説明

新型カゼイ菌の亜種(SG96)及びこれを含有する菌抑制組成物及びその用途

【課題】新型カゼイ菌の亜種微生物株を提供する。
【解決手段】新型カゼイ菌の亜種(Lactobacillusparacasei subsp.paracasei)SG96、及びこれを含有する菌抑制組成物及びその用途であって、新型カゼイ菌の亜種SG96菌株を含み、前記菌株は中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center,CGMCC)に預けられ、受託番号はCGMCC 2697である、前記菌株は、大腸菌及びサルモネラ菌など病原菌の成長を抑制乃至滅菌する効果がある;前記菌抑制組成物は、動物の飲用水添加物・動物飼料添加物・動物用及び人類用医療組成物・食品添加物・飲料添加物・食品・飲料品・健康食品などの形式がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピーシズ・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei) SG96菌株、特に、大腸菌(Escherichia coli)及びサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)などの病原菌を抑制できる新型カゼイ菌の亜種微生物株及び前記カゼイ菌の亜種を含有する菌抑制組成物、組合せ物及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近数十年来、人口が快速に増加し、物質生活の水準が大幅に向上し、人々の肉類に対する需要が大量に増えている、マーケットのニーズに応えるため、多くの経済動物の飼育が次第に大規模となり、特に未開発諸国の食物輸入能力は比較的低いため、大量且つ高密度或いは大面積で経済動物を飼育した結果、様々な疾病が動物の間で急速に拡散するようになった。経済動物の病気問題を改善するため、或いは経済動物を快速に成長させるため、長い間飼料に抗生物質を添加する方法、或いは動物に抗生物質を注射する方法が取られ、その結果、耐薬性菌株の大量発生を招いている。
【0003】
1960年代の末期に、抗生物質の出現により、人類は黴菌感染を治療する分野で空前の勝利を収め、従来多くの致命的であった伝染病も恐れる必要が無くなった。しかし近年、耐薬性黴菌の出現により、人類の伝染病に対する心配と恐怖が再度高まった、なぜなら、抗生物質はもはや病状を制御する万能薬ではなくなり、耐薬性黴菌の拡散スピードは尚更我々の想像を絶するものがある。黴菌が耐薬性を持つことは、治療効果が低下乃至無効になるばかりでなく、人類の健康に重大な影響を及ぼすまでに至っている。四十年前は、全世界で感染性疾病による死亡人数は約年間700万であった、現在では、医学科学は非常に大きな進歩を遂げたが、一方、感染性疾病による死亡者は年間2,000万人に上昇している。人々が長期的に抗生物質を含有・残留する肉類・卵・牛乳など畜禽類食品を食用すると、これら抗生物質の残留が人体に有害な作用を起こし、且つ人体の中に蓄積され、しかも耐薬性菌株の絶えざる発生を招いている。
【0004】
肉類の安全問題は、最近十年間、最も消費者や農漁畜牧方面の生産者及び政府に関心をもたれている。消費者が肉類の安全に対して持続的に高度の関心を持つようになった原因は、過去数年間国内外でいくつかの驚くべき肉類安全事件が起こり、例えば、イギリスで発生した狂牛病、東南アジア及び中国大陸で起こったH5N1鳥流感など。肉類食用の安全性を守るため、世界各国では、抗生物質の残留が引き起こす影響に対して、かなり重視し、耐薬性菌株の発生を遅延させるため、1990年中期に、ヨーロッパの一部の国では、医療及び農業分野において、抗生物質に対する使用制限及び管制を始め、この方式で耐薬性菌株の発生スピードを抑えようとした。欧州連盟は、1995年から、次々にある種の抗生物質を飼料に使用することを禁止し、そして良い成果を挙げている、例えば、コペンハーゲンのデンマーク獣医実験室の研究者は、アボパルシン(avoparcin)という抗生物質を使用禁止にした後、デンマークの雛鳥消化管中の腸球菌(Enterococcus faecium)のアボパルシンに対する耐薬性は、西暦1995年の73%から、2000年の6%に下がったと言っている。ドイツとオランダは、同じ時期の五年間にアボパルシンの使用を禁止したところ、動物及び人体中の耐薬性菌株が減少した、そこで、欧州連盟では、2006年1月から、抗生物質を飼料に添加することを禁止し始めた。
【0005】
飼料中に抗生物質を添加する目的は、成長を促し、粗飼料を減らすことによって、畜禽類の成長効率を上げることができるが、一方、畜禽類の成長周期が短縮するため、栄養物質の沈殿が必然的に減少し、畜禽類製品特有の風味や品質が下降する;もっと重大なことは、薬物の残留が人類の健康、特に児童の成長期の健康に対して、重大な危害を及ぼす。そのため、経済動物の飼料中に抗生物質の使用を禁じ、或いは抗生物質の種類・用量を減らすことは、世界的潮流となっている。しかし、抗生物質を次第に使用禁止した後も、多くの問題が派生し、畜牧業が正常に生産できるようにするため、業者はプロバイオティクス(Probiotics)を抗生物質の代用品とする観念を受け入れ、更に一歩進んで飼料添加剤(Feed additives)として採用している。
【0006】
プロバイオティクスは、主として乳酸菌である、乳酸菌は畜禽類の消化管内菌群の平衡を維持且つ回復し、ストレス(stress)を解消し、免疫抗病能力を高め、発病率を下げることができる。乳酸菌を使用して発酵させた青刈り飼料及び液体発酵飼料を提唱する理由は、乳酸菌発酵飼料は飼料の栄養成分を有効に保持し、消化利用率を高め、更に発酵過程で病気を招く腸道の病原菌及び人畜共同疾患を引き起こす微生物を消去することができるからである。乳酸菌は、すでに抗生物質の理想的代替品として公認されている。
【0007】
プロバイオティクスの、畜禽類体内における有益作用は、
(1)畜禽類の消化管内において乳酸菌を優勢菌群とする菌群平衡を維持且つ回復する。畜禽類のストレス(例えば、乳離れ、飼料変更、高温、寒冷、運輸、おびえ、疾病など)による消化管内での環境失調を解消する。有害菌の異常増殖及び致病菌の侵入及び定着繁殖を抑制し、下痢など消化管の疾病を予防・治療し、体内毒素の発生を減少又は消去する。微生物体系がまだ打ち立てられていない幼畜・雛鳥に対する乳酸菌の補充作用は特に顕著である。
(2)非特異性免疫調節因子を生じ、畜禽類の免疫抗病能力を高め、疾病感染率及び死亡率を下げる。抗生物質及び化学薬物の有効な代替品となり、薬物残留の概率を減らし、人類の食品品質を向上させる。
(3)栄養成分を補充し、畜禽類の成長を促し、消化酵素を生じ、消化吸収能力を増強し、養殖業の生産量と効率を顕著に向上させる。
(4)畜禽類糞便中の匂い物質を減少し、養殖場の環境を改善する。
(5)乳類、肉類、卵の生産量を顕著に向上させ、養殖業の効果と利益を向上させる。
【0008】
食品安全問題は、すでに世界各国政府から高度に重視され、現在、各国政府は積極的にグリーン畜牧業を推進中であり、政策・財力・物力の面でグリーン製品の発展を支援している。グリーン養殖のモデル基地を建設し、グリーン畜牧製品のブランドを育成し、グリーン製品の経営者が実際の利益を取得し、消費者に高品質・無公害の安全なグリーン畜禽類食品を提供し、人類に幸せをもたらすようにしている。
【0009】
以上でわかるように、上述従来の経済動物に抗生物質を注射するような方法は尚幾多の欠点があり、よい設計と言いがたく、改良が待たれていた。
【0010】
本願発明者は、上述抗生物質の使用に伴って派生する各項の欠点に鑑み、極力新規改良を試み、且つ長年苦心研鑽の末、ついに本件新型カゼイ菌の亜種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)SG96及びこれを含有する菌抑制組成物及びその用途を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明の目的は、従来のカゼイ菌BCRC 910220(Lactobacillus paracasei)及びカゼイ菌の亜種BCRC14001、BCRC16100 (Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)の種属関係とは明らかに差異がある、新型カゼイ菌の亜種微生物株を提供することにある。
【0012】
本願発明のもう一つの目的は、新型カゼイ菌の亜種SG96を含有し、大腸菌(Escherichia coli)及びサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)など病原菌の成長を抑制する効果を有する菌抑制組成物を提供することにある。
【0013】
本願発明の更にもう一つの目的は、新型カゼイ菌の亜種SG96を含有し、菌抑制組成物の応用を提供することにある、前記菌抑制組成物は動物の飼料・飲用水の添加物とすることによって、動物の病原菌に対する抵抗能力を増進することができる;前記菌抑制組成物は、更に一歩進んで、人類の食品・食品添加物或いは食品として、人体の病原菌に対する抵抗能力を増進することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述目的を達成するため、本願発明に係る新型カゼイ菌の亜種SG96及びこれを含有する菌抑制組成物及びその用途には、新型カゼイ菌の亜種SG96菌株を含む、前記菌株は、豚の腸管排泄物から選出し、グラム染色分析・API 50 CHL分析・16S rDNAシークエンス分析・系統分析などを行った後、新型カゼイ菌亜種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)の微生物株として確認された、前記新型カゼイ菌の亜種SG96の菌株は、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center, CGMCC)に預けられ、受託番号はCGMCC 2697、受託日は2008年10月9日である。
【0015】
本願発明によって篩い分けられたカゼイ菌の亜種SG96の菌株を、それぞれペーパーディスク寒天拡散法(disc-agar diffusion)による分析及び病原菌混合培養試験分析を行った結果、本願発明に係るSG96菌株は、大腸菌(E. coli)及びサルモネラ菌(S.typhimurium)などの病原菌の成長を抑制し、更に滅菌効果があることを示した。
【0016】
本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96の菌株を水溶液として調合し、離乳前の子豚に給食した結果、本願発明に係るSG96の菌株が離乳前子豚の体重を顕著に増加し、子豚飼料の飼料効率を改善し、且つ良好な抗下痢効果があり、又その成果は一般に使用される抗生物質より優れ、本願発明に係るSG96の菌株には動物の病原菌に対する抵抗力を増進する能力があることが証明された。
【0017】
本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96の菌株を含有する抗菌組成物は、水溶液を調合して動物の飲用水とするほか、従来の飼料添加物製造技術とあわせてその他の形式、例えば動物飼料添加物、動物用及び人類用医療組成物、食品添加物、飲料添加物、食品、飲用品、健康食品など、経口服用方式で動物及び人類によって摂取されることができる。ある好ましい実施例では、前記抗菌組成物は乳酸錠剤・粉末或いは顆粒状として作られ、且つ動物飼料又は食品の中に添加することができる(例えば、1トンの飼料に1キロの粉末状又は顆粒状のカゼイ菌の亜種SG96の菌株(107CFU/g)を添加);又単独或いはその他乳酸菌と一緒に乳製品を発酵させてヨーグルトなどの乳製品をつくることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る新型カゼイ菌の亜種SG96、及びこれを含有する菌抑制組成物及びその用途は、その他従来の技術に比べ、下記のような長所がある、
(1)本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96菌株に対し、グラム染色分析・API 50 CHL分析・16S Rdnaシークエンス分析・系統分析などを行った結果、従来のカゼイ菌BCRC 910220及びカゼイ菌の亜種BCRC14001、BCRC16100との種関係には明らかな差異があり、新型のカゼイ菌の亜種であることが確認された。
(2)本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96菌株に対し、それぞれペーパーろ紙寒天拡散法分析及び病原菌混合培養試験分析を行った結果、本願発明に係るSG96菌株は、大腸菌及びサルモネラ菌などの病原菌の成長を抑制できるのみならず、更にその菌抑制効果は抗生物質streptomycinの抑制効果より強く、滅菌効果まで備えていることを示している。
(3)本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96菌株により水溶性液を調合して離乳前の子豚に投与した結果、本願発明に係るSG96菌株は、明らかに離乳前子豚の体重を増加させ、子豚飼料の飼料効率を改善し、且つ良好な下痢抑制効果を備え、且つその成果は一般に使用される抗生物質より優れ、本願発明に係るSG96菌株が動物の病原菌に対する抵抗能力を増進できることを証明した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96菌株のグラム染色結果である。
【図1B】本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96菌株の形態図である。
【図2】前記カゼイ菌の亜種SG96菌株の16S rDNA断片をPCR拡大した寒天ゲル電気泳動図である。
【図3】カゼイ菌の亜種菌株SG96、BCRC 910220、BCRC14001、BCRC16100の16S rDNA序列対比図である。
【図4】カゼイ菌の亜種菌株SG96、BCRC 910220、BCRC14001、BCRC16100及びその他のカゼイ菌の亜種菌株との種関係系統分析図である。
【図5】ペーパーろ紙寒天拡散法によりカゼイ菌の亜種SG96菌株の大腸菌に対する抑制作用を分析したものである。
【図6】ペーパーろ紙寒天拡散法によりカゼイ菌の亜種SG96菌株のサルモネラ菌に対する抑制作用を分析したものである。
【図7】カゼイ菌の亜種SG96菌株108菌数と病原菌の混合培養試験の結果である。
【図8】カゼイ菌の亜種SG96菌株107菌数と病原菌の混合培養試験の結果である。
【図9】カゼイ菌の亜種SG96菌株106菌数と病原菌の混合培養試験の結果である。
【図10】カゼイ菌の亜種SG96菌株105菌数と病原菌の混合培養試験の結果である。
【図11】カゼイ菌の亜種SG96菌株104菌数と病原菌の混合培養試験の結果である。
【図12】カゼイ菌の亜種SG96菌株の離乳前子豚の体重変化に対する影響である。
【図13】カゼイ菌の亜種SG96菌株の離乳前子豚の下痢に対する影響である。
【図14】カゼイ菌の亜種SG96菌株のAPI50CHLの分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明は、下記の実施例で説明する、但し、本願発明は下記実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0021】
実施例1 カゼイ菌の亜種SG96菌株の選別及び分離
豚の腸管排泄物を収集し、MRS肉スープ培養基(DifcoTM, REF288130)の中に入れ、37℃の嫌気性環境下で24時間培養した後、前記培養物をMRS寒天プレート(DifcoTM, REF288210)に塗布し、37℃にて3日間培養した。培養後、寒天培地に出現した菌のコロニーを収集、合計1000余株の生酸菌を取得し、次にペーパーディスク寒天拡散法(disc-agar diffusion)によって大腸菌(E. coli) (BCRC11634)及びサルモネラ菌(S. typhimurium) (BCRC129407)を抑制できる乳酸菌を選別し、更にその中から最も活性度の高い機能性カゼイ菌の亜種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei) SG96を選び出した。この菌種の培養特徴は下記の通りである:MRS寒天プレート上にて直径2-3 mmの灰色菌のコロニーへ成長、最適培養温度は37℃である。上記カゼイ菌の亜種SG96は、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center, CGMCC)に預けられ、受託番号はCGMCC 2697、受託日日は2008年10月9日である。
【0022】
実施例2 カゼイ菌の亜種SG96菌株のグラム染色
グラム染色法によって菌株の特徴を検査した。結果は図1に示す通り、本願発明の菌株はグラム陽性菌(Gram-positive bacteria)、
無芽胞嫌気性菌(non-sporing anaerobes)、及び非運動性菌(non-mobility)で、乳酸菌の典型的特徴である。
カゼイ菌の亜種SG96菌株の菌学的特徴は下記に示す通りである:
【0023】
(a)形態学的特徴形態学的特徴
(1)細胞の形状及び大小:細胞をMRS肉スープ培養基の中に入れ、37℃の嫌気性環境下で24時間培養すると、顕微鏡下で桿状を呈す桿菌が観察される(図1Bに示すように)。
(2)活動力:非運動性
(3)鞭毛:無
(4)胞子形成:形成されず
(5)グラム染色:陽性
(b)培養特徴:
(1)培養基:MRS肉スープ培養基、pH = 6.25
(2)培養条件:37℃嫌気性環境
(c)生理学的特徴:
(1)過酸化水素酵素:陰性
(2)酸化酵素:陰性
(3)API 50 CHLテスト:実施例三を参照。
【0024】
実施例3 カゼイ菌の亜種SG96菌株の16SrDNA シークエンス分析
1.DNA抽出
FavorPrepTM Blood Genomic DNA Extraction Mimi KitによってDNAを純化する、前記培養液を一晩置き、200 μL の菌液に20 μL のproteinase K (proteinase Kを使用する前に110 μL ddH2Oを加え、5分間振動混合して濃度を11 mg/Mlとし、-20 ℃にて備蓄)を加え、次に200 μLの FABG bufferを加え、5秒間振動混合し、60 ℃で15分間加熱後短時間遠心分離。200 μLの 95%アルコールを加え、10秒間振動混合し、短時間遠心分離、FABG コラム(FABG column)の中に入れ、更にFABG columnをCollection Tubeの中に入れ、10,000 rpmで2分間遠心分離。遠心分離したFABG columnを取り出し、サブナタントを捨て、トイレペーパーで吸い取って乾かし、FABG columnをCollection Tubeの中へ戻し、500 μLの W1 buffer(第一回目は8mLの 95%アルコールを加える)を加え、10,000rpmで2分間遠心分離する、遠心分離したFABG columnを取り出し、サブナタントを捨て、トイレペーパーで吸い取って乾かし、FABG columnをCollection Tubeの中へ戻す。750 μLの WB (第一回目は40mLの 95%アルコールを加える)を加え、10,000rpmで2分間遠心分離する。サブナタントを捨て、トイレペーパーで吸い取って乾かし、FABG columnをCollection Tubeの中へ戻し、10,000rpmで6分間遠心分離する。次に遠心分離したFABG columnを1.5mlの遠心分離管の中へ入れ、Elution Bufferを 150 μL加え、3分間放置し、10,000rpmで4分間遠心分離する、これが純化されたDNAであり、-20℃で備蓄する。
【0025】
2.16S rDNA PCR断片の拡大
カゼイ菌の亜種SG96菌株のDNA及びカゼイ菌GMNL-32菌株のDNAを取り(前記菌株の受託番号はBCRC 910220、該菌株は既に中華民国発明特許I284149を取得し、過敏症関連の治療機能を有するカゼイ菌の菌株である)、断片拡大する、使用したプライマー(primers)はE.coli 16S rDNA 遺伝子第8-27位の塩基及び1510-1492位の塩基序列に基づいて設計した原核生物16S rDNA PCR通用プライマーである。(William G. Weisburg, Susan M. Barns, Dale A. Pelletier, and David J. Lane. 16S Ribosomal DNA Amplification for Phylogenetic Study. J. Bacteriol. 1991 January; 173(2): 697-703)、プライマーの序列は下記の通りである、
【0026】
正方向プライマーfD1:
5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’ (SEQ ID No: 1)
逆方向プライマーrP1:
5’-ACGGTTACCTTGTTACGACTT-3’ (SEQ ID No: 2)
【0027】
前記16S rDNA PCR断片の拡大手順は次の通りである、 (1) 95℃下で5分間;(2) 94℃下で1分間;(3) 60℃下で30秒;(4) 72℃下で1.5分間;(5) 72℃下で10分間、ステップ(2)から(4)は30サイクル繰り返す。
【0028】
尚、カゼイ菌の亜種BCRC14001 (Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)及びカゼイ菌の亜種CRC16100 (Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)のDNAを16S rDNA PCR断片拡大に際し、使用したプライマーは、カゼイ菌16S rRNA V1區域及び乳桿菌16S rRNA保守(conserved)序列によったものである。(Ward, L. J. H., and Timmins, M. J. 1999. Differentiation of Lactobacillus casei, Lactobacillus paracasei and Lactobacillus rhamnosus by polymerase chain reaction. Lett. Appl. Microbiol. 29: 90-92.) プライマーの序列は下記の通りである、
【0029】
正方向プライマー:
5’-CACCGAGATTCAACATGG-3’ (SEQ ID No: 3)
逆方向プライマー:
5’-CCCACTGCTGCCTCCCGTAGGAGT-3’ (SEQ ID No: 4)
【0030】
前記16S rDNA PCR断片の拡大手順は次の通りである:(1) 95℃下で5分間;(2) 94℃下で1分間;(3) 60℃下で30秒;(4) 72℃下で1.5分間;(5) 72℃下で10分間,ステップ(2)から(4)は30サイクル繰り返す。
【0031】
3.16S rDNA PCR断片のシークエンス分析と対比
カゼイ菌の亜種SG96菌株16S rDNAのPCR産物に対して寒天ゲルの電気泳動を行った結果は図2に示す通りである;図2からわかるように、前記PCR産物の断片は約1,500 bp (標準品断片の長さは上から下へ順に3k, 2k, 1.5k, 1K, 900, 800, 700, 600, 500, 400, 300, 200, 100 bp)であり、シークエンス分析作業を行った、カゼイ菌の亜種SG96菌株(Lactobacillus paracasei)16S rDNAの序列はSEQ ID No: 5に示す如くである;序列を複合序列対比資料集(NCBI blastn,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)と序列対比を行った、その結果は図3に示すとおりである、序列対比の結果は98%精確度のラクトバチラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)であった。
【0032】
実施例4 カゼイ菌の亜種SG96菌株のAPI 50 CHL分析
API 50 CHL試薬による本願発明に係る乳酸菌菌株の炭水化合物代謝性能の検査、API 50 CHL試薬は菌株の属又は種における差異を鑑定することができる、新竹食品工業発展研究所に検査を委託したところ、API 50 CHLの分析結果は表一及び図14に示すように、本願発明に係る菌株及びカゼイ菌の亜種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei 1)は炭水化合物代謝活性と98%の相似性がある、そこで、API 50 CHL分析により一歩進めて本願発明に係る菌株をカゼイ菌の亜種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei )と確認した。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例5 カゼイ菌の亜種SG96の系統分析
NCBI Nucleotideデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)の中で公表された45株のカゼイ菌(Lactobacillus paracasei)、カゼイ菌の亞種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)及びラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei) の序列をBCRCデータベースの中で公表された二株のBCRC14001、BCRC16100の序列、及び中華民國特許並びにアメリカ特許各一株GMNL-32 (BCRC910220)とCSK01の序列を、EMBL-EBI ClustalW2(http://www.ebi.ac.uk/clustalw)によって系統分析を行った、系統分析の結果は図4に示す通りで、SG96は僅かそのうちの五株の菌種と同一族群に属し、しかし又この五株から別の独立した品系を分岐することもできる、このことはSG96の分類系統上での独特性を表す、従ってSG96が確かに新型のカゼイ菌の亞種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)微生物株であることを証明している。
【0035】
実施例6 カゼイ菌の亞種SG96菌株の大腸菌及びサルモネラ菌に対する抑制作用
1.ペーパーディスク寒天拡散法(disc-agar diffusion)
大腸菌(受託番号BCRC 11634))及びサルモネラ菌(受託番号BCRC 12947)をそれぞれ一白金耳の菌量を取ってTSA培養基(Soybean-Casein Digest Agar Medium, DifcoTM, REF236950)の斜面に接種し、35-37℃にて17-24時間培養し、菌株を成長の安定期に至らしめ、且つ分光光度計を使用して濁度測定を行い、菌体の濁度を適当に調整した(約600nmの濁度80%,80% T)。この2種の病原菌菌液をそれぞれ0.5mlずつ吸い取って約48℃のプレート固体培養基の中へ入れ、次に培養皿に移し、一時間放置して凝固した後、直径8mmの無菌ろ紙錠でカゼイ菌の亜種SG96菌株の菌液を沁み込ませ、この無菌ろ紙錠を軽く上述の培養皿の上に置き、35-37℃にて17-24時間培養して結果を観察し、抑制圏の直径を測定すると共に、抗生物質ストレプトマイシン(streptomycin) 15g/mLを用いてポジティブ対照組(positive control)とした。
【0036】
その結果は図5・図6に示すように、本願発明に係るカゼイ菌の亜種SG96菌株の大腸菌(BCRC 11634)に対する抑制圈の直径は11.8 mmで(図5参照)、一方、streptomycinの抑制圈直径は11.0 mmであり、カゼイ菌の亜種SG96菌株の方が比較的強い抑制作用を持っていることを現している。そして、本願発明に係る菌株の、サルモネラ菌(BCRC 12947)に対する抑制圏の直径は12.5 mm(図6参照)であり、一方、抗生物質streptomycinの抑制圈直径は11.2 mmで、カゼイ菌の亜種SG96菌株の方が比較的強い抑制作用を持っていることを現している。
【0037】
2.カゼイ菌の亜種SG96菌株と病原菌の混合培養試験
この実験では、大腸菌(BCRC 11634)及びサルモネラ菌(BCRC 12947)を病原菌として選用した。病原菌及びカゼイ菌の亜種SG96菌株を混合培養(TSA培養基によって37℃で培養を行った)、且つ培養期間中にサンプリングを行い、サンプルは系列的に適当な倍数に希釈した後、それぞれ100 μLを取ってMRS及びTSA培養皿の上に塗布した、MRS培養皿は35-37℃にて嫌気性環境下で24時間静置培養した、TSA培養皿は35-37℃にて好気性環境下で24時間静置培養した、菌のコロニー生成後、それぞれカゼイ菌の亜種SG96菌株の菌数(MRS培養皿)及び病原菌の菌數(TSA培養皿)を計数した。
【0038】
図7に示すように、カゼイ菌の亜種SG96菌株を108菌数(CFU/ml)取り、それぞれ大腸菌(BCRC 11634)及びサルモネラ菌(BCRC 12947)と混合培養した、その結果、大腸菌は8時間内に菌数が108から101に減少し、サルモネラ菌は6時間内に菌数が108から101に減少した、これで抑制効果が強く、さらに滅菌効果があることがわかる。
【0039】
図8に示すように、カゼイ菌の亜種SG96菌株107菌数をそれぞれ大腸菌(BCRC 11634)及びサルモネラ菌(BCRC 12947)と混合培養した、大腸菌は22時間内に菌数が108から0に減少した、サルモネラ菌は、16時間内に108から0に減少した。
【0040】
図9に示すように、カゼイ菌の亜種SG96菌株106菌数をそれぞれ大腸菌(BCRC 11634)及びサルモネラ菌(BCRC 12947)と混合培養した、大腸菌は24時間内に菌数が108から102に減少した、サルモネラ菌は、18時間内に108から0に減少した。
【0041】
図10に示すように、カゼイ菌の亜種SG96菌株105菌数をそれぞれ大腸菌(BCRC 11634)及びサルモネラ菌(BCRC 12947)と混合培養した、32時間後、大腸菌は菌数が108からに0減少した、サルモネラ菌は、18時間内に108から0に減少した。
【0042】
図11に示すように、カゼイ菌の亜種SG96菌株104菌数をそれぞれ大腸菌(BCRC 11634)及びサルモネラ菌(BCRC 12947)と混合培養した、38時間後、大腸菌は菌数が108から0に減少した、サルモネラ菌は、24時間内に108から0に減少した。
【0043】
実施例7 動物試験
1.カゼイ菌の亜種SG96菌株の離乳前子豚の体重に対する影響
酪農家において同一親豚から同期出産した離乳前子豚を選び、二組に分けて飼育した、一組は、毎日1*107 CFU/mLを含むカゼイ菌の亜種SG96菌株水溶液のみを与え、別の一組は対照組で、抗生物資(OTC,oxytetracycline)を与え、飼育時間は21日間で、毎週子豚の体重変化を記録し、且つT-testで統計分析を行った。その結果は図12の通りである、カゼイ菌の亜種SG96菌株を二週間与えた結果、その体重増加率は対照組より顕著であった(p<0.05)、体重は平均毎週0.7-0.8キロ増加した;カゼイ菌の亜種SG96菌株を与えて三週間後、子豚の体重増加も対照組より多く、カゼイ菌の亜種SG96菌株は明らかに離乳前の子豚の体重増加を促進し、又、子豚飼料の飼料効率を改善できることがわかった。
【0044】
2.カゼイ菌の亜種SG96菌株による離乳前子豚の下痢を減少する効果
離乳前の子豚には下痢がよく見られるが、この下痢は通常親豚の哺乳又は環境要素によって起こり、子豚は下痢の状況がひどいために早死にすることがある、若し早期的に下痢を改善できれば、子豚の正常成長に役立つ。
酪農家において同一親豚から同期出産した離乳前子豚を選び、二組に分けて飼育した、一組は、毎日1*107 CFU/mLを含むカゼイ菌の亜種SG96菌株水溶液のみを与え、別の一組は対照組で、抗生物資(OTC,oxytetracycline)を与え、飼育時間は21日間で、毎週子豚の下痢状況を記録し、評定した、下痢の評定点数はUnderdahl等が発表した文献の基準によって行った、(Underdahl NR, Torres-Medina A, Dosten AR. 1982. Effect of Streptococcus faecium C-68 in control of Escherichia coli-induced diarrhea in gnotobiotic pigs. Am. J. Vet. Res. 1982. 12: 2227-2232),評定点数の説明:
0点=正常;
1点=軟便、肛門周囲が乾燥;
2点=肛門周囲に湿り;
3点=水性下痢;
4点=標準 1-3+食欲不振、体重減少とやつれ
【0045】
更に T-testで統計分析を行った。その結果を図13に示す。カゼイ菌の亜種SG96菌株を投与すると下痢を減少する効果があり、その効能は第二週目の対照組の効果と相似している。三週間投与すると、カゼイ菌の亜種SG96菌株による下痢の減少効果は対照組(抗生物質投与)より良く、且つ顕著な差異があった(p<0.05)、これはカゼイ菌の亜種SG96菌株には良好な下痢抑制効果があり、且つその成果は一般酪農家で使用される抗生物質より優れ、子豚の抗生物質残留問題をなくすことができる。
【0046】
上記詳細な説明は、本願発明の実行可能な実施例の具体的説明であり、但し前記実施例は、本願発明の特許請求範囲を制限するものではなく、凡そ本願発明の技芸精神を逸脱せずになされる等価実施又は変更、例えば、カゼイ菌の亜種SG96菌株を含有する菌抑制組成物の応用、及びカゼイ菌の亜種SG96菌株を含有する菌抑制組成物を製造するなど形式変化の等価実施例は、すべて本願の特許請求範囲に含まれるものとする。
【受託番号】
【0047】
名称:SG96、受託番号:CGMCC NO.2697

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに預けられ、受託番号はCGMCC 2697である新型カゼイ菌の亜種(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)SG96菌株。
【請求項2】
請求項1に記載のカゼイ菌の亜種SG96菌株を含有する組成物。
【請求項3】
前記組成物は、大腸菌(Escherichia coli)の成長を抑制するために使われることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)の成長を抑制するために使われることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、下痢を抑制するために使われることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、動物飲用水添加物・動物飼料添加物・動物用及び人類用医療組成物・食品添加物・飲料添加物・食品・飲用品・健康食品などの形式であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図1A】
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【図1B】
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【図5】
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【図6】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−161944(P2010−161944A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4843(P2009−4843)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(509013611)生展生物科技股▲分▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】