説明

新規ポリケタイド合成酵素によるクルクミノイドの製造

【課題】クルクミノイドを安価に製造するための新規ポリケタイド合成酵素、および該酵素を用いた方法の提供。
【解決手段】以下の物理化学的性質:(a)分子量:約86kDaのホモダイマー(b)至適pH:pH6.5〜7.5(37℃で測定)(c)至適温度:40〜50℃(pH7.0で測定)(d)熱安定性:70℃で失活(pH7.0で測定)を有し、イネ科植物由来の新規3型ポリケタイド合成酵素、該酵素をコードするDNA、該DNAを含むベクター、該DNAが導入された形質転換体、該形質転換体を培養することを含むクルクミノイドの製造方法、該形質転換体を含む、形質転換植物体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリケタイド合成酵素、および該酵素によってクルクミノイドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン・ターメリックは独特な香気と刺激性の辛み、わずかな苦みを持ち、鮮やかなオレンジ色を呈するため、香辛料、染料として用いられている。一般にウコンと呼ばれているのは、日本では秋ウコン(学術名Curcuma longa)をさし、熱帯アジアに自生するショウガ科の多年草である。ウコンの有効成分は、クルクミンやその類縁体、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンであり、これら化合物はクルクミノイドと総称される。
【0003】
ウコンは何世紀にもわたり、インドや中国などのアジア地域において民間療法や漢方薬として用いられてきた。ウコンが科学的に世界的な注目を集める契機となったのは、1990年代にアメリカ国立ガン研究所(National Cancer Institute, NCI)による“Designer Foods Program”プロジェクトにおいて、ガンの予防に効果がある食品として取り上げられたことである。以来、集中的に研究が行われ、現在までに、抗酸化作用、抗炎症作用、創傷治癒の促進、血清コレステロール低下、体脂肪蓄積抑制効果等などの人体に有益な薬理活性が報告されている。また、クルクミノイドには、経口投与による大腸、結腸、十二指腸、胃、食道、口腔癌の予防効果や、血管新生の阻害、転移抑制などの制癌作用がある。このようにクルクミノイドはその多様な生理活性から近年非常に注目を集めており、産業上の利用価値は大きい。以上のような理由から、クルクミノイドは今後の需要の大幅な拡大が予想されるが、現在その生産は、熱帯・亜熱帯地域においてのみ栽培可能であるウコンからの抽出に頼っている。連作による傷害、また、生産地域の人件費の推移などを考慮すると、クルクミノイドの安価大量生産法の確立が望まれていた。
【0004】
イネ(学名Oryza sativa)は単子葉植物、イネ科の一年草であり、その収穫物は世界三大穀物のうちの一つ、米である。イネは、単子葉植物のモデル生物として用いられており、ゲノム解読・アノテーションが完了している(非特許文献1)。また、cDNA分譲等の研究補助体制が整備されている。植物からは、生理学的活性を示す多種多様な天然化合物が抽出され、その一部は食品、薬品、香料などとして利用されている。
【0005】
III型ポリケタイド合成酵素(III型PKS)は、芳香族ポリケタイドの合成を触媒する酵素であり、植物、原核および真核微生物に広く分布している。しかしながら、イネからはフラボンなど極小数の芳香族ポリケタイドしか報告されておらず、殆どのイネのIII型PKSは、通常の条件では発現・機能しない遺伝子であると考えられた。
【0006】
【非特許文献1】Kikuchi et al. (2003) Collection, mapping, and annotation of over 28,000 cDNA clones from japonica rice. Science 301, 376-379
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、クルクミノイドを安価に製造するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、イネのゲノムDNAにおけるos07g17010 (NCBI accession No. AK109558)遺伝子によってコードされるタンパク質を用いてクルクミノイドを製造できること、すなわち該遺伝子によってコードされるタンパク質がクルクミノイド合成酵素として機能することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)以下の(a)または(b)のタンパク質:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列からなり、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するタンパク質。
(2)以下の物理化学的性質:
(a)分子量:約86kDaのホモダイマー
(b)至適pH:pH6.5〜7.5(37℃で測定)
(c)至適温度:40〜50℃(pH7.0で測定)
(d)熱安定性:70℃で失活(pH7.0で測定)
を有し、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するイネ科植物由来のタンパク質。
(3)クルクミノイドの製造に使用するための(1)または(2)記載のタンパク質。
(4)(1)または(2)記載のタンパク質を、マロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAと接触させることを含む、クルクミノイドを製造する方法。
(5)式I:
【0009】
【化1】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
(1)または(2)記載のタンパク質を、マロニルCoAおよび式II:
【0010】
【化2】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるカルボニルCoAの少なくとも1種と接触させることを含む、(4)記載の方法。
(6)以下の(a)または(b)のDNA:
(a)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(7)(6)記載のDNAを含むベクター。
(8)(6)記載のDNAが導入された形質転換体。
(9)4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAおよびアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAをさらに有する、(8)記載の形質転換体。
(10)フェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするDNAをさらに有する、(9)記載の形質転換体。
(11)植物細胞にDNAが導入されたものである、(8)〜(10)のいずれかに記載の形質転換体。
(12)クルクミノイドを製造する方法であって、(9)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体を少なくとも1種のカルボン酸の存在下で培養することを含む、前記方法。
(13)式I:
【0011】
【化3】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
(9)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体を式II':
【0012】
【化4】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるカルボン酸の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、(12)記載の方法。
(14)式I:
【0013】
【化5】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
(9)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体を式II”:
【0014】
【化6】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるアミノ酸の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、前記方法。
(15)クルクミノイドの製造に用いるための(7)記載のベクター。
(16)クルクミノイドの製造に用いるための(8)〜(11)のいずれかに記載の形質転換体。
(17)(11)記載の形質転換体を含む、形質転換植物体。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、クルクミノイドを工業的に製造するための手段が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、os07g17010 (NCBI accession No. AK109558)遺伝子(配列番号2の塩基配列からなる遺伝子)によってコードされるタンパク質(配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質)がIII型ポリケタイド合成酵素の活性を有すること、該タンパク質を用いてクルクミノイドを製造できることを見出した。すなわち本発明は、新規なIII型ポリケタイド合成酵素に関する。os07g17010は、全長1,209 bpのcDNA上にコードされており、全長402アミノ酸からなるタンパク質で理論分子量は43175.96 Daである。最も代表的なIII型ポリケタイド合成酵素であるカルコン合成酵素(CHS)(Austin, M. B. and Noel, J. P. (2003) The chalcone synthase superfamily of type III polyketide synthases. Nat. Prod. Rep. 20, 79-110)と49%の相同性を有し、III型ポリケタイドの活性中心に存在する活性に必要な3つのアミノ酸残基(Cys174、His316、Asn349)が全て保存されている(図1)。
【0017】
本発明のIII型ポリケタイド合成酵素の具体例としては、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。本発明のIII型ポリケタイド合成酵素には、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質が包含される。「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の生物学的機能、生化学的機能を有することを指す。
【0018】
配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質としては、配列番号1のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列からなり、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するタンパク質が挙げられる。
【0019】
III型ポリケタイド合成酵素はマロニル-CoAを脱炭酸し、アセチル-CoAカルバニオンを発生させる活性を有する。こうして生じたアセチル-CoAカルバニオンが他のカルボニル-CoAに求核攻撃することで新規炭素-炭素結合が形成される。
【0020】
III型ポリケタイド合成酵素の活性を有する本発明のタンパク質は、クルクミノイドを合成する活性を有する。すなわち、本発明のタンパク質においてIII型ポリケタイド合成酵素の活性は、より具体的には、クルクミノイドを合成する活性である。従って、本発明のタンパク質は、III型ポリケタイド合成酵素(III型PKS)であると同時に、クルクミノイド合成酵素(curcumin synthase, CUS)であるといえる。
【0021】
配列番号1のアミノ酸配列における、1または数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換は、常用される技術、例えば、部位特異的変異誘発法(Zollerら、Nucleic Acids Res.10 6478-6500,1982)により、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAの配列(配列番号2の塩基配列)を改変することにより実施することができる。
【0022】
ここで、タンパク質の構成要素となるアミノ酸の側鎖は、疎水性、電荷、大きさなどにおいてそれぞれ異なるものであるが、実質的にタンパク質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が、経験的にまた物理化学的な実測により知られている。例えば、異なるアミノ酸残基間の保存的置換の例としては、グリシンとプロリン、グリシンとアラニンまたはバリン、ロイシンとイソロイシン、グルタミン酸とグルタミン、アスパラギン酸とアスパラギン、システインとスレオニン、スレオニンとセリンまたはアラニン、リジンとアルギニン等のアミノ酸の間での置換が知られている。但し、ここで欠失、付加、挿入または置換されるアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸配列におけるCys174、His316、Asn349(図1中赤枠、活性が失活すると予想される)およびThr204、Phe225、Leu263、Met265、Gly274、Thr321、Gly352(図1中青枠、活性が変化すると予想される)以外のアミノ酸である。
【0023】
従って、配列番号1のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換が生じた結果得られたアミノ酸配列からなる変異型タンパク質であっても、その変異が配列番号1に記載のアミノ酸配列の三次元構造において保存性が高い変異であって、その変異型タンパク質が上記III型ポリケタイド合成酵素の活性、好ましくはクルクミノイドを合成する活性を有しているのであれば、これらの変異型タンパク質もまた本発明のタンパク質に包含される。ここで、数個とは、通常2〜5個、好ましくは2〜3個である。
【0024】
また本発明のタンパク質には、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらに好ましくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質も包含される。
【0025】
本発明のタンパク質のうち、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質については、例えば、配列番号2の塩基配列における一連の3塩基を、当業者に公知の解析ソフトを用いて、その塩基の組み合わせ(すなわち、コドン)によりコードされている1つのアミノ酸に置き換えることにより得ることができる。そのアミノ酸配列が決定されたタンパク質は、その配列を元に当業者に公知の手法、例えば、ペプチド合成法に従って調製することができる。さらに、当該タンパク質をコードする塩基配列からなるDNAを含む組み換えベクターを作製し、該ベクターを適切な宿主中に導入して得られる形質転換体を培地に培養または飼育し、その培養物または飼育体から採取することによっても本発明のタンパク質を得ることができる。ここで使用する組み換えベクター、宿主、培地、各操作法および条件等については、当業者に公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。あるいは、無細胞タンパク質合成系により本発明のタンパク質を得ることもできる。無細胞タンパク質合成系は、細胞抽出液を用いて試験管内でタンパク質を合成する系である。「無細胞タンパク質合成系」は、mRNAの情報を読み取ってリボソーム上でタンパク質を合成する無細胞翻訳系とDNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系との両者を含む。無細胞タンパク質合成系は、系を容易に改変することができるため、目的のタンパク質に適した発現系を構築しやすいという利点がある。なお、無細胞タンパク質合成系の詳細については、特開2000-175695号などに記載されている。
【0026】
一実施形態において本発明のタンパク質は、イネ科植物、好ましくはイネ(Oryza sativa)に由来し、以下の物理化学的性質:
(a)分子量:約86kDaのホモダイマー
(b)至適pH:pH6.5〜7.5(37℃で測定)
(c)至適温度:40〜50℃(pH7.0で測定)
(d)熱安定性:70℃で失活(pH7.0で測定)
を有し、III型ポリケタイド合成酵素、好ましくはクルクミノイドを合成する活性する。
【0027】
本発明においてクルクミノイドは、クルクミン[1,7-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン]、デメトキシクルクミン[1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-7-(4- ヒロドキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン]、ビスデメトキシクルクミン[1,7-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3.5-ジオン]およびこれらの類縁体を意味する。より具体的には、本発明においてクルクミノイドは、以下の式I:
【0028】
【化7】

で表される化合物をさす。
【0029】
式Iの化合物には、その異性体、例えば、立体異性体(幾何異性体、回転異性体、光学異体を含む)、および互変異性体も包含される。式Iの化合物の互変異性体として、以下の構造の化合物が挙げられる。以下、これら異性体を合わせて式Iの化合物と称する。
【0030】
【化8】

式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す。ここで、Aで表される芳香族基は、芳香環が式Iに表される炭素鎖に直接結合するものである。
【0031】
芳香族基としては、芳香族炭化水素基(アリール)および芳香族複素環基(ヘテロアリール)が挙げられる。
【0032】
芳香族炭化水素基は、5〜20個の炭素原子、好ましくは6〜14個の炭素原子、さらに好ましくは6〜10個の炭素原子を含む芳香族の単環式または多環式炭化水素環基をさす。具体的には、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびフェナントリジニルなどが挙げられる。
【0033】
芳香族複素環基は、5〜20個の炭素原子、好ましくは6〜14個の炭素原子、さらに好ましくは6〜10個の炭素原子を含み、その際、1個以上の環炭素、好ましくは1〜4個の環炭素が、それぞれ、酸素原子、窒素原子または硫黄原子などのヘテロ原子で置き換えられている芳香族の単環式環基または多環式環基を意味する。具体的には、イミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ピリダジル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピラジニル、キノキサリル、ピリミジニル、ピリダジニル、フリル、チエニル、トリアゾリル、チアゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、オキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキノリニル、イソインドリル、アクリジニルおよびベンゾイソオキサゾリルなどが挙げられる。
【0034】
芳香族基における置換基としては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、シアノ、イソシアナート、カルボキシル、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6アルキルチオ、アリール、ヘテロアリール等が挙げられる。好ましい置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシおよびフェニルである。基Aにおいて芳香族基が置換されている場合、置換基の数は、通常1〜3個、好ましくは1〜2個、より好ましくは1個である。芳香族基が複数の置換基を有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0035】
芳香族基としては、フェニル、フリル、チエニルおよびナフチルが好ましく、特に、以下の基が好ましい。
【0036】
【化9】

これらの基は、上記置換基の1〜3個、好ましくは1〜2個、より好ましくは1個で置換されていてもよい。
【0037】
置換されたフェニルとしては、具体的には、以下の基:
【0038】
【化10】

[式中、X、YおよびWは、同一または異なって、H、ハロゲン(好ましくは、フッ素または塩素)、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはフェニルを表す]が挙げられる。
【0039】
Aの好ましい具体例を以下に列挙する。
【0040】
【化11】

【0041】
本発明はまた、上記本発明のタンパク質を用いて、クルクミノイドを製造する方法に関する。本発明のクルクミノイド製造方法は、本発明のタンパク質を、マロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAと接触させることを含む。すなわち、本発明の方法は、本発明のタンパク質に、マロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAを基質として反応させるものである。より具体的には、本発明は、式I:
【0042】
【化12】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
本発明のタンパク質を、マロニルCoAおよび式II:
【0043】
【化13】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるカルボニルCoAの少なくとも1種と接触させることを含む、前記方法に関する。ここで、式IおよびIIにおける基Aについては、すでにクルクミノイドについて記載したとおりである。
【0044】
本発明のタンパク質によるクルクミノイドの合成は、以下のように進行すると考えられる。すなわち、まず式IIのカルボニルCoAが本発明のタンパク質(CUS)とチオエステル結合を形成し、これにマロニルCoAが反応することによりアシル鎖が伸長してジケタイドCoAが生成する。このジケタイドCoAが加水分解され、生じたジケタイド酸が、本発明のタンパク質とチオエステル結合を形成した別の式IIのカルボニルCoAと縮合することでクルクミノイドが合成される。
【0045】
【化14】

【0046】
式IIで表されるカルボニルCoAは、単一種を用いても複数種を用いてもよい。単一種を用いると、用いたカルボニルCoAに由来する同一の基Aを2つ有する式Iのクルクミノイドが得られる。複数種を用いると、それぞれ基Aの異なるカルボニルCoAを用いることになり、各カルボニルCoAに由来する同一の基Aを2つ有する式Iのクルクミノイド、異なる基Aを1つずつ有するカルボニルCoA、またはこれらの混合物が得られる。すなわち、本発明のタンパク質を、マロニルCoA、基Aを有する式IIのカルボニルCoAおよび基A'を有する式IIのカルボニルCoAと接触させることにより、基Aを2つ有する式Iのクルクミノイド、基A'を2つ有する式Iのクルクミノイド、基Aと基A'を有する式Iのクルクミノイド、またはこれら2種以上の混合物が得られる。
【0047】
本発明のタンパク質に、基質であるマロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAを接触させる反応は、特に制限されないが、通常、pH6.0〜8.0、好ましくはpH7.0の緩衝液中、37℃で実施する。マロニルCoAの使用量は、反応系あたり、通常0.0001〜0.5質量%、好ましくは0.0001〜0.2質量%である。カルボニルCoAの使用量は、反応系あたり、通常0.0001〜0.5質量%、好ましくは0.0001〜0.2質量%である。本発明のタンパク質の使用量は、反応系あたり、通常0.002〜2質量%、好ましくは0.004〜1.5質量%である。
【0048】
反応後、メタノール、エタノールなどによる沈殿法、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いた抽出法、クロマトグラフィーなど公知の方法により、反応液からクルクミノイドを容易に回収することができる。
【0049】
本発明のクルクミノイドの製造方法において、本発明のタンパク質と、基質であるマロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAとの接触は、本発明のタンパク質を産生する形質転換体、その培養物またはその処理物と基質とを接触させることによっても実施できる。また、本発明のタンパク質を産生する形質転換体と基質とを接触させることには、基質の存在下、本発明のタンパク質を産生する細胞を培養することが含まれる。本発明のタンパク質を産生する細胞として、本発明のタンパク質をコードするDNAが導入された形質転換体を用いることができる。形質転換体の培養物および処理物は、本発明のタンパク質を含むものである。培養物には培養上清が含まれ、形質転換体の処理物には、遠心分離などにより細胞を回収し適当な緩衝液などに懸濁したもの、細胞を有機溶媒などで処理したもの、細胞を加温処理したもの、細胞を破砕して本発明のタンパク質を分画したもの、精製された本発明のタンパク質、ならびにこれらを多糖類やポリアクリルアミドなどで固定化したものなどが含まれる。
【0050】
本発明のタンパク質をコードするDNAの具体例として、配列番号2の塩基配列からなるDNAが挙げられる。本発明のタンパク質をコードするDNAには、配列番号2の塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAが包含される。ここで「機能的に同等」とは、対象となるDNAによってコードされるタンパク質が、配列番号2の塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質と同等の生物学的機能、生化学的機能を有することを指す。配列番号2の塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAとしては、配列番号2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが挙げられる。当該DNAによってコードされるタンパク質は、上記の本発明のタンパク質の活性、すなわちIII型ポリケタイド合成酵素の活性、好ましくはクルクミノイドを合成する活性を有する。
【0051】
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、低ストリンジェントな条件および高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件であり、好ましくは50℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件である。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSCおよび0.1% SDSで洗浄する条件である。上記のようなストリンジェントな条件下では、配列番号2の塩基配列と高い相同性(相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上)を有する塩基配列からなるDNAが、該DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズすることができる。
【0052】
すなわち、配列番号2に記載の塩基配列全長において、種々の人為的処理、例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異、欠失、連結等により、部分的にその配列が変化したものであっても、これらの変異型DNAが配列番号2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、上記本発明のタンパク質をコードするDNAであれば、配列番号2に示した塩基配列との相違に関わらず、本発明のタンパク質をコードするDNAに含まれる。
【0053】
本発明のタンパク質をコードするDNAは、例えば、イネ科植物、好ましくはイネ(Oryza sativa)の組織から得ることができる。なお、実験手法に関しては、例えば、「Molecular Cloning(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning A Laboratory Mannual Second Edition (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY」などに基づいて実施することができる。例えば、以下のようにして得ることができる。抽出・精製したRNAから、cDNAを作製し、ライブラリー化する。そして既知のデータベース情報から既に単離されている遺伝子情報を得て、これらの遺伝子の塩基配列を基に作成したオリゴヌクレオチドプライマーを利用するPCR法(例えば、Inverse-PCR法、アンカーPCR法、TAIL-PCR法)、あるいは該遺伝子のDNA配列をプローブに用いたハイブリダイゼーション法を実施することにより、該遺伝子に相同なcDNAを得ることができる。
【0054】
本発明のタンパク質をコードするDNAが導入された形質転換体は、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAを必要に応じて、PCRまたはクローニング技術を用いて増幅し、増幅されたDNAを適切な発現ベクターに組み込んで組み換えベクターを作製し、さらに該ベクターによって適切な宿主細胞を形質転換し、適切な培地中に培養することによって得ることができる。クローニング、形質転換などの技術については、例えば、Sambrook, J. et. al., 1989(前掲)に記載されており、これらの手法を適宜選択して利用できる。
【0055】
本発明のタンパク質は、例えば、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、トリコスポロン属およびピチア属などに属する酵母、エシェリヒア属、バチラス属、セラチア属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属およびシュードモナス属などに属する細菌、オリザ属に属する植物細胞などの宿主ベクター系で発現させることができる。糸状菌などの菌類も宿主として使用できる。
【0056】
発現ベクターは、宿主細胞内で自律複製可能または相同組み換え可能であるとともに、プロモーターに加えてリボゾーム結合配列、転写終結配列、複製開始点なども適宜含みうる。ベクターの種類は特に限定されないが、プラスミド、ファージを含むウイルス、コスミドなどが挙げられる。発現ベクターの具体例として、細菌の場合、pBtrp2、pBTac1、pBTac2(ベーリンガーマンハイム社)、pQE(キアゲン社)、pET(ノバジェン社)、pBluescript(ストラタジーン社)など、酵母の場合、pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL SV40(ストラタジーン社)、植物細胞の場合、植物ウイルス(例えば、カリフラワーモザイクウイルス等)が挙げられる。
【0057】
宿主細胞へのDNAの導入は、たとえばカルシウムイオンを用いる方法、プロトプラスト法、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法などの一般的な方法で実施できる。あるいは、形質転換因子としてアグロバクテリウム(Agrobacterium)属菌(例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes))を用いたT-DNAによる植物細胞の形質転換方法等を用いることができる。なお、プロトプラスト法、パーティクルガン法、形質転換因子を用いる方法については、例えば、植物代謝工学ハンドブック(NTS(株)社)に基づいて実施することができる。
【0058】
また、本発明においては、ベクターとして植物ウイルス(カリフラワーモザイクウイルス等)を用いることによって形質転換植物細胞を得ることもできる。すなわち、まず、植物ウイルスゲノムを大腸菌由来のベクターなどに挿入して組み換え体を調製した後、植物ウイルスゲノム中に、導入するDNAを挿入する。このように調製された植物ウイルスゲノムを制限酵素によって該組み換え体から切り出し、植物細胞に接種することによって、これらのDNAを導入することができる。なお、方法の詳細については、Hohnらの方法(Molecular Biology of Plant Tumors(Academic Press、New York)1982、pp549)、米国特許第4,407,956号明細書等を参考にすることができる。
【0059】
続いて、得られた形質転換体を培地で培養する。形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0060】
炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコースなどの糖類、グリセリンなどのポリオール類、メタノールなどのアルコール類、またはピルビン酸、コハク酸もしくはクエン酸等の有機酸類を使用することができる。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物、メチルアミンなどのアルキルアミン類、またはアンモニアもしくはその塩などを使用することができる。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミン、消泡剤なども必要に応じて使用してもよい。また、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドなどのタンパク質発現誘導剤を必要に応じて培地に添加してもよい。
【0061】
培養は、通常、振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下、好ましくは0〜40℃、より好ましくは10〜37℃、特に好ましくは15〜37℃で培養を行う。培養期間中、培地のpHは宿主の発育が可能で、生産されたクルクミノイドの活性が損なわれない範囲で適宜変更することができるが、好ましくはpH 4〜8程度の範囲である。pHの調整は、無機または有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0062】
形質転換体として、本発明のタンパク質をコードするDNAに加えて、4-クマル酸CoAリガーゼ(4CL)をコードするDNAおよびアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)をコードするDNAを有する形質転換体を用い、該形質転換体をカルボン酸の存在下で培養することによりクルクミノイドを製造することができる。4-クマル酸CoAリガーゼがカルボン酸をカルボニルCoAに変換し、該カルボニルCoAとマロニルCoAを基質として、本発明のタンパク質(CUS)によりクルクミノイドが合成される。4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAは、宿主がもともと有するものでもよいし、本発明のタンパク質をコードするDNAと同様に宿主に導入したものでもよい。植物細胞を宿主とする形質転換体は、4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAをもともと有するので、新たに導入しなくともよい。アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)はすべての生物がもともと保有していることから、基質としてマロニルCoAを添加しなくとも形質転換体が自ら産生するマロニルCoAを基質とすることができる。その場合、細胞内アセチルCoA濃度を上昇させる前駆体、例えば酢酸等を添加することが好ましい。上記のとおり、すべての形質転換体がアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAを有するが、アセチルCoAカルボキシラーゼ活性を増強する目的で、形質転換体にアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAを導入してもよい。
【0063】
上記カルボン酸を基質として加える酵素反応も、本発明のタンパク質と少なくとも1種カルボニルCoAおよびマロニルCoAとが接触して反応する過程を経ることから、本発明のタンパク質をマロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAと接触させる方法に含まれる。
【0064】
当該形質転換体の培養は、上記と同様に実施できるが、上記の方法で培養した菌体を遠心分離等の方法で回収し、得られた湿潤菌体をリン酸カリウム等の緩衝液または最少培地中で上記カルボン酸と共に浸透または培養する方法が望ましい。この静止菌体を用いた酵素反応では菌体の増殖は起こらないと考えられるが、クルクミノイドの生産にマロニル-CoAの供給が必要なため、菌体を生存させる目的でグルコースなどの炭素源を加えることが望ましい。本発明において形質転換体の培養には、このように静止菌体を用いる場合も包含される。
【0065】
従って、一実施形態において本発明は、式I:
【0066】
【化15】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
本発明のタンパク質をコードするDNAが導入された形質転換体であって、4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAおよびアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAを有する形質転換体を式II':
【0067】
【化16】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるカルボン酸の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、前記方法に関する。ここで、基Aおよび得られる式Iのクルクミノイドについては、既に記載したとおりである。
【0068】
式II'のカルボン酸は、4-クマル酸CoAリガーゼにより、式II
【0069】
【化17】

のカルボニルCoAに変換される。
【0070】
4-クマル酸CoAリガーゼ(4CL)をコードするDNAは、式II'のカルボン酸を式IIのカルボニルCoAに変換する上記反応を触媒する活性を有する酵素をコードするものであれば特に制限されず、動物由来でも植物由来でも微生物由来でもよい。例えば、酵母由来、例えば、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、トリコスポロン属およびピチア属酵母由来のものを使用することができる。
【0071】
アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)をコードするDNAも、アセチルCoAをマロニルCoAに変換する活性を有する酵素をコードするものであれば特に制限されず、動物由来でも植物由来でも微生物由来でもよい。例えば、コリネバクテリウム属菌由来のものを使用することができる。
【0072】
形質転換体として、本発明のタンパク質をコードするDNA、4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAおよびアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAに加えて、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)をコードするDNAを有する形質転換体を用い、該形質転換体をアミノ酸の存在下で培養することによりクルクミノイドを製造することができる。フェニルアラニンアンモニアリアーゼがアミノ酸をカルボン酸に変換し、4-クマル酸CoAリガーゼがカルボン酸をカルボニルCoAに変換し、該カルボニルCoAとマロニルCoAを基質として、本発明のタンパク質によりクルクミノイドが合成される。フェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするDNAおよび4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAは、宿主がもともと有するものでもよいし、本発明のタンパク質をコードするDNAと同様に宿主に導入したものでもよい。植物細胞を宿主とする形質転換体は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするDNAおよび4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAをもともと有するので、新たに導入しなくともよい。アセチルCoAカルボキシラーゼはすべての生物がもともと保有していることから、基質としてマロニルCoAを添加しなくとも形質転換体が自ら産生するマロニルCoAを基質とすることができる。その場合、細胞内アセチルCoA濃度を上昇させる前駆体、例えば酢酸等を添加することが好ましい。上記のとおり、すべての形質転換体がアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAを有するが、アセチルCoAカルボキシラーゼ活性を増強する目的で、形質転換体にアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAを導入してもよい。
【0073】
上記アミノ酸を基質として加える酵素反応も、本発明のタンパク質と少なくとも1種カルボニルCoAおよびマロニルCoAとが接触して反応する過程を経ることから、本発明のタンパク質をマロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAと接触させる方法に含まれる。
【0074】
当該形質転換体の培養は、カルボン酸からクルクミノイドを生産する上記の反応と同様に実施できる。
【0075】
従って、一実施形態において本発明は、式I:
【0076】
【化18】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
本発明のタンパク質をコードするDNAが導入された形質転換体であって、4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNA、アセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAおよびフェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするDNAを有する形質転換体を式II”:
【0077】
【化19】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるアミノ酸の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、前記方法に関する。
【0078】
ここで、基Aおよび得られる式Iのクルクミノイドについては、既に記載したのと同様である。
【0079】
フェニルアラニンアンモニアリアーゼにより、式II”のアミノ酸は、式II'
【0080】
【化20】

のカルボン酸に変換される。
【0081】
フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)をコードするDNAは、式II”のアミノ酸を式II'のカルボン酸に変換する上記反応を触媒する活性を有する酵素をコードするものであれば特に制限されず、動物由来でも植物由来でも微生物由来でもよい。例えば、酵母由来、例えば、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、トリコスポロン属およびピチア属酵母由来のものを使用することができる。
【0082】
式II”のアミノ酸がフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)によって式II’のカルボン酸に変換され、さらに4-クマル酸CoAリガーゼ(4CL)によって式IIのカルボニルCoAに変換され、そして、このカルボニルCoAとマロニルCoAから本発明のタンパク質(CUS)によって式Iのクルクミノイドが合成される反応の概要を以下に示す。
【0083】
【化21】

【0084】
本発明はまた、前記形質転換植物細胞を含む形質転換植物体に関する。本発明の「形質転換植物体」とは、前記形質転換植物細胞を有する植物体であれば特に制限されないが、例えば、前記形質転換細胞から再生された形質転換植物体が挙げられる。形質転換植物細胞から植物体を再生する方法としては、土肥らの方法(特願平11-127025号公報)を参照することができる。また、本発明の形質転換植物体には、該形質転換植物体から得られる種子、および該種子から得られる植物体をも含む。本発明の形質転換植物体から種子を得る方法としては、例えば、形質転換植物体を適当な培地において発根させ、その発根体を水分含有の土を入れたポットに移植する。適当な栽培条件下で生育させ、最終的に種子を形成させて、該種子を得る。また、種子から植物体を得る方法としては、例えば、前記のようにして得られた形質転換植物体由来の種子を、水分含有の土に播種し、適当な栽培条件下で生育させることにより植物体を得ることができる。本発明の形質転換植物体は、本発明のタンパク質を発現することから、該植物体からクルクミノイドを抽出することが可能になる。
【0085】
クルクミノイドは、抗酸化作用、 抗炎症作用、創傷治癒の促進、血清コレステロール低下、体脂肪蓄積抑制効果等などの人体に有益な薬理活性が報告されている。また、クルクミノイドには、経口投与による大腸、結腸、十二指腸、胃、食道、口腔癌の予防効果や、血管新生の阻害、転移抑制などの制癌作用がある。このようにクルクミノイドはその多様な生理活性から近年非常に注目を集めており、産業上の利用価値は大きい。以上のような理由から、クルクミノイドは今後の需要の大幅な拡大が予想されるが、現在その生産は、熱帯・亜熱帯地域においてのみ栽培可能であるウコンからの抽出に頼っている。本発明は、医薬品や機能性食品として注目を集めているクルクミノイドおよび類縁化合物の微生物を含む、種々の生物種での生産・創製を可能とする。それまで有機合成や植物などの生体からの単離に依存してきた有用化合物の生産が、新規酵素の発見により微生物生産におきかわった例は無数にある。近年のメタボリックエンジニアリングの進展により、微生物による物質生産における生産量の増大は容易になり、実際、複雑な構造を有する二次代謝産物であっても微生物による大量生産が可能になる。
【実施例】
【0086】
大腸菌 (Escherichia coli) JM109株、pUC19、制限酵素、T4 DNAリガーゼはTakara biochemicalsより購入した。また、大腸菌BL21 (DE3) 株、BLR (DE3) 株、pET16b、pRSFDuet-1、pCDFDuet-1は、Novagen社より購入した。なお、プラスミドの安定な保持を目的として、アンピシリン、カナマイシンおよびストレプトマイシンをそれぞれ終濃度100 μg/ml、50 μg/ml、50 μg/mlになるよう必要に応じて培地中に加えた。N-アセチルシステアミンはAldrich社より購入した。ドデカノイルCoA、クルクミン、ヘキサノイルCoA、マロニルCoA、メチルマロニルCoA、オクタデカノイルCoAおよびスクシニルCoAはSigma社より購入した。4-クマロイルCoA、CoAおよびフェルロイルCoAはBlecherが報告した方法に従い合成した。シナモイル-ジケタイドNACおよびヘキサノイル-ジケタイドNACはLokotらが報告した方法(Lokot, I. P., Pashkovsky, F. S., and Lakhvich, F. A. (1999) Tetrahedron 55, 4783-4792)に従い合成した。シナモイル-ジケタイド酸およびヘキサノイル-ジケタイド酸はMatsumuraらが報告した方法(Matsumura, S., Asai, N., and Yoneda, S. (1985) Chem. Soc. Jap. 3, 310-316)およびLokotら(Lokot, I. P., Pashkovsky, F. S., and Lakhvich, F. A. (1999) Tetrahedron 55, 4783-4792)に従い合成した。
【0087】
実施例1 組み換えos07g17010遺伝子産物の調製
os07g17010遺伝子(配列番号2)をpET16b(Novagen社)にクローニングし、pET16b-CUSを構築した。pET16b-CUSを大腸菌(E. coli BL21 (DE3))に形質転換することにより、組み換えos07g17010遺伝子産物(組み換えタンパク質)を得た。得られた組み換えタンパク質(以下CUSと称する)をNi-NTAカラム(Qiagen社)によりSDS-PAGE上単一になるまで精製し、酵素標品とした。具体的には以下の手順でCUSを得た。
【0088】
rgrcで購入したos07g17010の cDNA を、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
フォワードプライマー: 5’-CCGGAATTC CATATGGCACCGACGACGACCAT-3’ (下線部はそれぞれEcoRIサイトおよびNdeI サイト)。(配列番号3)
リバースプライマー: 5’-CGCGGATCCTTAATTCACATGAGAGGTGG-3’ (下線部はBamHIサイト)。(配列番号4)
【0089】
pUC19のEcoRI、BamHIサイトにクローニングした。シークエンスによりエラーが入っていないことを確認した後、N末端側にHis-tagを付加した形でpET16bにクローニングし、pET16b-CUSを構築した。C174S変異酵素は、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用い、以下のプライマーを用いてpET16b-CUSに部位特異的変異導入を行った。
フォワードプライマー: 5’-CCACCTCAACGGCTCCTTCGCCGGCTGCG-3’ (配列番号5)
リバースプライマー: 5’-CGCAGCCGGCGAAGGAGCCGTTGAGGTGG-3’ (配列番号6)
【0090】
pET16b-CUSをBL21(DE3)に導入した。得られた菌体を1 lのLB培地に植菌し、27℃で一晩振盪培養した。得られた菌体を集菌後、10 mM イミダゾール溶液 (10 mM イミダゾール、10 mM Tris-HCl、10% グリセロール) に懸濁し、菌体破砕後、遠心して可溶性分画を分け取った。これをNi-NTA super flow resin columnを用いて精製した。洗浄液として10 mM イミダゾール溶液を、溶離液として250 mM イミダゾール溶液 (250 mM イミダゾール、10 mM Tris-HCl、10% グリセロール) を用いた。精製したタンパク質をLysis buffer (10 mM Tris-HCl、10% グリセロール) を用いて透析し、centriprep (Cosmo bio社) により濃縮した。
【0091】
実施例2 酵素活性の評価
実施例1で得られた組み換えタンパク質CUSを用いて、クルクミノイドの生成試験を実施した。
【0092】
100 μMのマロニルCoA、100 μMのカルボニル化合物(4-クマロイルCoA、シナモイルCoA、フェルロイルCoA)、100 mMのリン酸カリウムバッファー (pH 7.0) および3.5 μgのCUSを含む反応液100 μlを用いて反応を行った。
【0093】

反応液を37℃において1時間反応させ、20 μlの6 M塩酸を加えることで反応を停止した。生成物を酢酸エチルにより抽出し、遠心エバポレーターにより濃縮した。得られた固体を20 μlのメタノールに溶解しLC-APCIMS/MSおよびHPLC分析に供した。LC-APCIMS/MS分析はesquire high-capacity trap plus (HCT) system (Bruker Daltonics社) を用いて、HPLC分析はLaChrom ELITE system (Hitachi) を用いてそれぞれ行った。HPLC分析はPegasil-B C4逆相カラム(4.6 x 250 mm) (Senshu科学)を用い、水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の濃度を変化させるグラジエント (45分間の間に 水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸=90/10/0.1から0/100/0.1)、流速1.0 ml/minにより溶出を行なった。UVスペクトルはHitachi diode array detector L-2450により収集した。生成した各化合物のイオンクロマトグラフおよびマススペクトルを図2に示す。反応の概要を図3に示す。
【0094】
4-クマロイルCoA (1a)と100 μM マロニルCoAを基質として、ビスデメトキシクルクミン (1e)および少量のトリケチドピロン (1c)の生成が確認された。CUSによるビスデメトキシクルクミンにおける4-クマロイルCoAの見かけ上のKm値は172 μM、kcat値は2.53 x 10-3 min-1であった。
【0095】
また、シナモイルCoA (2a) とフェルロイルCoA (3a)1を基質として、ジシナモイルメタン(2e)とクルクミン(3e)が得られた。さらに、シナモイルCoA (2a)とフェルロイルCoA (3a)を基質として、4-クマロイルCoA (1a)の場合と同様、少量のトリケチドピロン (2c)およびトリケチドピロン (3c))が副産物として得られた。
【0096】
実施例3 CUSのジケタイド中間体との反応
100 μMのジケタイド酸(シナモイルジケタイド酸(2d)もしくはヘキサノイル-ジケタイド酸(4d))もしくはジケタイドNAC (シナモイルジケタイド-NAC(1f)もしくはヘキサノイル-ジケタイド-NAC(2f))、100 μMのシナモイルCoAエステル(2a)、100 mMリン酸カリウムバッファー (pH 7.0) および3.5 μg CUS を含む100 μlの反応液を用いて反応を行なった。反応液を37oCにおいて1時間反応させ、20 μlの6 M塩酸を加えることで反応を停止した。その後、前述と同様に抽出および分析を行なった。生成した各化合物のイオンクロマトグラフおよびマススペクトルを図4に示す。反応の概要を図5に示す。
【0097】
シナモイルジケタイド酸(2d)とシナモイルCoA (2a)からジシナモイルメタン(2e)の生成が確認された。また、シナモイルジケタイド-NAC (1f)とシナモイルCoA (2a)からもジシナモイルメタン(2e)生成反応が進行したことから、CUSはジケタイド中間体の加水分解能を有していることが分かった。
【0098】
実施例4 大腸菌を用いたアミノ酸からのクルクミノイドの生産
【化22】

フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、4-クマル酸CoAリガーゼ(4CL)、アセチルCoA カルボキシラーゼ(ACC)およびCUSを、複製基点および薬剤耐性の異なる3種のプラスミドに導入し、pCDF-PAL/4CL、pRSF-ACCおよびpET16b-CUS をそれぞれ構築した。フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)および4-クマル酸CoAリガーゼ(4CL)遺伝子は、酵母由来のものを用いた。アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)遺伝子は、コリネバクテリウム属菌由来のものを用いた。これら3つのプラスミドをBLR (DE3)株に同時形質転換し、クルクミノイドを生産する大腸菌を得た。このPAL、4CL、ACCおよびCUSを強制同時発現したBLR (DE3)株を4 種類の培地(LB培地、チロシンを加えたM9培地、フェニルアラニンを加えたM9培地、チロシンおよびフェニルアラニンを加えたM9培地)でそれぞれ培養し、3 種のクルクミンの生成量を測定した。具体的手順は以下のとおりである。
【0099】
pET16b-CUS、pCDF-PAL/4CL、pRSF-ACCを保持したBLR(DE3)株を、100 μg/mlのアンピシリン、50 μg/mlのストレプトマイシンおよびカナマイシンを含む LB 培地 (Difco LB bloth) 2 mlに植菌し、37℃で一晩振盪培養した。これを100 mlのLB培地に2% 植菌し、27℃で5時間振盪培養した。終濃度1 mMになるようIPTGを加え、さらに27℃で5時間振盪培養した。得られた菌体を遠心により集菌し、湿菌体量を測定した。菌体が50 g/lになるようにM9培地(6 g/l Na2HPO4、3 g/l KH2PO4、0.5 g/l NaCl、1 g/l NH4Cl、1 mM MgSO4、100 μM CaCl2、4% グルコース、100 μg/ml アンピシリン、50 μg/ml ストレプトマイシン、50 μg/ml カナマイシン) に懸濁した。培養液20 mlに CaCO3 を約0.5 g加え、3 mMのチロシンもしくはフェニルアラニン、あるいはその両方を加え、27℃で60時間振盪培養した。培養液200 μlを6 M塩酸を用いてpH 3に調節し、酢酸エチルにより抽出したのち遠心エバポレーターを用いて濃縮した。得られたサンプルを40 μlのメタノールに溶解しHPLC分析に供した。HPLC分析はLaChrom ELITE system (Hitachi) において、Pegasil-B C4逆相カラム(4.6 x 250 mm) (Senshu科学)を用い、水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の濃度を変化させるグラジエント (45分間の間に水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸=90/10/0.1から0/100/0.1)、流速1.0 ml/minにより溶出を行なった。UVスペクトルはHitachi diode array detector L-2450により収集した。結果を以下の表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
本生産系を用いた場合、3 種のクルクミノイドが生成すると考えられる。チロシン由来の 4-クマロイルCoA 2分子が CUS に取り込まれた場合はビスデメトキシクルクミン(クルクミノイドA)が、フェニルアラニン由来のシナモイルCoA 2分子が取り込まれた場合は ビスデメトキシビスデヒドロキシクルクミン(クルクミノイドC)が、また、4-クマロイルCoAとシナモイルCoAが1分子ずつ取り込まれた場合はビスデメトキシデヒドロキシクルクミン(クルクミノイドB) がそれぞれ生成する。全体的にクルクミノイドCの生産量が多いのは PAL がチロシンよりもフェニルアラニンを好むためだと考えられる。また、3 mM のアミノ酸は過剰量であり、より低濃度のアミノ酸からも同程度の収率が得られると期待できる。
【0102】
実施例5 大腸菌を用いた天然型カルボン酸からの天然型クルクミノイドの生産
4CL、ACC、およびCUSを大腸菌 BLR (DE3)株内で強制同時発現することによりカルボン酸を基質として天然型クルクミンの生産を行った。PALを除いたことにより投与したカルボン酸由来のクルクミノイドのみが大腸菌内で生成されることになる。これらの酵素を複製基点、薬剤耐性の異なる3種のプラスミドに導入し、pCDF-4CL、pRSF-ACCおよびpET16b-CUS をそれぞれ構築した。これら3つのプラスミドを BLR (DE3) 株に同時形質転換しクルクミノイドを生産する大腸菌を得た。得られた大腸菌を3種の天然型カルボン酸(桂皮酸、p-クマリン酸またはフェルラ酸)を含む最小培地で培養した。具体的手順は以下のとおりである。
【0103】
pET16b-CUS、pCDF-4CL、pRSF-ACCを保持したBLR株を、100 μg/mlのアンピシリン、50 μg/mlのストレプトマイシンおよびカナマイシンを含む LB 培地 (Difco LB bloth) 2 mlに植菌し、37℃で一晩振盪培養した。これを100 mlのLB培地に2% 植菌し、27℃で5時間振盪培養した。終濃度1 mMになるようIPTGを加え、さらに27℃で5時間振盪培養した。得られた菌体を遠心により集菌し、湿菌体量を測定した。菌体が 50 g/lになるようにM9培地(6 g/l Na2HPO4、3 g/l KH2PO4、0.5 g/l NaCl、1 g/l NH4Cl、1 mM MgSO4、100 μM CaCl2、4% グルコース、100 μg/ml アンピシリン、50 μg/ml ストレプトマイシン、50 μg/ml カナマイシン) に懸濁した。培養液20 mlにCaCO3を約0.5 g加え、1 mMの天然型カルボン酸を1種加え、27℃で60時間振盪培養した。培養液200 μlを6 M塩酸を用いてpH 3に調節し、酢酸エチルにより抽出したのち遠心エバポレーターを用いて濃縮した。得られたサンプルを40 μlのメタノールに溶解しLC-APCIMS/MS分析に供した。LC分析はPegasil-B C4逆相カラム(4.6 x 250 mm) (Senshu科学)を用い、水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の濃度を変化させるグラジエント (45分間の間に 水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸=90/10/0.1から0/100/0.1)、流速1.0 ml/minにより溶出を行なった。
【0104】
その結果、ビスデメトキシビスデヒドロキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンまたはクルクミンがそれぞれ生成された。
【0105】
【化23】

【0106】
フェルラ酸は米糠から得られる産業廃棄物「米糠ピッチ」から安価生産出来ることが知られている(http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/ren/web/ren8/senter.html)。上記結果は、このフェルラ酸と大腸菌の形質転換体を混ぜるだけでクルクミノイドが高効率に得られることを示すものである。
【0107】
実施例6 大腸菌を用いた対称クルクミノイドの生産
天然型、非天然型あわせて18種のカルボン酸を選び出し、それらを基質として天然型および非天然型クルクミンの網羅的生産を行なった。その結果、天然型7種、非天然型11種のクルクミンの生産に成功した。
【0108】
pET16b-CUS、pCDF-4CL、pRSF-ACCを保持したBLR株を、天然型または非天然型カルボン酸1種を含む最小培地で培養した。カルボン酸の種類が異なる点以外は実施例5と同様の手順で実施した。
【0109】
その結果、天然型7種、非天然型11種のクルクミノイドの生産に成功した。クルクミノイドの生産に用いた基質と得られたクルクミノイドの構造を図6に示す。10b、13b、14b、15b、17bと18bの化合物は新規化合物であることを確認した。
【0110】
実施例6で生産された化合物の物理化学的データを以下に示す。
【0111】
化合物 1b; HPLC: Rt =35.2 , LC-APCIMS (positive): MS, m/z 277 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 277), m/z 131 m/z 193. UV: λmax 390 nm. 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.68 (d, 2H, J = 16 Hz), 7.57 (m, 4H), 7.39 (m, 6H), 6.65 (d, 2H, J = 16 Hz), 5.87 (s, 1H).
化合物 2b; HPLC: Rt = 25.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 309 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 309), m/z 147 m/z 225. UV: λmax 417 nm. 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.57 (d, 2H, J = 16 Hz), 7.48 (d, 4H, J = 8.5 Hz), 6.81 (d, 6H, J = 8.5 Hz), 6.58 (d, 2H, J = 16 Hz), 5.94 (s, 1H).
化合物 3b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 309 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 309), m/z 147 m/z 189.
化合物 4b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 309 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 309), m/z 147.
化合物 5b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 341 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 341), m/z 163 m/z 231 m/z 257.
化合物 6b; HPLC: Rt = 26.6, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 369 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 369), m/z 175 m/z 245 m/z 285. UV: λmax 426 nm.
化合物 8b; HPLC: Rt = 35.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 313 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 313), m/z 149 m/z 229. 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.64 (d, 2H, J = 16 Hz), 7.56 (dd, 4H, J = 5.5 8.5 Hz), 7.39 (t, 4H, J = 8.5 Hz), 6.56 (d, 2H, J = 16 Hz), 5.83 (s, 1H).
化合物 9b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 313 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 313), m/z 149 m/z 229.
化合物 10b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 313 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 313), m/z 149 m/z 229 m/z 271.
化合物 11b; HPLC: Rt = 37.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 349 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 349), m/z 167 m/z 265.
化合物 13b; HPLC: Rt = 38.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 345 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 345), m/z 165 m/z 261.
化合物 14b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 257 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 257), m/z 121 m/z 173.
化合物 15b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 289 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 289), m/z 137 m/z 205. 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 7.66 (d, 2H, J = 16 Hz), 7.52 (dd, 2H, J = 1, 2 Hz), 7.73 (dd, 2H, J = 5.0, 2.5 Hz), 7.34 (dd, 2H, J = 5.0, 1.0 Hz), 6.46 (d, 2H, J = 16 Hz), 5.36 (s, 1H).
化合物 16b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 257 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 257), m/z 121 m/z 173.
化合物 17b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 289 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 289), m/z 137 m/z 205.
化合物 18b; LC-APCIMS (positive): MS, m/z 377 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 377), m/z 181 m/z 293.
【0112】
実施例7 大腸菌を用いた非対称クルクミノイドの生産
pET16b-CUS、pCDF-4CL、pRSF-ACCを保持したBLR株を、天然型または非天然型カルボン酸2種を含む最小培地で培養した。カルボン酸が異なる点および2種のカルボン酸を用いる点以外は実施例5と同様の手順で実施した。
【0113】
その結果、約90種類の構造のクルクミノイドの生産に成功した。クルクミノイドの生産に用いた基質と得られたクルクミノイドの構造を図7に示す。
【0114】
実施例7で生産された化合物の物理化学的データを以下に示す。
【0115】
化合物 1c; HPLC: Rt = 30.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 293 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 293), m/z 131 m/z 147 m/z 209. 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.33 (d, 1H, J = 16 Hz), 7.64 (d, 1H, J =16 Hz), 7.57 (m, 2H), 7.39 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.40 (m, 3H), 6.87 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 6.63 (d, 1H, J = 16 Hz), 6.52 (d, 1H, J = 16 Hz), 5.83 (s, 1H).
化合物 2c; HPLC: Rt = 28.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 309 [M+H]+.
化合物 3c; HPLC: Rt = 31.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 323 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 323), m/z 177 m/z 239.
化合物 4c; HPLC: Rt = 35.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 295 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 295), m/z 131 m/z 149 m/z 211.
化合物 5c; HPLC: Rt = 36.1,, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 313 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 313), m/z 131 m/z 167 m/z 229.
化合物 6c; HPLC: Rt = 36.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 311 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 311), m/z 131 m/z 165 m/z 227.
化合物 7c; HPLC: Rt = 36.6, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 291 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 291), m/z 145 m/z 207.
化合物 8c; HPLC: Rt = 38.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 353 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 353), m/z 207 m/z 269.
化合物 9c; HPLC: Rt = 33.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 267 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 267), m/z 121 m/z 131 m/z 183.
化合物 10c; HPLC: Rt = 34.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 283 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 283), m/z 131 m/z 137 m/z 199.
化合物 11c; LC-APCIMS (positive): Rt = 33.7, MS, m/z 267 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 267), m/z 121 m/z 131 m/z 183.
化合物 12c; HPLC: Rt = 34.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 283 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 283), m/z 131 m/z 137 m/z 199.
化合物 13c; HPLC: Rt = 37.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 327 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 327), m/z 131 m/z 181 m/z 243.
化合物 14c; HPLC: Rt = 23.6, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 325 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 325), m/z 147 m/z 241.
化合物 15c; HPLC: Rt = 26.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 339 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 339), m/z 147 m/z 175 m/z 177 m/z 255.
化合物 16c; HPLC: Rt = 31.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 311 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 311), m/z 147 m/z 227.
化合物 17c; HPLC: Rt = 31.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 329 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 329), m/z 147 m/z 167 m/z 245.
化合物 18c; HPLC: Rt = 32.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 327 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 327), m/z 147 m/z 165 m/z 243.
化合物 19c; HPLC: Rt = 32.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 307 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 307), m/z 147 m/z 223.
化合物 20c; HPLC: Rt = 34.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 369 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 369), m/z 147 m/z 207 m/z 285.
化合物 21c; HPLC: Rt = 28.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 283 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 283), m/z 147 m/z 199.
化合物 22c; HPLC: Rt = 29.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 299 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 299), m/z 147 m/z 215. 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.81 (dd, 1H, J = 2 Hz), 7.65 (d, 1H, J = 16 Hz), 7.59 (d, 1H, J = 16 Hz), 7.55 (d, 2H, J = 9 Hz), 7.53 (d, 1H, J = 3 Hz), 7.49 (d, 1H, J = 5 Hz), 6.88 (d, 1H, J = 9 Hz), 6.67 (d, 1H, J = 16 Hz), 6.65 (d, 1H, J = 16 Hz), 5.97 (s, 1H).
化合物 23c; HPLC: Rt = 28.8, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 283 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 283), m/z 121 m/z 147 m/z 199.
化合物 24c; HPLC: Rt = 29.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 299 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 299), m/z 147 m/z 215.
化合物 25c; HPLC: Rt = 33.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 343 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 343), m/z 147 m/z 259.
化合物 26c; HPLC: Rt = 23.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 355 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 355), m/z 175 m/z 177 m/z 255 m/z 271.
化合物 27c; HPLC: Rt = 28.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 327 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 327), m/z 163 m/z 243.
化合物 28c; HPLC: Rt = 29.6, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 345 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 345), m/z 163 m/z 261.
化合物 29c; HPLC: Rt = 30.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 343 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 343), m/z 163 m/z 259.
化合物 30c; HPLC: Rt = 29.8, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 323 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 323), m/z 163 m/z 239.
化合物 31c; HPLC: Rt = 32.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 385 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 385), m/z 161 m/z 163 m/z 207 m/z 301.
化合物 32c; HPLC: Rt = 25.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 299 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 299), m/z 163 m/z 215.
化合物 33c; HPLC: Rt = 27.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 315 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 315), m/z 137 m/z 163 m/z 231.
化合物 34c; HPLC: Rt = 26.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 299 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 299), m/z 163 m/z 215.
化合物 35c; HPLC: Rt = 27.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 315 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 315), m/z 137 m/z 163 m/z 231.
化合物 37c; HPLC: Rt = 31.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 341 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 341), m/z 175 m/z 177 m/z 257.
化合物 38c; HPLC: Rt = 32.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 359 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 359), m/z 177 m/z 275.
化合物 39c; HPLC: Rt = 33.0, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 357 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 357), m/z 177 m/z 245 m/z 273.
化合物 40c; HPLC: Rt = 32.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 337 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 337), m/z 175 m/z 177 m/z 245 m/z 253.
化合物 41c; HPLC: Rt = 33.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 399 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 399), m/z 175 m/z 245 m/z 289.
化合物 42c; HPLC: Rt = 28.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 313 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 313), m/z 177 m/z 229.
化合物 43c; HPLC: Rt = 30.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 329 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 329), m/z 175 m/z 177 m/z 245.
化合物 44c; HPLC: Rt = 29.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 313 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 313), m/z 175 m/z 229 m/z 245.
化合物 45c; HPLC: Rt = 30.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 329 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 329), m/z 175 m/z 245.
化合物 46c; HPLC: Rt = 33.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 373 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 373), m/z 175 m/z 245 m/z 289.
化合物 47c; HPLC: Rt = 36.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 331 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 331), m/z 149 m/z 167 m/z 247.
化合物 48c; HPLC: Rt = 37.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 329 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 329), m/z 149 m/z 165 m/z 245.
化合物 49c; HPLC: Rt = 36.8, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 309 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 309), m/z 145 m/z 225.
化合物 50c; HPLC: Rt = 38.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 371 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 371), m/z 207 m/z 287.
化合物 51c; HPLC: Rt = 33.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 285 [M+H]+.
化合物 52c; HPLC: Rt = 34.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 301 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 301), m/z 137 m/z 149 m/z 217.
化合物 53c; HPLC: Rt = 33.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 285 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 285), m/z 121 m/z 149 m/z 201.
化合物 54c; HPLC: Rt = 34.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 301 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 301), m/z 137 m/z 149 m/z 217.
化合物 55c; HPLC: Rt = 40.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 345 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 345), m/z 149 m/z 191.
化合物 56c; HPLC: Rt = 37.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 347 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 347), m/z 165 m/z 167 m/z 263.
化合物 57c; HPLC: Rt = 37.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 327 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 327), m/z 145 m/z 167 m/z 243.
化合物 58c; HPLC: Rt = 39.0, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 389 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 389), m/z 207 m/z 305.
化合物 59c; HPLC: Rt = 33.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 303 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 303), m/z 121 m/z 167 m/z 219.
化合物 60c; HPLC: Rt = 34.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 319 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 319), m/z 137 m/z 167 m/z 235.
化合物 61c; HPLC: Rt = 34.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 303 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 303), m/z 121 m/z 167 m/z 219.
化合物 62c; HPLC: Rt = 35.6, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 319 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 319), m/z 137 m/z 167 m/z 235.
化合物 63c; HPLC: Rt = 38.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 363 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 363), m/z 279 m/z 181.
化合物 64c; HPLC: Rt = 38.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 325 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 325), m/z 145 m/z 165 m/z 241.
化合物 65c; HPLC: Rt = 39.8, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 387 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 387), m/z 165 m/z 207 m/z 303.
化合物 66c; HPLC: Rt = 35.0, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 301 [M+H]+.
化合物 67c; HPLC: Rt = 35.9, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 317 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 317), m/z 137 m/z 165 m/z 233.
化合物 68c; HPLC: Rt = 35.8, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 301 [M+H]+.
化合物 69c; HPLC: Rt = 36.3, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 317 [M+H]+.
化合物 70c; HPLC: Rt = 39.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 361 [M+H]+.
化合物 71c; HPLC: Rt = 39.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 367 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 367), m/z 207 m/z 283.
化合物 72c; HPLC: Rt = 34.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 281 [M+H]+.
化合物 73c; HPLC: Rt = 37.8, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 297 [M+H]+.
化合物 74c; HPLC: Rt = 35.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 281 [M+H]+.
化合物 75c; HPLC: Rt = 36.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 297 [M+H]+.
化合物 76c; HPLC: Rt = 38.6, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 341 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 341), m/z 145 m/z 181 m/z 257.
化合物 77c; HPLC: Rt = 37.0, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 343 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 343).
化合物 78c; HPLC: Rt = 38.0, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 359 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 359), m/z 137 m/z 165 m/z 207 m/z 275.
化合物 79c; HPLC: Rt = 37.5, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 343 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 343), m/z 207 m/z 259.
化合物 80c; HPLC: Rt = 38.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 359 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 359), m/z 137 m/z 207 m/z 275.
化合物 81c; HPLC: Rt = 40.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 403 [M+H]+.
化合物 82c; HPLC: Rt = 32.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 273 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 273), m/z 121 m/z 137 m/z 189.
化合物 83c; HPLC: Rt = 32.0, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 257 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 257), m/z 121 m/z 173.
化合物 84c; HPLC: Rt = 32.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 273 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 273), m/z 121 m/z 137 m/z 189.
化合物 85c; HPLC: Rt = 36.2, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 317 [M+H]+.
化合物 86c; HPLC: Rt = 32.7, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 273 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 273), m/z 121 m/z 137 m/z 189.
化合物 87c; HPLC: Rt = 33.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 289 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 289), m/z 137 m/z 205.
化合物 88c; HPLC: Rt = 36.4, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 333 [M+H]+.
化合物 89c; HPLC: Rt = 33.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 273 [M+H]+, MS/MS (precursor ion at m/z 273), m/z 121 m/z 137 m/z 189.
化合物 90c; HPLC: Rt = 36.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 317 [M+H]+.
化合物 91c; HPLC: Rt = 37.1, LC-APCIMS (positive): MS, m/z 333 [M+H]+.
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】os07g17010遺伝子産物と、III型ポリケタイド合成酵素であるカルコン合成酵素(CHS)と、ベンザルアセトン合成酵素(BAS)のアライメントを示す。
【図2】実施例2で生成した各化合物のイオンクロマトグラフおよびマススペクトルを示す。
【図3】実施例2における反応の概要を示す。
【図4】実施例3で生成した各化合物のイオンクロマトグラフおよびマススペクトルを示す。
【図5】実施例3における反応の概要を示す。
【図6】実施例6でクルクミノイドの生産に用いた基質と得られたクルクミノイドの構造を示す。
【図7】実施例7でクルクミノイドの生産に用いた基質と得られたクルクミノイドの構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)または(b)のタンパク質:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列からなり、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するタンパク質。
【請求項2】
以下の物理化学的性質:
(a)分子量:約86kDaのホモダイマー
(b)至適pH:pH6.5〜7.5(37℃で測定)
(c)至適温度:40〜50℃(pH7.0で測定)
(d)熱安定性:70℃で失活(pH7.0で測定)
を有し、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するイネ科植物由来のタンパク質。
【請求項3】
クルクミノイドの製造に使用するための請求項1または2記載のタンパク質。
【請求項4】
請求項1または2記載のタンパク質を、マロニルCoAおよび少なくとも1種のカルボニルCoAと接触させることを含む、クルクミノイドを製造する方法。
【請求項5】
式I:
【化1】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
請求項1または2記載のタンパク質を、マロニルCoAおよび式II:
【化2】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるカルボニルCoAの少なくとも1種と接触させることを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
以下の(a)または(b)のDNA:
(a)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、III型ポリケタイド合成酵素の活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項7】
請求項6記載のDNAを含むベクター。
【請求項8】
請求項6記載のDNAが導入された形質転換体。
【請求項9】
4-クマル酸CoAリガーゼをコードするDNAおよびアセチルCoAカルボキシラーゼをコードするDNAをさらに有する、請求項8記載の形質転換体。
【請求項10】
フェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするDNAをさらに有する、請求項9記載の形質転換体。
【請求項11】
植物細胞にDNAが導入されたものである、請求項8〜10のいずれか1項記載の形質転換体。
【請求項12】
クルクミノイドを製造する方法であって、請求項9〜11のいずれか1項記載の形質転換体を少なくとも1種のカルボン酸の存在下で培養することを含む、前記方法。
【請求項13】
式I:
【化3】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
請求項9〜11のいずれか1項記載の形質転換体を式II':
【化4】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるカルボン酸の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
式I:
【化5】

[式中、Aは、同一でも異なっていてもよく、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるクルクミノイドを製造する方法であって、
請求項9〜11のいずれか1項記載の形質転換体を式II”:
【化6】

[式中、Aは、置換または無置換の芳香族基を表す]
で表されるアミノ酸の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、前記方法。
【請求項15】
クルクミノイドの製造に用いるための請求項7記載のベクター。
【請求項16】
クルクミノイドの製造に用いるための請求項8〜11のいずれか1項記載の形質転換体。
【請求項17】
請求項11記載の形質転換体を含む、形質転換植物体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−228686(P2008−228686A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75441(P2007−75441)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】