説明

新規な柑橘系果実の搾汁方法および搾汁装置

【課題】
柚子などの香酸柑橘類の搾汁装置において、果皮由来の有用成分である精油や植物ステロイドなどの果皮有用成分の含有量を増加させることのできる、新しい柑橘系果実の搾汁方法および搾汁装置を提供する。
【解決手段】
柚子などの香酸柑橘類の果実圧搾による搾汁方法において、搾汁前に特別の前処理を必要とせず、また果汁の酸化を受けず、果汁の二次汚染をきたすことなく、搾汁中の柑橘系果実にオイルフリーのコンプレッサーにより、常時エアーブローを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘系果実の搾汁方法および搾汁装置に関するものである。さらに詳しくは、果汁中の精油や果皮有用成分の含有量が増加する新しい果実の搾汁方法や搾汁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柚子の搾汁においては、ベルト式またはキャタピラー式搾汁装置が使用されており、四国をはじめ九州や関東でも普及している。
【0003】
また、この搾汁方法については、特願2004−109430において記載されている。
【0004】
搾汁された柚子果汁を循環させる搾汁方法や搾汁装置に関しても特願2004−109430においてすでに記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記出願の搾汁方法ではあらかじめ果汁を貯留部に貯めるという前操作を必要とする。
【0006】
また、果汁循環の時間が長くなれば、果汁や精油が酸化されるという新たな問題や果汁貯留部や循環ポンプを用いることによる二次汚染の可能性がでてくる。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のようなことを慮りなされたものであって、従来技術の問題点を解決して、果汁中の精油や果皮有用成分の含有量が増加する新しい果実の搾汁方法や搾汁装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この出願の発明は、前記の課題を解決するものとして、柑橘系果実の圧搾中に圧搾果実表面にエアーブローを施すことを特徴とする柑橘系果実の搾汁方法と搾汁装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
この出願の発明は、柑橘果実の搾汁方法および搾汁装置によって、果汁中の精油や果皮有用成分の含有量を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつもので、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0011】
柚子果実などの搾汁装置として使用されているベルト式またはキャタピラー式搾汁装置の中央部と、搾汁果実排出部にエアーブロー装置を取り付け、オイルフリーのコンプレッサーより供給されるエアーを搾汁中の果実に吹き付けることにより果実表面に付着している果汁や精油を効率よく抽出することにより精油や果皮有用成分を多く含む果汁を得ることができる。
【0012】
さらに、この出願の発明の搾汁装置より得られる果汁は、精油や果皮有用成分が豊富なために、この果汁を使用した新規な製品を作ることができる。
【0013】
また、この出願の発明の方法は、他の圧搾方式をもつドラム式や円盤式搾汁機にも適用することができる。
【0014】
次に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
この出願の発明の柑橘果実搾汁方式を「エアーブロー方式」とする。
【0016】
エアーブロー方式搾汁装置とは、具体的には柚子搾汁装置((株)井河鉄工所;型式SFP−2200)の中央部と果実排出部にエアーブロー装置を取り付け、日立オイルフリースクロール圧縮機(型式SRL−3.7DB5/6)と接続して常時エアーの供給をする装置である。
【0017】
搾汁された果汁の精油含量は、日本薬局方一般分析法における公定分析用の精油定量装置(柴田科学株式会社)を使用した。丸底フラスコ(1L)に果汁250gと沸騰石をいれ、40Vに調整した電気マッフルを用いて2.5時間、加熱沸騰させた後に、ビュレットに貯まった精油を分離、秤量した。
【0018】
搾汁後の精油含量を表1に示したとおりであった。
【0019】
【表1】

【0020】
エアーブロー方式による搾汁では、従来の搾汁方式に比べて約1.2倍の精油含量が確認できた。
【0021】
果皮由来の有用成分については、アスコルビン酸、植物ステロイド、α‐トコフェロール、ソラレンを測定した。
【0022】
植物ステロイドは、β‐シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールを測定した。
【0023】
アスコルビン酸、α‐トコフェロール、ソラレンは高速液体クロマトグラフを用い、植物ステロイドはガスクロマトグラフで測定した。
【0024】
搾汁果汁のアスコルビン酸、植物ステロイド、α‐トコフェロール、ソラレンの測定結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
スチグマステロールを除き、エアーブロー方式による果汁中の果皮有用成分の含有量が増えている。また、スチグマステロールに関しても測定感度をあげれば有用な差のでることが期待できる。
【0027】
エアーブロー方式による精油をGC−MSにかけたが、リモネンオキサイドやリナロールオキサイドなどの酸化を示唆する物質は確認できなかったので、酸化のないことが確認できた。
【0028】
従前の柑橘系の搾汁装置に簡単なエアーブロー装置を取り付けることにより、柚子精油や果皮有用成分を増加させることにより、精油成分や果皮有用成分を多量に含むジュース、ポン酢醤油などの新製品の開発が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘系果実を圧搾することで果汁を得ることのできる搾汁方法において、果実圧搾中に圧搾ライン中の果実にエアーブローをほどこすことにより、果皮表面に付着した成分を抽出することを特徴とする果実の搾汁方法。
【請求項2】
柑橘系果実を圧搾することで果汁を得ることのできる搾汁装置において、果実圧搾中に圧搾ライン中の果実にエアーブローをほどこす装置を装着することにより、果皮表面に付着した成分を抽出することを特徴とする果実の搾汁装置。