説明

新規なリポソームを調製するための方法および装置

開示されるのは、リポソーム製剤を調製するための方法である。開示された方法において、脂質画分を有機溶媒中に溶解する。生物活性成分脂質で被覆された粒子を調製するために、キャリアとともに、生物活性成分および脂質画分を含有する溶液を反応容器に入れ、超臨界流体をそこに導入する。プロリポソーム粒子を得るために、超臨界流体を圧縮により放出し、次いでリポソーム溶液を形成するために、プロリポソーム粒子を、水を含有する水溶液により水和する。好ましくは、製剤は、1または2以上の生物活性成分を含有してもよい。必要に応じ、リポソーム製剤を、粒径縮小、有機溶媒の除去、および凍結乾燥などの方法により、さらに処理してもよい。調製方法は、実験室規模で容易に実行することができる。さらには、同じ方法を、大量生産におけるまたは商業規模でのリポソーム製剤調製において採用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームを調製するための新規な方法、およびリポソームを調製するための装置に関し、好ましくは、リポソーム製剤は、1または2以上の生物活性成分を含有し得る。より具体的には、本発明は、リポソーム製剤を調製するための方法および装置に関し、ここで、該リポソーム製剤は、生物活性成分に対する安定性、および製剤安定性を有し、高収率で大量生産することができる。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、リン脂質およびそれらの誘導体を含有する小胞体である。それは、リン脂質およびそれらの誘導体が水中で分散するときに、小胞体を自然に形成し、水性の核をその内に含有する脂質二重層という特徴を有する。医学、薬学、および生化学の分野において、様々なリポソームが、遺伝子配列などの、薬剤、酵素、および治療剤のためのキャリアとして用いられてきた。
【0003】
リポソーム組成物の例は、米国特許登録第4,983,397号;第6,476,068号;第5,834,012号;第5,756,069号;第6,387,397号;第5,534,241号;第4,789,633号;第4,925,661号;第6,153,596号;第6,057,299号;第5,648,478号;第6,723,338号;第6,627,218号;米国特許公報第2003/0224037号;第2004/0022842号;第2001/0033860号;第2003/0072794号;第2003/0082228号;第2003/0212031号;第2003/0203865号;第2004/0142025号;第2004/0071768号;国際特許公報第WO 00/74646号;第WO 96/13250号;第WO 98/33481号;Papahadjopolulos D,Allen TM, Gbizon A, et al. "Sterically stabilized liposomes: Improvements in pharmacokinetics and antitumor therapeutic efficacy" Proc Natl Acad Sci U.S.A. (1991) 88: 11460-11464; Allen TM, Martin FJ. "Advantages of liposomal delivery systems for anthracyclines " Semin Oncol (2004) 31: 5-15 (suppl 13). Weissig et al. Pharm. Res. (1998) 15: 1552-1556において開示されている。
【0004】
リポソームを調製するための様々な方法が、本発明の技術分野において知られており、そのうちのいくつかが、Liposome Technology 2nd Edition in G.Gregoriadis, CRC Press Inc., Boca Raton (1993)において詳細に記載されている。
【0005】
これらの従来のリポソーム調製技術の場合では、小実験室規模的生産規模でリポソームを効率的に調製することが可能である。しかしながら、該技術は、大きな商業的生産規模では、リン脂質を溶解するために用いる有機溶媒の除去、および脂質メンブランを形成するための反応器のサイズなどのいくつかの問題により、リポソームを効率的に大量生産することは不可能であるという大きな問題を有している。
【0006】
商業規模的大量生産のためのリポソーム調製方法の1つとして、米国特許公開番号第2004/0175417号は、リポソームを調製するための方法を開示し、ここで、アムホテリシンBおよびリン脂質の複合体を、酸化クロロホルムおよびメタノールの混合溶液中で形成し、次いで脂質粉末を提供するために、スプレー乾燥する。しかしながら、乾燥スプレープロセスの間に有機溶媒を除去するために熱風を用いることから、この技術は、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの高沸点溶媒を採用することができないという大きな問題を有する。上述のDMA、DMFおよびDMSOなどの溶媒は、アムホテリシンBを十分に溶解し、溶解されたアムホテリシンBの安定性を維持することが一般的に知られている。
【発明の概要】
【0007】
発明の開示
技術課題
したがって、本発明者らは、リポソーム製剤を大量生産するための新しい方法の開発について、継続的に研究を実施してきた。結果として、超臨界流体を経てプロリポソームを調製することおよびプロリポソームを水和することにより得られたリポソーム溶液が、生物活性成分の高含有量、高負荷効率、および高安定性を有し、単純な装置により大量生産されることができるという事実に鑑み、彼らは本発明を完成した。
【0008】
これにより、本発明の目的は、リポソーム製剤を大量生産するための調製方法を提供することであり、ここで、リポソーム製剤は、生物活性成分の高含有量、高負荷効率、および高安定性、ならびに高製剤安定性を有する。
【0009】
本発明の別の目的は、リポソーム製剤を大量生産するためのリポソーム調製装置を提供することにあり、ここで、リポソーム製剤は、生物活性成分の高含有量、高負荷効率、および高安定性、ならびに高製剤安定性を有する。
【0010】
課題の解決策
本発明の一側面に従って、リポソーム製剤を調製するための方法が提供され、該方法は:
(a)リン脂質またはステロールから選択される少なくとも1種を含有する脂質画分、および生物活性物質(薬剤)を、有機溶媒中で溶解すること;
(b)脂質画分を含有する有機溶媒溶液を、糖キャリアとともに反応容器へ入れること、およびリポソームへ形成されることとなる薬剤−脂質被覆粒子(以降「プロリポソーム粒子」という)を調製するために、そこへ超臨界流体を導入すること;
(c)プロリポソーム粒子を得るために、圧縮により超臨界流体を放出すること;ならびに
リポソームを形成するために、プロリポソーム粒子を、水を含有する水溶液により水和すること
のステップを含む。
【0011】
一方、該方法は、リポソーム製剤を滅菌濾過すること;および/またはリポソーム製剤を凍結乾燥することのステップをさらに含み得る。
【式1】
【0012】
<本発明のリポソームの調製順序>


【0013】
本発明の別の側面に従って、リポソーム製剤調製方法を行う装置が提供され、該装置は:プロリポソーム粒子を調製するステップおよびリポソーム溶液を形成するステップが実行される反応容器;超臨界流体を受け入れるための超臨界流体貯蔵容器;該超臨界流体貯蔵容器から該反応容器に連結する、該超臨界流体を該超臨界流体貯蔵容器から該反応容器に輸送するための超臨界流体供給チューブ;該超臨界流体供給チューブ中に存在する、該輸送された超臨界流体の量を制御するための超臨界流体供給量調整ポンプ;該反応容器の内部に連結する、反応物質を該反応容器に提供するための反応物質導入部;該反応容器の内部に連結する、該反応容器における圧力を測定するための圧力計;該反応容器に連結する、該超臨界流体を放出するための超臨界流体放出チューブ;該超臨界流体放出チューブ中に存在する、該超臨界流体を放出するための減圧バルブ;ならびに該超臨界流体放出チューブ中に存在する、予め定められた圧力またはそれ以上を維持しながら該超臨界流体を放出するための背圧バルブを含む。
【0014】
以下において、本発明をより詳細に説明する。本発明による、リポソーム製剤を調製するための方法において、脂質画分を有機溶媒中で溶解し、混合溶液をキャリアとともに反応容器に入れる。次いで、プロリポソーム粒子を形成するために、超臨界流体をそこへ導入する。プロリポソーム粒子を得るために、超臨界流体を圧縮により放出し、次いでリポソーム溶液を形成するために、プロリポソーム粒子を、水を含有する水溶液により水和する。
【0015】
リポソームを構築する脂質画分において、リン脂質を、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、卵黄レシチン、大豆レシチン、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)、2,3−ジオレオイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、N,N−[ビス(2−ヒドロキシエチル)]−N−メチル−N−[2,3−ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル]アンモニウムヨージド、[N,N,N’,N’−テトラメチル−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレオイルオキシ)−1,4−ブタンジアンモニウムヨージド]、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE−C)、N,N,N,N−テトラメチル−N,N,N,N−テトラパルミチルスペルミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、N−t−ブチル−N’−テトラデシル−3−テトラデシルアミノプロピオンアミジン、およびジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE−D)を含む群から選択してもよいが、それらに限定されない。また、上述のリン脂質を組み合わせて用いてもよい。さらに、かかるリン脂質は、多種のソースから商業的に入手可能な試薬を含有し、限定されないが、例えば、Lipofect ACE (Life Technologies)、Lipofection (Life Technologies)、LipofectAmine (Life Technologies)、CeliFectin (Life Technologies)、DMRIE-C (Life Technologies)、DDAB (Sigma)、DC-Chol (Sigma)、DOTAP (Boehringer Mannheim, Avanti Polar lipid s, Biontex)、MRX-230 (Avanti Polar lipids)、MRX-220 (Avanti Polar lipids)、Transfectam (Promega)、Transfast (Promega)、Tfx 10(Promega)、Tfx 20(Promega)、Tfx 50 (Promega)、Prefection-CaPO4 (Promega)、Prefection-DEAE-Dextran (Promega)、GeneSHUTTLE-40(Quantum BiotechnoIogies)、CLONfectin(Clontech)、METAFECTENE(Biontex)、INSECTOGENE(Biontex)、Effectene(Qiagen)、FuGENE 6 (Roche Molecular Biochemicals)、GENESEAL (MTTI)を含む。ホスファチジルグリセロールは、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、および他の可能なホスファチジルグリセロール誘導体を含み得る。
【0016】
リポソームを構築する脂質画分において、ステロールを、コレステロール、コレステロールヘキササクシネート、エルゴステロール、ラノステロール、およびそれらの組み合わせを含む群から選択してもよいが、それらに限定されない。好ましくは、コレステロールを用いもよい。
【0017】
脂質画分を含有する有機溶媒を調製するための溶媒を、生物活性成分溶解性溶媒および脂質画分溶解性溶媒に分ける。生物活性成分溶解性溶媒を、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノールおよびそれらの組み合わせを含有する群から選択してもよいが、それらに限定されない。好ましくは、ジメチルアセトアミドを用いてもよい。脂質画分溶解性溶媒を、クロロホルム、メタノール、エタノール、エーテルおよびそれらの組み合わせを含む群から選択してもよいが、それらに限定されない。好ましくは、メタノールおよびクロロホルムの混合物を用いいてもよい。また、生物活性成分溶液を脂質画分と混合するときに、沈殿が生じないことが好ましい。溶媒は、後ほど超臨界流体により除去されることとなる成分であり、有機溶媒除去ステップのプロセス時間を縮小するために、好ましくは、最小量において用いられる。
【0018】
生物活性成分は、自律神経調節薬、コルチコステロイド、利尿薬、鎮痛薬、性ホルモン、麻酔薬、駆虫薬、抗ヒスタミン薬、原虫駆除剤、抗貧血薬、心血管疾患剤、抗不安剤、抗喘息薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗利尿薬、解毒薬、抗てんかん薬、抗真菌剤、抗高脂血症剤、抗高リポタンパク血症薬、抗高血圧薬、抗低血圧薬、抗生物質薬、鎮痛薬、抗偏頭痛薬、抗糸状菌薬、抗嘔吐薬、抗ガン剤、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、抗乾癬薬、神経精神剤、抗血小板剤、鎮咳去たん剤、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、強心薬、利尿薬、催吐薬、抗潰瘍薬、ホルモン、免疫調節薬、筋肉弛緩薬、神経遮断薬、血管拡張薬、抗ウイルス薬、殺虫薬、タンパク質薬剤、遺伝子薬剤および抗体薬を含む群から選択される1または2以上のものであってもよい、生理学的活性物質である。
【0019】
当該技術分野において知られている従来の方法による、生物活性成分溶液を調製するステップにおいて、溶解性を増加させるために、生物活性成分の物理化学的特性を考慮して、酸性またはアルカリ性成分を少量添加してもよい。酸性条件において、溶解性が増加したときは、アスコルビン酸、塩酸、または酢酸などの酸を少量添加ししてもよい。次いで、酸の添加後は、中和のために、ナトリウムヒドロキシドなどの塩基を添加してもよい。同じ手段で、塩基性条件において、溶解性が増加したときは、アルカリ金属などの塩基性物質を添加して溶解してもよい。次いで、中和のために、酸を添加してもよい。
【0020】
糖キャリアとして、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、またはそれらの組み合わせを用いてもよいが、本発明はそれらに限定されない。好ましくは、ラクトースを用いてもよい。かかる糖は、キャリアとしての役割を行い得るのみならず、水和を経たリポソームの調製の後、貯蔵の便宜のためにリポソームを凍結乾燥する間に、リポソームの物理的構造を安定化させる役割をも行い得る。
【0021】
超臨界流体として、超臨界二酸化炭素、超臨界一酸化窒素、超臨界アセチレン、超臨界トリフルオロメタン、超臨界プロパン、超臨界エチレン、超臨界クロロフルオロカーボンまたは超臨界キセノンを用いてもよいが、本発明はそれらに限定されない。
【0022】
プロリポソーム粒子を調製するステップにおいて、超臨界流体および有機溶媒を混合して平衡状態に達するまで、予め定められた時間が必要とされる。必要な時間は、サンプルの量によって、約1〜30分の範囲であり得る。ステップにおける反応を、超臨界流体状態を維持するためのものより高い温度および圧力で行い得る。超臨界二酸化炭素を超臨界流体として用いるときは、圧力は120〜300barの範囲にあり、好ましくは150barであり、温度は35〜70℃の範囲にあり、好ましくは45℃である。また、反応の間の混合を促進するために、撹拌デバイスが用いられ、混合を継続的に実行してもよい。撹拌機の回転速度は、好ましくは200〜500rpmの範囲にある。超臨界流体および有機溶媒の混合物が均質な状態に達した時点に基づき、反応が平衡状態に達したか否かを決定することが可能である。
【0023】
平衡に達した後に残留する有機溶媒を除去するために、追加の超臨界流体を供給するためのステップを行う。超臨界流体の供給速度は、適適切には5〜20ml/分の範囲にある。このステップの間、予め定められた圧力および予め定められた温度を、反応容器内の超臨界状態を維持することができるような手段で維持する。このステップに必要な時間は、有機溶媒の量によって、約10分〜1時間の範囲にあり得る。また、超臨界流体は、揮発性有機溶媒のみならず、従来の方法により除去することに困難を有する非揮発性有機溶媒(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミド、ジメチルスルホキシドなど)をも容易に除去することができるという利点を有する。
【0024】
有機溶媒を完全に除去した後、プロリポソーム粒子を得るために、減圧により超臨界流体を放出するためのステップを行う。減圧速度は、適切には10〜200bar/分の範囲にある。減圧プロセスの間に、プロリポソーム粒子の損失がないことに留意しなければならない。また、高圧を維持して減圧を行いながら、滅菌を実行するという利点がある。
【0025】
得られたプロリポソーム粒子をリポソーム溶液中へ形成するために、粒子を水溶液中へ水和させるためのプロセスを、相転移温度またはそれ以上で水を含有させることにより任意に行ってもよい。水溶液の容量は、適切には5〜20mlの範囲にあり、水溶液の温度は、適切には45〜95℃、好ましくは65〜80℃の範囲にある。このプロセスを経て、キャリア表面上に形成された薄膜としての薬剤脂質膜は、相転移温度またはそれ以上で水溶液中で、液体薄膜法のものと同じ原理でリポソームを形成する。一般に、薬剤脂質膜は、液体薄膜法よりも広い表面積を有し、よって水和の後に、より小さく、より均一なリポソーム粒子を形成する。
【0026】
粒径を縮小するために、調製されたリポソームを、マイクロフルイダイザーに任意に通過させてもよい。このプロセスに必要な時間は、適切には1〜10分の範囲にあり、温度は、適切には45〜95℃、好ましくは65〜85℃の範囲にある。
【0027】
貯蔵の便宜のために、調製されたリポソームを、任意に凍結乾燥させてもよい。プロリポソームの調製においてキャリアとして用いる糖は、水和の間に水を含有する水溶液中で溶解されることにより、凍結乾燥の間に、リポソームの物理的構造を安定化させ得る。糖キャリアとして、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、またはそれらの組み合わせを用いてもよいが、本発明はそれらに限定されない。好ましくは、ラクトースを用いてもよい。リポソーム溶液を凍結乾燥することにより形成されるケーキ、プラーク、または粉末を、滅菌水を用いるときはこれによる再構築を経て、投与してもよい。
【0028】
本発明による調製されたリポソーム製剤を、非経口注射、および経皮、経鼻、および吸入薬剤送達のために用いてもよい。かかる製剤に必要とされる技術、ならびに薬学的に受容可能なキャリアおよび添加剤は薬学分野における当業者に広く知られており、Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed., 1995)を参照し得る。
【0029】
本発明の別の側面によると、本発明によるリポソームを調製するための装置は:プロリポソーム粒子を調製するステップおよびリポソーム溶液を形成するステップが実行される反応容器;超臨界流体を受け入れるための超臨界流体貯蔵容器;該超臨界流体貯蔵容器から該反応容器に連結する、該超臨界流体を該超臨界流体貯蔵容器から該反応容器に輸送するための超臨界流体供給チューブ;該超臨界流体供給チューブ中に存在する、該輸送された超臨界流体の量を制御するための超臨界流体供給量調整ポンプ;該反応容器の内部に連結する、反応物質を該反応容器に提供するための反応物質導入部;該反応容器の内部に連結する、該反応容器における圧力を測定するための圧力計;該反応容器に連結する、該超臨界流体を放出するための超臨界流体放出チューブ;該超臨界流体放出チューブ中に存在する、該超臨界流体を放出するための減圧バルブ;ならびに該超臨界流体放出チューブ中に存在する、予め定められた圧力またはそれ以上を維持しながら該超臨界流体を放出するための背圧バルブを含有する。
【0030】
装置において、好ましくは、撹拌デバイスが反応容器内に存在し、反応容器内の撹拌デバイスが回転により反応物質を混合できるように、反応容器がそれ中にまたはその外部に、撹拌機を含んでもよい。
【0031】
本発明の一態様による、リポソーム調製装置の擬態的な概略図を、図1に示す。本発明の一態様による装置を用いることによるアムホテリシンB含有リポソームを調製するための方法を図1に示し、以下の例において記載する。
【0032】
図1に示された本発明のリポソーム調製方法を行うための装置は、従来の、超臨界流体を用いるリポソーム調製装置(US 5,776,486)よりもずっと単純な構造を有し、よって、リポソーム調製方法をより都合よくおよびより経済的に行うことができる。
【0033】
発明の有利な効果
上記のように、本発明の方法によると、生物活性成分の高含有量、高負荷効率、および高安定性、ならびにリポソームの高製剤安定性を有するリポソームを調製することが可能である。また、本発明による、高度に単純化されたプロセスのため、リポソーム製剤を調製するための方法を、単純な装置により実行することができ、実験室規模で容易に実行することができる。さらには、大量生産において同じ方法を採用することができ、高経済効率をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0034】
前述したものならびに本発明の他の目的、特徴および利点は、添付する図面と併せると、下記の詳細な説明からより明白であり、該図面において:
【0035】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソーム製剤を調製するための方法であって、該方法は:
(a)リン脂質およびステロールから選択される少なくとも1種を含む脂質画分、ならびに生物活性物質を、有機溶媒中で溶解すること;
(b)ステップ(a)の有機溶媒溶液を、糖キャリアとともに反応容器中へ入れること、および、脂質生物活性物質混合物で被覆されたプロリポソーム粒子を調製するために、そこへ超臨界流体を導入すること;
(c)該プロリポソーム粒子を得るためにステップ(b)における該超臨界流体を、圧縮により放出すること;ならびに
(d)リポソーム溶液を形成するために、ステップ(c)における該プロリポソーム粒子を、水を含む水溶液により水和すること
のステップを含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(d)におけるリポソーム溶液を、マイクロフルイダイザーに通過させることにより、リポソーム粒径を縮小するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リン脂質が、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、卵黄レシチン、大豆レシチン、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)、2,3−ジオレオイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、N,N−[ビス(2−ヒドロキシエチル)]−N−メチル−N−[2,3−ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル]アンモニウムヨージド、[N,N,N’,N’−テトラメチル−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレオイルオキシ)−1,4−ブタンジアンモニウムヨージド]、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE−C)、N,N,N,N−テトラメチル−N,N,N,N−テトラパルミチルスペルミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、N−t−ブチル−N’−テトラデシル−3−テトラデシルアミノプロピオンアミジン、およびジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE−D)を含む群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステロールが、コレステロール、コレステロールヘキササクシネート、エルゴステロール、およびラノステロールを含む群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール、およびエーテルを含む群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
生物活性物質が、自律神経調節薬、コルチコステロイド、利尿薬、鎮痛薬、性ホルモン、麻酔薬、駆虫薬、抗ヒスタミン薬、原虫駆除剤、抗貧血薬、心血管疾患剤、抗不安剤、抗喘息薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗利尿薬、解毒薬、抗てんかん薬、抗真菌剤、抗高脂血症剤、抗高リポタンパク血症薬、抗高血圧薬、抗低血圧薬、抗生物質薬、鎮痛薬、抗偏頭痛薬、抗糸状菌薬、抗嘔吐薬、抗ガン剤、抗パーキンソン病薬、抗乾癬薬、神経精神剤、抗血小板剤、鎮咳去たん剤、抗潰瘍薬、気管支拡張薬、強心薬、利尿薬、催吐薬、抗潰瘍薬、ホルモン、抗高脂血症剤、免疫調節薬、筋肉弛緩薬、神経遮断薬、血管拡張薬、抗ウイルス薬、殺虫薬、タンパク質薬剤、遺伝子薬剤および抗体薬を含む群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
生物活性物質がアムホテリシンBである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
糖キャリアが、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトールおよびキシリトールを含む群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
超臨界流体が、超臨界二酸化炭素、超臨界一酸化窒素、超臨界アセチレン、超臨界トリフルオロメタン、超臨界プロパン、超臨界エチレン、超臨界クロロフルオロカーボンおよび超臨界キセノンを含む群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
調製されたリポソームを滅菌濾過するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
調製されたリポソームを凍結乾燥するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の方法を行うための装置であって、該装置は:
プロリポソーム粒子を調製するステップおよびリポソーム溶液を形成するステップが実行される反応容器;
超臨界流体を受け入れるための超臨界流体貯蔵容器;
該超臨界流体貯蔵容器から該反応容器に連結する、該超臨界流体を該超臨界流体貯蔵容器から該反応容器に輸送するための超臨界流体供給チューブ;
該超臨界流体供給チューブ中に存在する、該輸送された超臨界流体の量を制御するための超臨界流体供給量調整ポンプ;
該反応容器の内部に連結する、反応物質を該反応容器に提供するための反応物質導入部;
該反応容器の内部に連結する、該反応容器における圧力を測定するための圧力計;該反応容器に連結する、該超臨界流体を放出するための超臨界流体放出チューブ;該超臨界流体放出チューブ中に存在する、該超臨界流体を放出するための減圧バルブ;ならびに
該超臨界流体放出チューブ中に存在する、予め定められた圧力またはそれ以上を維持しながら該超臨界流体を放出するための背圧バルブ
を含む、前記装置。
【請求項13】
撹拌デバイスが反応容器内に存在し、該反応容器がそれ自体中にまたはその外部に撹拌機を含む、請求項12に記載の装置。

【図1】図1は、本発明の一態様による、アムホテリシンB含有リポソームを調製するための装置を図解する擬態的な概略図である。
【0036】
<符号の説明>
1:反応容器
2:流体貯蔵容器
3:超臨界流体供給チューブ
4:超臨界流体供給量調整ポンプ
5:反応物質導入部
6:圧力計
7:超臨界流体放出チューブ
8:減圧バルブ
9:磁気バー
10:磁気撹拌機
11:背圧レギュレーター
【0037】
発明のための形態
以下において、本発明は、以下の例を参照してより詳細に説明される。しかしながら、例は、本発明の範囲をいかなる点においても限定するものではなく、本発明の理解を助けるためだけのものである。
【0038】
例1a〜1fおよび2a〜2d:アムホテリシンBリポソームの調製
84mgのジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を、1mlのクロロホルムおよびメタノールの1:1混合溶媒中で、65℃で溶解した。200mgのアスコルビン酸(VIt−C)を、10分間の超音波処理を経て、2mlのN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)に完全に溶解した。50mgのアムホテリシンBを、DMA−Vit C溶液中に65℃で溶解し、得られた溶液に、DSPC溶液を添加した。213mgの水素添加ホスファチジルコリンおよび52mgのコレステロールを、1mlのクロロホルムおよびメタノールの1:1混合溶媒中で、65℃で溶解した。水素添加ホスファチジルコリンおよびコレステロールの溶液を、アムホテリシンB−DSPG溶液と混合した。
【0039】
アムホテリシンB脂質溶液および900mgのラクトースを、反応容器1において受け入れ、この後密閉した。反応容器の温度を、45、55および65℃で維持した。ポンプ4の作動を経て、超臨界二酸化炭素を、気体貯蔵容器2から反応容器1に超臨界流体供給チューブ3を介して注入し、次いで、圧力計6を用いて、圧力を150、200、250、および300barで維持した。撹拌機10の作動を経て、反応容器を40分間500rpmで回転させ、その間、材料は平衡状態にまで混合された。残留する有機溶媒を除去するために、反応容器に追加の超臨界二酸化炭素を注入した。次いで、減圧バルブ8を開けることにより、超臨界二酸化炭素を、超臨界流体放出チューブ7を経て放出して、その間、反応容器を、気圧まで徐々に減圧した。減圧の後、反応容器から、薬剤および脂質で被覆されたラクトース粒子を得た。粒子に、水溶液(10mlの水を含有している)を55、65、75、および85℃で添加し、リポソーム溶液を提供するために、30分間撹拌した。
【0040】
上記のように得られたリポソームの粒径を、電気泳動光散乱分光光度計(ELS−8000)により測定し、薬剤含有量を測定した。例の結果を以下に示す。
【0041】
例1は、超臨界プロセスにおける反応容器の温度および圧力によるリポソーム溶液の特性に関する。例1a〜1fにおいて、反応容器の温度および圧力による粒径および薬剤含有量を、表1に記す。例2は、例1aに対応する超臨界プロセスにおいて、45℃の反応温度および200barの圧力で調製されたプロリポソーム粒子を、水溶液(水を含有している)の添加により水和するときの水和温度によるリポソーム溶液の特性に関する。例2a〜2dにおける水和温度による粒径、薬剤含有量、およびリポソームの形成/非形成を、表2に記す。
【0042】
表1
【表1】
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【0043】
表2
【表2】
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【0044】
実験例1:凍結乾燥に対するアムホテリシンB含有リポソームの安定性
本発明によるアムホテリシンB含有リポソームの貯蔵の容易性を改善するために、凍結乾燥を実行し、安定性をテストした。
【0045】
該例の条件のうち、45℃および200barでプロリポソームを調製することおよび65℃での水和を実行することにより調製されたリポソームを、リポソームの粒径を縮小するために、マイクロフルイダイザーに通過させた。次いで、リポソームを凍結乾燥させ、蒸留水を再分散溶液として用いることにより、再構築した。凍結乾燥の前後に、各リポソームのサイズ、ゼータポテンシャル、薬剤含有量、および負荷効率を測定した。結果を、表3に簡単に記す。
【0046】
表3
【表3】
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【0047】
結果によると、超臨界プロセスより調製されたリポソームは、凍結乾燥の後であっても、平均サイズ、ゼータポテンシャル、薬剤含有量、および負荷効率を維持することができ、よって凍結乾燥を用いて、リポソーム製剤を長時間保存することができる。
【0048】
産業上の利用可能性
本発明のいくつかの例示的な態様を、図解的な目的のために記載してきたが、当該技術分野における当業者は、添付する特許請求の範囲において開示された発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な改変、付加および置換が可能であることを認識するであろう。
【図1】
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【公表番号】特表2013−520492(P2013−520492A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554934(P2012−554934)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001303
【国際公開番号】WO2011/105835
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512141596)ビーシーワールド ファーム. カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】