説明

新規のカルバミル化EPOおよびその製造方法

本発明は、新規カルバミル化エリスロポエチンおよび前記の新規カルバミル化エリスロポエチンを含む調合物の製造方法、ならびにこれを含む医薬調合物およびその使用方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規混合物(compound)およびこの混合物の製造方法に関する。新規混合物、カルバミル化エリスロポエチン(carbamylated erythropoietin:CEPO)は、リジンの第1級アミンの全てまたはほとんどにおいて、および分子のN末端アミノ酸においてカルバミル化されることによって特徴付けられ、そしてさらに、この混合物においては、分子中のその他のアミノ酸の第1級アミンは低いレベルでカルバミル化されている。さらに、この新規混合物は凝集タンパク質および重合体を含まず、例えば中枢または末梢神経系、および中枢EPO受容体を発現するその他の組織における疾患の治療用医薬調合物での使用に適している。本発明の製造方法のその他の驚くべき利点の1つは、この方法が、エリスロポエチンに関して記載されているその他の公知のカルバミル化法から得られる生成物よりも、凝集タンパク質および重合体をほとんど含まない生成物を提供するという点にある。
【背景技術】
【0002】
カルバミル化EPOの生物学的な造血活性の低下が非特許文献1および非特許文献2により示されている。特許文献1により、造血活性の欠失によってはEPOの組織保護特性は妨げられないことが示された。
【0003】
タンパク質のカルバミル化は、タンパク質の精製において尿素を使用した場合の副次的作用として、および高い血清尿素レベルの結果として広く知られている。これは、尿素のシアン酸塩への自然分解により生じる。シアン酸塩は、タンパク質の第1級アミンのカルバミル化に関与しており、従って、タンパク質のN末端およびリジンはカルバミル化を受けやすい(図1)。さらに、カルバミル化を受ける可能性のあるその他のアミノ酸残基は、アルギニン、システイン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびヒスチジンであるが、これらの反応はpH依存性であり、N末端およびリジン残基の場合のように容易には起こらない。
【0004】
タンパク質のカルバミル化によりタンパク質の生物学的な活性を改善または低下できるかを明らかにするための研究が非特許文献3、非特許文献4、非特許文献1および非特許文献2により実施されている。これらにおいては、シアン酸塩の供給源としてKCNOを用いることにより、タンパク質のカルバミル化の生物学的効果が研究された。これらすべての研究において、カルバミル化の増加の結果として、生物学的活性の減少または変化が観察された。カルバミル化の程度の評価は2つの解析方法:
1.トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイを用いた遊離アミノ基の減少の測定
2.リジンのホモシトルリン残基への変換を測定するアミノ酸解析
に基づくものであった。
【0005】
非特許文献3では、37℃で最大6時間、2 M KCNOを用いて低密度リポタンパク質をカルバミル化したが、TNBSアッセイで測定した場合に完全にカルバミル化されたタンパク質は得られなかった。
【0006】
非特許文献4では、時間の影響を調べ、37℃で1 M KCNOを用いて24時間処理した後に、ほぼ完全にカルバミル化されたウシ膵デオキシリボヌクレアーゼAが得られた。
【0007】
非特許文献2では、2 M KCNOを用いる最大6時間の反応時間により時間の影響を調べた。ここでは、6時間におけるKCNO濃度の増加の影響についても調べられ、全ての反応は37℃で行われた。非特許文献2では、実験設計に関する理由から正確なカルバミル化の程度については確認できなかった(16頁の第33〜35行参照)。
【特許文献1】米国特許出願第20030072737号明細書(Brines et al.)
【非特許文献1】Satake, R. et al. (1990) Biochimica et Biophysica Acta; 1038: 125-129
【非特許文献2】Mun, K-C. and Golper, T.A. (2000) Blood Purif.; 18: 13-17
【非特許文献3】Hoerkkoe, S. et al. (1992) Kidney International.; 41: 1175-1181
【非特許文献4】Plapp, B.V. et al. (1971) Jour. Biol. Chem.; 246(4): 939-945
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明においては、EPOのカルバミル化は重合体および凝集体を生じさせるために、バイオ医薬品としては不適当となることを見出した。さらに、これらの重合体および凝集体の形成がカルバミル化工程の条件に依存することを見出した。従って、pH、時間、シアン酸塩濃度、温度、タンパク質濃度および最も重要であるがタンパク質の重合度に関して最適のパラメーターを用いる工程を開発することが必要であった。本発明は、重合および凝集が低度である生成物を製造するカルバミル化の最適な工程を含み、さらに驚くべきことに、N末端および全てのリジン残基において完全にカルバミル化されたEPO(全てのリジン残基における完全なカルバミル化は一定のpHの範囲で起こる)が得られることを見出した。本発明の方法のさらなる段階を、形成した凝集体および重合体を除去するために実施した。得られる純粋なカルバミル化EPOは新規混合物であり、この混合物を含む医薬調合物とともに本願において特許請求されるものである。
【0009】
カルバミル化の程度がシアン酸塩濃度および時間に依存することは、これまでにも示されてきた。しかし、バイオ医薬品の製造に拡張可能なカルバミル化工程を得る方法については記載されていない。
【0010】
準最適な(sub-optimal)生成物による凝集体の存在は、抗体の誘導を伴う。従って、凝集体の存在により、ヒトにおける使用には不適当なバイオ医薬品となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明記載のカルバミル化および精製工程では、重合体または凝集体の形成ができる限り低く、そして最終生成物の喪失が最小であり、完全にカルバミル化されたものとして特徴付けられるタンパク質が生じる。従って、これらは経済的に実施可能な段階である。
【0012】
カルバミル化タンパク質をさらなる工程に付すことにより、凝集体および重合体に起因するタンパク質に対しての免疫応答の発生リスクが最小限となり、生成物はバイオ医薬品として有用なものとなる。
【0013】
完全なカルバミル化を評価するための解析方法は、アミノ酸解析に加えて、遊離第1級アミノ基に関するTNBS、および最終的には生成物および消化生成物のMALDI-TOFによる解析である。
【0014】
分子のN末端およびリジンの遊離アミノ基において完全にカルバミル化され、そしてさらに、含有量の2.5%以上には凝集化および重合せず、そして最小限の過剰または過小カルバミル化エリスロポエチン(over- or under-carbamylated erythropoietin)を含むエリスロポエチンである本発明の新規混合物は、天然のエリスロポエチンの神経保護効果に応答する疾患治療用の医薬調合物の製造に使用することができる。
【0015】
<本発明の概要>
本発明は、バイオ医薬品の製造のための拡張可能なタンパク質カルバミル化方法に関する。さらに、本発明は、該方法の生成物、および前記混合物を含む医薬調合物、およびこれらの調合物の使用方法に関する。
【0016】
本願に記載されるカルバミル化および精製工程により、重合体または凝集体の形成ができる限り低く、そして最終生成物の喪失が最小であり、完全にカルバミル化されたものとして特徴付けられるタンパク質が生じる。
【0017】
前記のカルバミル化工程は、最低量の重合体および凝集体を有するカルバミル化タンパク質を産出するために最適化されており、経済的に実施可能な工程となっている。最終生成物はさらに、一定限度の量の過剰および/または過小カルバミル化エリスロポエチンのアイソマー(1分子あたり9未満または9を超えるカルバミル化)を含む。過小カルバミル化EPOは、9個未満のカルバミル残基を含み、すなわち、8個のリジンおよびN-末端の全てがカルバミル化されてはいない。過小カルバミル化EPOは、少量である5個のカルバミル残基を有しており、やはり古典的なエリスロポエチン活性を有さず、本発明における用途に適している。過剰カルバミル化EPOは9個を超えるカルバミル残基を有し、8個のリジンおよびN-末端以外のアミノ酸でもカルバミル化されている。CEPOは15個ものカルバミル残基を有することができるが、やはり所望の効果を有し、すなわち、古典的なエリスロポエチン活性を有さない。少なくとも約90%、および最も好ましくは95%のCEPOアイソフォームが、8個のリジン残基およびN-末端のみでカルバミル化されている。
【0018】
カルバミル化タンパク質のさらなる工程は、最大で3%または2.5%のレベルまで凝集生成物および重合生成物を除去し、従って、凝集体および重合体によるタンパク質に対する免疫応答の発生のリスクが最小限のみであり、バイオ医薬品として有用な生成物を与える。
【0019】
カルバミル化の評価のための解析方法は、アミノ酸解析に加えて、遊離の第1級アミノ基に関するTNBS、およびMALDI-TOFおよびLC-MS/MSによる生成物および消化生成物の解析である。
【0020】
<本発明の詳細な説明>
製造方法
6つの段階がタンパク質のカルバミル化方法を構成する:
1.限外ろ過による濃縮
2.カルバミル化による修飾
3.ゲルろ過による脱塩
4.陰イオン交換による精製
5.限外ろ過およびダイアフィルトレーションによる濃縮およびバッファー(buffer)交換
6.0.22μmろ過。
【0021】
本発明におけるカルバミル化工程の出発物質は、有利には精製ヒトEPOであるが、動物またはヒト型のいずれのEPO形態でもよく、例としては、合成、組換えヒトEPOまたは生物学的もしくは化学的に修飾されたヒトEPO、例えばアシアロ-EPO、ヒトEPOの突然変異体、すなわち、アミノ酸配列中に変化が導入された分子、EPO断片、EPOのペプチド、その他のタンパク質、またはいくつかのタンパク質が所望のようにカルバミル化されている場合にはタンパク質の混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0022】
前記工程の第1段階は限外ろ過によるタンパク質濃度の調節に関連し、工程容量を維持する目的でタンパク質濃度を低く調節する。0.05〜10 mg/mlまたは0.05〜8 mg/mlのタンパク質濃度が好ましい実施態様である。さらに好ましい実施態様は0.05〜7 mg/mlであり、最も好ましいのは2〜5 mg/mlである。前記の濃度が増加すると、凝集体が次第に形成する。限外ろ過は5 kDaのMWCOを有するBioMax(ミリポア社製)により行う。その他のフィルターも使用することができる。さらに、タンパク質の溶解性を安定化剤の添加により調節することができる。
【0023】
濃縮段階を完了した後に、タンパク質溶液をpH 7〜11またはpH 7〜10を有するホウ酸ナトリウム四水和物、シアン酸カリウムと混合する。好ましい実施態様において、pHは8〜10であり、最も好ましくは9.0である。温度は0℃〜60℃または0℃〜50℃または0℃〜40℃または0℃〜37℃であるが、好ましい実施態様は、10分〜30日または30分〜30日または1時間〜30日または1時間〜20日または1時間〜10日または1時間〜5日または1時間〜2日または1時間〜26時間または18〜26時間、または好ましくは22時間〜26時間、最も好ましくは24時間の時間枠での30〜34℃、好ましくは32℃の温度範囲である。しかしながら、これらの好ましい範囲は、その他の工程パラメーター(process parameters)、すなわち温度、シアン酸塩濃度およびタンパク質濃度が変わる場合には、変わり得る。
【0024】
温度が境界より低い場合には、カルバミル化が遅く不十分になるため収量が低くなる。温度境界を上回る場合には、凝集の増加により収量が低くなる。もう1つの重大なパラメーターは時間であり、時間が減少した場合にはカルバミル化が完了せず、または時間が増加した場合には凝集体の形成が観測され、その結果として収量が低下する。
【0025】
従って、緊密に結びついたパラメーターを有する工程が存在し、すなわち、温度が低い場合には、シアン酸塩濃度および/または反応時間の増加によりカルバミル化反応の減少を補うことができる。さらに、反応時間が減少する場合には、カルバミル化反応の減少を温度および/またはシアン酸塩濃度の増加により補うことができる。最後に、シアン酸塩濃度が減少している工程においては、カルバミル化反応の減少を反応時間および/または温度の増加により補うことができる。
【0026】
従って、要するに、1つの重大なパラメーター(時間、温度、シアン酸塩濃度およびタンパク質濃度)が大幅に変化すると、凝集体および重合体の形成が低く完全にカルバミル化された分子を得るためには、その他の重大なパラメーターのうちの1つまたはそれ以上における変化が伴うことになる。
【0027】
シアン酸塩は、本質的に、プロトンの取り込みにより加水分解および重合し、そして、緩衝能が欠損すると溶液のpHドリフトが生じるので、ホウ酸塩バッファーの濃度は0.05〜2 Mでよいが、好ましい実施態様においては0.1〜1 Mであり、最も好ましくは0.5 Mである。
【0028】
さらに、シアン酸塩濃度は、0.05〜10 Mまたは0.05〜8 Mまたは0.05〜6 Mまたは0.05〜4 Mまたは0.05〜2 Mの範囲であるのが好ましく、好ましい実施態様は0.05〜1 Mであり、最も好ましくは0.5 Mである。
【0029】
濃度が0.5 Mのシアン酸塩が使用された場合のプロトン取り込みによるpHドリフトを制御するために、0.5 Mというホウ酸塩バッファーの濃度が必要である。その他のシアン酸塩およびホウ酸塩を用いる方法を使用することができる。さらに、シアン酸塩およびホウ酸塩以外の反応バッファー、例えば、炭酸塩バッファーまたはリン酸塩バッファーを使用することができる。
【0030】
タンパク質およびシアン酸塩の反応混合物の脱塩をゲルろ過クロマトグラフィーにより行う。G-25ファイン(Amersham Biosciences社製)マトリックスを使用する。さらなるカルバミル化および重合体形成を引き起こすので、カラムへのサンプルのアプライの前の保持時間を調節し、2時間を越えないようにすべきである。タンパク質の脱塩およびバッファー交換は透析、ダイアフィルトレーション-限外ろ過により、またはゲルろ過クロマトグラフィーにより行うことができる。例えば、架橋多糖類または架橋多糖類混合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはセラミック質(ceramic nature)のマトリックスのようなその他のゲルろ過マトリックスを使用することができる。さらに、カラム長をこの段階において変えることができる。
【0031】
カルバミル化段階は、40%未満、または30%未満または25%未満または20%未満または15%未満または12.5%未満または10%未満または8%未満または7%未満の凝集体および重合体を有する生成物を得るために調節することができる。
【0032】
凝集体および重合体の除去は、陰イオン交換を用いる精製段階により実施される。出発物質の残留物から、および凝集体/重合体からカルバミル化EPOを分離できることが観察される。ランニングバッファーAは:0.3% Tris (25 mM)、0.3% (50 mM) NaCl、pH 8.5±0.2であり、溶出バッファーBは:0.3% Tris (25 mM)、5.8% (1 M) NaCl、pH 8.5±0.2である。カラムの20倍容量にわたる0〜30 %の勾配により、所望の分離が得られる。精製段階の結果、3%未満、または2.5%未満または2%未満または1.5%未満または1%未満または約0.5%未満の凝集体および重合体を有する生成物が得られる。
【0033】
カルバミル化EPOのピークの溶出および回収およびプールは、溶出したタンパク質の、不均一性すなわちアイソフォームの分布に影響を及ぼす。すなわち、過剰カルバミル化および過小カルバミル化CEPOの量は回収およびプールの方法に依存して変化する。小容量でのプール(narrow pooling)では、過剰カルバミル化および/または過小カルバミル化エリスロポエチンの量が低下する。勾配の長さを増加させることにより、一部の種を除外することによって、より明確な生成物の選択が可能になる。
【0034】
ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約40重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するカルバミル化EPOの組成物は、本発明の1つの実施態様である。さらに好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約35重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約30重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約25重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約20重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約15重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約10重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約5重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。さらに一層好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約2重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。最も好ましい実施態様は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約1重量%未満の過剰および過小カルバミル化アイソフォームを有するCEPOである。
【0035】
前記アイソフォーム全体の含有量に影響を及ぼすのに加えて、カルバミル化EPOのピークの回収およびプールは、過剰カルバミル化CEPOの分布に影響を及ぼす。過剰カルバミル化CEPOアイソフォームの量は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約35重量%未満であるのが好ましい。過剰カルバミル化CEPOの量は、ESI-マススペクトロメトリーで測定した場合に約30重量%未満であるのがさらに好ましく、そして、過剰カルバミル化CEPOの量は約25重量%未満であるのが好ましく、そして、約20%未満であるのがさらに一層好ましく、そして、約15%未満であるのがさらに一層好ましい。最も好ましくは、過剰カルバミル化EPOの量は、全CEPOの約10重量%、約5重量%または約1重量%のみであるべきである。
【0036】
その他の陰イオン交換マトリックスおよび荷電フィルターを使用する場合には、その他のランニングバッファーおよび溶出バッファーを使用することができる。該マトリックスの例としては、限定はされないが、架橋多糖類または架橋多糖類混合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはセラミック質のマトリックスが挙げられる。
【0037】
さらに、陽イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを精製のために使用することができる。
【0038】
濃度およびバッファーの調節のための次の段階においては、ダイアフィルトレーション/限外ろ過タンジェンシャルフローフィルトレーションが使用される。カルバミル化EPOを0.5 mg/mlより大きい濃度に調節し、バッファーを20 mMクエン酸塩、100 mM NaClバッファーに交換する。濃縮およびバッファー交換を5 kDaのMWCOを用いるBioMax(ミリポア社製)により行った。
【0039】
最後に、精製したバイオ医薬品用製剤原料を、滅菌のために0.22μmのMillipakフィルター(ミリポア社製)を用いてろ過した。いずれの0.22μmフィルターを使用してもよい。
【0040】
前記方法を用いて、SEC-HPLCによって測定した場合に3%未満または好ましくは2.5%未満の凝集体を有する完全にカルバミル化されたEPOを得る。8個のリジン残基の完全なカルバミル化を、リジンのホモシトルリンへの変換を測定するアミノ酸解析を用いて確認する。さらに、カルバミル化後にTNBSアッセイを用いて第1級アミンを測定すると、リジンおよびN-末端の完全なカルバミル化が示された。
【0041】
さらにMALDI-TOFを用いる解析により、PNGase処理タンパク質およびN-グリカンを有するタンパク質の両方に関して、無傷な状態での質量(intact mass)の変化を測定した。さらに、MALDI-TOFペプチドマスフィンガープリント解析/LC-MS/MS解析により、8個のリジンおよびN-末端の全てがカルバミル化されていることが示される。その他のカルバミル化アミノ酸は検出されず、グリカンの修飾も検出されなかった。さらに、最終生成物において、EPOの過剰カルバミル化および過小カルバミル化体含量の減少が得られた。この生成物は新規であり、特許請求される。
【0042】
本発明の1つの実施態様は、カルバミル化段階の後であるが、陰イオン交換精製の前に得られ、約40重量%未満、または約30%未満、または約25%未満、または約20%未満、または約15%未満、または約12.5%未満、または約10%未満、または約8%未満、または約7%未満の凝集体および重合体を有するカルバミル化EPO、およびシアン酸塩を含む組成物である。
【0043】
本発明のその他のさらなる実施態様は、陰イオン交換精製の後に得られ、約3重量%未満、または約2.5%未満、または約2%未満、または約1.5%未満、または約1%未満、または約0.5%未満の凝集体および重合体を有するカルバミル化EPOを含む組成物である。さらに、この組成物は、過剰カルバミル化および過小カルバミル化EPOからなるアイソフォームを、カルバミル化EPO全体の約40重量%未満、または好ましくは約35%未満、または約30%未満、または約25%未満、または約20%未満、または約15%未満、または約10%未満、または約7.5%未満、または約5%未満、または約2%未満、および最も好ましくは約1%未満の量で含む。さらに、前記組成物における過剰カルバミル化EPOの量は、カルバミル化EPO全体の約35重量%未満、またはさらに好ましくは約30%未満、または約25%未満、または約20%未満、または約15%未満、または約10%未満、または約7.5%未満、または約5%未満、または約2%未満、および最も好ましくは約1%未満である。
【0044】
<本発明の医薬調合物>
本発明の1つの態様は、本発明混合物を、以下に記載される状態の治療のために、ヒトまたは哺乳類において使用される医薬調合物の製造に使用する方法である。本発明の1つの実施態様は、約3重量%未満、またはより好ましくは約2.5%未満、または約2%未満、または約1.5%未満、または約1未満、および最も好ましくは0.5%未満の凝集体および重合体を有する治療的有効量のカルバミル化EPOを含む医薬調合物であり、さらに、この調合物は、カルバミル化EPO全体の約40重量%未満、またはより好ましくは35%未満、または約30%未満、または約25%未満、または約20%未満、または約15%未満、または約10%未満、または約5%未満、または約3%未満、または約2%未満、および最も好ましくは約1%未満の量の過剰または過小カルバミル化EPOからなるアイソフォームを含む。さらに、前記調合物における過剰カルバミル化EPO の量は、カルバミル化EPO全体の約35重量%未満、またはより好ましくは30%未満、または約25%未満、または約20%未満、または約15%未満、または約10%未満、または約5%未満、または約3%未満、または約2%未満、および最も好ましくは約1%未満である。
【0045】
本発明の1つの態様の実施に際して、本発明混合物を含む上述のような医薬調合物は、内皮細胞バリアーを横切る輸送と応答細胞における有益な効果とを可能にするために十分なレベルの本発明混合物を脈管構造において提供するいずれの経路によっても哺乳類に投与することができる。組織または器官を灌流させる目的において使用される場合には、同様の結果が望まれる。例えば、細胞または組織が血管新生を行っておらず、そして/または、細胞もしくは組織を本発明の調合物で浸すことにより投与を行う場合には、前記の医薬調合物により、応答細胞に有益な有効量の本発明混合物が提供される。本発明混合物が横切って輸送される内皮細胞バリアーには、密着結合、小孔性結合(perforated junctions)、有窓性結合、および、哺乳類に存在するその他のいずれかのタイプの内皮バリアーが含まれる。好ましいバリアーは、内皮細胞密着結合であるが、本発明においては限定はされない。
【0046】
本発明の前記混合物は、概して、主として神経症状または精神医学的症状を有する中枢神経系または末梢神経系のヒト疾患、眼科疾患、心疾患、心肺疾患、呼吸器疾患、腎臓、泌尿器および生殖器障害、消化器疾患、および内分泌および代謝異常の治療的なまたは予防的な処置に有用である。特に、前記状態および疾患には、中枢神経系組織、末梢神経系組織または心臓もしくは網膜組織、例えば脳、心臓または網膜/眼における興奮性組織のような興奮性組織に悪影響を及ぼす低酸素状態が含まれる。従って、本発明混合物は、種々の状態および環境での低酸素状態による興奮性組織への損傷の治療または予防に使用することができる。前記状態および環境の例を下記の表に示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明に従って処置できる神経組織の病状の予防の例においては、前記の病状は、神経組織の酸素化の低下から生じる病状を含む。ストレス、損傷、そして最終的には神経細胞死を招き、神経組織に対する酸素の利用可能性を減少させる状態は、本発明の方法によって治療することができる。通常、低酸素症および/または虚血として呼ばれるこれらの状態は、以下から生じるかまたは以下を含むが、これらに限定はされない:脳卒中、血管閉塞、出生前または出生後の酸素欠乏、窒息、息詰まり、溺水、一酸化炭素中毒、煤煙吸入、手術および放射線治療を含む外傷、仮死、てんかん、低血糖症、慢性閉塞性肺疾患、気腫、成人呼吸窮迫症候群、低血圧性ショック、敗血性ショック、アナフィラキシーショック、インスリンショック、鎌状赤血球発症、心停止、律動不整、窒素性ナルコーシス、および心肺バイパス処置により生じる神経学的脱落。
【0048】
1つの実施態様において、例えば、腫瘍切除または動脈瘤修復のような外科的処置の間の障害または組織損傷のリスクから生じる障害または組織損傷を防ぐために、例えば、本発明組成物を含む特定の医薬調合物を投与することができる。本明細書記載される方法により治療可能である、低血糖症により引き起こされるかまたはそれにより生じるその他の病状には、医原性高インスリン血症としても呼ばれるインスリンの過量服用、膵島細胞腫、成長ホルモン欠損症、コルチゾール低下症(hypocortisolism)、薬剤の過量服用および特定の腫瘍が含まれる。
【0049】
興奮性神経組織損傷から生じるその他の病状には、発作性障害、例えば、てんかん、痙攣または慢性発作性障害が含まれる。その他の治療可能な状態および疾患には、脳卒中(虚血性脳卒中、くも膜下出血、脳内出血)、多発性硬化症、低血圧症、心停止、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳性小児麻痺、脳または脊髄損傷、AIDS痴呆、認知機能の加齢性喪失、記憶喪失、筋萎縮性側索硬化症、発作性障害、アルコール依存症、網膜虚血、緑内障から生じる視神経損傷、およびニューロンの欠損のような疾患が含まれるがこれらに限定はされない。
【0050】
本発明の特定の調合物および方法は、疾患状態または種々の外傷の結果生じる炎症、例えば物理的または化学的に誘導される炎症を治療するために使用することができる。前記の外傷には、血管炎、慢性気管支炎、膵炎、骨髄炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、視神経炎、側頭動脈炎、脳炎、髄膜炎、横断性脊髄炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、壊死性筋膜炎、肝炎および壊死性腸炎が含まれる。
【0051】
活性化された星状細胞が神経毒を生成することによって、ニューロンに対して細胞毒性としての役割を発揮できることが示されている。一酸化窒素、反応性酸素種およびサイトカインが、脳虚血に応答してグリア細胞から放出される(「Becker, K.J. 2001. Targeting the central nervous system inflammatory response in ischemic stroke. Curr Opinion Neurol 14:349-353」および「Mattson, M.P., Culmsee, C., and Yu, Z.F. 2000. Apoptotic and Antiapoptotic mechanisms in stroke. Cell TissueRes 301:173-187」参照)。さらに、神経変性のモデルにおいては、グリアの活性化およびそれに続く炎症サイトカインの産出が一次性の神経損傷primary neuronal damageに依存することが示されている(「Viviani, B., Corsini, E., Galli, C.L., Padovani, A., Ciusani, E., and Marinovich, M. 2000」、「Dying neural cells activate glia through the release of a protease product. Glia 32:84-90」および「Rabuffetti, M., Scioratti, C., Tarozzo, G., Clementi, E., Manfredi, A.A., and Beltramo, M. 2000」、「Inhibition of caspase-1-like activity by Ac-Tyr-Val-Ala-Asp-chloromethyl ketone includes long lasting neuroprotection in cerebral ischemiathrough apoptosis reduction and decrease of proinflammatory cytokines. J Neurosci 20:4398-4404」参照)。炎症およびグリアの活性化は、脳虚血、脳損傷および実験的アレルギー性脳脊髄炎、エリスロポエチンが神経保護効果を発揮する障害、を含む神経変性障害の種々の形態に共通する。しかし、腫瘍壊死因子の産出を直接阻害する「古典的な」抗炎症サイトカイン、例えばIl-10およびIL-13とは違って、エリスロポエチンは神経細胞死の存在下においてのみ活性であると考えられる。
【0052】
特定の理論によって縛られるわけではないが、この抗炎症活性は、いくつかの限定されない理論により仮定的に説明することができる。第一に、エリスロポエチンがアポトーシスを妨げるので、アポトーシスが引き金となる炎症イベントが妨げられる。さらに、エリスロポエチンは、グリア細胞を刺激する死んだニューロンからの分子シグナルの放出を妨げることができ、または、グリア細胞に直接作用してこれらの産生物に対するグリア細胞の反応を減少させることができる。もう1つの可能性としては、エリスロポエチンが、アポトーシスおよび炎症の両方を引き起こす炎症カスケード(例えば、カスケード1、反応性酸素または窒素中間体)のより基部に近いメンバーを標的としていることが挙げられる。
【0053】
さらに、デキサメタゾンのようなその他の抗炎症化合物に通常伴うリバウンドなしに、エリスロポエチンは抗炎症性保護を示すと考えられる。また、特定の理論によって縛られるわけではないが、これは、一酸化窒素(NO)のような多目的の神経毒におけるエリスロポエチンの影響によると考えられる。活性化された星状細胞および小膠細胞は種々の外傷に応答して神経毒性量のNOを産出するが、NOは必須の生理的機能の調節を含む生体内の多くの目的に役立っている。従って、抗炎症薬の使用によって、NOまたはその他の神経毒の抑制により炎症を軽減することができるが、この抗炎症薬の半減期が長すぎると、炎症の原因となる外傷から生じる損傷の修復におけるこれらの化学的役割も阻害してしまう。本発明混合物は、NOのような神経毒の回復推進能力を妨げることなく炎症を軽減できると考えられる。
【0054】
本発明の特定の調合物および方法は、網膜組織の状態および網膜組織に対する損傷を治療するために使用することができる。前記の障害には、網膜虚血、黄斑変性、網膜剥離、網膜色素変性、動脈硬化性網膜症、高血圧性網膜症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、低血圧症および糖尿病性網膜症が含まれるが、これらに限定はされない。
【0055】
もう1つの実施態様において、本発明の方法および原理は、興奮性組織への放射線による損傷または化学療法に誘導される損傷から生じる障害を保護または治療するために使用することができる。限定されない例においては、タキサン、シスプラチンのような化合物および末梢神経障害を誘導する可能性のあるその他の化学療法薬により引き起こされる損傷から保護するために使用することができる。本発明の方法のさらなる有用性は、神経毒中毒、例えばドウモイ酸貝毒(domoic acid shellfish poisoning)、神経ラチリスム(neurolathyrism)、およびGuam 疾患(Guam disease)、筋萎縮性側索硬化症、およびパーキンソン病の治療にある。
【0056】
上述のように、本発明はまた、前記の本発明混合物の末梢投与により、哺乳類における興奮性組織機能を増強する方法を目的とする。種々の疾患および状態がこの方法を用いる治療に感受性であり、さらにこの方法は、状態または疾患がない場合における認知機能の増強に有用である。本発明のこれらの使用方法は、以下にさらに詳細に記載され、ヒトおよびヒト以外の哺乳類の両方における学習および訓練の増強を含む。
【0057】
中枢神経系を対象とする本発明のこの態様の方法により治療可能な状態および疾患には、限定はされないが、気分障害、不安障害、うつ病、自閉症、注意欠陥多動性障害および認知機能障害が含まれる。これらの状態は、神経機能の増強により利益を受ける。本発明の教義に従って治療可能なその他の障害には、例えば、睡眠障害、睡眠時無呼吸および旅行関連障害(travel-related disorders);くも膜下出血および動脈瘤性出血、低血圧性ショック、振とう性損傷(concussive injury)、敗血性ショック、アナフィラキシーショック、種々の脳炎および髄膜炎の後遺症、例えば、狼瘡のような結合組織疾患関連脳炎が含まれる。その他の用途には、ドウモイ酸貝毒のような神経毒による中毒、神経ラチリスムおよびGuam疾患、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病の予防、またはこれらからの保護;塞栓性または虚血性損傷;全脳照射;鎌状赤血球発症;および子癇に関する術後治療が含まれる。
【0058】
本発明の方法により治療可能な状態のさらなる群には、神経損傷および神経細胞死に代表される種々の神経系疾患の原因となっている、遺伝的な性質のまたは後天的な性質のミトコンドリアの機能不全が含まれる。例えば、リー病(亜急性壊死性脳症)は、ニューロン脱落による進行性の視力喪失および脳症、およびミオパシーにより特徴付けられる。これらの場合に、ミトコンドリアの代謝が不完全だと、興奮性細胞の代謝を刺激するのに十分な高エネルギー物質を供給することができない。エリスロポエチン受容体活性モジュレーターは、種々のミトコンドリア疾患において衰えた機能を適正化する。上述のように低酸素状態は、興奮性組織に有害な影響を及ぼす。興奮性細胞には、限定はされないが、中枢神経系組織、末梢神経系組織および心臓組織が含まれる。前記の状態に加えて、本発明の方法は、一酸化炭素および煤煙吸入のような吸入性中毒、重度の喘息、成人呼吸窮迫症候群、息詰まりおよび溺水の治療に有用である。低酸素状態を作り出すさらなる状態またはその他の手段により誘導される興奮性組織損傷には、不適当なインスリン用量により生じる、またはインスリン生成新生物(インスリノーマ)を有する低血糖症が含まれる。
【0059】
興奮性組織損傷に由来すると考えられる種々の神経心理学的障害が、即時の方法により治療可能である。神経損傷が関与し、本発明により治療される慢性障害には、認知機能の加齢性喪失および老人性痴呆症、慢性発作性障害、アルツハイマー病, パーキンソン病、痴呆、記憶喪失、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、結節硬化症、ウィルソン病、脳性および進行性核上性麻痺、Guam疾患、レヴィー小体痴呆、海綿状脳症のようなプリオン病、例えば、クロイツフェルト‐ヤーコプ病、ハンチントン病、筋緊張性ジストロフィ、シャルコー・マリー・ツース病、フリートライヒ運動失調およびその他の運動失調、ならびにジル・ド・ラ・ツレット症候群、発作性障害、例えば、てんかんおよび慢性発作性障害、脳卒中、脳または脊髄損傷、AIDS痴呆、アルコール症、自閉症、網膜虚血、緑内障、自律神経機能障害、例えば、高血圧症および睡眠障害、および、限定はされないが、統合失調症、統合失調性感情障害、注意欠陥障害、機能亢進、気分変調障害、大うつ病性障害、躁病、強迫性障害、精神作用物質使用による障害、不安、恐慌性障害、単極性および双極性情動障害を含む神経精神医学的障害、を含む中枢神経系および/または末梢神経系に関連する障害が含まれる。さらに、神経精神的障害および神経変性障害には、例えば、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる「American Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM), the most current version, IV」に記載される障害が含まれる。
【0060】
もう1つの実施態様において、本発明混合物を含む組換えキメラ毒性分子を、癌のような増殖性障害、または亜急性硬化性汎脳炎のようなウイルス性障害を治療するための毒素の治療的送達に使用することができる。
【0061】
表1は、上述の本発明混合物による治療に感受性の種々の状態および疾患に関して、限定はされないが代表的な適応をさらに示す。
【0062】
【表1】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】
上述のように、これらの疾患、障害または状態は、単に本発明混合物により利益が得られる範囲を例示するものである。従って本発明は、概して、物理的損傷の結果またはヒト疾患の結果の治療的または予防的処置を提供する。CNSおよび/または末梢神経系の疾患、障害または状態における治療的または予防的処置が好ましい。精神医学的要素を有する疾患、障害または状態における治療的または予防的処置が提供される。眼科、心臓血管、心肺、呼吸器、腎臓、泌尿器、生殖器、消化器、内分泌または代謝の要素を有する疾患、障害または状態を含むがこれらに限定されない疾患、障害または状態の治療的または予防的処置が提供される。
【0068】
1つの実施態様において、標的細胞、組織または器官を保護または強化するために、本発明混合物を含む医薬調合物を全身的に投与することができる。前記投与は、非経口、吸入、または経粘膜、例えば、経口、直腸、膣内、舌下、または経皮でよい。好ましくは、投与は非経口、例えば静脈内または腹腔内注射であり、動脈内、筋肉内、皮内および皮下投与もまた含むがこれらに限定されない。
【0069】
その他の投与経路、例えば、器官への灌流液、注射の使用による投与、またはその他の局所投与においては、上述のような本発明混合物濃度を得ることができる医薬調合物が提供される。約0.01pM〜30 nMの濃度が好ましい。
【0070】
本発明の医薬調合物は、治療的有効量の混合物および薬学的に許容されるキャリアーを含むことができる。特定の実施態様においては、「薬学的に許容される」という語句は、動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦もしくは州政府の監督機関、または米国薬局方もしくはその他の一般的に認識される外国の薬局方に記載される監督機関により承認されていることを意味する。「キャリアー」という語句は、希釈剤、佐剤、賦形剤またはビヒクル(vehicle)を示し、これらとともに治療が施される。前記の薬学的キャリアーは、滅菌した液体、例えば、水、および、石油、動物、植物または合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等を含む油における生理食塩溶液でよい。生理食塩溶液は、医薬調合物が静脈内投与される場合に好ましいキャリアーである。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、液体キャリアー、特に注射用溶液として使用することができる。適当な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、ライス、小麦粉、白亜(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が含まれる。所望の場合には、前記調合物は、少量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤を含むこともできる。これらの調合物は液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸薬(pills)、カプセル剤、散剤、徐放製剤等の形態を採ることができる。前記調合物は、慣用的なバインダーおよびキャリアー、例えば、トリグリセリドとともに坐剤として製剤化することができる。本発明の混合物は、中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、遊離アミノ基とともに形成する塩、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来する塩、および遊離カルボキシル基とともに形成する塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来する塩が含まれる。適当な薬学的なキャリアーの例は、「"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martin」に記載されている。前記調合物は、適当な投与のための形態を患者に提供するために、好ましくは精製された形態である治療的有効量の混合物を適量のキャリアーと一緒に含む。製剤は、投与形態に適応させるべきである。
【0071】
経口投与に適応した医薬調合物は、カプセル剤または錠剤として;散剤または顆粒剤として;液剤、シロップ剤または懸濁剤(水系または非水系液体における)として;食用の泡またはホイップ(edible foams or whips)として;または乳剤として提供される。錠剤または硬ゼラチンカプセル剤は、ラクトース、デンプンまたはそれらの誘導体、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、ステアリン酸またはそれらの塩を含むことができる。軟ゼラチンカプセル剤は、植物油、ワックス、脂肪、半固体、または液体ポリオール等を含むことができる。液剤およびシロップ剤は、水、ポリオールおよび糖を含むことができる。
【0072】
経口投与を目的とする活性物質は、胃腸管における活性物質の崩壊および/または吸収を遅延させる物質でコーティングするか、または前記物質と混合することができる(例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンを使用することができる)。従って、活性物質の持続放出を、数時間かけて達成させ、 必要な場合には、活性物質を胃内における分解から保護することができる。経口投与用の医薬調合物は、特定のpHまたは酵素的条件による胃腸の特定の位置での活性物質の放出を促進するために製剤化することができる。
【0073】
経皮投与に適合する医薬調合物は、服用者の表皮との密な接触を長期間維持することを目的として、別々のパッチとして提供されてもよい。局所投与に適合する医薬調合物は、軟膏、クリーム剤、懸濁剤、ローション、散剤、液剤、パスタ剤、ゲル、スプレー剤、エアロゾルまたは油として提供されてもよい。皮膚、口、目またはその他の外部の組織への局所投与には、局所用の軟膏またはクリーム剤を使用するのが好ましい。軟膏中に製剤化される場合には、活性成分はパラフィン系または水混和性の軟膏基剤のどちらかと一緒に用いることができる。あるいは、活性成分を水中油型基剤または油中水型基材と一緒にクリーム剤中に製剤化することができる。目への局所投与に適合する医薬調合物には、点眼剤が含まれる。これらの調合物において、活性成分は、適当なキャリアー中に、例えば水性溶剤中に溶解または懸濁することができる。口における局所投与に適合する医薬調合物には、ロゼンジ(lozenges)、口内錠(pastilles)およびうがい薬が含まれる。
【0074】
鼻および肺投与に適合する医薬調合物は、固体のキャリアー、例えば散剤(好ましくは20〜500ミクロンの範囲にある粒度を有する)を含むことができる。散剤は、鼻に近づけた散剤の容器から鼻を通して嗅ぐ方法、すなわち、急速な吸入による方法において投与することができる。あるいは、鼻投与に適合する調合物は、液体のキャリアー、例えば鼻内用スプレーまたは点鼻剤を含むことができる。あるいは、肺への直接の吸入を、深い吸入またはマウスピースを通した中咽頭への導入により実施することができる。これらの調合物には活性成分の水溶液または油剤が含まれる。吸入による投与のための調合物は、限定はされないが加圧エアロゾル、噴霧器または吸入器を含み、所定の用量の活性成分を提供できるように構成される特別に適合させた装置において供給される。好ましい実施態様において、本発明の医薬調合物は、鼻腔に直接、または鼻腔もしくは中咽頭を経て肺に投与される。
【0075】
直腸投与に適合させた医薬調合物は、坐剤または浣腸剤として提供することができる。膣投与に適合させた医薬調合物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、パスタ剤、泡またはスプレー製剤として提供することができる。
【0076】
非経口投与に適合する医薬調合物には、水系または非水系の無菌注射用溶液または懸濁液が含まれ、これらは酸化防止剤、バッファー、静菌剤、および調合物をレシピエントの血液と実質的に等張にする溶質を含むことができる。前記調合物中に存在することができるその他の成分には、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が含まれる。非経口投与に適合する調合物は、単位用量(unit-dose)用容器または複数回用量(multi-dose)用容器、例えば密封したアンプルおよびバイアル中に存在することができ、使用直前に無菌液体キャリアー、例えば注射用の無菌生理食塩水の添加のみが必要な凍結乾燥状態で保管することができる。即時調製注射溶液および懸濁液は、無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。1つの実施態様においては、救急車、緊急治療室および戦場による緊急の使用のために、さらには家庭環境における自己投与、特に、芝刈り機の軽率な使用によるような外傷性切断の可能性が生じた場合のために、本発明混合物の注射溶液を含む自己注射器が提供される。医療関係者の現場への到着前、または被害を受け足指が切断された個体の緊急治療室への到着前であっても、実行可能な限り切断部分の多部位へ本発明混合物を投与することにより、切断された足および足指における細胞および組織が再付着後に生存する可能性が増加する。
【0077】
好ましい実施態様において、前記調合物は常法に従って、ヒトへの静脈内投与に適合する医薬調合物として製剤化される。典型的には、静脈内投与用調合物は、無菌の等張水性バッファーにおける液剤である。必要な場合には、前記調合物は可溶化剤、および注射の部位における痛みを軽減するためのリドカインのような局所麻酔薬を含むことができる。一般に、前記成分は、例えば、密閉された容器、例えば活性成分の量を表示するアンプルまたは袋(sachette)中における凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、別々に、または単位剤形(unit dosage form)中に一緒に混合して提供される。前記調合物が注入により投与される場合には、無菌の医薬グレードの水または生理食塩水を含む注入用容器(infusion bottle)を用いて投与することができる。前記調合物が注射により投与される場合には、成分を投与前に混合できるように無菌生理食塩水のアンプルが提供される。
【0078】
坐剤は、通常、0.5重量%〜10重量%の範囲で活性成分を含み、経口用製剤は、好ましくは10%〜95%の活性成分を含む。
【0079】
灌流液組成物は、移植器官用の槽において使用するために、本来の位置での灌流のために、または器官採取の前の器官ドナーの脈管構造への投与のために提供される。前記の医薬調合物は、個体への急性または慢性、局所または全身投与に適さない量の本発明混合物を含むことができるが、しかし、治療した器官または組織を正常な循環へさらす前または戻す前にそこに含まれる本発明混合物を除去または該混合物のレベルを減少させるのに先立って、死体、器官用の槽、器官灌流、または本来の位置における灌流液中において本明細書で意図される機能を果たす。
【0080】
本発明はまた、1種またはそれ以上の本発明医薬調合物の成分を充填した1個またはそれ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。場合により、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制している行政機関により規定される形態で、前記容器に掲示を付すことができ、これは、ヒトへの投与に関する製造、使用または販売の前記機関による承認を表す。
【0081】
もう1つの実施態様においては、例えば、本発明混合物は放出制御系において送達することができる。例えば、ポリペプチドは、静脈内注入、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたはその他の投与方法を用いて投与することができる。1つの実施態様において、ポンプを使用することができる(「Langer, supra; Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201」;「Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507」;「Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574」参照)。もう1つの実施態様において、前記混合物を小胞、特にリポソームにより送達することができる(「Langer, Science 249:1527-1533 (1990)」;「Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989)」;国際公開第91/04014号パンフレット;米国特許第4,704,355号明細書;「Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327」参照;概して同書を参照)。もう1つの実施態様において、ポリマー系材料を使用することができる(「Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Press: Boca Raton, Florida, 1974」;「Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley: New York (1984)」;「Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61, 1953; see also Levy et al., 1985, Science 228:190」;「During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71:105」参照)。
【0082】
さらにもう1つの実施態様において、制御放出系を治療の標的、すなわち、標的細胞、組織または器官の近傍に留置することができ、それによって少量の全身的用量のみが必要となる(例えば「Goodson, pp. 115-138 in Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, supra, 1984」参照)。その他の制御放出系はLanger(1990, Science 249:1527-1533)による総説において議論されている。
【0083】
もう1つの実施態様において、本発明混合物は、適当に製剤化され、鼻、口、直腸、膣または舌下投与により投与することができる。
【0084】
特定の実施態様において、本発明の調合物は、治療の必要な領域に局所的に投与することが望ましく;これは例えば、限定はされないが、外科手術の間の局所注入、例えば外科手術後の創傷包帯と同時の局所投与により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラントにより達成することができ、前記インプラントは、シラスティック膜のような膜を含む多孔性、非多孔性もしくはゼラチン状物質、または繊維である。
【0085】
好ましい有効用量の選択は、本技術分野で公知のいくつかの因子についての考察に基づき、熟練の医師により決定される。前記の因子には、本発明混合物の特定の形態、およびその薬物動態パラメーター、例えばバイオアベイラビリティー、代謝、半減期等が含まれ、これらは、医薬調合物の規制当局の認可を得る場合に通常用いられる通常の開発手順の間に確立される。用量を検討する場合におけるさらなる因子には、治療される状態または疾患、または通常の個体において得られる利益、患者の体重、投与の経路、投与が急性か慢性か、併用薬、および投与される製剤の有効性に影響することが知られているその他の因子が含まれる。従って、正確な用量は、医者の判断および各患者の状況に従って、例えば、個々の患者の状態および免疫状態に基づいて、ならびに標準的な臨床技術に従って決定されるべきである。
【0086】
本発明のもう1つの態様においては、移植用器官の灌流および保存のために灌流液または灌流溶液が提供され、該灌流溶液は、応答細胞および関連する細胞、組織または器官を保護するのに有効な量の本発明混合物を含む。移植には、これらに限定はされないが、器官(細胞、組織またはその他の生体部分を含む)が1人のドナーから採取され異なるレシピエントに移植される異種移植;および、卓上での外科的処置を含み、器官が生体の一部分から採取され別のものと交換される自己移植が含まれ、この際、器官は除去することができ、さらに、腫瘍除去のためのように生体外で切除し、修復し、または別の方法で処理をして、その後に元の位置に戻すことができる。1つの実施態様において、灌流溶液は、約1〜約25 U/ml エリスロポエチン、5%ヒドロキシエチルデンプン(約200,000 〜約300,000の分子量を有し、実質的にエチレングリコール、エチレンクロロヒドリン、塩化ナトリウムおよびアセトンを含まない);25mM KH2PO4;3mM グルタチオン;5mM アデノシン;10mM グルコース;10mM HEPESバッファー;5mM グルコン酸マグネシウム;1.5mM CaCl2;105mM グルコン酸ナトリウム;200,000ユニットのペニシリン;40ユニットのインスリン;16mg デキサメタゾン;12mg フェノールレッドを含み;そして7.4〜7.5のpHおよび約320 mOSm/lの浸透圧を有するウィスコンシン大学(University of Wisconsin:UW)溶液(米国特許第4,798,824号明細書)である。この溶液は、移植前の死体の腎臓および膵臓を維持するために使用される。該溶液を使用することにより、死体の腎臓の保存に推奨される30時間の限界を超えて保存を延長することができる。この一定の灌流液は、有効量の本発明混合物を含み本発明の使用方法に適合できる溶液の一部を単に例示するものである。さらなる実施態様において、灌流溶液は、約0.01pg/ml〜約400 ng/mlの本発明混合物、または約40 ng/ml〜約300 ng/mlの本発明混合物を含む。
【0087】
本明細書における目的において、本発明混合物の好ましい受容者はヒトであるが、本明細書における方法は、その他の哺乳類、特にペット動物、家畜、コンパニオンアニマルおよび動物園の動物に同様に適用される。しかし、本発明は限定されるものではなく、その利益はいずれの動物に対しても利用することができる。
【0088】
<本発明混合物の治療的および予防的用途>
以下の実施例1に記載されるように、ヒトの脳毛細血管内皮におけるエリスロポエチン受容体の存在は、本発明混合物の標的がヒトの脳に存在すること、および本発明のこれらの混合物における動物実験がヒトの治療または予防に直接移行可能であることを示している。
【0089】
本発明のもう1つの態様においては、細胞、組織または器官を直接、本発明混合物を含む医薬調合物に暴露させることにより、または本発明混合物含有医薬調合物を組織または器官の脈管構造に投与するかもしくは接触させることにより、内皮細胞バリアーによって脈管構造から隔離されていない細胞、組織または器官の生存能力を増強するための方法および調合物が提供される。治療される組織または器官における応答細胞の活性増強により、明確な効果が発揮されることになる。
【0090】
上述のように、本発明は部分的には、例えば、脳、網膜および精巣を含み内皮細胞密着結合を有する器官の毛細血管の内皮細胞の内腔表層から基底膜表層まで、エリスロポエチン分子が輸送されるという発見に基づく。従って、前記バリアーを横切る応答細胞が、本発明混合物の有益な効果に対して感受性の高い標的であり、そして、そこに応答細胞を含むか、または応答細胞に全体的にもしくは部分的に依存するその他の細胞型または組織または器官が、本発明の方法の標的となる。特定の理論によって縛られるわけではないが、本発明混合物のトランスサイトーシス後に、本発明混合物は、応答細胞、例えば、神経、網膜、筋肉、心臓、肺、肝臓、腎臓、小腸、副腎皮質、副腎髄質、毛細血管内皮、精巣、卵巣、膵臓、骨、皮膚または子宮内膜細胞におけるエリスロポエチン受容体と相互作用することができ、受容体との結合により、シグナル伝達カスケードが開始して、応答細胞または組織内における遺伝子発現プログラムの活性化が起こり、細胞または組織または器官が毒素、化学療法薬、放射線療法、低酸素症等によるような損傷から保護される。従って、応答細胞含有組織を損傷または低酸素ストレスから保護し、前記組織の機能を増強する方法が、本明細書において以下に詳細に記載される。上述のように、本発明の方法はヒトおよびその他の動物に同等に適用される。
【0091】
本発明の1つの実施態様においては、哺乳類の患者が、癌治療において放射線療法を含む全身的な化学療法を受けており、通常、神経、肺、心臓、卵巣または精巣の損傷のような副作用を有する。上述のような本発明混合物を含む医薬調合物の投与は、種々の組織および器官を化学療法薬による損傷から保護するために、例えば精巣を保護するために、化学療法および/または放射線療法の前および間に行われる。化学療法薬の血中濃度が哺乳類の生体に対して危険な可能性のあるレベル以下に下がるまで、治療を継続することができる。
【0092】
本発明のもう1つの実施態様においては、種々の器官が多くのレシピエントへの移植のために自動車事故の犠牲者から採取される予定にあり、それらの一部は長距離および長時間の輸送を必要とする。前記の犠牲者は、器官の採取の前に、本明細書に記載される本発明混合物を含む医薬調合物を注入される。採取した輸送用の器官を 本明細書に記載される本発明混合物を含む灌流液で灌流させ、本発明混合物を含む槽の中で保存した。一部の器官は、本発明により本発明混合物を含む灌流液を利用し、拍動的灌流装置(pulsatile perfusion device)を用いて継続的に灌流させた。輸送の間ならびに移植および器官の本来の位置での再灌流時における器官機能の低下は最小限であった。
【0093】
本発明のもう1つの実施態様においては、心臓弁を修復する外科的処置が、一時的な心臓麻痺および動脈閉塞を必要とした。手術の前に、患者は体重1 kgあたり4μgの本発明混合物を注入された。このような処理により、特に再灌流後の低酸素性の細胞損傷が防止された。
【0094】
本発明のもう1つの実施態様においては、心肺バイパス手術のような外科的処置において、本発明混合物を使用することができる。1つの実施態様においては、脳、心臓およびその他の器官の機能を保護するために、上述のような本発明混合物を含む医薬調合物の投与を、バイパス処置の前に、間に、および/または後に実施する。
【0095】
本発明混合物が生体外での適用に、または、神経組織、網膜組織、心臓、肺、肝臓、腎臓、小腸、副腎皮質、副腎髄質、毛細血管内皮、精巣、卵巣、または子宮内膜細胞もしくは組織のような応答細胞を治療するために使用される上述の例において、本発明は、脈管構造より遠位の応答細胞、組織または器官の保護または増強に適応する投薬単位形態(dosage unit form)で医薬調合物を提供し、これは、投薬単位あたり、約0.01 pg〜5 mg、1 pg〜5 mg、500pg〜5 mg、1 ng〜5 mg、500 ng〜5 mg、1μg〜5 mg、500μg〜5mgまたは1 mg〜5 mgの非毒性で有効な量の範囲内にある本発明混合物、および薬学的に許容されるキャリアーを含む。好ましい実施態様において、本発明混合物の量は約1 ng〜5 mgの範囲内である。
【0096】
本発明のさらなる態様において、EPO投与が脳損傷を受けた動物における認知機能を回復させることを見出した。本発明混合物はEPOと同一の細胞保護効果を有すると予測される。EPOは、5日または30日の遅延後にもなお、擬似治療を施した(sham-treated )動物と比較して機能を回復させることができ、これは脳活動を再生または回復させるEPOの能力を示している。従って、本発明はまた、脳損傷およびその他の認知機能障害の治療(損傷のかなり後の治療(例えば、3日、5日、1週、1ヶ月またはそれ以上)を含む)用医薬調合物の製造に、本発明混合物を使用することを目的とする。前記発明はまた、有効量の本発明混合物の投与による、損傷後の認知機能障害の治療方法を目的とする。本明細書に記載される本発明の混合物はいずれも、本発明のこの態様に関して使用することができる。
【0097】
さらに、この本発明の回復の態様は、本明細書における本発明混合物のいずれかを、細胞、組織または器官機能障害回復用の医薬調合物の製造に使用することを目的とし、治療は、機能不全の原因となる最初の損傷の後およびかなり後に開始される。さらに、本発明混合物を用いる治療は、急性期および慢性期にわたって疾患または状態の一定期間に及んでもよい。
【0098】
混合物が赤血球産生活性を有する場合には、前記混合物は、投与あたり、体重1 kgにつき約1μg〜約100μg、好ましくは体重1 kgにつき約5〜50μg、最も好ましくは体重1 kgにつき約10〜30μgの用量で全身的に投与することができる。この有効用量は、混合物投与後に、血清1 mlあたり約10,000、15,000または20,000 mUを超える混合物の血清レベルを達成するのに十分である。前記の血清レベルは、投与後約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10時間で達成される。前記の用量は必要に応じて繰り返すことができる。例えば、投与は、臨床的に必要であれば毎日繰り返すことができ、または適当な間隔を経て、例えば1〜12週毎に、好ましくは1〜3週毎に繰り返すことができる。有効量の混合物および薬学的に許容されるキャリアーは、単一の投薬バイアルまたはその他の容器に詰めることができる。しかしながら、本発明の混合物は赤血球産生性でなく、すなわち、ヘモグロビン濃度またはヘマトクリットの増加を引き起こすことなく、本明細書に記載される活性を発揮することができる。このような非赤血球産生性混合物は、本発明の方法が慢性的に施される場合に特に好ましい。もう1つの実施態様において、本発明混合物は、最大限に赤血球産生を刺激するのに必要な天然エリスロポエチンの相当用量(W/W)より大きい用量で与えられる。上述のように、本発明混合物は赤血球産生活性を有さず、従って、単位で表される上述の用量は、天然エリスロポエチンにおける相当量の単なる例示であり、ここでは、用量に関する前記のモル当量を本発明混合物のいずれの混合物に対しても適用することができる。
【実施例】
【0099】
本発明をさらに説明するために以下に実施例を挙げるが、この実施例は本発明を例示するものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様をより完全に例証するために示すものである。これらは本発明の広範な範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0100】
<実施例1> カルバミル化エリスロポエチンの製造
この実施例における工程の出発物質は、精製した組換えヒトEPOであった。
【0101】
第一に、工程において容量を低く維持することを目的として、タンパク質濃度を限外ろ過によって調節した。タンパク質濃度は3 mg/mlに調節した。限外ろ過は5 kDaのMWCOを有するBioMax(ミリポア社製)により実施した。
【0102】
濃縮段階の完了後、EPO溶液をpH 9.0で0.5 Mホウ酸カリウム四水和物 0.5 Mシアン酸カリウムと混合し、該溶液を32℃で24時間インキュベートした。
【0103】
EPOおよびシアン酸塩の反応混合物の脱塩をゲルろ過により行った。タンパク質をバッファー(25 mM Tris、50 mM NaCl 、pH 8.5 )を用いて脱塩した。G-25ファイン樹脂(Amersham Biosciences社製)を使用した。
【0104】
約15 cm長のカラムにおいて90 cm/hの流速を用いて、カラム容量の約20%のサンプルをアプライした。
【0105】
脱塩したカルバミル化EPOをさらなる処理のために回収した。
【0106】
・この時点において、重合体/凝集体含量は7.3 %であった。
【0107】
次の段階は、陰イオン交換を用いる精製段階によって実施される凝集体および重合体の除去であった。SOURCE 30Q(Amersham Biosciences社製)樹脂を前記精製に使用した。約4.5 mg/mlのカルバミル化EPOをカラムにアプライした。ランニングバッファーAは25 mM Tris、50 mM NaCl(pH 8.5)であり、溶出バッファーBは25 mM Tris、1 M NaCl (pH 8.5)であった。カラム容量の20倍量における0〜30%の勾配で行い、カルバミル化EPOのメインピークを回収しプールした。
【0108】
精製段階からのプールを0.5 mg/mlより大きい濃度に調節し、ダイアフィルトレーション/限外ろ過タンジェンシャルフローフィルトレーションユニットを用いてバッファーを20 mMクエン酸塩、100 mM NaClのバッファーに交換した。濃縮およびバッファー交換を5 kDaのMWCOを用いる0.1m2のBioMax(ミリポア社製)で実施した。
【0109】
最後に、精製したバイオ医薬品用製剤原料を、滅菌のために0.22μmのMillipakフィルター(ミリポア社製)を用いてろ過した。
【0110】
前記工程により、バイオ医薬品として有用な特性を有するカルバミル化EPOが得られた:
・SEC-HPLCによって測定した場合に重合体/凝集体含有量が0.5%であった
・アミノ酸解析により測定した場合に、リジンのカルバミル化が100%であった
・濃度は0.5 mg/mlより大きかった。
【0111】
PNGase処理タンパク質およびN-グリカンを有するタンパク質の両方について、無傷な状態での質量の変化を測定するために、MALDI-TOFを用いる解析を行った。さらに、MALDI-TOFペプチドマスフィンガープリント解析/LC-MS/MS解析を以下のように行った:
1.CEPOおよびEPOをPOROS R1カラム(POROS R1逆相カラム担体、PerSeptive Biosystems社製(1-1259-06))で精製した。前記カラム担体を、使用前にHPLC VWR 152525R用50% HiPerSolv中に用意した。R1カラムを平衡化し、5%ギ酸(33015、Riedl de Haeen製)で洗浄した。サンプルをAgilent社製MALDI HCCA quality matrix溶液(G2037A)を用いてカラムから溶出した。無傷な状態での質量をBruker社製Reflex IV MALDI-TOF装置における解析により測定した。
【0112】
2.0.3 pmolのCEPOおよび/またはEPOを1ユニットのPNGase FおよびPNGase F/O-グリコシダーゼで一晩処理した。全質量(Total mass)をMALDI-TOFを用いて測定した。
【0113】
3.CEPOおよびEPO(1.5pmol)を10mM DTT、50mM NH4CO3の50μl溶液中で還元し、引き続き、55 mMヨードアセトアミド、50mM NH4CO3の50μl中でアルキル化した。トリプシン消化の前にサンプルをPOROS R1カラムにおいて精製した。MALDI-TOF解析の前に、消化されたサンプルのフラクションをPOROS R2カラムにおいて精製した(POROS 50 R2、PerSeptive Biosystems社製 (1-1159-05))。R2カラムを0.1%トリフルオロ酢酸(99+%分光分析用グレード、Aldrich社製302031-100ml)で平衡化および洗浄した。サンプルをAgilent社製MALDI HCCA quality matrix溶液(G2037A)を用いてカラムから溶出した。トリプシン消化により得られたペプチドプールをPNGase Fで処理し、POROS R2カラム上で精製して、MALDI-TOFにより特性を明らかにした。
【0114】
4.CEPOおよびEPOをDTTを含む溶液で還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化した。Glu-C消化前に、サンプルをPOROS R1カラムにおいて精製した。MALDI-TOF解析前に、消化されたサンプルのフラクションをカラムにおいて精製した。Glu-C消化により得られたペプチドのプールをPNGase Fで処理し、POROS R2カラム上において精製した。
【0115】
5.部分的にカルバミル化されたCEPOを有する可能性を除くために、無傷な状態のEPOおよびCEPOをLys-Cで消化した。サンプルをMALDI-TOFを用いて解析した。
【0116】
その結果、8個のリジンおよびN末端がカルバミル化された。その他のカルバミル化アミノ酸は検出されず、グリカンの修飾も検出されなかった。
【0117】
参考文献:
MSによる一般的なタンパク質同定:
「Mann M, Hojrup P, Roepstorff P. (1993) Use of mass spectrometric molecular weight information to identify proteins in sequence databases, Biol Mass Spectrom 22, 338-345」
「Yates, J R, Speicher S, Griffin P R, Hunkapiller T. (1993) Peptide mass maps: a highly informative approach to protein identification, Anal Biochem 214, 397-408」
無傷な状態での質量:
「Laugesen S, Roepstorff P. (2003) Combination of two matrices results in improved performance of MALDI MS for peptide mass mapping and protein analysis.J Am Soc Mass Spectrom. 14(9), 992-1002」
消化/グラファイト(grafit):
「Larsen MR, Hojrup P, Roepstorff P. (2005) Characterization of gel-separated glycoproteins using two-step proteolytic digestion combined with sequential microcolumns and mass spectrometry. Mol Cell Proteomics. 4(2), 107-19」。
【0118】
EPOのカルバミル化の程度および均一性、カルバミル化の特異性およびカルバミル化部位の同一性、ならびにカルバミル化の副反応および精製工程に起因する非特異的修飾の可能性の存在を測定するために、追加的な試験を行った。サンプルを、脱グリコシル化タンパク質サンプルの全質量解析、ならびに消化のためにエンドプロテアーゼLysCおよびトリプシンを用いるペプチドマッピング、ならびにペプチド個別評価(peptide evaluation)のためのLC/MS解析により解析した。
【0119】
<実施例2>
(全質量解析)
3個のカルバミル化EPOサンプルに関して、実施例1の方法を用いて解析を行った。3個全てのサンプルを、実施例1に記載されるように、カルバミル化反応の後に陰イオン交換を用いて精製した。CEPOサンプルのうちの1個(CEPO-CMCと呼ぶ)は、CMC Biotech社により、1グラムの製造規模(濃度:0.82 mg/ml;バッファー:20 mM クエン酸Na、0.3 mM クエン酸、0.1 M NaCl、pH 6.9〜7.3)により製造された。残りの2個のサンプル(CEPO-1およびCEPO-2と呼ぶ)は、70 mgの実験室での製造規模(濃度:1.1 mg/ml;バッファー:25 mM Tris、0.2.M NaCl、pH 8.3〜8.7)により製造された。これらのCEPOサンプルを、非修飾または出発EPO(濃度:0.82 mg/ml;バッファー;2 mMクエン酸Na、0.3mM クエン酸、0.1 NaCl、pH6.9〜7.3)およびモックCEPO(mock-CEPO)(カルバミル化工程を通してシアン化カリウムの添加を受けていないEPO)(濃度:0.38 mg/ml;バッファー;20mMクエン酸Na、0.3mM クエン酸、0.1 NaCl、pH6.9〜7.3)と比較した。
【0120】
ESIマススペクトロメトリー
全質量解析の前に、サンプルを酵素的に脱グリコシル化した。各サンプルを、50μgのN-グリコシダーゼF(Glyko社製プロザイム)、アルスロバクター・ウレアファキエンス(A. ureafaciens)由来の組換えノイラミニダーゼおよびO-グリコシダーゼと共に、0.5 mg/mlのタンパク質濃度で一晩インキュベートした。脱グリコシル化反応の完全性を、12%のトリス−グリシンゲルにおいて各サンプルを3μgづつロード(loading)するSDS-PAGEによって確認した。各サンプルの残りを質量解析に使用した。
【0121】
脱グリコシル化サンプルに、塩酸グアニジンのストック溶液を適当量添加することにより4〜5 Mの塩酸グアニジン濃度にして、その後、2%のギ酸および40%のアセニトリルを含むバッファー中で脱塩した。塩酸グアニジンは、マススペクトル解析用の脱グリコシル化EPOおよびCEPOの高い回収率を確保するために添加した。質量測定は、ESIナノスプレーイオン化源が装備されているWaters社製ESI-Q-TofマススペクトロメーターまたはWaters社製ESI-LCTマススペクトロメーターを用いて行った。データの評価は、Mass Lynx 4.0ソフトウェアを用いる自動解析により、および重要な特異的ピークの手動評価により行った。m/zスペクトルに記録されるシグナル強度に基づいて相対比を計算することにより、異なるカルバミル化CEPO種の相対比の定量化を行った。
【0122】
サンプルの脱グリコシル化により、N結合糖鎖が完全に除去された。しかし、O結合糖鎖の除去は、特にCEPOサンプルで不完全であった。
【0123】
期待されるように、CEPOサンプルはカルバミル化により、EPOおよびモックCEPOサンプルと比較して異なるマススペクトルを示した。表2で示すように、スペクトルの解析により、種々のサンプルに対して理論的に予測されるような主要ピークの質量が得られた。全てのCEPOサンプルにおいて、高度にカルバミル化されたCEPO分子のみが見られ、これらは、8個のリジンおよびN末端が完全にカルバミル化された、すなわち、9個のカルバミル残基を有する完全カルバミル化アイソフォームが主要なアイソフォームであった。CEPOサンプルは、8、10および11個のカルバミル残基とCEPOとの結合に相当するアイソフォームをさらに含む点において不均一性を示した。8個のカルバミル残基を含む種を過小カルバミル化と表し、これは少なくとも1個のカルバミル残基を欠いている。10および11個のカルバミル残基を有する種を過剰カルバミル化と表し、結合している余分なカルバミル残基は、リジン以外のアミノ酸に非特異的な態様で結合している。全てのサンプルのスペクトルにおいて副次的なピークがいくつか見られるが、非特異的に修飾された種であると考えられるものはなかった。一部の副次的シグナルはEPOおよびCEPOサンプルの両方において見られ、出発EPOに予め存在する混入物であると考えられた。
【0124】
【表2】

【0125】
全質量解析において得られる脱グリコシル化CEPOサンプルおよびEPOサンプルの解析質量
表3は種々のアイソフォームの相対比を示す。過小カルバミル化CEPOは、サンプルにもよるが全CEPOの約1.5〜5.5%の範囲であり、過剰カルバミル化CEPOは、サンプルにもよるが全CEPOの約11〜22%の範囲である。CEPO-1およびCEPO-2は類似したアイソフォーム分布を有し、CEPO-CMCはその他の2つのサンプルと比較して少量の過小カルバミル化種を有する。製造規模が異なると分布が異なる生成物が生じるが、しかし、表3が示すように、実験室規模の製造に関しては、類似の結果となるように製造を繰り返すことができる。前述のように、いずれの製造規模でも、前記の分布を陰イオン交換カラムからのプールの調節により調節することができる。
【0126】
表3における数は、過小カルバミル化CEPOおよび過剰カルバミル化CEPOの最小限の比を表す。その理由は、前記のカルバミル化の程度(8倍〜11倍)が、過小、完全および過剰カルバミル化CEPOにおける正確な程度を特定できないことにある。例えば、質量解析により測定した場合に8カルバミル残基を含むCEPO分子は、リジンに特異的に結合しているカルバミル基を7個だけ有し、残りのカルバミル基は非特異的にその他のアミノ酸に結合していることもある。この状態は、非特異的に結合するカルバミル基があるとしても、単に過小カルバミル化としてみなされる。反対に、10個のカルバミル残基を含むCEPO分子は、8個の残基にのみ特異的に結合し、2個は非特異的に結合しているかもしれない。この状態においては、全てのリジンがカルバミル化されていなくても、CEPOアイソフォームは単に過剰カルバミル化としてみなされる。
【0127】
【表3】

【0128】
カルバミル化の程度および不均一性:異なってカルバミル化されたCEPO種の相対比
* n=2 **n=1
<実施例3>
(LysCペプチドマッピング)
断片化のためにエンドプロテアーゼLysCおよびトリプシンを用いて、EPOおよびCEPOサンプルのペプチドマップ解析を実施した。全てのペプチドマップ解析を脱グリコシル化ペプチドを用いて行った。ペプチドの酵素的脱グリコシル化をエンドプロテアーゼを用いる消化と同時に実施した。
【0129】
EPOおよびCEPOサンプル(それぞれ約150μg)を、塩酸グアニジン(guanidinium hydrochloride)およびDTTとのインキュベーションにより変性し還元した。遊離スルフヒドリル基をヨード酢酸でアルキル化した。該アルキル化サンプルを脱塩し、バッファーを使い捨てのゲルろ過カラムを用いることにより、適当なバッファーに交換した。
【0130】
エンドプロテアーゼ、N-グリコシダーゼおよびノイラミニダーゼを、アルキル化EPOおよびCEPOサンプルに同時に添加した。サンプルを37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後に、約5μgの各消化物を、Waters社製 ESI-LCTに組み合わせたPhenomenix社製Jupiter C18 RPカラムを用いるRP-HPLC/M解析に用いた。220 nMのUVシグナルおよびマススペクトロメーターにおける全イオンカウント(TIC)を記録した。得られたペプチドの同定および定量化のためにTICの評価を行った。LysCはカルバミル化リジンを切断することができないので、全てのリジンがカルバミル化されている場合には消化による断片は形成されないと期待され、これはカルバミル化の特異性を示すものである。過小カルバミル化の場合には、CEPOの特異的な断片が形成する。表4は、EPO、完全カルバミル化CEPOおよび過剰カルバミル化CEPO、および過小カルバミル化CEPOのLysC消化から理論的に形成する断片を示す。
【0131】
表4
LysCペプチドマッピング:EPO、完全カルバミル化CEPOまたは過剰カルバミル化CEPOおよび過小カルバミル化CEPOのLysCの消化から理論的に形成するペプチド/断片のリスト
【0132】
【表4】

【0133】
CEPO (完全カルバミル化および過剰カルバミル化)
【0134】
【表5】

【0135】
過小カルバミル化CEPO (8x カルバミル化)
【0136】
【表6】

【0137】
期待されたとおり、LysCで消化したEPOおよびCEPOサンプルに関して得られたLysCペプチドパターンは、完全に異なっていた。出発EPOおよびモックCEPOのLysCの消化により、期待されたとおりのペプチドパターンが得られた。両サンプルにおいて、全てのペプチドK1〜K9を同定することができた。ペプチドK5およびK1は、EPOおよびモックCEPOの両方において非特異的な態様で部分切断された。有意な追加的ピークは同定されず、出発EPOと比較した場合にモックCEPOのLysCマップにおいて消失するピークもなかった。これらのデータから、カルバミル化および精製工程の間には、EPOタンパク質の有意な非特異的共有結合修飾は起こらなかったと結論付けることができる。
【0138】
CEPOサンプルのペプチドマップは、出発EPOと異なるペプチドパターンを有していた。単一の主要ピークおよびいくつかの副次的ピークが存在した。表5に示すように、ピークから得られる質量は、未切断CEPOまたは過小カルバミル化CEPOのLysC切断由来断片のいずれかに対して予測される質量とよく相関した。主要ピーク(A)は、無傷な状態であり、脱グリコシル化され、完全にカルバミル化されたCEPO(9xカルバミル)および過剰カルバミル化CEPO(10xカルバミル)を含んでいた(表5)。4つの副次的ピーク(B-E)は、一定のリジンにおいてカルバミル化されていない過小カルバミル化CEPOを含む種々のピークを有する過小カルバミル化CEPO(8xカルバミル)を含んでいた。ピークBおよびCは、Lys45でのカルバミル化を特異的に欠く過小カルバミル化CEPOを含むのに対し、ピークDおよびEは、Lys97でのカルバミル化を特異的に欠く過小カルバミル化CEPOを含んでいた(表5)。
【0139】
表5
【0140】
【表7】

【0141】
LysCペプチドマッピング:実験的に得られた質量の、理論的に過小カルバミル化CEPOから得られるCEPO断片への帰属
異なるCEPOサンプルに関してはピークの相対比において一部の相違が見られた。CEPOサンプル1および2は、CEPO-CMCよりも顕著なピークDおよびEを有しており、これらは過小カルバミル化CEPO種をより多く含むことを示している。
【0142】
主要ピークに対して副次的ピークを定量化することは技術的な限界により困難であった。しかし、種々の種の相対比に関して、UV検出より得られるピーク面積を大まかな目安として用いることにより、過小カルバミル化CEPOが、サンプル中におけるCEPOアイソフォームの10%未満を占めること、および、CEPO-1およびCEPO-2がCEPO-CMCの2倍量の過小カルバミル化アイソフォームを有することが見積もられた。全質量解析に使用されたものと同一の方法を用いると、ピークAに位置する過剰カルバミル化種の量は、CEPO-CMCに関しては約21%であり、CEPO-1およびCEPO-2に関しては12%であった。
【0143】
全体的に、LysCペプチドマッピングから得られるデータは、実施例2に記載される全質量解析と良く一致した。CEPO-CMCは過小カルバミル化CEPOアイソフォームをほとんど含まず、一方、CEPO-1およびCEPO-2は多くの過剰カルバミル化CEPOアイソフォームを含んでいた。このペプチドマッピングは、リジン45およびリジン95が過小カルバミル化の部位を表すことも示唆している。
【0144】
<実施例4>
トリプシンペプチドマッピング
トリプシンを用いるサンプルの消化は実施例3に記載される。
【0145】
EPOおよびモックCEPOのトリプシン消化により、予想されるとおりのペプチドパターンが得られた。両方のサンプルにおいて、一部の小さなジペプチドおよびトリペプチド(例えばT21)を除いては、トリプシン消化に関して予想されるほとんどのペプチド(T1〜T21)を同定することができた。表6を参照されたい。LysC消化の場合には、開始のEPOと比較して、有意な追加ピークも、モックCEPOから消失したピークもなかった。これらのデータから、カルバミル化および精製工程の間には、EPOタンパク質の非特異的な共有結合修飾がなかったことが結論付けられた。
【0146】
CEPOサンプルのペプチドパターンは、非修飾EPOと異なっていた。トリプシンは通常、リジンおよびアルギニンにおいて切断し、従って、完全にカルバミル化されたEPOの場合には、アルギニンの切断による断片化のみがおこると予測される。従って、トリプシンによるペプチドパターンが得られた後には、特異的なカルバミル化部位および非特異的にカルバミル化されたペプチドを同定することができる。アルギニン(R)のみにおいて切断されると仮定した場合の、CEPO分子のトリプシン消化から予測されるペプチドを表6に記載する。
【0147】
表6
トリプシンにより消化されたEPOおよびCEPOにおいて予測されるペプチドのリスト
【0148】
【表8】

【0149】
EPO
【0150】
【表9】

【0151】
CEPO(完全なカルバミル化によってArg (R) のみで切断されたと仮定した場合)
全てのCEPOサンプルにおいて、C末端ペプチドR13を除き、トリプシンでの切断により期待される全てのペプチドを主要な(major)ピークとして同定した。このペプチドは、最初のEPOまたはモックCEPOにおいても見られなかった。アルギニンのみの特異的切断により得られるR1〜R12のピークが、CEPOサンプルにおいて検出されるペプチドの大部分を占めた。さらに、全てのリジン含有ペプチドはほとんど、完全なカルバミル化体においてのみ検出された。これらのデータは、リジンおよびN末端における高度の特異的カルバミル化を示している。
【0152】
主要なペプチドに加えて、6つの副次的な(minor)ペプチドもまた全てのCEPOサンプルにおいて検出された。3つの副次的なペプチドを、過剰カルバミル化CEPOのトリプシン切断の結果として質量解析により同定し、そして、過小カルバミル化CEPOから得られる残り3つについても同定した。
【0153】
表7は、解析した3つのCEPOサンプルのトリプシンマップにおいて同定した全てのペプチドを示す。完全におよび特異的にカルバミル化されたEPOから高頻度に形成するペプチドR1〜R12を標準の文字で示し、正確にカルバミル化されたEPOをさらに太字で示す。過小カルバミル化CEPOの切断により最も形成し得るペプチドをイタリック体で示し、過剰カルバミル化CEPOの切断により形成するペプチドには下線を引いた。
【0154】
表7
【0155】
【表10】

【0156】

【0157】
トリプシンペプチドマップ:CEPOのトリプシンペプチドマップにおいて同定されたペプチドのリスト
*- TICにおける総カウント数に対する強度
1- 手動評価により観察された;特異的なものとして確認されたシグナル
表7を参照すると、それぞれR6_a1およびR6_b1を含む副次的なピークT9およびT10は、Lys97でカルバミル化されていない過小カルバミル化CEPO分子の切断にほとんど由来する。Lys45アミノ酸がカルバミル化されていない場合には、ペプチドR4_b1+1xcarbが形成する。ペプチドR6_a1(ピークT9)は、CEPO-CMCよりもCEPO-1およびCEPO-2サンプルにおいてより頻度が高く、後者が過小カルバミル化CEPOの2倍の量を有することを示している。ペプチドR6_b1およびR4_b1+1xcarbは、全てのCEPOサンプルにおいて等量で存在した。
【0158】
これらのデータから過小カルバミル化CEPOの相対的な含有量を計算することは、技術的限界から困難であった。しかしながら、全ての観測結果を用いて、全質量解析およびLysCペプチドマッピングから推定すると、過小カルバミル化種は約10%であると見積もられた。
【0159】
その他のペプチドと一緒に溶出されるその他の副次的なペプチドは、質量により、1個の余分なカルバミル残基を含むもの、すなわち過剰カルバミル化CEPOとして解釈された。ペプチドR10_2xcarbおよびR7_1xcarbは微量で検出され、R12_3xcarbは有意なシグナル強度を有することが見出された。CEPO-CMCは、CEPO-1およびCEPO-2のような過剰カルバミル化CEPO種より2倍高い含量を有していた。これは、全質量解析の結果と一致する。これらの結果からも、151〜62のアミノ酸配列が非特異的カルバミル化の部位であると結論付けることができる。
【0160】
さらに、過小カルバミル化の定量化と同様の理由で、過剰カルバミル化種の定量化は困難であった。しかし、カルバミル化の程度のみが相違するペプチドのイオン化効率が類似するとすれば、R12誘導体の相対イオンカウントにより、約3〜7%のCEPOが過剰カルバミル化種であることが計算された。これは、全質量解析により計算される過剰カルバミル化アイソフォームの量より低い。
【0161】
概して、EPOおよびCEPOの全質量解析およびペプチドマッピングデータから、以下のように結論付けることができる。
【0162】
全質量解析からは、CEPOサンプルがかなり高度にカルバミル化されているように思われた。全ての分子の約95〜98%が完全にカルバミル化されており、少なくとも9個のカルバミル残基を含む(表3参照)。LysCおよびトリプシンマッピングより、特定部位での高度のカルバミル化、および95%を超えるCEPO分子のほとんどが8個のリジンおよびN末端で完全にカルバミル化されていることが確認される。
【0163】
このデータにより、CEPOの4つのアイソフォームが見出されたことも示された。解析したCEPOサンプルにおいて、8、9、10および11個のカルバミル残基を有する種が検出され、9個のカルバミルを有するアイソフォームが主要な種であった。少ない割合のCEPO分子が、9個に代わって8個のカルバミル残基を含み、過小カルバミル化とされた。CEPO-1およびCEPO-2に関しては、これらのアイソフォームが全体の約5%であり、CEPO-CMCに関しては、このアイソフォームは全CEPO分子の約1.5%を構成した。多くの割合のCEPO分子が過剰にカルバミル化されており、すなわち、10または11個のカルバミル残基を含んでいる。過剰カルバミル化CEPOは、CEPO-1およびCEPO-2における約11%からCEPO-CMCにおける約22%までの範囲である。
【0164】
ペプチドマッピングからのデータにより、8個のリジンおよびN末端でのカルバミル化の特異性の高さが示された。さらに、ペプチドマッピングでは、概して、全質量解析の結果を確認することができた。少なくとも約90〜95%のCEPO分子が、全てのリジンおよびN末端でカルバミル残基により特異的に修飾されていると考えられた。しかし、このデータはまた過剰および過小カルバミル化CEPO種も示した。一部の技術的限界により、過小カルバミル化種の正確な割合を測定するのは困難であるが、約10%までの範囲にあると見積もられ、これは全質量解析において見出された数値と一致する。さらに、EPOの2つの異なる位置Lys45およびLys97が、カルバミル化の欠失が最も起こりやすかった位置として同定された。
【0165】
両方のペプチドマッピングにおいて、過剰カルバミル化種もまた見出された。また、技術的限界により、過剰カルバミル化種の正確な量を定量化するのは困難であった。得られたデータからは、過剰カルバミル化種が極少量であったためペプチドマッピングにおいてほとんど検出されなかったと推測された。全質量解析と比較して、3分の1〜2分の1の量の過剰カルバミル化種のみがペプチドマッピングによって同定された。この不一致に関する妥当な説明としては、全ての過剰カルバミル化ペプチドが全部、または正しい量で同定されていないことが挙げられる。LysCマップにおいては、10個のカルバミル残基を含む切断されないCEPO種が十分な量で検出され、そしてトリプシンマッピングにおいては、1つ余分にカルバミル残基を含む3つのペプチドが検出された。これらの断片のうちの2つはほんの微量で検出された。3番目のペプチドであるC末端に近いCEPOペプチドアミノ酸152〜162が、過剰カルバミル化のうちの3分の1の割合を占めると考えられ、EPOにおける非特異的カルバミル化の部位であるかもしれない。
【0166】
実施されたいずれの解析によっても、その他の有意な量の非特異的(カルバミルに無関係の)修飾は、CEPOサンプルにおいて、またはモックCEPOサンプルにおいて検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、シアン酸塩とタンパク質のN末端およびリジン残基との反応を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約40%未満の凝集タンパク質、およびESIマススペクトロメトリーにより測定した場合に約40重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有するカルバミル化エリスロポエチンタンパク質を製造する方法であって、この方法が、ある温度、pHで、エリスロポエチンのリジンおよびN末端アミノ酸におけるアミン基が少なくとも約90%カルバミル化されるのに十分な時間、ある量のエリスロポエチンをある量のシアン酸塩と接触させることを含む、前記の製造方法。
【請求項2】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30%未満の凝集タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20%未満の凝集タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10%未満の凝集タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約0.05 mg/ml〜約10 mg /mlである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約2 mg/ml〜約5 mg /mlである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約10 Mである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約2 Mである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
温度が約0℃〜約60℃の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
温度が約30℃〜約34℃の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
pHが約7〜約11である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
pHが約8〜約10である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
時間が約10分〜約30日である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
時間が約1時間〜約5日である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
エリスロポエチンをバッファーの存在下でシアン酸塩と接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項23】
バッファーがホウ酸塩である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
バッファーの濃度が約0.05 M〜約2 Mである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
バッファーの濃度が約0.1 M〜約1 Mである、請求項22記載の方法。
【請求項26】
バッファーの濃度が約0.5 Mである、請求項22記載の方法。
【請求項27】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約0.05 mg/ml〜約10 mg/mlであり、シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約10 Mであり、温度が約0℃〜約60℃の範囲であり、pHが約7〜約11であり、そして、時間が約10分〜30日である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約2 mg/ml〜約5 mg/mlであり、シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約2 Mであり、温度が約30℃〜約34℃の範囲であり、pHが約8〜約10であり、そして、時間が約1時間〜5日である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約3 mg/mlであり、シアン酸塩の濃度が約0.5 Mであり、温度が約32℃であり、pHが約9.0であり、そして、時間が約24時間である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、カルバミル化エリスロポエチンを精製することを含む、約3%未満の凝集タンパク質、およびESIマススペクトロメトリーにより測定した場合に約40重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有するカルバミル化エリスロポエチンタンパク質を製造する方法。
【請求項31】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
エリスロポエチンのリジンおよびN末端アミノ酸における少なくとも90%のアミン残基がカルバミル化される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約2.5%未満の凝集タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項34】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約0.5%以下の凝集タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項35】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項36】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項37】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項38】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項39】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項40】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項30記載の方法。
【請求項41】
約3%未満の凝集タンパク質、およびESIマススペクトロメトリーにより測定した場合に約40重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有するカルバミル化エリスロポエチンタンパク質を製造する方法であって、この方法が、以下:
(a)ある量のエリスロポエチンタンパク質を、ある温度、pHで、エリスロポエチンのリジンおよびN末端アミノ酸における少なくとも90%のアミン残基がカルバミル化されるのに十分な時間、ある量のシアン酸塩と接触させること;および
(b)陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、カルバミル化エリスロポエチンタンパク質を精製すること、
を含む、前記方法。
【請求項42】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約2.5%未満の凝集タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約0.5%以下の凝集タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項46】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項47】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項48】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項49】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項50】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項41記載の方法。
【請求項51】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約0.05 mg/ml〜約10 mg/mlである、請求項41記載の方法。
【請求項52】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約2 mg/ml〜約5 mg/mlである、請求項41記載の方法。
【請求項53】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約3 mg/mlである、請求項41記載の方法。
【請求項54】
シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約10 Mである、請求項41記載の方法。
【請求項55】
シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約2 Mである、請求項41記載の方法。
【請求項56】
シアン酸塩の濃度が約0.5 Mである、請求項41記載の方法。
【請求項57】
温度が約0℃〜約60℃の範囲である、請求項41記載の方法。
【請求項58】
温度が約30℃〜約34℃の範囲である、請求項41記載の方法。
【請求項59】
温度が約32℃である、請求項41記載の方法。
【請求項60】
pHが約7〜約11である、請求項41記載の方法。
【請求項61】
pHが約8〜約10である、請求項41記載の方法。
【請求項62】
pHが約9である、請求項41記載の方法。
【請求項63】
時間が約10分〜約30日である、請求項41記載の方法。
【請求項64】
時間が約1時間〜約5日である、請求項41記載の方法。
【請求項65】
時間が約24時間である、請求項41記載の方法。
【請求項66】
バッファーの存在下でエリスロポエチンタンパク質をシアン酸塩に接触させる、請求項41記載の方法。
【請求項67】
バッファーがホウ酸塩である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
バッファーの濃度が約0.05 M〜約2 Mである、請求項66記載の方法。
【請求項69】
バッファーの濃度が約0.1 M〜約1 Mである、請求項66記載の方法。
【請求項70】
バッファーの濃度が約0.5 Mである、請求項66記載の方法。
【請求項71】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約0.05 mg/ml〜約10 mg/mlであり、シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約10 Mであり、温度が約0℃〜約60℃の範囲であり、pHが約7〜約11であり、そして、時間が約10分〜30日である、請求項41記載の方法。
【請求項72】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約2 mg/ml〜約5 mg/mlであり、シアン酸塩の濃度が約0.05 M〜約2 Mであり、温度が約30℃〜約34℃の範囲であり、pHが約8〜約10であり、そして、時間が約1時間〜5日である、請求項41記載の方法。
【請求項73】
シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約3 mg/mlであり、シアン酸塩の濃度が約0.5 Mであり、温度が約32℃であり、pHが約9.0であり、そして、時間が約24時間である、請求項34記載の方法。
【請求項74】
リジンおよびアミノ末端アミノ酸の第1級アミンの少なくとも約90%がカルバミル化され、約3%未満の凝集タンパク質、およびESIマススペクトロメトリーにより測定した場合に約40重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有するカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項75】
エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項76】
約2.5%未満の凝集タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項77】
約0.5%以下の凝集タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項78】
凝集タンパク質の量がSEC-HPLCにより測定される、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項79】
約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項80】
約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項81】
約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項82】
約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項83】
約20%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項84】
約10%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項74記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項85】
リジンおよびアミノ末端アミノ酸の第1級アミンの少なくとも約90%がカルバミル化され、約40%未満の凝集タンパク質を有するカルバミル化エリスロポエチンタンパク質、およびある量のシアン酸塩を含む混合物。
【請求項86】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項85記載の混合物。
【請求項87】
カルバミル化エリスロポエチンが約30%未満の凝集タンパク質を有する、請求項85記載の混合物。
【請求項88】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20%未満の凝集タンパク質を有する、請求項85記載の混合物。
【請求項89】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約15%未満の凝集タンパク質を有する、請求項85記載の混合物。
【請求項90】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10%未満の凝集タンパク質を有する、請求項85記載の混合物。
【請求項91】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約7%以下の凝集タンパク質を有する、請求項85記載の混合物。
【請求項92】
凝集タンパク質の量がSEC-HPLCにより測定される、請求項85記載の混合物。
【請求項93】
リジンおよびアミノ末端アミノ酸の第1級アミンの少なくとも約90%がカルバミル化され、約3%未満の凝集タンパク質、およびESIマススペクトロメトリーにより測定した場合に約40重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有するカルバミル化エリスロポエチンタンパク質であって、これが、以下の段階:
(a)ある量のエリスロポエチンタンパク質を、ある温度、pHで、エリスロポエチンタンパク質のリジンおよびN末端アミノ酸における少なくとも約90%のアミン残基がカルバミル化されるのに十分な時間、ある量のシアン酸塩と接触させること;および
(b)陰イオン交換、陽イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、カルバミル化エリスロポエチンタンパク質を精製すること、
を含む工程の生成物である、前記のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項94】
エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項95】
約2.5%未満の凝集タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項96】
約0.5%以下の凝集タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項97】
凝集タンパク質の量がSEC-HPLCにより測定される、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項98】
約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項99】
約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項100】
約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項101】
約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項102】
約10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項103】
約5重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項104】
工程が、シアン酸塩と接触させるエリスロポエチンタンパク質の濃度が約3 mg/mlであること、シアン酸塩の濃度が約0.5 Mであること、温度が約32℃であること、pHが約9.0であること、そして、時間が約24時間であることを含む、請求項93記載のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質。
【請求項105】
リジンおよびアミノ末端アミノ酸の第1級アミンの少なくとも約90%がカルバミル化され、約3%未満の凝集タンパク質ならびに約40重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する治療的有効量のカルバミル化エリスロポエチンタンパク質、および薬学的に許容されるキャリアーを含む医薬調合物。
【請求項106】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質がヒトエリスロポエチンである、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項107】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約2.5%未満の凝集タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項108】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約0.5%以下の凝集タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項109】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項110】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項111】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が10重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質および過小カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項112】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約30重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項113】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約20重量%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項114】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約10%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項115】
カルバミル化エリスロポエチンタンパク質が約5%未満の過剰カルバミル化タンパク質を有する、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項116】
キャリアーが希釈剤、佐剤または賦形剤である、請求項105記載の医薬調合物。
【請求項117】
請求項105記載の医薬調合物を投与することを含む、慢性状態または疾患の治療方法。
【請求項118】
請求項105記載の医薬調合物を投与することを含む、亜慢性の状態または疾患の治療方法。
【請求項119】
請求項105記載の医薬調合物を投与することを含む、急性状態または疾患の治療方法。
【請求項120】
請求項105記載の医薬調合物を投与することを含む、中枢神経系または末梢神経系の疾患の治療方法。
【請求項121】
疾患が脳卒中、虚血性事象、脊髄損傷、外傷性脳損傷、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、統合失調症または化学療法誘発性神経障害である、請求項120記載の方法。
【請求項122】
慢性状態または疾患の治療のために、混合物を含む医薬調合物の製造に請求項74記載の混合物を使用する方法。
【請求項123】
亜慢性の状態または疾患の治療のために、混合物を含む医薬調合物の製造に請求項74記載の混合物を使用する方法。
【請求項124】
急性状態または疾患の治療のために、混合物を含む医薬調合物の製造に請求項74記載の混合物を使用する方法。
【請求項125】
中枢神経系または末梢神経系の疾患の治療のために、混合物を含む医薬調合物の製造に請求項74記載の混合物を使用する方法。
【請求項126】
疾患が脳卒中、虚血性事象、脊髄損傷、外傷性脳損傷、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、統合失調症または化学療法誘発性神経障害である、請求項125記載の使用方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−505133(P2008−505133A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519619(P2007−519619)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000477
【国際公開番号】WO2006/002646
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】