説明

新規のコレスト−4−エン−3−オンオキシム誘導体、それを含む医薬組成物及び調製方法

本発明は、新規化合物、特に、コレスト−4−エン−3−オンオキシム誘導体、及び、医薬、特に細胞保護薬、特定的には、神経保護薬、心保護薬及び/又は肝保護薬としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の化合物、特に、コレスト−4−エン−3−オンオキシム誘導体、その医薬としての使用、特に、細胞保護薬、特に、神経保護薬、心保護薬及び/又は肝保護薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の医薬は細胞変性又は細胞死、特に、運動神経細胞及び/又は心筋細胞及び/又は肝細胞の細胞変性又は細胞死に関連する病態及び外傷に特に適している。
【0003】
本発明は、上記の化合物を含む医薬組成物及びその調製方法にも関する。
【0004】
細胞変性プロセスは所望しない細胞活性及び細胞死をしばしばもたらす細胞の機能障害を特徴とする。
【0005】
細胞はストレスに応答して適用機構を発達し、それにより、その寿命を延ばし、又は、細胞死を遅延させ又は阻害している(細胞保護機構)。
【0006】
しかしながら、これらの細胞保護機構は時折、不十分であり、不適切であり、又は、有効性を発揮するには遅すぎ、そして細胞は死亡する。それゆえ、細胞保護を促進する新規の細胞保護薬が入手可能になることが有用であることは明らかであろう。
【0007】
主な細胞死機構のなかで、ネクローシス、アポトーシス及びネクロトーシスの間に本質的な区別がなされる。
【0008】
ネクローシスはいわゆる「偶発的」細胞死であり、それは細胞損傷の際に起こる。最も影響を受け、細胞ホメオスタシスに変化をもたらすのは細胞の形質膜である。細胞は形質膜の溶解をもたらすところまで水を吸い込むであろう。この細胞溶解は周囲の媒体中に細胞質含分を開放させる。ネクローシスは炎症プロセスの起源となる。
【0009】
ネクローシスは細胞群又は組織に影響を及ぼしうるが、他の隣接部位は生きたままである。これにより生じるトランスフォーメーションは細胞又は組織の壊死である。
【0010】
別の言い方をすれば、ネクローシスは、器官内での血液循環の停止もしくは低減、高熱(温度の有意な上昇)、化学品による中毒症、身体的衝撃などの重大な外傷などの事象に次いで、細胞がその生命が終わりとなる際に起こる形態変化と規定される。
【0011】
最もよく知られているネクローシスの1つは冠状動脈の閉塞(通過障害)による梗塞 (心筋への血液供給の中断)の間の心筋のネクローシスである。
【0012】
アポトーシスは生命体の通常の生理機能の不可欠な部分を形成する。これは非常に制御された生理学的形態の細胞死であり、そして多細胞生物の生存に必要とされている。アポトーシスは胚形成にとって非常に重要なプロセスである。
【0013】
アポトーシスを経験する細胞、すなわち、アポトーシス性細胞は他の細胞から分離される。アポトーシスは、通常、組織内の個別の細胞に関わるものであり、炎症を起こさない。アポトーシスの形態学的観点からの特徴の1つは核と細胞質の両方の有意な凝結であり、それにより、細胞体積の有意な減少がもたらされる。その後、核は断片化され、各フラグメントはダブルエンベロープにより包囲される。アポトーシス性ボディ(細胞質要素及び核要素)はその後、開放され、そして貪食により隣接細胞により吸収されるであろう。
【0014】
アポトーシスは種々の様式で誘導されうる。たとえば、放射線、化学物質又はホルモンの存在は細胞内でのアポトーシス性事象のカスケードを誘発することができる刺激である。不完全な有糸分裂又はDNAへの損傷などの細胞内シグナルもアポトーシスを誘発することがある。
【0015】
アポトーシスは遺伝毒性物質の作用の後又は病気の際にも起こる。特定の病態は特定の細胞集団の損失をもたらす異常アポトーシスを特徴とし、肝毒性、網膜症、心毒性などである。
【0016】
それゆえ、生理学的アポトーシスと病理学的アポトーシスとは区別される。本発明は本質的に病理学的アポトーシスに関わる。
【0017】
ネクロトーシスなどの他の細胞死機構が存在し、それはネクローシスとアポトーシスの特徴を示す。ネクロトーシスにより死んでいく細胞はネクローシスによる細胞死の場合と同様の特徴を示すが、この機構の生化学工程はアポトーシスの場合とのほうが似通っている。この細胞死機構は、たとえば、虚血で起こる。
【0018】
それゆえ、本発明の1つの目的は、ネクローシス及び/又は病理学的アポトーシス及び/又はネクロトーシスを阻止し及び/又は処置することができる新規の医薬(抗ネクローシス及び/又は抗アポトーシス及び/又は抗ネクロトーシス薬)を入手可能にすることである。
【0019】
細胞変性プロセスは、とりわけ、まとめて変性疾患又は変性状態と呼ばれる病理学的状況により生じ、外傷により生じ、又は、様々な要因への暴露により生じることができる。
【0020】
これらの外傷及び要因としては、たとえば、放射線(UV、ガンマ)への暴露、低酸素又は酸素欠乏、栄養素欠乏、成長因子欠乏、毒、細胞毒、廃棄物、環境毒、フリーラジカル、反応性酸素種を挙げることができる。医療処置の状況で治療剤として使用される化学もしくは生物学的物質、たとえば、細胞分裂阻害剤又は抗炎症剤も言及されうる。
【0021】
変性プロセスを特徴とする最も有意な病理学的状況としては、
骨、関節、結合組織及び軟骨組織の病気、たとえば、骨粗しょう症、骨髄炎、関節炎(変形性関節症、関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む)、無腐性壊死、進行性骨化線維増殖症、くる病、クッシング症候群;
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、ミオパシー及び筋無力症などの筋ジストロフィーなどの筋疾患;
皮膚炎、湿疹、乾癬、老化、あるいは、また、瘢痕変化などの皮膚疾患;
心虚血及び/又は血管虚血、心筋梗塞、虚血性心疾患、慢性又は急性心不全、不整脈、心房細動、心室細動、発作性頻脈、心不全、無酸素、低酸素症、抗がん剤を用いた治療法の副作用などの心血管疾患;
アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、末梢血管疾患、大脳血管障害、動脈瘤などの循環器系疾患;
貧血、血管アミロイド症、出血、鎌状赤血球貧血、赤血球断片化症候群、好中球減少症、白血球減少症、髄質形成不全、汎血球減少症、血小板減少症、血友病などの血液及び血管疾患;
肺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、たとえば、慢性気管支炎、肺気腫を含む肺疾患;
潰瘍などの消化管疾患;
ウイルス性肝炎及び肝硬変、毒素又は薬剤により引き起こされる肝疾患、肝硬変を引き起こしうる状態、たとえば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ウィルソン病、原始性硬化性胆管炎又は原始性胆汁性肝硬変などを含む、肝疾患;
急性又は慢性膵炎などの膵臓疾患;
真性糖尿病及び尿崩症、甲状腺炎などの代謝性疾患;
急性腎疾患又は糸球体腎炎などの腎臓疾患;
敗血症などのウイルス及び細菌感染症;
化学薬品、毒素又は薬物による重篤な中毒;
後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する変性状態;
早老症などの老化に関連する障害;
クローン病、関節リュウマチなどの炎症性疾患;
エリテマトーデスなどの自己免疫疾患;
歯周病などの組織の崩壊を引き起こすような歯科障害;
糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性症、網膜変性症、網膜色素変性症、網膜円孔又は網膜裂孔、網膜剥離、網膜虚血、外傷に関連する急性網膜症、炎症性変性症、術後合併症、薬剤誘発性網膜症、白内障などの眼科疾患又は障害;
耳硬化症及び抗生剤誘発性難聴などの聴覚伝導路の疾患;
フリードリヒ失調症、構造的ミトコンドリア異常による先天性筋ジストロフィー、特定のミオパシー(MELAS症候群、MERFF症候群、ピアソン症候群)、MIDD症候群(母性遺伝糖尿病及び難聴)、ウルフラム症候群、ジストニアなどのミトコンドリアに関連する疾患(ミトコンドリア病)、
が挙げられる。
【0022】
さらに、神経変性プロセスは神経細胞の機能不全及び死を特徴とし、それは脳(中枢神経系、CNS)、脊髄及び末梢神経系(PNS)により媒介される神経学的機能の損失をもたらす。それは、とりわけ、神経変性疾患もしくは症状と総称される病理状態から、外傷から、又は、毒への暴露から生じることがある。
【0023】
神経変性プロセスを特徴とする最も有意な病態は下記のとおりである。
慢性神経変性疾患、特に、慢性脱髄性疾患、遺伝性もしくは孤発性の、有利にはアルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、特に、小児クロイツフェルト−ヤコブ病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アドレノロイコジストロフィーを含むロイコジストロフィー、てんかん、認知症、統合失調症、及び、AIDSに関連する神経症候群;
老化に関連する神経細胞障害;
遺伝的であるか又は病変により生じる末梢神経障害、たとえば、ファブリ病、シャルコー・マリー・トゥース病、クラッベ病、ロイコジストロフィー、糖尿病性神経障害及び抗癌剤処置により生じる障害など;
脳、末梢神経又は脊髄の外傷;
脳血管障害に続く又は血液灌流の欠如により生じる、脳又は脊髄の虚血;
視覚神経細胞の遺伝的であるか、傷害により生じるか又は老化に関連している変性、たとえば、黄斑変性症、色素性網膜炎、又は、緑内障により誘発される視神経の変性;
聴覚神経細胞の遺伝的であるか、外傷性であるか又は老化に関連している変性で、聴力の低下又は損失をもたらす変性。
【0024】
これらの病態において影響を受ける幾つかの信号経路は多くの神経変性疾患に一般的である。アルツハイマー病は最も頻繁にある認知症である。アルツハイマー病は脳の萎縮の発現をもたらし、海馬における支配的な神経細胞損失をもたらし、そしてコリン作動神経にも影響を及ぼす。葉性萎縮(ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病)、レビー小体型認知症、血管性認知症、パーキンソン病などの他の病態はこれらの認知症の兆候の起源における有意な神経細胞死と関係がある。
【0025】
神経細胞が死ぬことから保護するための治療アプローチは神経栄養タンパク質の供給である。
【0026】
これらのタンパク質、たとえば、BDNF(脳由来神経栄養因子)、CNTF(毛様体神経栄養因子)、NGF(神経成長因子)、GDNF(グリア由来神経栄養因子)は胎生期発達の間に又はおとなの病変後に合成される。これらの成長因子は神経細胞の生存、成熟及び分化を促進する。さらに、アポトーシス機構を阻害し、複数の生存経路を活性化し、そして多数の神経細胞群を保護する。その使用は多くの細胞変性において提案されている。
【0027】
神経栄養因子の発現を活性化し又はこれらの因子の作用を模倣する化合物は神経変性症候群の処置のための治療可能性を有する。
【0028】
特に、神経変性の処置のための神経栄養素分子の供給には3つの目的がある。
神経細胞の末梢もしくは中枢標的による供給不全及び/又は神経栄養因子の逆行輸送の問題に関連する神経栄養因子の潜在的欠乏を補うこと、
変性カスケードに関与する生化学経路に非特異的に介入すること、
神経末端の樹状成長及び分枝の自然補償現象を促進すること。
【0029】
これらの化合物は、それゆえ、多くの病態、特に、末梢及び中枢神経系に影響を及ぼす病態において有利な効果を有するであろう。
【0030】
さらに、上記の文脈で、運動神経細胞は脊髄及び脳幹に特に存在する神経細胞である。その変性又は死は四肢の筋肉の進行性衰弱をもたらす可能性があり、その後、筋肉の萎縮及び可能性としては痙攣(すなわち、永久収縮)をもたらすことがある。
【0031】
脊髄及び/又は延髄運動神経細胞の変性及び死により生じる最も重要な病態はシャルコー病、又は、ルー・ゲーリック病の名称でも知られている筋萎縮性側索硬化症、及び、ウェルドニッヒ・ホフマン病又はクーゲルベルク・ヴェランダー病の名称でも知られている脊髄性筋萎縮症、特に、小児脊髄性筋萎縮症である。
【0032】
さらに、運動神経細胞の変性は脊髄又は末梢運動神経の圧潰及び/又は切開による外傷の場合に観察される。
【0033】
より一般に、脊髄性筋萎縮症は脊髄の運動神経細胞の変性又は死が関与する病気として参照される。
【0034】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)はルイスボディなどの異なるタイプの封入に関連しそして脊髄及び皮質運動神経細胞の変性を特徴とする神経変性疾患であり、その致死性転帰は時折、前頭葉認知症に関連している。ALSの進展の間に、神経支配の欠如により、変性現象は脳内だけでなく、脊髄でも起こり、結果的に、筋肉でも起こる。
【0035】
化学構造に関しては、文献は3−オキシイミノ−コレスト−4−エン誘導体の幾つかの例を提供している。このことはWO2004/082581及びWO2007/118967の特許明細書に特に当てはまり、それらはそれぞれ、3−オキシイミノ−コレスト−4−エン及びその誘導体の神経保護及び細胞保護特性について記載している。
【0036】
文献Lieblg's Annalen der Chemic [(1991), (1), p 89-91]は化合物3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン及び3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エンならびにそのキラル分子特性を記載している。この文献はこれらの2つの化合物についての細胞保護、神経保護及び/又は心保護活性は記載していない。
【0037】
文献Chemical & Pharmaceutical Bulletin [(1972), 20(7), p 1567-9]は3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンのアンチ異性体を記載しているが、この化合物の細胞保護、神経保護及び/又は心保護活性について記載も言及もない。
【0038】
現在知られている処置法に対して否定的な意見を述べるわけではないが、現在まで、細胞変性、特に神経細胞変性を止めるための有効な処置法は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
このため、細胞を変性現象から有効に保護することができる新規の製品がなおも現実に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明の化合物は、それが新規であるという事実を除いても、非常に有用な薬理学的特性を示す。
【0041】
それらの化合物は細胞保護、特に、神経保護及び/又は心保護及び/又は肝保護に有利であることを証明する。
【0042】
生物学的活性に加えて、特定の新規の化合物は薬理学的活性、たとえば、薬物動態、生物学的利用能、溶解度、安定性、毒性、吸収性及び/又は代謝に関する有利な特性をも示すことができる。このことにより、医薬、特に細胞保護薬、非常に特定的には、神経保護薬及び/又は心保護薬及び/又は肝保護薬を調製するのに非常に有用となる。
【0043】
より詳細には、本発明の主題は式(I)
【化1】

【0044】
(上式中、Rは水素原子、又は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール基、ヘテロサイクル、又は、ハロゲン原子、又は、−CN、−CF、−NO、−OR、−SR、−SO、−NR、−OC(O)R、−OC(O)NR、−C(O)OR、−CONR基であることができ、ここで、
(i)R及びRは同時に又は互いに独立に、水素原子又はC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基から選ばれることができ、又は、
(ii) R及びRは一緒になって2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖炭化水素鎖を形成することができ、それは、任意に、1個又は複数の二重結合を含んでよく及び/又は任意に、1個又は複数の酸素、硫黄又は窒素原子が介在してよく、
は水素原子、又は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール基、又は、ハロゲン原子であることができ、
は水素原子、又は、C〜Cアルキル基、又は、ハロゲン原子、又は、−CN、−OR、−SR、−Is、−COOR、−NR、−OCONR基であることができ、−R及び−Rは上記に規定されるとおりであり、又は、
及びRはそれらが結合した炭素と一緒になって(C〜C)シクロアルキル基を形成することができ、
は水素原子又はC〜Cアルキル基であることができ、又は、
及びRはR及びRが結合している炭素原子の間にさらなる炭素−炭素結合(C−C結合)を形成することができ、又は、C〜Cシクロアルキル基を形成することができ、
は水素原子又は−OR、−SR、−CN、−NR基であることができ、−R及び−Rは上記に規定されるとおりであり、
は水素原子、又は、−CH、−CH−CN、−CH−SR、−CH−SeR基、又は、下記式(A)又は(B):
−CH−Q−R(A)又は−C(O)−Q−R(B)
に対応する基であることができ、ここで、
+Qは酸素原子又は−NR基であることができ、ここでRは上記に規定されるとおりであり、又は、任意に置換されていてよい直鎖もしくは枝分かれ鎖炭化水素鎖により構成されるスペーサーアームであることができ、それは2〜20個の炭素原子を含みまた少なくとも1個のヘテロ原子を含み、
+Rは水素原子、又は、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール基、ヘテロサイクル、C〜Cアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、ヘテロサイクルC(O)−であることができ、特に式(C)又は(D)
【0045】
【化2】

【0046】
のいずれかにより表される基であることができ、
は水素原子、又は、ハロゲン原子、又は、ヒドロキシ基であることができ、好ましくは水素原子であり、
は水素原子又は−OR基であることができ、Rは上記に規定のとおりであり、好ましくは水素原子であり、
は水素原子、又は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール基、又は、ハロゲン原子であることができ、好ましくは水素原子であり、
10は水素原子、又は、C〜Cアルキル基、ハロゲン原子、又は、−CN、−CF、−NO、−OR、−SR、−SO、−NR、−OC(O)R、−OC(O)NR、−C(O)OR、−C(O)NR基であることができ、R及びRは上記に規定されるとおりであり、好ましくは水素原子であり、
10はRと一緒になって、オキソ、=CH−C〜Cアルキル、=CH−アリール、=CH−C〜Cシクロアルキル基であることができ、
11は水素原子、又は、Cアルキル、C〜Cシクロアルキル又はアリール基であることができ、好ましくは水素原子であり、又は、
11及びRは一緒になってそれらが結合した炭素原子の間にさらなるC−C結合を形成することができ、又は、一緒になってC〜Cシクロアルキル基を形成することができ、
12は水素原子、又は、Cアルキル基、又は、−OR、−SR基であることができ、−Rは上記に規定されるとおりであり、好ましくは水素原子であり、
13
(i)C〜C12アルキル基又はC〜C12アルケニル基、特に、
【0047】
【化3】

【0048】
から選ばれる基であることができ、又は、
(ii)下記式E
14−X−R15(E)に対応する基であることができ、
14はC〜C12アルキル基又はC〜C12アルケニル基であり、特に、アルキル基であり、好ましくは下記G
【0049】
【化4】

【0050】
であり、
Xは酸素原子又は−NR基であることができ、Rは上記に規定されるとおりであり、そして
15はC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基、ヘテロサイクル、−C(O)−C〜Cアルキル、− C(O)−C〜Cシクロアルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロアリール、−C(O)−ヘテロサイクルであることができ、特に、上記の式(C)又は(D)により表される基である)に対応する新規の化合物、ならびに、存在する場合にはそのSYN及びANTI異性体、存在する場合にはその光学異性体(エナンチオマー、ジアステレオ異性体)、医薬的に許容される酸又は塩基とのその付加塩、その水和物及びその溶媒和物、そのプロドラッグであるが、ただし、以下の化合物を除く。
【0051】
3−オキシイミノ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2,2−ジメチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−7,7−ジメチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2−(3−オキシイミノ−ブチル)−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−コレスト−1,4−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,6−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,24−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4−エン−6−オン、
3−オキシイミノ−24−メチル−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−24−メチル−コレスト−4,22−ジエン−6−オン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4−エン−6−オン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4,22−ジエン−6−オン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,22−ジエン−6−オン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,24−ジエン−6−オン、
3,6−ジオキシイミノ−コレスト−4−エン、
3,6−ジオキシイミノ−コレスト−4,22−ジエン、
3,6−ジオキシイミノ−コレスト−4,24−ジエン、
3,6−ジオキシイミノ−24−メチル−コレスト−4,22−ジエン、
3,6−ジオキシイミノ−24−エチル−コレスト−4−エン、
3,6−ジオキシイミノ−24−エチル−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4、6−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−1,4,6−トリエン。
【0052】
本明細書によれば以下のことが理解される。
用語「C〜Cアルキル」は1〜6個の炭素原子を含む直鎖もしくは枝分かれ鎖炭化水素基を指し、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルである。C〜Cアルキル基は好ましい。アルキル基は任意に下記のとおりのアリール基により置換されていてよく、この場合には、アリールアルキル基という用語を用いる。アリールアルキル基の例は、特に、ベンジル及びフェネチルである。任意に、アルキル基は、ハロゲン原子又は−CN、−CF、−COOR、−CONR、−O−CONR、−NR、−OR、−SR基から独立に選ばれる置換基のいずれかによって1回又は数回置換されてよく、R及びR基は上記に規定されるとおりである。特に指示がないかぎり、炭化水素基は4〜12個の炭素原子を含むことができる。用語「C〜Cアルケニル」は2〜6個の炭素原子を有する1個又は複数の二重結合を含む、直鎖もしくは枝分かれ鎖又は環式炭化水素基を指す。たとえば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−3−ブテニル、1−ヘキセニル基を挙げることができる。任意に、アルケニル基は、ハロゲン原子又は−CN、−CF、−COOR、−C(O)NR、−O−C(O)NR、−NR、−OR、−SR基から独立に選ばれる置換基のいずれかによって1回又は数回置換されてよく、R及びR基は上記に規定されるとおりである。
【0053】
用語「C〜Cシクロアルキル」は3〜6個の炭素原子を有する飽和もしくは部分的に不飽和の環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基としては、特に、置換基シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルが挙げられる。任意に、シクロアルキル基は、ハロゲン原子又は−CN、−CF、−COOR、−C(O)NR、−O−C(O)NR、−NR、−OR、−SR基から独立に選ばれる置換基のいずれかによって1回又は数回置換されてよく、R及びRは上記に規定されるとおりである。
【0054】
用語「C〜Cアルキニル」は2〜6個の炭素原子を有する少なくとも1個の三重結合を含む直鎖もしくは枝分かれ鎖炭化水素基を指す。アルキニル基は、特に、置換基エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル又は2−ペンチニルが挙げられる。任意に、アルキニル基は、ハロゲン原子又は−CN、−CF、−COOR、−C(O)NR、−O−C(O)NR、−NR、−OR、−SR基から独立に選ばれる置換基のいずれかによって1回又は数回置換されてよく、R及びRは上記に規定されるとおりである。
【0055】
用語「C〜C10アリール」は6〜10個の炭素原子を有し、さらに好ましくは6個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を指す。アリール基としては、特に、フェニル、ナフチル及びビフェニル基が挙げられる。任意に、アリール基は、ハロゲン原子又はアルキル、−CN、−CF、−N、−NO、−COOR、−C(O)NR、−O−C(O)NR、−NR、−OR、−SR基から独立に選ばれる置換基のいずれかによって1回又は数回置換されてよく、R及びRは上記に規定されるとおりである。
【0056】
用語「C〜Cヘテロサイクル」は3〜9個の炭素原子及び1個又は複数のヘテロ原子を含む、任意に置換されていてよい飽和、不飽和又は芳香族単環もしくは多環基を指す。好ましくはヘテロ原子は酸素、硫黄及び窒素から選ばれる。ヘテロサイクルの例はフリル、チエニル、ピロール、イミダゾール、イソチアゾール、チアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チアゾリジン又はフタルイミド、ベンズイミダゾール基である。任意に、ヘテロサイクル基は、ハロゲン原子又はアルキル、−CN、−CF、−N、−NO、−COOR、−C(O)NR、−O−C(O)NR、−NR、−OR、−SR基から独立に選ばれる置換基のいずれかによって1回又は数回置換されてよく、R及びRは上記に規定されるとおりである。
【0057】
用語「ハロゲン」は、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素原子を指し、好ましくはフッ素原子である。
【0058】
表現「スペーサーアーム」は飽和であるか飽和でない、任意に置換されそして少なくとも1個のヘテロ原子を含み、2〜20個の炭素原子を含む炭化水素鎖を指す。特に、上記のスペーサーアームは下記のK1、K2、K3又はK4基から選ばれ、ここでRは上記に規定されるとおりである。
【0059】
【化5】

【0060】
用語「処置」は阻止、治癒又は緩和的処置ならびに患者の管理(苦痛を緩和し、余命を延ばし、病気の進行を遅延させる)などを含む。処置は、また、他の要素又は処置、たとえば、本明細書中に特定される病態又は外傷を処置するための他の活性成分と組み合わせて行われてよい。
【0061】
用語「細胞保護」は、細胞機能の損失又は細胞死を伴うもしくは伴わない所望されない細胞活性をもたらす細胞変性現象から細胞を保護し、及び/又は、細胞死をもたらす又はもたらさない細胞機能不全から細胞を保護し、及び/又は、これらの細胞死をもたらす又はもたらさない細胞機能不全を引き起こす細胞変性疾患又は障害から細胞を保護するために、細胞どうしの相互作用又は細胞と他の組織との相互作用を維持するための薬剤、たとえば、天然もしくは非天然の化合物の能力を意味する。
【0062】
用語「神経保護」又は「心保護」又は「肝保護」は上記薬剤の同一の特性を指すが、神経系の細胞に特に関し(神経保護)、心臓系の細胞に特に関し(心保護)、又は、肝臓系の細胞に関する(肝保護)。それゆえ、細胞保護又は神経保護又は心保護化合物は上記の特性を有する化合物であると理解される。
【0063】
式(I)の特に好ましい化合物は下記のものである。
置換基Rは水素原子、フッ素原子、C〜Cアルキル基、任意にC〜Cアルキル基及びフェニル基で、任意に置換されていてよいものから選ばれることができる。
置換基Rは−CH基及び−CH−OH基から選ばれることができ、さらにより好ましくは、置換基Rは−CH基であることができる。
【0064】
本発明の別の態様によると、好ましい置換基Rは下記式(A)
−CH−Q−R(A)
に対応する基であることができる。上式中、Qは酸素原子であり、Rは下記式(C)に対応する基であることができる。
【0065】
【化6】

【0066】
本発明による他の好ましい化合物は置換基Rが下記式(A)
−CH−Q−R(A)
に対応する基であることができる。上式中、QはNRであることができ、Rは上記のとおりであり、Rはアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクルから選ばれる基であることができ、特に下記式(D)に対応する基であることができる。
【0067】
【化7】

【0068】
がRとともに、R及びRが結合している炭素原子の間にさらなるC−C結合を形成する化合物も好ましい。
【0069】
同様に、R11及びRがそれらが結合している炭素原子の間にさらなるC−C結合を形成する化合物も好ましい化合物である。
【0070】
本発明によると、特に好ましい置換基R13は下記のG及びG基から選ばれる。
【化8】

【0071】
本発明による他の好ましい化合物はR13が下記式(E)
14−X−R15(E)
に対応する基である化合物である。
【0072】
上式中、R14は下記のG
【化9】

【0073】
であることができ、Xは−NH又は−NCHであることができ、
(i)R15はアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクル基から選ばれる基であることができ、特に、下記式(D)
【0074】
【化10】

【0075】
に対応する基であることができ、又は、
(ii)R15は−C(O)−C〜Cアルキル、−C(O)−C〜Cシクロアルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロアリール、−C(O)−ヘテロサイクル基から選ばれる基であることができ、特に下記式(C)に対応する基であることができる。
【0076】
【化11】

【0077】
特に有利には、本発明による好ましい化合物は、
3−オキシイミノ−4−フルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−6β−フルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2α−フルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンズオキサジアゾール−4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−19−ヒドロキシ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2−メチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−4−メトキシ−コレスト−4−エン、ならびに、
存在する場合にはそのSYN及びANTI異性体、
存在する場合にはその光学異性体(エナンチオマー、ジアステレオ異性体)、
医薬上許容される酸又は塩基とのその付加塩、
その水和物又は溶媒和物、
そのプロドラッグである。
【0078】
医薬上許容される酸との付加塩は、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸又はアルカンスルホン酸、たとえば、メタンもしくはエタンスルホン酸、アリールスルホン酸、たとえば、ベンゼンもしくはパラトルエンスルホン酸、又は、カルボン酸とともに形成される塩であることができる。
【0079】
本発明の特定の好ましい化合物は1個又は複数のフッ素原子を有する。たとえば、4−位にフッ素原子を有する3−オキシイミノ−4−フルオロ−コレスト−4−エン(式I−1)は特に好ましい。
【0080】
【化12】

【0081】
驚くべきことに、この化合物中にこのようなフッ素原子を導入することにより、薬理特性を変性することができた。単一のANTI異性体の形態で得られるこのフッ素化化合物(式I−1)は経口経路で投与されるときに、改良された暴露を示す。
【0082】
本発明によると、3−オキシイミノ−6−フルオロ−コレスト−4−エン(式I−2)及び3−オキシイミノ−2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エン(式I−3)は好ましい化合物である。
【0083】
【化13】

【0084】
本明細書中において、一般用語「ハロゲン」により示されることができる原子は天然又は合成の放射性同位体であってもよく、たとえば、フッ素の場合には、フッ素18(18F)であってもよいことに注意すべきである。式(I)の放射ラベル化化合物、特に、同位体18Fでラベル化された化合物は医療画像形成、特に、陽電子放出断層撮影(PET)に非常に有用であり、PETは、たとえば、腫瘍学、神経学及び心臓病学の分野における病気の診断のために開発された生体内画像形成技術である。同様に、臭素又はヨウ素の場合には、これらはそれぞれ放射ラベル化同位体である臭素−75(75Br)及びヨウ素−124(124I)により表しうると述べることができる。
【0085】
一般用語「ハロゲン」は、また、本明細書によると、天然又は合成の非放射活性同位体、たとえば、非放射活性同位体フッ素−19(19F)も網羅することができ、それはバイオメディカル研究及び、特に、認知神経科学において有用であり、また、核磁気共鳴画像形成技術(MRI)に特に有用である。
【0086】
本発明の主題である化合物は非常に有用な薬理学的特性を有する。それらの化合物は顕著な細胞保護特性、特に、神経細胞保護特性、さらに特に、相対運動神経細胞保護特性、及び、心保護及び肝保護特性が与えられている。
【0087】
これらの特性は実施例の部分で以下に例示される。その特性は上記の化合物ならびにそのエステル及び/又は医薬上許容される酸とのその付加塩の細胞保護薬、特に神経細胞保護薬及び/又は心保護薬及び/又は肝保護薬としての使用を正当化する。
【0088】
非常に特に、本発明による化合物は相対運動神経細胞、中枢神経系、運動神経及び末梢神経の神経細胞に顕著な活性を示す。
【0089】
このように、本発明の主題は、また、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式(I)の化合物、ならびに、そのエステル、及び/又は、医薬上許容される酸とのその付加塩の医薬としての使用である。
【0090】
それゆえ、本発明の主題は、また、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式(I)の化合物、ならびに、そのエステル、及び/又は、医薬上許容される酸とのその付加塩のいずれかの細胞保護薬の調製のための使用である。
【0091】
本発明に係る化合物は、その細胞保護特性のために、ネクローシス、及び/又は、病理学的アポトーシス、及び/又は、ネクロトーシスの処置又は阻止のための医薬(抗ネクローシス薬及び/又は抗アポトーシス薬及び/又は抗ネクロトーシス薬)を調製するために使用でき、又は、下記の状態の処置又は阻止に使用できる。
【0092】
骨、関節、結合組織及び軟骨組織の病気、たとえば、骨粗しょう症、骨髄炎、関節炎(変形性関節症、関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む)、無腐性壊死、進行性骨化線維増殖症、くる病、クッシング症候群;
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、ミオパシー及び筋無力症などの筋ジストロフィーなどの筋疾患;
皮膚炎、湿疹、乾癬、老化、あるいは、また、瘢痕変化などの皮膚疾患;
心虚血及び/又は血管虚血、心筋梗塞、虚血性心疾患、慢性又は急性心不全、不整脈、心房細動、心室細動、発作性頻脈、心不全、無酸素、低酸素症、抗がん剤を用いた治療法の副作用などの心血管疾患;
アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、末梢血管疾患、大脳血管障害、動脈瘤などの循環器系疾患;
貧血、血管アミロイド症、出血、鎌状赤血球貧血、赤血球断片化症候群、好中球減少症、白血球減少症、髄質形成不全、汎血球減少症、血小板減少症、血友病などの血液及び血管疾患;
肺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、たとえば、慢性気管支炎、肺気腫を含む肺疾患;
潰瘍などの消化管疾患;
ウイルス性肝炎及び肝硬変、毒素又は薬物により引き起こされる肝疾患、肝硬変を引き起こしうる状態、たとえば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ウィルソン病、原始性硬化性胆管炎又は原始性胆汁性肝硬変などを含む、肝疾患;
急性又は慢性膵炎などの膵臓疾患;
真性糖尿病及び尿崩症、甲状腺炎などの代謝性疾患;
急性腎疾患又は糸球体腎炎などの腎臓疾患;
敗血症などのウイルス及び細菌感染症;
化学薬品、毒素又は薬物による重篤な中毒;
後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する変性状態;
早老症などの老化に関連する障害;
クローン病、関節リュウマチなどの炎症性疾患;
エリテマトーデスなどの自己免疫疾患;
歯周病などの組織の崩壊を引き起こすような歯科障害;
糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性症、網膜変性症、網膜色素変性症、網膜円孔又は網膜裂孔、網膜剥離、網膜虚血、外傷に関連する急性網膜症、炎症性変性症、術後合併症、薬剤誘発性網膜症、白内障などの眼科疾患又は障害;
耳硬化症及び抗生剤誘発性難聴などの聴覚伝導路の疾患;
フリードリヒ失調症、構造的ミトコンドリア異常による先天性筋ジストロフィー、特定のミオパシー(MELAS症候群、MERFF症候群、ピアソン症候群)、MIDD症候群(母性遺伝糖尿病及び難聴)、ウルフラム症候群、ジストニアなどのミトコンドリアに関連する疾患(ミトコンドリア病)。
【0093】
非常に特に、本発明に係る医薬はその神経保護特性のために、神経変性状態、たとえば、ハンチントン病、慢性神経変性状態、有利には、慢性脱髄性疾患、遺伝性又は弧発性の老化に関連する神経細胞病変、末梢神経の、遺伝性であるか又は病変により生じる神経障害、糖尿病性であるか又は、癌の処置、脳、末梢神経又は脊髄の外傷、脳又は脊髄の虚血、てんかんにより生じる神経障害、視覚神経細胞の遺伝性であるか、病変により生じるか、又は老化に関連している変性、聴覚神経細胞の遺伝性であるか、外傷性であるか、又は老化に関連している変性、葉性萎縮及び血管性認知症、特に、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、及び、脊髄又は末梢運動神経の外傷により生じる病態の処置又は阻止において使用される。
【0094】
それらの化合物はその神経保護特性のために、上記のとおり、相対運動神経細胞、特に、脊髄性筋萎縮症の処置、特に、筋萎縮性側索硬化症又は小児脊髄性筋萎縮症の処置、及び、脊髄又は末梢運動神経の外傷の処置に使用される。
【0095】
一般に、化合物の一日の用量は治療効果を得るための最少量である。この用量は上記の異なる因子に依存するであろう。3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む上記の化合物の用量は、一般に、ヒトに対しては、1日あたり、0.001〜100mg/kgで含まれることができる。
【0096】
必要ならば、1日の用量は1日あたりに2、3、4、5、6回又はそれ以上の投与回数で又は1日の間に適切な間隔の複数副投与によって投与されうる。
【0097】
選ばれる量は多くの因子、特に、投与経路、投与時間、投与時刻、化合物の排出速度、その化合物と組み合わせて使用される異なる製品、患者の年齢、体重及び身体的状態、ならびに、医療歴及びあらゆる他の既知の医療情報に依存するであろう。
【0098】
担当医師の処方箋は一般に使用されている量よりも低い用量で開始し、その後、これらの用量を累進的に増加させ、可能な副作用の出現をより良好に制御するであろう。
【0099】
本発明の主題は、また、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む少なくとも1種の式(I)の化合物、又は、そのエステル、及び/又は、医薬上許容される酸とのその付加塩のいずれかを活性成分として含む、医薬組成物である。
【0100】
これらの組成物中で、上記の活性生物は有利には生理学的に有効な用量で存在し、上記の組成物は特に少なくとも1種の上記の成分を有効な神経保護用量で含むことができる。
【0101】
医薬として、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式(I)に対応する化合物、ならびに、そのエステル及び/又は医薬上許容される酸とのその付加塩は消化性経路又は非経口経路が意図された医薬組成物中に取り込まれることができる。
【0102】
本発明に係る医薬組成物は、また、特に、細胞、特に上記の心臓細胞及び/又は運動神経細胞の変性又は死に関連する病態又は外傷に苦しんでいる患者の処置の際に、少なくとも1種の他の治療活性成分を、同時の使用もしくは別々の使用又は長時間にわたる使用のために含むこともできる。
【0103】
本発明に係る医薬組成物又は医薬は有利に1種又は複数の不活性な、すなわち、医薬上不活性かつ無毒の賦形剤又はビヒクルを含む。たとえば、医薬使用に適合しそして当業者に知られている塩類溶液、生理学的溶液、等張液、緩衝溶液などを挙げることができる。組成物は分散剤、可溶化剤、安定剤、防腐剤などから選ばれる1種又は複数の薬剤又はビヒクルを含むことができる。(液体及び/又は注入可能な及び/又は固体)製剤中に使用されうる薬剤又はビヒクルは特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油及び動物油、アラビアゴムなどである。組成物は注入可能な懸濁液、ゲル、オイル、タブレット、坐薬、粉末、ゼラチンカプセル、カプセルなどの形態に、任意に持続放出性及び/又は徐放性を確保するガレニーク形態又はデバイスを用いて製剤されうる。このタイプの製剤には、セルロース、カーボネート又はデンプンなどの薬剤を有利に使用する。
【0104】
投与は当業者により知られるいかなる方法で行ってもよく、好ましくは、経口経路又は注入、通常には、腹腔内、脳内、髄腔内、静脈内、動脈内又は筋肉内の経路で行われることができる。経口経路の投与は好ましい。長期間の処置に関しては、好ましい投与経路は舌下、経口又は経皮経路である。
【0105】
注入については、化合物は、一般に液体懸濁液の形態でパッケージされ、それは、たとえば、シリンジ又は点滴により注入されうる。注入される流速及び/又は用量又は投与される用量は、一般に、患者、病態、投与法などによって当業者が調節しうることが理解される。任意に、他の活性成分又は医薬上許容されるビヒクル(緩衝剤、塩類溶液、等張液、安定剤の存在下の溶液)との組み合わせで、繰り返し投与を行ってよいことが理解される。
【0106】
本発明は哺乳動物、特に、ヒトに使用できる。
本発明の主題は、また、上記の組成物の調製方法であり、本質的に既知の方法により、活性成分を、許容される、特に医薬上許容される賦形剤と混合することを特徴とする。
本発明の特定の主題は、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、式(I)の化合物の、細胞、特に、心臓細胞及び/又は神経細胞の自然又は偶発の変性又は死に関連する病態又は外傷の処置又は阻止のための医薬の調製における使用である。
【0107】
本発明のより特定の主題は、また、上記の式(I)の化合物、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンの、ネクローシス及び/又は病理学的アポトーシス及び/又はネクロトーシスを処置し又は阻止するための医薬(抗ネクローシス及び/又は抗アポトーシス及び/又は抗ネクロトーシス薬)の調製、又は、下記のような状態を処置し又は阻止するための医薬の調製における使用である。
【0108】
骨、関節、結合組織及び軟骨組織の病気、たとえば、骨粗しょう症、骨髄炎、関節炎(変形性関節症、関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む)、無腐性壊死、進行性骨化線維増殖症、くる病、クッシング症候群;
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、ミオパシー及び筋無力症などの筋ジストロフィーなどの筋疾患;
皮膚炎、湿疹、乾癬、老化、あるいは、また、瘢痕変化などの皮膚疾患;
心虚血及び/又は血管虚血、心筋梗塞、虚血性心疾患、慢性又は急性心不全、不整脈、心房細動、心室細動、発作性頻脈、心不全、無酸素、低酸素症、抗がん剤を用いた治療法の副作用などの心血管疾患;
アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、末梢血管疾患、大脳血管障害、動脈瘤などの循環器系疾患;
貧血、血管アミロイド症、出血、鎌状赤血球貧血、赤血球断片化症候群、好中球減少症、白血球減少症、髄質形成不全、汎血球減少症、血小板減少症、血友病などの血液及び血管疾患;
肺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、たとえば、慢性気管支炎、肺気腫を含む肺疾患;
潰瘍などの消化管疾患;
ウイルス性肝炎及び肝硬変、毒素又は薬剤により引き起こされる肝疾患、肝硬変を引き起こしうる状態、たとえば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ウィルソン病、原始性硬化性胆管炎又は原始性胆汁性肝硬変などを含む、肝疾患;
急性又は慢性膵炎などの膵臓疾患;
真性糖尿病及び尿崩症、甲状腺炎などの代謝性疾患;
急性腎疾患又は糸球体腎炎などの腎臓疾患;
敗血症などのウイルス及び細菌感染症;
化学薬品、毒素又は薬物による重篤な中毒;
後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する変性状態;
早老症などの老化に関連する障害;
クローン病、関節リュウマチなどの炎症性疾患;
エリテマトーデスなどの自己免疫疾患;
歯周病などの組織の崩壊を引き起こすような歯科障害;
糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性症、網膜変性症、網膜色素変性症、網膜円孔又は網膜裂孔、網膜剥離、網膜虚血、外傷に関連する急性網膜症、炎症性変性症、術後合併症、薬剤誘発性網膜症、白内障などの眼科疾患又は障害;
耳硬化症及び抗生剤誘発性難聴などの聴覚伝導路の疾患;
フリードリヒ失調症、構造的ミトコンドリア異常による先天性筋ジストロフィー、特定のミオパシー(MELAS症候群、MERFF症候群、ピアソン症候群)、MIDD症候群(母性遺伝糖尿病及び難聴)、ウルフラム症候群、ジストニアなどのミトコンドリアに関連する疾患(ミトコンドリア病)、
【0109】
神経変性疾患、たとえば、ハンチントン病、慢性神経変性疾患、有利には、慢性脱髄性疾患、遺伝性又は弧発性の、特に、多発性硬化症及びロイコジストロフィー、老化に関連する神経細胞病変、遺伝性であるか又は病変により生じる末梢神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、糖尿病性神経障害又は癌の処置、てんかん、脳、末梢神経又は脊髄の外傷、脳又は脊髄の虚血により誘導される神経障害、視覚神経細胞の遺伝性であるか、病変により生じるか又は老化に関連している変性又は視神経の変性、聴覚神経の遺伝性であるか、外傷性であるか又は老化に関連している変性、葉性萎縮及び血管性認知症、運動神経細胞の変性に関連している疾患及び外傷、より特定的には、脊髄性筋萎縮症、特に、小児脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症及び脊髄又は末梢運動神経の外傷。
【0110】
本発明の非常に特定の主題は3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式(I)の化合物の脊髄性筋萎縮症、特に、小児脊髄性筋萎縮症、及び、筋萎縮性側索硬化症の処置のための医薬の製造における使用である。
【0111】
これらの医薬の使用は、通常、細胞、特に、心臓細胞及び/又は神経細胞の生存率を高め又は軸索成長を促進するための治療有効量の、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式(I)の化合物を、患者、特に、哺乳動物、非常に特定的にはヒトに投与することを含む。
【0112】
本発明の主題は、同様に、上記の特に神経変性疾患、特に、神経細胞の変性又は死に関連した病態又は外傷を、このような病態又は外傷に苦しんでいる哺乳動物(一般に、患者)において処置するための方法であり、神経細胞の生存率を高め、又は、軸索成長を促進するための治療有効量の、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式Iの化合物をこれらの哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0113】
本発明のさらなる主題は上記の状態の1つ、特に、運動神経細胞の変性又は死に関連した病態又は外傷を、このような病態又は外傷に苦しんでいる哺乳動物(一般に患者)において処置する方法であり、神経細胞の生存率を高めるための治療有効量の、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む式Iの化合物をこれらの哺乳動物に投与することを含む方法である。より特定的には、運動神経細胞の変性又は死に関連している病態は筋萎縮性側索硬化症又は小児脊髄性筋萎縮症である。別の形態によると、本発明は、また、アビジン(ストレプトアビジン又はニュートラアビジン)のビオチンに対する非常に強い親和性(Ka約10M)を利用した蛍光顕微鏡技術などの当業者に知られた検知及び/又は視覚化技術によって直接的又は間接的に検知し及び/又は視覚化させることができるラベル化基を含む化合物にも関する。
【0114】
用語「ラベル化」とは、一般に、放射性同位体又は非同位体など、たとえば、フルオロフォア剤、着色剤、ハプテン、ビオチンを指す。
【0115】
用語「フロオロフォア」は、一般に、蛍光性物質の特徴、すなわち、エネルギー源により励起されるときに光エネルギーを吸収し(励起光)、そして蛍光の形態で急速に戻る(発光)という特徴を指す。フルオロフォアのこの特徴により、たとえば、研究する細胞の画像形成を行うための、生物学的系(メンブレン、細胞、神経細胞、ミトコンドリアなど)における蛍光ラベルとしてのこのような物質の使用を考えることができる。
【0116】
ビオチンは、植物、細菌及び特定の真菌類により合成される、ビタミンHとも呼ばれる補酵素である。ビオチンは、ビオチンに対して非常に強い親和性(Ka約10M)を有するアビジン(ストレプトアビジン又はニュートラアビジン)により検知される。ビオチンの構造は下記のとおりである。
【0117】
【化14】

【0118】
ビオチンに対するアビジンの非常に強い親和性を利用するアプローチの1つを用い、生物学的活性物質中にビオチン基を導入することにより、上記の活性物質と相互作用することができるタンパク質標的又は他の非タンパク質化合物を分離し及び/又は特定することが可能になることが当該技術分野において知られている。このように分離されたタンパク質標的又は他の非タンパク質化合物は、たとえば、マススペクトルにより特性化される。当業者に知られた使用の中で、以下のものを挙げることができる:ビオチン化化合物を用いた診断試験、ビオチン化抗生物質を用いたELISA試験(酵素結合免疫吸着検査法(Enzyme-Linked lmmunosorbent Assay))、ビオチン化した化合物を装填した固定化アビジンカラムの使用に基づく親和性クロマトグラフィー、プロテオーム解析技術(2D電子泳動及びマススペクトル)など。
【0119】
本発明に係るラベル化基はビオチン又はフルオロフォア基、たとえば、7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−ルー4−イル(式D)、BODIPY(登録商標)フルオロフォア、アントラセン及びフルオレセインから選ばれることができる。好ましくは、本発明に係るラベル化基はビオチン及び7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イルフルフォア基(式D)から選ばれる。
【0120】
【化15】

【0121】
ビオチン又はフルオロフォアによりラベル化された本発明に係る化合物は、
このラベル化された化合物と接触する細胞を視覚化し及び/又は検知する、
生体、ヒト又は動物中でのその分布、及び、細胞部分(膜、細胞、神経細胞、ミトコンドリア、核、小胞体、ゴルジ、リソソーム、エンドソーム及び他の細胞小器官)中でのその位置を研究する、
上記のラベル化された化合物と相互作用することができるタンパク質又は他の非タンパク質化合物の検知方法を実施する、
その分子標的を特定する、
分子の観点での分子−タンパク質相互作用を研究する、
コレスト−4−エン−3−オンオキシム又はその誘導体に特異的なモノクロナール抗体を検知する、
特に対象の標的により親和性が高いリガンドの最適化を可能にする結合試験を開発しそして行う、
アッセイ方法を開発する、
新しいリガンドスクリーニングツールを開発する、
のに非常に有用であるプローブである。
【0122】
このようなラベル化基を導入することにより、本発明に係るラベル化化合物の生物学的活性の損失を生じず、そして、プローブとしての、特にトレーサー又はラベル化剤としてのこれらのラベル化化合物の使用が可能になる。
【0123】
結果として、本発明の別の目的はNBD基及びビオチンから選ばれるラベル化基を含む式(I)の化合物を提供することである。
【0124】
本発明のさらなる主題は、式Iの化合物のプローブとしての、特にトレーサー又はラベル化剤としての使用であって、ここで、
は下記式(A)
−CH−Q−R(A)に対応する基であることができ、
ここで、Qは酸素原子又はNR基であることができ、Rは上記に規定されるとおりであり、そして
は式(C)又は(D)に対応する基であることができ、
【0125】
【化16】

【0126】
又は、R13は下記式(E)に対応する基であることができ、
14−X−R15(E)
14は下記G式であることができ、
【0127】
【化17】

【0128】
Xは酸素原子又はNRであることができ、Rは上記に規定されるとおりであり、特にNH又はNCHであり、そして
15は下記式(C)又は(D)に対応する基であることができる。
【0129】
【化18】

【0130】
本発明に係るトレーサー又はラベル化剤として特に好ましい化合物は下記式(III)、(IV)、(V)
【0131】
【化19】

【0132】
により示され、式(III)、(IV)又は(V)において、置換基Rは上記に規定されるとおりであることができる。好ましくは、置換基Rは水素原子である。
【0133】
本発明に係る式(I)の化合物は当業者によく知られている様々な合成方法によって、特にケトンオキシム化反応を用いて得ることができる。下記のダイアグラムは式(I)の化合物の調製に使用される方法を例示している。
【0134】
【化20】

【0135】
例として、式(I)の化合物を得るための特に適切な方法は(i)R〜R13基が上記のとおりである式(II)の化合物を、(ii)ヒドロキシルアミンヒドロクロリドなどのヒドロキシルアミンハロゲン化物と反応させることからなる。
【0136】
この方法はピリジンなどの適切な溶剤中で有利に行うことができる。
式(I)の化合物は当業者によく知られている様々な方法により反応媒体から分離されうる。場合により、式(I)の化合物は医薬上許容される塩のいずれかに転化されてもよい。式(I)の化合物を得るための出発製品として使用される式(II)の化合物は市販されているか又は当業者に知られた方法により調製される。
【0137】
下記の実施例は本発明を例示するが、それを限定するものでない。実施例及び調製に記載される化合物の構造は通常の技術(核磁気共鳴、質量分析など)により決定した。
【0138】
略語
PE:石油エーテル
EA:酢酸エチル
s:シングレット
d:ダブレット
t:トリプレット
sept:セプタプレット
【実施例】
【0139】
例1−式(II)の化合物の調製
例1a−4−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
4−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンを下記の文献:Toyota, A. らChemical & Pharmaceutical Bulletin (1994), 42 (3), 459-61;及びNakanishi, S.ら: Chemistry & Industry (英国、ロンドン) (1960), 1136-7に記載される方法により調製した。
【0140】
例1b−6β−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
6β−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンを下記の文献:Thomas, M. G, らJournal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry (1999), (21), 3191-3198; 20 Poss, A. JらTetrahedron Letters (1995), 36 (27), 4721-4; Edmunds, J.JらJournal of the Chemical Society, Chemical Communications (1989), (13), 881-3;Salmond, W. GらGer. Offen. (1983), DE 3225747; Nakanishi, SらJournal of the American Chemical Society (1959), 81 5259-60に記載される方法のいずれかにより調製した。
【0141】
例1c−2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オン及び2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
懸濁液中の10g(26ミリモル)のコレスト−4−エン−3−オンをフラスコ中の260mLのメタノールに添加し、次いで、アルミナ上50質量%で17.4g(27.2ミリモル)の1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)を添加する。この媒体を16時間還流下に攪拌し、そして7.7gのフッ素化試薬を添加し、還流下に5時間及び周囲温度で4日間攪拌を続ける。この反応媒体を、その後、真空下に濃縮し、残留物をジクロロメタン中に取り込ませる。ろ過後、得られた溶液を真空下に濃縮し、そして残留物を、アセトニトリル中の10%塩酸500mL中に取り込ませる。この懸濁液を周囲温度で2時間攪拌し、そしてろ過する。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ろ液を酢酸エチルで抽出し、そして有機相を真空下に濃縮する。
【0142】
シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液100%PEから80/20PE/EAのPE/EAの勾配)による沈殿物の精製、その後、半分取HPLCにより、17.5mgの2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オン及び23.1mgの2,2−ジフルオロ−4−コレステン−3−オンを分離することができる。
【0143】
ろ液から得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液100%PEから80/20PE/EAのPE/EA勾配)により精製し、その後、半分取HPLCにより、さらに82mgの2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オンを分離することができる。
【0144】
2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オン
1H NMR (CDCl3) ; δ (ppm) 6.11 (d, 1H, 4-CH), 5.21 (dddd, 1H, 2-CH), 4,86 (ddd, 1H, 6-CH), 0.71 (s, 3H, 18-CH3)
LC/UV/MS (254 nm) : TR =5.82 min, m/z=421 [M+H]+
2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オン
1H NMR (CDCl3): δ(ppm) 6,26 (d, 1H, 4-CH), 0.73 (s, 3H, 18-CH3)
NMR (CDCl3):δ(ppm, 非検量) -86.33 (ddd, 2-CFa), -101.04 (d, 2-CFb)
LC/UV/MS (254 nm):TR = 6.48 min, m/z= 421 [M+H]+
【0145】
例1d−2α−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
懸濁液中の5g(13ミリモル)のコレスト−4−エン−3−オンをフラスコ中の130mLのメタノールに添加し、次いで、アルミナ上50質量%で8.7g(13.6ミリモル)の1−フルオロ−4−ヒドロキシ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)を添加する。この媒体を3時間還流下に攪拌し、そして4.3gのフッ素化試薬を添加し、還流下に3時間及び周囲温度で一晩攪拌を続ける。この反応媒体を、その後、真空下に濃縮し、残留物をジクロロメタン中に取り込ませる。ろ過後、得られた溶液を真空下に濃縮し、そして残留物を、アセトニトリル中の10%塩酸250mL中に取り込ませる。この懸濁液を周囲温度で1時間攪拌し、そしてろ過する。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ろ液を酢酸エチルで抽出し、そして有機相を真空下に濃縮する。
【0146】
得られた残留物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液100%PEから95/5PE/EAのPE/EA勾配)により精製し、その後、半分取HPLCにより、30mgの2α−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンを分離する。
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 6.27 min (syn/anti), m/z = 403 [M+H]+
【0147】
例1e−25−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
100mg(247ミリモル)の25−フルオロ−5−コレステン−3β−オール及び15mLのアセトンをフラスコに0℃で導入し、その後、160μLのジョーンズ試薬を添加する。この媒体を0℃で9分間攪拌し、その後、エタノールを添加することで反応を停止する。30℃未満の温度で真空下に濃縮した後に、残留物を10mLのエタノール中に取り込み、そして100μLの1N塩酸溶液を添加する。この媒体を50〜60℃で15分間攪拌し、その後、真空下に濃縮する。得られた残留物を水中に取り込ませ、そして酢酸エチルで抽出し、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、そして真空下に濃縮する。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル、その後、石油エーテル/酢酸エチル95/5)による精製の後に、69mgのエノンを収率69%で得る。
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 5.41 min, m/z=403 [M+H]+
【0148】
例1f−25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾ−ル−4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−5−エン−3−オン及び25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エン−3−オンの合成
工程1:tert-ブチルジメチルシリル−25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレステロールの合成
40mLのメタノール中の2.83g(5.65ミリモル)のtert-ブチルジメチルシリル−25−ケト−27−ノルコレステロール(1)、3.62g(53.67ミリモル)のN−メチルアミンヒドロクロリド及び355mg(5.65ミリモル)のナトリウムシアノボロヒドリドをフラスコ中に導入する。この溶液を周囲温度で一晩攪拌し、その後、媒体を真空下に濃縮する。残留物を2M炭酸ナトリウム水溶液中に取り込ませ、そしてジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過しそして真空下に濃縮する。得られた生成物を精製なしにそのまま使用する。
【0149】
LC/DEDL/MS: TR = 10.42 min, m/z= 516 [M+H]+
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 5.29-5.33 (マルチプレット, 1H, 6-CH), 3.47 (m, 1H, 3-CH), 2.10-2.55 (マルチプレット, 4H, 25-CH及びNCH3), 0.67 (s, 3H, 18-CH3), 0.05 (s, 6H, Si (CH3)2)
(1) Ferraboschi, Pら Tetrahednon Asymmetry (1999), 10 (13), 2497-2500;
Ferraboschi, PらTetrahedron: Asymmetry(1998), 9 (13), 2193-2196。Okamoto, Mら日本国特許公開公報(1997), 15 pp, CODEN: JKXXAF JP 09249691 A 19970922; Satsangi, R. K ら Analyst (ケンブリッジ、英国) (1992), 117 (6) 953-7。
【0150】
工程2:25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレステロールの合成
12mLのジクロロメタン中の、工程1で得られた2g(3.87ミリモル)のtert-ブチルジメチルシリル−25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレステロールをフラスコに導入する。ジオキサン中の4N塩化水素溶液4mLを滴下して加える。この反応媒体を周囲温度で1時間攪拌し、その後、フリット上でろ過する。ソーダ溶液を添加することによりろ液を塩基化し、ジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、そして真空下に濃縮する。得られた生成物を精製なしにそのまま使用する。
LC/DEDL/MS: TR = 1.85及び2.08 min, m/z = 402 [M+H]+
1H NMR (CDCl3): δ (ppm) 5.29-5.40 (マルチプレット, 1H, 6-CH), 3.50 (m, 1H, 3-CH), 2.10-2.65 (マルチプレット, 4H, 25-CH及びNCH3), 0.67 (s, 3H, 18-CH3)
【0151】
工程3:25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレスト−4−エン−3−オンの合成
工程1で得られた870mg(2.16ミリモル)の25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレステロール、15mLのアセトン及び6mLのジクロロメタンをフラスコに0℃で導入し、その後、1.1mLのジョーンズ試薬を添加する。この媒体を0℃で20分間攪拌し、その後、2mLのエタノールを添加することにより反応を停止する。30℃未満の温度で真空下での濃縮の後、残留物を15mLのエタノールに取り込ませ、そして725μLの1N塩酸溶液を添加する。媒体を50℃で20分間攪拌し、その後、真空下に濃縮する。得られる残留物を水中に吸収させ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下に濃縮する。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール、勾配95/5から8/2)により精製した後に、106mgのエノンを収率12%で得る。
LC/UVMS (254nm) : TR = 7.35 min, m/z= 400 [M+H]+
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 5.72 (s, 1H, 4-CH), 2.86 (m, 1H, 25-CH), 2.10-2.60(マルチプレット, 3H, NCH3), 0.70 (s, 3H, 18-CH3)。
【0152】
工程4:25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−5−エン−3−オンの合成
8mLのジクロロメタン中の、工程3で得られた106mg(0.265ミリモル)の25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレスト−4−エン−3−オン、58.3mg(0.292ミリモル)の4−クロロ−7−ニトロベンゾフラザン及び74μLのトリエチルアミンをフラスコに導入する。この溶液を周囲温度で一晩攪拌し、光から保護し、その後、反応媒体をジクロロメタン中で希釈する。得られた溶液を1N塩酸溶液で洗浄し(3回)、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、そして真空下で濃縮する。得られた残留物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/酢酸エチル95/5)により精製し、その後、逆相フラッシュクロマトグラフィー(溶離液アセトニトリル)により精製する。27mgの期待の生成物を褐色固形分の形態で得る(収率18%)。
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 4.75 min, m/z= 563 [M+H]+
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 8.44 (d, 1H, NBD-CH), 6.16 (d, 1H, NBD-CH), 5.71 (s, 1H, 4-CH), 2.93-3.25 (マルチプレット, 4H, 25-CH及びNCH3), 0.66 (d, 3H, 18-CH3)
【0153】
工程4’: 25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エン−3−オンの合成
2mLのN,N−ジメチルホルムアミド及び1mLのジクロロメタン中の、工程3で得られた82mg(0.205ミリモル)の25−(N−メチルアミノ)−27−ノルコレスト−4−エン−3−オン、43mg(0.226ミリモル)の1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボイミド、33mg(0.267ミリモル)のN,N−ジメチルアミノピリジン及び55mg(0.226ミリモル)のD(+)−ビオチンをフラスコに導入する。反応媒体を周囲温度で一晩攪拌し、その後、水中に浸漬し、そしてジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、そして真空下で濃縮する。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(勾配100%ジクロロメタンから95/5ジクロロメタン/メタノール)で精製した後に、90mgのアミドを収率70%で得る。
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 9.14 min, m/z= 626 [M+H]+
【0154】
例1g−19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
3.5mLのN,N−ジメチルホルムアミド及び2mLのジクロロメタン中の112mg(0.582ミリモル)の1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、84mg(0.688ミリモル)のN,N−ジメチルアミノピリジン及び142mg(0.582ミリモル)のD(+)ビオチンをフラスコに導入する。この媒体を周囲温度で45分間攪拌し、その後、212mg(0.529ミリモル)の19−ヒドロキシ−コレスト−4−エン−3−オンの2mLのN,N−ジメチルホルムアミド中の溶液を滴下して加える。この媒体を周囲温度で48時間攪拌し、その後、真空下に濃縮する。この残留物を水中に取り込ませ、そして酢酸エチルで3回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、そして真空下に濃縮する。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(勾配100%ジクロロメタンから95/5ジクロロメタン/メタノール)により精製した後に、180mgの19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エン−3−オンエステルを収率54%で得る。
1H NMR (CDCl3):δ (ppm) 5.91 (s, 1H), 4.72 (d, 1H), 4,52 (m, 1H), 4.32 (m, 1H), 4.12 (d, 1H), 3.13 (m, 1H), 2,93 (dd, 1H), 0,70 (s, 3H)
LC/UV/MS(254 nm) : TR = 4.85 min, m/z= 627 [M+H]+
*化合物19−ヒドロキシ−コレスト−4−エン−3−オンは市販されている。
【0155】
例1h−2−メチル−コレスト−4−エン−3−オンの合成
2−メチル−コレスト−4−エン−3−オンを下記の文献:Julia, S.ら Journal of Chemical Society (1964), 8月, 2633-9に記載される方法により調製した。
【0156】
例1i−4−メトキシ−コレスト−4−エン−3−オンの合成
4−メトキシ−コレスト−4−エン−3−オンを下記の文献:Patel, K. M. ら Journal of Organic Chemistry (1975), 40 (10), 1504-5及びEngelfried, 0. らの特許DE 1117112 (1961)に記載される方法により調製した。
【0157】
例2−式(I)の化合物の合成
例2a−一般法A
1当量のケトン及び6当量のヒドロキシルアミンヒドロクロリド(ピリジン中(約10〜20mL/ミリモル))をフラスコに導入する。この溶液を周囲温度で一晩攪拌し、その後、反応媒体を真空下に濃縮する。得られた残留物を水中に取り込み、ジクロロメタン又は酢酸エチルで抽出し、有機相を分離し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥しそして真空下に濃縮する。必要ならば、生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。
【0158】
例2b−3−オキシイミノ−4−フルオロ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−4−フルオロ−コレスト−4−エンを例1aにおいて調製した4−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンから方法Aによって定量的収率で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ(ppm) 3.02 (dd, 2H, 2-CH2), 2.23 (td, 1H, 6-CHa) 0.69 (3H, 18-CH3)
NMR (CDCl3): δ (ppm, 非検量) -137.35 (s, 4-CF)
LC/UV/MS (254 nm) ; TR =6.42 min, M/Z= 418 [M+H]+
【0159】
例2c−3−オキシイミノ−6β−フルオロ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−6β−フルオロ−コレスト−4−エンを例1bにおいて調製した6β−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aによって収率93%で得る。
1H NMR (CDC13) : δ (ppm) 6.75 (d, 0.3H, 4-CH [syn]), 6.07 (d, 0.7H, 4-CH [anti]),5.01 (dt, 0.3H, 6-CH [syn]), 4.97 (dt, 0.7H, 6-CH [anti]), 3.07 (d, 0.7H, 2-CHa [anti]), 0.72 (s,3H, 18-CH3)
NMR (CDCl3); δ (ppm, 非検量) -159.23 (td, 6-CF [anti]), -162.05 (td, 6-CF[syn])
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 5.88及び5.96 min (syn/anti), M/Z = 418 [M+H]+
【0160】
例2d−3−オキシイミノ−2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エンを例1cにおいて調製した2,2−ジフルオロ−4−コレステン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aによって収率89%で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 7.18 (d, 0.3H, 4-CH [syn]), 6.49 (d, 0.7H, 4-CH [anti]), 3.09(ブロードd, 0.7H), 0.71 (s, 3H, 18-CH3)
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 6.06 min, m/z= 436 [M+H]+
【0161】
例2e−3−オキシイミノ−2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エンを例1cにおいて調製した2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aによって収率97%で得る。
1H NMR (CDC13) : δ (ppm) 6.84 (s, 0.35H, 4-CH [syn]), 6.25 (s, 0.65H, 4-CH [anti]), 5.94 (ブロードd, 1H, 2-CH), 5.13 (ブロードd, 1H, 6-CH), 0.70 (s, 3H, 18-CH3)
19F NMR (CDCl3) : δ(ppm, 非検量) -171.52 (td, 2-CF [syn]), -180.75 (td, 2-CF [anti]), -183.56 (d, 6-CF [syn]), -184.02 (d, 6-CF [anti])
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 5.68 min, m/z = 436 [M+H]+
【0162】
例2f−3−オキシイミノ−2α−フルオロ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−2α−フルオロ−コレスト−4−エンを例1dにおいて調製した2α−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aによって収率97%で得る。
1H NMR (CDC13) : δ (ppm) 6.87 (s, 0.3H, 4-CH [syn]), 6.21 (s, 0.7H, 4-CH [anti]), 5.08 (ddd, 1H, 2-CH), 3.08 (ブロードd, 0.7H), 0.69(s, 3H, 18-CH3)
NMR (CDCl3) : δ(ppm, 非検量) -183.12 (ddd, 2-CF [syn]), -183.66 (ddd, 2-CF [anti])
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 5.78及び5.99 min(syn/anti), m/z = 418 [M+H]+
【0163】
例2g−3−オキシイミノ−25−フルオロ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−25−フルオロ−コレスト−4−エンを例1eにおいて調製した25−フルオロ−コレスト−4−エン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aによって収率83%で得る。
1H NMR (CDC13) : δ (ppm) 6.46 (s, 0.4H, 4-CH [syn]), 5.77 (s, 0.6H, 4-CH [anti]), 3.04(d, 0.6H, 2-CHa[anti]), 0.70 (s, 3H, 18-CH3)
NMR (CDCl3) : δ(ppm, 非検量) -137.01 (sept, 25-CF)
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 4.44及び4.84 min(syn/anti), m/z = 418 [M+H]+
【0164】
例2h−3−オキシイミノ−25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾールー4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−4−エンの合成
2mLのピリジン中の、例1fの工程4において調製した25mg(0.044ミリモル)の25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−4−エン−3−オン及び25mg(0.36ミリモル)のヒドロキシルアミンヒドロクロリドをフラスコ中に導入する。この溶液を周囲温度で一晩攪拌し、その後、反応媒体をジクロロメタンで希釈する。得られた溶液を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥しそして真空下で濃縮する。26mgの3−オキシイミノ−25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−4−エンをこのようにしてオレンジ色の固形分の形で得る(収率89%)。
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 3.34, 3.64及び3.95 min, m/z= 578 [M+H]+
1H NMR (CDCl3) : δ(ppm) 8.45 (d, 1H, NBD-CH), 6.45 (s, 0.34H, 4-CH [syn]), 6.16(d, 1H, NBD-CH), 5.80 (s, 0.66H, 4-CH [anti]), 2.94-3.30 (マルチプレット, 4H, 25-CH及びNCH3), 0.64(d, 3H, 18-CH3)
【0165】
例2i−3−オキシイミノ−25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エンの合成
2mLのピリジン中の、例1fの工程4’において調製した65mg(0.104ミリモル)の25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エン−3−オン及び65mg(0.935ミリモル)のヒドロキシルアミンヒドロクロリドをフラスコ中に導入する。この溶液を周囲温度で一晩攪拌し、その後、ピリジンを真空下に濃縮する。残留物を水中に取り込み、そして酢酸エチルで4回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥しそして真空下で濃縮する。66mgの3−オキシイミノ−25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エンをこのようにしてベージュ色の固形分の形で得る(収率98%)。
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 8.56及び8.81 min, m/z = 641 [M+H]+
1H NMR (CDC13) : δ (ppm) 6.46 (s, 0.3H, 4-CH [syn]), 5.77 (s, 0.7H, 4-CH [anti]), 2.68-2.81 (マルチプレット, 4H), 2.85-3.23 (マルチプレット, 3H), 3.82 (m, 0.5H), 4.33 (m, 1H), 4.51 (m, 1H), 4.73(m, 0.5H), 4.90-5.01 (マルチプレット, 1H), 5.35-5.49 (マルチプレット, 1H), 0.68 (ブロード s, 3H, 18-CH3)
【0166】
例2j−3−オキシイミノ−7α−ヒドロキシ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−7α−ヒドロキシ−コレスト−4−エンを7α−ヒドロキシ−コレスト−4−エン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aにより定量的収率で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 6.56 (s, 0.3H), 5.87 (s, 0.7H), 3.85-3.94 (マルチプレット, 1H), 3.92-4.08 (マルチプレット, 1H), 3.05 (dt, 0,7H), 2.56 (ブロード d, 1H), 1.07 (s, 3H), 0.90 (d, 3H), 0.86(dd, 6H), 0.69 (s, 3H)
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 3.19及び3.56 min (syn/anti), m/z= 416 [M+H]+
*7α−ヒドロキシ−4−コレステン−3−オンは市販されている。
【0167】
例2k−3−オキシイミノ−19−ヒドロキシ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−19−ヒドロキシ−コレスト−4−エンを19−ヒドロキシ−コレスト−4−エン−3−オンからsyn/anti混合物の形態で、方法Aにより収率96%で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ(ppm) 6.75 (s, 0.25H), 6.07 (s, 0.75H), 3.69-3.81 (マルチプレット, 1H), 3.92-4.08 (マルチプレット, 1H), 2.96 (ブロード d, 1H), 0.68 (s, 3H)
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 3.81及び4.27 min (syn/anti), m/z= 416 [M+H]+
*19−ヒドロキシ−4−コレステン−3−オンは市販されている。
【0168】
例2l−3−オキシイミノ−19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エンを、例1gにおいて調製した19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エン−3−オンエステルからsys/anti混合物の形態で、方法Aにより収率92%で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 6.76 (s, 0.3H), 6.62 (ブロード s, 1H), 5.93 (s, 0.7H), 4.89(d, 0.7H), 4.73 (d, 0.3H), 4.50 (m, 1H), 4.34 (m, 1H), 4.03 (d, 0.3H), 3.85 (d, 0.7H), 2.15-3.20(マルチプレット, 8H), 0.69 (s, 3H)
LC/UV/MS (254 nm) : TR =4.41 及び4.55 min (syn/anti), m/z= 642 [M+H]+
【0169】
例2m−3−オキシイミノ−2−メチル−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−2−メチル−コレスト−4−エンを、例1hにおいて調製した2−メチル−コレスト−4−エン−3−オンから、方法Aにより定量的収率で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 6.44 (s, 0.7H), 5.78 (s, 0.20H), 0.70 (s, 3H)
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 6.42及び6.74 min (syn/anti), m/z= 414 [M+H]+
【0170】
例2n−3−オキシイミノ−4−メトキシ−コレスト−4−エンの合成
3−オキシイミノ−4−メトキシ−コレスト−4−エンを、例1iにおいて調製した4−−メトキシ−コレスト−4−エン−3−オンから、方法Aにより定量的収率で得る。
1H NMR (CDCl3) : δ (ppm) 3.57 (s, 3H), 3.03 (dd, 2H), 0.69 (s, 3H)
LC/UV/MS (254 nm) : TR = 6.36 min, m/z= 430 [M+H]+
【0171】
薬理学的研究
化合物を下記の手順により試験した。
運動神経細胞の生存率に対する式(I)の化合物の効果
式(I)の化合物の神経保護作用を示すために、出願人はラットの運動神経細胞の栄養欠乏のインビトロモデルに対するその活性を研究した。脊髄の運動神経細胞の培養について、本願出願人の特許出願WO0142784を有用に参照することができる。
【0172】
E14ラット胎仔の脊髄を解体し、腹側領域をトリプシン処理の後に倍散剤により解離する。
【0173】
運動神経細胞を既知の方法により他の脊髄細胞から分離する(Camu ら1993, Purification of spinal motoneurons from chicken and rat embryos by immunopanning. In “Immunoselection Strategies for Neural cell culture”, Neuroprotocols: A companion to Methods in Neurosciences 2, 191-199; Hendersonら 1993, Neutrophins promote motor neuron survival and are present in embryonic limb bud. Nature 363 (6426) :266-70)
【0174】
細胞を密度勾配で遠心分離する。大きい細胞画分(最も密度が低い)は運動神経細胞を多量に含んでいる。この画分の細胞を運動神経細胞上の表面抗原、抗−p75抗体とともにインキュベートする。
【0175】
磁気ビーズに結合した第二の抗体を加え、そして細胞の混合物をマグネット中のカラムに通す(Arce ら 1999 Cardiotrophin-1 requires LIFRbeta to promote survival of mouse motoneurons purified by a novel technique, J, Neurosci Res 55 (1): 119-26)運動神経細胞のみが残る:その純度は約90%である。
【0176】
下記文献により補給された基礎培養基(GIBCO)中のポリオルニチン−ラミニン基質上に運動神経細胞を低密度で培養ウェル中で播く(Raoulら 1999, Programmed cell death of embryonic motoneurons triggered through the Fas death receptor. J Cell Biol .147 (5):1049-62)。
【0177】
負の対照(栄養因子を含まない)、及び、正の対照(BDNF(脳由来神経栄養因子)が1ng/mlで存在する、GDNF(グリア由来神経栄養因子)が1ng/mlで存在する、及びCNTF(繊毛様神経栄養因子)が10ng/mlで存在する、米国の会社PEPROTECH,Inc.及び会社Sigma−Aldrichから販売)を各シリーズに含める。
【0178】
試験される化合物を播種の60分後に添加し、そして培養物を5%COで37℃に3日間維持する。
【0179】
運動神経細胞は神経栄養因子の非存在下に死ぬ自発的傾向がある(Pettmann及びHenderson, 1998, Neuronal cell death. Neuron 20 (4):633-47)。3日後に、生きている細胞において蛍光性となるカルセインの存在下で細胞をインキュベートした後に、蛍光測定により生存率を評価する。
【0180】
3日後、37℃で、5%CO、そして飽和湿分の下で、最初に播いた運動神経の50%までが神経栄養因子を補給した媒体中で生存するが、運動神経細胞の15%未満しか神経栄養因子の添加なしの培地において生存しない。
【0181】
神経栄養因子を添加した培地内での運動神経細胞の生存率と比較した、神経基礎培地(GIBCO)に上記化合物を添加したときの運動神経細胞の死を阻止する能力によって試験される化合物の神経保護活性を評価した。
【0182】
本発明に係る式Iの化合物は神経基礎培地における運動神経細胞のより良好な生存率を可能にすることができる濃度で神経保護活性を示した。
【0183】
この生存率は、神経栄養因子により得られる生存と比較した、試験されるべき化合物で処置した後の生存細胞の数により表される。それゆえ、この比は、神経栄養因子により得られる生存と比較した、試験されるべき化合物による生存率を表すことができる。もし、この比が0より大きければ、運動神経細胞の生存に対する化合物の効果は正である。
得られる結果は下記のとおりである。
【0184】
【表1】

【0185】
本発明に係る式(I)の化合物は、それゆえ、医薬として、特に、脊髄運動神経に対するその化合物の栄養効果のために、筋萎縮症の処置、筋萎縮性側索硬化症又は小児脊髄性筋萎縮症の処置、及び、脊髄の外傷の処置における医薬として潜在的に有用であることを証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(上式中、Rは水素原子、又は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール基、ヘテロサイクル、又は、ハロゲン原子、又は、−CN、−CF、−NO、−OR、−SR、−SO、−NR、−OC(O)R、−OC(O)NR、−C(O)OR、−CONR基であることができ、ここで、
(i)R及びRは同時に又は互いに独立に、水素原子又はC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基から選ばれることができ、又は、
(ii) R及びRは一緒になって2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖炭化水素鎖を形成することができ、該炭化水素鎖は、任意に、1個又は複数の二重結合を含んでよく及び/又は任意に、1個又は複数の酸素、硫黄又は窒素原子が介在してよく、
は水素原子、又は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール基、又は、ハロゲン原子であることができ、
は水素原子、又は、C〜Cアルキル基、又は、ハロゲン原子、又は、−CN、−OR、−SR、−SeR、−COOR、−NR、−OCONR基であることができ、−R及び−Rは上記に規定されるとおりであり、又は、
及びRはそれらが結合した炭素と一緒になって(C〜C)シクロアルキル基を形成することができ、
は水素原子又はC〜Cアルキル基であることができ、又は、
及びRはR及びRが結合している炭素原子の間にさらなる炭素−炭素結合(C−C結合)を形成することができ、又は、C〜Cシクロアルキル基を形成することができ、
は水素原子又は−OR、−SR、−CN、−NR基であることができ、−R及び−Rは上記に規定されるとおりであり、
は水素原子、又は、−CH、−CH−CN、−CH−SR、−CH−SeR基、又は、下記式(A)又は(B):
−CH−Q−R(A)又は−C(O)−Q−R(B)
に対応する基であることができ、ここで、
+Qは酸素原子又は−NR基であることができ、ここでRは上記に規定されるとおりであり、又は、任意に置換されていてよい直鎖もしくは枝分かれ鎖炭化水素鎖により構成されるスペーサーアームであることができ、該スペーサーアームは2〜20個の炭素原子を含みかつ少なくとも1個のヘテロ原子を含み、
+Rは水素原子、又は、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール基、ヘテロサイクル、C〜Cアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、ヘテロサイクル−C(O)−であることができ、特に式(C)又は(D)
【化2】

のいずれかにより表される基であることができ、
は水素原子、又は、ハロゲン原子、又は、ヒドロキシ基であることができ、好ましくは水素原子であり、
は水素原子又は−OR基であることができ、Rは上記に規定されるとおりであり、好ましくは水素原子であり、
は水素原子、又は、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール基、又は、ハロゲン原子であることができ、好ましくは水素原子であり、
10は水素原子、又は、C〜Cアルキル基、ハロゲン原子、又は、−CN、−CF、−NO、−OR、−SR、−SO、−NR、−OC(O)R、−OC(O)NR、−C(O)OR、−C(O)NR基であることができ、R及びRは上記に規定されるとおりであり、好ましくは水素原子であり、
10はRと一緒になって、オキソ、=CH−C〜Cアルキル、=CH−アリール、=CH−(C〜C)シクロアルキル基であることができ、
11は水素原子、又は、Cアルキル、C〜Cシクロアルキル又はアリール基であることができ、好ましくは水素原子であり、又は、
11及びRは一緒になってそれらが結合した炭素原子の間にさらなるC−C結合を形成することができ、又は、一緒になってC〜Cシクロアルキル基を形成することができ、
12は水素原子、又は、Cアルキル基、又は、−OR、−SR基であることができ、−Rは上記に規定されるとおりであり、好ましくは水素原子であり、
13
(i)C〜C12アルキル基又はC〜C12アルケニル基、特に、
【化3】

から選ばれる基であることができ、又は、
(ii)下記式E
14−X−R15(E)
に対応する基であることができ、
14はC〜C12アルキル基又はC〜C12アルケニル基であることができ、特に、C〜C10アルキル基であることができ、好ましくは下記G
【化4】

であり、
Xは酸素原子又は−NR基であることができ、Rは上記に規定されるとおりであり、そして
15はC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基、ヘテロサイクル、−C(O)−C〜Cアルキル、− C(O)−C〜Cシクロアルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロアリール、−C(O)−ヘテロサイクルであることができ、特に、上記のとおりの式(C)又は(D)により表される基であることができる)に対応する新規の化合物、ならびに、
存在する場合にはそのSYN及びANTI異性体、
存在する場合にはその光学異性体(エナンチオマー、ジアステレオ異性体)、
医薬的に許容される酸又は塩基とのその付加塩、
その水和物及びその溶媒和物、
そのプロドラッグであるが、
ただし、以下の化合物を除く、
3−オキシイミノ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2,2−ジメチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−7,7−ジメチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2−(3−オキシイミノ−ブチル)−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−コレスト−1,4−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,6−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,24−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−4−エン−6−オン、
3−オキシイミノ−24−メチル−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−24−メチル−コレスト−4,22−ジエン−6−オン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4−エン−6−オン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4,22−ジエン、
3−オキシイミノ−24−エチル−コレスト−4,22−ジエン−6−オン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,22−ジエン−6−オン、
3−オキシイミノ−コレスト−4,24−ジエン−6−オン、
3,6−ジオキシイミノ−コレスト−4−エン、
3,6−ジオキシイミノ−コレスト−4,22−ジエン、
3,6−ジオキシイミノ−コレスト−4,24−ジエン、
3,6−ジオキシイミノ−24−メチル−コレスト−4,22−ジエン、
3,6−ジオキシイミノ−24−エチル−コレスト−4−エン、
3,6−ジオキシイミノ−24−エチル−コレスト−4、22−ジエン、
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン、
3−オキシイミノ−コレスト−1,4,6−トリエン。
【請求項2】
は水素原子であることができることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
はC〜Cアルキル基であることができ、任意にC〜Cアルキルであることができることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
はフッ素原子であることができることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
は任意に置換されていてよいフェニルであることができることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
はCH基及びCH−OH基から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
は下記式(A)
−CH−Q−R(A)に対応する基であることができ、
ここで、Qは酸素原子であることができ、そして
は式(C)
【化5】

に対応する基であることができることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
式(I)に対応しており、RはRとともに、R及びRが結合している炭素原子の間にさらなるC−C結合を形成していることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
式(I)に対応しており、R11はRとともに、R11及びRが結合している炭素原子の間にさらなるC−C結合を形成していることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
及びRは水素原子であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
、R10、R11及びR12は水素原子であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
はメチルであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
13
【化6】

から選ばれる基であることができることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
13はG
【化7】

であることを特徴とする、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
13はG
【化8】

であることを特徴とする、請求項13記載の化合物。
【請求項16】
13は下記式(E)
14−X−R15(E)
に対応する基であることができ、
ここで、R14は下記のG
【化9】

であることができ、XはNH又はNCHであることができ、
15はアリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクルから選ばれる基であることができる、請求項1〜12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
15は下記式(D)
【化10】

により表される基であることができることを特徴とする、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
13は下記式(E)
14−X−R15(E)
に対応する基であることができ、
14は下記式G基であることができ、
【化11】

XはNH又はNCHであり、そして
15は下記式(C)
【化12】

に対応する基であることができることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
3−オキシイミノ−4−フルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−6β−フルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2,2−ジフルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2,6−ジフルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2α−フルオロ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−25−[メチル(7−ニトロ−2,1,3−ベンズオキサジアゾール−4−イル)アミノ]−27−ノルコレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−25−((N−(+)−ビオチノイル−N−メチル)アミノ)−27−ノルコレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−19−ヒドロキシ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−19−ビオチニルオキシ−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−2−メチル−コレスト−4−エン、
3−オキシイミノ−4−メトキシ−コレスト−4−エンであることを特徴とする、先行の請求項のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の式(I)の化合物の医薬の調製のための使用。
【請求項21】
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の化合物の、細胞保護用医薬、好ましくは、心保護用医薬及び/又は神経保護用医薬及び/又は肝保護用医薬の調製のための使用。
【請求項22】
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の化合物の、ネクローシス及び/又は病理学的アポトーシス及び/又はネクロトーシスの処置又は阻止のための医薬(抗ネクローシス薬及び/又は抗アポトーシス薬及び/又は抗ネクロトーシス薬)の調製における使用。
【請求項23】
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の化合物の、自然又は偶発のいずれかによる、細胞変性又は細胞死、特に、心臓細胞及び/又は神経細胞の細胞変性又は細胞死に関連する病態及び外傷の処置のための医薬の調製のための使用。
【請求項24】
骨、関節、結合組織及び軟骨組織の病気;
筋ジストロフィーなどの筋疾患;
皮膚疾患;
心血管疾患;
循環器系疾患;
血液及び血管疾患;
慢性閉塞性肺疾患を含む肺疾患;
消化管疾患;
肝疾患;
膵臓疾患;
代謝性疾患;
腎臓疾患;
ウイルス及び細菌感染症;
重篤な中毒症;
後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する変性状態;
老化に関連する障害;
炎症性疾患;
自己免疫疾患;
歯科障害;
眼科疾患又は障害;
聴覚伝導路の障害;
ミトコンドリアに関連する疾患(ミトコンドリア病);
神経学的疾患及び神経変性疾患、
などの状態の処置のための医薬の調製のための、
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の化合物、又は、そのエステル及び/又は医薬上許容される酸とのその付加塩のいずれかの使用。
【請求項25】
神経変性疾患の処置のための医薬を調製するための、3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の化合物、又は、そのエステル及び/又は医薬上許容される酸とのその付加塩のいずれかの使用。
【請求項26】
前記神経保護薬は、ハンチントン病、遺伝性もしくは孤発性の慢性神経変性疾患、老化に関連する神経細胞病変、遺伝性であるか又は病変により生じる末梢神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、糖尿病性神経障害又は抗癌剤処置により生じる神経障害、てんかん、慢性脱髄性疾患及び神経変性疾患、特に、多発性硬化症及びロイコジストロフィー、脳、末梢神経又は脊髄の外傷、脳又は脊髄の虚血、視覚神経細胞の遺伝性であるか、病変により生じるか又は老化に関連している変性又は視神経の変性、聴覚神経細胞の遺伝性であるか、外傷性であるか又は老化に関連している変性、葉性萎縮及び血管性認知症、運動神経細胞の変性に関連している疾患及び外傷、脊髄性筋萎縮症、特に、小児脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、及び、脊髄又は末梢運動神経の外傷から選ばれる神経変性疾患の処置のためのものであることを特徴とする、請求項24又は25記載の使用。
【請求項27】
前記神経保護薬は脊髄性筋萎縮症の処置、特に、小児脊髄性筋萎縮症の処置、又は、筋萎縮性側索硬化症の処置のためのものであることを特徴とする、請求項24〜26のいずれか1項記載の使用。
【請求項28】
トレーサー又はラベル化剤としての請求項7、17又は18記載の化合物の使用。
【請求項29】
3−オキシイミノ−4−クロロ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−4−ブロモ−コレスト−4−エン、3−オキシイミノ−6−エトキシ−コレスト−4,6−ジエン及び3−オキシイミノ−4−メチル−コレスト−4−エンを含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の少なくとも1種の化合物を活性成分として含み、また、医薬上許容される賦形剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。

【公表番号】特表2011−529478(P2011−529478A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520549(P2011−520549)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000944
【国際公開番号】WO2010/012904
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(505342058)
【Fターム(参考)】