説明

新規グリセリンラクテート及びその製造方法

【課題】
グリセリン又はグリセリドの1位又は、1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されたグリセリンラクテートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】
グリセリン又はグリセリドと、乳酸、ラクチド又はそれらの重合体とをエステル交換能を有する酵素の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応を行うことを特徴とするグリセリンラクテートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規グリセリンラクテートおよびその製造方法に関する。さらに具体的には、グリセリン又はグリセリドの1位又は、1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されたグリセリンラクテートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリンラクテートは医薬、香料の原料として有用視されている物質である。該物質の製造は化学合成法によるもののみが知られており(特許文献1)、該物質が化学合成法によって製造された場合は、グリセリンの1位、2位及び3位すべてに乳酸がエステル結合したものが合成される(特許文献1)。しかし、該物質の多様な用途を考慮すれば、グリセリンの1位、2位及び3位の特定の位置にのみラクテートを導入する技術が必要となる。
【0003】
一方、酵素反応系を用いた乳酸エステルの生産方法については、特許文献2に、乳酸と、乳酸のエステル化反応を触媒化する酵素と、アルコール等とを含有する酵素反応系を用いて乳酸エステルを製造する方法が開示されている。しかし、該文献には、グリセリンに乳酸を導入しグリセリンラクテートを製造する方法については一切記載されていない。
【特許文献1】特表2000−511969公報
【特許文献2】特開2004−208501公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、グリセリン又はグリセリドの1位又は、1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されたグリセリンラクテートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)グリセリン又はグリセリドと、乳酸、ラクチド又はそれらの重合体とをエステル交換能を有する酵素の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応を行うことを特徴とするグリセリンラクテートの製造方法
【0006】
(2)上記エステル交換能を有する酵素がリパーゼであることを特徴とする(1)に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【0007】
(3)上記エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1位が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【0008】
(4)上記エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【0009】
(5)上記エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1及び3位が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【0010】
(6)下記式(I)で表されるグリセリンラクテート。
【0011】
【化1】

上記式(I)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Xは自然数を示す、但し、R2及びR3がともに水素原子でXが1又は2である場合を除く。
【0012】
(7)下記式(II)で表されるグリセリンラクテート。
【0013】
【化2】

上記式(II)中、R2は水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して自然数を示す、但し、R2が水素原子でY及びZがともに1であることを除く。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリセリンラクテートは、原料となるグリセリドの種類、ラクテート中の乳酸の繰り返し数、反応位置を組み合わせることにより物性を幅広く制御することが可能となる。具体的には、L−ラクチド、またはD−ラクチドを位置選択的に付加させることが可能となり、医薬原料、香料原料として使用可能となる。また、L−ラクチド、またはD−ラクチドの重合体を位置選択的に付加させることにより光学材料としての使用も可能となる。更には、ラクテートの長さとグリセリドの種類との組合せにより相溶性を変化させることが出来、可塑剤としての適用も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
<1> 本発明のグリセリンラクテートの製造方法
本発明のグリセリンラクテートの製造方法(以下、本発明の方法ともいう)は、グリセリン又はグリセリドと、乳酸、ラクチド又はそれらの重合体とをエステル交換能を有する酵素の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の方法に用いるエステル交換能を有する酵素とは、カルボン酸とアルコールとのエステルから選ばれる1種もしくは2種以上のエステル、あるいはこれにカルボン酸またはアルコールを共存させ、該エステルのカルボン酸残基若しくはアルコール残基を交換する能力を有する酵素のことをいう。
【0017】
本発明の方法に用いるエステル交換能を有する酵素としては、本発明のエステル交換反応を触媒する酵素であれば特に限定されることなく使用することができる。従って、かかる反応を触媒できる限り各種エステラーゼが使用可能である。特に上記エステラーゼの中でもリパーゼが好ましく使用される。
【0018】
本発明の方法に用いるリパーゼは、その起源に特に制限はなく各種微生物、動物、植物起源のいずれでもよい。例えばアクロモバクター イオファーガス(Achrombacter iofurgus)、アクロモバクター リボリチカム(Achromobacter lipolyticum)等のアクロモバクター属,クロモバクテリウム ビスコサム(Chromobacterium viscosum)等のクロモバクテリウム属、コリネバクテリウム アクネス(Corynebacterium acnes)等のコリネバクテリウム属、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)等のスタフィロコッカス属、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等のアスペルギルス属、キャンヂダ アンタルクティカ(Candida antarctica)、キャンヂダ シリンドラシア(Candida cylindracea)等のキャンヂダ属、フミコーラ ランギノーサ(Humicora lanuginosa)等のフミコーラ属、ペニシリウム カセイコラム(Penicillium caseicolum)、ペニシリウム クルストサム(Penicillium crutosum)、ペニシリウム シクロピウム(Penicillium cyclopium)、ペニシリウム ロキュフォーチイ(Penicillium roueforti)等のペニシリウム属、トルロブシスエノビ(Torulopsis ernobii)等のトルロブシス属、ムコール ミーヘイ(Mucor miehei)等のムコール属、リゾムコール ミーヘイ(Rhizomucor miehei)等のリゾムコール属、バシラス ズブチルス(Bacillus subtilis)等のバシラス属、サーモマイセス ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)、サーモマイセス イバダネンシス(Thermomyces ibadanensis)等のサーモマイセス属、リゾブス オリーゼ(Rhizopus oryzae)、リゾブス デレマー(Rhizopus delemar)等のリゾブス属、シュウドモナス エアルギノーサ(Pseudomonus aeruginosa)、シュウドモナス フラギ(Pseudomonus fragi)、シュウドモナス フルオレスセンス(Pseudomonus fluorescens)、シュウドモナス メヒチカ リポリチカ(Pseudomonus mephitica lipolytica)等のシュウドモナス属、アルカリゲネス属(Alcaligenes)等に属する各種の微生物を例示できる。又、天然に由来するリパーゼに限られず、遺伝子組み換え技術により製造される組み換え体、変異体であってもよい。
【0019】
さらに、本発明の方法に用いるリパーゼは、精製された精製酵素若しくは粗精製酵素であってもよく、またはリパーゼを産生する微生物の菌体、植物もしくはその処理物であってもよい。上記微生物の菌体、植物もしくはその処理物としては、例えば、微生物の菌体、植物、またはそれらの破砕物、抽出物、もしくはそれらの分画物が挙げられる。
【0020】
一方、本発明の方法に用いるリパーゼは市販の酵素を利用することも可能である。例えば、天野エンザイム社製Amano AK (Pseudomonas fluorescens 由来)、ノボザイムズ社製 Novozyme 435 (Candida antarctica由来)、ノボザイムズ社製 Lipozyme TLIM(Thermomyces lauginosus 由来)、ノボザイムズ社製Lipozyme RMIM(Rhizomucor miehei 由来)、天野エンザイム社製 Lipase F-AP15(Rhizopus oryzae 由来)等が挙げられる。
【0021】
本発明の方法に用いるリパーゼは、1種類または複数種のリパーゼおよび/またはリパーゼを産生する微生物の菌体、植物もしくはその処理物が含まれていてもよい。
【0022】
本発明の方法に用いるグリセリン又はグリセリドとしては、エステル交換能を有する酵素の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応を行うための基質となりうるものであれば特に限定はされないが、例えば、下記式(III)に示されるものが好適に挙げられる。
【0023】
【化3】

上記式(III)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示す。
好ましくは、上記式(III)中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜25のカルボキシレートを示す。
具体的にはグリセリン、トリアセチン、トリオレイン、トリパルミチン及びトリステアリン、並びに、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、オリーブ油などの植物性油脂、並びに、牛脂、豚油、魚油などの動物性油脂が挙げられる。また、上記式(III)で示される化合物は市販品や、公知の製造方法により取得が可能である。
【0024】
本発明の方法に用いる乳酸、ラクチド又はそれらの重合体としては、エステル交換能を有する酵素の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応を行うための基質となりうるものであれば特に限定はされないが、例えば、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチドまたはこれらの重合体等が好適に挙げられる。
【0025】
本発明の方法に用いる乳酸は化学合成によっても、また、発酵生産等によっても得ることができる。化学合成による場合は一般に光学不活性なラセミ体として得られ、その後光学分割により光学活性体とすることができる。一方、発酵により生産される乳酸は使用する微生物を選択することによりL−乳酸、D−乳酸及びDL−乳酸を必要に応じて調整することが可能である。
【0026】
本発明の方法に用いるラクチドとは、α‐乳酸2分子から水2分子を失った環式エステル形状ものをいい、公知の方法により製造することができる。該ラクチドもL−ラクチド、D−ラクチドまたはDL−ラクチドが存在し、いずれも本発明の方法に用いることが可能である。
【0027】
本発明の方法には、乳酸またはラクチドの重合体(ポリ乳酸)を用いることが可能である。ポリ乳酸は、乳酸を熱処理してラクチドとし、次いで該ラクチドを開環重合させるラクチド法、乳酸を直接脱水重縮合反応させる直接重合法など公知の方法により製造することができる。本発明においては、かかる公知のポリ乳酸を特に限定することなく使用できるが、ポリ乳酸の分子量は、300〜3000であることが好ましい。なお、上記分子量は、GPC法(ポリスチレン換算)により確認することが可能である。
【0028】
本発明の方法では、上記グリセリン又はグリセリドと上記乳酸、ラクチド又はそれらの重合体を1モル:1モル〜1モル:1000モルの割合で混合し、酵素反応を行うことが効
率の観点から好ましい。
【0029】
本発明の方法において、エステル化反応又はエステル交換反応は、適当な有機溶媒の存在下で行うことが可能である。この場合の有機溶媒としては、上記酵素の活性を阻害しなければ通常使用される有機溶媒を用いることが可能であり、特に、n−ヘキサン、クロロホルム、トルエン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、イソオクタン、シクロヘキサン、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、DMSO、DMF等が好適に挙げられる。また、上記有機溶媒等を用いないことも可能である。
有機溶媒等を用いる場合は、反応基質(グリセリン又はグリセリド、及び乳酸、ラクチド又はそれらの重合体)1質量部に対して1〜10000質量部を添加することが好ましい。
【0030】
本発明の方法において、エステル化反応又はエステル交換反応で用いる酵素の使用量は、用いる酵素の種類、精製度によっても異なるが、反応基質(グリセリン又はグリセリド、及び乳酸、ラクチド又はそれらの重合体)1質量部に対して0.001〜100質量部である。
【0031】
本発明の方法において、エステル化反応又はエステル交換反応の反応条件は、使用する酵素によっても異なるが、例えば、反応温度が−40〜200℃であり、好ましくは−40〜150℃である。また、反応時間は、0.5〜200時間であり、好ましくは1〜100時間である。
【0032】
本発明の方法において、酵素反応中は酵素と基質との接触を促進させるため、反応系を混合又は撹拌することが好ましい。このための手段に特に限定はないが、ガスの供給、振とう、回転翼等による機械的撹拌、反応系液体の噴流循環などの各種手段を利用することが可能である。
【0033】
本発明の方法は、エステル化反応又はエステル交換反応において、使用する酵素を選択することによって下記式(I)に示すグリセリン又はグリセリドの1位が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする。
本発明においてラクテートとは、乳酸および乳酸単位の重合体のエステルをいうものとする。
【0034】
【化4】

上記式(I)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Xは自然数を示す。
好ましくは上記式(I)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3
0のカルボキシレートを示し、Xは自然数を示す、但し、R2及びR3がともに水素原子でXが1又は2である場合を除く。
さらに好ましくは、上記式(I)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜25のカルボキシレートを示し、Xは3〜100の整数を示す。
【0035】
本発明の方法にて製造されるグリセリンラクテートとして、具体的には1−ラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジプロピオニル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−トリラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac
−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、
1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリンなどが挙げられる。
【0036】
本発明の方法に用いるグリセリン又はグリセリドの1位を選択的にラクテートに変換するエステル交換能を有する酵素としては、例えば、天野エンザイム社製Amano AK (Pseudomonas fluorescens 由来)が挙げられる。
【0037】
本発明の方法は、エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする。
上記グリセリン又はグリセリドの1位、2位及び3位から選ばれる2箇所とはグリセリン又はグリセリドの1位及び2位、1位及び3位、または2位及び3位をいう。
【0038】
本発明の方法に用いるグリセリン又はグリセリドの1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されるエステル交換能を有する酵素としては、例えば、ノボザイムズ社製 Lipozyme TLIM(Thermomyces lauginosus 由来)、ノボザイムズ社製Lipozyme RMIM(Rhizomucor miehei 由来)が挙げられる。
【0039】
本発明の方法は、エステル化反応又はエステル交換反応において、使用する酵素を選択することによって下記式(II)に示すグリセリン又はグリセリドの1及び3位が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする。
【0040】
【化5】

上記式(II)中、R2は水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して自然数を示す。
好ましくは、上記式(II)中、R2は水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して自然数を示す、但し、R2が水素原子でY及びZがともに1であることを除く。
さらに好ましくは、上記式(II)中、R2は水素原子または炭素数1〜25のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して2〜100の整数を示す。
【0041】
本発明の方法にて製造されるグリセリンラクテートとして、 具体的には1,3−ジラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、
1,3−ジトリラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、
1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3ジペンタラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラク
テート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、
1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−アセチル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−プロピオニル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、
1−ラクチルラクテート−2−ブチリル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オクタノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−カプリノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ラウリノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−パルミトイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ステアロイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オレイノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノーリル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノレノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、
1−ラクチルラクテート−2−アセチル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−プロピオニル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ブチリル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オクタノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−カプリノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ラウリノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−パルミトイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ステアロイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オレイノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノー
リル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノレノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、
1−ラクチルラクテート−2−アセチル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−プロピオニル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ブチリル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オクタノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−カプリノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ラウリノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−パルミトイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ステアロイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オレイノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノーリル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノレノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリンなどが挙げられる。
【0042】
本発明の方法に用いるグリセリン又はグリセリドの1位及び3位を選択的にラクテートに変換するエステル交換能を有する酵素としては、例えば、ノボザイムズ社製 Lipozyme TLIM(Thermomyces lauginosus 由来)、ノボザイムズ社製Lipozyme RMIM(Rhizomucor miehei
由来)が挙げられる。
【0043】
上記エステル化反応又はエステル交換反応により生じる反応物から目的とするグリセリンラクテートを得るには、定法に従って該反応物からグリセリンラクテートを回収、精製する。すなわち、該反応物からグリセリンラクテートを回収するには、例えば、アセトン等を添加することで未反応のグリセリン又はグリセリドを不溶化し分離、さらに石油エーテル等を添加することで未反応の乳酸、ラクチド等を不溶化し分離する。さらなる精製には、例えば、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/イソプロパノール)、HPLC(逆相系カラム、移動相:アセトニトリル/アセトン)を用いることができる。
【0044】
<2> 本発明のグリセリンラクテート
本発明のグリセリンラクテートは、下記式(I)で表される。
【0045】
【化6】


上記式(I)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のカルボ
キシレートを示し、Xは自然数を示す、但し、R2及びR3がともに水素原子でXが1又は2である場合を除く。
好ましくは、上記式(I)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜25のカルボキシレートを示し、Xは3〜100の整数を示す。
また、本発明のグリセリンラクテートにおいて、グリセリン部分と乳酸単位部分の不斉炭素部分の光学異性は問わない。
【0046】
具体的には1−ラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジプロピオニル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−トリラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−トリラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ペンタラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノ
イル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ヘプタラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリン、
1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジアセチル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−シプロピオニル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジブチリル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジヘキサノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジオクタノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジカプリノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジラウリノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジミリスチノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジパルミトイル−rac−グリセリン、
1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジステアロイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジオレイノイル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジリノーリル−rac−グリセリン、1−ノナラクチルラクテート−2,3−ジリノレノイル−rac−グリセリンなどが挙げられる。
本発明のグリセリンラクテートは、例えば、医薬原料、香料原料、光学材料、可塑剤として有用である。
【0047】
また、本発明のグリセリンラクテートは、下記式(II)で表される。
【0048】
【化7】

上記式(II)中、R2は水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して自然数を示す、但し、R2が水素原子でY及びZがともに1であることを除く。
好ましくは、上記式(II)中、R2は水素原子または炭素数1〜25のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して2〜100の整数を示す。
また、本発明のグリセリンラクテートにおいて、グリセリン部分と乳酸単位部分の不斉炭素部分の光学異性は問わない。
【0049】
具体的には1,3−ジラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−
グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、
1,3−ジトリラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジトリラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、
1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3ジペンタラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジペンタラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、
1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−アセチル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−プロピオニル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ブチリル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−オクタノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−カプリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ラウリノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−パルミトイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−ステアロイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−オレイノイル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−リノーリル−rac−グリセリン、1,3−ジヘプタラクチルラクテート−2−リノレノイル−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−アセチル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−プロピオニル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、
1−ラクチルラクテート−2−ブチリル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オクタノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−カプリノイル−3−トリラク
チルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ラウリノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−パルミトイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ステアロイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オレイノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノーリル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノレノイル−3−トリラクチルラクテート−rac−グリセリン、
1−ラクチルラクテート−2−アセチル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−プロピオニル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ブチリル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オクタノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−カプリノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ラウリノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−パルミトイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ステアロイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オレイノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノーリル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノレノイル−3−ペンタラクチルラクテート−rac−グリセリン、
1−ラクチルラクテート−2−アセチル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−プロピオニル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ブチリル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ヘキサノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オクタノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−カプリノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ラウリノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ミリスチノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−パルミトイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−ステアロイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−オレイノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノーリル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリン、1−ラクチルラクテート−2−リノレノイル−3−ヘプタラクチルラクテート−rac−グリセリンなどが挙げられる。
本発明のグリセリンラクテートは、例えば、医薬原料、香料原料、光学材料、可塑剤として有用である。
【0050】
本発明のグリセリンラクテートは、本発明の方法、すなわち、原料基質であるグリセリン又はグリセリドと、乳酸、ラクチド又はそれらの重合体と、エステル交換能を有する酵素と、必要に応じて有機溶媒とを加え、所定温度で静置、混合又は撹拌等して、所定時間反応後、得られた反応物から定法により回収、精製することで得ることが可能である。
【0051】
本発明のグリセリンラクテートは、公知の測定方法により該物質を同定することが可能であるが、例えば、質量分析法、NMR分析法にて同定することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
容量100mlの密閉容器にn−ヘキサン60mlを入れ、そこにトリパルミチン(東京化成工業株式会社) 1.0g、DL−ラクチド(アルドリッチ社) 1.0g、リパーゼ Amano AK(Pseudomonas fluorescens由来、天野エンザイム社) 1.0gを入れ、マグネチックスターラーにて撹拌してエステル交換反応を実施した。反応温度は50℃、反応時間は72時間とした。反応後、反応液を冷アセトンにて再沈殿操作(沈殿物除去)を行い、可溶部からアセトンを留去した後、石油エーテルを加え再度可溶部を濃縮した。上記濃縮液の一部をサンプリングし、MALDI TOF−MS(Perspective Biosystems社製:Voyager DE-pro)で、マトリクスとして2,5-ジヒドロキシ安息香酸を用いReflectorモードにて測定したところ、トリパルミチンの1位の水酸基のみがラクチドとエステル交換し、トリパルミチンの1位にのみ乳酸1単位が導入された(上記式IにおいてXが1の場合)グリセリンラクテート、トリパルミチンの1位にのみ乳酸2単位が導入された<上記式(I)においてXが2の場合>グリセリンラクテート、トリパルミチンの1位にのみ乳酸3単位が導入された<上記式(I)においてXが3の場合>グリセリンラクテート、トリパルミチンの1位にのみ乳酸4単位が導入された<上記式(I)においてXが4の場合>グリセリンラクテートを確認した(図1)。(Mw 664のピーク:乳酸1単位置換、Mw 736のピーク:乳酸2単位置換、Mw 808のピーク:乳酸3単位置換、Mw 880のピーク:乳酸4単位置換)
【0054】
上記濃縮液を更にHPLC(カラム:JASCO製 CrestPak C18S, 4.6x150mmx2本, 温度:40℃, 移動相:アセトニトリル/アセトン=8:2, 流速:1.0ml/min)により精製し、乳酸2単位置換体フラクションを分取することで乳酸2単位置換体<上記式(I)においてXが2の場合>を単離した。単離した乳酸2単位置換体のMALDI TOF−MSチャート<マトリクスとして2,5-ジヒドロキシ安息香酸を用いReflectorモードにて測定(Perspective Biosystems社製:Voyager DE-pro)>を図2にまた1H−NMR(BRUKER製:DRX-400、400MHz、CDCl3)のチャートを図3に示す。なお、乳酸3単位置換体<上記式(I)においてXが3の場合>および乳酸4単位置換体<上記式(I)においてXが4の場合>についても上記乳酸2単位置換体と同様に上記HPLC条件で、分取した。
【0055】
<実施例2>
容量100mlの密閉容器にn−ヘキサン60mlを入れ、そこにトリパルミチン(東京化成工業株式会社) 1.0g、DL−ラクチド(アルドリッチ社) 1.0g、リパーゼ Lipozyme TLIM(Thermomyces lanuginosus由来、ノボザイムズ社) 1.0gを入れ、マグネチックスターラーにて撹拌してエステル交換反応を実施した。反応温度は70℃、反応時間は72時間とした。この反応終了液をMALDI TOF−MS<マトリクスとして2,5-ジヒドロキシ安息香酸を用いReflectorモードにて測定(Perspective Biosystems社製:Voyager DE-pro)>で測定した結果を図4に示す。図4からトリパルミチンの1位置換体(Mw 736のピーク、 Mw 881のピーク) <上記式(I)に相当>と1位及び3位置換体<上記式(II)に相当>(Mw 642のピーク、 Mw 786のピーク、 Mw 858のピーク、 Mw 930のピーク)の存在が確認された。
【0056】
<実施例3>
リパーゼとしてLipozyme RMIM(Rhizomucor miehei由来、ノボザイムズ社) を用いた以外は実施例2と同様に実施した。反応終了液をMALDI TOF−MS<マトリクスとして2,5-ジヒドロキシ安息香酸を用いReflectorモードにて測定(Perspective Biosystem
s社製:Voyager DE-pro)>で測定した結果を図5に示す。図5からトリパルミチンの1位置換体<上記式(I)に相当>(Mw 736のピーク、 Mw 880のピーク、 Mw 1024のピーク)と1,3置換体<上記式(II)に相当>(Mw 786のピーク、 Mw 930のピーク、 1074のピーク、 Mw 1218のピーク)の存在が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1において、エステル交換反応後の濃縮液のMALDI TOF−MSチャート図。
【図2】実施例1において、単離した乳酸2単位置換体のMALDI TOF−MSチャート図。
【図3】実施例1において、単離した乳酸2単位置換体の1H−NMRチャート図。
【図4】実施例2において、エステル交換反応後の反応液のMALDI TOF−MSチャート図。
【図5】実施例3において、エステル交換反応後の反応液のMALDI TOF−MSチャート図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン又はグリセリドと、乳酸、ラクチド又はそれらの重合体とをエステル交換能を有する酵素の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応を行うことを特徴とするグリセリンラクテートの製造方法。
【請求項2】
前記エステル交換能を有する酵素がリパーゼであることを特徴とする請求項1に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【請求項3】
前記エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1位が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【請求項4】
前記エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1位、2位及び3位から選ばれる2箇所が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【請求項5】
前記エステル化反応又はエステル交換反応において、グリセリン又はグリセリドの1及び3位が選択的にラクテートに変換されることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリセリンラクテートの製造方法。
【請求項6】
下記式(I)で表されるグリセリンラクテート。
【化1】

(式中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Xは自然数を示す、但し、R2及びR3がともに水素原子でXが1又は2である場合を除く)
【請求項7】
下記式(II)で表されるグリセリンラクテート。
【化2】

(式中、R2は水素原子または炭素数1〜30のカルボキシレートを示し、Y及びZはそれぞれ独立して自然数を示す、但し、R2が水素原子でY及びZがともに1であることを除く)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−141311(P2006−141311A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337494(P2004−337494)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】