説明

新規な結晶構造を有するエリスロマイシン誘導体及びその製造方法

【課題】製剤化に有利な性質である残留溶媒が少なく、粒径が大きいエリスロマイシン誘導体の結晶形を提供すること。
【解決手段】粉末X線回折法における回折角2θ=5.6゜および10.4゜に強い回折ピークを示すN−デメチル−N−イソプロピル−12−メトキシ−11−オキソ−8,9−アンヒドロエリスロマイシンA−6,9−ヘミアセタールのフマル酸塩のE型結晶および該化合物のフマル酸塩のC型結晶を酢酸エチルと水との混合溶媒中、20℃〜40℃で処理することにより得られるE型結晶および当該E型結晶を経由して得られるD型結晶を用いる。これらの結晶は、残留溶媒が少なくしかも粒径が大きいので、製剤化に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエリスロマイシン誘導体のフマル酸塩の新規な結晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)
【化1】

で表される化合物は、特開平6−56873号公報(WO93/24509号公報)、特開平9−100291号公報(WO97/06177号公報)などに記載されており、消化管運動促進作用を有することが知られている。
この化合物の製造方法は、特開平9−100291号公報、バイオオーガニック アンド メディシナル ケミストリー レターズ(Bioorg.&Med. Chem. Lett.)4巻、11号、1347ページ、1994年、特開平9−100291号公報などに記載されている。
【0003】
式(I)で表される化合物のフマル酸塩の結晶としては、従来A形結晶(以下、A形結晶と称する。)、C形結晶(以下、C形結晶と称する。)、D形結晶(以下、D形結晶と称する。)が知られている。A形結晶、C形結晶及びD形結晶は、いずれも特開平9−100291号公報に記載されており、該公報記載の方法によって得ることができる。
A形結晶は式(I)で表される化合物のフマル酸塩をメタノールとイソプロパノールとの混合溶媒で再結晶することにより得ることができ、式(I)で表される化合物とフマル酸塩のモル比は2:1である。A形結晶はCu−Kα線によるX線回折測定により図1のような回折パターンを示す。
C形結晶は、式(I)で表される化合物のフマル酸塩を酢酸エチルで処理することにより得ることができ、式(I)で表される化合物とフマル酸塩のモル比は1:1である。C形結晶はCu−Kα線によるX線回折測定により図2のような回折パターンを示す。
D形結晶は、式(I)で表される化合物のフマル酸塩を酢酸エチルと水との混合溶媒で処理することにより得ることができ、式(I)で表される化合物とフマル酸塩のモル比は2:1である。D形結晶はCu−Kα線によるX線回折測定により図3のような回折パターンを示す。
A形結晶、C形結晶、D形結晶のうち、D形結晶は他の結晶に比べて安定性の点で優れているなど医薬品あるいは医薬品原料として優れた品質を有していることが特開平9−100291号公報に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来知られている製造方法により得られたD形結晶は、晶析溶媒を残留溶媒として多く含み、また乾燥操作によってもその残留溶媒を除去しにくいだけではなく、乾燥時の残留溶媒量1500ppm以下を達成できないという問題があった。尚、このD形結晶における残留溶媒は酢酸エチルであり、毒性が低く、ヒトの健康に及ぼすリスクも低いと考えられる溶媒である(平成10年3月30日医薬審第307号厚生省医薬安全局審査管理課長通知に添付の「医薬品の残留溶媒ガイドライン」を参照)。しかしながら、そのような溶媒であっても医薬品の原料としては当然ながらその残留量がより少なくなることが望ましいのは言うまでもなく、好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下の残留溶媒量を達成することが望まれていた。また、従来の方法により得られたD形結晶は粒径が小さく、これを含む錠剤を製造する際に打錠障害を起こしやすいなどの問題も有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、公知の結晶とは異なる、新規な結晶形を有する式(I)で表される化合物のフマル酸塩の結晶を見いだし、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、Cu−Kα線によるX線回折法により回折角2θ=5.6°および10.4°に強いX線回折ピークを示す式(I)
【化2】

で表される化合物のフマル酸塩のE形結晶に関する。
【0007】
また、本発明は、式(I)
【化3】

で表される化合物のフマル酸塩のC形結晶を酢酸エチルと水との混合溶媒中、20℃〜40℃で処理することを特徴とする、Cu−Kα線によるX線回折法により回折角2θ=5.6°および10.4°に強いX線回折ピークを示す式(I)で表される化合物のフマル酸塩のE形結晶の製造方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、Cu−Kα線によるX線回折法により回折角2θ=5.6°および10.4°に強いX線回折ピークを示す式(I)
【化4】

で表される化合物のフマル酸塩のE形結晶を経由して得られる結晶である、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶に関する。
【0009】
さらに加えて、本発明は、Cu−Kα線によるX線回折法により回折角2θ=5.6°および10.4°に強いX線回折ピークを示す式(I)
【化5】

で表される化合物のフマル酸塩のE形結晶を経由して得ることを特徴とする、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶の製造方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、残留溶媒が1500ppm以下である、式(I)
【化6】

で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶に関する。
【0011】
さらに加えて、本発明は、残留溶媒が1000ppm以下である、式(I)
【化7】

で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の式(I)の化合物のフマル酸塩のE形結晶を用いることにより、残留溶媒が少なく、粒径の大きいなどの優れた性質を有するD形結晶を得ることができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による、新規な結晶構造を有する式(I)で表されるエリスロマイシン誘導体のフマル酸塩の結晶(以下、E形結晶と称する。)は、Cu−Kα線によるX線回折法により、図4のような回折パターンを示す。図4から明らかなように、回折角2θ=5.6゜および10.4゜に強いピークを示している。
尚、上述のX線回折角は市販の各種機器を用いて測定可能であり、例えば粉末X線回折装置などの機器を用いて測定することができる。粉末X線回折の測定原理については、第十三改正日本薬局方解説書(1996年、廣川書店刊行)のB471〜B475、第十四改正日本薬局方解説書(2001年、廣川書店刊行)のB614〜B619等に詳述されており、一般的に回折角±0.2°程度の誤差は許容される。
また、本願において「乾燥時」とは、乾燥を続けても残留溶媒量が殆ど変化しなくなったときを指し、具体的には乾燥による残留溶媒量の減少が100ppm/hr未満になったときをいう。
【0014】
次に、本発明を具体的に説明する。
本発明のE形結晶の製造方法においては、例えば、C形結晶を原料とすることができる。
C形結晶は、例えば、特開平9−100241号公報に記載されているように、A形結晶を酢酸エチルで処理することにより得ることができる。
さらに、A形結晶は、例えば、特開平6−56873号公報、特開平9−100241号公報に記載されているように、式(I)の化合物のフマル酸塩をメタノールとイソプロパノールとの混合溶媒で処理することにより得ることができる。
【0015】
本発明のE形結晶は、C形結晶を酢酸エチルと水との混合溶媒で懸濁することにより得ることができる。ここで、C形結晶は、単離したものを用いてもよいし、溶媒で懸濁したまま用いてもよく、溶媒で懸濁したまま用いるのが好ましい。例えば、A形結晶を酢酸エチルで処理することによりC形結晶を得、このC形結晶の酢酸エチル懸濁液に水を加えて懸濁することが好ましい。
懸濁に用いる酢酸エチルと水との混合溶媒における酢酸エチルと水の混合比は、通常98:2〜95:5、好ましくは97:3〜95:5である。懸濁を行う温度は、通常20℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃である。温度を20℃未満にするとD形結晶に転移する傾向にある。懸濁を行う時間は、通常30分間〜300分間、好ましくは60分間〜240分間である。
得られたE形結晶は、ろ過、遠心分離などによって溶媒と分離する。分離したE形結晶は例えば減圧乾燥などにより乾燥するが、減圧乾燥が好ましい。乾燥温度は通常20℃〜60℃、好ましくは30℃〜50℃である。
【0016】
E形結晶を酢酸エチルと水との混合溶媒で、20℃未満で懸濁することによりD形結晶を得ることができる。ここで用いられる酢酸エチルと水との混合溶媒における、酢酸エチルと水の混合比は、99:1〜97:3が好ましい。懸濁する温度は−20℃〜20℃が好ましい。懸濁する時間は、通常1時間から12時間、好ましくは3時間〜11時間、さらに好ましくは、5時間から10時間である。
また、E形結晶から打錠障害を起こしにくい平均粒径の大きさ(好ましくは90μm以上の平均粒径、更に好ましくは100μm以上の平均粒径)を有するD形結晶を製造するためには、結晶化の際に用いられる酢酸エチルと水との混合溶媒における酢酸エチルと水の混合比は、98.1:1.9〜97:3が好ましい。懸濁する温度は、10℃〜20℃(好ましくは11℃〜19℃、更に好ましくは13℃〜18℃)で懸濁するのが好ましい。D形結晶への転化を進めるために又は収率を上げるために、その後引き続いて−20℃〜10℃(好ましくは−15℃〜10℃)まで冷却して懸濁してもよい。懸濁する時間は、通常で数分間〜20時間、好ましくは5分間〜4時間、更に好ましくは10分間〜2時間である。それに引き続く懸濁段階では、通常で数分〜20時間、好ましくは1時間前後である。
【0017】
尚、上記に例示したE形結晶を製造するための懸濁時間、E形結晶からD形結晶を製造するための懸濁時間及びE形結晶から平均粒径の大きなD形結晶を製造するための懸濁時間は、それぞれ結晶を生成するために最低限必要となる時間を例示しており、結晶の生成具合により、或いは製造工程の都合により、これ以上の懸濁時間をかけてもよい。
また、E形結晶を経由してD形結晶を製造するに際しては、一旦E形結晶を取り出すことなく、温度の調節のみで連続的にC形結晶からE形結晶を経てD形結晶を製造することも可能である。
得られたD形結晶は、ろ過、遠心分離などによって溶媒と分離し、減圧乾燥などにより乾燥する。乾燥温度は20℃〜70℃が好ましい。なお、本発明のD形結晶は、構成する化合物分子すべてが(100%)E形結晶を経由して得られたD形結晶であってもよいし、あるいは構成する化合物分子の一部がE形結晶を経由して得られたD形結晶であってもよい。後者の場合、E形結晶を経由して得られたD形結晶の含有割合は特に限定されず、残留溶媒の量が1500ppm以下(好ましくは、1000ppm以下)であれば、またはこれに加えて更に打錠障害を起こさない含有量であれば如何なる割合でもよい。
【0018】
このようにしてE形結晶を経由して得られたD形結晶は、従来の製造方法により得られるD形結晶では達成できなかった残留溶媒量1500ppm以下を達成することができ、更には1000ppm以下をも達成することができ、しかも従来のD形結晶よりも乾燥しやすく、医薬品原体としてより好ましいものである。また、その一部にE形結晶を経由して得られたものを含んでいるD形結晶も、従来の製造方法により得られるD形結晶では達成できなかった残留溶媒量1500ppm以下を達成することができ、更には1000ppm以下をも達成することができ、しかも従来のD形結晶よりも乾燥しやすく、これもまた医薬品原体としてより好ましいものである。
更に、上記の条件により製造された平均粒径の大きなD形結晶は、従来の製造方法では得ることができなかったものであり、打錠障害を起こしにくく、医薬品製造に特に有利である。
【0019】
尚、上述の残留溶媒量は公知の方法を用いて測定可能であり、例えばガスクロマトグラフ法を用いて測定することができる。ガスクロマトグラフ法については、第十三改正日本薬局方解説書(1996年、廣川書店刊行)のB83〜B94、第十四改正日本薬局方解説書(2001年、廣川書店刊行)のB98〜B114等に詳述されている。ガスクロマトグラフ法による測定誤差は一般的に±1%以内程度である。また、本願化合物の平均粒径についても公知の方法、市販の各種機器を用いて測定可能であり、例えば乾式粒度分布測定装置などの機器を用いて測定することができる。粒度分布測定装置による測定誤差は一般的に±5%以内程度である。
【0020】
[実施例]
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によりなんら制限されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例においては、X線回折は粉末X線回折装置 RINT−1100(Rigaku製)を用いて、残留溶媒量はガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)を用いて、平均粒径は粒度分布測定装置 RPS−95(セイシン企業製)を用いて測定を行った。測定誤差は、残留溶媒量については±1%程度、平均粒径については±4%程度であった。
【実施例1】
【0021】
一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩(50.0g)に、室温で酢酸エチル(400mL)及びメタノール(40mL)を加え溶解した。溶解後、室温で減圧濃縮した。この濃縮乾固物に酢酸エチル(415mL)を加え25℃で1時間撹拌することによりC形結晶の懸濁液を得た。この懸濁液に水(4.15mL)を加え25℃で0.5時間撹拌した。更に水(4.15mL)を加え25℃で0.5時間撹拌した。更に水(4.15mL)を加え25℃で0.5時間撹拌した。更に水(4.15mL)を加え25℃で0.5時間撹拌した。次いで20℃に冷却し、1時間撹拌後、濾過して湿性の結晶(43.7g)を取得した。この湿性の結晶を40℃で3時間減圧乾燥して式(I)で表される化合物のフマル酸塩の結晶(34.1g)を取得した。この結晶につきX線回折測定を行ったところ、回折角2θ=5.6゜および10.4゜に強いピークを有するE形結晶であった。得られたE形結晶のDSCを図5に示す。
【実施例2】
【0022】
一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩(20g)に酢酸エチル(166mL)加え25℃で2時間撹拌してC形結晶を得た。このC形結晶に、2.4%の水(4.0mL)を添加した後、徐々に冷却してC形結晶を全てE形結晶に転移させた。続けて15℃まで冷却し、3時間撹拌した後、−10℃まで冷却した。次いで結晶を分離し、湿性のD形結晶(20.4g、平均粒径302μm)を得た。この湿性のD形結晶を減圧下25℃で1時間乾燥した後、60℃で乾燥し、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶を得た。得られたD形結晶の残留溶媒量を測定したところ、78ppmであった。
【実施例3】
【0023】
水の添加量を2.6%に変更し、あとの操作は実施例2と同様に行って、一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩のC形結晶から、E形結晶を経由して粒径が197μmのD形結晶を得た。
【実施例4】
【0024】
一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩(11.6kg)を、25℃で酢酸エチル(104.6kg)及びメタノール(9.2kg)の混合溶媒に溶解した。溶解液を濃縮後、25℃で濃縮残さに酢酸エチル(86.8kg)を加え24℃で1時間撹拌してC形結晶を得た。このC形結晶に、2.0%の水(1.9kg)を添加した後、徐々に冷却してE形結晶に転移させた。続けて15℃まで冷却し、1時間撹拌した後、−10℃まで冷却した。次いで結晶を遠心分離し、湿性のD形結晶(13.4kg)を得た。この湿性のD形結晶を減圧下60℃で28時間乾燥し、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶(収量10.5kg、収率90.5%、平均粒径141μm)を得た。得られたD形結晶の残留溶媒量を測定したところ、988ppmであった。また、このD形結晶を主薬として錠剤を製造したが、打錠障害は発生しなかった。
【実施例5】
【0025】
一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩(11.6kg)を、30℃で酢酸エチル(94.2kg)及びメタノール(9.1kg)の混合溶媒に溶解した。溶解液を濃縮後、22℃で濃縮残さに酢酸エチル(86.8kg)を加え24℃で1時間撹拌してC形結晶を得た。このC形結晶に、2.0%の水(1.9kg)を添加した後、徐々に冷却してE形結晶に転移させた。続けて15℃まで冷却し、1時間撹拌した後、−10℃まで冷却した。次いで結晶を遠心分離し、湿性のD形結晶(13.2kg)を得た。この湿性のD形結晶を減圧下60℃で10時間乾燥し、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶(収量10.5kg、収率90.5%、平均粒径197μm)を得た。得られたD形結晶の残留溶媒量を測定したところ、845ppmであった。また、このD形結晶を主薬として錠剤を製造したが、打錠障害は発生しなかった。
【0026】
実施例4又は5に準じて、一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩のC形結晶より、E形結晶を経由して実施例6〜8のD形結晶を得た。
【比較例1】
【0027】
一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩(10.8kg)を、25℃で酢酸エチル(87.6kg)及びメタノール(8.5kg)の混合溶媒に溶解した。溶解液を濃縮後、25℃で濃縮残さに酢酸エチル(80.8kg)を加え25℃で1時間撹拌してC形結晶を得た。引き続き、1.5%の水(1.3kg)を添加した後、15℃に冷却し1時間攪拌してD形結晶に転移させた。続けて−10℃まで冷却して1時間撹拌した。次いで結晶を遠心分離し、湿性のD形結晶(12.7kg)を得た。この湿性のD形結晶を減圧下60℃で16時間乾燥し、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶(収量10.8kg、収率87.4%、平均粒径82μm)を得た。このD形結晶を主薬として錠剤を製造したところ、打錠障害が発生した。
【0028】
比較例1に準じて、一般式(I)で表される化合物のフマル酸塩のC形結晶より、E形結晶を経由せずに比較例2のD形結晶を得た。
【0029】
上記のE形結晶を経由して得られたD形結晶(実施例2〜8)、及び従来方法により得られたD形結晶(比較例1及び2)につき、下記の表1にまとめた。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の式(I)の化合物のフマル酸塩のE形結晶を用いることにより、残留溶媒が少ない、製剤化に適しているなどの優れた性質を有するD形結晶を製造することができる。すなわち、E形結晶は、(1)優れた品質の医薬品を提供することができる、(2)効率的に医薬品を製造することができる、などの優れた特徴を有しており、医薬品製造において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】A形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図2】C形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図3】D形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図4】E形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図5】E形結晶のDSCを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu−Kα線によるX線回折法により回折角2θ=5.6°および10.4°に強いX線回折ピークを示す式(I)
【化1】

で表される化合物のフマル酸塩のE形結晶を経由して得られる結晶である、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶。
【請求項2】
残留溶媒が1500ppm以下である請求項1に記載のD形結晶。
【請求項3】
残留溶媒が1000ppm以下である請求項1に記載のD形結晶。
【請求項4】
結晶の平均粒径が90μm以上である請求項1〜3のいずれか1つに記載のD形結晶。
【請求項5】
結晶の平均粒径が100μm以上である請求項1〜3のいずれか1つに記載のD形結晶。
【請求項6】
Cu−Kα線によるX線回折法により回折角2θ=5.6°および10.4°に強いX線回折ピークを示す式(I)
【化2】

で表される化合物のフマル酸塩のE形結晶を20℃未満の温度条件下、酢酸エチルと水との混合溶媒で、懸濁することにより得ることを特徴とする、式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶の製造方法。
【請求項7】
温度条件が−20℃〜20℃である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶の残留溶媒が1500ppm以下である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶の残留溶媒が1000ppm以下である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項10】
式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶の平均粒径が90μm以上である請求項6〜9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項11】
式(I)で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶の平均粒径が100μm以上である請求項6〜9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項12】
残留溶媒が1500ppm以下である、式(I)
【化3】

で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶。
【請求項13】
残留溶媒が1000ppm以下である、式(I)
【化4】

で表される化合物のフマル酸塩のD形結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−102356(P2009−102356A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321228(P2008−321228)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【分割の表示】特願2002−534328(P2002−534328)の分割
【原出願日】平成13年10月12日(2001.10.12)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】