説明

新規な標識化オリゴヌクレオチド

本発明は、フルオロフォア、クエンチャー及び少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含むことで特徴づけられる、第1ヌクレオチドセグメント、及び標的配列に相補的な第2ヌクレオチドセグメントを含んでなる標識化オリゴヌクレオチドに関する。また、本発明は、このようなオリゴヌクレオチドの使用、更に、このようなオリゴヌクレオチドを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な標識化オリゴヌクレオチドに関する。本発明は、また、このようなオリゴヌクレオチドの使用、更に、このようなオリゴヌクレオチドを使用する方法に関する。
【0002】
核酸及び遺伝物質に関する技術において、遺伝子、遺伝子の一部、またはヌクレオチド配列が生体、この生体の細胞抽出物、または他の生物試料に存在するかどうかを決定することがしばしば必要である。
【0003】
核酸を検出する様々なタイプの方法は、文献に記載されている。これらの方法、特にポリヌクレオチドの検出を必要とするものは、核酸の相補鎖のペアになる特性に基づいており、一般に「核酸ハイブリダイゼーション」または単に「ハイブリダイゼーション」と呼ばれる。
【0004】
通常、分析しなければならない生物体または疾患の特定の配列を同定した後に、試料の核酸を抽出し、興味がある配列を増幅して検出することが望ましい。多くの増幅方法と検出方法が、この目的のために開発されてきた。
【0005】
例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、二本鎖DNAの変性、一重鎖DNAに対するプライマーのハイブリダイゼーション、及び熱安定性DNAポリメラーゼによるプライマーの酵素的伸長という3段階プロセスの反復に基づき、それによりオリゴヌクレオチドプライマーの標的物として動くものと相補的なDNA鎖が合成される。
【0006】
増幅は、サイクルの終点(エンドポイントPCR)またはリアルタイム(リアルタイムPCR)において、増幅産物の蛍光標識の使用によって分析することができる。いくつかのリアルタイムPCR技術が存在する。それらのうちの1つは、ループ構造とフルオロフォアを配列の一末端に含みクエンチャーを他の末端に含むステムとを含んで成るヘアピン配列である「分子ビーコン」と呼ばれている特定のプローブを使用する。(Tyagi, S. 及び Kramer, FD., Nat. Biotechnol., 1996, 14, 303-308, Marras, SA.等, Genet Anal., 1999, 14, 151-156)。ハイブリダイゼーション温度より下では、これらの配列は、標的配列にハイブリダイズせず、「ヘアピン」構造をとる:5’末端と3’末端は近く、蛍光の放出がない。プローブがループ配列を介して、増幅された標的配列に対応するアンプリコンを認識しハイブリダイズした場合は、ステム構造は不安定化し末端は別々に遠くなり、クエンチャーはその役割をもはや果たさず、蛍光の放出がある。
【0007】
しかしながら、特定の状況では、「分子ビーコン」プローブによる蛍光の放出は、増幅反応の間に存在するヌクレアーゼによる分解に従って、別々に動かされるフルオロフォアとクエンチャーによるバックグラウンド・ノイズによって、「寄生され」うる。これは特に「従来の」PCRの場合であり、Taqポリメラーゼ酵素自体が5’ヌクレアーゼ活性を有するためである。更に、リアルタイムPCRの間、現れる「寄生性」蛍光放出に加えて、サイクルの終わりに熱安定性ポリメラーゼ酵素の残存による分子ビーコンの切断は、ポスト増幅エンドポイント温度勾配分析に影響を及ぼす。現在、このポスト増幅エンドポイント温度勾配分析は、単純な配列バリエーション、例えば分子ビーコンを使用するSNPs(一塩基変異多型)を検出するために最も感度の高い方法である。
【0008】
NASBAは別の等温核酸増幅技術である。そして、それは3つの酵素(AMV逆転写酵素、RNAseH及びT7RNAポリメラーゼ)の共同作用に基づく。増幅は、サイクルの終わりに(エンドポイントNASBA)またはリアルタイムにおいて(リアルタイムNASBA)、増幅産物の蛍光標識の使用によって、分子ビーコンプローブを使用して、分析される。しかしながら、エンドポイントでは、NASBAの開始の間に不可欠な酵素であるRNAseHの存在により、反応の終わりに、分子ビーコンにハイブリダイズする標的RNAの分解が誘発されうる。標的RNAの切断による蛍光シグナルの減少は、それとき観察される。従って、増幅エンドポイント温度傾度分析は、困難である。
【0009】
また、PCRによるかまたはNASBAによるかに関係なく、蛍光放出はアンプリコン上の分子ビーコンのステム部分の非特異的のハイブリダイゼーションを通しても寄生されうる。従って、この寄生性ハイブリダイゼーションを減らすことは重要である。
【0010】
また、最後に、分子ビーコンは、独立に増幅の標的配列の検出のために使用されうる。実際に、分子ビーコンの注入、標的転写産物上のプローブのハイブリダイゼーションを反映して発される蛍光によって生きた細胞の遺伝子の発現を分析することが可能である。しかしながら、細胞において活性のある多数のヌクレアーゼの存在はプローブの広範囲な分解を暗示し、そのため標的配列上のプローブのハイブリダイゼーションによらない蛍光放出が誘導される。
【0011】
従って、特に従来技術の分子ビーコンの切断及び非特異的なハイブリダイゼーションの現象を減少させることによって、それらをより高感度にするために、現在の増幅技術を改良することは重要である。
【0012】
本発明は、特異的で、安定で、ヌクレアーゼに耐性がある新規な標識化オリゴヌクレオチドを提供することによって、従来技術の全ての欠点を解決することを提案するものである。
【0013】
この点で、本発明は、フルオロフォア、クエンチャー及び少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含むことで特徴づけられる、第1ヌクレオチドセグメント、標的配列に相補的な第2ヌクレオチドセグメント、及び前記第1ヌクレオチドセグメントに相補的な第3ヌクレオチドセグメントを含んでなる標識化オリゴヌクレオチドに関する。
【0014】
好ましくは、前記第1と第3セグメントは、第2セグメントの両側にある。
【0015】
好ましくは、本発明による標識化オリゴヌクレオチドは、前記第2セグメントが少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含むことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記第2セグメントは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25のαアノマーヌクレオシドを含む。
【0017】
好ましくは、前記第2セグメントはαアノマーヌクレオシドから成る。
【0018】
好ましくは、本発明による標識化オリゴヌクレオチドはフルオロフォアが前記オリゴヌクレオチドの一端にあり、クエンチャーが前記オリゴヌクレオチドの他端にあることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記フルオロフォアはフルオレセインである。好ましくは、前記クエンチャーはダブシルである。
【0020】
好ましくは、前記第1セグメントは3から8のヌクレオチドを含み、前記第2セグメントは10から35のヌクレオチドを含み、前記第3セグメントは、それがあるときは、3から8のヌクレオチドを含む。
【0021】
また、本発明は、ポリメラーゼ酵素の5’ヌクレアーゼ活性をブロッキングするためのおよび/またはRNAseH活性をブロッキングするための、少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含んで成るオリゴヌクレオチドの使用にも関する。このような使用が非常に現実的であるのは、分子ビーコン型のプローブを使用して標的配列を検出することが可能であり、一方で同時にポリメラーゼ連鎖反応の間またはポスト増幅エンドポイント測定の間のポリメラーゼ酵素の5’ヌクレアーゼ活性による、または特にNASBAにおいてエンドポイント計測の間のRNAseHのヌクレアーゼ活性による、その分解を回避するためである。
【0022】
また、本発明は、生物試料における核酸物質の検出方法に関し、次の工程含んで成る:
a)核酸物質を生物試料から抽出すること、
b)核酸物質の少なくとも一つの標的配列のアンプリコンを得るために核酸物質を増幅すること;
c)本発明に係る少なくとも1つの標識化オリゴヌクレオチドを工程b)と同時に、または工程b)の後で使用すること;
d)前記アンプリコンの存在を検出すること。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態によれば、核酸物質はPCRによって増幅される。
【0024】
本発明の好ましい別の実施形態によれば、核酸物質はNASBAによって増幅される。
【0025】
以下の定義は、本発明をより明らかに理解することを可能にする。
【0026】
本発明の目的のために、「上流」なる用語は核酸またはポリヌクレオチド配列の5’末端側にある領域を意味し、「下流」なる用語は、前記核酸のまたは前記ポリヌクレオチド領域の3’末端側にある領域を意味する。
【0027】
「ヌクレオチド断片」、「核酸断片」、「ヌクレオチドセグメント」、「核酸セグメント」、「ヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「オリゴヌクレオチド」なる用語は、天然のDNAまたはRNA断片、天然または合成のポリヌクレオチド、合成DNAまたはRNA断片であって非修飾であるか、または少なくとも1つの修飾された塩基、例えば、イノシン、メチル−5−デオキシシチジン、ジメチルアミノ−5−デオキシウリジン、デオキシウリジン、ジアミノ−2,6−プリン、ブロモ−5−デオキシウリジン、シュードウリジンまたはシュードイソシチジン、または他のいかなる修飾塩基であってハイブリダイズを可能にするものを意味する。各々の修飾は、組合わせて採用されてもよい。
【0028】
「標識化オリゴヌクレオチド」または「プローブ」なる用語は、一連のヌクレオシドであって、更に前記オリゴヌクレオチドを検出するための少なくとも一つの分子含んで成るものを意味することを意図する。
【0029】
このオリゴヌクレオチドは特に、分子認識によって作用する検出プローブであってもよい。「分子認識によって作用する検出プローブ」なる表現は、10から100のヌクレオチド単位、特に15から45のヌクレオチド単位の核酸配列であって、標的核酸とハイブリダイゼーション複合体を形成するために所与の条件下でハイブリダイゼーション特異性を有し、且つプローブが標的の核配列にハイブリダイズした場合にシグナルを発するものを意味することを意図する。
【0030】
TyagiとKramer(Nature Biotech, 1996, 14: 303-308)によって記載されているように、検出プローブは特に分子ビーコン検出プローブであってもよい。これらの分子ビーコンは、ハイブリダイゼーションの間、蛍光性となる。それらは、ステム−ループ構造を有し、フルオロフォアとクエンチャー基を含む。特異的なループ配列の、その相補的な標的核酸配列との結合は、ステムを展開させ、適切な波長での励起の間に蛍光シグナルが放出される。
【0031】
検出プローブは特に、「スコルピオン(登録商標)」(Nucleic Acids Research, 2000, Vol. 28, No. 19 3752-3761) または、「Amplifluor(登録商標)」 (Genome Research Vol 1 163-169, 2001 Myakishev M.等)タイプのプライマーに組み込まれるプローブであってもよい。
【0032】
Amplifluor(登録商標)は、5’側にステム−ルート構造を有する配列であるヌクレオチド配列であって、その構造の5’末端にフルオロフォアを、他端にダブシル型クエンチャーを有する。3’側に、Amplifluor(登録商標)は、標的配列に相補的で、増幅反応の間プライマーとして働く配列を有する。
【0033】
スコルピオン(登録商標)は、5’側にステム−ループ構造を有する配列を有し、該構造の一末端にクエンチャーを、他の末端にフルオロフォアを有する配列を有する。3’側に、スコルピオン(登録商標)は、標的配列に相補的で、増幅反応の間プライマーとして働く配列を有する。従来のスコルピオン態様において、プライマー配列とステム−ループ配列の間に位置する「スペーサー」は、ポリメラーゼによるステム−ループ配列の認識を妨げることを可能にする。スコルピオンが本発明によって産生される場合、このスペーサーは任意となる。
【0034】
本発明の目的において、「フルオロフォア」なる用語は、適切な波長(または450と650nmの間)の光で励起したときに、500と700nmの間の蛍光シグナルを発する分子を意味することを意図する。フルオロフォアは、特に、ローダミンまたはその誘導体、例えばテキサスレッド、フルオレセインまたはその誘導体、例えば5−ブロモメチルフルオレセイン、アレクサ系統のフルオロフォア、例えばアレクサ532、アレクサ647、アレクサ405、アレクサ700またはアレクサ680、または使用する測定装置に従って適切である他のいかなるフルオロフォアであってもよい。検出プローブに利用可能なフルオロフォアは、非常に多様であり、当業者に知られている。
【0035】
本発明の目的において、「フルオレセイン」なる用語は、495nm周辺の波長の光で励起したときには、530nm周辺の最大放出を有する蛍光シグナルを発する芳香族の化学分子を意味することを意図する。
【0036】
本発明の目的において、「クエンチャー」なる用語は、フルオロフォアによって発される蛍光を妨げる分子を意味することを意図する。このクエンチャーは、寄生性の放出を回避するために、非蛍光性である芳香族分子から特に選択される。前記「クエンチャー」はダブシル(Dabsyl)またはDabcylまたは「ブラックホールクエンチャーTM」であることが好ましい。ダブシル(Dabsyl)、Dabcyl及び「ブラックホールクエンチャーTM」は、非蛍光性芳香族分子であって、それらが物理的にフルオロフォアに近接している場合に、またはFRETによって、蛍光の放出を妨げる。
【0037】
「αアノマーヌクレオシド」または「αヌクレオシド」または「ヌクレオシドα」なる用語は非天然のαアノマー構造を有するデオキシヌクレオシドであって、デオキシリボースのアノマー炭素によって生じる窒素含有塩基が、βヌクレオシドの場合のように平面より上にある代わりに、平面の下に位置するものを意味することを意図する。好ましくは、αヌクレオチドは、出願WO88/04301に記載されているものである。
【0038】
「末端」なる用語は、最初または最後のヌクレオシドによって生じるフリーな水酸基によってもたらされる数、すなわち3’または5’によって、一般に定義されるオリゴヌクレオチドの合成の開始点または終止点を意味することを意図する。伸長単位(α−またはβ−ヌクレオシドホスホラミダイト)の適切な選択によって、オリゴヌクレオチドは、3’から5’方向またはその逆で合成でき、または合成の間、伸長の方向は交替しさえすることができると理解される。これは、3’−5’、5’−3’または3’−3’、5’−5’末端を有するオリゴヌクレオチドを生じる。
【0039】
「第1セグメント」なる用語は、前記第3セグメントが存在する場合には、それに相補的であり、且つ適した極性を有するヌクレオチド配列であってもよいことを意味することを意図する。
【0040】
「第2セグメント」なる用語は、標的の配列に相補的であり、且つ適した極性を有するヌクレオチド配列を意味することを意図する。
【0041】
「第3セグメント」なる用語は、前記第1セグメントに相補的であり、且つ適した極性を有するヌクレオチド配列を意味することを意図する。
【0042】
また、「ステム」部分なる用語は、前記第1及び第3セグメントのために使われ、また「ループ」部分なる用語は前記第2セグメントのために使われる。この特別な実施形態により、分子ビーコン型の標識化オリゴヌクレオチドを得ることが可能となる。
【0043】
「他の配列/領域、または相補配列にハイブリダイズ可能な配列または領域」なる表現は、公知の方法でケース毎に決定することができるハイブリダイゼーション条件下で、他の配列/領域にハイブリダイズすることができる配列または領域を意味することを意図する。また、相補配列/領域も参照されたい。他と厳密に相補的である配列または領域は、各々の塩基が、ミスマッチなしに他の配列の塩基と対になることができる配列である。 「ハイブリダイゼーション」なる用語は、適切な条件下で、十分に相補的な配列を有する2つのヌクレオチド断片が安定且つ特異的な水素結合により二本鎖を形成することができる間のプロセスを意味することを意図する。ハイブリダイゼーション条件は、ストリンジェンシー、すなわち操作条件の厳密性によって決定される。ハイブリダイゼーションが行われるストリンジェンシーが高ければ高いほど、特異性が高い。ストリンジェンシーは、特に、プローブ/標的二本鎖の塩基組成の関数として、更に、2つの核酸間のミスマッチの程度によって定められる。また、ストリンジェンシーは、反応パラメータ、例えばハイブリダイゼーション溶液に存在するイオン種の濃度と種類、変性剤の性質と濃度及び/またはハイブリダイゼーション温度に依存してもよい。ハイブリダイゼーション反応が行われるべき条件のストリンジェンシーは使用するハイブリダイゼーションプローブに主に依存するであろう。これら全てのデータは周知であり、適切な条件は当業者によって決定されうる。
【0044】
「極性」なる用語は、その相補配列に対するヌクレオチド配列の配向、5’から3’又は3’から5’を意味することを意図する。従って、セグメントは以下のような配向であってもよい:
アンチパラレル様式:これは天然β配置のオリゴヌクレオチドとその標的の天然β配置のオリゴヌクレオチドの場合であり、または非天然α配置のオリゴヌクレオチドとその標的の非天然α配置のオリゴヌクレオチドの場合である;
パラレル様式:これは、非天然α配置のオリゴヌクレオチドとその標的の天然β配置ののオリゴヌクレオチドの場合である。これらの極性ルールによれば、5’−3’、3’−3’または5’−5’オリゴヌクレオチドを得ることは可能であり、それは適切な分子から当業者によって合成される。
【0045】
「ポリメラーゼ酵素」なる用語は、核酸テンプレートから相補的DNAまたはRNA断片を合成すること、及び開始オリゴヌクレオチド(またはプライマー)を使用することができる酵素を意味することを意図する。ポリメラーゼ酵素は時々ヌクレアーゼ活性を有し、複製される標的にハイブリダイズする核酸フラグメントの分解を生じる:従って、記録されるシグナルが、酵素的分解でなく分子認識だけに起因するという理由から、この活性を遮断することはリアルタイム方法において非常に関連性がある。
【0046】
本発明のために、「核酸物質」なる用語は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)配列のような核酸配列を意味することを意図する。本発明の好ましい一実施形態によれば、核酸物質はデオキシリボ核酸配列を含む。本発明の好ましい一実施形態によれば、核酸物質は、患者から採取される生物試料から抽出される。
【0047】
本発明の目的のために、「生物試料」なる用語は、後述するような核酸物質を含有しうる任意の試料を意味することを意図する。この生物試料は患者から採取されてもよく、特に患者の組織試料、血液試料、血清試料、唾液試料又は循環細胞試料であってもよい。また、この試料は食物試料であってもよい。この生物試料は、当業者に公知のいずれかの方法で採取することによって用意される。
本発明の目的のために、「標的配列」なる用語は、ヌクレオチド単位の連続の少なくとも一部分が、使用する検出プローブのヌクレオチド配列に特異的且つ相補的であるヌクレオチド配列を意味することを意図する。
【0048】
本発明の目的のために、工程a)の間、核酸物質は、当業者に公知のいずれかのプロトコルによって生物試料から抽出される。目安として、核酸抽出は、タンパク質及び/又は細胞の脂質外被(例えば、後の反応を妨げる細胞細片)に含まれる核酸を放出するために、生物試料中に存在する細胞の溶解の工程によって行われうる。例として、混合磁気性及び物理的な細胞溶解については特許出願WO00/05338、電気的細胞溶解についてはWO99/53304、そして物理的な細胞溶解についてはWO99/15321に記載されるように細胞溶解法を用いてもよい。
【0049】
当業者は、他の周知の細胞溶解法、例えばヒートショック又は浸透圧ショック、又はグアニジニウム塩(米国特許第5234809号)などのカオトロピック剤を用いる化学的細胞溶解を用いてもよい。また、細胞溶解工程で放出される他の細胞性成分から核酸を分離するために、この細胞溶解の後に精製工程が続いてもよい。この工程は一般に、核酸を濃縮することを可能にし、DNA又はRNAの精製に適したものである。例として、吸着又は共有原子価によって、オリゴヌクレオチドで任意にコートされた磁性粒子を使用すること(これについては、米国特許第4672040号及び米国特許第5750338号を参照)、及びこれによってこれら磁性粒子に結合している核酸を洗浄工程によって精製することが可能である。前記核酸を続いて増幅することが求められる場合には、この核酸精製工程は特に有利である。これらの磁性粒子の特に有利な実施形態は、特許出願WO97/45202及びWO99/35500に記述される。核酸精製方法の他の有利な例は、シリカの使用であり、カラムの形態又は不活性粒子(Boom R. 等, J. Clin. Microbiol., 1990, No.28(3), p. 495-503)又は磁性粒子(Merck:MagPrep(登録商標) Silica, Promega:MagneSilTM Paramagnetic particles)の形態のものである。他の非常に広く用いられる方法は、カラム又は常磁性粒子フォーマットでのイオン交換樹脂をベースにしたものである(Whatman:DEAE−Agarose) (Levison PR等, J. Chromatography, 1998, p. 337-344)。本発明の更に非常に関係があるが唯一でない方法は、金属酸化物支持体(Xtrana社:Xtra−BindTM matrix)上へ吸着させる方法である。
【0050】
生物試料からDNAを特異的に抽出することが求められる場合には、タンパク質を除去するために、フェノール、クロロフォルム及びアルコールによる抽出を実施することが可能であり、70%アルコールでDNAを沈殿させることができる。次いで、DNAは、遠心によってペレットにし、洗浄して、再懸濁してもよい。
【0051】
本発明の目的のために、「工程b)」は、少なくとも一つのポリメラーゼ酵素の作用による核酸配列の複数のコピー(またはアンプリコン)を生成する方法である。本発明の目的のために、「アンプリコン」なる用語は、酵素増幅反応の間に得られる標的配列のコピーを意味することを意図する。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態によれば、核酸物質はPCRによって増幅され、工程b)は、以下の工程を含むサイクルの連続である:
・2つの相補的なDNA標的鎖を得るための、又はRNA標的鎖を分解するための、標的配列の変性、
・少なくとも一つの増幅プライマーと、前述の変性工程の間に得られた各々の標的鎖とのハイブリダイゼーション、
・ポリメラーゼ酵素及びヌクレオシド三リン酸の存在下で、増幅プライマーがハイブリダイズした鎖に相補的な鎖の、増幅プライマーからの形成。
このサイクルは、検出できるために十分な濃度の標的配列を得るために、所定の回数が繰り返される。
【0053】
この実施形態によれば、工程b)及びc)は同時に又は一方の後にもう一方が実施される。
【0054】
工程b)及びc)が同時に行われる場合に、この実施形態は、PCR増幅技術と検出が単一工程に組み合わさっており、特に分子ビーコンを使用する「リアルタイムPCR」によって実行されるのが好ましい。PCR反応はチューブ内で生じ、特定の「分子ビーコン」がハイブリダイズして蛍光シグナルを発するアンプリコンを生成する。新規DNA分子の形成は、ハイブリダイゼーション工程の間、蛍光読取り機にてシグナルを検査することによって、リアルタイムに測定される。本発明による標識オリゴヌクレオチドの使用により、検出プローブが増幅酵素(例えばTaqポリメラーゼ)によって分解されるのを防ぐことができ、これによって、検出の感度が上がり、技術の有効性が向上する。
【0055】
工程b)及びc)が一方の後にもう一方が実施される場合、PCR反応がチューブ内で生じ、アンプリコンを生成する。この増幅工程の終わりに、分子ビーコンは反応媒体に添加されて、蛍光シグナルを発するためにハイブリダイズしうる。本発明に係る標識化オリゴヌクレオチドの使用により、反応チューブ中に残留的に残る耐熱性ポリメラーゼ増幅酵素によって、検出プローブが分解されるのを防ぎ、これによって検出の感度が上がり、技術の有効性を向上させることが可能となる。
【0056】
他の本発明の好ましい実施形態によれば、工程b)の間、核酸物質はNASBAによって増幅される。
【0057】
この実施形態によれば、工程b)とc)は、好ましくは一方の後にもう一方が実行される。増幅工程の終わりに分子ビーコンは反応媒体に添加され、蛍光シグナルを発するためにハイブリダイズしうる。本発明に係る標識化オリゴヌクレオチドの使用により、反応チューブ中に残留的に残るRNAseH酵素によって、検出プローブが分解されることを防ぎ、これによって検出の感度が上がり、技術の有効性を向上させることが可能となる。
【0058】
「工程d)」は、本発明に係る標識化オリゴヌクレオチドのアンプリコンへのハイブリダイゼーションの間、放たれる蛍光シグナルを検出することによって行われ、当業者に公知の任意のプロトコルによって実施されうる。
【0059】
添付図は、例示として示すものであって、決して実質的に制限するものではない。これらによって、本発明の理解がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1Aに記載のように、第1セグメント、αヌクレオシド(陰影部)と合成されている第3セグメント(ステム)、及びβヌクレオシドと合成されている第2セグメント(ループ)を含んで成る、本発明に係る標識化オリゴヌクレオチドの例を示す。
【図2】実施例1Bに記載のように、第1セグメント、βヌクレオシドと合成されている第3セグメント(ステム)、及びαヌクレオシド(陰影部)と合成されている第2セグメント(ループ)を含んで成る、本発明に係る標識化オリゴヌクレオチドの例を示す。
【図3】実施例1Cに記載のように、第1セグメントと第3セグメント(ステム)、またαヌクレオシド(陰影部)と合成されている第2セグメント(ループ)を含んで成る、本発明に係る標識化オリゴヌクレオチドの例を示す。
【図4】実施例2Aに記載のように、40℃で測定した、修飾又は非修飾の分子ビーコンの正規化蛍光プロファイルを示す。
【図5】実施例2Aに記載のように、95℃で測定した、Lightcyclerで増幅中の「オリゴヌクレオチドA」と「MB」分子ビーコンの正規化蛍光プロファイルを示す。
【図6】実施例2Aに記載のように、95℃で測定した、Lightcyclerで増幅中の「オリゴヌクレオチドB」と「MB」分子ビーコンの正規化蛍光プロファイルを示す。
【図7】実施例2Aに記載のように、95℃で測定した、Lightcyclerで増幅中の「オリゴヌクレオチドC」と「MB」分子ビーコンの正規化蛍光プロファイルを示す。
【図8】実施例3に記載のように、ミスマッチを有するか又は有しない様々な相補的配列によって解析したプローブの蛍光の測定による熱変性プロファイルを示す。
【図9】実施例4に記載のように、ステムの一部に相補的であるか又は相補的でない標的によって解析したプローブの蛍光の測定による熱変性プロファイルを示す。
【0061】
以下の実施例は、例示として示すものであって、決して実質的に制限するものではない。これらによって、本発明の理解がより明確になるであろう。
【実施例】
【0062】
実施例1:本発明に係るオリゴヌクレオチドの合成方法
(開始材料)
3’にホスホラミダイト基を有する天然ヌクレオチドは、3’β-アミダイトと呼ばれている。これらのオリゴヌクレオチドは市販されており、Glen Research社(Foster City, 米国)から購入した。
5’にホスホラミダイト基を有する天然ヌクレオチドは、5’β-アミダイトと呼ばれており、またこれらのオリゴヌクレオチドも市販されており、Glen Research社(Foster City, 米国)から購入した。
3’にホスホラミダイト基を有するαアノマーヌクレオチドは、3’α-アミダイトと呼ばれており、これらは市販されており、Chemgenes社 (Wilmington, 米国)から購入した。
CPGダブシル(制御ポアガラス、CPG)と6−フルオレセイン・ホスホラミダイトは、Glen Research社(Foster City, 米国)により販売されている。
【0063】
表1

【0064】
(オリゴヌクレオチド合成)
3’β-アミダイト、5’β-アミダイト及び3’α-アミダイトをオリゴヌクレオチド合成のために使用した。前記アミダイトの反応性が非常に類似するためである。好適に、CPGダブシルと6−フルオレセイン・ホスホラミダイトを使用した。ホスホラミダイト合成方法は、BeaucageとLyer(Tetrahedron, 48, 223-2311, 1992)に記載されている。
一般に、合成される配列の第1のヌクレオシドは、3’位(または5’)において固体支持体(CPG)に取り付けられ、ヌクレオシドの5’OH(又は3’)末端は酸に不安定なジメトキシトリチル(DMT)基によって保護される。
− 第1の脱トリチル工程において、酸処理(トリ−またはジクロロ酢酸)により、反応性OH末端を生成するためにDMT基を除去された。
− 第2のカップリング工程において、付加される塩基のホスホラミダイトは、亜リン酸トリエステル結合を生じさせるために、この第1の伸長サイトで、(5’又は3’において)縮合される。縮合は、触媒(テトラゾールまたはS−チオエチルテトラゾール、またはDCI等)の存在下で実施した。
− 第3のキャッピング工程において、前の縮合工程において反応しなかった−OH基は、配列の欠失を妨げるために、アシル化反応剤(無水酢酸)によってブロックされる。
− 第4の酸化工程において、亜リン酸トリエステル結合は、酸化剤(水溶性ヨウ素)を使用して、リン酸トリエステル結合に酸化した。また、亜リン酸トリエステル結合は、ホスホロチオネートにトリエステル結合を生じさせるために、Beaucage試薬のアセトニトリル溶液によって酸化することができる。
工程1から4は、合成される配列の長さに応じ必要なだけ多くの回数を繰り返した。
【0065】
所望の配列が終わるときに、オリゴヌクレオチドを支えている固体支持体をアンモニアの濃縮水溶液においてインキュベートした。これは、支持体からオリゴヌクレオチドを切断し、塩基とリン酸基を脱保護するためである。
このように得られた粗オリゴヌクレオチドは、260nm(Spectramax, Molecular Device)でアッセイする前に、アセトンと過塩素酸ナトリウムの溶液により沈澱させた。次に、50nmoleの粗オリゴヌクレオチドを、Xterra C8 4.6x150 3.5μmカラムにおいて、アセトニトリル/TEAAcの勾配により、単一工程で精製した。最も純粋な分画は、pH12のNaClの勾配で、Gen Pack Faxカラム(Alliance HPLC system, WATERS)上のイオン交換クロマトグラフィ−によって確認した。
分画をまとめて、蒸発させ、そして混合物は使用前にHPLCで再アッセイ及び再分析した。
【0066】
(1A−αホスホラミダイトを含むオリゴヌクレオチドの前記第1及び第3セグメント(ステム部分)による本発明の第1実施形態(図1))
βアノマー配置に第2セグメントまたはループを、αアノマー配置(第1及び第3セグメント)にステムを含み、アンチパラレルα/α二本鎖を形成する、オリゴヌクレオチドを使用した(オリゴヌクレオチドA)。この第1の実施形態によれば、オリゴヌクレオチドの合成は、ダブシル基(図1、矢印を参照)を含む末端から開始された。次にループはβ-アミダイトによって合成され、次に第3セグメントはα-アミダイトから合成された。
【0067】
(1B−αホスホラミダイトを含むオリゴヌクレオチドの前記第2セグメント(「ループ」部分)による本発明の第2実施形態(図2))
前述の実施形態と比較して、この場合は、開始オリゴヌクレオチドは、標的(オリゴヌクレオチドB)とパラレル様式にハイブリダイズするαヌクレオチドを含んでいる第2セグメント(ループ)を含む。第1と第3セグメント(ステム部分)は、βヌクレオチドを含む。合成はβアミダイトから開始され、次に、残りのステムの合成のためにβアミダイトに戻る前に、ループがαアミダイトと合成される(図2、矢印を参照)。
【0068】
(1C−αホスホラミダイトを含むオリゴヌクレオチドの前記第1、第2及び第3セグメント(「ステム」及び「ループ」部分)による本発明の第3実施形態)
前述の実施形態と比較して、この場合は、開始オリゴヌクレオチドは、αヌクレオシド(ループ及びステム)により完全に修飾される。ループのαヌクレオチドは標的にパラレル様式でハイブリダイズし、一方でステムのそれらはアンチパラレル様式で互いにハイブリダイズする(オリゴヌクレオチドC)。
合成は、αアミダイトにより開始し終了する(図3)。
【0069】
実施例2:Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性による切断に対する、本発明のオリゴヌクレオチドの抵抗性の研究
この実験の目的は、本発明に係る修飾オリゴヌクレオチド(実施例1のオリゴヌクレオチドA、B及びC)がインビトロの酵素増幅反応においてTaqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断されないことを証明することである。
【0070】
(実験計画)
標的配列は、hMPVウイルスの遺伝子配列に対応する1.2Kbのインサートを含むpCITEプラスミドで、濃度はチューブに付き5・10コピーの濃度であった。
使用したプライマーとプローブは以下であった:
・センスプライマー:
5’− CAT ATA AGC ATG CTA TAT TAA AAG AGT CTC −3’(配列番号1)
・リバースプライマー:
5’− CCT ATT TCT GCA GCA TAT TTG TAA TCA G −3’(配列番号2)
・本発明の第1実施形態に係る修飾プローブ(オリゴヌクレオチドA):
5’− FAM−[GC TAC] CAA CTG CAG TGA CAC CCT CAT CAT TGCA [GTA GC]−Dabcyl−3’(配列番号3)
角括弧の間のヌクレオチド配列は第1及び第3「ステム」セグメントに対応し、αアノマーヌクレオチドから成る。特に下線を施したβアノマー「ループ」配列は、インビトロ増幅において生成されるアンプリコンの配列を特異的に認識した。FAMはフルオレセイン型フルオロフォアであり、その蛍光は530nmで検出できる。Dabcylは芳香族分子であり、物理的にFAMフルオロフォアに近接してあるときに、それは蛍光の放出を妨げる。
・本発明の第2実施形態に係る修飾プローブ(オリゴヌクレオチドB):
5’−FAM−GC TAC[ACGT TAC TAC TCC CAC AGT GAC GTC AAC] GTA GC−Dabcyl−3’(配列番号4)
角括弧の間のヌクレオチド配列は第2「ループ」セグメントに対応し、αアノマーヌクレオチドから成り、インビトロ増幅において生成されるアンプリコンの配列を特異的に認識した。
・本発明の第3実施形態に係る修飾プローブ(オリゴヌクレオチドC):
5’−FAM−[GC TAC ACGT TAC TAC TCC CAC AGT GAC GTC AAC GTA GC]−Dabcyl−3’(配列番号5)
角括弧の間のヌクレオチド配列は第1、第2及び第3セグメントに対応し、αアノマーヌクレオチドから成る。下線を施した配列は、第2「ループ」セグメントに対応し、特にインビトロ増幅において生成されるアンプリコンの配列を特異的に認識した。
・非修飾コントロールプローブ(MB):
5’− FAM−GC TAC CAA CTG CAG TGA CAC CCT CAT CAT TGCA GTA GC−Dabcyl−3’(配列番号6)
この配列はβアノマーであり、特にインビトロ増幅において生成されるアンプリコンの配列を特異的に認識した。
【0071】
(LightCyclerでのリアルタイム検出を伴うPCR増幅:)
「LightCycler FastStart DNA マスター ハイブリダイゼーション プローブ」増幅キット(ロシュ、Penzberg、ドイツ)を用いた。反応混合物の調製は、供給元によって推奨される手順に従って実施した。20μlの反応量において、5・10コピーのプラスミドを、センス及びリバースプライマー(0.5μM)、修飾又は非修飾ヌクレオチドプローブ(1μM)、2μlのキットのバイアル1(酵素ミックス)、0.8μlのキットの25mMのMgCl及びキットのPCRグレードの水を混合した。そして、反応混合物をキャピラリーチューブに入れ、それをLightCyclerに入れた。各増幅反応に関して、修飾プローブ(オリゴヌクレオチドA、B又はC)の代わりに、非修飾プローブ(MB)でコントロールを実施した。また、各増幅反応に関して、標的プラスミドの代わりに、キットのPCRグレードの水を添加して、コントロールを実施した(ネガティブコントロール、「c-」)。
【0072】
PCR反応は、95℃で8分の最初の変性に続いて、95℃30秒間、40℃5秒間及び60℃60秒間の40サイクルから構成された。各サイクルの各ステップの終了時に、蛍光は530nmで読んだ。そして、蛍光の結果は、温度によって結果を分けるためにエクセルシート上に再加工し、それらを正規化し、グラフ表現を作成した。40℃と60℃における測定値で得たグラフは、増幅反応の間のアンプリコンとプローブとのハイブリダイゼーションを確認することに役立った。一方で、95℃において、ハイブリダイゼーションは、プローブとアンプリコンの間で可能でなかった。ネガティブコントロールと比較して、95℃におけるシグナルのいかなる増加は、プローブの切断によるものだけがありえる。従って、95℃における測定値で得たグラフは、プローブがTaqPolの5’ヌクレアーゼ活性によって切断されたか否かを証明することに役立った。
【0073】
(結果)
40℃におけるリアルタイム検出で得られたプロファイルを図6に示す。横軸は増幅サイクルの数を表し、縦軸は530nmで検出された蛍光を表し、各サイクルの40℃におけるものである。左上は「MB」;右上は「オリゴヌクレオチドA」;左下は「オリゴヌクレオチドB」;右下は「オリゴヌクレオチドC」である。各グラフに、対応するネガティブコントロールを示す。
【0074】
95℃におけるリアルタイム検出で得られたプロファイルを、図6から8に示す。各図で、修飾分子ビーコンの一つに対応するプロファイルを示し、コントロールとして、非修飾分子ビーコンのプロファイル及びネガティブサンプルに対応するプロファイルを伴に示す。
【0075】
ハイブリダイゼーションの場合に期待される結果は、アンプリコンの数が増加する時から開始する40℃における蛍光シグナルの指数関数的な増加である。切断が起きた場合には、95℃での蛍光の指数関数的な増加が、ハイブリダイゼーションにより観察されるものと平行して、期待される。シグナルの線形増加または減少は、アンプリコンのいかなる検出にも対応しないが、これは後者は指数的に生じる故である。
【0076】
40℃のプロファイルは、修飾ヌクレオチドプローブA、B及びC、更に非修飾コントロールMBが特にインビトロ酵素増幅反応に由来するアンプリコンの存在を検出することを実証した。
【0077】
95℃のプロファイルは、MBとAプローブが増幅反応の間、特に切断されるが、一方で修飾プローブBとCは同じ条件下で切断されないことを実証した。
【0078】
図5から7は、非修飾プローブ「MB」と、それぞれ修飾プローブ「オリゴヌクレオチドA」、「オリゴヌクレオチドB」及び「オリゴヌクレオチドC」の95℃における蛍光の増加の比較を示す。増幅が起きた時に、蛍光の特異的な増加は、MBプローブと「オリゴヌクレオチドA」プローブにだけ、観察することができた。増幅が起こらない時(ネガティブコントロール、「c-」)及びヌクレオチドプローブの第2「ループ」セグメントが修飾された時(オリゴヌクレオチドBとC)、Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断がなく、従って、ネガティブコントロールと比較して蛍光に増加がない。
【0079】
(結論)
本発明に係る第2「ループ」セグメントにおいて修飾された分子ビーコン(オリゴヌクレオチドBとC)はLightcyclerにおけるサイクリングに由来するアンプリコンと特にハイブリダイズし、非修飾分子ビーコン「MB」によって及びステムにおいて修飾された分子ビーコン(オリゴヌクレオチドA)によって得られたものと同等のリアルタイム検出を引き起こした。コントロール分子ビーコン「Mb」及びステムにおいて修飾された分子ビーコン(「オリゴヌクレオチドA」)とは異なり、ループにおいて修飾された分子ビーコンは、Taqポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によって切断されなかった。
【0080】
実施例3:本発明のオリゴヌクレオチドのその標的配列に対するハイブリダイゼーションの特異性の研究(図8)
(目的)
実験の目的は、α型ヌクレオチドを含むビーコンが、β型ヌクレオチドだけから構成されたビーコンより、その標的に対しより特異的であるか否かを検証することである。
特異性は、その完全に補完的な標的を有する溶液中のプローブとその配列にヌクレオチド変異(この場合はミスマッチ)を含む標的を有する溶液中のプローブ間のTm(本願明細書ではΔTm)の差を算出することで測定することができる。ΔTmは、分析される各プローブ対し及び各相補配列に対し算出される。
我々の場合は、特異性は、オリゴヌクレオチドA、B及びCプローブ、及び4つの相補配列であって1つはプローブの第2セグメントに完全に相補的であり他の3つは完全な相補配列に比較して1つのC、TまたはAのミスマッチを含むものによって算出されるΔTmの値によって測定される。
【0081】
(実験計画)
使用するプローブと相補配列の配列を下記の表1に記載する。
プローブを含む溶液の蛍光は、完全に相補的な標的またはミスマッチを有する標的の存在下で、EasyQ thermoanalyzer分光蛍光計(ビオメリューbv、Boxtel、NL)で、69と27℃の間の温度の関数として、測定された。全ての測定は、Nasba基本キット(ビオメリューbv、Boxtel、NL)の緩衝水溶液において、100nMのプローブ濃度で、及び1μMの標的濃度で、20μLの容量を有する溶液に実行された。
【0082】
表1

表1:使用するプローブと相補配列の配列。ボールドイタリック体:αヌクレオチド;下線:ミスマッチ。全ての配列は、5’−3’方向に記載されている。
【0083】
(結果)
得られた熱変性プロファイルは、図8に示す。Tmは、各プロファイルの一次微分係数の最大に対応する。得られたTm値を、下記の表2に示す。
表2

表2:相補配列G、C、T及びAとさまざまなプローブのTm。括弧内は、完全に相補的な配列「CompG」と他のミスマッチを含んでいる相補配列の間のΔTmの値。
【0084】
オリゴヌクレオチドAプローブの場合は、表2のΔTm値はMBプローブより良好な特異性、+2℃程度、を示す。図14に見られるように、オリゴヌクレオチドAプローブの場合、両方の場合において相補配列がβ型であるならば、特異性のこの増加は、確実に、ステム(第1と第3の相補的セグメント)のハイブリダイゼーションより大きな安定性による。
【0085】
オリゴヌクレオチドB及びCプローブの場合、使用した温度範囲においてハイブリダイゼーションが十分でなかったので、ミスマッチを含む相補配列によるTm値は得ることができなかった。これは、非常に高い特異性を示しており、図8の熱変性プロファイルにおいて確認することができる。完全に相補的な配列「compG」だけがこれらのプローブとハイブリダイズし、その一方でミスマッチを含んでいる相補配列はハイブリダイズしないことが、これらのプロファイルにおいてわかる。オリゴヌクレオチドAプローブによって得られた結果と比較して、これらの結果は、α型配列のハイブリダイゼーションによる特異性の増加が、オリゴヌクレオチドBプローブではβ型でありオリゴヌクレオチドCプローブではα型であるステムの性質から独立していることを示す。
【0086】
(結論)
結果は、4つの修飾プローブが非修飾MBプローブより高い特異性を有することを示す(表2)。我々の場合では、特異性におけるこの増加は、ステム(第1及び第3の相補的セグメント)の性質から独立である。
【0087】
実施例4:標的配列と分子ビーコン型核酸プローブのステムとのハイブリダイゼーションの研究
(目的)
分子ビーコン型核酸プローブがその相補的標的配列とハイブリダイズするときに、また、プローブのステムが、5’側と3’側の両方において、標的とハイブリダイズできることもありうる。これは、ハイブリダイゼーションの安定性の思いがけない増大と、それゆえにプローブの特異性の減失を生じうる。本明細書に記載の実施例は、分子ビーコン型核酸プローブにおいてα−とβヌクレオチドの組合わせが、ステムの相補的標的とのハイブリダイゼーションを妨げることによってこの問題を回避することを可能にすることを示すことに役立つ。
【0088】
(実験計画)
使用したプローブの配列は実施例3と同じであり、上の表1に記載されている。使用した相補配列を、下記の表3に記載する。
表3

表3:使用した相補的標的オリゴヌクレオチドの配列。ボールド体はプローブのループと相補的な配列である。
【0089】
相補配列は、プローブのループに相補的な3’側の一部、且つプローブのステムの一方に、「comp+」の場合は相補的であり、あるいは「comp−」の場合は相補的でない、5’側の一部を含む。
【0090】
プローブの及び標的のさまざまな組合わせを含む溶液の蛍光は、EasyQ thermoanalyzer分光蛍光計(ビオメリューbv、Boxtel、NL)で、69と27℃の間の温度の関数として測定された。全ての計測は、Nasba基本キット(ビオメリューbv、Boxtel、NL)の緩衝水溶液において、100nMのプローブ濃度で、及び1μMの標的濃度で、20μLの容量を有する溶液に実行された。
【0091】
(結果)
得られた熱変性プロファイルを、図9に示す。Tmは、各プロファイルの一次微分係数の最大に対応する。得られたTm値は、下記の表4に示す。
表4

表4:comp+及びcomp−相補的標的とのさまざまなプローブのTm
【0092】
ループがβ型であるプローブは、ここで使用するもののように必然的にβ型の天然標的配列にアンチパラレル配向でハイブリダイズするであろう。ループがα型であるプローブは、同じβ標的配列にパラレル配向でハイブリダイズするであろう。その結果、ループの性質に従って、ステムは、ループのハイブリダイゼーションによって決定される配向で、標的の配列の反対側にそれ自体が見られる。従って、プローブのαステムは天然のβ標的にハイブリダイズすることができるのは、後者が相補的な(comp+)場合とプローブのループもまた、α(パラレル配向)である場合のみである。同様に、プローブのβステムは天然のβ標的にハイブリダイズすることができるのは、後者が相補的な(comp+)場合とプローブのループもまた、β(アンチパラレル配向)である場合のみである。これは、MBとオリゴヌクレオチドCプローブのステムはcomp+の相補配列とハイブリダイズすることができるが、comp−の非相補配列とハイブリダイズすることができず、表4において観察できるように、Tmの違いが生じることを示唆する。オリゴヌクレオチドAとBプローブのステムはcomp+の相補配列とも、comp−の非相補配列ともハイブリダイズすることができず、表4から分かるように、Tmは2つの標的と類似している。
【0093】
(結論)
結果は、相補性が完全なときでさえも、ステムのヌクレオチドがループのヌクレオチドとはアノマーが異なる分子ビーコン型核酸プローブ(オリゴヌクレオチドAとBプローブ)は、ステムと標的に存在する相補配列とのハイブリダイゼーションを妨げることを示す。ハイブリダイゼーションにおける負の効果は、観察されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヌクレオチドセグメント、標的配列と相補的である第2ヌクレオチドセグメント、及び前記第1ヌクレオチドセグメントと相補的である第3ヌクレオチドを含む標識化オリゴヌクレオチドであって、フルオロフォア、クエンチャー及び少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含むことを特徴とする標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記第1と第3セグメントが第2セグメントの両側にあることを特徴とする、請求項1に記載の標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記第2セグメントが少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
フルオロフォアが前記オリゴヌクレオチドの一端にあり、クエンチャーが前記オリゴヌクレオチドの他端にあることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記フルオロフォアがフルオレセインであることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記クエンチャーがダブシルであることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記第1セグメントが3から8ヌクレオチドを含み、前記第2セグメントが10から35ヌクレオチドを含み、且つ前記第3セグメントが、存在する場合には、3から8ヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の標識化オリゴヌクレオチド。
【請求項8】
ポリメラーゼ酵素の5’ヌクレアーゼ活性を遮断するため及び/またはRNAseH活性を遮断するための、少なくとも一つのαアノマーヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項9】
生物試料における核酸物質の検出方法であって、
a)核酸物質を生物試料から抽出すること、
b)核酸物質の少なくとも一つの標的配列のアンプリコンを得るために核酸物質を増幅すること、
c)請求項1から7に記載の少なくとも1つの標識化オリゴヌクレオチドを工程b)と同時に、または工程b)の後で使用すること、
d)前記アンプリコンの存在を検出すること
を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−504745(P2010−504745A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529742(P2009−529742)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052007
【国際公開番号】WO2008/037924
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】