような直接ワクチン又は2次的なDNAワクチンであることができる。後者は、受容体内で機能することができる真核生物のプロモーターの制御下にある融合cDNAを含んでいるワクチンである。実際の抗原は、それからワクチンの受容者で産生される。
【0039】
本発明のワクチンは、ヒト及び動物(例えばA型インフルエンザに感染することが周知のブタや馬)の両者での使用を意味する。
【0040】
ここに記載されるようなA型インフルエンザの新規な融合抗原を調製するための同様の研究方法は、融合抗原又は、B型やC型インフルエンザの融合抗原をコードするDNAを含有する同様の融合抗原及びワクチンを調製することに採用することができる。
【0041】
本発明は
a)場合により、適切な転写及び/又は翻訳及び/又は分泌制御配列の存在下で、少なくとも保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分またはその機能的断片をコードする配列及び少なくともそれに操作可能に結合した提示性(ポリ)ペプチドを含む遺伝子構築を調製し、
b)適切な受容細胞内にこの遺伝子構築を持ち込み、
c)受容細胞内の遺伝子構築の発現を達成し、及び
d)場合により、受容細胞又は培地から該抗原を単離する
工程を含む、抗原の調製方法にも関する。
【0042】
本発明は、本発明を決して制限する意図はない、下記の実施例により更に説明するつもりである。実施例は、種々の提示性(ポリ)ペプチドも用いるM2配列の融合タンパク質の調製及び免疫化でのその使用を詳細に記載する。ここに記載したM2及び提示性担体の代わりに、当業者は他の保存されたインフルエンザ膜タンパク質及び他の提示性担体を選択することができるだろう。
【0043】
実施例では、以下の図を参照する:
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】Figure 1:pATIPM2mlの構築E1及びE2=インフルエンザM2タンパク質の第1及び第2エクソン、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、M2t=膜貫通部分;及びM2c=細胞質尾部。太線=ベクター。(a)m2遺伝子からのイントロンの除去、(b)M2タンパク質の細胞外部分及び膜貫通ドメイン間にBclI部位の導入、(c)A/PR/8/34のM2タンパク質の細胞外部分のヌクレオチド及びアミノ酸配列
【図1B】Figure 1:pATIPM2mlの構築E1及びE2=インフルエンザM2タンパク質の第1及び第2エクソン、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、M2t=膜貫通部分;及びM2c=細胞質尾部。太線=ベクター。(a)m2遺伝子からのイントロンの除去、(b)M2タンパク質の細胞外部分及び膜貫通ドメイン間にBclI部位の導入、(c)A/PR/8/34のM2タンパク質の細胞外部分のヌクレオチド及びアミノ酸配列
【図1C】Figure 1:pATIPM2mlの構築E1及びE2=インフルエンザM2タンパク質の第1及び第2エクソン、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、M2t=膜貫通部分;及びM2c=細胞質尾部。太線=ベクター。(a)m2遺伝子からのイントロンの除去、(b)M2タンパク質の細胞外部分及び膜貫通ドメイン間にBclI部位の導入、(c)A/PR/8/34のM2タンパク質の細胞外部分のヌクレオチド及びアミノ酸配列
【図2a1】Figure 2:pIPM2hB2Mm2s2の構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、lpp=リポタンパク質、hB2M=ヒトβ2ミクログロブリン、ompa−ss=E.coliの外膜タンパク質Aのシグナル配列、ssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):構築フロースキーム、(b):主要配列の詳細。
【図2a2】Figure 2:pIPM2hB2Mm2s2の構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、lpp=リポタンパク質、hB2M=ヒトβ2ミクログロブリン、ompa−ss=E.coliの外膜タンパク質Aのシグナル配列、ssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):構築フロースキーム、(b):主要配列の詳細。
【図2a3】Figure 2:pIPM2hB2Mm2s2の構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、lpp=リポタンパク質、hB2M=ヒトβ2ミクログロブリン、ompa−ss=E.coliの外膜タンパク質Aのシグナル配列、ssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):構築フロースキーム、(b):主要配列の詳細。
【図2b】Figure 2:pIPM2hB2Mm2s2の構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、lpp=リポタンパク質、hB2M=ヒトβ2ミクログロブリン、ompa−ss=E.coliの外膜タンパク質Aのシグナル配列、ssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):構築フロースキーム、(b):主要配列の詳細。
【図3a1】Figure 3:pPLcIPM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コアssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):プラスミド構築フロースキーム、(b):B型肝炎コア遺伝子の導入されたBamHI制限部位周辺配列、(c):主要配列の詳細。
【図3a2】Figure 3:pPLcIPM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コアssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):プラスミド構築フロースキーム、(b):B型肝炎コア遺伝子の導入されたBamHI制限部位周辺配列、(c):主要配列の詳細。
【図3a3】Figure 3:pPLcIPM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コアssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):プラスミド構築フロースキーム、(b):B型肝炎コア遺伝子の導入されたBamHI制限部位周辺配列、(c):主要配列の詳細。
【図3a4】Figure 3:pPLcIPM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コアssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):プラスミド構築フロースキーム、(b):B型肝炎コア遺伝子の導入されたBamHI制限部位周辺配列、(c):主要配列の詳細。
【図3b】Figure 3:pPLcIPM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コアssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):プラスミド構築フロースキーム、(b):B型肝炎コア遺伝子の導入されたBamHI制限部位周辺配列、(c):主要配列の詳細。
【図3c】Figure 3:pPLcIPM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コアssDNA=一本鎖DNA、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、(a):プラスミド構築フロースキーム、(b):B型肝炎コア遺伝子の導入されたBamHI制限部位周辺配列、(c):主要配列の詳細。
【図4】Figure 4:SDS12.5%PAGE上での、プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)又はpPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)それぞれを含有するMC1061〔pcI857〕株のオリジナルの培養液150μlに相当する、可溶性分画の分析。ゲルを電気泳動した後、クマーシーブリリアントブルーで染色した。MW=分子量マーカーNI=誘発しなかった培養I=誘発した培養
【図5A】Figure 5:Figure 4の場合のように、プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)又はpPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)それぞれで形質転換したMC1061〔pcI857〕株のオリジナルの培養液150μlに相当する、可溶性分画の分析。電気泳動後、関連タンパク質をウェスタンブロッティング実験によって示した。(A)抗HBcモノクローナル抗体と(B)M2タンパク質の細胞外部分に特異的なモノクローナル抗体の検出。MW=分子量マーカーNI=誘発しなかった培養I=誘発した培養
【図5B】Figure 5:Figure 4の場合のように、プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)又はpPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)それぞれで形質転換したMC1061〔pcI857〕株のオリジナルの培養液150μlに相当する、可溶性分画の分析。電気泳動後、関連タンパク質をウェスタンブロッティング実験によって示した。(A)抗HBcモノクローナル抗体と(B)M2タンパク質の細胞外部分に特異的なモノクローナル抗体の検出。MW=分子量マーカーNI=誘発しなかった培養I=誘発した培養
【図6】Figure 6:M2タンパク質のアミノ末端配列を、実験的に決定したIPM2HBcmのアミノ末端と比べた。A/Udorn/72の配列(Lamb and Zebedee, 1985)。
【図7A】Figure 7:プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)又はpPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)それぞれで形質転換したMC1061〔pcI857〕株の可溶性分画を、ドットブロットにより本来の状態で分析した。(A)抗HBcモノクローナル抗体及び(B)M2タンパク質の細胞外部分に特異的なモノクローナル抗体の検出。NI=誘発しなかった培養I=誘発した培養
【図7B】Figure 7:プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)又はpPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)それぞれで形質転換したMC1061〔pcI857〕株の可溶性分画を、ドットブロットにより本来の状態で分析した。(A)抗HBcモノクローナル抗体及び(B)M2タンパク質の細胞外部分に特異的なモノクローナル抗体の検出。NI=誘発しなかった培養I=誘発した培養
【図8】Figure 8:直腸温(A1)、体重(A)及び5 LD50m.a.A/PR/8/34での致死的チャレンジの後、IPM2HBcmを接種されたマウスの生存(B)の概要。統計学的有意は、フィッシャーの正確法によって計算した。種々の用量の抗原で免疫化したマウスをコントロール群と比べた。下記の結果が得られた:IPM2HBcm 50μgではp<0.001;10μgではp<0.005及び5μg用量ではp<0.05であった。Figure 8Cは、30 HAU X−47での致死的チャレンジ後のIPM2HBcm及びIM2HBcmそれぞれで腹腔内にワクチン接種を受けたマウスの生存を示す。Figure 8Dは、30 HAU X−47での致死的挑戦(lethal challenge)後のIPM2HBcm及びIM2HBcmそれぞれで鼻腔内にワクチン投与を受けたマウスの生存を示す。
【図8C】Figure 8:直腸温(A1)、体重(A)及び5 LD50m.a.A/PR/8/34での致死的チャレンジの後、IPM2HBcmを接種されたマウスの生存(B)の概要。統計学的有意は、フィッシャーの正確法によって計算した。種々の用量の抗原で免疫化したマウスをコントロール群と比べた。下記の結果が得られた:IPM2HBcm 50μgではp<0.001;10μgではp<0.005及び5μg用量ではp<0.05であった。Figure 8Cは、30 HAU X−47での致死的チャレンジ後のIPM2HBcm及びIM2HBcmそれぞれで腹腔内にワクチン接種を受けたマウスの生存を示す。Figure 8Dは、30 HAU X−47での致死的挑戦(lethal challenge)後のIPM2HBcm及びIM2HBcmそれぞれで鼻腔内にワクチン投与を受けたマウスの生存を示す。
【図8D】Figure 8:直腸温(A1)、体重(A)及び5 LD50m.a.A/PR/8/34での致死的チャレンジの後、IPM2HBcmを接種されたマウスの生存(B)の概要。統計学的有意は、フィッシャーの正確法によって計算した。種々の用量の抗原で免疫化したマウスをコントロール群と比べた。下記の結果が得られた:IPM2HBcm 50μgではp<0.001;10μgではp<0.005及び5μg用量ではp<0.05であった。Figure 8Cは、30 HAU X−47での致死的チャレンジ後のIPM2HBcm及びIM2HBcmそれぞれで腹腔内にワクチン接種を受けたマウスの生存を示す。Figure 8Dは、30 HAU X−47での致死的挑戦(lethal challenge)後のIPM2HBcm及びIM2HBcmそれぞれで鼻腔内にワクチン投与を受けたマウスの生存を示す。
【図9】Figure 9:Figure 8に示した4種の血清サンプルの分析。免疫前血清(a)、一回目の免疫後に採取した血清(b)、2回目の免疫後(c)、3回目の免疫後(d)、そしてチャレンジ後得られた血清(e)を最初に1/50に希釈した。連続希釈段階は1/3とした.プロットした吸光度は、「結果、血清サンプルの分析」に記載したように得られた修正値である。
【図10】Figure 10:pPLcIM2HBcmの構築。ori=複製起点cat=クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、bla=βラクタマーゼ、M2e=M2タンパク質の細胞外部分HBc=B型肝炎コア
【図11】Figure 11:SDS 12.5% PAGEゲル上での、プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)、pPLcIPM2HBcm(A/PR/8/34に由来するM2タンパク質の細胞外部分を含む融合タンパク質IPM2HBcmの発現)又はpPLcIM2HBcm(より普遍的M2配列を含有するIM2HBcmの発現)それぞれを含有するMC1061〔pcI857〕株の、HBc5μg又はI(P)M2HBcm(ELISAで測定した(材料及び方法を参照))を含有する、可溶性分画の分析。MW=分子量マーカーNI=誘発しなかった培養I=誘発した培養
【図12A】Figure 12:ウェスタンブロット上での、プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)、pPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)又はpPLcIM2HBcm(IM2HBcmの発現)を含有するMC1061〔pcI857〕株の、HBc2.5μg又はI(P)M2HBcm(ELISAで測定した(材料及び方法を参照))を含有する、可溶性分画の分析。MW=分子量マーカー、NI=誘発しなかった培養、I=誘発した培養。
【図12B】Figure 12:ウェスタンブロット上での、プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(HBcの発現)、pPLcIPM2HBcm(IPM2HBcmの発現)又はpPLcIM2HBcm(IM2HBcmの発現)を含有するMC1061〔pcI857〕株の、HBc2.5μg又はI(P)M2HBcm(ELISAで測定した(材料及び方法を参照))を含有する、可溶性分画の分析。MW=分子量マーカー、NI=誘発しなかった培養、I=誘発した培養。
【図13】Figure 13:hbc及びi(p)m2hbcのPCR増幅のため用いたオリゴヌクレオチドの概要。オリゴヌクレオチドの名称に続く‘s’又は‘a’は、センス(s)又はアンチセンス(a)指向でのこれらのプライマーの使用を意味する。囲み線の配列は、変更したLeuコドンを表す。
【図14】Figure 14:L.lactisのベクターにおけるhbc及びm2hbc融合構築の概要。ori=E. coliの複製起点、ori(+)=L. lactisの複製起点、ermA及びermM=エリスロマイシン抵抗性遺伝子、P1=L. lactisプロモーター、bla=βラクタマーゼ、HBc=B型肝炎コア、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、usp45−ss=usp45のシグナル配列、mIL2=マウスインターロイキン2及びmIL6=マウスインターロイキン6。
【図15】Figure 15:ウェスタンブロットでのB型肝炎コア(HBc)発現及びM2−HBc融合タンパク質発現の分析。pTREX1(コントロール)、pT1HBc、pT1HBcIL2、pT1HBcIL6(HBc単独又はmIL2若しくはmIL6との組み合わせ、それぞれの発現)、pT1PM2HBc、pT1PM2HBcIL2、pT1PM2HBcIL6(IPM2HBcm単独又はmIL2若しくはmIL6との組み合わせ、それぞれの発現)、pT1M2HBc、pT1M2HBcIL2、pT1M2HBcIL6(IM2HBcm単独又はmIL2若しくはmIL6組み合わせ、それぞれの発現)それぞれを含有する、109個相当のL. lactis細菌のMG1363株を、SDS 12.5% PAGEゲルで分析した。最初の抗体p−anti−HBc(Daco Corporation, Carpinteria, CA., USA)を5,000倍に希釈した。結合した抗体を、1/2000希釈のアルカリフォスファターゼ標識ポリクローナル抗ウサギIgG(Southern Biotechnology Associates, Birmingham, AL., USA)で検出した。I(P)M2HBcは、IPM2HBcmかIM2HBcmのどちらかを表す。MW=分子量マーカー、C=コントロール及び−=抗原だけの発現。
【図16】Figure 16:ウェスタンブロットでのM2−HBc融合タンパク質発現の分析。pT1HBc(コントロール)、pT1PM2HBc、pT1PM2LHBc(IPM2HBcmの発現)、pT1M2HBc、pT1M2LHBc(IM2HBcmの発現)それぞれを含有する、2〜3×109個相当のL. lactis細菌のMG1363株を、SDS 12.5% PAGEゲルで分離した。融合タンパク質をポリクローナルマウス抗M2e抗体(材料及び方法を参照)のIgG分画を用いて検出した。結合した抗体を、1/2000希釈のアルカリフォスファターゼ結合ポリクローナル抗マウスIgG(γ鎖特異的)(Southern Biotechnology Associates, Birmingham, AL., USA)で検出した。MW=分子量マーカー、C=コントロール、E=E. coliでの使用に最適なロイシンコドン及びL=L. lactisでの使用に最適なロイシンコドン。これらは、それぞれプラスミドpT1PM2LHBc及びpT1M2LHBcである。I(P)M2HBcは、IPM2HBcm又はIM2HBcmを表す。
【図17】Figure 17:M2タンパク質及びC3dの細胞外部分のPCR増幅のために用いるオリゴヌクレオチドの概要。オリゴヌクレオチドの名称に続く‘s’又は‘a’は、センス(s)又はアンチセンス(a)指向でのこれらのプライマーの使用を意味する。囲み線の配列は変更したLeuコドンを表す。
【図18】Figure 18:L.lactisでのm2c3d3融合の構築概要。ori=E. coliの複製起点、ori(+)=L. lactisの複製起点、ermA及びermM=エリスロマイシン抵抗性遺伝子、P1=L. lactisプロモーター、bla=βラクタマーゼ、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、usp45−ss=usp45のシグナル配列、spaX=Staphylococcus aureus タンパク質Aに由来するアンカー配列、C3d=補体タンパク質3フラグメントd、及びmIL6=マウスインターロイキン6。
【図19】Figure 19:ttfc及びm2ttfcのPCR増幅のため用いるオリゴヌクレオチドの概要。オリゴヌクレオチドの名称の後の‘s’又は‘a’は、センス(s)又はアンチセンス(a)指向でのこれらのプライマーの使用を意味する。囲み線の配列は変更したLeuコドンを表す。
【図20】Figure 20:L.lactisのベクターでのm2ttfcの構築概要。ori=E. coliの複製起点、ori(+)=L. lactisの複製起点、ermM及びermμ=エリスロマイシン抵抗性遺伝子、P1=L. lactisプロモーター、bla=βラクタマーゼ、TTFC=破傷風毒素フラグメントC、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、usp45−ss=usp45のシグナル配列、mIL2=マウスインターロイキン2及びmIL6=マウスインターロイキン6。
【図21】Figure 21:ウェスタンブロットでのIPM2TTFC融合タンパク質発現の分析。pT1TT(コントロール)、pT1PM2LTT(IPM2TTの発現)、pT1PM2LTTIL2(mIL2と組み合わせたIPM2TTの発現)又はpT1PM2LTTIL6(mIL6と組み合わせたIPM2TTの発現)それぞれを含有する、109個相当のL. lactis細菌のMG1363株を、SDS 10% PAGEゲルで分析した。 最初の抗体、ポリクローナルマウス抗M2e抗体のIgG分画(材料及び方法を参照)を2500倍に希釈した。結合した抗体を、1/2000希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ポリクローナル抗マウスIgG(Southern Biotechnology Associates, Birmingham, AL., USA)で検出した。4−クロロ−1−ナフトール30mg(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo., USA)をメタノール10mlに溶解した。次に、PBS40ml(pH7.4)とH22150μlを添加した。MW=分子量マーカー、−=抗原だけの発現、mIL2=mIL2と組み合わせた抗原の発現、mIL6=mIL6と組み合わせた抗原の発現。
【図22】Figure 22:gp67バキュロウイルスタンパク質の分泌シグナルのPCR増幅に用いるプライマーセット。
【図23】Figure 23:sgpM2C3d3融合の構築中にM2タンパク質の細胞外部分のPCR増幅に用いるプライマーセット。
【図24】Figure 24:バキュロウイルス転移ベクターpACsgpM2C3d3の構築。bla=βラクタマーゼ、太い灰色線=バキュロウイルス相同部位、C3d=補体タンパク質3フラグメントd、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、ori=複製起点、phP=バキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、及びsgp67=バキュロウイルスタンパク質gp67の分泌シグナル。
【図25】Figure 25:sgpM2C3d3融合の主要ヌクレオチド及びアミノ酸配列の詳細。C3d=補体タンパク質3フラグメントd、M2e=M2タンパク質の細胞外部分、及びsgp67=バキュロウイルスタンパク質gp67の分泌シグナル。
【図26】Figure 26:ポリヘドリン遺伝子座のPCR増幅による組換え型AcNPV/sgpM2C3d3バキュロウイルスの分析(プライマーTTTACTGTTTTCGTAACAGTTTTG及びCAACAACGCACAGAATCTAG)。コントロール反応を、親の転移ベクターpACsgpM2C3d3及び野生型AcNPVバキュロウイルスを用いて実施した。M=DNAサイズマーカー。
【図27】Figure 27:回収した上清のウェスタン分析(10%PAGEゲル)により決定した、組換えAcNPV/sgpM2C3d3バキュロウイルス組換え体に感染した昆虫細胞Sf9による分泌M2C3d3の発現。偽感染した細胞又は野生型AcNPVバキュロウイルス感染後に得られた上清をコントロールとして含む。MW=分子量マーカー。
【図28】Figure 28:5 LD50 m.a.X47の致死チャレンジ後のマウス生存の概要。IM2HBcm3×10μgでワクチン接種したマウスを受動免疫したマウス(P)と比べた。
【図29】Figure 29:DNAワクチン構築物の概要。RT=逆転写酵素PCMV=サイトメガロウイルスプロモーターbla=βラクタマーゼnpt=ネオマイシン抵抗性
【図30】Figure 30:ウェスタンブロットで分析したHEKT細胞における発現。最初の抗体(paM2(材料及び方法を参照))を2,000倍に希釈した。結合した抗M2抗体をアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgGで検出した。MW=分子量マーカーM2=昆虫細胞で発現したM2タンパク質1=pCDNA32=pCIM23=pCIM2HBcm4=pCIP3M2HBcm。
【図31A】Figure 31:ELISAで分析したM2タンパク質に対する抗体応答。 A.マイクロタイタープレートを、hb2M又はIPM2hB2Mそれぞれ(材料及び方法を参照)を含有するペリプラズムでコートした。 B.マイクロタイタープレートを、昆虫細胞で発現するM2タンパク質(材料及び方法を参照)でコートした。
【図31B】Figure 31:ELISAで分析したM2タンパク質に対する抗体応答。 A.マイクロタイタープレートを、hb2M又はIPM2hB2Mそれぞれ(材料及び方法を参照)を含有するペリプラズムでコートした。 B.マイクロタイタープレートを、昆虫細胞で発現するM2タンパク質(材料及び方法を参照)でコートした。
【0045】
以下の略語を使用する。
1 LD50:致死量、感染したマウスの半数を殺すために必要なウイルスチャレンジ。
BCIP:5―ブロモー4―クロロ−3―インドリルフォスフェート
bp:塩基対
CIP:仔牛腸フォスファターゼ
C3d:補体タンパク質3フラグメントd
DEA:ジエチルアミン
HAU:赤血球凝集単位
hB2M:ヒトβ2ミクログロブリン
HBc:B型肝炎コアタンパク質
IM2HBcm:HBcと融合したA型インフルエンザ共通M2タンパク質フラグメント
IPM2hB2Mm:hB2Mと融合したA型インフルエンザM2タンパク質フラグメント(A/PR/8/34由来)
IPM2HBc:1番目のメチオニンとM2タンパク質の細胞外部分の開始位置間に4個の付加アミノ酸を含有する、HBcと融合したA型インフルエンザM2タンパク質フラグメント(A/PR/8/34由来)
IPM2HBcm:HBcと融合したA型インフルエンザM2タンパク質フラグメント(A/PR/8/34由来)
IPTG:イソプロピル−β−D−チオガラクトシド
m.a.:適応したマウス
M2C3d3:3コピーのC3dと融合した共通インフルエンザM2フラグメント
cM2C3d3:M2C3d3の細胞質形態
sM2C3d3:M2C3d3の分泌形態
sM2C3d3X:細胞壁に共有結合的に付着したM2C3d3の形態
MES:2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸
MPLA:モノフォスフォリル脂質A
NBT:ニトロブルーテトラゾリウム
OmpA−ss:外膜タンパク質Aシグナル配列
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
TDM:トレハロースジコリノミコレート
phP:バキュロウイルスポリヘドリンプロモーター
sgp67:バキュロウイルスgp67タンパク質分泌シグナル
【0046】
実施例
緒言
本実施例は、A型インフルエンザウイルスM2タンパク質に基づく種々の融合抗原の調製を示す。M2フラグメントは種々の提示性担体のアミノ末端に融合している。
【0047】
材料及び方法
1.菌種及びプラスミド
Escherichia coliでの発現に役立つ全てのプラスミド構築物は、トランスフォーメーションの高い効率のため、菌株MC1061(hsdR mcrB araD139Δ(araABC−leu)7697 ΔlacX74 galU galK rpsL thi (Casadaban and Cohen, 1980)で行った。突然変異誘発後の最初のトランスフォーメーションをWK6λmutS(Δ(lac−proAB)、galE、strA、mutS::Tn10/lacI、ZΔM15、proA;Zell and Fritz, 1987)で行なった。β2ミクログロブリン及び誘導体の発現研究を、E. coli株C3000(Hfr、sup-、thi(λ-))で行った。B型肝炎コア及び誘導体の発現研究を、MC1061〔pcI857〕で実施した。
【0048】
pcI857は、Remaut et al., 1983bに記載される。このプラスミドpcI857K1の誘導体は、Steidler et al., 1994に記載される。
【0049】
プラスミドp714(Parker and Wiley, 1989)はDr. K. Parkerの、またプラスミドpPLcA1(Nassal, 1988)は、Dr. M. Nassalの好意により贈与された。プラスミドpPLc245はRemaut et al., 1983aに記載される。
【0050】
Lactococcus lactisでの構築及び発現のため、MG1363株(Gasson, 1983)を用いた。L. lactis、での構成的発現ベクターpTREX1(Wells and Schofield, 1996)は、Dr. K. Schofieldの好意により贈与された。インターロイキン2の発現のためのプラスミドpL2MIL2はSteidler et al., 1995に記載される。インターロイキン6の発現のための類似のプラスミドが、Steidler et al., 1996に記載される。
【0051】
ベクターpSG5.C3d.YL(Dempsey et al., 1996)は、Dr. Fearonからの寄贈された。
【0052】
バキュロウイルス運搬ベクターpACGP67A(Pharmingen, San Diego, CA, USA)は、gp67バキュロウイルスタンパク質に由来する分泌シグナルに続くポリヘドリンプロモーター及び外来性遺伝子配列挿入のクローニング部位を含有する、バキュロウイルスゲノムの修飾セグメントを含有した。相同組換えによりバキュロウイルスゲノム(又はその修飾体)への組込みを可能にする構築であった。得られた組換え体バキュロウイルスは、gp67分泌シグナルの切断により分泌タンパク質としてポリヘドリンプロモーターから得られる遺伝子を発現することができた。
【0053】
2.ウイルス
インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)は、いくつかの肺継代接種によりマウスに適用した。適応後、ウイルスを卵中で増殖させ(Kendal et al, 1982)、ショ糖勾配で精製した。力価〔(血球凝固単位(HAU)(Hirst, 1941; Kendal et al, 1982))〕及びマウスでの致死率を測定した。m.a.A/PR/8/34のための、1 LD50は、50μl中に存在する10HAUに相当する。
インフルエンザ株X−47(H3N2)(Baez et al., 1980)を異種チャレンジのため実験に用いた。この株は、いくつかの肺継代接種によりマウスに適用した。
【0054】
雌Balb/cマウスは、Charles River Wiga(Sulzfeld, Germany)から購入した。このマウスは、6〜7週齢で用いた。
【0055】
4.抗体
B型肝炎コアタンパク質特異的モノクローナルマウス抗体は、Dr. Sc. H. Claeys(Bloedtransfusiecetrum, Leuven)の好意により寄贈された。
【0056】
ヒトβ2ミクログロブリン特異的モノクローナルマウス抗体をBoehringer(Mannheim, Germany)から購入した。
【0057】
マウスIgG又はマウスIgG(γ鎖特異的)特異的アルカリホスファターゼ結合抗体を、Sigma Chemical Co.(St. Louis, Mo., USA)から購入した。
【0058】
5.増殖培地
E. coliは、他に記載がない場合は、LB培地(1%トリプトン、0.5%イースト抽出物及び0.5%NaCl)中で増殖させた。発現したタンパク質が増殖培地中に分泌されそれを精製すべき場合、0.2%カサミノ酸を補った最少M9培地(Miller, 1972)を実験に用いた。
【0059】
0.5%グルコースを補った(GM17)M17増殖培地(Difco, Laboratories, Detroit, MI, USA)をL. lactisの培養に用いた。エリスロマイシンを、5μg/mlの濃度で用いた(GM17E培地)。L. lactisを、振盪しないで28℃で増殖させた。
【0060】
ハイブリドーマ及びミエローマ細胞を、10%牛胎児血清、0.3mg/mlL−グルタミン、0.4mMピルビン酸ナトリウム、100u/mlペニシリン及び100ng/mlストレプトマイシンを補ったRPMI1640で増殖させた。
【0061】
Sf9昆虫細胞を10%牛胎児血清、100U/mlペニシリン及び100ng/mlストレプトマイシンを補ったTC100で増殖させた。
【0062】
6.アジュバント
最初の免疫化のため、Ribiアジュバント(Ribi Immunochem Research Inc., Hamilton, MT, USA)を用いた。Ribiアジュバントの完全用量は、50μgMPLA(モノフォスフォリル脂質A)、50μgTDM(トレハロースジコリノミコレート)、2%スクアレン及び0.01%Tween80を含有した。
【0063】
第2及び第3の免疫化のため、MPLA(Ribi Immunochem Research Inc., Hamilton, MT, USA)を単独で又は等量のアジュバントペプチド(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo., USA)と一緒に用いた
【0064】
7.DNA操作
制限酵素、DNAポリメラーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ及びT4DNAリガーゼ(Boehringer, Mannheim, Germany; Gibco BRL, Bethesda, Md. USA、又はNew England Biolabs, Beverly, MA, USA)を製造者の薦めに従って用いた。分析的目的のプラスミドDNAは、Birnboim and Doly (1979)に従い抽出した。調製目的のプラスミドDNAは、Kahn et al. (1979)に従い単離した。DNAの制限酵素断片は、Vogelstein and Gillespie (1979)及びStruhl (1985)によるGeneclean 方法で単離した。必要な材料をBio101(La Jolla, CA., USA)から購入した。L. lactisからのプラスミドDNA単離では、細菌の前処理が細胞壁を弱めるために必要であった。細菌ペレットをTE50μl(10mMTris−HCl pH8−1mMEDTA)中に再懸濁した。その後、別のTE50μl、10mg/mlリゾチーム(Boehringer, Mannheim, Germany)及び200u/mlムタノリシン(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo., USA)を添加した。この混合物を37℃で10分間インキュベーションし、それから5分間氷上に置いた。もう一つの処理は、これと同一で、E. coliから単離したプラスミドに用いた。
全てのL. lactisでの構築には、精製したプラスミドDNA(Qiagen, Hilden, Germany)を用いた。DNAフラグメントをQiaex II(Qiagen, Hilden, Germany)を用いてアガロースゲルから精製した。
【0065】
8.PCR増幅
全てのPCR反応は、以下の基本的プロトコールで実施した。各反応で、精製テンプレート約50ng及びセンスとアンチセンスオリゴヌクレオチド50pmol(Life Technologies, Paisley, UK)を用いた。サンプルを94℃まで加熱した後、VentR(登録商標)DNAポリメラーゼ2単位を添加した。アニーリング温度(T)は、プライマーの組成に従って、融解温度(T)の約7℃以下に設定した。これらのPCR増幅で、最高の結果は60℃において得られた。hbc及び融合遺伝子ipm2hbcとim2hbcの合成を、72℃で45秒間実施した。M2タンパク質の細胞外部分(cm2とsm2)をコードする配列の合成は、72℃で20秒間放置した。合計13回の増幅を行った。コントロール反応はオリゴヌクレオチドを含有しなかった。異なる濃度、すなわち2、3及び4mMのMgSO4を用いた。最も厳しい条件下で、有意量の期待したフラグメントを産生するPCR反応を、更なるクローニングに用いた。
【0066】
C3d3フラグメントを、PwoDNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim, Germany)を用いてC3ds及びC3daオリゴヌクレオチドとともにpSG5.C3d.YLから増幅した。アニーリング温度を60℃に設定し、合成を72℃で2分間行った。
【0067】
バキュロウイルスgp67分泌シグナルの増幅を、GP67s及びGP67aプライマーを用いてpACGP67AからTaqポリメラーゼ(Boehringer Mannheim, Germany)によって行った。72℃1分間の合成を、合計25回行った。
【0068】
9.ライゲーション
L. lactisのライゲーションをReady-To-Go(登録商標)T4DNAリガーゼ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)で行った。20℃で1時間インキュベーションした後、混合物をフェノール(Life Technologies, Paisley, UK)及びクロロフォルム/イソアミルアルコール(24/1)で抽出した。DNAをsee−DNA(Amercham International, Buckinghamshire, UK)で沈殿させた。完全に再懸濁したペレットを、エレクトロポレーション(Wells et al., 1993)に用いた。
【0069】
10.タンパク質精製培地
Whatmann International Ltd.(Miadstone, UK)から購入したCF11セルロースを除いた、全てのクロマトフラフィー培地をPharmacia Bioteck(Uppsala, Sweden)から購入した。
【0070】
11.タンパク質ゲル
タンパク質サンプルをLaemmli, 1970に従いSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分析した。電気泳動後、タンパク質を、10%トリクロロ酢酸で固定し、0.05%クマーシーブリリアントブルーR−250で染色した。過剰色素を、脱染液(30%メタノール−7%酢酸)中でゲルをインキュベーションすることによって除去した。ゲルを、乾燥する前に、2枚の浸透性セロファンシート間で、40%エタノール中に浸漬した。
【0071】
12.ウェスタンブロット及びドットブロット
免疫学的性質決定のため、タンパク質を、SDS−PAGE−ゲルからニトロセルロース膜(孔径0.45μm、Schleicher & Schuell, Dassal, Germany)上に、乾燥ブロッティング装置(Plexi-labo, Gent, Belgium)を用いて、電気泳動的に移動させた。フィルターを、2.5%スキムミルク粉末及び0.1%TritonX−100(ブロッキングバッファー)で少なくとも2時間PBS pH7.4(14.5mMリン酸バッファーpH7.4−150mMNaCl)中で遮断した。
【0072】
ブロッキングバッファー中に希釈した、最初の抗体を用いるインキュベーションを室温で30〜60分間行った。過剰量の未結合抗体を、ブロッキングバッファーで3回洗浄して除去した。結合抗体を、適切な特異性のアルカリフォスファターゼ結合抗体で検出した。続いて、フィルターをPBS pH7.4−0.1%TritonX−100で2回洗浄した。
【0073】
第3の洗浄工程は、基質バッファー(100mMTris−HCl pH9.5−100mMNaCl−5mMMgCl2)を用いて行った。フィルターを、165μg/mlニトロブルーテトラゾリウム(NBT)と165μg/ml5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)の基質バッファー中で、明らかなシグナルが現れるまでインキュベートした。ブロットを、最後に、水道水で徹底的に洗浄し、乾燥した。
【0074】
ドットブロット分析を、タンパク質を電気泳動で移動するのではなくニトロセルロース膜を通してサンプルをろ過することを除き、ウェスタンブロットと同様の方法で行った。
【0075】
13.ELISA
すべてのELISAで、0.1%カゼイン溶液を、ブロッキング及び用いた抗体を希釈するために用いた。カゼイン(2.5%)の原液を以下のように調製した:カゼイン粉末6.25gを、37℃で一晩攪拌して300mM NaOH 200mlに溶解させた。それから、2N HClを添加してpHを7.0に調整した。最終容量は、250ml(Nunc bulletin no. 7, December 1989)とした。アジ化ナトリウム(0.02%)を防腐剤として添加した。
【0076】
異なるELISAを、B型肝炎コア又はヒトβ2ミクログロブリン融合タンパク質の濃度測定のために開発した。マイクロタイタープレート(タイプIIF96maxisorp Nunc A/S, Roskilde, Denmark)を、IPM2HBcm又はIPM2hB2Mmを含有する1/2希釈の一連のサンプルを用いて、室温で1.5時間又は4℃で一晩コートした。
【0077】
同一のプレート上に、2μg/mlから始まる一連の1/2希釈の精製HBc又はhB2Mそれぞれを、標準として用いた。全てのインキュベーション工程の間、プレートを、ブロッキング後にプレートを洗浄しなかったことを除き、水道水で2回及びPBS(pH7.4)−0.05%トリトンX−100で一回洗浄した。マイクロタイタープレートを0.1%カゼイン溶液で2時間室温又は4℃で一晩ブロックした。
【0078】
最初の抗体として、マウス抗HBc又はマウス抗hB2Mそれぞれを用いた。結合した抗体を、アルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG(γ鎖特異的)抗体で検出した。抗体溶液のインキュベーションは室温で1.5時間行った。最後にマイクロタイタープレートを、1mg/mlp−ニトロフェニルホスフェートを含有する基質バッファー(10%ジエタノールアミン−0.5mM MgCl2−0.02%NaN3 pH9.8)で1時間インキュベートした。405nmでの吸光度を測定し、波長490nmを標準化に用いた。
【0079】
14.ポリクローナル抗M2の調製
IPM2HBcmで免疫化し、m.a.A/PR/8/34A型インフルエンザウイルス(結果、免疫化を参照)を用いた致死的チャレンジを生き残った全てのマウスを、25mg/ml トリブロモエタノール250μl(腹腔内注射)で麻酔し、血液サンプルを心臓穿刺により採取した。
【0080】
この血清を、下記の通りに単離した。粗血清がウェスタンブロットで高いバックグラウンドを示したので、IgG分画を調製した。粗血清を0.45μmフィルター(Millipore Millex-HV, Millipore, Bedford, MA, USA)を通してろ過し、添加液(PBS−10mMEDTA、pH8)で10倍に希釈した。この混合物を、平衡タンパク質Gセファロース4Fast Flowカラム(φ=1cm、h=8cm)に装填した。結合したIgG分子を、100mMグリシン−HCl(pH2.7)で溶出した。1mlのフラクションを、pHを中性にするため1M Tris−HCl(pH9.5)50μlを含むチューブに回収した。
【0081】
プールしたピークフラクションの抗M2抗体含量は、2.6μg/mlであった。これは、免疫化マウスの血清中の抗M2抗体の検出と比較できる、ELISAで測定した。マウスモノクローナル抗ヒトβ2ミクログロブリン(Cymbus Bioscience, Southampton, UK)を、標準として用いた。
【0082】
15.血清調製
5個の血液サンプルを、全てのマウスから採取した:免疫前血清(a)、最初の免疫後採取した血清(b)、第2の免疫後(c)と第3の免疫後(d)及びチャレンジ後に採取した血清(e)。この血液を37℃で30分間インキュベートした。サンプルを氷上に少なくとも1時間放置し、微量遠心機により16,000g、5分間で2度遠心した。血清を分離した。
【0083】
異なるマウスから得た血清の等量を、抗体産生物の分析のためプールした。
【0084】
16.RT−PCR
A/Ann Arbor/6/60(215 HAU)の尿膜腔液を、65℃で30分間、AMVバッファー(Boehringer, Mannheim, Germany)中でインキュベートした。この混合物の1/20を、逆転写酵素(RT)反応に用いた。このvRNA(ウイルスのゲノムRNA)混合物すなわち50μmolオリゴヌクレオチド(RT―NTRNA7)、10mMDTT及び2.5mMdNTPも添加した。70℃で10分間インキュベーション後、AMV逆転写酵素(Boehringer, Mannheim, Germany)20単位及びRNase阻害剤(Boehringer, Mannheim, Germany)40単位を添加した。RT反応を42℃で1時間行った。この反応混合物の1/3を上記のPCR反応に用いた。
【0085】
17.トランスフェクションン及び発現
HEKT細胞を、2×105細胞/穴で6穴プレートに播種し、24時間増殖させた。pDNA2μgとFuGene TM 6 トランスフェクション試薬(Boehringer, Mannheim, Germany)を細胞に加えた。トランスフェクション48時間後、細胞を、100μlPBS(pH7.4)−5mMEDTA−0.5%Nonidet P40中で溶解させた。可溶性分画を、10,000gでの5分間の遠心分離をして単離した。ペレットを、PBS 100μl(pH7.4)中に再懸濁させた。
【0086】
18.DNAワクチン接種
プラスミドDNAを、1μg/μlの濃度で用いた。3週間おきに3回、筋肉内注射した。血清を、すべての免疫化2週間後に血清を採取し、プールし、M2タンパク質の細胞外部分の抗体反応をELISAで分析した(上記材料及び方法を参照)。
【0087】
19.ELISAII
マイクロタイタープレートを、Sf9昆虫細胞で発現する(Black et al., 1993a, b)1μg/mlのM2でコートした。この方法の残りは、材料及び方法の始めの部分に記載した通りとした。
【0088】
20.プラスミド一覧
20.1 E. coli
pATIPM2m1:A/PR/8/34由来の連続したm2遺伝子
pIPM2hB2Mm2s2:M2の正しいアミノ末端を有する、IPM2hB2Mm発現プラスミド
pPLcIPM2HBc:開始メチオニンとM2eのアミノ末端の間に4個のアミノ酸を有する、IPM2HBc発現プラスミド
pPLcIPM2HBcm:M2eの正しいアミノ末端を有する、IPM2HBcm発現プラスミド。M2配列は、A/PR/8/34由来である
pPLcIM2HBcm:共通M2の正しいアミノ末端を有する、IM2HBcm発現プラスミド
【0089】
20.2 L. lactis
pT1TT:TTFC発現プラスミド
pT1PM2LTT:L. lactisに適合したロイシンコドンを有する、IPM2TT発現。M2eの配列は、A/PR/8/34に由来する。
pT1PM2LTTIL2:mIL2と組み合わせて、適合したロイシンコドンを有する、IPM2TT発現プラスミド
pT1PM2LTTIL6:mIL6と組み合わせて、適合したロイシンコドンを有する、IPM2TT発現プラスミド
pT1HBc:HBc発現プラスミド
pT1HBcIL2:mIL2と組み合わせてHBc発現
pT1HBcIL6:mIL6と組み合わせてHBc発現
pT1PM2HBc:IPM2HBcm発現プラスミド。M2eの配列は、A/PR/8/34に由来する。
pT1PM2HBcIL2:mIL2と組み合わせてIPM2HBcm発現
pT1PM2HBcIL6:mIL6と組み合わせてIPM2HBcm発現
pT1M2HBc:共通M2e配列を有する、IM2HBcm発現プラスミド
pT1M2HBcIL2:mIL2と組み合わせてIM2HBcm発現
pT1M2HBcIL6:mIL6と組み合わせてIM2HBcm発現
pT1PM2LHBc:L. lactisに適合するロイシンコドンを有する、IPM2HBcm発現プラスミド
【0090】
pT1PM2LHBcIL2:mIL2と組み合わせて、適合ロイシンコドンを有する、IPM2HBcm発現
pT1PM2LHBcIL6:mIL6と組み合わせて、適合ロイシンコドンを有する、IPM2HBc発現プラスミド
pT1M2LHBc:L. lactisに適合するロイシンコドンを有する、IM2HBcm発現
pT1M2LHBcIL2:mIL2と組み合わせて、適合ロイシンコドンを有する、IM2HBcm発現
pT1M2LHBcIL6:mIL6と組み合わせて、適合ロイシンコドンを有する、IM2HBcm発現
pT1cM2L:L. lactisに適合するロイシンコドンを有する、M2eの細胞質形態の発現プラスミド
pT1cM2LC3d:適合ロイシンコドンを有するcM2LC3dの発現
pT1cM2LC3d3:適合ロイシンコドンを有する、(3個の連続C3dドメインを有する)cM2LC3d3発現
pT1sM2LX:L. lactisに適合するロイシンコドンを有する、M2eの分泌された及び固着された形態の発現プラスミド
pT1sM2LC3d:適合ロイシンコドンを有する、sM2LC3d発現
pT1sM2LC3d3:適合ロイシンコドンを有する、(3個の連続C3dドメインを有する)sM2LC3d3発現
【0091】
20.3
pUCM2:A/Ann Arbor/6/60由来の連続したm2遺伝子を含有するプラスミド
pCDNA3:真核生物の遺伝子発現の基本的ベクター
pCIM2:A/Ann Arbor/6/60由来の連続したm2遺伝子を保有しDNAワクチン接種に用いるプラスミド。
pCIM2HBcm:im2hbcmを有する、DNAワクチン接種に用いるプラスミド
pCIP3M2HBcm:DNAワクチン接種に用いるプラスミド、3倍のB型肝炎コアに遺伝的に融合したM2タンパク質の細胞外ドメインを含む。融合タンパク質であるIP3M2HBcmは、M2eの正しいアミノ末端から始まる。M2の配列はA/PR/8/34に由来する。
【0092】
実験の部
1.pATIPM2mの構築
A型インフルエンザウイルスのRNAセグメント7、すなわちA/PR/8/34(H1N1)を、Min Jou et al., 1980における、RNAセグメント4に対して記載された手法によりクローン化した。得られたプラスミドは、pATIPMAと名付けられ、市販のものを入手することができる(LMBP catalogue 1992, no. 1774)。
【0093】
M2タンパク質のmRNAは、RNAセグメント7の同一線上の転写物(collinear transcript)ではない。実際、689ヌクレオチドのイントロンを除去しなければならなかった(Lamb et al., 1981)。
【0094】
プラスミドpATIPMAにおいて、StuIは、第2エキソンの最初のヌクレオチドの後ろを切断する(Figure 1a参照)。このヌクレオチドを、第1エキソンをコードするために用いる合成オリゴヌクレオチドに包含される。成熟M2タンパク質のアミノ末端をコードする合成第1エキソンを、一本鎖GATCが5′末端に突出した形で含むように設計した。これにより、前述のベクターpATIPMAのBamHI部位に連結し、そして本来の第1エキソンを置き換えることができた。
【0095】
さらに、使用コドンは、E.coli内で発現するように最適化された。
【0096】
次に、部位特異的突然変異誘発(Stanssens et al., 1989)により、M2タンパク質の細胞外部分と膜固着部位の接合点に、BclI部位を導入した(Figure 26参照)。細胞外部分のアミノ酸配列は、変更されていない。得られたプラスミドpATIPM2m1は、A/PR/8/34の、連続したm2遺伝子を持っている。
【0097】
2.IPM2hB2Mmの構築
Parker and Wiley(1989)は、プラスミドp714を用いてヒトβ2ミクログロブリンをE.coliの細胞周辺質で発現させた。このプラスミドは、E.coliの外部膜タンパク質Aのシグナル配列(OmpA−ss)に先行されるβ2ミクログロブリンをコードする部位を含んでいる(Figure 2a参照)。OmpAシグナル配列は、この配列が融合したタンパク質の、細胞周辺質への輸送に必要とされている。輸送の後、シグナル配列は切除される。プラスミドp714上では、ヒトβ2ミクログロブリンは、リポタンパク質(lpp)とlacUV5プロモーターに制御されている。中期対数増殖期の培養細胞へのIPTG1mMの添加によりβ2ミクログロブリンの生産が誘導される。
【0098】
pATIPM2m1からBamHI−BclIフラグメントとして単離した、M2タンパク質の細胞外部分をコードする配列を、ompAのシグナル配列とヒトβ2ミクログロブリンの間に挿入した(詳しくは Figure 2aを参照)。構築のために、取り除かなければならない9個の付加的なヌクレオチドが、ompaシグナル配列とm2フラグメントの間にあった。これを、Nakamaye and Eckstein, 1986にしたがって、ルーピングアウト突然変異誘発により行なった。結果として、プラスミドpIPM2hB2Mm2s2を得た。
【0099】
3.IPM2hB2Mmの局在化
新しく培養した、p714またはpIPM2hB2Mm2s2を含むC3000のプレカルチャーをアンピシリンを含むLB中で1/100に希釈した。上述のとおり、hb2m遺伝子およびipm2hb2mm遺伝子はlacUV5の制御下にある。カルチャーの密度が、およそ5.5×108菌体数/mlに達した時にそれらを二つに分け、それぞれのカルチャーのうち、片方をIPTG1mMで誘導した。3時間の誘導の後、菌体を回収し、分別した。菌体の細胞周辺腔を、浸透圧ショック法(Neu and Heppel, 1965)で単離した。残りの菌体を音波処理(Vibra cell, Sonics & Materials Inc., Danbury, Conn., USA)し、16,000gで10分間遠心分離して、細胞質を単離した。その異なるサンプルを、SDS 15% PAGEゲルで解析した。シグナル配列を含んだままの前駆体は、菌体と結合していっしょに残っていたのに対し、ヒトB2Mおよび融合タンパク質IPM2hB2Mmは、細胞周辺腔に局在化していた。モデル120Aオンラインフェニルチオヒダントインアミノ酸分析装置と組み合わせたモデル470Aガス相シークエンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA., USA)での自動エドマン分解による、成熟IPM2hB2Mmのアミノ末端の決定(Dr. J. Bandekerckhoveの好意による)は、OmpAシグナル配列が、正確に切除されていることを証明した。
【0100】
4.IPM2hB2Mmの精製
融合タンパク質IPM2hB2Mmを、E.coliの細胞周辺腔において効率的に発現することができた。浸透圧ショック法は、量が多いときには特に決定的な方法であるにもかかわらず、Steidler et al.(1994)は以前に、Kilタンパク質の制御された発現を基にした、細胞周辺腔タンパク質を増殖培地中に放出させるための洗練された方法を記載している。
【0101】
Kil遺伝子は、互換性プラスミド(compatible plasmid)上に、λファージの左側のプロモーターであり、正確に制御されたPプロモーターの制御下に存在する(Remaut et al, 1981)。プラスミドpcI857K1もまた、Pプロモーターの温度感受性リプレッサーcI857を備えている。融合タンパク質IPM2hB2Mmは、1mMのIPTGでの誘導で、およびKilを誘導するためにカルチャーを28℃から42℃に切り替える産生期(production phase)後期に合成される。
【0102】
上述した標準的誘導法を用いて発酵(BioFlo IV fermentor, New Brunswick Scientific Co., Edison, N.J., USA)を行った。カルチャーを、contifuge 17RS(Heraeus Instruments, Hanau, Germany)で、11,000gで遠心分離して、増殖培地を分離した。増殖培地の塩化ナトリウム濃度を300mMに調整して、緩衝剤MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)20mM、pH6.5で処理した。この溶液を、DEAE Sephacelカラム(φ=5cm、h=6.5cm)に、MES20mMでpH6.5−NaCl300mMでの平衡状態で充填した。これらの条件下では、IPM2hB2Mmは、基剤に結合しなかった。貫流の硫酸アンモニウム濃度を、pH7の3.8M(NH42SO4溶液で0.8Mにした。混合液を、トリス−HCl 20mM、pH 7.5、0.8M (NH42SO4の緩衝状態で(Phenyl Sepharoseカラム(φ=5cm、h=17cm)に充填した。硫酸アンモニウム濃度勾配を、0.8Mから始めて0まで減少させたことでは、結合融合タンパクは遊離されなかった。これは、カラムをpH勾配を、20mMトリス−HClpH7.5から、5mM酢酸ナトリウムpH5.5で溶出することにより達成した。ピークフラクション(peak fractions)を回収し、ジメチルアミン(DEA)20mM、pH8.5中に10倍希釈した。
【0103】
完全な混合液を、20mMのDEA(pH8.5)で緩衝状態にしたSepharose Qカラム(φ=0.8cm、h=2.3cm)に充填した。該タンパク質を0〜1Mの塩勾配でカラムから溶出した。ピークフラクションを回収し、Sephacryl S−100ゲル分離カラム(φ=1.5cm、h=47cm)に充填した。期待分子量約15kDaの唯一のピークが観察された。この精製されたIPM2hB2Mmを、M2タンパク質に対するモノクローナル抗体を産出するハイブリドーマを作る目的でマウスを免疫にするために用いた。
【0104】
5.M2タンパク質に対するモノクローナル抗体の産出
Balb/cマウスを、精製したIPM2hB2Mmで3回免疫した。最初の注射に際しては、完全量のRibiアジュバントを使用した。第二回目および第三回目の免疫化は、50μgのMPLA存在下で行われた。注射は、3週間の間隔を空けて行われた。最後の免疫化から3日後に、標準的なプロトコル(Kohler and Milstein, 1975)を用いて脾臓細胞を単離し、ミエローマ細胞SP2/0−AG14と融合した。異なる免役グロブリン産生細胞クローンからの上清について、ELISA法およびウェスタンブロット法により、もう一方の融合タンパク質IPM2HBcm(後述)に対する反応性の試験をした。偽のポジティブクローンを排除するため、B型肝炎コアタンパク質を単体でコントロールとして用いた。抗体のアイソタイプを決定した(Isotrip, Boehringer Mannheim, Germany)。M2タンパク質の細胞外部分を認識する2種類の異なった免役グロブリンサブタイプIgMおよびIgG2aが得られた。特に、IgG2a抗体を、さらなる実験で用いた。
【0105】
6.HBcおよびIPM2HBcmの発現
指数増殖カルチャーを28℃から42℃へシフトさせることにより、Pプロモーターに制御されているタンパク質の発現を行った(Remaut et al., 1981)。pPLc245(コントロール)、pPLcA1(hbc遺伝子をもつ)またはpPLcIPM2HBcm(融合タンパク質ipm2hbcを含む)をそれぞれ含むMC1061〔pcI857〕の飽和プレカルチャーを、LB培地(カナマイシン50μg/mlおよびアンピシリン100μg/ml)中に1/100に希釈して、振とうさせながら28℃で約4時間培養した。培養が4.5×108から5.5×108菌個数/mlの密度に達した時点で、それらを分けて、半分を28℃で4時間インキュベートし、他の半分を42℃に切り替えた。菌体を、遠心分離によって濃縮した(微量遠心分離器で16,000g、2分間)。
【0106】
培地を取り除き、菌体をTEバッファー(10mM トリス - HCl - 1mM EDTA, pH 7.6)に再懸濁した。音波処理(Vibra cell, Sonics & Materials Inc., Danbury, Conn., USA)により菌体を開裂して、菌体の破片を超小型遠心分離器中で16,000g、10分間、沈殿させた。上清を単離し、ペレットをTEバッファーに再懸濁した。サンプルはSDS 12.5% PAGEゲルで、ウェスタンブロットおよびドットブロットで解析した。
【0107】
7.IPM2HBcmの大規模産生
菌株MC1061〔pcI857、pPLcIPM2HBcm〕をBioFlo IV 発酵槽(New Brunswick Scientific Co., Edison, N.J., USA)で培養した。カルチャーの密度が5.5×108個/mlに達した時点で温度を42℃に上げた。3時間の誘導の後、カルチャーをcontifuge 17RS(Heraeus Instruments, Hanau, Germany)中で、11,000gで遠心分離した。菌体を回収し、ペレット状にした菌体の重さ(g)の2倍に相当する体積(ml)のバッファー(50mM トリス − HCl pH8 − 150mM NaCl−5%グリセロールおよび25mlに対してプロテアーゼ阻害カクテル錠1個(CompleteTM; Boehringer, Mannheim, Germany))に再懸濁した。この懸濁液を、リゾチーム1mg/ml(その都度25mMトリス−HCl、pH8に溶解した)で、氷上で1時間半処理した。続いて、菌体を25mM、pH8のEDTAの存在下で、0.2%Triton−X−100で溶解した。氷上で30分間インキュベートした後、溶解物をSorvall SS−34ローター(Du Pont Company, Wilmington, DE, USA)で48,000g,1時間遠心分離した。上清を取り除き、IPM2HBcmの精製に用いた。
【0108】
8.IPM2HBcmによる免役化
アジュバントの存在下において、精製したIPM2HBcmをBalb/cマウスの腹腔内に3回注射した。コントロールマウスは、pH7.4のPBSバッファーおよびアジュバントのみを受けた。最初の免役化では、用量の半分のRibiアジュバントを用いた。第2および第3回目の注射では、MPLA25μgおよびMDP25μgを用いた。
【0109】
マウスに軽くエーテル麻酔を施した後、BPSバッファー(いかなるアジュバントもなしに、IPM2HBcmか、あるいはIM2HBcmを10μg含む)中の抗原溶液50μlを鼻孔に入れることにより、鼻腔内的に3回、免疫化した。
【0110】
9.L.lactisでの発現
プラスミドpT1HBc、pT1PM2HBcまたはpT1M2HBcをそれぞれ含む、または、mIL2の派生体(pT1HBcIL2、pT1PM2HBcIL2およびpT1M2HBcIL2)もしくは、mIL6の派生物(pT1HBcIL6、pT1PM2HBcIL6およびpT1M2HBcIL6)をそれぞれ含む、L.lactisの菌株MG1363からの単一コロニーを、各々GM17E 10mlに植え付けた。MG1363〔pTREX1〕を、コントロールとして用いた。菌体を、28℃で16時間培養した。細胞を、2,000g、20分間(Sorvall 11 RT6000 D)遠心分離して回収した。増殖培地を分離して、菌体を、TE250μlに再懸濁した。再懸濁の後、リゾチーム10mg/mlを加えた、追加のTE250μlおよびムタノリシン(mutanolysin)200u/mlを加えた。この混合液を、37℃で10分間インキュベートして、氷上に5分間置いた。次に、Laemmliサンプルバッファー(トリス-HCl pH 6.8 100ml- SDS 5% - β-メルカプトエタノール 1.2M − ブロモフェノールブルー 0.008% - グリセロール 16%)を加え、そしてサンプルを5分間、煮沸した。もとの培養液量1mlと等量である、109個体の菌体をSDS12.5%PAGEゲルで解析した。カルチャー上清中におけるmIL2またはmIL6の生産量を、CTLL2細胞(mIL2, Gillis et al., 1978)の増殖をもとにした、あるいはB細胞ハイブリドーマすなわち7TD1(mIL6, Van Snick et al., 1986)の増殖をもとにしたバイオアッセイで評価した。
【0111】
10.受動免疫
IM2HBcm粒子の精製製剤を生後7週間のメスBalb/cマウスの免疫化に用いた。合計40個体のマウスを、10pgのIM2HBcmで免疫化した。コントロール集団の40個体のマウスは、バッファーのみを受けた。適当なアジュバントと組み合わせた全3回の注射は、3週間の間隔をおいて行った(材料および方法参照)。3度目の免疫化の2週間後、それぞれの群の28個体から採血し、血清を単離した(材料および方法参照)。この血清を、感染24時間前に、未投与のマウスに腹腔内投与した。この方法は、受動免疫と呼ばれている。12個体のマウスが、IM2HBcm免疫化マウスからの血清800μlを受け、他の12個体のマウスが、コントロール集団からの血清を受けた。これらの24個体のマウスおよび残りの免疫化された24個体のマウスを、3度目の免疫化から3週間後に、5 LD50m.a.X47でチャレンジした。エーテル麻酔後に、ウイルスを全量50μlで鼻腔内投与した。1日おきに直腸温度および体重を測定することにより、病状を追跡した。
【0112】
11.DNAワクチン接種のための構造体(Figure 29)
異種のDNAワクチン接種ベクターを作るために、サイトメガロウイルスプロモーターを持つ哺乳類発現ベクターpCDNA3(Invitrogen, Leek, The Netherlands)を用いた。
【0113】
A型インフルエンザウイルス A/Ann Arbor/6/60から、RT−PCRにより、とぎれのないm2遺伝子を単離した(材料および方法参照)。増幅フラグメントを、BglIIおよびXbaIで切断して、BglIIおよびXbaIで開環したpUC19に挿入した。このプラスミドを、pUCM2とした。m2遺伝子の塩基配列を決定して、該遺伝子の寒冷適合形態(cold adapted form)との一致を示した。m2遺伝子を、pUCM2から321bpのEcoRI−XbaIフラグメントとして単離し、EcoRIとXbaIで開環したpCDNA3に挿入した。これが、結果としてプラスミドpCIM2となった。
【0114】
2つの融合遺伝子、ip3m2hbcmおよびim2hbcmもまた、pCDNA3に挿入した。im2hbcm遺伝子をpPLcIM2HBcmからPCRで増幅した。このフラグメントをSpeIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化した。この630bpのフラグメントを、EcoRVとXbaIで開環したpCDNA3に挿入した。得られたプラスミドを、pCIM2HBcmとした。
【0115】
pPLcIPM2HBcの構築の間に(Figure 3a参照)、M2eフラグメントが2つまたは3つ挿入されたプラスミドも得られた。これらのプラスミドを、それぞれpPLcIP2M2HBcおよびpPLcIP3M2HBcとした。ip3m2hbcm遺伝子を、pPLcIP3M2HBcからPCRで増幅した。このフラグメントを、SpeIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化して、EcoRVとXbaIで開環したpCDNA3に挿入した。得られたプラスミドをpCIP3M2HBcmとした。
【0116】
プラスミドDNAをEndoFree Plasmid Giga kit(Qiagen, Hilden, Germany)で単離した。分光光度計による解析により、pDNAの濃度を測定した。
【0117】
12.HEKT細胞内での発現
プラスミドpCDNA3、pCIM2、pCIM2HBcmおよびpCIP3M2HBcmをHEKT細胞に形質移入した(材料および方法参照)。感染から48時間後に、細胞を溶解し、ウェスタンブロッティング法で解析した。
【0118】
13.血清の解析
毎回の免疫化から2週間後に、血清サンプルを採取し、ELISA法で解析した。Figure 31のパネルAにおいて、HBc融合タンパク質を発現させることができる2つのベクターを、コントロールベクターと比較している。ELISA法は、材料および方法に記載されたとおりに実施した。
【0119】
結果
1.IPM2HBcmの構築
プラスミドpPLcA1(Figure 3a参照)は、バクテリオファージλ(Dr. Nassalから寄贈)のPプロモーターの制御下にある肝炎bコア(hepatitis b core:hbc)遺伝子を含んでいる。pPLcA1から単離した346bpのNcoI−XbaIHBcフラグメントは、pMa58の誘導体である、NcoIとXbaIで開環したpMa581に挿入した。このプラスミドをpMaHBcとした。我々は、部位特異的突然変異誘発によりBamHI部位を、肝炎bコア遺伝子の5′末端の、開始コドンの直後に、HBcの読み取りフレームの中に正確に位置付けて、導入した(詳細はFigure 3aおよびbを参照)。得られたプラスミドをpMaHBcmとした。M2タンパク質の細胞外部分をコードする情報をpATIPM2m1からもたらされた72bpのBamHI−BclIフラグメントとして、BamHIで開環したpMaHBcmに挿入してクローン化し、ベクターpIPM2HBcを得た。次に、発現ベクターpPLcA1中のhbc遺伝子を418bpのNcoI−XbaI m2hbcフラグメントと置換して、pPLcIPM2HBcを作成した。M2タンパク質の、最初のメチオニンと細胞外部分が始まる部分の間に、余分な4つのアミノ酸があり、構築のためには、これを取り除かなければならなかった。これは、ルーピングアウト突然変異誘発(Deng and Nickolov, 1992)により行った。得られたプラスミドをpPLcIPM2HBcmと名づけた(Figure 3aおよびc参照)。
【0120】
2.融合タンパク質の発現
プラスミドpPLc245(コントロール)、pPLcA1(hbc遺伝子)およびpPLcIPM2HBcm(ipm2hbc遺伝子)を、MC1061〔pcI857〕に形質転換した。培養および誘導の後、細菌を超音波処理して溶解した。溶解産物を遠心分離して、上清の半分をSDS 12.5% PAGEゲルにのせた(Figure 4参照)。同じフラクションをウェスタンブロットでも解析した。2つの異なるモノクローナル抗体を使用した:B型肝炎コアタンパク質に特異的な抗体、およびM2タンパク質の細胞外部分に対するモノクローナル抗体(IgG2a)である。
【0121】
B型肝炎コアに対するモノクローナル抗体は、1つはB型肝炎コアタンパク質に相当し、もう1つは融合タンパク質に相当している、2つの異なるバンドを明らかにした(Figure 5A参照)。後者のタンパク質は移動度が低く、M2タンパク質の細胞外ドメインの挿入に相当している。M2フラグメントの存在は、M2タンパク質の細胞外部分に対する抗体の特異性によって確かめられた(Figure 5B参照)。
【0122】
IPM2HBcmのN末端アミノ酸配列は、モデル120Aオンラインフェニルチオヒダントインアミノ酸解析機に組み合わされたモデル470ガス相シークエンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA., USA)での自動エドマン分解により決定した。この解析により、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質のアミノ末端配列と全く同じ、N末端配列Ser−Leu−Leuが明らかになった。最初のアミノ酸、メチオニンをE.coli中で除去した。したがって、融合タンパク質のアミノ末端は、野生型M2タンパク質のそれと一致する(Table 1;Lamb et al., 1985)。
B型肝炎コアはE.coli中で発現したときにも、B型肝炎感染患者の血液に蔓延するウイルス性のコア粒子と区別できない粒子と自然に結合する。Clarke and co-workers(1987)は、B型肝炎コアタンパク質のアミノ末端に挿入したペプチドが、粒子の表面で検出することができることを示した。
【0123】
電子顕微鏡写真(Dr. G. Engler)は、IPM2HBcm融合タンパク質は、同様の粒子を形成することができることを示した。M2タンパク質の細胞外部分の挿入が、このタンパク質の表面局在化につながるのか否かを研究するため、HBc又はIPM2HBcmを含む溶解性フラクションをドットブロットでニトロセルロース膜上に置いた。ドットブロットを、HBcに対する、又はM2に対するモノクローナル抗体で処理した。Figure 7は、M2タンパク質に対する抗体にさらされたときの、溶解性pPLcIPM2HBcmフラクションにおけるシグナルを、明確に示している(パネルB)。溶解性フラクションが、ニトロセルロース膜上に、株の状態であったことから、我々は、エピトープが、B型肝炎コア粒子の表面に位置すると結論する。
【0124】
3.IPM2HBcmの精製
菌体の溶解物を、材料および方法のとおりに調製した。トリス−HCl(pH8)、およびNaClの濃度を、それぞれ20mMおよび50mMに調整した。この混合液を20mMトリス−HCl(pH8)−50mMNaClで平衡状態としたDEAE Sepharoseカラム(φ=2.5cm,h=5.5cm)に充填した。融合タンパクは、カラムには保持されていなかった。貫流のため、最終濃度が1.2Mになるように3.8Mの(NH42SO4、pH7を加えた。この混合液を、冷室で攪拌しながら16時間放置した。沈殿物をCF11セルロースカラム(φ=2.5cm,h=3.5cm)で除去した。該カラムを、PBS(pH7.4)で溶出した。約50mlの溶出液を、Centiprep30(Amicon Corporation, Danvers, Ill., USA)中で5mlに濃縮し、PBS、pH7.4で平衡状態にしたSephacryl S−300カラム(φ=2.5cm,h=91cm)に充填した。ピークフラクションを集めておき、IPM2HBcmの濃度を、ELISA法により測定した。LPS含有量を測定した(LAL Coatest(登録商標)Endotoxin purchased from Endosafe Inc., Charlston, SC., USA)が、免疫化を妨げないためには十分に少ない量であった(5〜9ng/50μg IPM2HBcm)。
【0125】
4.免疫化
精製したIPM2HBcm粒子を、生後7週間のメスのBalb/cマウスの免疫化に用いた。12個体のマウスの、4つの異なるグループを評価した。第1のグループはIPM2HBcmを50μg、第2は10μg、第3は5μgを受け、第4はコントロールグループであり、アジュバントが入ったバッファーのみを受けた。適量のアジュバントと共に、全部で3回の注射がなされた。注射は、3週間の間隔で施された。最後の注射から3週間後に、5 LD50m.a.A/PR/8/34でマウスをチャレンジした。エーテル麻酔後、全量50μgのウイルスを鼻腔投与した。1日おきに直腸温度および体重を測定することにより、病状を追跡した。
【0126】
IPM2HBcmで免疫化したすべてのマウスが、後述のインフルエンザチャレンジに対して有意な防御を示した。コントロールグループが11個体のうち2個体だけだったのに対して、投与量に依存して12個体中9〜11個体のマウスがインフルエンザ感染を生き延びた(Figure 8B参照)。
【0127】
5.血清サンプルの解析
初回の注射の1日前(採血a)および毎回の注射から2週間後(採血b、cおよびd)に、血液サンプルを採取した。チャレンジの3週間後に、マウスがインフルエンザ感染から十分回復したときに、最後の血液サンプル(e)を採取した。M2タンパク質の細胞外部分に対するIgG抗体を同定するために、血清をELISA法(材料および方法参照)で解析した。そのために、我々は、別の融合タンパクであるIPM2hB2Mmを用いた。どちらも未精製培養上清として、マイクロタイタープレートの半分をヒトβミクログロブリンでコートし、もう半分を融合タンパクIPM2hB2Mmでコートした。用いたIPM2hB2Mmの濃度は、1μg/mlであった。両方の条件設定において、同じ濃度の全タンパク質を用いた。それゆえ、hB2Mを発現している細菌の培養上清のhB2M含量を、精製されたhB2M(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo., USA)を加えて、1μg/mlに調整しなければならなかった。1/50から始まる、異なった種類の希釈系(1/3)を、hB2MとIPM2hB2Mmでコートしたウェル上に載せた。さらにELISA法を、材料および方法に記載したとおりに行った。
【0128】
M2タンパク質の細胞外部分への特異的反応性に対する値を得るため、その希釈におけるhB2Mの吸光度を、対応する希釈率のIPM2hB2Mmの吸光度から減算した。Figure 9は、3回のワクチン注射を受けたマウスにおける、M2タンパク質の細胞外部分に対する強い抗体反応を示している。血清中の力価は、チャレンジの後にさらに増加した。
【0129】
6.IM2HBcmの構築
A型インフルエンザウイルスに対する、共通のワクチンを作ることが、本発明の目的である。上記のワクチン接種の研究において、我々は、もとのM2配列をもたらしたインフルエンザウイルスA/PR/8/34に対する防御を示した(相同防御)。このウイルスからのM2タンパク質の細胞外部分は、現在までに配列決定された他のほとんどのウイルスと、ただ1つのアミノ酸において異なる(Table 1参照)。したがって、構築は、20位のグリシンをアスパラギン酸に変更することで行った。
【0130】
そうするために、我々はpPLcIPM2HBcm、pMaIPM2HBc2の構築(Figure 3a参照)における媒介ベクターを用いた。プラスミドpMaIPM2HBc2はまだ、M2タンパク質の最初の完成コドンから始まる、突然変異m2(12個の余分なヌクレオチドの欠失)フラグメントを含んでいない。それゆえ、このフラグメントをSgrAIとEcoRIで切断することにより、pPLcIPM2HBcmから単離した。この499bpのSgrAI−EcoRIフラグメントをSgrAIとEcoRIで開環したベクターpMaIPM2HBc2(pMaIPM2HBc3の構築で得られた)(Figure 10参照)にクローン化した。
【0131】
Deng and Nickoloff(1992)による部位特異的突然変異誘発によって、M2タンパク質の細胞外部分を、より共通のM2配列(Gly20→Asp)に変えた。新しいプラスミドをpIM2HBcmとした。塩基配列は、モデル373Aシークエンサー(Applied Biosystems Forester city, CA., USA)で決定され、望まれた突然変異を含むことが示された。突然変異M2フラグメントを、499bpのSgrAI−EcoRIフラグメントとしてpIM2HBcmから単離して、SgrAIとEcoRIで開環した発現ベクターpPLcIPM2HBcmに再導入して、pPLcIM2HBcmを作成した。
【0132】
7.IM2HBcmの発現
それぞれpPLc245、pPLcA1、pPLcIPM2HBcmまたはpPLcIM2HBcmを含む菌株MC1061〔pcI857〕を実験の部に記載したとおりに培養した。菌体を回収し、超音波処理して開裂した。溶解性フラクションを単離して、B型肝炎コアタンパク質またはもたらされた融合タンパク質の濃度を、ELISA法により測定した。HBc5μgまたはI(P)M2HBcmを含む溶解性フラクションをSDS 12.5% PAGEゲルで解析した(Figure 11参照)。同じフラクションをウェスタンブロットによっても解析した(Figure 12参照)。問題のタンパク質は、B型肝炎コアタンパク質に対する抗体、またはM2タンパク質の細胞外部分に特異的なモノクローナル抗体で検出した。新規な融合タンパク質IM2HBcmは、IPM2HBcmと同じ効率で発現していると結論することができる。さらに、M2タンパク質の、細胞外部分におけるアミノ酸変化(Gly20→Asp)は、モノクローナル抗M2抗体の結合に影響を及ぼしていなかった。
【0133】
8.異種チャレンジに対する免疫化
ポイント4に記載したのと類似の方法を、インフルエンザでの異種チャレンジに対するマウスの防御に対する、IPM2HBcmおよびIM2HBcmの効果をテストするために用いた。10μgのIPM2HBcmまたはIM2HBcm(IPM2HBcmと同じ方法で精製した)を、免疫化のために用いた。マウスを30 HAU X−47でチャレンジした。
【0134】
免疫化されたすべてのマウスが、異種チャレンジに対して有意な程度の防御を示した。コントロールグループにおいては、11個体のうち2個体のみであったのに対して、12個体のうち8個体(IPM2HBcmの場合、p<0.05)または12個体(IM2HBcmの場合、p<0.0001)が、インフルエンザ感染を生き延びた(Figure 8C)。
【0135】
鼻腔内投与の効果をテストするため、同じ方法がとられた、ここでは腹腔内注射のかわりに、抗体を鼻腔内投与した。この場合においても、防御は明らかであった:コントロールグループにおいては、11個体のうち2個体のみだったのに対して、12個体のうち12個体(IPM2HBcmの場合、p<0.0001)または11個体(IM2HBcmの場合、p<0.001)が、インフルエンザ感染を生き延びた(Figure 8D)。
【0136】
9.L.lactisにおける、M2−HBc融合タンパク質の発現のためのベクターの構築
B型肝炎コアタンパク質と2つの融合タンパクIPM2HBcmおよびIM2HBcmを、Lactcoccus lactisで発現させるために、プラスミドpTREX1(Wells and Schofield, 1996)を用いた。このプラスミドは、E.coliバクテリオファージT7遺伝子10(Wells and Shofield)の転写開始部位に続く、本格的なL.lactisの染色体プロモーターP1を有する。転写終結因子は、T7RNAポリメラーゼからもたらされた。プラスミドpTREX1はまた、エリスロマイシン抵抗性の2つの遺伝子も有する。
【0137】
発現プラスミドpTREX1をSphIで3′CATG突出を残して(クレノウDNAポリメラーゼで除去した)切断した。除去したヌクレオチドは、他の遺伝子のPCR増幅のためのセンスリンカーに含めた。直線化されたベクターをBamHIで切断して、CIP(仔牛腸フォスファターゼ, Boehringer, Mannheim, Germany)で処理した。
【0138】
遺伝子hbc、ipm2hbcおよびim2hbcをPCRで増幅した(材料および方法参照)。アンチセンスリンカー(HBca)は、すべての増幅において同じであり、終始コドンの後ろにSpeIおよびBclI部位を配置した。ipm2hbcおよびim2hbcの増幅のためには、同じセンスオリゴヌクレオチド(M2s)を用いることができる、なぜならM2タンパク質の細胞外部分におけるGly→Aspの突然変異は、はるか下流に位置するからである。
【0139】
pPLcA1からのhbcの増幅はベクターがScaIで直線化された後にだけ可能である。さらなるクローニングには、最も厳しい条件で十分な量のフラグメントを産出する増幅反応を用いた。増幅されたフラグメントhbc、ipm2hbcまたはim2hbcをBclIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化して、SphIおよびBamHIで開環したpTREX1に挿入した(Figure 14参照)。新しいプラスミドをそれぞれ、pT1HBc、pT1PM2HBc(ここで、M2タンパク質の細胞外部分は、ウイルスA/PR/8/34からもたらされた)およびpT1M2HBc(ここで、M2タンパク質の細胞外部分の配列は、現在までに配列決定された、ほぼすべてのヒトA型インフルエンザウイルスに存在する型に相当する)とした。挿入されたフラグメントの塩基配列は、373A型シークエンサー(Applied Biosystems, Forester city, CA., USA)で決定され、正しいことが示された。
【0140】
Lactococcus lactisを、改善されたワクチン輸送媒体として用いる観点から、2種のマウスサイトカイン、インターロイキン2(mIL2)およびインターロイキン6(mIL6)を、同じオペロンの第2シストロンとして、抗体として挿入した。そのような方法で、我々は、分泌されたマウスンターロイキン2または6と一緒に、抗体(例えばIM2HBcm)を発現する細菌を得ることができた。増殖培地の中においてインターロイキンの分泌が得られるように、それらをlactococcusのusp45分泌シグナルペプチドにはめ込み融合させた(van Asseldonk et al., 1990)。プラスミドpT1HBc、pT1PM2HBcおよびpT1M2HBcをSpeIで切断し、CIPで処理した。マウスンターロイキン2遺伝子を、プラスミドpL2MIL2(Steidler et al., 1995)から、572bpのXbaI−SpeIフラグメントとして単離した。このフラグメントを、SpeIで開環したpT1HBc、pT1PM2HBcおよびpT1M2HBcに挿入して、それぞれpT1HBcIL2、pT1PM2HBcIL2およびpT1M2HBcIL2とした。同様の方法で、マウスンターロイキン6をpL2MIL6(Steidler et al., 1996)から687bpのXbaI−SpeIフラグメントとして単離して、SpeIで開環したpT1HBc、pT1PM2HBcおよびpT1M2HBcに挿入して、それぞれpT1HBcIL6、pT1PM2HBcIL6およびpT1M2HBcIL6を作成した。
【0141】
10.L.lactisにおけるHBcおよびM2HBcの発現
抗原のみ(pT1HBc、pT1PM2HBcおよびpT1M2HBc)またはマウスインターロイキン2(pT1HBcIL2、pT1PM2HBcIL2およびpT1M2HBcIL2)またはマウスインターロイキン6(pT1HBcIL6、pT1PM2HBcIL6およびpT1M2HBcIL6)と組み合わせた発現のためのプラスミドを含むLactococcus lactis菌株MG1363(Gasson, 1983)を材料および方法に記載したとおりに培養した。MG1363〔pTREX1〕をコントロールとして用いた。
【0142】
109個体相当の菌体をSDS 12.5% PAGEで解析した。B型肝炎コアおよびM2−HBc融合タンパク質の発現を、材料および方法に記載したとおりに行ったウェスタン免疫ブロッティング法で解析した(Figure 15参照)。MG1363〔pT1M2HBcIL6〕におけるIM2HBcの発現は、他の構築物におけるほどは高くなかった。異なったコロニーをスクリーニングすることにより、単一クローンを同等の発現レベルで単離することができた。
【0143】
インターロイキンの産生および増殖培地中への分泌を、バイオアッセイで解析した。mIL2の生物学的活性を、ヒトIL2スタンダードと比較したT細胞系統CTLL2(Gillis et al., 1978)の増殖により検出した。mIL6の生物学的活性を、B細胞ハイブリドーマ7TD1(Van Snick et al., 1986)の増殖により測定した。Table2は、異なった発現プラスミドにより生産されたインターロイキン2および6の、培養培地1mlあたりの濃度の一覧を示している。mIL6を産生している培養物の上清が、mIL2検出における増殖に至ることはなく、その逆もなかった。
【0144】
【表2】

【0145】
11.M2eをコードする配列の、L.lactisにおける発現への適応
2つの融合タンパク質IPM2HBcmおよびIM2HBcmは、ウェスタンブロットではほとんど検出することができなかったので、我々は引き続き、M2タンパク質の細胞外部分の使用コドンを、L.lactisに適合させることにより、それら2つのタンパク質の生産量を増加させることにした(van de Guchte et al., 1992)。
【0146】
M2タンパク質の細胞外部分の5′末端に、我々は、E.coliにおける発現には最適であるが(68%)、L.lactisにおける翻訳には不足する(8%、パーセンテージはvan de Guchet et al., 1992に記載)、2つの連続的なロイシンコドン(CUG CUG)を観察した。それゆえ、それらのコドンをUUAに置換した。ipm2hbcおよびim2hbcに対する遺伝子を、それぞれpPLcIPM2HBcmとpPLcIM2HBcmから、2つの置換されたロイシンコドンを含む新たなセンスプライマーM2Lsと一緒に、PCRで増幅した(Figure 13参照)。アンチセンスプライマーとして我々は、HBcaを再び用いた(Figure 13参照)。遺伝子のクローニングはFigure 14に示したのと同じである。そのようにして作成したベクターを、pT1PM2LHBcおよびpT1M2LHBcとした。
【0147】
もとの融合タンパク質と比較した、突然変異されたM2HBcタンパク質の発現量を、ウェスタンブロットで解析した(Figure 16参照)。L.lactis適合ロイシンコドンと一緒のM2HBc融合タンパク質の発現量は、実際に、より多くなった。使用コドンのL.lactis機械的翻訳への適合化は、生産されたタンパク質の量に積極的な影響を有すると結論した。上記と類似した方法で、マウスンターロイキン6遺伝子をpT1PM2LHBcおよびpT1M2LHBcに挿入して、それぞれpT1PM2LHBcIL6およびpT1M2LHBcIL6とした。
【0148】
12.Lactococcus lactisにおけるM2C3dの構築
第2キャリアータンパク質C3dもまた、M2タンパク質の細胞外部分の提示について魅力のある分子である。Dempsey et al.(1996)は、3つの連続するC3d分子に対する抗体の結合が、強い抗体反応を作り出すことにおいて、フロイント完全アジュバントにおいて投与された抗体よりも効果的であることを示した。
【0149】
適合化したロイシンコドンと一緒の、M2タンパク質の細胞外部分の共通配列を、最初のC3d分子のアミノ末端への融合に用いた。3つの異なる融合タンパク質をコードする配列を構築した。最初の例では、M2HBc融合タンパク質と同様に、M2C3d3融合タンパク質は、L.lactisの細胞質で発現した(cM2C3d3)。第2のケースでは、M2C3d3タンパク質は、usp45−シグナル配列への骨格融合をすることにより、増殖培地中に分泌され(sM2C3d3)、最後の構築物は、分泌型からの誘導体であり、加えて、最後のC3d分子の後ろに、細胞壁中で融合タンパク質を共有結合するためのアンカー配列を含んでいる。
【0150】
増幅したC3d3フラグメントを、まずpUC18の誘導体中にサブクローン化して、pUCB/Sと名づけた。pUC18を、HindIIIで直線化して、BglIIリンカーを挿入した。得られたプラスミドをSmaIで開環し、SpeIリンカーを挿入して、プラスミドpUCB/Sを得た(Figure 18参照)。C3dの3連のコピーをpSG5.C3d3.YL(Dr.D.Fearonからの寄贈)から、オリゴヌクレオチドC3dsおよびC3daと一緒のPCRで増幅した(Figure 17参照)。この増幅フラグメントをBglIIおよびSpeIで切断した。得られた2830bpBglII−SpeIフラグメントを、BglIIおよびSpeIで開環したベクターpUCB/Sにクローン化した(Figure 18参照)。遺伝子cm2およびsm2をPCRで増幅した。正しい読み取り枠中にBamHI部位という我々の目的のために行った、cm2の増幅のために、我々は、センスオリゴヌクレオチドM2Ls(Figure 13参照)およびアンチセンスリンカーM2Caを用いた(Figure 17参照)。おなじアンチセンスリンカーを、sm2の増幅に用いた。sm2の増幅のためのセンスオリゴヌクレオチドであるM2LSsは、完成M2タンパク質の最初のコドンから始まる。
【0151】
M2C3d3の細胞質型の合成のため、M2タンパク質の細胞外部分をコードする情報を、上記m2hbc遺伝子と同じpTREX1に挿入した(Figure 18も参照)。増幅したcm2フラグメントをBamHIで切断して(77bp)、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、SpeIとBamHIで開環したpTREX1に挿入して、pT1cM2Lを作成した。M2C3d3の分泌およびアンカー型を合成するため、M2タンパク質の細胞外部分をコードする情報をpT1NXに挿入した。ベクターpT1NXは、usp45−シグナル配列(usp45−ss)およびStaphylococcus aureusタンパク質A(spaX)からもたらされたアンカー配列を有する。該プラスミドpT1NXをNaeIにより、usp45−ssの末端とBamHIの位置で正確に切断した。増幅フラグメントsm2を、BamHIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化した。この73bpのsm2フラグメントをNaeIおよびBamHIで開環したpT1NXに挿入して、プラスミドpT1sM2LXを得た(Figure 18参照)。次にpUCC3dから単離した、1本鎖C3dフラグメントをcm2またはsm2配列の末端のBamHI部位に挿入することができる。その後、1つ又は2つの付加的C3dコピーを挿入することができる。
【0152】
13.Lactococcus lactisにおけるM2TTFCの構築
第3キャリアータンパク質、破傷風毒素フラグメントC(TTFC)をも用いることができる。TTFCは、L.lactis中でP1プロモーター(pT1TT)の制御下においてすでに発現している(Wells and Schofield, 1996)。抗体産生のため、mIL2またはmIL6との組み合わせでTTFCを発現しているL.lactisは、免疫化実験で成功のうちに用いられている(Patent GB 9521568.7)。I(P)M2HBcmを発現しているL.lactisでの現在の免疫化実験における抗体反応の解析のポジティブコントロールとして、M2タンパク質の細胞外部分とTTFCのアミノ末端の間に融合を作成した。
【0153】
ttfc遺伝子を、pT1TTからPCRで増幅した(材料および方法参照)。センスオリゴヌクレオチド(TTFCs)により、スレオニンに相当するttfcの第2コドンの前の、正しい読み取り枠の位置にBamHI部位が供給された。アンチセンスリンカー(TTFCa)により、SpeIおよびBamHI部位が、終止コドンの後ろに供給された(Figure 19参照)。さらなるクローニングには、最も厳しい条件下で、十分な量のフラグメントを産出する増幅反応を用いた(材料および方法参照)。増幅したttfcフラグメントを、BamHIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、BglIで開環したpATIPM2m1に挿入した(Figure 20参照)。このプラスミド構築物を、pATIPM2TTとした。このプラスミドから、m2ttfc遺伝子をPCRで増幅した(Figure 19参照)。増幅したm2ttfcをBamHIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化して、SpeIおよびBamHIで開環したpTREX1に挿入した(Figure 20参照)。該新規プラスミドをpT1PM2LTTとした。この構築物において、M2タンパク質の細胞外部分は、L.lactis内で用いるのに適した2つのロイシンコドンと一緒に、ウイルスA/PR/8/34からもたらされた。挿入されたフラグメントの配列は373A型シークエンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA., USA)で決定され、正しいことが示された。
【0154】
マウスンターロイキン遺伝子mIL2およびmIL6を、m2ttfcと同じオペロンに挿入した。マウスンターロイキン2遺伝子を、572bpのXbaI−SpeIフラグメントとしてプラスミドpL2MIL2から単離した(Steidler et. al., 1995)。このフラグメントをSpeIで開環したpT1PM2LTTに挿入してpT1PM2LTTIL2とした(Figure 20参照)。同様にして、マウスンターロイキン6遺伝子をpL2MIL6(Steidler et. al., 1996)から687bpのXbaI−SpeIフラグメントとして単離して、SpeIで開環したpT1PM2LTTに挿入して、pT1PM2LTTIL6とした(Figure 20参照)。
【0155】
14.L.lactisにおけるTTFCおよびM2TTFCの発現
抗体のみの(pT1PM2LTT)、マウスインターロイキン2と組み合わせた(pT1PM2LTTIL2)またはマウスインターロイキン6と組み合わせた(pT1PM2LTTIL6)、発現のためのプラスミドを含むLactococcus lactisの菌株MG1363(Gasson, 1983)を、上記材料および方法のとおりに培養した。MG1363〔pT1TT〕をコントロールとして用いた。同量の109個体の菌体を、SDS 10% PAGEで解析した。IPM2TTFC融合タンパク質の発現を、材料および方法に記載したとおりに行ったウェスタン免疫ブロッティングで解析した(Figure 21参照)。インターロイキンの産生と増殖培地中への分泌を、バイオアッセイで解析した。L.lactis〔pT1PM2LTTIL2〕は、約500ng/mlのmIL2を、L.lactis〔pT1PM2LTTIL6〕は約1μg/mlのmIL6を産出した。これらの結果は、2種のインターロイキンと組み合わせたI(P)M2HBcmで得られた発現レベルに匹敵するものであった。
【0156】
15.pACsgpM2C3の構築と対応する組み換えバキュロウイルスの産出
増幅したバキュロウイルスgp67分泌シグナルの配列を、SpeIおよびHindIIIで切断し、続いてpUCsgpで得られたpUCC3dのSpeI−HindIIIベクターフラグメントにサブクローン化した。pUCsgpをHindIIIおよびNaeIで処理した後、gp67分泌シグナルを、HindIIIで処理したM2eフラグメント(共通配列)(PCR増幅により得られた(プライマーM2SsおよびUM2ECa))と結合した。pUCsgpM2としたこの構築物を、BamHIで処理し、続いて3つの連続するC3dフラグメントを有するBglII−BamHIpUCC3d3フラグメントと結合することによって再環化して、pUCsgpM2C3d3を得た。
【0157】
このフラグメントは、BamHI(脱リン酸化された)−EcoRI pUCC3dフラグメント、BglII(脱リン酸化された)−EcoRI pUCC3dフラグメントおよびBglII−BamHIpUCC3dフラグメントを結合した後に、削除した。sgpM2C3d3融合配列を含むpUCsgpM2C3d3のSpeIフラグメントを、バキュロウイルス輸送ベクターpACGP67AのSpeI−XbaIフラグメントとの置換により、ポリヘドリンプロモーターの後ろに挿入した。pACsgpM2C3d3とした、得られた輸送ベクターを、組み換えAcNPV/sgpM2C3d3バキュロウイルスを、King and Possee, 1992に記載された方法に従って、Sf9昆虫細胞とBaculoGoldバキュロウイルスDNA(Pharmingen, San Diego, CA, USA)のリン酸カルシウム共役感染により生産するために、用いた。対応する組み換えAcNPV/sgpM2C3d3バキュロウイルスのゲノム中における、ポリヘドリンプロモーターの後ろのsgpM2C3d3融合配列の存在を、PCR解析によって確認した。
【0158】
16.分泌されたM2C3d3のSf9昆虫細胞による発現
対数増殖期のSf9昆虫細胞を、多重感染(>10)で組み換えAcNPV/sgpM2C3d3バキュロウイルスに感染させた。続いて、上清を回収する前に、細胞を血清なしのTC100培地に移し、さらに48時間培養した。同量のアセトン(前もって−20度に保った)を加えることにより、タンパク質を沈殿させて、続いてウェスタンブロッティングで解析した。
【0159】
好ましい構築物においては、3コピーかそれ以上のC3dタンパク質が、M2タンパク質の細胞外領域の後にある。
【0160】
17.受動免疫
生存率をFigure 28に示した。両方のコントロールグループでは12個体のうち1個体のみが致死インフルエンザチャレンジで生き残り、一方3×10pgのIM2HBcmで免疫した12個体のマウスのうち11個体、または受動免疫されたすべてのマウスが防御された。この実験は、ワクチン処理の間に生産された抗M2抗体が、観察された防御の原因であることを証明している。
【0161】
18.DNAワクチン処理
Table3は、m.a. X47での致死チャレンジ(5 LD50)に対する生存率について、3×100μgのpCIM2を注射した12個体のマウスを、100μgのpCDNA3を3回注射されたコントロールグループと比較した、DNAワクチン処理の結果を表している。異種の(免疫抗体=共通M2、チャレンジ=M2をもたらすA/PR/8/34)インフルエンザチャレンジに対する部分的防御を証明することができる。
【0162】
【表3】

【0163】
19.HEKT細胞における発現
溶解性フラクションおよびペレットにおける、完全なM2タンパク質の発現量は、検出するには少なすぎた。HEKT細胞にとって毒性であろう、M2タンパク質のイオンチャンネル活性のために、発現が低く保たれている可能性がある。しかしながら、2つの融合タンパク質、IM2HBcmおよびIP3M2HBcmは良好に発現した。この実験は、DNAワクチン処理の研究で用いたベクターが、おそらくpCIM2を除いて、該タンパク質を発現させることができるということを証明している。
【0164】
20.血清の解析
反応は弱いものであるが、M2タンパク質の細胞外部分に対する特異的な抗体反応を証明できる。Figure 31のパネルBにおいては、pCIM2をコントロールベクターと比較している。このELISA法において、昆虫細胞で発現したM2タンパク質は、コーティングに用いられた(材料および方法参照)。特に3回目の免疫化の後に、特異的な抗−M2応答を証明できる。pCIM2でのさらに強い抗−M2反応は、M2タンパク質細胞質領域に位置する付加的なエピトープによるものである。
【0165】
考察
今日の文献は、高度に保存されたA型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外部分の、免疫系に対する提示に関するいくつかのシステムを記述している。M2フラグメントは、M2−ドメインの遊泳N末端を維持するためにキャリアータンパク質のアミノ末端と融合されており、この方法で、M2タンパク質の野生型構造を真似ている。最初の融合タンパク質である、ヒトβ2ミクログロブリンと関連付けられたM2(IPM2hB2Mm)を、モノクローナル抗体を産生するために用いた。第2の融合タンパク質である、B型肝炎コアタンパク質と関連付けられたM2(IPM2HBcm)を、ワクチン化の研究に用いた。免疫化の過程においても産生されるキャリアータンパク質に対する抗体の修正をしなければならなかったので、両タンパク質はM2タンパク質の細胞外部分に対する特異的抗体反応の検出にも用いることができるであろう。
【0166】
IPM2HBcmでのワクチン化の研究は、5〜50μgの投与量の範囲でマウスを防御したが、免疫化されたマウスは、それでも高い死亡率を示したので、用いた範囲での投与量は、どうやら得られた防御に対してそれほど決定的なパラメーターではないことを示している。これは、防御の程度について明確に分かれた結果を得るために、非常に多量のウイルス(5 LD50)をチャレンジに用いたためであろう。本来のインフルエンザ感染においては、感染するウイルス粒子の数がもっと低いので、死亡率も徐々に減少するであろうと考えられる。
【0167】
免疫化したマウスの血清の解析は、特にウイルスチャレンジの後において、M2タンパク質の細胞外部分に対する本質的な抗体反応を示した。この強い反応は、鼻腔内に対する腹腔内という投与方法の違いによるものであろう。あるいは、それは、侵入ウイルスに対する、より完全な防御メカニズムの原理で説明されるのかもしれない。
【0168】
Slepushkin et al.(1995)は、同種又は異種のウイルスチャレンジに対する、本来の完全なM2タンパク質を含む膜抽出物に基づいた、ワクチン化の方法を記述した。しかし、彼らは非常に強力なアジュバントであり、医薬用途には不適切である、フロイント不完全アジュバントを使用している。
【0169】
対照的に、ここに記述した発明のM2細胞外ドメイン融合は、純粋型(少なくとも純度95%)で得ることができ、安全なアジュバントと組み合わせて投与することができる。チャレンジが相当に厳しかったという事実にもかかわらず、高い程度の防御が得られた。M2細胞外ドメインがほとんど同一の配列である(A型インフルエンザのM2タンパク質の細胞外部分のアミノ酸配列の一覧を示すtable1参照)という観点から、獲得された防御は、これまでに知られているすべてのヒトA型インフルエンザ系に対して類似のものであろうことが期待されうる。
【0170】
CTLエピトープのような、インフルエンザ特異的Tヘルパーエピトープを融合タンパクの中に包含する(例えば、内部に、またはB型肝炎コアタンパク質のC末端に結合させる)ことによって、ワクチンはさらに改善されるであろう。さらに、例えば鼻腔内に対する腹腔内のように、他の免疫化ルートも可能である。
【0171】
M2HBcm融合タンパク質の発現のために、グラム陰性組織、E.coliに加えて、L.lactisも用いた。L.lactisにおいては、発現した融合タンパクを精製する必要はない。菌体は、鼻腔内又は経口的に直接投与することができる。
【0172】
第3の見込まれるキャリアータンパク質も、第3補体タンパク質フラグメントd(C3d)と名づけられて記述されている(Dempsey et al., 1996)。好ましい構築物において、M2タンパク質の細胞外部分の後ろにC3dタンパク質の3コピーがある。このM2C3d3融合タンパク質は、適切な制御配列への遺伝子融合によって、細胞壁に固定した細胞外型としても、増殖培地中に分泌させるようにも、発現させることができる。
【0173】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分若しくはその機能的断片及び提示性担体の融合産生物を含むインフルエンザ抗原。
【請求項2】
提示性担体が提示性(ポリ)ペプチドであるインフルエンザ抗原。
【請求項3】
提示性担体が、グリカン、偽ペプチド、合成ポリマーのような、非ペプチド性構造であるインフルエンザ抗原。
【請求項4】
抗原の細胞性免疫応答免疫原性を促進するための付加ドメインを、更に含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項5】
保存されたインフルエンザ膜タンパク質がM2膜タンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項6】
M2膜タンパク質がA型インフルエンザウイルス起源である、請求項5記載のインフルエンザ抗原。
【請求項7】
提示性(ポリ)ペプチドがB型肝炎コアタンパク質、1個以上のC3dドメイン、破傷風毒素フラグメントCから選択される、請求項1〜6のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項8】
抗原が、場合により該細胞が該産生物を遊離するLactococci細胞からなる、その細胞膜内又は細胞膜上で融合産生物を発現する、請求項1〜7のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項9】
保存されたインフルエンザ膜タンパク質の機能的フラグメントが、機能的フラグメントを受け入れた同一種の対照部分で見出されるより、種類の試験部分に免疫防御的用量を投与する場合に統計的に有意なより高い免疫防御性を誘発することができる断片である、請求項1〜8いずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項10】
付加ドメインが、インフルエンザ特異的ヘルパーT細胞エピトープ又は細胞毒性T細胞エピトープである、請求項1〜9いずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項11】
場合により適切な転写及び/又は翻訳制御配列の存在下で適切な受容細胞中にこの遺伝子構築物を持ち込み、受容細胞中で遺伝子構築物の発現をもたらし、場合により受容細胞又はその培養液から抗原を単離する、少なくとも保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分若しくはその機能的フラグメント及び少なくとも一つのそれに操作可能に結合した提示性(ポリ)ペプチドを含む遺伝子構築物を調製することによって得られる、請求項1〜10のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項12】
保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分をコードする配列が、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外部分をコードする配列若しくはその機能的フラグメント及びB型肝炎コアタンパク質、1個以上のC3dドメイン若しくは破傷風毒素フラグメントCから選択された提示性(ポリ)ペプチドをコードする配列からなる、請求項11記載のインフルエンザ抗原。
【請求項13】
A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の2〜24までのアミノ酸若しくはタンパク質の該部分及び、B型肝炎コアタンパク質及び/又は1個以上のC3dドメインの3次元構造を実質的に変更しないその改変体を含む、請求項1〜12いずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項14】
ヒト又は動物のインフルエンザに対するワクチンの調製に用いるための、請求項1〜13のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項15】
ヒト又は動物のA型インフルエンザに対するワクチンの調製に用いるための、請求項1〜14のいずれか1項記載のインフルエンザ抗原。
【請求項16】
場合により1種以上の賦形剤の存在下で、少なくとも請求項1〜15のいずれか1項記載の抗原を含む、インフルエンザに対するワクチン。
【請求項17】
抗原が単離された形態である、請求項16記載のワクチン。
【請求項18】
抗原が膜フラグメントの部分である、請求項16記載のワクチン。
【請求項19】
抗原が抗原を発現する受容細胞の膜に固着している、請求項16記載のワクチン。
【請求項20】
抗原がその細胞外皮内又は外皮上で融合タンパク質を発現するLactococci細胞からなる抗原からなる、請求項16記載のワクチン。
【請求項21】
例えばヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ核タンパク質及び/又は本来のM2から選択される1個以上のインフルエンザ抗原を更に含む、請求項16〜20いずれか1項記載のワクチン。
【請求項22】
インフルエンザに対するワクチンの調製のための、請求項1〜13いずれか1項記載の抗原の使用。
【請求項23】
a)少なくとも保存されたインフルエンザ膜タンパク質の細胞外部分若しくはその機能的部分及び、場合により適切な転写及び又は翻訳制御配列の存在下で少なくとも1つのそれに操作可能に結合した提示性(ポリ)ペプチドを含む遺伝子構築物を調製し、
b)適切な受容細胞内に該遺伝子構築物を持ち込み、
c)受容細胞内で遺伝子構築物の発現をもたらし、及び
d)場合により受容細胞又はその培養液から抗原を単離する、
工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項記載の抗原を調製する方法。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか1項記載の抗原を発現する受容細胞。
【請求項25】
細胞がLactococcus細胞である、請求項24記載の受容細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2a1】
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【図2a2】
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【図2a3】
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【図2b】
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【図3a1】
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【図3a2】
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【図3a3】
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【図3a4】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【公開番号】特開2010−59164(P2010−59164A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−239092(P2009−239092)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【分割の表示】特願2000−506324(P2000−506324)の分割
【原出願日】平成10年8月5日(1998.8.5)
【出願人】(301034267)フラームス・インテルウニフェルシタイル・インステイチュート・フォール・ビオテヒノロヒー・ヴェーゼットウェー(ヴェーイーベー・ヴェーゼットウェー) (10)
【氏名又は名称原語表記】VLAAMS INTERUNIVERSITAIR INSTITUUT VOOR BIOTECHNOLOGIE VZW(VIB VZW)
【Fターム(参考)】