説明

新規な癌細胞検出試料調製用キット及びそれを用いた癌細胞検出用キット

【課題】ウイルスを含有した試薬が、外部に拡散すること無く試料と混和、反応し、且つ反応後の試料を観察することが可能となるため、安全性が高く、簡便で、精度が高く、且つ定量的な癌細胞の検出が可能な癌細胞検出キット、及びそれを用いた癌の診断方法を提供する。
【解決手段】癌細胞検出キットは、一端に被験者から採取した生体由来の試料を受け入れる入口を有する試験容器と、前記入口を塞ぐキャップ部とを備え、前記試験容器が、ウイルスを含有した試薬を封入する、仕切部によって密閉された試薬封入部を有し、前記キャップ部が、ウイルス非透過性の通気性フィルタを有する、前記入口を前記キャップ部により塞ぐ動作により前記仕切部を開封する開封部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞検出試料調製用キット及びそれを用いた癌細胞検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は日本人の死亡率の第一位の要因であるが、早期診断による早期治療が可能であれば、その死亡率を著しく減少させることができると言われている。
現在、癌の診断は、一般的に細胞検査技師が、被験者から採取した被検試料中の細胞を検鏡により形態学的検査を行うことによって、正常細胞と癌細胞を見分けることによって行われている。しかしながら、この診断方法は、細胞検査技師による目視検査であるため、集団検診のように大量の被検試料を取り扱いには不向きであり、また、被検試料の状態等によっては検査結果にばらつきが生じ、且つ定量的に分析することができないという問題がある。
また、被験者の血漿および血清中の腫瘍由来DNAを検出することで、癌の診断を行う方法の研究も行われている。具体的には、被検者から採取した血中に含まれる細胞を濃縮し、当該濃縮された細胞中の血中遊離癌細胞に係るDNA等を生化学的に分析することで癌の診断を行うというものである。この方法は、大量の被検試料を比較的安全に処理することができるが、血中遊離癌細胞の濃縮工程が困難であり、簡便性に欠けるという問題がある。
一方、近年癌細胞において特異的に増殖する腫瘍溶解性ウイルスを用いた抗癌剤(特許文献2)や癌細胞検出試薬が報告されている(特許文献3)。腫瘍溶解性ウイルスとは、癌細胞中で特異的に増殖するウイルスのことで、該ウイルスを癌細胞に感染させることにより、癌細胞を直接的に破壊・死滅させることができ、そのゲノムに標識タンパク質の遺伝子を組み込むことで癌細胞を簡便に検出することが可能となる。しかしながら、癌細胞の検出は簡便であっても、腫瘍溶解性ウイルスは正常細胞にも感染性を有するため、該検出を行うにはP2レベルの設備が必要となる。従って、現実的に集団検診等での使用は困難であるという問題があった。
【特許文献1】WO2004/005511号公報
【特許文献2】WO2006/036004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、癌細胞検出試料調製用キット及びそれを用いた癌細胞検出用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ウイルス、特に腫瘍溶解性ウイルス、を含有した試薬による癌細胞の検出において、前記ウイルスの外部への拡散による汚染を伴うことのない癌細胞検出試料調製用キットを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)一端に被験者から採取した生体由来の試料を受け入れる開口を有し、シール部によってウイルスを含有した試薬が封入された試験容器と、ウイルス非透過性の通気性フィルタを有する前記開口を塞ぐためのキャップ部と、前記シール部を開封する開封部と、を備える癌細胞検出試料調製用キット;
(2)前記キャップ部が前記開口を塞ぐ動作に伴って前記開封部が前記シール部を開封する(1)記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(3)前記キャップ部が、前記開封部を有する(1)または(2)に記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(4)前記シール部が前記開封部により開封される際に、前記試薬容器の内部のウイルスが外部から隔離されている(1)〜(3)の何れか1つに記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(5)前記シール部が前記開口から所定距離隔てた位置に設けられており、前記挿入部の先端が前記開口を閉塞する第1位置から前記シール部が前記開封部により開封される第2位置まで前記キャップ部が前記試験容器に対して移動されることにより、前記試験容器に前記キャップ部が装着されるように構成されている(4)に記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(6)前記ウイルスのゲノムが、発癌遺伝子のプロモーター及び標識タンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたものである(1)〜(5)の何れか(1)つに記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(7)前記ウイルスが、腫瘍溶解性ウイルスである(1)〜(6)の何れか1つに記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(8)前記ウイルスが、d12.CALP、d12.CALP delta RR、Telomelysin、Telomelysin-RGD、AxE1AdB-UPRT、AdSLPI.E1AdB、AxE1CAUP、AdE3-IAI.3B、Ad-MKAdMK、AdCEAp/Rep、AdAFPep/Rep、MMP-sub II SeV/delta M、又はCD-MMP-sub II-SeV/delta Mである(1)〜(7)の何れか1つに記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(9)前記試料が、血液、喀痰又は子宮から採取したものである(1)〜(8)の何れか1つに記載の癌細胞検出試料調製用キット;
(10)(1)〜(9)の何れか1つに記載の癌細胞検出試料調製用キットと、
前記試験容器を挿入する挿入部、前記試験容器を挿入する動作によって、前記試験容器の底面を開封する第2開封部、及び前記第2開封部により底面が開封された試験容器から試料及び試薬の反応液を導入し、前記反応液を外部から観察可能に保持する保持部を有するスライドグラスと、を備えた癌細胞検出用キット;
(11)前記試験容器の底面が、前記第2開封部により開封される際に、内部のウイルスが外部から隔離されている(10)記載の癌細胞検出用キット;
(12)前記試験容器の底面が、前記第2開封部により開封される第2シール部を有する(9)または(11)に記載の癌細胞検出用キット;
(13)(1)〜(12)の何れか1つに記載のキットを用いた癌の診断方法;
(14)前記癌が、血液癌、肺癌又は子宮頸癌である(13)に記載の診断方法;
(15)一端に開口を有し、シール部によってウイルスを含有した試薬が封入された試験容器に、被験者から採取した試料を添加する工程と、前記開口を、ウイルス非透過性の通気性フィルタを有したキャップ部により塞ぐ工程と、前記シール部を開封部材により開封する工程を備えた癌細胞検出用試料の調製方法;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ウイルスを含有した試薬が、外部に拡散すること無く試料と混和し反応さ、且つ反応後の試料を観察することが可能となるため、安全性が高く、簡便で、精度が高く、且つ定量的な癌細胞の検出が可能な癌細胞検出試料調製用キット及びそれを用いた癌細胞検出用キット、並びにそれらのキットを用いた癌の診断方法及び癌細胞検出用試料の調製方法が提供される。
【0007】
また、本発明のキット及び方法を用いれば、P2レベルの大規模な検査施設を設ける必要が無いため、簡便で、且つ精度の高い癌の集団検診が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図面は、説明の便宜のために用いられるものであり、本発明の範囲は、図面に示す実施形態に限定されない。
【0009】
まず、本実施形態に係る癌細胞検出試料調製用キットの構成について説明する。図1は、一実施形態に係る癌細胞検出試料調製用キットを示した側面図である。本実施形態に係る癌細胞検出試料調製用キットは、キャップ部1と試験容器3とを備えている。試験容器3は、実質的に円筒状に形成されており、その上面には、図2で示されるように、被験者から採取した生体由来の試料を受け入れるための開口4が設けられている。開口4より挿入されるキャップ部1は、実質的に円筒状の開封部2と、開封部2の上端に設けられた円盤状の鍔部1aを備えている。更に、鍔部1aは、キャップ部1が試験容器3に当接されたときに、試験容器3の上端縁の全周を嵌合する嵌合部1bを有している(図5参照)。開封部2は、試験容器3の上面内側、即ち開口4の直径と実質的に同一の直径を有している。従って、かかる開封部2は、試験容器3の開口4の全周にわたって密着した状態で、鍔部1aが試験容器3の上端と当接するまで挿入されることになる。また、円柱状の開封部2の下側、即ちキャップ部1の鍔の反対側には、2つの突起2aが設けられており、この突起2aにより後述する第1アルミシート5を開封することが可能である。また、キャップ部1の中央部分には、前記開封部2の空洞を閉塞するようにウイルス吸着性のチャコールフィルタ10が備えられている。これにより、キャップ部1により試薬容器3を閉塞した際にも、試薬容器3の内部空間に外気からの通気を確保することができる(図5参照)。
【0010】
図3は、試験容器3の図2に示されるA−A断面矢視図である。本実施形態では、試験容器3には、その容器内部を仕切る第1アルミシート5が、容器内部のほぼ中央に設けられている。更に試験容器3の底面には第2アルミシート8が設けられており、第1アルミシート5と第2アルミシート8とで挟まれた空間は、外部から隔離された試薬封入部6となっている。この試薬封入部6には、ウイルスを含有した試薬7が封入されている。このように、第1アルミシート5と第2アルミシート6とで隔離された空間である試薬封入部6に試薬7が封入されているため、ウイルスが外部に拡散されること無く、安全に試験容器3を持ち運ぶことができる。
【0011】
次に、本実施形態に係る癌細胞検出試料調製用キットを使用して癌細胞検出用試料を調製するときの動作について説明する。まず、ユーザは試料を試験容器3に注入する。試料が注入された状態の試験容器3の断面図を図4に示す。上述したような構成により、試験容器3の開口4(上端)から第1アルミシート5で仕切られた試験容器3の略中央位置までの部分(即ち試験容器3の上側部分)は、凹状となっており、試料10を収容することが可能である。ユーザは、例えばピペットを用いることによって、試料を試験容器3の凹状部分に注入する。試験容器3の開口4から注入された試料10は、試験容器中央部に設けられた第1アルミシート5により容器内部の中央で堰き止められる。そのため、試薬注入時に、上述の試薬封入部6に封入されたウイルスを含有する試薬7と混和されることは無い。即ち、試料注入時において、ウイルスを含有する試薬7は外部から隔離された密封状態にあり、外部へのウイルスの拡散が起こることは無い。
【0012】
次に、ユーザは、キャップ部1により試験容器3の開口を閉塞する。図5にキャップ部1により開口4が塞がれたときの試験容器3の断面図を示す。上述したように、キャップ部1の開封部2は、その先端に突起が設けられており、且つキャップ部1を試験容器3に挿入した際、開封部2が試験容器3の開口4と密着した状態で挿入できるようになっている。つまり、開封部2の先端部分が開口4に挿入された位置において、既に試薬容器3の開口は閉塞されており、試薬容器3の内部空間は外部から隔離した状態となっている。なお、ここでいう隔離した状態とは、試薬容器3に収容されたウイルスが外部に拡散されることなく、しかも試薬容器3の内部空間が試料中の細胞を生存させるために外気を導入するための微細孔によって通気されている状態をいう。更に、開封部2の全長は、試験容器3の上端から試験容器3中央部の第1アルミシート5までの長さより長く構成されている。これにより、キャップ部1を鍔部1aが試薬容器3の上端面と当接するまで試験容器3に挿入することにより、開封部2の突起が第1アルミシート5を突き破り、第1アルミシート5を開封することができる。更に、開封部2の胴部分、即ち突起以外の部分の挿入開始から、開封部2の突起が第1アルミシート5に到達するまでの間においては、開封部2の胴部分が、既に開口4と円周方向の全周にわたって密着した状態を維持するため、試験容器3の内部が外部から隔離された状態となっている。従って、試料9と試薬7が混合される際は、試験容器3の内部は外部から隔離された状態となっており、ウイルスが外部に拡散されることが無い。また、キャップ部1の上面に設けられたチャコールフィルタ10により、ウイルスが外部に拡散することなく試験容器3内部の通気性が確保され、十分に試料9に含まれる細胞と試薬7に含まれるウイルスを反応させることができる。このようにして試薬容器3の内部で試料9と試薬7とを混和することによって、測定試料(反応液)が調製される。
【0013】
上述のようにして試薬容器3により調製された反応液は、以下に説明するスライドグラス11に供給されて検鏡により検査される。スライドグラス11の構成について以下に説明する。
図6は、一実施形態に係る検鏡用のスライドグラス11の斜視図である。本実施形態のスライドグラス11は平坦な直方体の板状をなしており、その長方形の平面の中央部分から短辺寄りの位置に、試験容器3を挿入する挿入部12を有している。挿入部12は、試験容器3の外径と実質的に同一サイズの内径を有する円筒状をなしており、上部の開口から試験容器3と全周にわたり密着した状態で挿入することが可能となっている。この挿入部12には、試験容器3が、第2アルミシート8を有する底面側から挿入される。
【0014】
図7(a)にスライドグラス11の平面図を示し、図7(b)にその側面断面図を示す。2枚のスライドグラス、第1スライドグラス17と第2スライドグラス18とが溶着されて構成されている。なお、この第1スライドグラス17と第2スライドグラス18とは、水密を保つように溶着されている。また、第1スライドグラスと第2スライドグラスとが水密を保つように接合されていればその接合形態は限定されず、例えば接着剤により接合されていてもよい。第1スライドグラス17には、開口が設けられており、当該開口の周囲から立ち上がるように上記の挿入部12が設けられている(図7(b)参照)。また、第2スライドグラス18の挿入部12に対応する箇所には、第2開封部16が設けられている。この第2開封部16は、挿入部12の実質的に中央位置に、上方へ突出するように設けられており、上端が尖った略円錐状をなしている。これにより、挿入部12に挿入された試験容器3の底部に設けられた第2アルミシート8が第2開封部16により突き破られ、内容物である反応液がスライドグラス11内に導入される。
【0015】
スライドグラス11の第1スライドグラス17及び第2スライドグラス18に挟まれる部分には、検鏡対象である反応液を保持する保持部13が設けられている。スライドグラス11の保持部13は、反応液を検鏡する検鏡部14と、挿入部12に流出した反応液を検鏡部14へ誘導する反応試料流路部15により構成されている。検鏡部14は、供給された反応液を検鏡により観察することが可能であるように、扁平な空間として形成されている。
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る癌細胞検査用キットを使用した動作について説明する。まず、ユーザは、試料を注入して、キャップ部1により開口を閉塞した状態の試験容器3をスライドグラス11の挿入部12に挿入する。これにより、第2開封部16により第2アルミシートが開封され、試験容器3に収容されていた反応液が挿入部へと供給される。このとき、図7(a)の矢印に示すように、反応液は反応試料流路部15を通流して検鏡部14へと到達する。また、上述したように、挿入部12と試験容器3は過不足無く密着した状態で挿入可能なようになっているため、試験容器3の挿入部12への挿入により、保持部13は外部から隔離された状態になる。更に、第2開封部16の先端は、挿入部12の入口上面よりも下方に位置しているため、第2開封部16で第2アルミシート8が開封される際には、既に保持部13は外部から隔離された状態、即ちウイルスを含む反応液が外部から隔離された状態となっている。この構成により、検鏡時においても反応液中のウイルスが外部に拡散することはなく、安全に診断を行うことができる。
【0017】
ここまで、特定の実施形態を例にとって説明してきたが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0018】
本発明における試料は、被験者から採取した生体由来の細胞を含むものであれば、特に制限されることは無いが、例えば、血液、喀痰、子宮由来の資料等が挙げられ、特に血液、喀痰及び子宮の試料が好ましい。
【0019】
本発明において用いられるウイルスは、試料中の細胞に感染能を有するものであれば、特に制限されないが、例えば腫瘍溶解性ウイルスが挙げられ、具体的にはd12.CALP、d12.CALP delta RR、Telomelysin、Telomelysin-RGD、AxE1AdB-UPRT、AdSLPI.E1AdB、AxE1CAUP、AdE3-IAI.3B、Ad-MKAdMK、AdCEAp/Rep、AdAFPep/Rep、MMP-sub II SeV/delta M、又はCD-MMP-sub II-SeV/delta Mが好ましい。
【0020】
本発明におけるシール部及び第2シール部は、ウイルスを含有する試薬が外部に流出せず、且つ該ウイルスが外部に拡散しないものであれば、特に制限されないが、例えばアルミシート等が挙げられる。
【0021】
本発明において用いられるウイルス非透過性の通気性フィルタは、反応液中のウイルスが外部に拡散されず、且つ通気性を有するものであれば、特に制限されるものではないが、例えば通気性の抗ウイルス性フィルタやウイルス吸着性フィルタ等が挙げられ、具体的にはチャコールフィルタが好ましい。
【0022】
本発明において隔離とは、ウイルスが外部に拡散しない状態であれば特に制限されないが、完全な密閉状態ではなく通気性を有するほうが、十分に試料中の細胞と試薬中のウイルスを反応させることができるため好ましい。
【0023】
本発明における癌細胞検出試料調製用キットは、癌細胞を確認できる検査であれば、特にその使用が限定されるものではないが、例えば、検鏡検査及びフローサイトメータによる検査等が挙げられる。
【0024】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明の癌細胞検出試料調製用キット及びそれを用いた癌細胞検出用キットに採用することができる。
【0025】
以下に、本発明の癌細胞検出用キットを実際に用いた癌の検出方法による結果を、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0026】
肺癌細胞の検出
(サンプルの調整)
健常人より採取した喀痰を1.5 ml の細胞培養液 (Dulbecco‘s Modified Eagle Medium ; DMEM)に回収し、60分間、37℃、5%CO2の条件で前培養を行った。前培養した細胞培養液を1.0 x 106cells/ml となるようにDMEMで希釈したものに、ヒト肺癌細胞株であるA431細胞溶液(APCC社より購入)を1000cells/300ulとなるように加え、肺癌サンプルとした。
またコントロールとして、A431細胞溶液添加前の細胞培養液(1.0 x 106cells/ml)及びA431細胞溶液を1000cells/300ulとなるようにDMEMで希釈したものを用意した。
(試薬の調整)
緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする腫瘍溶解性ウイルスであるOBP−301を含有する試薬は、CANCER RESEARCH 64,6259−6265,September 1,2004に記載されている公知の方法で調整した。調整された試薬は、上述した試験容器3の試薬封入部6に封入した。
(サンプルへのウイルス感染)
上述した癌細胞検出試料調製用キットの試薬封入部6にOBP−301を含有する試薬を封入した試験容器3に、コントロール又は癌サンプルをそれぞれ250ul注入した。その後、キャップ部1を、鍔部1aが試験容器3の上端と当接するまで挿入し、24時間、37℃、5%CO2の条件で培養を行うことで、サンプルにウイルスを感染させた。
(サンプルの観察)
ウイルス感染後の試薬容器3を、上述したスライドガラス11の挿入部12に挿入し、検鏡部14に保持された反応液を蛍光顕微鏡により観察した結果を表1及び図8に示す。
【0027】
【表1】

SputumはA431細胞添加前の細胞培養液(1.0 x 106cells/ml)を示し、Sputum/A431は肺癌サンプルを示し、A431はA431細胞溶液を1000cells/300ulとなるようにDMEMで希釈したものを示す。
【実施例2】
【0028】
子宮頸部・卵巣癌細胞の検出
(サンプルの調整)
滅菌した綿棒を用いて口腔粘膜細胞を回収し、10mlの細胞培養液(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium ; DMEM)に回収し、60分間、37℃、5%CO2の条件で前培養を行った。前培養した細胞培養液を1.0 x 106cells/ml となるようにDMEMで希釈したものに、ヒト肺癌細胞株であるHela細胞溶液(APCC社より購入)を1000cells/300ulとなるように加え、子宮頸部・卵巣癌サンプルとした。
またコントロールとして、Hela細胞溶液添加前の細胞培養液(1.0 x 106cells/ml)及びHela細胞溶液を1000cells/300ulとなるようにDMEMで希釈したものを用意した。
その他は、実施例1と同様の操作でサンプル観察を行った。その結果を表2及び図9に示す。
【0029】
【表2】

OralはHela細胞添加前の細胞培養液(1.0 x 106cells/ml)を示し、Oral/Helaは子宮頸部・卵巣癌サンプルを示し、HelaはHela細胞溶液を1000cells/300ulとなるようにDMEMで希釈したものを示す。
【0030】
実施例から明らかなように、本発明の癌細胞検出試料調製用キット及びそれを用いた癌細胞検出用キットを用い、実際に癌細胞の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態である試験容器及びキャップ部を示す側面図である。
【図2】図1に示す試験容器の上面図である。
【図3】図1に示す試験容器における、図2のA−A断面図である。
【図4】試料が注入された状態における図1の試験容器を示す側面断面図である。
【図5】キャップ部により入口が塞がれた図1の試験容器の側面断面図である。
【図6】本発明の一実施形態である検鏡用のスライドグラスを示す斜視図である。
【図7】図6に示す検鏡用のスライドグラスの上面図(a)及び断面図(b)を示す。
【図8】肺癌細胞の蛍光顕微鏡による観察結果を示す図である。
【図9】子宮頸部・卵巣癌細胞の蛍光顕微鏡による観察結果を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1:キャップ部 1a:鍔部 1b:嵌合部 2:開封部 2a:突起 3:試験容器 4:試験容器の上面 5:第1アルミシート 6:試薬封入部 7:試薬 8:第2アルミシート 9:試料 10:チャコールフィルタ 11:スライドグラス 12:挿入部 13:保持部 14:検鏡部 15:反応試料流路部 16:第2開封部 17:第1スライドグラス 18:第2スライドグラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に被験者から採取した生体由来の試料を受け入れる開口を有し、シール部によってウイルスを含有した試薬が封入された試験容器と、
ウイルス非透過性の通気性フィルタを有する前記開口を塞ぐためのキャップ部と、
前記シール部を開封する開封部と、を備える癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項2】
前記キャップ部が前記開口を塞ぐ動作に伴って前記開封部が前記シール部を開封する請求項1記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項3】
前記キャップ部が、前記開封部を有する請求項1または請求項2に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項4】
前記シール部が前記開封部により開封される際に、前記試薬容器の内部のウイルスが外部から隔離されている請求項1〜3の何れか1項に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項5】
前記シール部が前記開口から所定距離隔てた位置に設けられており、
前記挿入部の先端が前記開口を閉塞する第1位置から前記シール部が前記開封部により開封される第2位置まで前記キャップ部が前記試験容器に対して移動されることにより、前記試験容器に前記キャップ部が装着されるように構成されている請求項4に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項6】
前記ウイルスのゲノムが、発癌遺伝子のプロモーター及び標識タンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたものである請求項1〜5の何れか1項に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項7】
前記ウイルスが、腫瘍溶解性ウイルスである請求項1〜6の何れか1項に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項8】
前記ウイルスが、d12.CALP、d12.CALP delta RR、Telomelysin、Telomelysin-RGD、AxE1AdB-UPRT、AdSLPI.E1AdB、AxE1CAUP、AdE3-IAI.3B、Ad-MKAdMK、AdCEAp/Rep、AdAFPep/Rep、MMP-sub II SeV/delta M、又はCD-MMP-sub II-SeV/delta Mである請求項1〜7の何れか1項に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項9】
前記試料が、血液、喀痰又は子宮から採取したものである請求項1〜8の何れか1項に記載の癌細胞検出試料調製用キット。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の癌細胞検出試料調製用キットと、
前記試験容器を挿入する挿入部、
前記試験容器を挿入する動作によって、前記試験容器の底面を開封する第2開封部、及び
前記第2開封部により底面が開封された試験容器から試料及び試薬の反応液を導入し、前記反応液を外部から観察可能に保持する保持部を有するスライドグラスと、を備えた癌細胞検出用キット。
【請求項11】
前記試験容器の底面が、前記第2開封部により開封される際に、内部のウイルスが外部から隔離されている請求項10記載の癌細胞検出用キット。
【請求項12】
前記試験容器の底面が、前記第2開封部により開封される第2シール部を有する請求項9または請求項11に記載の癌細胞検出用キット。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載のキットを用いた癌の診断方法。
【請求項14】
前記癌が、血液癌、肺癌又は子宮頸癌である請求項13に記載の診断方法。
【請求項15】
一端に開口を有し、シール部によってウイルスを含有した試薬が封入された試験容器に、被験者から採取した試料を添加する工程と、
前記開口を、ウイルス非透過性の通気性フィルタを有したキャップ部により塞ぐ工程と、
前記シール部を開封部材により開封する工程を備えた癌細胞検出用試料の調製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−319042(P2007−319042A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150753(P2006−150753)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】