説明

新規フルオレニルアミン化合物およびそれを有する有機発光素子

【課題】 ガラス転移温度が高い上にバンドギャップが広く、最低励起三重項準位が高い有機化合物を提供する。
【解決手段】 下記一般式で表されることを特徴とする新規フルオレニルアミン化合物。
【化1】


一般式中R1乃至R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。R21乃至R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。
前記アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規フルオレニルアミン化合物およびそれを有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置される有機化合物層とを有する。
有機発光素子に用いられる有機化合物には熱安定性が求められる。前記有機化合物は熱によりその機能を低下させるからである。
【0003】
特許文献1には、熱安定性が高い化合物として化1で示す化合物が記載されている。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−184109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される化合物である化1は、バンドギャップの広さが十分ではなく、さらに最低励起三重項準位の高さが十分でない化合物である。
【0007】
そこで、本発明は熱安定性が高く、かつバンドギャップが広く、最低励起三重項準位が高い有機化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって本発明は、下記一般式で表されることを特徴とするフルオレニルアミン化合物を提供する。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式中のR1乃至R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。R21乃至R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。
【0011】
前記アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラス転移温度が高い上に窒素原子に3位で結合するフルオレニル基を3つ有するため、バンドギャップが広く、最低励起三重項準位が高い有機化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機発光素子と前記有機発光素子と接続するTFT素子とを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記一般式で表されることを特徴とする新規フルオレニルアミン化合物である。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式中のR1乃至R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。R21乃至R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。
【0017】
前記アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである。
【0018】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物は主骨格として窒素原子とこの窒素原子に3位で結合するフルオレニル基を3つ有する化合物である。一般式中の主骨格に結合するR1乃至R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれ、R21乃至R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基の中から選ばれる。
【0019】
R1乃至R6そしてR21乃至R23が有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0020】
フルオレニル基に置換基としてアルキル基を導入することはイオン化ポテンシャルを低くできる。これは陽極からの正孔の注入が容易であることを意味し、有機発光素子の低電圧化につながる。イオン化ポテンシャルが低いということはイオン化ポテンシャルが真空準位に近いということである。
【0021】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱安定性が高い。というのも3つのフルオレニル基全て3位で結合しているためである。
【0022】
3つのフルオレニル基が全て3位で窒素原子と結合しているため、2位で窒素原子と結合する化1に比べ化合物全体の平面性が低く、分子同士の会合性が低く、結晶化が生じにくい安定なアモルファス膜を形成する。
【0023】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物は、3つのフルオレニル基が全て3位で窒素原子と結合するので、共役がフルオレン分子全体に広がらず、フルオレニル基と窒素原子との結合部位周辺に局在する。その結果、バンドギャップが広く、最低励起三重項準位(T1)が高い。表1に示すのは−78℃のもと、トルエン溶液中にて測定したT1である。
【0024】
【表1】

【0025】
例示化合物A1のT1は化1のT1に比べて、緑燐光発光材料であるIr(ppy)3のT1とのエネルギー差が大きいので、三重項励起子が発光層から発光層と隣接するホール輸送層に移動しにくい。一方、化1の場合は緑燐光発光材料とほぼ同等のT1なので発光層から三重項励起子が発光層と隣接するホール輸送層に一部移動すると考えられる。従って、例示化合物A1は緑燐光発光材料を有する素子においてホール輸送層もしくは発光層のホスト材料として好ましく用いることができる。
【0026】
燐光発光材料とは、常温で化合物が発する光が燐光発光であるものを表し、蛍光発光性とは、常温で化合物が発する光が蛍光発光であるものを表す。
【0027】
ここで、発光層を構成する化合物の中で、重量比が最も大きいものがホスト材料であり、ホスト材料よりも重量比が小さいものがゲスト材料である。
【0028】
以上の効果は本発明の化合物をホール輸送層として用いた場合、発光層中で生成した一重項励起子及び三重項励起子を発光層中に閉じ込めるため、効率向上につながる。
【0029】
さらに、本発明に係るフルオレニルアミン化合物はホスト材料とゲスト材料とを有する発光層を有する発光素子のホスト材料であることも好ましい。本発明に係るフルオレニルアミン化合物は広いバンドギャップを有するので広いバンドギャップが必要な青蛍光発光材料を有する発光層のホスト材料として好ましく用いることができる。そのため、ホスト材料で発生した励起子をゲスト材料へ移動させ、効率良く発光させることができる。さらに本発明に係るフルオレニルアミン化合物は緑色や赤色に発光する蛍光発光材料を有する有機発光素子の発光層のホスト材料としても用いることができる。
【0030】
また、本発明に係るフルオレニルアミン化合物は高いT1を有するので緑燐光発光材料を有する発光層のホスト材料として好ましく用いることができる。なぜならば、緑燐光発光材料より高いT1を有するからである。そのため、ホスト材料で発生した三重項励起子をゲスト材料へ移動させ、効率良く発光させることができる。燐光発光材料としては緑色、赤色発光材料を用いることができる。
【0031】
以下に本発明に係るフルオレニルアミン化合物を例示する。
【0032】
【化4】

【0033】
次に本発明に係る有機発光素子を説明する。
【0034】
本発明に係る有機発光素子は一対の電極とこの一対の電極の間に配置される有機化合物層とを有する。一対の電極とは互いの極性が逆である電極であり、例えば陽極と陰極である。一対の電極間にかける電界は、有機発光素子が発光する順方向でもよいし、順方向とは逆向きである逆方向に電界をかけてもよい。有機化合物層は単層であっても複数層でもよい。有機化合物層が本発明に係るフルオレニル化合物を有する。
【0035】
複数層は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等から適宜選択される層である。
【0036】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物はアリールアミンを有することからホール輸送性に優れ、有機発光素子の発光層または発光層と陽極との間に有するホール輸送層に設けられることが好ましい。
【0037】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物を発光層が有する場合などホール輸送層が本発明に係るフルオレニルアミン化合物を有さない場合、ホール輸送層が有する化合物としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物をホール輸送層が有する場合など発光層が本発明に係るフルオレニルアミン化合物を有さない場合、ホスト材料には縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、およびトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明に係るフルオレニルアミン化合物が発光層中のホスト材料である場合、発光層中のゲスト材料としては、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、これらにアミノ基等の置換基が置換された化合物、イリジウム錯体、プラチナ錯体等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
陽極とホール輸送層との間に設けられるホール注入層を構成する化合物は、銅フタロシアニン、トリアリールアミン誘導体、フルオロカーボンポリマー、ポリアニリン、ポリチオフェン等の化合物が挙げられる。
【0041】
また、本発明に係るフルオレニルアミン化合物は1つの有機発光素子のホール輸送層と発光層との両方に含まれてもよい。
【0042】
発光層と陰極との間に設けられる電子注入層あるいは電子輸送層を構成する化合物は、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
陽極材料には、仕事関数が大きなものが用いられる。例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Pd、Co、Se、V、W等の金属単体あるいはこれらの合金、ITO、IZO等の金属酸化物等が挙げられるがこれらに限定されない。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は単独で使用してもよいし複数併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0044】
陰極材料には、仕事関数の小さなものが用いられる。例えば、Li等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属、Al、Ti、Mn、Ag、Pb、Cr等の金属単体あるいはこれら金属単体の合金、ITO等の金属酸化物等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
本発明に係る有機発光素子において、有機化合物層は、例えば次に示す方法により形成することができる。
【0046】
真空蒸着あるいは適当な溶媒に溶解させて所定の位置に塗布しその後溶媒を乾燥する溶液塗布法により層を形成する。
【0047】
以下本発明に係る有機発光素子の用途について説明する。
【0048】
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどがある。
【0049】
表示装置は本発明に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部とは複数の画素を有しており、この画素は本発明に係る有機発光素子とTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極または陰極とTFT素子のドレイン電極またはソース電極とが接続されている。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
【0050】
表示装置はデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置の表示部に用いられてもよい。撮像装置は表示部と撮像するためのレンズ等の撮像光学系を有する撮像部とを有する。表示装置は撮像装置の表示部に用いられるだけでなくインクジェットプリンタの表示部に用いられていもよい。
【0051】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの情報を入力する画像入力部を有する画像入力装置でもよい。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報に基づいて画像を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0052】
次に、本発明に係る有機発光素子を使用した表示装置について説明する。
【0053】
図1は、本発明に係る有機発光素子と有機発光素子の発光非発光をスイッチングする有機発光素子に接続されたスイッチング素子の1例であるTFT素子とを示した断面模式図である。本図では有機発光素子とTFT素子との組が2組図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0054】
図1の表示装置は、ガラス等の基板1とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜2が設けられている。また符号3は金属のゲート電極3である。符号4はゲート絶縁膜4であり、5は半導体層5である。
【0055】
TFT素子8は半導体層5とドレイン電極6とソース電極7とを有している。TFT素子8の上部には絶縁膜9が設けられている。コンタクトホール10を介して有機EL素子の陽極11とソース電極7とが接続されている。表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0056】
有機化合物層12は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如き図示をしている。陰極13の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層14や第二の保護層15が設けられている。
【0057】
本発明の有機発光素子を有する表示装置を用いることにより、長時間表示にも安定な表示ができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
<実施例1>
例示化合物A1の合成
【0060】
【化5】

【0061】
100ml三ツ口フラスコを用意した。そこに3−ブロモフルオレン、0.40g(1.46mmol)、リチウムアミド(キシダ化学(株)製、商品名同じ) 0.35g(14.6mmol)、ナトリウムターシャリブトキシド(東京化成(株)製、商品名同じ)0.49g(5.0mmol)を入れた。さらにキシレン20mlを入れ、窒素雰囲気中、室温で攪拌下、トリターシャリブチルフォスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0.5ml(0.15mmol)を添加した。次いでパラジウムジベンジリデンアセトン(東京化成(株)製、商品名同じ)0.67mg(0.153mmol)を添加した。フラスコ内をアルゴン置換した後に6時間還流攪拌した。反応後有機層を水洗し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラム(ヘプタン+トルエン混合展開溶媒)で精製し、例示化合物A1(白色結晶)0.14g(収率50.0%)を得た。
【0062】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析法)により、この化合物のM+である593.0を確認した。
【0063】
H−NMR測定(日本電子(株)製、ECA−400、溶媒:重クロロホルム)よりδ値(ppm)は、7.56(2H、dt)、7.42(1H、dd)、7.32−7.25(3H、m)、7.10(1H、dd)、1.52(6H、s)であった。
【0064】
バンドギャップを紫外−可視光吸収スペクトルから求めたところ、3.02eVであった。なお、本発明においては、日立製分光光度計U−3010を用い、ガラス基板上に成膜した薄膜の吸収端からバンドギャップを求めた。
【0065】
また、イオン化ポテンシャルを大気中光電子分光装置(測定器名AC−1 理研計器製)を用いて測定したところ、5.51eVであった。
【0066】
例示化合物A1のTgをパーキンエルマー社製Pyris 1で測定したところ154℃であり、熱安定性が高かった。
【0067】
さらに例示化合物A1のアモルファス性を評価した。
【0068】
例示化合物A1の濃度が0.1wt%となるようにクロロホルム溶液を調整した。これをガラス基板上に滴下し、スピンコートを行い、膜を形成した。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を除去した。
【0069】
この得られた基板を、60℃のオーブン内に1週間放置し、目視により結晶化の有無を確認したところ、結晶化がなかったことを確認した。
【0070】
<合成例>
実施例1において3−ブロモフルオレン化合物のかわりに以下に示すブロモ化合物をもちいることで以下に示す例示化合物が合成できる。
【0071】
【化6】

【0072】
<実施例2>
下記に示す方法で、本発明に係る有機発光素子を作製した。
【0073】
基板のガラス基板上に、酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜し、陽極を作製した。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄した。
【0074】
前記陽極の上に第1ホール輸送層として下記に示す化合物3−1を用いて、濃度が0.1wt%となるようにクロロホルム溶液を調整した。
【0075】
この溶液を上記のITO電極上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で1分間スピンコートを行った。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を除去し、第1ホール輸送層を形成した。形成された第1ホール輸送層の厚みは11nmであった。
【0076】
次に、第1ホール輸送層の上に例示化合物A1を蒸着して20nmの第2ホール輸送層を成膜した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は0.1nm/secの条件で成膜した。
【0077】
次にホスト材料として化合物3−3を95wt%、ゲスト材料として化合物3−2を5wt%の割合で共蒸着して25nmの発光層を設けた。
【0078】
次に、化合物3−4を蒸着して20nmの電子輸送層を成膜し、アルミニウム−リチウム合金(リチウム濃度1原子%)からなる蒸着材料を用いて、前記発光層の上に、真空蒸着法により厚さ0.5nmの金属層膜を形成した。更に真空蒸着法により厚さ150nmのアルミニウム膜を設けた。そのようにしてアルミニウム−リチウム合金膜を陰極とする有機発光素子を作製した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は1.0〜1.2nm/secの条件で成膜した。
【0079】
この様にして得られた素子をトプコン社製分光放射計 SR−3で性能評価を行ったところ、4.0Vの印加電圧で、発光効率3.23cd/A、発光波長474.6nmの青色発光が観測された。
【0080】
さらに、窒素雰囲気下で電流密度を30mA/cmに保持したところ、100時間後の輝度は初期輝度に対して85%の輝度であった。
【0081】
【化7】

【0082】
<実施例3>
本発明に係るフルオレニルアミン化合物を発光層のホスト材料として用いた有機発光素子を作製した。
【0083】
基板としてのガラス基板上に、ITOをスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜し陽極を作製する。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥し、UV/オゾン洗浄した。
【0084】
ホール輸送層として化合物3−1を用いて、濃度が0.1wt%となるようにクロロホルム溶液を調整した。
【0085】
この溶液を前記ITO電極上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で1分間スピンコートを行い、ホール輸送層を形成する。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を除去した。
【0086】
次にホスト材料として例示化合物A1を95wt%、ゲスト材料として化合物3−2を5wt%の割合で共蒸着して25nmの発光層を設け、更に、電子輸送層及びAl電極を実施例2と同様に作製した。
【0087】
この様にして得られた有機発光素子を実施例2と同様に性能評価を行った。4.0Vの印加電圧で、発光効率2.9cd/A、発光波長475.0nmの良好な青色発光を観測することができた。
【0088】
さらに、窒素雰囲気下で電流密度を30mA/cmに保持したところ、100時間後の輝度は初期輝度に対して81%の輝度であった。
【0089】
本実施例においては一般式におけるR1乃至R6がメチル基であるものを示した。このメチル基が水素原子、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかで置換されても同様の効果が得られる。
【0090】
なぜならば、これらの置換基は化合物の電子状態を変化させずにアモルファス性を向上させるものだからである。
【0091】
本実施例では水素原子であったR21乃至R23においても、水素原子がメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかで置換されても同様の効果が得られる。これは化合物の電子状態を変化させずにアモルファス性を向上させるものだからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表されることを特徴とするフルオレニルアミン化合物。
【化1】


式中のR1乃至R6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基から選ばれる。R21乃至R23はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基から選ばれる。
前記アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである。
【請求項2】
請求項1に記載のフルオレニルアミン化合物である有機発光素子用材料。
【請求項3】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置される有機化合物層とを有し、前記有機化合物層は請求項1に記載のフルオレニルアミン化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
前記一対の電極は陽極と陰極とであり、前記有機化合物層はホール輸送層であり、前記ホール輸送層は発光層と前記陽極との間に配置されることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物層は発光層であることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記発光層は燐光発光材料を有することを特徴とする請求項4または5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
複数の画素を有し、前記画素は請求項3乃至6のいずれか1項に記載の有機発光素子とスイッチング素子とを有し、前記有機発光素子が有する一対の電極のいずれか1つの電極と前記スイッチング素子のドレイン電極またはソース電極のいずれか1つの電極とが接続されることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
表示部と画像を入力するための画像入力部と複数の画素とを有し、前記画素は請求項3乃至6のいずれか1項に記載の有機発光素子とスイッチング素子とを有し、前記有機発光素子が有する一対の電極のいずれか1つの電極と前記スイッチング素子のドレイン電極またはソース電極のいずれか1つの電極とが接続されることを特徴とする画像入力装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−98903(P2011−98903A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254006(P2009−254006)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】