説明

新規な(メタ)アクリルモノマー及びその製造方法

【課題】各種コモノマーや有機溶媒との相溶性が良好であり、幅広いポリマーのモノマーとして使用し得る(メタ)アクリルモノマー及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 式(I):


(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基であり、m及びnは、m+n≧1を満たす0〜50の整数である)
で表される(メタ)アクリルモノマー及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料等として用いられる(メタ)アクリルモノマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成高分子は電気絶縁材料であり加工が容易である。そのため、帯電防止性が付与されれば様々な用途、例えば、静電気による障害を防止したいCD、DVD、ホログラムメモリー記録材料等の電子・電気機械の部品、防塵用部品等への用途展開が可能となる。
【0003】
そこで、合成高分子材料の制電性を向上させる方法として、例えば、特許文献1には、特定のポリエーテルポリエステルアミドとグラフト共重合体含有物に変性ビニル系重合体を混合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、制電性に優れているポリアルキレンオキシド部位を有する(メタ)アクリル系モノマーとして、(メタ)アクリルエステルモノマー等が利用されている。しかしながら、ポリアルキレンオキシド部位がエステル結合で結合されると、加水分解されやすく不安定である。そこで、耐加水分解性に優れるモノマーとしてアミド化合物が知られている。例えば、ポリアルキレンオキシド部位を有する(メタ)アクリルアミドモノマーとして知られるN-メトキシポリエチレングリコールアクリルアミドは耐加水分解性に優れるモノマーとして利用できる。
【特許文献1】特開昭62−241945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリアルキレンオキシド部位を有する(メタ)アクリルアミドモノマーは広い分野で利用されている一方で、ポリアルキレンオキシド部位を有するために、共重合を行う際のコモノマーや汎用有機溶媒との相溶性が悪い場合があり、合成可能な共重合条件が限定されてしまう問題やコモノマー原料の制限から合成可能なポリマーの物性や機能が著しく限定されてしまう欠点がある。
【0006】
本発明の課題は、各種コモノマーや有機溶媒との相溶性が良好であり、幅広いポリマーのモノマーとして使用し得る(メタ)アクリルモノマー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基であり、m及びnは、m+n≧1を満たす0〜50の整数である)
で表される(メタ)アクリルモノマー、並びに
〔2〕 式(II):
【0010】
【化2】

【0011】
(R3、R4、R5、m及びnは、前記と同じ)
で表されるポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物と、式(III):
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R1及びR2は前記と同じ)
で表されるN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体とを、酸触媒の存在下で反応させる合成工程を含む、請求項1又は2記載の(メタ)アクリルモノマーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の(メタ)アクリルモノマーは、各種コモノマーや有機溶媒との相溶性が良好であり、幅広いポリマーのモノマーとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の(メタ)アクリルモノマーは、式(I):
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基であり、m及びnは、m+n≧1を満たす0〜50の整数である)
で表される化合物であり、(メタ)アクリルアミドの窒素原子に結合する水素原子が、疎水基で置換されている構造に大きな特徴を有する。
【0018】
式(I)において、R2又はR3で表されるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、それらの疎水性を損なわない置換基、例えば、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基等で置換されていてもよい。
【0019】
本発明の(メタ)アクリルモノマーは、式(II):
【0020】
【化5】

【0021】
(R3、R4、R5、m及びnは、前記と同じ)
で表されるポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物と、式(III):
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R1及びR2は前記と同じ)
【0024】
で表されるN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体とを、酸触媒の存在下で反応させて合成することができる。
【0025】
式(II)で表されるポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、オクタエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノ-(p-ブトキシフェニル)エーテル、1-ブトキシエトキシ-2-プロパノール、メトキシポリ(1,3-プロピレンオキシド)グリコール、メトキシポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、メトキシポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、メトキシポリ(エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック又はランダム共重合体)及びメトキシ(エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロック又はランダム共重合体)等が挙げられる。
【0026】
ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物は、アルキレンオキシ基数の異なる化合物の混合物であってもよく、その場合、使用するポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物全体としての数平均分子量は100〜30,000が好ましい、
【0027】
一方、式(III)で表されるN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体は、例えば、パラホルムアルデヒドと、式(IV):
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、R1及びR2は前記と同じ)
で表される疎水基置換(メタ)アクリルアミドとを、メチロール化触媒の存在下で反応させて得られる。
【0030】
式(IV)で表される疎水基置換(メタ)アクリルアミドの具体例としては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ステアリル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ビフェニル(メタ)アクリルアミド等があげられる。
【0031】
上記疎水基置換(メタ)アクリルアミドのなかでは、有機溶媒との相溶性の観点から、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド及びN-イソプロピル(メタ)アクリルアミドが好ましい。これらの疎水基置換(メタ)アクリルアミドを用いた場合、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体として、それぞれ順に、N-ヒドロキシメチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドが得られる。
【0032】
式(IV)で表される疎水基置換(メタ)アクリルアミドは、(メタ)アクリルアミドを原料とし、対応するハロゲン化合物を付加することによって得られる。市販品としては、例えば、N-イソプロピルアクリルアミドの場合、(株)興人から「NIPAM」として入手することができる。
【0033】
パラホルムアルデヒドの量は、式(IV)で表される疎水基置換(メタ)アクリルアミド1モルあたり、疎水基の立体障害による反応収率の低下を防止する観点から、2.5モル以上が好ましく、製造効率を高める観点から、2.5〜7.0モルがより好ましく、2.5〜5.0モルがさらに好ましい。
【0034】
メチロール化触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジオクチルメチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物等が挙げられる。
【0035】
メチロール化触媒の量は、反応速度を向上させる観点及び副生成物の発生を抑制する観点から、パラホルムアルデヒド1モルあたり、0.00001〜0.5モルが好ましく、0.0005〜0.005モルがより好ましい。
【0036】
反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられ、これらの中では、原料の溶解性が高いアルコールが好ましい。
【0037】
反応液中の溶媒の量は、作業効率及び反応収率の向上の観点から、1〜95重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましい。
【0038】
疎水基置換(メタ)アクリルアミドとパラホルムアルデヒドとの反応は、例えば、疎水基置換(メタ)アクリルアミド、パラホルムアルデヒド、メチロール化触媒、さらに必要に応じて溶媒を攪拌下で混合することによって行うことができる。
【0039】
反応温度は、反応速度を向上させる観点及び副生成物の生成を抑制する観点から、0〜90℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。また、反応系内の圧力は、特に限定されず、常圧であってもよい。
【0040】
反応液のpHは、反応速度を向上させる観点から、7〜12が好ましい。
【0041】
反応時間は特に限定されないが、疎水基置換(メタ)アクリルアミドの転化率が20%以上となるまで行うことが好ましい。
【0042】
反応終了後、得られた反応溶液から、目的化合物の含有率が低い固形物を適宜除去した後、溶媒を留去することにより、式(III)で表されるN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体を主成分とする混合体が得られる。
【0043】
除去した固形物における目的化合物の含有率は著しく低いため、廃棄するか、もしくは、再度N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体の合成反応の原料として、再利用することもできる。
【0044】
なお、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体には、極めて微量のメチロール化触媒が残存していることがある。かかるメチロール化触媒が存在している場合であっても、その含有量は極めて微量であることから、実用上、特に大きな支障を生じることはないが、より純度の高いN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体を得るために、該誘導体を単蒸留やカラムクロマトグラフィーにより精製して用いてもよい。
【0045】
式(II)で表されるポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物と式(III)で表されるN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体との反応において、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体の量は、収率を向上させる観点及び製造効率を高める観点から、ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物1モルあたり、1.0〜8.0モルが好ましく、3.0〜6.0モルがより好ましい。
【0046】
酸触媒としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸等のエーテル化を促進する触媒が挙げられる。
【0047】
酸触媒の量は、副反応を抑制する観点から、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体1モルあたり、0.05モル以下が好ましく、0.0001〜0.05モルがより好ましく、0.001〜0.01モルがさらに好ましい。
【0048】
ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物とN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体との反応は、反応中での重合を抑制する観点から、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール等のフェノール系重合禁止剤等の重合禁止剤の存在下で行ってもよい。
【0049】
ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物とN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体との反応は、無溶媒で行うこともできるが、溶媒を使用して、系内を均一にすることにより反応中の温度調整等が容易になる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。なかでも、トルエン等の芳香族炭化水素や、酢酸エチル等のエステルを好適に用いることができる。
【0050】
反応液中の溶媒の量は、5〜95重量%が好ましく、30〜90重量%がより好ましい。
【0051】
ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物とN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体との反応は、例えば、ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体、酸触媒及び必要に応じて、溶媒、重合禁止剤等を混合し、得られた混合物を適宜加熱する方法等により行うことができる。
【0052】
反応温度は、原料であるポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物及び酸触媒の種類にもよるが、30〜110℃程度が好ましい。
【0053】
反応液のpHは、反応速度と原料の安定性の観点から、3〜7が好ましい。
【0054】
反応時間は特に限定されないが、反応の終点は、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)のチャートにおいて、反応混合物中の目的化合物の面積比率が10%以上になり、2、3時間前の目的化合物の面積比率と変化が無くなった時点を反応の終点とみなす。
【0055】
反応終了後、溶媒を減圧下で留去して濃縮した後、析出した固体をろ別することにより、生成した式(I)で表される(メタ)アクリルモノマーを単離することができる。
【0056】
反応溶液から単離した(メタ)アクリルモノマーの粗生成物は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いて、洗浄することが好ましい。例えば、反応生成物を溶媒に溶解させ、ろ過し、得られたろ液を濃縮して、粗生成物を洗浄することができる。
【0057】
本発明においては、合成により得られた(メタ)アクリルモノマーを、さらに、カラムクロマトグラフィーにより精製する精製工程に供することが好ましい。
【0058】
カラムクロマトグラフィーの展開溶媒は、例えば、炭化水素系溶媒を用いた後、該炭化水素系溶媒とエステル系溶媒との混合液を用い、さらにエステル系溶媒の単一溶媒を用いることが好ましい。
【0059】
ここで、炭化水素系溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。またエステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素系溶媒とエステル系溶媒の混合液における両者の体積比は、目的物を単離して溶出しやすいものを考慮して適宜選択する。
【0060】
式(I)で表される本発明の(メタ)アクリルモノマーは、単独又は他のモノマーとの共重合により、電子材料として使用されるポリマー製造の原料として有用である。例えば、本発明の(メタ)アクリルモノマーを単独又は共重合することにより、ポリマーの硬化収縮性、相溶性、耐加水分解性、制電性等の物性を改善することができる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
製造例1〔N-ヒドロキシメチル-N-(イソプロピル)アクリルアミドの製造〕
攪拌機、温度計、コンデンサー及び空気導入管を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、常温下、メタノール55g及びp-メトキシフェノール(重合禁止剤)0.5gを仕込み、これにN-イソプロピルアクリルアミド200g(1.8モル)及びパラホルムアルデヒド(シグマアルドリッチ社製、分子量:30.0)160g(5.3モル)を液温が30〜35℃になるように加温しながら、20分間かけて少しずつ添加しながら溶解させた。次いで、トリエチルアミン1.4g(14ミリモル)を添加して、pHが9〜10の範囲内となるように調整した。これを昇温し、50〜55℃で1時間保持した。その後、30℃付近まで冷却した後、トリエチルアミン0.5g(5.0ミリモル)を添加して、pHが10〜11の範囲内となるように調整し7.0時間保持し、エージングを行った。
【0063】
得られた反応液を、吸引ろ過し、固形物を分離してろ液を得た。N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドの転化率は、48.4モル%であった。残渣には、目的とするN-ヒドロキシメチル-N-(イソプロピル)アクリルアミドが含まれていないことをNMRにて確認した。
【0064】
得られたろ液を、減圧下、液温28〜32℃にて10時間かけて濃縮し、メタノール等を除去し、粗生成物を240g得た。さらに、ガスクロマトグラフィー(GC)、1H-NMR測定(300mHz,DMSO-d6)の結果より、粗生成物中にN-ヒドロキシメチル-N-(イソプロピル)アクリルアミドが60g含まれることを推算した(重量換算での純度25%)。
【0065】
〔GC測定条件〕
カラム:DB-5 (0.25μm×30m×0.32mm ID)
気化室温度:200℃
キャリアガス:ヘリウム
流速:3.23mL/min
スプリット比:15
検出器:FID
検出器温度:250℃
カラム昇温条件:60℃, 3min. → 250℃, 6min. (10℃/min)
【0066】
実施例1
〔合成工程〕
攪拌機、温度計、コンデンサー及び空気導入管を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、常温下、オクタエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックス(登録商標:日本油脂製))40g(0.11モル)、N-ヒドロキシメチル-N-(イソプロピル)アクリルアミド60g(0.42モル)を含むと考えられる上記製造例1の粗生成物240g及びトルエン289gを仕込み、シュウ酸0.5g(5.6ミリモル)を加えた。得られた溶液のpHは3.5であった。減圧(43.3kPa)下、液温が75〜85℃になるように加温した後、60時間反応させた。反応終了後、N-ヒドロキシメチル-N-イソプロピルアクリルアミドの転化率は12.7モル%であった。次いで、得られた反応液を、減圧下にて、液温が50〜60℃になるように加温した後、トルエンを2時間かけて留去して濃縮した。
【0067】
得られた濃縮物を30℃まで冷却して、固体が析出した後、ヘキサンにて洗浄し、固体をろ別した。ろ液を濃縮することにより粗生成物を40g得た。
【0068】
〔精製工程〕
粗生成物をオープンカラムクロマトグラフィーにより精製した。固定相としてアルミナを用い、ヘキサン単一溶液600mlにより展開した後、ヘキサンと酢酸エチルの混合液(ヘキサン/酢酸エチル=80/20(体積比))3000mlにより展開し、さらに酢酸エチル単一溶液2000mlにより展開して、目的とするアクリルモノマー(Ia)、即ち式(Ia):
【0069】
【化8】

【0070】
で表される化合物8.2g(純度97.5%)を得た(N-ヒドロキシメチル-N-(イソプロピル)アクリルアミドに対する収率3.73%)。
【0071】
純度は、展開液を1μL用いてLC測定により分析した。分析条件を下記に示す。また、測定により得られたクロマトグラムを図1に示す。目的化合物であるアクリルモノマー(Ia)(図1において、6.669のピーク、7.355のピーク、8.168のピーク、9.126のピーク、10.222のピーク、11.478のピーク、12.921のピーク、14.580のピーク、16.484のピーク、18.661のピーク、21.155のピーク、23.990のピーク、27.224のピーク、30.922のピーク、35.155のピークのもの)の生成が確認された。
【0072】
〔LC測定条件〕
カラム:Waters Xterra RP8 4.6mm×150mm×5μm
溶出液:アセトニトリル/水=20/80(体積比)
流速:0.8ml/min
検出:240nmの吸収
【0073】
また、アクリルモノマー(Ia)の構造は、JEOL-JNM-AL300-FTNMRスペクトルメーター(日本電子(株)製)を用いた1H-NMR測定(300MHz,CDCl3)により同定した。得られたNMRスペクトルを図2に示す。
【0074】
〔ピークの帰属〕
1.20ppm:イソプロピル基(の末端メチル部分)
3.53〜3.68ppm:ポリエチレングリコールメチルエーテルのメチル基
3.38ppm:ポリエチレングリコールメチルエーテルのエチレングリコール基
4.65〜4.75ppm:メチロール基及びイソプロピル基(の中央メチル部分)
5.69ppm、6.34ppm及び6.64ppm:アクリロイル基
【0075】
実施例2
オクタエチレングリコールモノメチルエーテル(ユニオックス(登録商標)日本油脂製))の使用量を19g(0.05モル)に、N-ヒドロキシメチル-N-(イソプロピル)アクリルアミドの使用量を6g(0.04モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、N-ヒドロキシメチル-N-イソプロピルアクリルアミドの転化率は26.3モル%であった。
【0076】
実施例1で得られたアクリルモノマー(Ia)を、単独で、またはその他のモノマーと共に重合させて電子材料等に好適に用いられるポリマーを合成することができる。
【0077】
製造例2〔アクリルモノマー(Ia)のホモポリマーの製造例〕
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素導入管を備えた300ミリリットル容のセパラブルフラスコに、常温下、アクリルモノマー(Ia)20g、酢酸エチル40g及びメチルエチルケトン40gを仕込む。窒素気流下にて、液温が70〜75℃になるように加温した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル0.3gを投入した後、14時間反応させて、アクリルモノマー(Ia)のホモポリマーを得ることができる。
【0078】
製造例3〔アクリルモノマー(Ia)のメタクリル酸メチルのコポリマーの製造例〕
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素導入管を備えた300ミリリットル容のセパラブルフラスコに、常温下、アクリルモノマー(Ia)15g、メタクリル酸メチル10g及びメチルエチルケトン75gを仕込む。窒素気流下にて、液温が70〜75℃になるように加温した後、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを投入した後16時間反応させて、アクリルモノマー(Ia)とメタクリル酸メチルのコポリマーを得ることができる。
【0079】
さらに、アクリルモノマー(Ia)を用いて得られたポリマーから、紫外光照射による硬化収縮率が小さい樹脂膜を作成することができる。
【0080】
製造例4〔樹脂膜の製造例〕
アクリルモノマー(Ia)5g、製造例2で得たアクリルモノマー(Ia)のホモポリマー10g、及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE907、チバ・スペシャルティー・ケミカル製)0.5gを混合し、得られた混合液を厚さ10μmのポリフィルム上に塗布した後、溶剤を加熱除去することにより、樹脂膜を得ることができる。得られた樹脂膜は、紫外光照射による硬化収縮率が小さく、紫外光を照射して硬化させてもカールや反りが無いことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の(メタ)アクリルモノマーは、電子材料等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1で得られたアクリルモノマー(Ia)のLC測定により得られたクロマトグラムである。
【図2】実施例1で得られたアクリルモノマー(Ia)のNMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアラルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数2〜4のアルキレン基であり、m及びnは、m+n≧1を満たす0〜50の整数である)
で表される(メタ)アクリルモノマー。
【請求項2】
式(II):
【化2】

(R3、R4、R5、m及びnは、前記と同じ)
で表されるポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物と、式(III):
【化3】

(式中、R1及びR2は前記と同じ)
で表されるN-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド誘導体とを、酸触媒の存在下で反応させる合成工程を含む、請求項1記載の(メタ)アクリルモノマーの製造方法。
【請求項3】
合成工程の後、さらに、得られた(メタ)アクリルモノマーを、展開溶媒としてエステル系溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製する精製工程を含む、請求項2記載の(メタ)アクリルモノマーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−155264(P2009−155264A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335209(P2007−335209)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】