説明

新規な基質特異性を有するI−MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型及びその使用

±8位〜±10位に変動を有する変異I-MsoI部位を切断できるI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターにより改変された細胞、動物又は植物。遺伝子工学、ゲノム療法及び抗ウイルス療法のための上記のI-MsoIエンドヌクレアーゼ変異型及び派生生成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な基質特異性を有するI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターで改変された細胞、動物又は植物、並びに該I-MsoIエンドヌクレアーゼ変異型及びその派生生成物の、遺伝子工学、ゲノム療法及び抗ウイルス療法のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の遺伝子座を工学的に改変する(engineer)ためのストラテジーのうち、メガヌクレアーゼのようなレアカットDNAエンドヌクレアーゼの使用が、DNA二本鎖破断(DSB)の作製による相同遺伝子ターゲティングを増大させる強力なツールとして出現している。メガヌクレアーゼは、大きい(>12 bp)配列を認識し、よって、全体的なゲノムの完全性に影響することなくその同族の部位を切断できる。天然メガヌクレアーゼであるホーミングエンドヌクレアーゼは、可動性のイントロン又はインテインによりコードされるタンパク質のいくつかの大きいファミリーを構成する。これらの標的配列は、イントロン又はインテインを欠失した相同対立遺伝子座で通常見出され、切断は、可動性のエレメントを、DSB誘発相同組換えの機構により、破断された配列内に移動させることを開始する。I-SceIは、哺乳動物細胞のゲノム標的にて相同組換えを1000倍を超えて刺激するのに用いられた最初のホーミングエンドヌクレアーゼである(Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15:1968〜1973; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998; 18:1444〜1448; Donohoら, Mol. Cell. Biol., 1998;18:4070〜4078; Alwinら, Mol. Ther., 2005, 12:610〜617; Porteus, M. H., Mol. Ther., 2006, 13:438〜446; Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14:8096〜8106)。最近、I-SceIを用いて、マウス肝臓においてインビボで標的化された組換えが刺激され、組換えは、肝細胞の1 %までで観察できた(Goubleら, J. Gene Med., 2006, 8:616〜622)。しかし、このような方法論の固有の制限は、これが、興味対象の遺伝子座へ天然の切断部位を予め導入することを必要とすることである。これは、なぜなら、天然のメガヌクレアーゼにより切断され得る配列のレパートリーが、ゲノムの複雑さに対処するには制限されすぎており、選択された遺伝子内には、通常、切断部位が存在しないからである。この制限を回避するために、過去数年にわたって著しい努力がなされ、仕立てられた切断特異性を有するエンドヌクレアーゼが作製されている。このようなタンパク質を用いて、真性の染色体配列を切断でき、広い応用範囲のゲノム工学のための新しい展望を開くことができた。例えば、メガヌクレアーゼを用いて、単一遺伝子遺伝性疾患に関連する変異の修正を誘発し、現在の遺伝子療法アプローチで用いられる無作為に挿入される導入遺伝子による危険性を回避する(Hacein-Bey-Abinaら, Science, 2003, 302, 415〜419)。
【0003】
ジンクフィンガータンパク質(ZFP)と、クラスIIS制限エンドヌクレアーゼであるFokIの触媒ドメインとの融合体を用いて、機能的配列特異的エンドヌクレアーゼが作製された(Smithら, Nucleic Acids Res., 1999, 27, 674〜681; Bibikovaら, Mol. Cell. Biol., 2001, 21, 289〜297 ; Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175 ; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764 ; Porteus, M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300, 763〜 ; Alwinら, Mol. Ther., 2005, 12, 610〜617; Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651; Porteus, M.H., Mol. Ther., 2006, 13, 438〜446)。このようなヌクレアーゼは、最近、リンパ系列からのヒト細胞におけるILR2G遺伝子を工学的に改変するために用いることができた(Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651)。
【0004】
Cys2-His2型のジンクフィンガータンパク質の結合特異性は、これらが単純(フィンガーあたり実質的に4残基により駆動される特異性)でモジュール性の(modular)システムを示すので、操作するのが容易である(Paboら, Annu. Rev. Biochem., 2001, 70, 313〜340 ; Jamiesonら, Nat. Rev. Drug Discov., 2003, 2, 361〜368)。Pabo (Rebar, E.J.及びC.O. Pabo, Science, 1994, 263, 671〜673 ; Kim, J.S.及びC.O. Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 1998, 95, 2812〜2817)、Klug (Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167 ; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)及びBarbas (Choo, Y.及びA. Klug, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 11163〜11167 ; Isalan M.及びA. Klug, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)の実験室からの研究は、ほとんどのG/ANNG/ANNG/ANN配列に結合できる新規な人工ZFPの大きいレパートリーをもたらした。
【0005】
にもかかわらず、ZFPは、特に、治療用途のような非常に高レベルの特異性を必要とする用途について制限があるかもしれない。融合体でのFokIヌクレアーゼ活性は2量体として作用するが、最近、これが、2つの単量体のうちの1つのみがDNAと結合するか、又は2つの単量体が2つの異なるDNA配列と結合したときにDNAを切断できたことが示された(Cattoら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 1711〜1720)。よって、特異性は、哺乳動物細胞(Porteus, M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300, 763)及びショウジョウバエ(Drosophila) (Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764〜)における毒性により示されるように、非常に退化しているかもしれない。
【0006】
それらの例外的な切断特性に鑑みて、ホーミングエンドヌクレアーゼは、仕立てられたエンドヌクレアーゼを工学的に作製するために理想的な足場であり得る。最も広く普及したホーミングエンドヌクレアーゼであるLAGLIDADGタンパク質からのDNA結合ドメインを工学的に改変できたことが、いくつかの研究において示されている(Chevalier, B. S.及びStoddard B. L., Nucleic Acids Res. 2001; 29:3757〜74)。LAGLIDADGとは、このファミリーを通して実際に保存され、タンパク質内で1つ又はより頻繁には2つのコピーが見出されている唯一の配列のことである(Lucasら, Nucleic Acids Res., 2001, 29:960〜969)。単一モチーフを有するタンパク質、例えばI-CreI及びI-MsoIは、ホモ2量体を形成し、パリンドローム又は偽パリンドローム(pseudo-palindromic)のDNA配列を切断するが、より大きい2重モチーフタンパク質、例えばI-SceIは単量体であり、非パリンドローム標的を切断する。いくつかの異なるLAGLIDADGタンパク質は結晶化されており、これらは、1次配列のレベルでの類似性の欠失とは対照的に、コア構造の非常に顕著な保存を示す(Juricaら, Mol. Cell., 1998; 2:469〜476; Chevalierら, Nat. Struct. Biol. 2001; 8:312〜316; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329:253〜69, Moureら, J. Mol. Biol., 2003, 334:685〜695; Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9:764〜770; Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300:889〜901; Duanら, Cell, 1997, 89:555〜564; Bolducら, Genes Dev., 2003, 17:2875〜2888; Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286:1123〜1136)。このコア構造において、2つの単量体又は2重LAGLIDAGタンパク質中の2つのドメインが貢献する2つの特徴的なαββαββα折り畳みは、2回回転対称により互いに面している。DNA結合は、逆平行βシートに折り畳まれ、DNAヘリックス主溝上にサドルを形成する各ドメインからの4つのβ鎖に依存する。触媒コアは、対称の単量体/ドメインの貢献により、中央にある。このコア構造に加えて、他のドメインを見出すことができる。例えば、インテインであるPI-SceIは、タンパク質スプライシングドメインと、さらなるDNA結合ドメインとを有する(Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9:764〜70, Grindlら, Nucleic Acids Res. 1998, 26:1857〜1862)。
【0007】
PI-SceI (Gimbleら, J. Mol. Biol., 2003, 334:993〜1008)、I-CreI (Seligmanら, Nucleic Acids Res. 2002, 30:3870〜3879; Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342:31〜41; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853、WO 2007/060495及びWO 2007/049156; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Rosenら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, 4791〜4800 ; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)、I-SceI (Doyonら, J Am Chem Soc., 2006, 128:2477〜2484)及びI-MsoI (Ashworthら, Nature, 2006, 441:656〜659)を含むいくつかのLAGLIDAGタンパク質は、合理的又は半合理的突然変異誘発及びスクリーニングにより改変して、新しい結合又は切断特異性を獲得できた。
【0008】
別のストラテジーは、I-CreIとI-DmoIとの間でのドメイン交換による新しいメガヌクレアーゼの創出であり、2つの半分の(half)親標的配列の融合に相当するハイブリッド配列を切断するメガヌクレアーゼの作製を導いた(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31:2952〜2962; Chevalierら, Mol. Cell. 2002, 10:895〜905; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。
【0009】
最近、ハイスループットスクリーニング法により支援された半合理的設計により、I-CreIからの数千の新規なタンパク質が導かれた(Smithら, Nucleic Acids Res. 2006, 34, e149; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355:443〜458; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853、WO 2007/060495及びWO 2007/049156)。このようなアプローチにおいて、タンパク質/DNAの共結晶構造を調べた後に、タンパク質残基の限定された組が選択され、無作為化される。ハイスループットスクリーニング(HTS)技術と組み合わせて、この方法は、改変された特異性を有する数百のホーミングエンドヌクレアーゼ誘導体の同定を迅速にもたらすことができる。
【0010】
さらに、変異のコンビナトリアル組み立てを可能にするのに充分に独立したDNA結合サブドメインが同定された(Smithら, Nucleic Acids Res. 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049095及びWO 2007/057781)。これらの知見は、選択された標的を切断する工学的I-CreI誘導体の第2世代の生成を可能にした。このコンビナトリアルストラテジーは、ヒトRAG1及びXPC遺伝子内にある天然DNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼの作製により説明される(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2007, 371:49〜65; 国際PCT出願WO 2007/093836及びWO 2007/093918)。
【0011】
しかし、4つまでのサブドメインを組み合わせる能力が標的にされ得るDNA配列の数を著しく増大させるが、到達できる配列の範囲を完全に認識することは、まだ困難である。最もわかりにくい因子の1つは、I-CreI標的部位の4つの中央ヌクレオチドの影響である。この領域内での基本的な特異的タンパク質-DNA相互作用がないにもかかわらず、無作為に突然変異させた部位のライブラリーからの切断可能なI-CreI標的のインビトロ選択は、これらの4塩基対が切断活性に重要であることを明らかにした(Argastら, J. Mol. Biol., 1998, 280:345〜353)。より一般的には、全てのそしていずれの22 bp配列も切断する工学的メガヌクレアーゼを単独のI-CreI足場から導くことはできないようであり、単量体LAGLIDADGタンパク質を含むその他のタンパク質も用いることができるだろう。
【0012】
I-MsoIは、モノマスティックス種(Monomastix sp.)からのホーミングエンドヌクレアーゼである。これは、ホモ2量体タンパク質であり、I-CreIと36%の配列同一性を有する。そのDNA標的は、-9位及び+10位の2つの違いのみで、I-CreIの標的と近接に関係している(図1)。さらに、I-CreIとI-MsoIはともに、互いのDNA標的を切断し、よって、アイソシゾマーである(Chevalierら, J. Mol. Biol. 2003, 329:253〜69)。そのDNA標的との複合体中のI-MsoIの構造は解明されており(Chevalierら, J Mol. Biol., 2003, 329:253〜269)、図2に示す。構造解析により、DNA標的の類似性にもかかわらず、I-MsoIとI-CreIによるDNA認識は、異なる組の相互作用パターンに依存することが示された。
【0013】
±6位についての新しい切断特異性を有するI-MsoI単独変異型(K28L、T83R)が、コンピュータによるアプローチに依存する純粋な合理的プロセスを用いて設計された(Ashworthら, Nature, 2006, 441:656〜659)。
【0014】
コンピュータモデルを用いて、I-MsoI部位と特異的に相互作用する特定のアミノ酸残基を同定し、I-MsoI部位配列内の個別の塩基に対する特異性を変更する特定のアミノ酸置換を予測した(国際PCT出願WO 2007/047859)。これらの予測によると、I-MsoI部位の±8位、±9位及び±10位のヌクレオチドに対する特異性は、それぞれI30、S43及びI85 (±8位)、Q41及びR32 (±9位)、並びにY35及びR32 (±10位)の特定の置換により変更されるはずである(WO 2007/047859の第41頁、表2)。しかし、このアプローチは、実験的に確認されておらず、I-MsoI部位の±8位、±9位及び±10位のヌクレオチドに対して改変された切断特異性を実際に有する、予測された変異を有するI-MsoI変異型は示されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
I-CreIタンパク質を工学的に改変するために、以前に記載されたものと非常によく似た半合理的アプローチを用いることにより、本発明者らは、±10位、±9位及び±8位にて異なる31個の変異DNA標的部位を全て標的にする約100個の新規なI-MsoI変異型を工学的に作製した。
【0016】
これらの変異型は、国際PCT出願WO 2007/047859で予測されたものとは異なる、I-MsoI配列の32位及び/又は41位の変異を有する。さらに、本発明者らは、WO 2007/047859の表2で述べられていることとは逆に、32位及び41位の特定のアミノ酸残基と、±10位、±9位及び±8位の特定のヌクレオチドg、t、a又はcとの間に関連がないことを示した。これらの結果は、そのDNA標的との複合体中のI-MsoIの構造が解明されたが、MsoIの特異性を変更することは複雑な問題であることを示す。
【0017】
±8、±9及び/又は±10のヌクレオチドに対する新しい基質特異性を有するこれらの変異型は、メガヌクレアーゼが標的にできるDNA配列の数を増大させる。可能性のある応用は、遺伝子工学、ゲノム工学、遺伝子療法及び抗ウイルス療法である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
よって、本発明は、
(a) P31、R32、P33、Y35、Q41及びS43からなる群より選択されるI-MsoIアミノ酸配列の1つ以上の位置にてアミノ酸変動を有するI-MsoI変異型のライブラリーを構築し、
(b)±8〜10位の1つ以上のヌクレオチドが異なるヌクレオチドに置き換えられた変異I-MsoI部位からなるDNA標的のパネルに対する工程(a)からの変異型の切断活性をアッセイし、
(c) 親のI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼのものとは異なる切断されるDNA標的パターンを有する工程(b)からの変異型を選択/スクリーニングする
ことを含む、新規な基質特異性を有するI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を工学的に作製する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】DNA標的を表す。
【図2】Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269 (PDBコード1M5X)による、DNA標的との複合体にあるI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼの構造を表す。
【図3】本研究において無作為化のために選択された結合界面の領域を表す。
【図4】pCLS1055レポーターベクターマップを表す。
【図5】pCLS0542メガヌクレアーゼ発現ベクターマップを表す。
【図6】8つの10NNN_P標的に対する、Mlib1ライブラリーからのI-MsoI変異体の1次スクリーニングの例を示す。
【図7】64個の10NNN_P標的に対するI-MsoI及びI-MsoI変異型のヒットマップ(hitmap)を示す。
【図8】31個のDNA標的を切断するI-MsoI変異型の切断パターンを表す。
【図9】I-MsoIの32位及び41位の所定の残基と、標的の±10位、±9位及び±8位の塩基(10NNN)との間の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表し、例えばPはPro又はプロリン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、YはTyr又はチロシン残基を意味する。
- ヌクレオチドは、次のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa (プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc (ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0021】
- 「メガヌクレアーゼ」により、12〜45 bpの二本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意図する。
- 「ホモ2量体LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ」により、単独LAGLIDADGモチーフを有し、パリンドロームDNA標的配列を切断するI-CreI若しくはI-MsoIのような野生型ホモ2量体LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又はその機能的変異型を意図する。
- 「I-MsoI」により、pdbアクセッションコード1M5X_A又は1M5X_B (配列番号1)の配列を有する野生型I-MsoIを意図する。
【0022】
- 「I-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型」、「メガヌクレアーゼ変異型」又は「変異型」により、I-MsoI配列の少なくとも1つのアミノ酸を異なるアミノ酸に置き換えることにより得られるタンパク質を意図する。本発明によると、変異されるアミノ酸残基は、I-MsoI配列である配列番号1中の位置により示される。例えば、P31とは、配列番号1の配列の31位のプロリン残基のことである。
- 「機能的変異型」により、DNA標的、好ましくは、I-MsoIにより切断されない新しいDNA標的を切断できるI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を意図する。例えば、このような変異型は、直接若しくは間接的に該DNA標的配列と相互作用する位置にてアミノ酸変動を有する。
【0023】
- 「親のI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ」により、I-MsoI又はその機能的変異型を意図する。上記の親のI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼは、22〜24 bpの二本鎖DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼに組み合わされる2つのI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ単量体/コアドメインを含む2量体(ホモ2量体又はヘテロ2量体)である。
- 「新規な特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼ変異型」により、親のホーミングエンドヌクレアーゼのものとは異なる切断されるDNA標的のパターン(切断プロフィール)を有する変異型を意図する。変異型は、親のホーミングエンドヌクレアーゼより少ない(制限されたプロフィール)又はより多い標的を切断できる。好ましくは、変異型は、親のホーミングエンドヌクレアーゼにより切断されない少なくとも1つの標的を切断できる。
等価で、同様に用いられる用語「新規な特異性」「改変された特異性」「変更された特異性」「新規な切断特異性」「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことである。
【0024】
- 「ホーミングエンドヌクレアーゼドメイン」、「ドメイン」又は「コアドメイン」により、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。該ドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼのDNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれた4つのベータ鎖(β1β2β3β4)を含み、DNA標的の他方の半分と相互作用する同じホーミングエンドヌクレアーゼの別のドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能エンドヌクレアーゼを形成できる。例えば、二量体ホーミングエンドヌクレアーゼI-MsoI (170アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基9〜97に相当する。
【0025】
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイト(half-site)の別個の部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。2つの異なるサブドメインは独立して挙動し、一方のサブドメイン内の変異は、他方のサブドメインの結合及び切断の特性を変更しない。よって、2つのサブドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの別個の部分に結合する。
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより接続されたLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
【0026】
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」「単鎖キメラメガヌクレアーゼ」「単鎖メガヌクレアーゼ誘導体」「単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体」又は「単鎖誘導体」により、ペプチドスペーサーで連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的配列を切断できる。
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」、「興味対象の部位」、「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」により、I-MsoIのようなLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又は変異型、又はI-MsoIに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼにより認識されかつ切断される20〜24 bpの二本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、そこでメガヌクレアーゼにより二本鎖破断(切断)が誘導される独特のDNAの場所、好ましくはゲノムの場所のことをいう。DNA標的は、二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれについて、+2位及び-2位のヌクレオチドで生じる。そうでないと記載しない限り、I-MsoIメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
【0027】
- 「I-MsoI部位」により、I-MsoIにより切断される22〜24 bpの二本鎖DNA配列を意図する。I-MsoI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-MsoIホーミング部位(配列番号2; 図1)、I-CreIホーミング部位(配列番号3)及び図1に示される派生パリンドローム配列、例えばC1221ともよばれる5'- c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11の配列(配列番号4)を含む。
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」により、それぞれのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
【0028】
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合を意図する。さらに、該標的の少なくとも一方の半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組み合わせたDNA標的)を含み得る。
- 「ベクター」により、連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を意図する。
- 「相同な」により、配列同士の間の相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性を有する、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%を有する配列を意図する。
【0029】
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列させ得るそれぞれの配列中の位置の比較により決定できる。比較される配列中の位置が同じ塩基により占められる場合、その分子同士は、その位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又は一致するヌクレオチドの数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて、2つの配列間の同一性を計算することができ、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む。
【0030】
- 「個体」は、哺乳動物、及びその他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳類」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)、並びにその他、例えばウシ、ブタ及びウマを含む。
【0031】
- 「遺伝病」により、部分的又は完全に、直接的に又は間接的に、1つ又はいくつかの遺伝子の異常が原因である任意の疾患のことをいう。上記の異常は、変異、挿入又は欠失であり得る。上記の変異は、点突然変異であり得る。上記の異常は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。上記の異常は、ゲノム配列の構造又はコードされるmRNAの構造若しくは安定性に影響し得る。上記の遺伝病は、劣性又は優性であり得る。このような遺伝病は、限定されないが、嚢胞性繊維症、ハンチントン舞踏病、家族性高コレステロール血症(LDL受容体不全)、肝芽腫、ウィルソン病、先天性肝性ポリフィリン症、肝臓代謝の遺伝性疾患、レッシュ−ナイハン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミア、色素性乾皮症、ファンコニー貧血、網膜色素変性、毛細血管拡張性運動失調症、ブルーム症候群、網膜芽細胞腫、デュシェンヌ型筋ジストロフィー及びテイ−サックス病であり得る。
【0032】
- 「変異」により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列内の1つ又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。上記の変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造又はコードされるmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
【0033】
上記の方法の有利な実施形態によると、工程a)におけるライブラリーは、元のアミノ酸のS、P、T、A、Y、H、Q、N、K、D、E、C、W、R及びGでの置き換えを含む。
工程(a)におけるライブラリーは、当業者に公知の標準的な方法に従って調製される。例えば、ライブラリーは、変異の領域においてオーバーラップするフラグメントを、縮重プライマーを用いて増幅して、変異の位置での縮重を可能にすることにより作製され得る。
【0034】
上記の方法の有利な実施形態によると、工程(a)におけるライブラリーは、I-MsoI配列の2つ又は3つの位置での多様性を有するコンビナトリアルライブラリーである。例えば、ライブラリーは、32位と41位、32位と43位、32位と35位、32位と41位と43位、又は31位と32位と33位に多様性を有する。コンビナトリアルライブラリーは、国際PCT出願WO 2004/067736、WO 2006/097853、WO 2007/057781及びWO 2007/049156; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるようにして作製できる。
【0035】
変異型のライブラリーを調製するために用いられる親のI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ(元の足場タンパク質)は、I-MsoI、例えば配列番号1の配列、又は上記で定義されるようなI-MsoI変異型の機能的変異型であり得る。さらに、1つ以上の残基を、足場タンパク質のNH2末端及び/又はCOOH末端に挿入できる。さらなるコドンを、I-MsoIコード配列の5'又は3'末端に付加して、種々のベクターへのクローニングのために用いられる制限部位を導入できる。上記の配列の例は、1番目のメチオニン残基の後にアラニン(A)残基が挿入され、C-末端プロリン残基の後にアラニン及びアスパラギン酸(AD)残基が挿入された配列番号105である。これらの配列は、種々のベクターへのクローニングのために用いられるNcoI (ccatgg)及びEagI (cggccg)の制限部位を含むDNAコード配列を有することを可能にする。タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)を、NH2末端及び/又はCOOH末端に導入することもできる。上記のタグは、メガヌクレアーゼの検出及び/又は精製のために有用である。
【0036】
本発明の方法によると、工程(a)からの変異型のライブラリーは、興味対象のDNA標的に対する変異体の結合及び/又は切断活性を向上させるために、さらなる変異を含み得る。上記の変異は、DNA標的のリン酸主鎖又はヌクレオチド塩基と直接又は間接的(水分子を介して)な相互作用を有する他の位置であり得る。さらに、興味対象のDNA標的に対する変異体の結合及び/又は切断活性を向上させるために、ランダム変異を、変異型全体又は変異型の一部分に導入することもできる。これは、当該技術において公知であり商業的に利用可能な標準的突然変異誘発法に従って、変異型のプールに対してランダム突然変異ライブラリーを作製することにより行うことができる。さらなる変異(ランダム又は部位特異的)並びにP31、R32、P33、Y35、Q41及び/又はS43の変異を、同時又は後で導入できる。
【0037】
本発明の方法によると、工程b)におけるDNA標的は、パリンドローム、非パリンドローム又は偽パリンドロームであり得る。好ましくは、工程b)におけるDNA標的は、以下の配列を含むパリンドローム標的である:
c-11n-10n-9n-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1 a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7n+8n+9n+10g+11 (ここで、nはa、t、c又はgである) (配列番号5)。この標的は、C1221 (配列番号4、図1)に由来する。
【0038】
本発明の方法によると、工程(b)は、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるように、インビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いることにより行うことができる。好ましくは、工程(b)は、上記の変異型により作製された変異DNA標的配列中の二本鎖破断が、陽性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は陰性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を導く条件下で、上記のDNA 二本鎖破断の組換え媒介修復によりインビボで行われる。例えば、本発明のI-MsoI変異型の切断活性は、酵母又は哺乳動物細胞において、レポーターベクターを用いて、直列反復組換えアッセイにより、PCT出願WO 2004/067736に記載されるようにして行うことができる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクターにクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮された非機能的コピー(直列反復)とDNA標的配列を、介在配列内に含む。DNA標的配列は、パリンドロームであり、±8〜10位の1〜3個のヌクレオチドの置換により、C1221のようにI-MsoI部位に由来する(図1)。DNA標的配列を切断できる機能的I-MsoI変異型の発現は、直列反復間の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子をもたらし、その発現は適切なアッセイによりモニターできる。
【0039】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(c)は、I-MsoIにより切断されない少なくとも1つのDNA標的を切断できる変異型の選択を含む。I-MsoIにより切断される18個の標的を、図7及び8に示す。
【0040】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、該方法は、工程c)で得られた1つの変異型を発現させて、ホモ2量体の形成を可能にする、さらなる工程d1)を含む。
上記の方法の別の有利な実施形態によると、該方法は、工程c)で得られた1つの変異型を、I-MsoI又はその機能的変異型と同時発現させて、ヘテロ2量体の形成を可能にするさらなる工程d2)を含む。好ましくは、工程c)で得られる2つの異なる変異型が同時発現される。
例えば、宿主細胞は、上記の変異型をコードする1つ又は2つの組換え発現ベクターにより改変され得る。次いで、細胞は、変異型の発現を可能にする条件下で培養され、形成されるホモ2量体/へテロ2量体が、次いで、細胞培養物から回収される。
【0041】
本発明の方法によると、単鎖キメラメガヌクレアーゼは、工程(c)で得られた1つの単量体/ドメイン変異型をホーミングエンドヌクレアーゼドメイン/単量体と融合させることにより構築できる。野生型LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼからの上記の単量体/ドメイン又はその機能的変異型。好ましくは、2つのドメイン/単量体を、ペプチドリンカーにより連結させる。より好ましくは、単鎖メガヌクレアーゼは、2つの単量体を含み、そのそれぞれが工程(c)で得られた異なる変異型からである。上記の単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの変異DNA標的の一方の異なる半分を含む非パリンドロームキメラ標的を切断できる。
【0042】
ホーミングエンドヌクレアーゼに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築する方法は、当該技術において公知である(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。本発明において定義される変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築するために、このような方法のいずれも用いることができる。
【0043】
本発明の主題は、上記で定義される方法により得ることができるI-MsoI ホーミングエンドヌクレアーゼ変異型でもあり、該変異型は、I-MsoIの31位、32位、33位、35位、41位及び/又は43位に少なくとも1つの変異を有し、I-MsoIのものとは異なる、±8〜10位に変動を有する変異I-MsoI部位のパネルに対する切断パターンを有する。
【0044】
上記のI-MsoI変異型の有利な実施形態によると、これは、少なくともQ41の、N、G、Y、R、T、S、P、C、H、K、A又はWでの置き換えを含む。好ましくは、Q41は、N、G、Y、T、S、P、C、H、A又はWで置き換えられる。
上記のI-MsoI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、少なくともR32の、K、Q、A、H、S、G、D、W、P、T、C、E及びNでの置き換えを含む。好ましくは、R32は、Q、A、H、S、G、D、W、P、T、C及びNで置き換えられる。
上記のI-MsoI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、少なくともP31又はP33の、S、T、A、Y、H、Q、N、K、D、E、C、W、R又はGでの置き換えを含む。
上記のI-MsoI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、少なくともY35の、S、P、T、A、H、Q、N、D、E、C、W又はGでの置き換えを含む。
上記のI-MsoI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、少なくともS43の、P、T、A、Y、H、N、D、C、W又はGでの置き換えを含む。
【0045】
上記のI-MsoI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、DNA標的に対する結合及び/又は切断活性を改善するI-MsoIの位置に少なくとも1つのさらなる変異を含み、上記の位置は、T3、K4、T6、L7、K36、D37、K39、Y40、V42、F48、F55、Y82、T88、I93、L97、N109、I134、A145、T151及びA163からなる群より選択される。好ましくは、上記の変異は、T3A、K4M、T6A、L7S、K36N、K36I、D37N、K39N、K39R、K39T、Y40S、V42M、F48Y、F55V、F55I、Y82H、T88A、I93M、L97S、N109S、I134V、I134M、A145V、T151A及びA163Vからなる群より選択される。
【0046】
本発明は、I-MsoIによっては切断されない、±8〜10位に変動を有する少なくとも1つのDNA標的を切断できるI-MsoI変異型の第1シリーズを含み、該変異型は、R32KとQ41N; Q41T; R32SとQ41S; R32AとQ41R; R32WとQ41N; R32SとQ41R; R32QとQ41R; Q41Y; Q41N; Q41C; R32TとQ41R; Q41H; R32WとQ41T; Q41S; Q41G; R32EとQ41T; R32QとQ41A; R32GとQ41Y; Q41P; R32PとQ41T; Q41A; T3A, R32QとQ41P; Q41NとT88A; R32SとQ41N; R32Q, Q41PとF48Y; R32SとK39NとQ41S; R32DとQ41KとL97S; R32HとQ41KとA145V; P33SとQ41C; Y35FとQ41K; R32CとK39TとQ41K; R32AとQ41P; R32TとY40SとQ41S; R32GとQ41R; R32HとQ41P; R32EとK36EとQ41T、R32PとQ41Pからなる群より選択される変異を含む。上記の変異型の例は、配列番号6〜42の配列である(図8)。
【0047】
好ましくは、I-MsoIにより切断されない上記のDNA標的は、-10位〜-8位にaag、gtg、gta、gtt、gcc、tga、taa、cac、cta、tca、cca、ccc及びcgcからなる群より切断されるヌクレオチドトリプレットを含み、及び/又は-10位〜-8位の上記のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列であるヌクレオチドトリプレットを+8位〜+10位に含む。
【0048】
本発明は、I-MsoIのものよりも制限された、±8〜10位での変動を有する標的に対する切断パターンを有するI-MsoI変異型の第2シリーズも含み、該変異型は、R32QとQ41G; R32AとQ41Y; R32HとQ41R; R32DとQ41P; R32DとQ41R; R32QとQ41N; R32PとQ41R; R32KとQ41Y; R32KとQ41T; R32KとQ41H; R32KとQ41GとV42M; R32SとQ41Y; R32HとQ41G; R32HとQ41H; R32QとQ41S; R32SとQ41K; R32AとQ41S; R32HとQ41S; R32CとQ41H; R32HとQ41N; R32CとQ41T; R32SとQ41H; R32TとQ41K; R32AとQ41H; R32GとQ41K; R32SとQ41P; R32HとQ41T; R32QとQ41H; R32QとQ41T; R32KとQ41R; R32EとQ41W; R32KとQ41S; R32NとQ41N; R32HとQ41C; R32SとQ41A; Q41KとF55I; T6AとQ41KとI93M; R32EとQ41TとN109S; R32GとQ41W; K4MとR32TとQ41R; Y35SとD37N; R32HとQ41A; K39RとQ41S; L7SとR32KとQ41H; K36NとQ41N; P33LとQ41P; R32TとQ41RとT151A; Q41YとA163V; R32SとQ41HとI134V; Q41TとY82H; R32HとD37NとQ41T; Q41NとP43N; R32KとQ41SとI134M; R32AとQ41KとF55V; Q41SとF48Yからなる群より選択される変異を含む。上記の変異型の例は、配列番号43、44、46〜65及び67〜99の配列である(図8)。
【0049】
本発明のI-MsoI変異型は、ホモ2量体又はヘテロ2量体であり得る。
上記のI-MsoI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、2つの異なる変異型からの単量体を含むヘテロ2量体である。
【0050】
本発明の主題は、上記で定義されるI-MsoI変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ(融合タンパク質)でもある。単鎖メガヌクレアーゼは、2つのI-MsoI単量体、2つのI-MsoIコアドメイン又は両方の組み合わせを含み得る。好ましくは、2つの単量体/コアドメイン又は両方の組み合わせは、ペプチドリンカーにより連結される。
本発明のメガヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ変異型及び単鎖メガヌクレアーゼ誘導体の両方を含む。
【0051】
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。上記のポリヌクレオチドは、ホモ2量体若しくはヘテロ二量体変異型の1つの単量体、又は単鎖キメラメガヌクレアーゼの2つのドメイン/単量体をコードし得る。
【0052】
本発明の主題は、本発明による変異型又は単鎖メガヌクレアーゼの発現用の組換えベクターでもある。組換えベクターは、上記で定義される変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。好ましい実施形態において、上記のベクターは、2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含み、そのそれぞれがヘテロ2量体変異型の単量体の一方をコードする。
【0053】
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、或いは染色体、非染色体、半合成又は合成の核酸からなり得る線状若しくは環状のDNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自律複製できるもの(エピソームベクター)及び/又は連結された核酸の発現を可能にするもの(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、商業的に入手可能である。
【0054】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
好ましいベクターは、レンチウイルスベクター、特に自己不活化レンチウイルスベクター(self inactivacting lentiviral vectors)を含む。
【0055】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;エス・セレビシエ(S. cerevisiae)についてTRP1、URA3及びLEU2;大腸菌(E. coli)においてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0056】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下にあって、該変異型の生成又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結されたプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、変異型がヘテロ二量体である場合、各単量体をコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-アンチトリプシンプロテアーゼ、ヒトサーファクタント(SP)タンパク質A及びB、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
【0057】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、これは、上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティング構築物を含む。
或いは、I-MsoI変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードするベクターと、ターゲティング構築物を含むベクターとは、異なるベクターである。
【0058】
より好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)に記載の配列で挟まれた、導入される配列と
を含む。
【0059】
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpを超える、より好ましくは200 bpを超える相同配列が用いられる。よって、ターゲティングDNA構築物は、好ましくは200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。実際に、共有されるDNA相同性は、破断の部位の上流及び下流に接する領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つの腕の間に位置するべきである。導入される配列は、好ましくは、ゲノム療法のために、興味対象の遺伝子の変異を修復する配列である(遺伝子修正又は機能的遺伝子の回復)。或いは、これは、特定の配列を改変するため、興味対象の遺伝子を減弱若しくは活性化するため、興味対象の遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は削除するため、興味対象の部位に変異を導入するため、或いは外因性遺伝子又はその一部分を導入するために用いられる配列を含む、ある特定の様式で染色体DNAを変更させるために用いられる任意のその他の配列であり得る。このような染色体DNAの変更は、ゲノム工学(動物モデル/ヒト組換え株化細胞)のために用いられる。
【0060】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された原核又は真核宿主細胞にも関する。
本発明は、全て又は一部分の細胞が上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されたことを特徴とする非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞とは、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
【0061】
本発明の主題は、さらに、上記で定義されるメガヌクレアーゼ、好ましくは発現ベクターに含まれる1つ又は2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、分子生物学のため、インビボ又はインビトロでの遺伝子工学のため、及び非治療目的でのインビボ又はインビトロでのゲノム工学のための使用である。
【0062】
分子生物学は、限定しないが、DNA制限及びDNAマッピングを含む。非治療目的での遺伝子及びゲノム工学は、例えば、(i)タンパク質生成のためのパッケージング株化細胞における特定の遺伝子座の遺伝子ターゲティング、(ii)株の改良及び代謝工学のための、農作植物における特定の遺伝子座の遺伝子ターゲティング、(iii)遺伝子改変農作植物におけるマーカーの除去のための標的組換え、(iv)遺伝子改変微生物株におけるマーカーの除去のための標的組換え(例えば抗生物質生成のため)を含む。
【0063】
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、DNA標的配列を含む興味対象部位内に二本鎖破断を誘発することにより、DNA組換え事象、DNA欠失又は細胞死を誘発するためである。
本発明によると、上記の二本鎖破断は、特定の配列を修復するため、特定の配列を改変するため、変異された遺伝子の代わりに機能的遺伝子を回復するため、興味対象の内因性遺伝子を減弱若しくは活性化するため、興味対象部位に変異を導入するため、外因性遺伝子若しくはその一部分を導入するため、内因性遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は欠失させるため、染色体腕を転座させるため、或いはDNAを修復されないままにして分解させるためである。
【0064】
本発明の主題は、上記で定義されるDNA標的を含むベクター上にある興味対象部位の二本鎖核酸を、該ベクターを上記で定義されるメガヌクレアーゼと接触させることにより破断させ、そのことにより、上記のメガヌクレアーゼの切断部位を取り囲む配列と相同性を示す別のベクターとの相同組換えを誘導する工程を含むことを特徴とする遺伝子工学の方法でもある。
【0065】
本発明の主題は、以下の:1) 上記で定義されるメガヌクレアーゼの少なくとも1つのDNA標的を含むゲノム遺伝子座の二本鎖を、該標的をメガヌクレアーゼと接触させることにより破断し;2) 破断されたゲノム遺伝子座を、標的遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた該遺伝子座に導入される配列を含むターゲティングDNA構築物との相同組換えに適する条件下に維持する工程を含むことを特徴とするゲノム工学の方法でもある。
【0066】
本発明の主題は、以下の:1) 上記で定義されるメガヌクレアーゼの少なくとも1つのDNA標的を含むゲノム遺伝子座の二本鎖を、該切断部位をメガヌクレアーゼと接触させることにより破断し;2) 破断されたゲノム遺伝子座を、切断部位を取り囲む領域と相同性を有する染色体DNAとの相同組換えに適する条件下に維持する工程を含むことを特徴とするゲノム工学の方法でもある。
【0067】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれる1つ又は2つの派生ポリヌクレオチドの、必要とする個体における遺伝病を予防、改善又は治癒するための、該個体に任意の手段により投与される医薬品の製造のための使用でもある。
【0068】
本発明の主題は、上記で定義されるメガヌクレアーゼを少なくとも含む組成物を任意の手段により必要とする個体に投与する工程を含む、必要とする個体における遺伝病を予防、改善又は治癒する方法でもある。
【0069】
この場合、上記で定義されるメガヌクレアーゼの使用は、(a)個体の体細胞において、上記のメガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含む遺伝子の興味対象部位にて二本鎖切断を誘発し、(b)該個体にターゲティングDNAを導入する工程を少なくとも含み、該ターゲティングDNAは、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと、(2) ターゲティングDNAと染色体DNAとの間の組換えにより興味対象部位を修復するDNAとを含む。ターゲティングDNAは、興味対象部位にターゲティングDNAを導入するのに適する条件下で個体に導入される。
【0070】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、該メガヌクレアーゼを個体に投与することにより全体で(in toto)、又は該メガヌクレアーゼを個体から回収した体細胞に導入し、改変後に個体に戻すことによりエクスビボで誘発される。
上記の使用の好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、上記で定義されるように、メガヌクレアーゼのゲノムDNA切断部位を取り囲む遺伝子の領域と相同性を有する配列で挟まれた遺伝子内の変異を修復する配列を含むターゲティングDNA構築物と組み合わせる。変異を修復する配列は、正しい配列を有する遺伝子のフラグメント又はエキソンノックイン構築物のいずれかである。
【0071】
遺伝子を修正するために、遺伝子の切断は、変異の近傍、好ましくは変異から500 bp以内で生じる。ターゲティング構築物は、切断を修復するためのゲノムDNA切断部位に接する相同配列の少なくとも200 bp (最小修復マトリクス)を有し、変異を修復するための遺伝子の正しい配列を含む遺伝子フラグメントを含む。結果として、遺伝子修正のためのターゲティング構築物は、最小修復マトリクスを含むか、又は最小修復マトリクスからなる。これは、好ましくは200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。
【0072】
機能的遺伝子を回復するために、遺伝子の切断は変異の上流で生じる。好ましくは、上記の変異は、遺伝子の配列内で最初の既知の変異であり、そのことにより、遺伝子の全ての下流の変異が同時に修正できる。ターゲティング構築物は、フレーム内で融合された(cDNAでのように)ゲノムDNA切断部位の下流にあって、3'における転写を停止するためのポリアデニル化部位を有するエキソンを含む。導入される配列(エキソンノックイン構築物)は、切断部位を取り囲むイントロン又はエキソンの配列で挟まれており、そのことにより、機能的タンパク質をコードできるmRNAへの工学的遺伝子(エキソンノックイン遺伝子)の転写を可能にする。例えば、エキソンノックイン構築物は、上流及び下流の配列により挟まれる。
【0073】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は上記で定義される好ましくは発現ベクターに含まれる1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチドの、必要とする個体におけるDNA媒介物(intermediate)を示す感染性因子により引き起こされる疾患の予防、改善又は治癒用の該個体に任意の手段により投与される医薬品の製造のための使用でもある。
【0074】
本発明の主題は、上記で定義される組成物を、必要とする個体に任意の手段により投与する工程を少なくとも含む、必要とする個体におけるDNA媒介物を示す感染性因子により引き起こされる疾患を予防、改善又は治癒する方法でもある。
【0075】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は上記で定義される好ましくは発現ベクターに含まれる1つ若しくは2つのポリヌクレオチドの、生物由来製品又は生物学的使用若しくは物体の消毒を意図する製品における、DNA媒介物を示す感染性因子の増殖阻害、不活性化又は消去のためのインビトロでの使用でもある。
【0076】
本発明の主題は、DNA媒介物を示す感染性因子から製品又は物体を除染する方法であって、生物由来製品、生物学的使用を意図する製品又は物体を、上記で定義される組成物と、該感染性因子の増殖阻害、不活性化又は消去に充分な時間接触させる工程を少なくとも含む方法でもある。
特定の実施形態において、上記の感染性因子はウイルスである。例えば、上記のウイルスは、アデノウイルス(Ad11、Ad21)、ヘルペスウイルス(HSV、VZV、EBV、CMV、ヘルペスウイルス6、7又は8)、ヘパドナウイルス(HBV)、パポバウイルス(HPV)、ポックスウイルス又はレトロウイルス(HTLV、HIV)である。
【0077】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は好ましくは発現ベクターに含まれる1つ若しくは2つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする組成物でもある。
上記の組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義される標的遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた興味対象部位を修復する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む。好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、又は本発明で定義されるようにメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに含まれる。
【0078】
本発明の主題は、少なくともメガヌクレアーゼ又は該メガヌクレアーゼをコードする1つ若しくは2つの発現ベクターと、上記で定義されるターゲティング構築物を含むベクターとを含有する、遺伝病の予防又は治療における同時、別々又は逐次的な使用のための組み合わせ製剤としての製品でもある。
治療目的のために、メガヌクレアーゼと医薬的に許容される賦形剤とを、治療有効量で投与する。このような組み合わせは、投与される量が生理的に重要である場合は「治療有効量」で投与されるという。因子は、その存在が受容者の生理機能において検出可能な変化をもたらす場合に、生理的に重要である。本明細書の関係において、因子は、その存在が、標的にされた疾患の1つ又は複数の症状の重篤さを低減させ、損傷又は異常のゲノム修正をもたらす場合に、生理的に重要である。
【0079】
本発明における使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、実質的に非免疫原性であり、すなわち、ほとんど又は全く有害免疫応答を生じない。この種の有害免疫反応を緩和又は除去するための多様な方法を本発明に従って用いることができる。
好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に含まない。
望ましくない免疫反応を回避する別の様式は、メガヌクレアーゼを、ポリエチレングリコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは、500〜20,000ダルトンの平均分子量(MW)のもの)とコンジュゲートさせることである。例えばDavisら(US 4,179,337)により記載されるPEG又はPPGとのコンジュゲート形成は、抗ウイルス活性を有する、非免疫原性で、生理活性で、水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを提供できる。ポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを用いる同様の方法は、Saiferら(US 5,006,333)に記載されている。
【0080】
メガヌクレアーゼは、ポリペプチドとして又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物/ベクターとして用いることができる。これは、細胞に、インビトロ、エクスビボ又はインビボで、特定の細胞の型に適する当該技術において公知のいずれの簡便な手段により、単独又は少なくとも適切なビヒクル若しくはキャリア及び/又はターゲティングDNAとの組み合わせで導入される。一旦細胞内に入ると、メガヌクレアーゼと存在するならばターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、細胞質から核内の作用部位まで、細胞により移入又は移送される。
【0081】
メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、有利には、リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI)及び/又は膜移送ペプチド(membrane translocating peptides)と組み合わせることができる(Bonetta, The Scientist, 2002, 16, 38; Fordら, Gene Ther., 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, Curr. Opin. Biotechnol., 2002, 13, 52〜56)。後者の場合、メガヌクレアーゼの配列は、膜移送ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
【0082】
ターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、細胞に、種々の方法により導入できる(例えば注入、直接摂取、発射衝撃、リポソーム、エレクトロポレーション)。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて、細胞内で安定的又は一過的に発現させ得る。真核細胞における発現の方法は、当該技術において公知である(Current Protocols in Human Genetics: 12章 「Vectors For Gene Therapy」及び13章「Delivery Systems for Gene Therapy」を参照)。所望により、組換えタンパク質中に、核局在化シグナルを組み込んで、核内でそれが発現されることを確実にすることが好ましい。
【0083】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼの、ほかのメガヌクレアーゼを作製するための足場としての使用でもある。例えば、新規なホーミングエンドヌクレアーゼを作製する目的のために、さらなる回の突然変異誘発及び選択/スクリーニングを変異型に対して行うことができる。
【0084】
本発明による上記のメガヌクレアーゼの使用及びメガヌクレアーゼを用いる方法は、上記で定義されるメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物若しくは非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用も含む。
本発明による使用及び方法の別の有利な実施形態によると、上記のメガヌクレアーゼ、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物は、上記で定義されるターゲティングDNA構築物と組み合わせる。好ましくは、メガヌクレアーゼの単量体をコードする上記のベクターは、上記で定義されるターゲティングDNA構築物を含む。
【0085】
本発明で定義されるターゲティングDNA構築物の配列又はメガヌクレアーゼ変異型若しくは単鎖メガヌクレアーゼ誘導体をコードする配列を有するポリヌクレオチドフラグメントは、当業者に知られる任意の方法により作製できる。例えば、これらは、DNA鋳型から、特異的プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖メガヌクレアーゼ誘導体をコードするcDNAのコドンは、所望の発現系における上記のタンパク質の発現に好ましいように選択される。
上記のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA及び遺伝子工学の方法により得て、宿主細胞に導入できる。
【0086】
本発明で定義されるメガヌクレアーゼ変異型又は単鎖メガヌクレアーゼ誘導体は、上記で定義されるポリペプチドの発現により作製される。好ましくは上記のポリペプチドは、1つの発現ベクター又は2つの発現ベクター(変異型のみの場合)で改変された宿主細胞又はトランスジェニック動物/植物において、ポリペプチドの発現又は同時発現に適する条件下で発現又は同時発現され(変異型のみの場合)、メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖メガヌクレアーゼ誘導体は、宿主細胞培養物又はトランスジェニック動物/植物から回収される。
【0087】
本発明の実行は、そうでないと記載しない限り、当該技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常の技術を用いる。このような技術は、文献に充分に説明されている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, (Sambrookら, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編, 1984); Mullisら、米国特許第4,683,195号; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries及びS. J. Higgins編 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames及びS. J. Higgins編 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson及びM. Simon編, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ, 特に第154巻及び第155巻(Wuら編)並びに第185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller及びM. P. Calos編, 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編, Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, 第I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編, 1986); 並びにManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0088】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型及びそれらの使用を説明する実施例に言及する以下の記載及び添付の図面から明らかになるその他の特徴もさらに含む。添付の図面において:
- 図1は、DNA標的を表す。C1234野生型I-CreI標的及びI-MsoI標的は、近縁の誘導体である。2つの標的間の2つの違いを、灰色の箱で囲む。これらは、最初に24 bp配列として記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関連することを示す。C1221は、C1234の左部分に由来するパリンドローム配列である。10NNN_P標的は、C1221からの派生物であり、ここでは±10位、±9位、±8位の縮重が導入されている。
【0089】
- 図2は、Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269 (PDBコード1M5X)による、DNA標的との複合体にあるI-MsoIホーミングエンドヌクレアーゼの構造を表す。
- 図3は、本研究において無作為化のために選択された結合界面の領域を表す。A. そのDNA標的と結合したI-MsoIの分子表面:無作為化のために選択された±10位、±9位、±8位の塩基対及びタンパク質残基32、41及び43を、黒でラベルする。B. DNA標的の-10、-9及び-8のヌクレオチドと相互作用した残基32、41及び43を示す拡大図。灰色の球は水分子であり、点線は水素結合を表す。
【0090】
- 図4は、pCLS1055レポーターベクターマップを表す。レポーターベクターは、TRP1及びURA3をマーカーとして有する。LacZタンデム反復は、800 bpの相同性を有し、1.3 kbのDNAで分けられている。これらは、ADHプロモーター及びターミネーター配列で囲まれている。標的部位は、Gatewayプロトコル(Invitrogen)を用いてクローニングされ、選択された標的部位でのCmR及びccdB遺伝子の置き換えをもたらす。
- 図5は、pCLS0542メガヌクレアーゼ発現ベクターマップを表す。pCLS0542は、LEU2栄養要求性遺伝子及びI-MsoI変異型の発現を駆動する誘導性Gal10プロモーターをマーカーとして有する2ミクロンベースの複製ベクターである。
【0091】
- 図6は、8つの10NNN_P標的に対する、Mlib1ライブラリーからのI-MsoI変異体の1次スクリーニングの例を示す。列及び行は、それぞれ、1〜12及びA〜Hである。それぞれの9ドット酵母クラスタにおいて、Mlib1変異体は、「実験の設計」により例示されるように8つの異なる標的に対してスクリーニングされる。右下のドットは、クラスタ内部対照である。クラスタにより、これは、陰性対照(メガヌクレアーゼなし)又は陽性対照(I-SceI標的に対してアッセイしたI-SceIの弱い又は強いバージョン)である。H10、H11及びH12も実験対照である。
【0092】
- 図7は、64個の10NNN_P標的に対するI-MsoI及びI-MsoI変異型のヒットマップを示す。A. I-MsoIヒットマップ。B. Mlib1ライブラリーヒットマップ。それぞれの新規なエンドヌクレアーゼは、図1に示す配列とは±8位、±9位及び±10位が異なる、図1に示す一連の64個のパリンドローム標的に対して酵母においてプロファイリングされる。それぞれの標的配列は、-10,-9,-8トリプレット(10NNN)にちなんで命名される。例えば、GGGは、cgggacgtcgtacgacgtcccg標的(配列番号104)に相当する。それぞれの切断された標的の下に記載する数字は、この標的を切断する異なる配列を有するI-MsoI変異体の数である。それぞれの標的について、灰色のレベルは、切断強度の平均に比例する。
【0093】
- 図8は、31個のDNA標的を切断するI-MsoI変異型の切断パターンを表す。スクリーニングの後に得られ、記載される残基で定義されるI-MsoI及びそれぞれのI-MsoI変異型(配列番号6〜99)について、図7に記載される64個の標的を用いて酵母において切断をモニターした。標的は、-10位、-9位及び-8位のヌクレオチドに相当する3文字で示す。例えば、GGGは、cgggacgtcgtacgacgtcccg標的(配列番号104;図1を参照)に相当する。値は、フィルタのスキャンの後に適切なソフトウェアにより評価された切断の強度に相当する。I-MsoIにより切断されない13個の標的を、対応する変異型及びそれらの切断スコアとともに灰色で強調する。
【0094】
- 図9は、I-MsoIの32位及び41位の所定の残基と、標的の±10位、±9位及び±8位の塩基(10NNN)との間の相関を示す。図8のマトリクスからの切断強度の全ての合計は、32位(左のパネル)又は41位(右のパネル)にA、C、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、W又はYを有し、-10位、-9位又は-8位(それぞれ上、中及び下のパネル)にa、c、g又はtを有する標的を用いて試験した変異体について、累積強度30が任意に黒色に相当し、0が白色に相当して、灰色の強度のレベルとして特徴付ける。値は、列ごとに100に標準化する。
【実施例】
【0095】
実施例1:縮重10NNN_P標的を切断するI-MsoI由来変異体の作製
本実施例は、I-MsoI変異体が、I-CreI及びI-MsoIにより効率的に切断され、図1に示される標的であるC1221標的に由来するDNA標的配列を切断できることを示す。±10位、±9位及び±8位(10NNN)のDNA標的ヌクレオチドと直接又は間接的に相互作用するI-MsoI残基を、図2に示す構造の精査により正確に示した。「直接の相互作用」とは、タンパク質残基と塩基対との間の水素結合を意味し、「間接的な相互作用」とは、タンパク質とDNAとの間の水媒介相互作用を意味する。例えば、残基R32は、-9位のグアニンと2つの水素結合を形成し、水分子と接触し、水分子自体は-10位のアデニンと相互作用する。Q41及びS43は、水分子ネットワークを介して-8位のアデニンに連結される(図3)。I-MsoIタンパク質について新しい切断特異性を単離するために、32位及び41位にて変異させたI-MsoI変異体ライブラリー(Mlib1)を構築し、酵母を形質転換し、64個の縮重パリンドローム10NNN_P標的(図1を参照)に対して、酵母細胞での切断誘発組換えに基づく以前に記載されたスクリーニングアッセイ(国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178,及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)を用いてスクリーニングした。これらのアッセイは、機能的LacZレポーター遺伝子をもたらし、これは標準的な方法によりモニターできる。このようなアプローチは、I-CreIタンパク質について既に充分に記載されている(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049156)。
【0096】
1) 材料及び方法
a) 64個の標的ベクターの構築
標的は、次のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列と接する64個の標的配列のそれぞれに相当するオリゴヌクレオチドを、PROLIGOに注文した:5' tggcatacaagtttcnnnacgtcgtacgacgtnnngacaatcgtctgtca 3' (配列番号100)。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製された二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて酵母レポーターベクター(pCLS1055、図4)にクローニングした。酵母レポーターベクターで、エス・セレビシエFYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。
【0097】
b) I-MsoI Mlib1変異体ライブラリーの構築:
32位及び41位に変異を含むI-MsoI由来コード配列を作製するために、I-MsoIコード配列(配列番号105)の5'末端(aa 1〜48位)又は3'末端(44〜174位)を増幅する別々のオーバーラップPCR反応を行った。3'末端について、PCR増幅を、ベクター(pCLS0542、図5)に特異的なプライマー(Gal10R 5'-acaaccttgattggagacttgacc-3': 配列番号101)と、アミノ酸44〜56についてのI-MsoIコード配列に特異的なプライマー(MlibF1 5'-ctagcaatttcttttatacaaagaaaagataaatttcc-3': 配列番号102)とを用いて行う。5'末端について、PCR増幅を、ベクターpCLS0542に特異的なプライマー(Gal10F 5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3': 配列番号103)と、アミノ酸29〜48についてのI-MsoIコード配列に特異的なプライマー(Mlib1R 5'-aaaagaaattgctagactcacmbnatatttaatgtctttgtaatcaggmbnaggaataag-3'(配列番号106)) とを用いて行う。32位及び41位にてNVKコドンをもたらすオリゴヌクレオチド中のmbnコードは、15の可能なアミノ酸の群のうちで、これらの位置にて縮重を可能にする(S、P、T、A、Y、H、Q、N、K、D、E、C、W、R及びG)。次いで、25 ngの2つのオーバーラップPCRフラグメントのそれぞれと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)。両方の群の変異を含むインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。Mlib1の核酸多様性は、242 = 576であり、形質転換後に、ライブラリー多様性のほぼ2倍の1116クローンを採集した。
【0098】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
交配は、コロニーグリッダー(QpixII, GENETIX)を用いて行った。変異体を、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上に、低格子密度(low gridding density) (約4スポット/cm2)を用いてグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタに対して行って、それぞれの標的について異なるレポーター保持酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固体寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、ガラクトース(1%)を炭素源として有する合成培地上に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0中の0.02 % X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7mM β-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固体アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0099】
d) 変異体の配列決定
プラスミドを発現する変異体を回収するために、酵母DNAを標準的なプロトコルを用いて抽出し、大腸菌を形質転換するために用いた。変異体ORFの配列決定を、次いで、プラスミドに対してMILLEGEN SAにより行った。或いは、ORFを酵母DNAからPCRにより増幅し(Akadaら, Biotechniques, 2000, 28, 668〜670)、配列決定を、PCR生成物に対して直接、MILLEGEN SAにより行った。
【0100】
2) 結果
上記の酵母スクリーニングアッセイを用いて、I-MsoI Mlib1ライブラリーを構成する1116個のクローンを、64個の10NNN_P標的に対してスクリーニングした。スクリーニングにより、少なくとも1つの10NNN_P標的を切断できる246個の陽性クローンが得られ(図6)、配列決定の後に、94個のユニークメガヌクレアーゼが得られた。I-MsoIタンパク質は、64個の10NNN_P標的のうち18個を切断できる(図7A)。図7Bに示すMlib1ヒットマップは、I-MsoIコード配列内の32位及び41位に変異を導入することにより、13個の新しいさらなる10NNN_P標的が、I-MsoI由来変異体により切断されるようになることを示す。変異型の切断パターンを図8に示す。このスクリーニングアプローチは、よって、10NNN_P標的のI-MsoI 切断スペクトルを広げて、新しい切断特異性を単離することを可能にする。
【0101】
実施例2:I-MsoIの32位及び41位の所定の残基と、標的の±10位、±9位及び±8位の塩基(10NNN)との間の相関の分析
I-MsoIの32位及び41位の特定の残基と、標的の±10位、±9位及び±8位の塩基(10NNN)との間の可能性のある相関を同定するために、陽性の統計学的分析を行った。
【0102】
1) 材料及び方法
元の(変異体、標的)行列から、そしてタンパク質上の変異アミノ酸位置「p」及び標的上の核酸位置「q」のそれぞれの対(p, q)について、累積強度の行列を、図8からのデータから計算した。累積強度のこの行列は、我々の変異体の組の上でのpで生じる別個のアミノ酸の数と等しいいくつかの列と、4つの行(各ヌクレオチドについて1つ)とを有する。アミノ酸の値「A」とヌクレオチド「N」についてのこのマトリクスの値は、位置pにてAを有し、位置qにてNを有する標的を用いて試験された変異体についての元のマトリクスの全ての強度の合計である。図9において、これらの値は、累積強度30が任意に黒色に相当し、0が白色に相当して、灰色の強度のレベルとして特徴付ける。次いで、行列は、列ごとに100に標準化した(それぞれの列についての全てのセルの合計が100に等しい)。それぞれの行列に相当する画像を描き、各セル内に標準化された値を記載した。
【0103】
2) 結果
結果を、図9からの6つのパネルにおいてまとめる。濃いセルのみが重要である。なぜなら、より明るいセルは低いレベルのみの切断を示すからである。アミノ酸とヌクレオチドとの間の可能性のある重要な相関は、4つのヌクレオチドに沿った高度に異なるパーセンテージの再区分を有するアミノ酸に相当するはずであるが、セルは、重要性を確実にするほど充分に濃い。R32 (野生型タンパク質及びいくつかの変異体でも見出される)と標的の±10位、±9位及び±8位の塩基G、G及びAとはしばしば会合し、ほぼ野生型プロファイルの過剰提示(overrepresentation)を明らかにする(野生型標的I-MsoIの配列は、上の鎖の-10、-9及び-8においてAGAであり、下の鎖の8,9,10においてGAAであることに注目されたい)。陽性のサンプルから他の重要な会合は推測できず、32位及び41位の個別の残基と標的の塩基±10、±9及び±8との間の相関がないことを示す。よって、それぞれの特定の塩基についての特異性は、1より多いタンパク質残基により大きく影響されると仮定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
- P31又はP33の、S、T、A、Y、H、Q、N、K、D、E、C、W、R又はGでの置き換え、
- R32の、Q、A、H、S、G、D、W、P、T、C又はNでの置き換え、
- Y35の、S、P、T、A、H、Q、N、D、E、C、W又はGでの置き換え、
- Q41の、N、G、Y、T、S、P、C、H、A又はWでの置き換え、
- Y35の、S、T、A、H、Q、N、K、D、E、C、W、R又はGでの置き換え、
- S43の、P、T、A、Y、H、N、D、C、W又はGでの置き換え
からなる群より選択されるI-MsoIの31位、32位、33位、35位、41位及び/又は43位での少なくとも1つの置換を有し、
I-MsoIにより切断されるものとは異なる±8〜10位に変動を有する変異I-MsoI部位のパネルを切断できるI-MsoI変異型。
【請求項2】
T3、K4、T6、L7、K36、D37、K39、Y40、V42、F48、F55、Y82、T88、I93、L97、N109、I134、A145、T151及びA163からなる群より選択されるDNA標的に対する結合及び/又は切断活性を向上させるI-MsoIの位置で少なくとも1つのさらなる置換を含む請求項1に記載の変異型。
【請求項3】
前記置換が、T3A、K4M、T6A、L7S、K36N、K36I、D3N7、K39N、K39R、K39T、Y40S、V42M、F48Y、F55V、F55I、Y82H、T88A、I93M、L97S、N109S、I134V、I134M、A145V、T151A及びA163Vからなる群より選択される請求項2に記載の変異型。
【請求項4】
I-MsoIにより切断されない少なくとも1つの標的を切断でき、R32KとQ41N; Q41T; R32SとQ41S; R32AとQ41R; R32WとQ41N; R32SとQ41R; R32QとQ41R; Q41Y; Q41N; Q41C; R32TとQ41R; Q41H; R32WとQ41T; Q41S; Q41G; R32EとQ41T; R32QとQ41A; R32GとQ41Y; Q41P; R32PとQ41T; Q41A; T3AとR32QとQ41P; Q41NとT88A; R32SとQ41N; R32QとQ41PとF48Y; R32SとK39NとQ41S; R32DとQ41KとL97S; R32HとQ41KとA145V; P33SとQ41C; Y35FとQ41K; R32CとK39TとQ41K; R32AとQ41P; R32TとY40SとQ41S; R32GとQ41R; R32HとQ41P; R32EとK36EとQ41T; R32PとQ41Pからなる群より選択される置換を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項5】
I-MsoIよりも少数の標的を切断し、R32QとQ41G; R32AとQ41Y; R32HとQ41R; R32DとQ41P; R32DとQ41R; R32QとQ41N; R32PとQ41R; R32KとQ41Y; R32KとQ41T; R32KとQ41H; R32KとQ41GとV42M; R32SとQ41Y; R32HとQ41G; R32HとQ41H; R32QとQ41S; R32SとQ41K; R32AとQ41S; R32HとQ41S; R32CとQ41H; R32HとQ41N; R32CとQ41T; R32SとQ41H; R32TとQ41K; R32AとQ41H; R32GとQ41K; R32SとQ41P; R32HとQ41T; R32QとQ41H; R32QとQ41T; R32KとQ41R; R32EとQ41W; R32KとQ41S; R32NとQ41N; R32HとQ41C; R32SとQ41A; Q41KとF55I; T6AとQ41KとI93M; R32EとQ41TとN109S; R32GとQ41W; K4MとR32TとQ41R; Y35SとD37N; R32HとQ41A; K39RとQ41S; L7SとR32KとQ41H; K36NとQ41N; P33LとQ41P; R32TとQ41RとT151A; Q41YとA163V; R32SとQ41HとI134V; Q41TとY82H; R32HとD37NとQ41T; Q41NとP43N; R32KとQ41Sと I134M; R32AとQ41KとF55V; Q41SとF48Yからなる群より選択される置換を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項6】
ホモ2量体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項で定義される2つの異なる変異型を含むヘテロ2量体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型に由来し、2つの単量体、2つのコアドメイン又は前記変異型からの1つの単量体と1つのコアドメインとの組み合わせを含む単鎖キメラメガヌクレアーゼ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型の少なくとも1つの単量体又は請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメント。
【請求項10】
メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖メガヌクレアーゼの生成を可能にする調節配列に操作可能に連結された請求項13に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む発現ベクター。
【請求項11】
メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖メガヌクレアーゼにより切断されるゲノムDNA標的配列を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
ターゲティングDNA構築物が、a) メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖メガヌクレアーゼにより切断されるゲノムDNA標的配列を取り囲む領域と相同性を有する配列と、b) a)の配列と接する、導入される配列とを含む請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項9に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項9に記載の1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項15】
請求項9に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型、請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼ、請求項9に記載のポリヌクレオチドフラグメント又は請求項10〜12のいずれか1項に記載のベクターを少なくとも含む医薬組成物。
【請求項17】
標的遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた興味対象のゲノム部位を修復する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも、請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型、請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼ、請求項9に記載のポリヌクレオチドフラグメント、請求項10〜14のいずれか1項に記載のベクター、請求項13に記載の宿主細胞、請求項15に記載のトランスジェニック植物、請求項14に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、分子生物学、インビボ又はインビトロでの遺伝子工学、及び非治療目的でのインビボ又はインビトロでのゲノム工学のための使用。
【請求項19】
少なくとも、請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型、請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼ、請求項9に記載のポリヌクレオチドフラグメント又は請求項10〜12のいずれか1項に記載のベクターの、必要とする個体における遺伝病を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項20】
少なくとも、請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型、請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼ、請求項9に記載のポリヌクレオチドフラグメント又は請求項10〜12のいずれか1項に記載のベクターの、必要とする個体におけるDNA媒介物を示す感染性因子により引き起こされる疾患の予防、改善又は治癒用の医薬品の製造のための使用。
【請求項21】
少なくとも、請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型、請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼ、請求項9に記載のポリヌクレオチドフラグメント又は請求項10〜12のいずれか1項に記載のベクターの、生物由来製品又は生物学的使用若しくは物体の消毒を意図する製品における、DNA媒介物を示す感染性因子の増殖阻害、不活性化又は消去のためのインビトロでの使用。
【請求項22】
前記感染性因子がウイルスである請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
前記メガヌクレアーゼ変異型、単鎖メガヌクレアーゼ、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物が、請求項11、12又は17で定義されるターゲティングDNA構築物と組み合わされる請求項18〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
少なくとも、請求項1〜7のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ変異型、請求項8に記載の単鎖メガヌクレアーゼ、請求項9に記載のポリヌクレオチドフラグメント又は請求項10〜12のいずれか1項に記載のベクターの、他のメガヌクレアーゼを工学的に作製するための足場としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−504744(P2011−504744A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535462(P2010−535462)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004376
【国際公開番号】WO2009/068937
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102 avenue Gaston Roussel,F−93235 Romainville Cedex,France
【Fターム(参考)】