説明

新規マンナナーゼ変異体

本開示は、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列から変異したアミノ酸配列を有し、改善された熱安定性;温度/活性プロフィール;pH/活性プロフィール;比活性;及びpH/プロテアーゼ感受性のような一つ又は複数の有利な特性を有する新規マンナナーゼ変異体を提供する。新規マンナナーゼ変異体は、アルコール発酵プロセス及び/若しくは製造において、コーヒー抽出及びコーヒー廃棄物の加工のため、食物及び飼料への補充物質として、紙パルプの酵素補助漂白のため、繊維産業における漂白剤及び/又は糊抜き剤として、水圧破砕による油井及びガス井刺激のため、洗浄剤として、ベーキング材料として、生物膜の除去のため及び送達系において、穀物加工のため又はバイオ燃料の生産を意図する再生可能資源の加工のため、並びに繊維、石油掘削、清掃、洗濯、洗浄剤及びセルロース繊維加工産業において有用であり、用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提供する技術は、微生物マンナナーゼの改良変異体、より具体的にはそれらの主要な酵素活性としてマンナナーゼ活性を示す微生物酵素;上記のマンナナーゼをコードする核酸分子、核酸分子を含有するベクター、宿主細胞、及びマンナナーゼを生成する方法;上記のマンナナーゼを含む組成物;このような酵素を調製して生成する方法;並びに食物及び飼料加工、コーヒー抽出及びコーヒー廃棄物の加工のため、食物及び飼料への補充物質として、紙パルプ用の酵素補助漂白のため、繊維産業における漂白剤及び/又は糊抜き剤として、水圧破砕による油井及びガス井刺激のため、洗浄剤として、ベーキング材料として、生物膜の除去のため及び送達系において、穀物加工のため又はバイオ燃料の生産を意図する再生可能資源の加工のため、並びに繊維、石油掘削、清掃、洗濯、洗浄剤及びセルロース繊維加工産業において上記の酵素を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンド-β-1,4-D-マンナナーゼ(β-マンナナーゼ;EC 3.2.1.78)は、マンナンをベースとする多糖中のマンノグリコシド結合の無作為加水分解を触媒する。ほとんどのβ-マンナナーゼは、オリゴ糖をDP4にまで分解する(Harman及びKubiceck(編) Trichoderma and Gliocladium、第2巻、Taylor and Francis Ltd. London中のBiely及びTenkanen(1998) Enzymology of hemicellulose degradation、25〜47頁)が、残存活性がマンノトリオースについて証明されており、このことは、タンパク質上のマンノース結合についての少なくとも4つのサブサイトを示す。加水分解の主な最終産物は、しばしば、マンノビオース及びマンノトリオースであるが、著しい量のマンノースも生成される。いくつかのβ-マンナナーゼは、結晶マンナンを分解できる。加水分解に加えて、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)からのβ-マンナナーゼを含むいくつかのβ-マンナナーゼは、グリコシド結合受容体としてのマンノース又はマンノビオースのいずれかとグリコシル基転移産物を形成することが示されている。
【0003】
β-マンナナーゼは、細菌、真菌、植物及び動物を含む広範囲の生物から単離されている。ほとんどが細胞外であるが、いくつかのβ-マンナナーゼは、細胞結合性であるとみられる。これらの発現は、マンナン又はガラクトマンナン上での成長によりしばしば誘導されるが、ティー・リーゼイからのβ-マンナナーゼは、セルロースによっても誘導でき、その発現は、グルコース及びその他の単糖により抑制される。頻繁に、異なる等電点を有する複数のマンナナーゼが同じ生物から見出され、異なる遺伝子からの産物又は同じ遺伝子からの異なる産物をそれぞれ表す。
【0004】
一般的に、β-マンナナーゼは、好熱菌からのいくつかのβ-マンナナーゼを除いて、40℃から70℃の間の中程度の最適温度を有する(Politzら(2000) A highly thermostable endo-1,4-β-mannanase from the marine bacterium Rhodothermus marinus; Appl. Microbiol. Biotechnol. 53:715〜721頁)。最適pHは、中性又は酸性領域に、例えばティー・リーゼイからのβ-マンナナーゼについてpH5.0にある(Arisan-Atacら(1993) Purification and characterisation of a β-mannanase of Trichoderma reesei C-30; Appl. Microbiol. Biotechnol. 39:58〜62頁)。酵素の分子量は、30 kDから80 kDの間の範囲である。
【0005】
WO 002008009673は、ガラクトマンナン含有植物物質、例えばパーム核圧搾粕(PKE)の加水分解における使用のため、及び動物飼料における使用のための熱安定性及び低pH/ペプシン耐性が改善されたトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼの変異体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/2008009673号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Harman及びKubiceck(編) Trichoderma and Gliocladium、第2巻、Taylor and Francis Ltd. London中のBiely及びTenkanen(1998) Enzymology of hemicellulose degradation、25〜47頁
【非特許文献2】Politzら(2000) A highly thermostable endo-1,4-β-mannanase from the marine bacterium Rhodothermus marinus; Appl. Microbiol. Biotechnol. 53:715〜721頁
【非特許文献3】Arisan-Atacら(1993) Purification and characterisation of a β-mannanase of Trichoderma reesei C-30; Appl. Microbiol. Biotechnol. 39:58〜62頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、高温を含むペレット化手順の前に飼料混合物に加えられる飼料添加物には、熱安定性が要求される。さらに、飼料添加物として用い得るマンナナーゼは、低pH安定性及びペプシン安定性が必要とされ、例えば単胃動物の胃において効果的に働くことができるように、低pHにて活性でなければならない。
【0009】
しかし、飼料産業にける傾向は、ペレット化温度をますます増加させるというものである。現在、全ての工業的に適切な飼料製造工場全体を通じて酵素を用いることができるようにするために、90℃〜95℃付近のペレット化温度での酵素安定性が目標とされている。よって、熱安定性が改善されたマンナナーゼを利用できることは、高い操作温度の工場でも酵素を用いることを可能にするので、非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の態様では、本開示の実施形態は、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)から変異したアミノ酸配列を有し、一つ又は複数の有利な特性を有するマンナナーゼ変異体を提供する。このような特性は、有利なものとして限定されないが、熱安定性;温度/活性プロフィール;pH/活性プロフィール;比活性;及びpH/プロテアーゼ感受性を含み得る。
【0011】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、66位、215位又は259位(それぞれの位置は、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)の位置に相当する)からなる群より選択される一つ又は複数の位置にて置換を含有するマンナナーゼを含むマンナナーゼ変異体に関する。
【0012】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、201S、207F及び274Lの変異と、少なくとも、配列番号1のアミノ酸配列と比較して66位、215位又は259位に相当する一つ又は複数の位置での変異とを含む、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)から変異したアミノ酸配列を有するマンナナーゼ変異体に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本開示の実施形態は、本明細書で開示するマンナナーゼ変異体をコードする核酸、並びにそのような核酸を含むベクター及び宿主細胞を提供する。なお他の実施形態では、配列は、マンナナーゼ変異体を産生するプロセスで採用される。
【0014】
さらに、本開示の実施形態は、全般的に、ガラクトマンナンの消化、特にマンナンをベースとする多糖におけるマンノグリコシド結合の無作為加水分解の触媒作用のためのマンナナーゼ変異体の使用に関する。有利には、本開示のマンナナーゼ変異体は、例えばデンプン液化のため、並びに食物及び動物飼料中のガラクトマンナンの消化を増進するための方法を含む工業的用途において用い得る。有利には、本開示の実施形態によるマンナナーゼ変異体は、アルコール発酵プロセス及び/又は製造において、コーヒー抽出及びコーヒー廃棄物の加工のため、食物及び飼料への補充物質として、紙パルプの酵素補助漂白のため、繊維産業での漂白剤及び/又は糊抜き剤として、水圧破砕による油井及びガス井刺激のため、洗浄剤として、ベーキング材料として、生物膜の除去のため及び送達系において、穀物加工のため又はバイオ燃料の生産を意図する再生可能資源の加工のため、並びに繊維、石油掘削、清掃、洗濯、洗浄剤及びセルロース繊維加工産業において有用であり、用いられる。
【0015】
別の態様では、本開示は、本明細書で記載するマンナナーゼ変異体を含む酵素組成物であって、商業的用途に有用であるか又は用いられる酵素組成物に関する。一実施形態では、酵素組成物は、動物飼料組成物であってよい。他の実施形態では、酵素組成物は、デンプン加水分解(例えば液化)プロセスで用いてよい。有利な実施形態では、変異体及び/又は酵素組成物は、アルコール発酵プロセスで用いられる。さらなる実施形態では、本開示に包含されるマンナナーゼを含む酵素組成物は、フィターゼ、グルコアミラーゼ、アルファアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びそれらの組み合わせのような追加の酵素を含む。
【0016】
さらなる態様では、本開示の実施形態は、宿主細胞を、有利には宿主細胞における転写活性を有するプロモーターを含むDNA構築物で形質転換し、形質転換宿主細胞を適切な培養培地中で培養して、上記のマンナナーゼの発現を可能にしてマンナナーゼを生成することにより、宿主細胞においてマンナナーゼ変異体を生成する方法に関する。本方法は、生成されたマンナナーゼを回収するステップも含んでよい。一実施形態では、宿主細胞は、真菌、例えばティー・リーゼイのようなトリコデルマ、酵母、細菌又は植物細胞である。本開示の有利な実施形態では、マンナナーゼ変異体は、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9の配列、又はそれらの変異体、改変体、相同体、融合タンパク質、機能的等価物若しくは断片を有する。
【0017】
本開示を詳細に記載する前に、本開示は、記載するデバイスの特定の構成要素部分又は記載する方法のプロセスステップに限定されないことが理解される。なぜなら、このようなデバイス及び方法は変異し得るからである。本明細書で用いる用語は、具体的な実施形態を記載する目的のためだけであり、限定することを意図しないことも理解される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、単数及び/又は複数の指示物を含むことも注意されたい。さらに、数値で区切られているパラメータ範囲を示す場合、範囲は、これらの限界の値を含むとみなされることが理解される。
【0018】
明細書を過度に長くすることなく包括的な開示を提供するために、本出願人は、上で参照した特許及び特許出願のそれぞれ、特にWO 2008/009673の開示を参照により本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図2】WO 2008/009673に開示されるトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼ変異体V-31のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図3】WO 2008/009673に開示されるさらなるトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼ変異体V-31/S3Rのアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図4】本開示による有利なマンナナーゼ変異体TM-1のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図5】本開示によるマンナナーゼ変異体TM-1(配列番号4)の核酸配列(配列番号5)を示す。
【図6】本開示によるさらなる有利なマンナナーゼTM-100変異体のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図7】本開示によるさらなる有利なマンナナーゼ変異体TM-108のアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図8】本開示によるさらなる有利なマンナナーゼ変異体TM-CBD-148のアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図9】本開示によるさらなる有利なマンナナーゼ変異体TM-144のアミノ酸配列(配列番号9)を示す。
【図10】熱安定性及び活性に関する、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼとS3R変異体との比較を示す。
【図11】セルロース結合ドメイン(CBD)のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
タンパク質加水分解、バイオマス分解のため、並びに食物及び/又は動物飼料に含有されるガラクトマンナンの消化を増進するための方法を含む工業的用途において用い得るトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼ(EC 3.2.1.78)の変異体、及びマンナナーゼをコードする核酸が本明細書に開示される。
【0021】
特に、本開示に従うマンナナーゼ変異体は、特に改善された熱安定性、pH/ペプシン安定性、及び、それと同時に、用いる親マンナナーゼ酵素と比較して改善又は保持されている比活性を示す。これらの特徴により、これらは、動物飼料、食物における工業的用途のため、及び一般的に植物物質中のガラクトマンナン分解のために特に有用になる。
【0022】
本開示は、配列番号1に示すアミノ酸配列又はその変異体、改変体、相同体、融合タンパク質、機能的等価物若しくは断片に由来するか、或いは一つ又は複数の挿入、欠失若しくは変異又はそれらの任意の組み合わせを含むアミノ酸配列を有する酵素を明らかにする。本開示による相同マンナナーゼは、好ましくは配列番号1と、より好ましくは配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9と少なくとも70%又は好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、97%若しくは99%の配列同一性を有する任意の酵素を含む。
【0023】
本開示のマンナナーゼ変異体は、マンナナーゼ活性と、一つ又は複数の変異(置換、挿入及び欠失を含む)を含むことで親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)から変異したアミノ酸配列とを有する。
【0024】
有利な実施形態では、マンナナーゼ変異体のアミノ酸配列は、少なくとも、201S、207F及び274Lの変異と、少なくとも、配列番号1のアミノ酸配列と比較して66位、215位又は259位に相当する一つ又は複数の位置での変異とを含む。例えば、有利には、マンナナーゼ変異体における変異は、66P、215T及び259Rからなる群より選択できる。
【0025】
本開示の有利な実施形態は、配列番号4、又はその変異体、改変体、相同体、融合タンパク質、機能的等価物若しくは断片によるか、或いは一つ又は複数の挿入、欠失若しくは変異又はそれらの任意の組み合わせを含むマンナナーゼ変異体、並びに配列番号4のマンナナーゼと少なくとも最小限のパーセンテージ配列同一性及び/又はパーセント相同性を有するマンナナーゼであって、最小限のパーセンテージ同一性及び/又は相同性が、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%であるマンナナーゼである。
【0026】
さらに有利な実施形態では、本開示によるマンナナーゼ変異体は、201S、207F及び274Lの変異と、66位、215位又は259位に相当する一つ又は複数の位置での変異とに加えて、配列番号1のアミノ酸配列の位置に相当する3位及び/又は181位での変異を含む。例えば、3位の変異は3Rであり、181位の変異は181A又は181H(181/A/H)である。
【0027】
さらに有利な実施形態では、本開示によるマンナナーゼ変異体は、201S、207F及び274Lの変異と、少なくとも、配列番号1のアミノ酸配列と比較して66位、215位及び259位での変異とを含む。有利な例では、66位、215位及び259位での変異は、それぞれ66P、215T及び259Rである。
【0028】
さらなる実施形態では、マンナナーゼ変異体は、201S、207F及び274Lの変異と、66位、215位及び259位での変異とに加えて、配列番号1のアミノ酸と比較して好ましくは181A/H位での変異を含む。有利な実施形態では、マンナナーゼ変異体は、3位に、3Rのようなさらなる変異を含む。
【0029】
有利な実施形態では、本開示によるマンナナーゼ変異体のアミノ酸配列は、少なくとも、201S、207F及び274Lの変異と、少なくとも、66位、215位又は259位に相当する一つ又は複数の位置での変異と、一つ又は複数の追加の変異とを含み、変異の位置が、配列番号1のアミノ酸配列と比較して31、97、113、146、149、173、181、280、282、331又は344である。例えば、変異は、31Y、97R、113Y、146Q、149K、173H/T、181H/A、280S/L/R、282D、331S又は344Dである。
【0030】
本開示の有利な実施形態は、本開示によるマンナナーゼと少なくとも最小限のパーセンテージ配列同一性及び/又はパーセント相同性を有するマンナナーゼ変異体であって、最小限のパーセント同一性及び/又は相同性が、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%であるマンナナーゼ変異体である。
【0031】
有利な実施形態は、マンナナーゼ活性と、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)から変異したアミノ酸配列とを有するさらなるマンナナーゼ変異体であって、マンナナーゼ変異体のアミノ酸配列が、201S、207F及び274Lの変異と、少なくとも:
1) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D/N331S
2) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N331S
3) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
4) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
5) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
6) F31Y/S66P/Q97R/Q149K/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L
7) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R
8) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
9) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R
10) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N282D
11) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280L/N282D/N331S
12) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L
13) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/N282D
14) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280R/N282D
15) S66P/N113Y/V181H/A215T/Q259R
16) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N282D
17) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280L/N282D
18) F31Y/S66P/N173H/V181H/A215T/Q259R/N282D
19) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L
20) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
21) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173T/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
22) F31Y/S66P/Q97R/N173T/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
23) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D
24) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D
25) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
26) S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N282D
27) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/N331S
28) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280R/N282D/N331S
29) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
30) S66P/Q97R/N113Y/N173T/V181A/A215T/Q259R
31) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N331S
32) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R
33) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/N331S
34) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280L
35) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280L
36) F31Y/S66P/Q97R/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
37) S66P/N113Y/V181H/A215T/Q259R/N282D
38) F31Y/S66P/Q97R/V181H/A215T/Q259R/N282D
39) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
40) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
41) S66P/V181H/A215T/Q259R/N282D
42) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N331S
43) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/N282D
44) S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/N282D
45) S66P/V181H/A215T/Q259R
46) S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
47) F31Y/S66P/N173T/V181H/A215T/Q259R/N282D
48) F31Y/S66P/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N344D
49) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
50) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
51) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S
52) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R
53) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S
54) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D
55) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
56) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R
57) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/N331S
58) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
59) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
60) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N331S
61) F31Y/S66P/Q97R/Q149K/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
62) S66P/A215T/ Q259R
63) S3R/S66P/A215T/ Q259R
からなる群より選択される変異とを含むマンナナーゼ変異体である。
【0032】
本開示の実施形態は、マンナナーゼ活性と、配列1)〜63)に示すマンナナーゼ変異体のそれぞれと比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び少なくとも99%のパーセント配列同一性及び/又はパーセント相同性を有するアミノ酸配列とを有する、配列1)〜63)に示すマンナナーゼのいずれかの変異体も含む。
【0033】
本開示のさらなる実施形態は:
a)本開示によるマンナナーゼ変異体をコードする核酸分子;
b)本開示によるマンナナーゼ変異体の誘導体をコードする核酸分子、好ましくは該誘導体において、一つ又は複数のアミノ酸残基が保存置換されている;
c)配列番号5に示す核酸分子のフラクション、変異体、相同体、誘導体又は断片である核酸分子;
d)a)〜c)の核酸分子のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸分子;
e)a)〜c)の核酸分子のいずれかの相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸分子;
f)a)〜e)の核酸分子のいずれかと少なくとも95%の配列同一性を有し、マンナナーゼをコードする核酸分子、
g)a)〜e)の核酸分子のいずれかと少なくとも70%の配列同一性を有し、マンナナーゼをコードする核酸分子、
h)又はa)〜g)の核酸分子のいずれかの相補体
からなる群より選択される核酸分子である。
【0034】
本開示のさらなる実施形態は、本開示によるマンナナーゼ変異体をコードする核酸分子を含むベクター及び宿主細胞である。
【0035】
さらに、実施形態は、本開示によるマンナナーゼ変異体を調製する方法であって、形質転換宿主細胞を培養するステップと、培養物から改変マンナナーゼを単離するステップとを含む方法である。
【0036】
そうでないと本明細書で定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術における当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第20版、John Wiley and Sons、New York(1994)、並びにHale及びMarham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial、NY(1991)は、本開示において用いる用語の多くの全般的な辞書を当業者に提供する。
【0037】
本開示は、本明細書で開示する例示的な方法及び材料に限定されず、本明細書で記載するものと同様又は等価な任意の方法及び材料は、本開示の実施形態の実施又は試験で用いることができる。数値範囲は、範囲を規定する数字を含む。特に断らない限り、それぞれ、核酸配列は、左から右に5'から3'の方向で記載し、アミノ酸は、左から右にアミノからカルボキシの方向で記載する。
【0038】
本明細書で示す見出しは、本明細書全体を参照することにより理解できる本開示の様々な態様又は実施形態を限定しない。よって、このすぐ後で定義する用語は、本明細書全体を参照することにより、より完全に定義される。
【0039】
本開示の一実施形態では、マンナナーゼ酵素は、特に改善された熱安定性と、同時に、WO 2008/009673に開示されるマンナナーゼ酵素と比較して改善又は保持されている比活性とを示す。これらの特徴により、これらは、動物飼料、食物における工業的用途のため、及び一般的に植物物質中のガラクトマンナン分解のために特に有用になる。
【0040】
よって、本開示は、動物の胃及び腸上部並びに家禽の素嚢、胃及び腸上部で示される低いpH値にて活性な、トリコデルマ・リーゼイにおけるマンナナーゼの生成方法にも向けられる。正確で再現可能な酵素供与量を可能にし、飼料調製における追加の噴霧ステップを回避するために、ペレット化の前に動物飼料に加えることができるマンナナーゼを提供することが、本開示のなお別の目的である。
【0041】
「マンナナーゼ」との用語は、マンノース単位で構成されるポリオース鎖(マンノポリマー又はポリマンノース)を加水分解できる任意の酵素のことをいう。「マンナナーゼ」は、よって、マンノポリマーをそれぞれ内部で又はポリマーの終末の端から切断するエンドマンナナーゼ及びエキソマンナナーゼの両方を含む。
【0042】
「マンナナーゼの機能的等価物」又は「その機能的等価物」との用語は、酵素が、トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのものとほぼ同じ機能的特徴を有さなければならないことを意味する。
【0043】
「改変体」又は「変異体」との用語は、酵素がその元来の形(親/野生型、wt)から改変されているが、トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのものと同じ酵素の機能的特徴を保持することを意味する。
【0044】
「融合タンパク質」との用語は、追加のアミノ酸配列をC及び/又はN末端に共有結合により融合することにより親のマンナナーゼ又はその任意の変異体から導かれる全てのタンパク質を含む。追加のアミノ酸配列の供給源及び組成は、任意の生体若しくはウイルスからの天然又は非天然のいずれかである。
【0045】
「機能的断片」又は「効果的断片」との用語は、ほぼ同じ酵素の機能又は効果を保持するトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼ又はその誘導体の断片若しくは部分を意味する。
【0046】
本開示による「相同マンナナーゼ」との用語は、親のマンナナーゼと少なくとも70%又は好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、97%若しくは99%の配列同一性を有する任意の酵素を含む。
【0047】
「ポリヌクレオチド」との用語は、一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNA分子を含む任意の長さ及び任意の配列の任意の遺伝物質に相当し、調節要素、構造遺伝子、遺伝子群、プラスミド、ゲノム全体及びそれらの断片を含む。
【0048】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド中の「位置」との用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列中のそれぞれ特定の単一塩基又はアミノ酸のことをいう。
【0049】
「ポリペプチド」との用語は、酵素、抗体などのようなタンパク質、ペプチド阻害剤、サイトカインなどのような中程度の長さのポリペプチド、及びペプチド受容体リガンド、ペプチドホルモンなどのような10未満のアミノ酸配列長まで下がる短いペプチドを含む。
【0050】
「マンナナーゼ変異体」との用語は、部位特異的若しくは無作為突然変異誘発、挿入、欠失、組換え及び/又は親のマンナナーゼからアミノ酸配列が異なるマンナナーゼを導く任意のその他のタンパク質工学法により得られる任意のマンナナーゼ分子を意味する。本開示による「野生型マンナナーゼ」、「野生型酵素」又は「野生型」との用語は、天然で見出されるアミノ酸配列を有するマンナナーゼ酵素又はその断片を表す。
【0051】
「親のマンナナーゼ」は、単離野生型マンナナーゼ若しくはその断片、又はマンナナーゼのライブラリーから選択される一つ若しくは複数のマンナナーゼ変異体のいずれかであり得る。
【0052】
「マンナナーゼライブラリー」との用語は、少なくとも一つのマンナナーゼ変異体、又は全ての単一のマンナナーゼ、全てのそれぞれのマンナナーゼ変異体が、異なるポリヌクレオチド配列によりコードされるマンナナーゼの混合物を表す。
【0053】
「遺伝子ライブラリー」との用語は、マンナナーゼのライブラリーをコードするポリヌクレオチドのライブラリーを示す。
【0054】
「単離」との用語は、その天然の供給源から分離された任意の分子を表す。
【0055】
「変異」との用語は、所望のタンパク質をコードするポリ核酸配列をもたらす単一若しくは複数のヌクレオチドトリプレットの置換又は置き換え、一つ若しくは複数のコドンの挿入又は欠失、異なる遺伝子間の相同若しくは異種組換え、コード配列のいずれかの端での追加のコード配列の融合、又は追加のコード配列の挿入、或いはこれらの方法の任意の組み合わせのことをいう。つまり、「変異」との用語は、上記の変更の一つ若しくは複数により改変されたポリ核酸配列によりコードされるポリペプチド配列における全ての変更のこともいう。アミノ酸残基は、以下の表1に従って、1文字又は3文字コードのいずれかで省略される。
【0056】
「核酸分子」又は「核酸」との用語は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA若しくはRNA、PNAS又はLNA起源の任意の一本鎖或いは二本鎖核酸分子を示すことを意図する。
【0057】
「ストリンジェントな条件」との用語は、プローブがその標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件に関する。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況では異なる。より長い配列は、より高い温度にて特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度及びpHにて特定の配列についての熱的融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が、平衡にて標的配列とハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度、pH及び核酸濃度の下で)である。(標的配列は、通常、過剰に存在するので、Tmにて、プローブの50%は、平衡にて占拠される)。典型的に、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH 7.0〜8.3にて約1.0 M Naイオン未満、典型的には約0.01〜1.0 M Naイオン(又はその他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃、及びより長いプローブについて少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどのような脱安定化剤(destabilizing agents)の添加により達成してもよい。
【0058】
「核酸分子の断片」との用語は、請求される配列の一つによる核酸分子の部分集合を含む核酸を示すことを意図する。同じことが、「核酸分子のフラクション」との用語についてもあてはまる。
【0059】
「核酸分子の変異体」との用語は、本明細書において、請求される配列の一つによる核酸分子と構造及び生物活性が実質的に同様である核酸分子のことをいう。
【0060】
「核酸分子の相同体」との用語は、その配列が、請求される配列の一つによる核酸分子と比較して付加、欠失、置換若しくはそうでなければ化学修飾された一つ又は複数のヌクレオチドを有する核酸分子のことをいうが、但し、常に、相同体は、請求される配列の一つと実質的に同じ結合特性を保持する。
【0061】
「誘導体」との用語は、本明細書で用いる場合、請求される配列の一つによる核酸分子と、標的核酸配列に対して同様の結合の特徴を有する核酸分子のことをいう。
【表1】

【0062】
変異及び変異体は、以下の命名法を用いることにより記載する:位置;置換したアミノ酸残基(複数可)。この命名法に従って、例えば、20位でのアラニン残基をグリシン残基に置換することは、20Gと示す。所定の位置のアミノ酸残基を二つ以上の代わりのアミノ酸残基で置換する場合、これらの残基は、カンマ又はスラッシュで分ける。例えば、30位のアラニンをグリシン又はグルタミン酸のいずれかで置換することは、20G/E又は20G, 20Eと示す。
【0063】
さらに、以下の命名法も用いることができる:タンパク質足場中のアミノ酸残基;位置;置換したアミノ酸残基(複数可)。この命名法に従って、例えば20位でのアラニン残基をグリシン残基に置換することは、Ala20Gly又はA20G又は20Gと示す。同じ位置でのアラニンの欠失は、Ala20*又はA20*と示す。追加のアミノ酸残基(例えばグリシン)の挿入は、Ala20AlaGly又はA20AGと示す。アミノ酸残基の連続するひと続きの欠失(例えば20位のアラニンと21位のグリシンとの間)は、Δ(Ala20-Gly21)又はΔ(A20-G21)と示す。配列が、番号付けに用いた親のタンパク質と比較して欠失を含有する場合、このような位置における挿入(例えば欠失した20位におけるアラニン)は、*20Ala又は*20Aと示す。複数の変異を、プラス記号又はスラッシュで分ける。例えば、20位及び21位にてアラニン及びグルタミン酸をグリシン及びセリンにそれぞれ置換する二つの変異は、A20G+E21S又はA20G/E21Sと示す。所定の位置のアミノ酸残基を二つ以上の代わりのアミノ酸残基で置換する場合、これらの残基は、カンマ又はスラッシュで分ける。例えば、30位のアラニンをグリシン又はグルタミン酸のいずれかで置換することは、A20G,E又はA20G/E又はA20G, A20Eと示す。改変に適する位置を、いずれの特定の改変も示唆することなく本明細書において同定する場合、その位置に存在するアミノ酸残基をいずれのアミノ酸残基で置換してもよいと理解される。つまり、例えば、20位のアラニンの改変に言及しているが特定していない場合、そのアラニンが欠失されるか又は任意のその他のアミノ酸残基(すなわちR、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y及びVのいずれか一つ)で置換され得ると理解される。
【0064】
「保存変異」又は「保存置換」との用語は、それぞれ、第一の変異について当業者が保存的であると考えるアミノ酸変異のことをいう。この文脈における「保存的」とは、アミノ酸の特徴の点で同様のアミノ酸を意味する。例えば、ある変異が、ある特定の位置にて、非脂肪族アミノ酸残基(例えばSer)を脂肪族アミノ酸残基(例えばLeu)で置換することを導くならば、異なる脂肪族アミノ酸(例えばIle又はVal)で同じ位置を置換することは、保存変異という。さらに、アミノ酸の特徴は、残基のサイズ、疎水性、極性、電荷、pK値及び当該技術において知られるその他のアミノ酸の特徴を含む。したがって、保存変異は、塩基性を塩基性で、酸性を酸性で、極性を極性で、などのように置換することを含み得る。このようにして導かれるアミノ酸の集団は、構造上の理由から保存される可能性がある。これらの集団は、ベン図の形で記載できる(Livingstone C.D.及びBarton G.J.(1993)「Protein sequence alignments: a strategy for the hierarchical analysis of residue conservation」Comput.Appl Biosci. 9: 745〜756頁; Taylor W.R.(1986)「The classification of amino acid conservation」J.Theor.Biol. 119; 205〜218頁)。保存置換は、例えば、アミノ酸の一般的に認められているベン図グループ分けを示す以下の表に従って行うことができる。
【表2】

【0065】
「触媒活性」又は「活性」との用語は、規定された反応条件下での所定の基質の変換を定量的に表す。「残存活性」との用語は、ある組の条件の下での酵素の触媒活性の、異なる組の条件下での触媒活性に対する比と定義される。よって、残存活性aiは、ai=vi/v0(式中、vは、触媒活性の任意の尺度を表し、ai*100は、パーセントでの相対活性である)で示される。「比活性」との用語は、規定された反応条件下での酵素の量当たりの触媒活性を定量的に表す。
【0066】
「熱安定性(thermostability)」、「温度安定性」又は「熱安定性(thermal stability)」との用語は、より低い温度、例えばその活性を測定できる温度でのその活性を喪失することなく、有限の熱への曝露に耐えるタンパク質の特性を表す。
【0067】
「pH安定性」との用語は、タンパク質の活性を測定できる条件下でのその活性を喪失することなく、その安定性が最適であるpHから著しく離れたpH値、例えば最適pHよりも1 pH単位を超えて上又は下のpH値への有限の曝露に耐えるタンパク質の特性を表す。
【0068】
「タンパク質分解安定性」との用語は、タンパク質の活性を測定できる条件下での活性を喪失することなく、プロテアーゼが活性な条件下でのプロテアーゼに対する有限の曝露に耐えるタンパク質の特性を表す。
【0069】
「プラスミド」、「ベクター系」又は「発現ベクター」との用語は、in vivo又はin vitro発現可能な構築物を意味する。本開示の状況では、これらの構築物は、酵素をコードする遺伝子を宿主細胞に導入するために用いることができる。
【0070】
本開示の関係における「宿主細胞」との用語は、上記の核酸分子又は発現ベクターのいずれかを含み、本明細書で定義する特定の特性を有する酵素の組換え生成又は本開示の方法において用いられる任意の細胞を含む。
【0071】
「不活性化温度」とは、ある期間インキュベーションし、その後に室温に冷却した後のマンナナーゼ酵素の残存活性が、同じ期間、同じ条件下で室温にてインキュベートした同じマンナナーゼ酵素の残存活性の50%である温度と定義される。
【0072】
「再生可能資源」との用語は、穀物、わら、木材及び木材製品のような成長して収穫されるバイオマス物質のことをいう。「バイオ燃料」との用語は、バイオディーゼル、バイオガス、植物油、バイオエタノール、バイオ水素、バイオジメチルエーテル、バイオメタノール、BTL(「バイオマス液化油(Biomass to liquid)」)燃料、GTL(「ガス液化油(Gas to liquid)」)燃料などのような、バイオマスからなるか若しくはバイオマスに由来する固体、液体又は気体の燃料のことをいう。
【0073】
「その機能的等価物」との用語は、酵素が、トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのものとほぼ同じ機能的特徴を有さなければならないことを意味する。「改変体」又は「変異体」との用語は、酵素がその元来の形から改変されているが、トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのものと同じ酵素の機能的特徴を保持することを意味する。特に、「変異体」又は「改変体」との用語は、親/野生型マンナナーゼのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有し、一つ若しくは複数のアミノ酸置換、挿入、欠失又はそれらの任意の組み合わせ(これらを一緒に、変異という)を有するマンナナーゼ酵素を包含する。
【0074】
「融合タンパク質」は、親のマンナナーゼ又はその任意の変異体から、追加のアミノ酸配列を親のマンナナーゼのC及び/又はN末端に共有結合により融合することにより導かれる全てのタンパク質を含む。
【0075】
二つのアミノ酸又はポリヌクレオチド配列に関する「パーセント配列同一性」は、配列を最適に整列させたときに二つの配列において同一である残基のパーセンテージのことをいう。つまり、80%アミノ酸配列同一性は、二つの最適に整列させたポリペプチド配列におけるアミノ酸の80%が同一であることを意味する。パーセント同一性は、例えば、配列を整列させ、二つの整列させた配列間の一致の正確な数を計数し、短いほうの配列の長さで除し、解に100を掛けることによる、二つの分子間の配列情報の直接比較により決定できる。Smith及びWaterman(1981) Advances in Appl. Math. 2:482〜489頁の局所相同性アルゴリズムをペプチド解析のために適合させた「Atlas of Protein Sequence and Structure」、M.O. Dayhoffら、Suppl. 3:353〜358頁、National Biomedical Research Foundation、Washington, DCにおけるALIGN、Dayhoff, M.O.のような容易に利用可能なコンピュータプログラムを、分析を支援するために用いることができる。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラムは、ウィスコンシン配列解析パッケージ、バージョン8(Genetics Computer Group、Madison、WIから入手可能)、例えばBESTFIT、FASTA及びGAPプログラムにおいて利用可能であり、これらもSmith及びWatermanアルゴリズムに依拠する。これらのプログラムは、製造者により推奨され、上記のウィスコンシン配列解析パッケージに記載されるデフォルトパラメータ5を用いて容易に利用される。配列類似性を決定するために適切なアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403〜410頁(1990)に記載される。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通じて公然に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。同様に、パーセント相同性を決定するためのコンピュータプログラムも、容易に入手可能である。
【0076】
それぞれ「飼料」及び「食物」は、それぞれ動物及びヒトにより食され、取り込まれ、消化されることを意図するか若しくはそれに適する任意の天然又は人工的な食餌、食事など或いはそのような食事の成分を意味する。
【0077】
「食物又は飼料添加物」は、食物又は飼料に加えることを意図するか又はそれに適する化合物又は多重成分組成物である。これは、ビタミン、ミネラル又は飼料増進酵素(feed enhancing enzymes)のような一つ又は複数の化合物と、適切な担体及び/又は賦形剤とを含んでよいが、そのことは要求されず、これは、動物飼料に加えるために適切な形で通常提供される。
【0078】
改変体又は変異体は、親の酵素と比較して変更された酵素の特徴を示し得る。好ましくは、改変体又は変異体は、以下の増進された表現型の一つ又は複数を有する:熱安定性の増加;及び/又はタンパク質分解(例えばペプシンに対する)安定性の増加;及び/又は比活性の増加及び/又は低pHでの安定性の改善。「機能的」又は「効果的」断片との用語は、ほぼ同じ酵素の機能又は効果を保持するトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼの断片又は部分を意味する。本開示は、親のマンナナーゼ及び本出願に記載するその全ての変異体から、遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と比較して翻訳後プロセシングにより導かれる全ての分子を含むことも理解される。これらの翻訳後修飾は、それらに限定されないが、天然の宿主又は任意の適切な発現宿主による生成/発現の間に生じるような、リーダー及び/若しくはプロ配列のようなN末端配列のタンパク質分解切断、C末端伸長のタンパク質分解除去、N-及び/若しくはO-グリコシル化、脂質付加、アシル化、脱アミノ化、ピログルタメート形成、リン酸化及び/若しくはその他のもの、又はそれらの任意の組み合わせを含む。これらの翻訳後修飾は、本明細書で探究する酵素の物理的又は酵素的な特性に影響するか又は影響しないことがある。
【0079】
好ましくは、上記の変更は、
1.より高い熱安定性及び/又は
2.より高い比活性及び/又は
3.低pHでの改善された安定性及び/又は
4.ペプシンのようなプロテアーゼによるタンパク質分解切断に対するより高い耐性;及び/又は
5.低pHでのより高い残存活性
のような酵素の改善された特性を導く。
【0080】
本開示の好ましい実施形態では、改変マンナナーゼは、配列番号1に示す親/野生型マンナナーゼの番号付けに対して201位、207位、274位、66位、215位、259位、31位、97位、113位、146位、149位、173位、181位、280位、282位、331位又は344位の一つ又は複数にて置換を有する。これらの位置は、これらの位置での酵素の突然変異誘発が、所望の酵素の特徴の改善を導くことを特徴とする。
【0081】
基本的にではあるが、親/野生型マンナナーゼに関するいくつかのアミノ酸置換は、それら自体で及び/又は他のものとの組み合わせでの両方において、熱安定性の点で有益であることがわかった。これらの置換を表3に示す。さらに、いくつかのアミノ酸置換は、pH安定性、プロテアーゼ(特にペプシン)に対する安定性及び/又は比活性の点で非常に有益であることもわかった。これらの置換を表4に示す。
【0082】
なおさらなる態様では、本開示は、
(a)上記の記載による改変マンナナーゼをコードする核酸分子、
(b)上記の記載による改変マンナナーゼの誘導体をコードする核酸分子であって、該誘導体において、一つ又は複数のアミノ酸残基が保存置換されている核酸分子;
(c)配列番号5として示す核酸分子、
(d)配列番号5として示す核酸分子の変異体、相同体、誘導体又は断片である核酸分子;
(e)配列番号5に示す核酸分子の相補体である核酸分子;
(f)配列番号5として示す核酸分子の変異体、相同体、誘導体又は断片の相補体である核酸分子;
(g)配列番号5に示す核酸分子とハイブリダイズできる核酸分子;
(h)配列番号5として示す核酸分子の変異体、相同体、誘導体又は断片とハイブリダイズできる核酸分子;
(i)配列番号5に示す核酸分子とハイブリダイズできる核酸分子の相補体である核酸分子;
(j)配列番号5として示す核酸分子の変異体、相同体、誘導体又は断片とハイブリダイズできる核酸分子の相補体である核酸分子;
(k)配列番号5に示す核酸分子の相補体とハイブリダイズできる核酸分子;
(l)配列番号5として示す核酸分子の変異体、相同体、誘導体又は断片の相補体とハイブリダイズできる核酸分子、
(m)a)〜l)の核酸分子のいずれかと少なくとも95%の配列同一性を有し、マンナナーゼをコードする核酸分子、
(n)a)〜b)の核酸分子のいずれかと少なくとも70%の配列同一性を有し、マンナナーゼをコードする核酸分子、及び/或いは
(o)a)〜n)の核酸分子のいずれかのフラクション又は相補体
からなる群より選択される核酸分子及び核酸分子の使用に関する。
【0083】
ヌクレオチド又は核酸は、中程度のストリンジェンシー、より好ましくは高いストリンジェンシー、さらにより好ましくは非常に高いストリンジェンシーの条件の下でハイブリダイズできるならば、上記のヌクレオチドの一つとハイブリダイズするとみなされる。
【0084】
ハイブリダイゼーションブロットを調製するために、ブロッティングのための標準的な分子生物学プロトコールを用いてよい(例えばDNAハイブリダイゼーションのためのサザンブロッティング)。標的DNAの量は、標的配列の相対的な豊富さに依存する。純粋な標的配列を用いるならば、1キロベースのポリヌクレオチドあたり1から5ピコグラムの間のDNAが好ましい。典型的に、109 dpm/mgの比活性を有する放射活性プローブについて、検出限界は、約0.5 pg DNAであり、これは、コンプレックスゲノム(例えばヒト)の3.3 mgゲノムDNA中の500 bpの長さの単一コピー遺伝子に等しい。実際上、本開示のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドを含有する微生物のような生物を例えばスクリーニングするために、およそ10 mgのゲノムDNAが用いられる。標的DNAが細菌のもの又はプラスミドであるならば、過剰な曝露を回避するために、DNAをしかるべく希釈しなければならない。標的DNAを、例えばドットブロッティングにより、又は電気泳動ゲルからのブロッティングによりブロットする。好ましい条件は、「Membrane Transfer and Detection Methods」、Amersham International plc, UK.-PI/162/85/1に記載される。Hybond N+正荷電ナイロンメンブレンが好ましく用いられる(Amersham Life Science)。プローブは、好ましくは、Pharmaciaの「Ready to Go DNA(商標)標識キット」に従って調製して、>1×109 dpm/マイクログラムのプローブを調製する。プローブは、ハイブリダイゼーション緩衝液中で、ハイブリダイゼーション緩衝液1ミリリットルあたり1×106 dpmの濃度で用いる。ブロットは、好ましくは、ハイブリダイゼーション緩衝液(6×SSC、5×ラインハルト溶液及び0.5% SDS、並びに100 mg/ml緩衝液までの変性サケ精子DNA)中で65℃にて1時間予備ハイブリダイズし、その後、変性標識プローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液中で、振とうしながら65℃にて12時間ハイブリダイゼーションする。ブロット(複数可)を、次いで、適切な容量の洗浄緩衝液(典型的に50 ml)を用いて2×SSC、0.1% SDS中で65℃にて30分間洗浄し、その後、適切な用量の洗浄緩衝液(典型的に50ml)を用いて、中程度のストリンジェンシーの洗浄について同じ洗浄緩衝液(2×SSC、0.1% SDS)中、又は0.1%×SSC、0.1% SDS中で65℃にて10分間(高いストリンジェンシー)のいずれかで2回目の洗浄を行い、非常に高いストリンジェンシーの洗浄について2回目の洗浄を70℃にて反復できる。本開示の核酸分子は、配列番号1をコードするヌクレオチド配列又はその効果的断片又はその変異体、改変体、相同体若しくは誘導体を含み得る。
【0085】
特に、本開示は、本明細書で記載するマンナナーゼ又はその相同体若しくは誘導体をコードする核酸配列を含むプラスミド又はベクター系を提供する。好ましくは、プラスミド又はベクター系は、配列番号4のアミノ酸又はそれと少なくとも75%相同である配列又はその効果的断片、或いは本明細書で記載する配列番号1の誘導体のいずれかをコードする核酸配列を含む。適切には、プラスミド又はベクター系は、配列番号4又はそれと少なくとも75%相同(同一)である配列のいずれかに示す核酸配列によりコードされる酵素のいずれかの微生物における発現のための発現ベクターである。適切な発現ベクターは、本明細書に記載する。さらに、本開示は、本明細書で記載する改変酵素又は変異体又は機能的断片のいずれかの発現のためのプラスミド又はベクター系を提供する。適切な発現ベクターは、本明細書に記載する。
【0086】
本開示によるマンナナーゼの特徴の改善は、それらに限定されないが、食物及び飼料製品への添加物として、食物及び飼料加工のため、パルプ及び紙製造、並びに水圧分画(hydraulic fractioning)による油/ガス井刺激のため、薬物の緩慢放出製剤の作製又は洗浄剤において、特に細菌生物膜の除去における使用のような様々な技術的プロセスにおける使用に向けられる。特に、改善は、これら若しくはその他の用途の条件の下での酵素安定性及び/又は食物若しくは飼料添加物の場合に胃を通過する間の安定性及び/又は上部胃腸管の酸性条件下でのヒト若しくは動物の胃及び/若しくは腸管における活性又は安定性に向けられる。このような改善は、その他のパラメータの中でも、上昇した温度、好ましくは60℃を超える温度での安定性の増加、並びに/又はタンパク質分解消化に対する、好ましくは消化管のプロテアーゼに対する安定性の増加、並びに/或いは低pHでの安定性及び/又は低pH値での活性及び/又はマンノース及び/若しくはオリゴマンノースを、糖質を含有する大きいポリマンノースから放出する全般的な効率の増加を含む。
【0087】
上昇した温度での安定性の増加は、酵素の不活性化温度により定量する。不活性化温度は、ある期間インキュベーションし、その後に室温に冷却した後のマンナナーゼ酵素の残存活性が、同じ期間、同じ条件下で室温にてインキュベートした同じマンナナーゼ酵素の残存活性の50%である温度と定義される。
【0088】
熱安定性の違いは、二つの酵素の不活性化温度間の℃での違いである。本開示の好ましい実施形態では、マンナナーゼ変異体は、上昇した温度でのプロセスに用いられ、このことにより、マンナナーゼ変異体が所望のより高い不活性化温度を有することになる。
【0089】
野生型マンナナーゼと比較した場合に、本開示のマンナナーゼは、野生型マンナナーゼの不活性化温度より高い温度での熱インキュベーションの後のより高い残存活性(これはより高いプロセス安定性を与える)を特徴とする。
【0090】
ティー・リーゼイマンナナーゼのクローニング:配列番号1に示すトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼに加えて、3位のセリンからアルギニンへの置換(変異S3R)を有する配列番号1の配列を有するさらなるトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼがクローニングされた。このマンナナーゼ変異体を、熱安定性及びポリマンノース含有基質からのマンノース遊離における触媒活性に関して、配列番号1によるトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼと比較した。図10に示す結果は、S3R置換が、本開示に関する特性に対して影響せず、よって中立変異であることを証明する(WO 2008/009673も参照されたい)。よって、本開示の状況では、「wt」又は「wtマンナナーゼ」「野生型マンナナーゼ」又は「トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼ」との用語は、配列番号1によるマンナナーゼと、追加で中立変異S3Rを有する配列番号1のマンナナーゼとを含むと理解される。
【0091】
緩衝液中での熱安定性:本開示の好ましい実施形態では、マンナナーゼ変異体は、>60℃の温度にて>30分インキュベートした場合に増加した残存活性及び/又は不活性化温度を有する。より好ましい実施形態では、増加した残存活性及び/又は不活性化温度は、酢酸塩緩衝液中で45分間インキュベートした後に得られる。好ましくは、マンナナーゼ変異体の不活性化温度は、>68℃、より好ましくは>70℃若しくは>72℃若しくは>74℃、又は最も好ましくは>84℃である。具体的な不活性化温度は、それらのそれぞれの変異とともに表3に示す。
【0092】
融合タンパク質:本開示による使用のための本明細書で記載する配列番号1で明らかにするアミノ酸配列及びその誘導体は、例えば抽出、検出及び/若しくは精製を補助するため、並びに/又はマンナナーゼ分子に機能的特性を付加するために、N及び/又はC末端融合タンパク質として生成してよいことも理解される。融合タンパク質パートナーは、天然宿主に由来する任意のポリペプチド配列、任意のその他の天然に存在するアミノ酸配列、及び合成配列を含む任意のタンパク質又はペプチドであってよい。融合タンパク質パートナーの例は、それらに限定されないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、6×His、GAL4(DNA結合及び/又は転写活性化ドメイン)、当業者に公知のFLAG-、MYC-タグ又はその他のタグを含む。融合タンパク質パートナーと対象のタンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を含めて、融合タンパク質配列を除去することを可能にすることも簡便であることがある。好ましくは、融合タンパク質は、対象のタンパク質配列の活性を妨げない。
【0093】
本開示の好ましい実施形態では、マンナナーゼ変異体は、リーダーペプチド、プロペプチド、結合ドメイン又は触媒ドメインを含む機能的ドメインと融合される。
【0094】
結合ドメインは、それらに限定されないが、マンナナーゼの使用中に存在する糖質成分に対する親和性を増加する、様々な特異性の糖質結合ドメインを含み得る。融合パートナードメインが、基質の一つ若しくは複数の成分に対する活性をもたらすことによる所望の産物及び/又はマンナナーゼ触媒反応の任意の産物の生成においてマンナナーゼの活性を支持する活性のような酵素活性ドメインを含むことも想定される。触媒ドメインの非限定的な例は、セルラーゼ、キシラナーゼのようなヘミセルラーゼ、エキソマンナナーゼ、グルカナーゼ、アラビナーゼ、ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ及び/又はプロテアーゼ、リパーゼ、酸性ホスファターゼのようなその他の活性及び/若しくはその他のもの、又はその機能的断片を含む。
【0095】
リンカー:融合タンパク質は、場合によって、好ましくは100アミノ酸未満、より好ましくは50アミノ酸未満、30アミノ酸未満又は20アミノ酸未満に含まれるリンカー配列によりマンナナーゼと連結してよい。リンカーは、マンナナーゼと融合ドメインとを、いずれの成分の特性にも著しく影響することなく単純につなぐか、或いはこれは、場合によって、そのアミノ酸組成、構造及び/又は天然の宿主若しくは任意の適切な異種宿主における発現の間に生じる翻訳後修飾により、意図する用途のために機能的重要性を有してよい。リンカー配列の供給源は、任意の生物からのアミノ酸配列又は任意の合成ペプチド配列からであり得る。
【0096】
追加のタンパク質:本記載による使用のための本明細書で記載するマンナナーゼは、一つ若しくは複数の追加の対象のタンパク質(POI)又は対象のヌクレオチド配列(NOI)とともに用いることもできる。POIの非限定的な例は、フィターゼ、ヘミセルラーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ラクターゼ、ベータ-グルカナーゼ、エンド-ベータ-1,4-グルカナーゼ、セルラーゼ、キシロシダーゼ、キシラナーゼ、キシログルカナーゼ、キシランアセチル-エステラーゼ、ガラクタナーゼ、エキソマンナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、アラビナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ラッカーゼ、還元酵素、酸化酵素、フェノール酸化酵素、リグニナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、ホスファターゼ、脂肪分解酵素、クチナーゼ及び/又はその他を含む。これらは、例えば、基質溶液/懸濁液の粘度を調節するか、又はポリマンノース基質への近づきやすさ及び/若しくは溶解性を増加する酵素を含む。NOIは、これらの配列のいずれかについてのアンチセンス配列でさえあってよい。上記のように、POIは、融合タンパク質でさえあってよい。POIは、分泌配列と融合さえされてよい。有利な実施形態では、本開示によるマンナナーゼ変異体は、少なくともフィターゼとともに用いる。
【0097】
その他の配列も、分泌を容易にするか、又は分泌POIの収率を増加できる。このような配列は、例えば英国特許出願第9821198.0号に記載されるクロコウジカビ(Aspergillus niger) cyp B遺伝子産物のようなシャペロンタンパク質をコードできる。
【0098】
POIをコードするNOIは、それらに限定されないが、その発現産物のプロセシング及び/又は発現を改変する変更を含むいくつかの理由のためにそれらの活性を変更するために、工学的に改変してよい。さらなる例として、NOIを改変して、特定の宿主細胞での発現を最適化してもよい。その他の配列の変更は、制限酵素認識部位を導入するために望まれることがある。
【0099】
POIをコードするNOIは、その中に、メチルホスホネート及びホスホロチオエート主鎖のような合成又は改変ヌクレオチドを含んでよい。
【0100】
POIをコードするNOIは、細胞内安定性及び半減期を増加するために改変してよい。可能性のある改変は、それらに限定されないが、分子の5'及び/若しくは3'端のフランキング配列の付加、又は分子の主鎖内でのホスホジエステル結合よりもむしろホスホロチオエート若しくは2' O-メチルの使用を含む。
【0101】
マンナナーゼ遺伝子の発現:マンナナーゼ酵素を生成するために、酵素をコードするDNAを、公開された配列から化学的に合成するか、又は遺伝子を保有する宿主細胞から直接得ることができる(例えばcDNAライブラリースクリーニング又はPCR増幅により)。マンナナーゼ遺伝子は、発現カセットに含め、かつ/又は適切な発現ベクターに、標準的な分子クローニング技術によりクローニングできる。このような発現カセット又はベクターは、しばしば、転写の開始及び終結を支援する配列(例えばプロモーター及びターミネーター)を含有し、選択可能マーカーを含有してよい。カセットは、プラス鎖又はマイナス鎖mRNAも含むことができ、それらの発現は、mRNAの翻訳の前に増幅ステップを含むか又は含まないことがある。発現されるマンナナーゼ遺伝子は、様々な特異性のポリマー結合ドメイン(例えば糖質結合ドメイン)のようなタンパク質のあるいくつかのドメインを含有できるか又は含有しない。発現カセット又はベクターは、適切な発現宿主細胞に導入でき、これが次いで、対応するマンナナーゼ遺伝子を発現する。特に適切な発現宿主は、エシェリキア属(Escherichia)(例えば大腸菌(Escherichia coli))、シュードモナス属(Pseudomonas)(例えばシュードモナス・フルオレセンス(P. fluorescens)又はシュードモナス・スツッツェリ(P. stutzerei))、プロテウス属(Proteus)(例えばプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis))、ラルストニア属(Ralstonia)(例えばラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha))、ストレプトミセス属(Streptomyces)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(例えばスタフィロコッカス・カルノサス(S. carnosus))、ラクトコッカス属(Lactococcus)(例えばラクトコッカス・ラクティス(L. lactis))、乳酸細菌又はバチルス属(Bacillus)(枯草菌(subtilis)、メガテリウム(megaterium)、リケニフォルミス(licheniformis)など)を含む細菌発現宿主属である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母発現宿主も特に適切である。クロコウジカビ、クリソスポリウム・ラクノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)、アスペルギルス属(Aspergillus)(例えばコウジカビ(A. oryzae)、クロコウジカビ、エー・ニデュランス(A. nidulans)など)又はトリコデルマ・リーゼイのような真菌発現宿主も特に適する。マウス(例えばNS0)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)若しくはベビーハムスター腎臓(BHK)株化細胞のような哺乳類発現宿主、ウサギ、ヤギ若しくはウシのようなトランスジェニック哺乳類系、昆虫細胞のようなその他の真核宿主、又はバクテリオファージ、例えばM13、T7ファージ若しくはラムダのようなウイルス発現系、又はバキュロウイルス発現系のようなウイルス、又は植物も適する。
【0102】
マンナナーゼ遺伝子は、発現宿主細胞に、それらに限定されないが、エレクトロポレーション、脂質支援形質転換若しくはトランスフェクション(「リポフェクション」)、化学的に媒介されるトランスフェクション(例えばCaCl及び/又はCaP)、酢酸リチウムにより媒介される形質転換(例えば宿主細胞プロトプラストのもの)、微粒子「遺伝子銃」形質転換、PEGにより媒介される形質転換(例えば宿主細胞プロトプラストのもの)、プロトプラスト融合(例えば細菌若しくは真核生物プロトプラストを用いる)、リポソームにより媒介される形質転換、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アデノウイルス若しくはその他のウイルス又はファージ形質転換或いは形質導入を含むいくつかの形質転換法により導入される。
【0103】
別法として、酵素変異体は、細胞内で発現される。場合によって、酵素変異体の細胞内発現又は上記のもののようなシグナル配列を用いての細胞膜周辺腔への分泌の後に、透過又は溶解ステップを用いて、マンナナーゼ酵素を上清中に遊離させることができる。膜バリアの破壊は、超音波、圧力処理(フレンチプレス)、空洞形成のような機械的手段の使用、又はリゾチーム若しくは酵素混合物のような膜消化酵素の使用により行うことができる。さらなる代替として、マンナナーゼ酵素をコードする遺伝子は、適切な無細胞発現系を用いることにより無細胞で発現される。例えば、大腸菌細胞からのS30抽出物をこの目的のために用いたか、又は市販で入手可能な系を用いた(例えばRoche Applied Science, Inc.によるCECF技術)。無細胞系では、対象の遺伝子を、典型的に、プロモーターの支援を用いて転写するが、環状発現ベクターを形成するためのライゲーションは、場合によって行う。RNAを外的に加えることができるか、又は転写なしで作製して、無細胞系で翻訳することもできる。in vitro発現のための発現構築物の構成及び上記の発現系の全ての実行は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0104】
トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼ遺伝子のクローニング及び発現の上記の方法は、工業的規模の発現と、変異させた変異体の評価のためのハイスループットスクリーニングにおける使用との両方のために適切である。
【0105】
精製:上記のように、マンナナーゼタンパク質は、様々な発現系において発現でき、したがって、適当な下流のプロセシング及び精製手順を選択しなければならない。対象のタンパク質は、細胞外若しくは細胞質周辺腔に分泌できるか、又は細胞内で発現できる。本開示の有利な実施形態では、マンナナーゼ変異体は、微生物宿主で発現され、タンパク質は、細胞質周辺腔又は細胞外空間に分泌される。マンナナーゼ変異体を発現する細胞は、それらに限定されないが、寒冷貯蔵物(cryo stocks)のような当業者に公知の方法により保存される。発現生物の培養物は、発酵の標準的な方法を用いて適当な容量で調製する。好ましい実施形態では、タンパク質発現のための培養物は、寒冷貯蔵物から接種し、培養物の容量を、適当な容器内で逐次的に増加する。好ましい実施形態では、細胞は、発酵槽で成長させ、場合によって、pH、温度、酸素及び/又は栄養分供給のような成長条件を制御する。精製の第一ステップは、沈降、精密ろ過、遠心分離、凝結又はその他のようないくつかの技術の一つ又は複数を用いて上清から細胞を分離することを含む。好ましい実施形態では、用いられる方法は、精密ろ過である。細胞内発現の場合、細胞を、細胞内空間からタンパク質を遊離させる処理に供する。これらの処理は、細胞抽出物を生成するための例えば、圧力、酵素、浸透圧ショック、凍結、超音波又はその他の処理を含むことができ、細胞抽出物を、さらなる精製に供するか又は供さなくてよい。
【0106】
本開示の有利な実施形態では、タンパク質は、上清に分泌され、精製の任意選択のステップは、限外濾過による上清の濃縮を含む。上清又は濃縮上清からのさらなるタンパク質精製は、硫酸アンモニウム若しくはエタノール若しくは酸沈殿のような抽出又は分画方法、或いはそれらに限定されないがイオン交換、疎水性相互作用、ヒドロキシアパタイト、ゲルろ過、ホスホセルロース若しくはレクチンクロマトグラフィーによるサイズ分画及び親和性クロマトグラフィー又はこれらの任意の組み合わせを含むクロマトグラフィー法を含むいくつかの方法の一つ又は複数を用いて行ってよい。より好ましい方法では、親和性タグ付加タンパク質を金属キレート親和性クロマトグラフィーにより精製して、高純度のタンパク質を得る。
【0107】
好ましい精製法は、>30%のタンパク質の純度を生じ、より好ましい方法では、純度は、>50%、>60%、>70%又は>80%である。さらにより好ましい方法では、純度は>90%であり、なおより好ましい方法では、純度は>95%であり、最も好ましい方法では、純度は>98%である。
【0108】
本開示の別の有利な実施形態では、上清又は限外濾過により部分的に精製された上清又は濃縮及び/若しくはダイアフィルトレーションされた上清は、それらに限定されないが、噴霧乾燥、凍結乾燥、下向き気化蒸発、薄層蒸発、遠心蒸発、コンベヤ乾燥又はそれらの任意の組み合わせのようないくつかの技術的方法のいずれか一つにより乾燥させる。
【0109】
本開示のさらなる有利な実施形態では、発現されたマンナナーゼ変異体を含む発酵細胞懸濁物は、それらに限定されないが、流動床乾燥、コンベヤ乾燥、噴霧乾燥若しくはドラム乾燥又はそれらの任意の組み合わせのようなプロセスを用いて、全体として乾燥させる。
【0110】
製剤:一般的に、本明細書で記載するマンナナーゼ又は任意の誘導体の組成物は、液体又は乾燥のいずれかであり得る。液体組成物は、マンナナーゼを単独で、又はその他のタンパク質若しくは酵素と組み合わせて含んでよく、マンナナーゼ又は組成物中のタンパク質若しくは酵素の安定性及び/又は活性を支持する添加物を含有してよい。これらは、それらに限定されないが、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、塩、糖類、防腐剤、pH緩衝剤及び炭水化物を含む。典型的に、液体組成物は、水若しくは油ベースのスラリー、懸濁液又は溶液である。
【0111】
乾燥組成物は、発酵上清又は細胞懸濁物又は細胞抽出物を含む任意の液体組成物から、噴霧乾燥、凍結乾燥、下向き気化蒸発、薄層蒸発、遠心蒸発、コンベヤ乾燥又はそれらの任意の組み合わせにより作製してよい。乾燥組成物は、食物若しくは飼料加工のようなさらなる下流の用途に適合するか又は食物若しくは動物飼料のための成分として適格である適当なサイズの顆粒であってよい。
【0112】
乾燥の前に、充填剤を液体組成物に加えてよく、これは、乾燥後に、充填試薬により環境因子から酵素を保護することによるより高い熱安定性、よりよい技術的取り扱い特性などのような乾燥組成物の特性を効果的に増進する。
【0113】
乾燥調製物が一旦得られると、例えばせん断混合機において凝塊技術を用いて、凝塊顆粒を調製してよく、この間に、増量物質と酵素を共に凝塊形成して、顆粒を形成する。酵素を吸収するか又は酵素で被覆される担体物質のコアを有することにより、吸収顆粒を調製する。典型的な増量物質は、硫酸二ナトリウム、カオリン、タルク、マグネシウムアルミニウムシリケート及びセルロース繊維を含む。場合によって、デキストリンのような結合剤も、凝塊顆粒に含める。典型的な担体物質は、例えばキャッサバ、トウモロコシ、バレイショ、コメ及びコムギの形でのデンプンを含むか、塩を用いてよい。
【0114】
場合によって、顆粒は、コーティング混合物で被覆される。このような混合物は、コーティング剤、好ましくは硬化パーム油及び牛脂のような疎水性コーティング剤と、所望により、炭酸カルシウム及びカオリンのようなその他の添加物を含む。
【0115】
特に好ましい実施形態では、本開示のマンナナーゼを含む組成物は、食物及び飼料加工における用途のため、又は食物及び飼料への補充物質として意図される。この場合、マンナナーゼ組成物は、着色剤、芳香化合物、安定化剤、ビタミン、ミネラル、その他の飼料若しくは食物増進酵素などのようなその他の置換物を追加で含有してよい。このことは、特に、いわゆるプレミックスに当てはまる。本開示による食物添加物は、他の食物成分と組み合わせて、加工食品を製造できる。このようなその他の食物成分は、一つ若しくは複数のその他の、好ましくは熱安定性の酵素補充物質、ビタミン食品添加物及びミネラル食品添加物を含む。おそらくいくつかの異なる型の化合物を含む、得られた組み合わせ食品添加物は、次いで、適当な量で、穀類又は植物タンパク質のようなその他の食物成分と混合して、加工食品を形成できる。これらの成分を食品に加工することは、現在利用可能な方法のいずれを用いても行うことができる。
【0116】
本開示の有利な実施形態では、マンナナーゼ組成物は、特に、それらに限定されないが、フィターゼ、ヘミセルラーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ラクターゼ、ベータ-グルカナーゼ、エンド-ベータ-1,4-グルカナーゼ、セルラーゼ、キシロシダーゼ、キシラナーゼ、キシログルカナーゼ、キシランアセチル-エステラーゼ、ガラクタナーゼ、エキソマンナナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、アラビナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ラッカーゼ、還元酵素、酸化酵素、フェノール酸化酵素、リグニナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、ホスファターゼ、脂肪分解酵素、クチナーゼ及び/又はその他からなる群より選択される効果的な量の一つ若しくは複数の飼料又は食物増進酵素をさらに含む。
【0117】
本開示のマンナナーゼの製剤は、食物若しくは動物飼料の加工及び/又は製造のために用いられる。
【0118】
技術的用途:マンナナーゼ誘導体を、食物添加物、又はオリゴマンノース含有食物材料の分解を促進し、よって有益な可能性があるオリゴマンノース若しくはその誘導体を遊離する消化補助物質として用いることが想定される。
【0119】
食物及び飼料加工の分野におけるその他の用途は、飼料及び食物のためにPKEからの重要なプレバイオティクスとしてのマンノオリゴ糖の生成である。PKE又はその他のガラクトマンナン含有成分をマンナナーゼで処理することにより、マンノオリゴ糖及びD-マンノースが生成される。マンノオリゴ糖は、飼料及び食物のためのプレバイオティクス成分として用いられる。マンノオリゴ糖は、プロバイオティクス(例えばビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)及びラクトバチルス属(Lactobacillus)の種)の成長を促進し、腸内細菌サルモネラ属(Salmonella)の成長を阻害し、レクチンの栄養分吸収阻止特性を中和し、製薬産業における用途を見出す。さらに、マンノオリゴ糖及び特にマンノースは、飼料中の免疫刺激成分であると推測されている。
【0120】
食物及び飼料加工の分野におけるなお別の用途は、例えば上記の酵素を、圧搾手順の前にパインアップル、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツに加えることによる、果汁回収率の改善のための果実の細胞壁中のマンナン含有成分の切断である。有利な用途は、本開示によるマンナナーゼ変異体を、例えばクッキー、パンなどのためのベーキングプロセスで用いることである。
【0121】
食物及び飼料加工の分野における別の用途は、本開示によるマンナナーゼを、パーム核油抽出における収率改善のために用いることである。パーム核圧搾粕中に残存する油含量は、圧搾の後に5〜12%の間である。この残存物は、化学的抽出により約3%までさらに減らすことができる。本開示によるマンナナーゼを用いることにより、脂肪の遊離が急速に増加し、よって、改善されたプロセスが提供できる。さらに、得られるパーム核圧搾粕は、飼料中の栄養分吸収阻止成分であることが知られているガラクトマンナン繊維の含量が低減されているので、より高品質のものである。
【0122】
食物及び飼料加工の分野におけるなお別の用途は、PKE又はその他のガラクトマンナン含有成分からのD-マンノースの送達である。パーム核ミールは、ガラクトマンナン繊維として結合した約20%のマンノースを含有する。PKE、コプラ又はその他のガラクトマンナン含有原材料をマンナナーゼで処理することにより、D-マンノースが遊離される。マンノース及びその誘導体は、食物(例えば低カロリーダイエット食品)、製薬(マンノースは、全ての尿道感染の90%超を治癒する)、化粧品、繊維及びポリマーの製造において用いられる成分である。供給量が限定されているので、マンノースは、現在のところ、その他のより一般的なヘキソース糖と比較して非常に高価であり、その供給量は乏しい。D-マンノースは、マンニトールの製造のための原材料としても用いることができる。マンニトール自体は、フラクトースの変換からよりもより高い収率及びより少ない副産物で、還元を介してマンノースから導かれる。マンニトールは、その独特の機能的特性により、食物及び製薬産業において広く用いられているポリオールである。マンニトールは、製薬の製剤(咀嚼錠及び顆粒状粉末)のため、チューインガムの製造において甘味料として、食物のために、増粘、テクスチャリング及び固結防止剤として、浸透圧活性薬剤(osmoactive pharmaceutical)及び糖尿病食物成分として用いられる。
【0123】
さらに、食物及び飼料加工の上記の状況では、グアーガム又はローカストビーンガムのインキュベーションによるガラクトマンナンの部分的加水分解のための本開示によるマンナナーゼの使用が提供される。得られる加水分解物は、テクスチャリング成分として食物及び醸造産業において、及び製薬の用途のために用いられる。
【0124】
糖の生成:本開示で記載するマンナナーゼ酵素は、パーム核、ココナツ、コンニャク、ローカストビーンガム、グアーガム及びダイズのようなポリマンノース含有植物物質からの糖又はオリゴ糖の生成のために特に有用である。パーム核ミール、パーム核圧搾粕、コプラミール、コプラペレット及びダイズ外皮のような植物物質が好ましい。
【0125】
特に好ましい実施形態では、本開示によるマンナナーゼ酵素は、マンノース、並びにマンノビオース、マンノトリオース、マンノテトラオース、マンノペンタオース、マンノヘキサオース、マンノヘプタオース、マンノオクタオース、マンノノナオース及びマンノースのより高いポリマーのようなマンノポリマー、並びに/又はそれらの誘導体の生成に用いられる。1から0.05までの範囲のガラクトースとマンノースとの様々な比を有するそれらのガラクトシルマンノオリゴ糖も好ましい。
【0126】
本開示のさらに好ましい実施形態では、糖は、マンノースとグルコースとで構成され、グルコマンナンという。これらのポリオールは、マンノース及び/又はグルコースの2、3、4、5、6、7、8、9以上のモノマーで構成され得、マンノース含量が、1/15、1/14、1/13、1/12、1/11、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、1/5、1/4、1/3、1/2、1、2/3、3/4、3/5、4/5、5/6、2/7、3/7、4/7、5/7、6/7、3/8、5/8、7/8、2/9、4/9、3/10、2/11、4/11、3/12、2/13又は1/14であり得る。1から0.05までの範囲のガラクトースとマンノースとの様々な比を有するそれらのガラクトシルグルコマンノオリゴ糖も特に好ましい。
【0127】
本開示のさらに好ましい実施形態では、マンナナーゼは、糖を産生するための植物物質の加水分解のために他のカルボヒドラーゼ、例えばグルカナーゼ、及び/又はキシラナーゼ、及び/又はアルファ-ガラクトシダーゼ、及び/又はセルラーゼと組み合わせて用いる。
【0128】
本開示のより好ましい実施形態では、ポリマンノース含有植物物質の加水分解は、プレバイオティクス機能を示す糖を導く。これらの糖は、プロバイオティクス、すなわち健康な免疫系を支持することが知られている細菌の成長を促進するために産生される。このような細菌の例は、ビフィドバクテリウム属である。既知のビフィドバクテリウム属は、ビフィドバクテリウム・アドレセンシス(B. adolescensis)、ビフィドバクテリウム・アングラタム(B. angulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(B. animalis)、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(B. asteroides)、ビフィズス菌(B. bifidum)、ビフィズス菌、ビフィドバクテリウム・ボウム(B. boum)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラタム(B. catenulatum)、ビフィドバクテリウム・ケリナム(B. choerinum)、ビフィドバクテリウム・コリネフォルム(B. coryneforme)、ビフィドバクテリウム・クニクリ(B. cuniculi)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(B. dentium)、ビフィドバクテリウム・ガリカム(B. gallicum)、ビフィドバクテリウム・ガリナルム(B. gallinarum)、ビフィドバクテリウム・インディカム(B. indicum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・マグナム(B. magnum)、ビフィドバクテリウム・メリシカム(B. merycicum)、ビフィドバクテリウム・ミニマム(B. minimum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラタム(B. pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B. pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・プロラム(B. pullorum)、ビフィドバクテリウム・ルミナンティウム(B. ruminantium)、ビフィドバクテリウム・セクラーレ(B. saeculare)、ビフィドバクテリウム・スカルドヴィイ(B. scardovii)、ビフィドバクテリウム・サティル(B. subtile)、ビフィドバクテリウム・サーマシドフィラム(B. thermacidophilum)及びビフィドバクテリウム・サーモフィラム(B. thermophilum)である。
【0129】
コーヒー抽出:本開示により記載されるマンナナーゼ酵素は、液体コーヒー抽出物中に存在するガラクトマンナンの加水分解のために有用である。本開示の好ましい実施形態では、マンナナーゼは、液体コーヒー抽出物の凍結乾燥中に生じるゲルの形成を阻害するために用いる。抽出物の粘度の減少は、乾燥中のエネルギー消費を低減する。本開示のさらにより好ましい実施形態では、マンナナーゼ酵素を固定化された形で用い、これは、酵素の消費を低減して、コーヒー抽出物の汚染を妨げる。
【0130】
この状況では、別の興味のある用途は、より価値が高い産物を得るための、コーヒー廃棄物からのマンノース又はマンノオリゴ糖の生成のための本開示によるマンナナーゼ酵素の使用である。以前に記載したように、マンナナーゼは、マンノース又はオリゴ糖をコーヒー廃棄物から遊離し、これらは、価値が高い機能的飼料及び食物成分である。コーヒー飲料産業では、消費したコーヒー粕は、一般的に、燃料として用いられるか又は産業廃棄物として取り扱う。焙煎コーヒーは、1.8〜4.4%のマンナンを含有する。よって、消費したコーヒー粕は、大量のβ-マンナンを含有し、これは、酵素による加水分解によりマンノオリゴ糖に変換できる。コーヒーマンナンから得られるマンノオリゴ糖は、ヒトにおいて血清脂質レベルを低減すると言われている(Jpn J food eng 6(2005))。
【0131】
動物飼料:いくつかの栄養分吸収阻止因子は、動物飼料及びヒト用の食物の調製における特定の植物物質の使用を制限する。マンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナン及びガラクトグルコマンナンのようなオリゴマンナンを含有する植物物質は、ミネラル、ビタミン、糖類及び脂肪のような栄養化合物の動物による消化性及び吸収を低減することが示されている。これらの負の影響は、特に、マンノポリマーの高い粘性及び栄養化合物を吸着するマンノポリマーの能力による。これらの影響は、マンノポリマー分解酵素、すなわちマンナナーゼ酵素の使用により排除/低減でき、このことにより、次いで、飼料中のマンノポリマーを含有する安価な植物物質のより高い割合と、それにより費用の低減とが可能になる。さらに、マンナナーゼ酵素の活性により、マンノポリマーは、単糖まで分解され、これは、容易に吸収され、さらなるエネルギーを提供できる。
【0132】
例えば家禽又はブタのような単胃動物のための効果的な飼料補充物質として酵素を用いるために、これは、胃の中で安定でなければならない。このことは、これが、低pH(およそpH 2〜3)で安定であり、さらに、これが、この低pHにてペプシンに耐性でなければならないことを意味する。さらに、このような酵素は、胃の中で有効であるために、低pH(およそpH 3.0)にて活性である必要がある。本開示において提供するマンナナーゼ酵素は、例えば、低pHにて安定でない、特に低pHにてペプシンに対して安定でないトリコデルマ・リーゼイからの野生型マンナナーゼのようなその他のマンナナーゼ酵素とは異なって、これらの全ての基準を充足する。よって、本開示において提供するマンナナーゼ酵素は、酵素が動物において活性でなければならない飼料の用途に特によく適する。
【0133】
本開示によるマンナナーゼ酵素は、家禽及びブタのような単胃動物のための飼料、並びにヒト食物のための添加物として有用である。飼料は、しかし、アヒル、ガチョウ、並びにウシ、イヌ、ヤギ、ウマ、ネコ、並びに甲殻類及び魚類に与えてもよい。マンナナーゼ酵素は、飼料に添加する代わりに、飼料を前処理するために用いることもできる。
【0134】
本開示の有利な実施形態では、マンナナーゼ酵素は、離乳ブタ、保育ブタ、子ブタ、肥育ブタ、成長中のブタ、出荷前のブタ、産卵鶏、ブロイラーのヒナ、シチメンチョウのための飼料に添加する。
【0135】
本開示のさらに有利な実施形態では、マンナナーゼ酵素は、パーム核、ココナツ、コンニャク、ローカストビーンガム、グアーガム、ダイズ、オオムギ、オーツ麦、亜麻、コムギ、トウモロコシ、亜麻仁、柑橘類果肉、綿実、ラッカセイ、ナタネ、ヒマワリ、エンドウ、ハウチワマメのような植物物質及びビタミン及びミネラルで構成される飼料への添加物である。本開示のさらにより好ましい実施形態では、マンナナーゼ酵素は、パーム核ミール、パーム核圧搾粕、コプラミール、コプラペレット及び/又はダイズ外皮で部分的に構成される飼料への添加物である。
【0136】
本開示のさらに有利な実施形態では、マンナナーゼ酵素は、飼料の調製のために、それらに限定されないが、フィターゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、アラビノキシラナーゼ、プロテアーゼ、ベータ-グルカナーゼ、セルラーゼ、ガラクタナーゼ、エンドグルカナーゼ、キシロシダーゼ、クチナーゼ、リパーゼ及び/又はホスホリパーゼからなる群より選択されるその他の酵素と組み合わせて用いる。追加の酵素とともに又は追加の酵素なしでのマンナナーゼ酵素は、ミネラル、ビタミン及びその他の典型的な食物補充物質と組み合わせて用いることもできる。
【0137】
本開示によるマンナナーゼ酵素は、熱安定性酵素であるので、これらは、活性を著しく喪失することなく熱に供することができる。よって、マンナナーゼ酵素は、ほとんどの商業的なペレットミルにおいてそうであるように、ペレット化ステップの前に飼料混合物に熱を加えるペレット化飼料の製造プロセスにおいて用いることができる。マンナナーゼ酵素は、ペレット化ステップの前に他の飼料成分に、又はペレット化ステップの後に既に形成された飼料ペレットに添加できる。
【0138】
本開示のさらに好ましい実施形態では、マンナナーゼ酵素は、特に抗生物質が望ましくない状況の下で動物に供給される動物飼料に用いられる。
【0139】
有利な実施形態では、マンナナーゼ酵素は、パーム核ミール、パーム核圧搾粕、コプラミール、コプラペレット及び/又はダイズ外皮で部分的に構成される動物飼料に用いられる。最も好ましい実施形態では、マンナナーゼ酵素は、パーム核ミール、パーム核圧搾粕、コプラミール、コプラペレット及び/又はダイズ外皮で部分的に構成されるブロイラーのヒナ用の動物飼料に用いられる。
【0140】
紙パルプ産業:本開示によるマンナナーゼ酵素は、化学パルプ、セミケミカルパルプ、クラフトパルプ、機械パルプ又は亜硫酸塩法により調製されるパルプのような紙パルプの酵素補助漂白において有用である。パルプは、酸素、オゾン、過酸化物、ペルオキシ酸を用いて漂白された完全に塩素フリーのパルプでもあり得る。
【0141】
本開示の有利な実施形態では、マンナナーゼ酵素は、低いリグニン含量を示す改変又は連続パルプ化法により生成されるパルプの酵素補助漂白のために用いられる。
【0142】
本開示のさらに有利な実施形態では、このような用途におけるマンナナーゼ酵素は、単独で、又は好ましくはキシラナーゼ及び/若しくはエンドグルカナーゼ及び/若しくはアルファ-ガラクトシダーゼ及び/若しくはセロビオヒドロラーゼ酵素と組み合わせてのいずれかで用いることができる。
【0143】
繊維産業における漂白剤及び/又は糊抜き剤:本開示によるマンナナーゼ酵素は、繊維、より糸又は織物を、本開示によるマンナナーゼと、所定の時間、繊維、より糸又は織物を白くするために適切な条件下でインキュベートすることによる、亜麻、黄麻、ラミー若しくはリネンを含む綿以外のセルロース性の繊維、より糸又は織物の漂白のためにも有用である。ヘミセルロースの分解は、織物の漂白プロセスを改善する。
【0144】
染料と増粘剤としての生物学的ポリマー(例えばグアーガム)とを含有する捺染糊を用いる布地の捺染において、増粘剤及び過剰の染料の除去は、マンナナーゼの存在下で捺染された布地を洗浄することによりさらにより効果的になる。増粘剤の酵素による分解は、プロセス時間とともに、布地の満足できる品質を達成するために必要なエネルギー及び水の量を減少させる。
【0145】
本開示によるマンナナーゼ酵素は、グアーガム又はローカストビーンガムのようなガラクトマンナンが糊付け剤としてしばしば用いられる、例えば合成繊維から作られた織物の糊抜きにおいて有用である。
【0146】
水圧破砕による油井及びガス井刺激:本開示によるマンナナーゼ酵素は、油井又はガス井刺激において用いられる水圧破砕の方法において有用である。ここでは、マンナナーゼ酵素は、マンノポリマーをベースとするか又はそれから構成され、砂を通常含有する油圧油中の液化剤(liquefying agents)として働く。
【0147】
本開示によるマンナナーゼ酵素は、熱安定性酵素であるので、これらは、高温で行われる水圧破砕の用途において好ましく用いられる。
【0148】
本開示の別の有利な実施形態では、水圧破砕の用途におけるマンナナーゼ酵素の液化活性は、pH及び温度のような環境条件により制御(阻害又は促進)される。
【0149】
洗浄剤:本開示によるマンナナーゼ酵素は、マンノポリマーを含有する汚れ/しみの除去を容易にするために、洗浄剤組成物中で用いることができる。本開示の好ましい実施形態では、マンナナーゼ酵素は、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及びエンドグルカナーゼの群からのその他の酵素と組み合わせて洗浄剤組成物中で用いられる。
【0150】
生物膜の除去:本開示に記載されるマンナナーゼ酵素は、マンノポリマーを含有する生物膜の除去のために有用である。好ましくは、このような用途のために、マンナナーゼ酵素は、洗浄剤及び/又はアルファ-ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、アラビノキシラナーゼ、プロテアーゼ、ベータ-グルカナーゼ、セルラーゼ、ガラクタナーゼ、エンドグルカナーゼ、キシロシダーゼ、クチナーゼ及びリパーゼの群からのその他の酵素と組み合わせて用いられる。
【0151】
送達系:本開示によるマンナナーゼ酵素は、物体の標的化及び/又は時間依存性の送達のために用いることができる。このことは、物体を含有し、輸送するマンノポリマーのゲルに基づく系の使用により達成される。このような系におけるマンナナーゼ酵素の機能は、マンナナーゼ酵素を活性化するゲルの環境、例えばpH及び/又は温度の特定の変化による、ゲルの部分的又は完全な分解による物体の制御放出である。
【0152】
本開示の有利な実施形態では、マンナナーゼ酵素は、製薬用途における薬物の標的化送達のために用いられる。
【0153】
再生可能資源、すなわち穀物、わら、木材及び木材製品のような成長させて収穫されるバイオマス基質は、ますます注目を集めている。なぜなら、これらは、バイオ燃料、すなわちバイオディーゼル、バイオガス、植物油、バイオエタノール、バイオブタノール、バイオ水素、バイオジメチルエーテル、バイオメタノール、BTL(「バイオマス液化油」)燃料、GTL(「ガス液化油」)燃料などのような固体、液体又は気体の燃料の製造のための適切な基質であるからである。第一世代バイオ燃料では、上記の植物は、食品産業からの確立された方法を用いて変換され、すなわちこれらは、植物油を得るために圧搾されたか、又はデンプン含有穀粒を糖に変換し、その後、酵母を用いて発酵させて、バイオエタノールを得ていた。このことは、上記の植物のエネルギー貯蔵所(すなわち脂肪及び/又はデンプン)がもっぱら利用されたことを意味する。このことにより、エーカーあたりのバイオ燃料のエネルギー収率が乏しいか、又は生成量が乏しかった。第二世代のバイオ燃料では、上記の植物のエネルギー貯蔵所が用いられるだけでなく、アプローチは、植物の完全なバイオマスを利用する傾向にある。
【0154】
この状況において、本開示によるマンナナーゼは、ヘミセルロースを含有する植物バイオマスを糖に変換でき、これは、特定の酵母(例えばサッカロミセス種)又は細菌株及びその他の微生物により代謝されて、発酵産物を生成できる。これらの発酵産物は、バイオエタノール、バイオブタノールのような燃料であり得るが、3-ヒドロキシプロピオン酸、アスパラギン酸、キシリトール及びグルコン酸のような基礎単位分子でもあり得る。糖から導くことができるさらなる基礎単位分子について、(Werpy及びPetersen(2004) Top Value Added Chemicals from Biomass:第1巻-Results of Screening for Potential Candidates from Sugars and Synthesis Gas. National Renewable Energy Laboratory Report NREL/TP-510-35523、図3及び表8)を参照されたい。
【0155】
その他の可能性のある使用は、再生可能資源から、本開示によるマンナナーゼの助けを用いて得られた産物の触媒による加工を含む。このことは、本開示によるマンナナーゼの助けを用いてともに得られたグルコース及び/又はフラクトースを、バイオエタノールよりもかなりよい燃料特性を有すると考えられ(これは40%大きいエネルギー密度を有するので)、化学的に安定でありかつ水に不溶性の複素環化合物である2,5-ジメチルフランに加工することを含む。
【0156】
上記のアプローチは、本開示によるマンナナーゼの改善された特性、特に増進された熱安定性から大きな利益を得る。このことは、それぞれのバイオマスから糖への変換が、高温条件で生じることができ、このことによりそれぞれのプロセスが加速され、よって、それぞれのプロセスが経済的により効率的なものになる。
【0157】
本発明者らの最近の実験では、パーム核圧搾粕(PKE)基質を用いて酵母(サッカロミセス・セレビシエ)に供給した。上記の基質は、約37%のガラクトマンナンを含有する。本開示による二つのマンナナーゼ(すなわち変異体B、変異体C及び/又は変異体31)で処理したPKEは、大量の糖の遊離を導き、よって、未処理のPKEと比較して改善された酵母の成長をもたらしたことがわかった。このことは、上記の仮定、すなわち本開示によるマンナナーゼが、例えば再生可能資源の中からのバイオエタノール生成における収率を増進するための有用なツールであり得ることに対する明確な暗示である(WO 2008/009673の実施例19を参照されたい)。
【0158】
本開示によるマンナナーゼの上記の使用の全ては、これらのアプローチが、特に、増進された熱安定性、並びに低pH値及びプロテアーゼ酵素に対する増進された耐性の点での本開示によるマンナナーゼの改善された特性から実質的な利益を得ることにおいて共通している。
【0159】
このことは、主に、上記の使用のほとんどが、低pH値が優勢な哺乳類消化管、又は上記のような再生可能資源からの糖への変換のような加水分解プロセスの速度を速め、容易にし、かつ経済的に最適化するために用いられる上昇した温度のような好ましくない条件の環境で生じるという事実による。
【0160】
以下の方法及び実施例は、説明の目的だけのために提供され、いかようにも本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0161】
方法及び実施例
以下の実施例では、方法により得られる酵素の触媒特性の決定を含む本開示の材料及び方法を示す。これらの実施例は、説明の目的だけのためであり、いずれの様式でも本開示を限定すると解釈されないと理解される。本明細書で引用する全ての出版物、特許及び特許出願は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例1】
【0162】
Hisタグによるマンナナーゼ酵素の精製
糖質結合ドメイン(CBD)を有さないマンナナーゼ酵素の精製を、マンナナーゼ酵素にC末端で融合した6×Hisタグを用いて行った。
【0163】
6×Hisタグ付加マンナナーゼをコードするプラスミドで形質転換したエス・サッカロミセス(S. saccharomyces)を、振とうフラスコ中で、30℃にて72時間、SC-ガラクトース培養培地中で培養した。2リットル培養培地からの細胞を遠心分離により除去し、上清を、5 kDaカットオフメンブレンを用いる限外濾過による40倍濃縮に供した。濃縮物を、その後、緩衝液交換(50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、pH 5.0)のために同じカットオフを用いてダイアフィルトレーションし、培養容量の1/40の最終容量まで濃縮した。濃縮物を0.45μmフィルタを通してろ過し、pHを8.0に調整した直後に金属親和性カラム(BD-Talon、BD-Bioscience)に載せた。カラムを、数ベッド容量のダイアフィルトレーション緩衝液pH 8.0で洗浄した。マンナナーゼを、0%から100%までの緩衝液Bの勾配(ここで、緩衝液Bは、50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl及び250 mMイミダゾールをpH 6.0にて含有する)を用いて溶出した。溶出されたタンパク質試料をSDS PAGEにより分析した。マンナナーゼを含有する画分をプールし、50 mM NaOAcを含有する緩衝液pH 5.0に対して透析した。マンナナーゼ試料の純度を、タンパク質検出のために280nmでの吸光度を用いる逆相クロマトグラフィーを用いて制御した。
【実施例2】
【0164】
C末端CBDを有するマンナナーゼ酵素の精製
C末端CBDを有するマンナナーゼ酵素の精製を、アニオン交換及び疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて行った。詳細には、各マンナナーゼ酵素をコードするプラスミドで形質転換したエス・サッカロミセスを、振とうフラスコ中で、30℃にて72時間、SC-ガラクトース培養培地中で培養した。5リットル培養培地からの細胞を遠心分離により除去し、上清を、10 kDaカットオフメンブレンを用いる限外濾過による濃縮及び緩衝液交換(緩衝液A: 20 mM Tris(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、pH 8.6)に供した。最終的に、緩衝液A中の200 mlのマンナナーゼ濃縮物を得た。溶液を、緩衝液Aで平衡化した6.3 ml TSKgel SuperQ-5PW(30)カラム(Tosoh Bioscience)に加えた。カラムを、数カラム容量の緩衝液Aで洗浄した。その後に、マンナナーゼ酵素を、120 mlにわたる0%から100%までの緩衝液B(20 mM Tris(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、pH 8.6、1M NaCl)の直線勾配で溶出した。溶出されたタンパク質試料をSDS PAGEにより分析した。マンナナーゼを含有する画分をプールし、3M硫酸アンモニウム溶液で1:1に希釈し、平衡化した(緩衝液C: 50 mM NaOAc、pH 5.0、1.5M硫酸アンモニウム) 8.8ml TSK Gel Phenyl-5PW(20)カラム(Tosoh Bioscience)に載せた。カラムを緩衝液Cで洗浄した。マンナナーゼの溶出は、100mlにわたる0から100%までの緩衝液D(50 mM NaOAc、pH 5.0)の直線勾配により行った。溶出されたタンパク質試料をSDS PAGEにより分析した。マンナナーゼを含有する画分をプールし、緩衝液Dに対して透析した。マンナナーゼ試料の純度を、タンパク質検出のために280nmでの吸光度を用いる逆相クロマトグラフィーを用いて制御した。
【実施例3】
【0165】
マンナナーゼ変異体の作製及び特徴決定
マンナナーゼ変異体を、カセット又はPCR突然変異誘発又は当該技術において公知のその他の突然変異誘発法のような、マンナナーゼタンパク質をコードするDNAの突然変異誘発について異なる方法を用いて作製した。これらの方法は、Morinagaら、Biotechnology 2:646〜649頁(1984)、並びにNelson及びLong、Analytical Biochemistry 180:147〜151頁(1989)に開示される方法、又はWO 92/18645に記載されるエラー閾値突然変異誘発(Error Threshold Mutagenesis)プロトコールを含む。突然変異誘発PCRについて、別の適切な方法は、Cadwell及びJoyce、PCR Methods Appl. 3:136〜140頁(1994)により開示されている。
【0166】
マンナナーゼ変異体を、以下の発現宿主の一つ又は複数において異種的に発現させた:サッカロミセス・セレビシエ、枯草菌及び大腸菌。
【実施例4】
【0167】
温度安定性の決定
マンナナーゼ変異体の温度安定性を、それらの不活性化温度により特徴づける。不活性化温度は、異なる温度でのインキュベーションの後にマンナナーゼ酵素の残存活性を測定することにより決定した。残存活性は、マンナナーゼ活性を、マンナナーゼ試料に対して予め温度攻撃するか又はせずに測定することにより決定した。より詳細には、マンナナーゼ試料を、50 mM NaOAc緩衝液、pH 5.0及び0.025% Triton-X-100中で45分間、様々な温度でインキュベートした。その後に、マンナナーゼ活性を、AZCL-ガラクトマンナン(イナゴマメ、Megazyme)を基質として用いて決定した。このために、マンナナーゼ試料及びマンナナーゼ酵素較正シリーズ(C末端6×Hisタグを有する配列番号3による精製マンナナーゼ)を、1 mg/ml AZCL-ガラクトマンナン、50 mM NaOAc、pH 5.0及び0.1% Triton-X-100と60分間、37℃にてインキュベートした。AZCL-ガラクトマンナンアッセイからの上清を、その後、96ウェルマイクロタイタープレートに移し、吸光度を、590 nmにて標準的なプレートリーダーにおいて決定した。マンナナーゼ酵素較正シリーズについての吸光度データを、酵素濃度に対してプロットした。他のマンナナーゼ試料の活性を、マンナナーゼ酵素標準物質シリーズについてのデータの適当な曲線の当てはめにより作製した等式を用いて計算した。よって、マンナナーゼ試料の活性は、マンナナーゼ酵素較正シリーズの活性当量として表す。
【0168】
マンナナーゼ酵素の不活性化温度は、マンナナーゼの残存活性が、同じ条件下であるが室温にてインキュベートした後の同じマンナナーゼの残存活性と比較して50%である温度と定義される。適切であれば、活性データからの補外及び補間を行って、50%残存活性に相当する温度を決定した。[℃]での温度安定性の差(TD)を、二つの酵素の不活性化温度を互いから減じることにより計算した。
【0169】
表3:マンナナーゼ変異体についての[℃]での温度安定性の差(TD)。示す変異体は、配列番号3に基づき、C末端に6×Hisタグ又は糖質結合ドメイン(CBD、配列番号10、図11)のいずれかを有する。示す置換は、配列番号3に導入した。温度安定性の差(TD)は、(変異体の不活性化温度) -(配列番号3の不活性化温度)と定義される(変異体及び配列番号3の酵素はともに同一のC末端タグを有する)。C末端CBDを有する配列番号3の酵素は、74.6℃の不活性化温度を示す。C末端6×Hisタグを有する配列番号3の酵素は、75.7℃の不活性化温度を示す。
【表3】


【実施例5】
【0170】
比活性
マンナナーゼ酵素の比活性を、実施例1及び2による精製酵素を用いて決定した。マンナナーゼ活性は、ガラクトマンナンからの還元糖の遊離として定義した。マンナナーゼタンパク質は、280 nmでの光学密度(OD)測定により決定した。
【0171】
詳細には、精製マンナナーゼ試料を、50 mM NaOAc、pH 5.0中で希釈した。イナゴマメガラクトマンナン(低粘度、Megazyme)溶液を加えて、0.7%(w/v)ガラクトマンナン、50 mM NaOAc、pH 5.0及びおよそ10μg/mlマンナナーゼタンパク質の最終濃度を得た。溶液を16時間、37℃にてインキュベートした。
【0172】
その後に、還元糖の量を以下のようにして決定した。1部のガラクトマンナンアッセイ又は確定されたマンノース溶液を、1部の1%(w/v)ジニトロサリチル酸(DNSA)、30%(w/v)酒石酸カリウムナトリウム及び0.4 M NaOHを含有する溶液と混合した。混合物を10分間、99℃にて、及び5分間、4℃にてインキュベートした。最後に、吸光度を540 nmにて測定した。還元糖当量(マンノース当量として)を、マンノース標準試料についての吸光度データをマンノース濃度に対してプロットすることにより計算した。試料についての還元糖当量の量は、マンノース標準試料についてのデータの適当な曲線の当てはめにより作製した等式を用いて計算した。
【0173】
マンナナーゼ濃度は、調製物の280 nmでの光学密度及び各マンナナーゼ変異体についてのそれぞれの吸光係数から計算した。吸光係数は、Gill及びvon Hippel、Analytical Biochemistry 182:319〜326頁(1989)により示される方法に従って、タンパク質のアミノ酸組成に基づいて計算した。
【0174】
本開示によるマンナナーゼ酵素の比活性は、上記のイナゴマメガラクトマンナン基質に対するマンナナーゼタンパク質1 mgあたりのnkatで表す。1 nkatの活性は、1秒あたり1ナノモルの還元糖の遊離と定義される。
【0175】
表4:マンナナーゼ変異体の比活性。示す変異体は、配列番号3に基づき、C末端に6×Hisタグ又は糖質結合ドメイン(CBD、配列番号10)のいずれかを有する。示す置換は、配列番号3に導入した。比活性の値は、(変異体の比活性)/(参照の比活性)と定義される。この場合の参照は、各変異体に存在するのと同じC末端タグを有する配列番号3からのマンナナーゼである。C末端6×Hisタグを有する参照は、1228 nkat/mgの比活性を有し、C末端CBDを有する参照は、535nkat/mgの比活性を有する。
【表4】

【実施例6】
【0176】
低pH /ペプシン安定性
マンナナーゼ酵素の低pH/ペプシン安定性を決定するために、各マンナナーゼ酵素をコードするプラスミドで形質転換したエス・サッカロミセスを、振とうフラスコ中で、30℃にて72時間、SC-ガラクトース培養培地中で培養した。細胞を遠心分離により除去し、上清を分離して、例えば10倍に、10 kDaカットオフメンブレンを用いる限外濾過により濃縮した。濃縮上清を、例えば10倍に、30g/lバレイショ搾汁、30g/lコーンスティープリカー、5g/l硫酸アンモニウム、15g/l KH2PO4、10g/lローカストビーンガム及び20g/lセルロース(Avicell)を含有する、オートクレーブした溶液中で希釈した。希釈マンナナーゼ試料を、ペプシンアッセイ(200 mMグリシン-HCl、pH1.5、5mg/mlペプシン予備消化BSA、2mM CaCl2及び0.5 mg/mlペプシン)と1:1で混合し、2時間、37℃にてインキュベートした。混合物のpHは、pH 2.45であった。さらに、対照試料を作製した。このために、同じ希釈マンナナーゼ試料を、対照アッセイ(100mM NaOAc、pH 5.2、5mg/mlペプシン予備消化BSA及び2mM CaCl2)と1:1で混合し、2時間、37℃にてインキュベートした。混合物のpHは、pH 5.2であった。
【0177】
マンナナーゼ活性決定について、1部の上記の混合物又はマンナナーゼ酵素較正シリーズ(C末端6×Hisタグを有する配列番号3による精製マンナナーゼ)を、14部のAZCL-ガラクトマンナンアッセイ(200 mM NaOAc、pH 5.0、0.1% Triton-X-100、1% AZCL-ガラクトマンナンイナゴマメ(Megazyme))と混合し、60分間、37℃にてインキュベートする。試料を遠心分離し、上清を590 nmでの吸光度について分析する。マンナナーゼ酵素較正シリーズについての吸光度データを、酵素濃度に対してプロットした。他のマンナナーゼ試料についての活性を、マンナナーゼ酵素較正シリーズについてのデータの適当な曲線の当てはめにより作製した等式を用いて計算した。よって、マンナナーゼ試料の活性は、マンナナーゼ酵素較正シリーズの活性当量として表す。
【0178】
マンナナーゼ酵素の残存活性は、以下の比のようにして計算する:
(ペプシンアッセイ中でのインキュベーション後のマンナナーゼ活性)/(対照アッセイ中でのインキュベーション後のマンナナーゼ活性)。
【0179】
表5:マンナナーゼ変異体の低pH/ペプシン安定性。示す変異体は、配列番号3に基づき、C末端に糖質結合ドメイン(CBD、配列番号10)を有する。示す置換は、配列番号3に導入した。C末端CBDを有する配列番号1による参照マンナナーゼは、39%の残存活性を示す。
【表5】

【実施例7】
【0180】
トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼと変異体S3Rとの比較
配列番号1に示すトリコデルマ・リーゼイマンナナーゼの温度安定性及びマンノース生成を、置換S3R(3位にてセリンからアルギニンへ)を導入することにより配列番号1から導いたマンナナーゼ変異体と比較した。実験及び結果は、WO 2008/009673(実施例8、100〜101頁;図1B)及び図10に詳細に記載する。
【配列表フリーテキスト】
【0181】
配列番号1:野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼの断片/アミノ酸
配列番号2:WO 2008/009673に開示されるマンナナーゼ変異体V-31/アミノ酸
配列番号3:WO 2008/009673に開示されるマンナナーゼ変異体V-31/S3R/アミノ酸
配列番号4:マンナナーゼ変異体TM-1/アミノ酸
配列番号5:マンナナーゼ変異体TM-1/DNA
配列番号6:マンナナーゼTM-100/アミノ酸
配列番号7:マンナナーゼ変異体TM-108/アミノ酸
配列番号8:マンナナーゼ変異体TM-CBD-148/アミノ酸
配列番号9:マンナナーゼ変異体TM-144/アミノ酸
配列番号9:CBD/アミノ酸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のマンナナーゼと比較して少なくとも3℃の改善された熱安定性を有するマンナナーゼ変異体。
【請求項2】
改善された熱安定性が、約4℃から約9.3℃までの範囲である、請求項1に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項3】
改善された熱安定性が、約5.7℃から約9.3℃までの範囲である、請求項1又は請求項2に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項4】
配列番号3のマンナナーゼと比較して少なくとも107%の改善された比活性を有するマンナナーゼ変異体。
【請求項5】
改善された比活性が、約107%から約212%までの範囲である、請求項4に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項6】
マンナナーゼ活性と、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)から変異したアミノ酸配列とを有するマンナナーゼ変異体であって、マンナナーゼ変異体のアミノ酸が、201S、207F及び274Lの変異と、66位、215位又は259位に相当する一つ又は複数の位置での変異とを含むマンナナーゼ変異体。
【請求項7】
変異3Rをさらに含む、請求項6に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項8】
変異181A/Hをさらに含む、請求項6又は請求項7に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項9】
少なくとも、66位、215位及び259位に相当する位置における変異を含む、請求項6〜8のいずれかに記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項10】
少なくとも、3位、66位、215位及び259位に相当する位置における変異を含む、請求項6〜8のいずれかに記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項11】
少なくとも、3位、66位、181位、215位及び259位に相当する位置における変異を含む、請求項6〜8のいずれかに記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項12】
66位、215位又は259位の一つ又は複数での変異が、それぞれ66P、215T及び259Rである、請求項6〜11のいずれか一項に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項13】
3位、66位、215位又は259位の一つ又は複数での変異が、それぞれ3R、66P、215T及び259Rである、請求項6〜12のいずれか一項に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項14】
3位、66位、215位又は259位の一つ又は複数での変異が、それぞれ3R、66P、181A/H、215T及び259Rである、請求項6〜13のいずれか一項に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項15】
一つ又は複数の追加の変異をさらに含み、変異の位置が、31、97、113、146、149、173、181、280、282、331又は344である、請求項6〜14のいずれか一項に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項16】
変異が、31Y、97R、113Y、146Q、149K、173H/T、181H/A、280S/L/R、282D、331S又は344Dである、請求項6〜15のいずれか一項に記載のマンナナーゼ変異体。
【請求項17】
請求項1〜16に記載のマンナナーゼと少なくとも最小限のパーセンテージ配列同一性及び/又はパーセント相同性を有するマンナナーゼであって、最小限のパーセント同一性及び/又は相同性が、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%であるマンナナーゼ。
【請求項18】
マンナナーゼ活性と、親/野生型トリコデルマ・リーゼイマンナナーゼのアミノ酸配列(配列番号1)から変異したアミノ酸配列とを有するマンナナーゼ変異体であって、マンナナーゼ変異体のアミノ酸が、201S、207F及び274Lの変異と、少なくとも、
1) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D/N331S
2) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N331S
3) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
4) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
5) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
6) F31Y/S66P/Q97R/Q149K/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L
7) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R
8) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
9) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R
10) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N282D
11) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280L/N282D/N331S
12) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L
13) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/N282D
14) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280R/N282D
15) S66P/N113Y/V181H/A215T/Q259R
16) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N282D
17) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280L/N282D
18) F31Y/S66P/N173H/V181H/A215T/Q259R/N282D
19) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280L
20) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
21) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173T/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
22) F31Y/S66P/Q97R/N173T/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
23) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D
24) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D
25) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
26) S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N282D
27) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/N331S
28) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280R/N282D/N331S
29) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
30) S66P/Q97R/N113Y/N173T/V181A/A215T/Q259R
31) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N331S
32) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R
33) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/N331S
34) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280L
35) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280L
36) F31Y/S66P/Q97R/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
37) S66P/N113Y/V181H/A215T/Q259R/N282D
38) F31Y/S66P/Q97R/V181H/A215T/Q259R/N282D
39) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
40) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
41) S66P/V181H/A215T/Q259R/N282D
42) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/K146Q/V181H/A215T/Q259R/Q280L/N331S
43) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/N282D
44) S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/N282D
45) S66P/V181H/A215T/Q259R
46) S66P/Q97R/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
47) F31Y/S66P/N173T/V181H/A215T/Q259R/N282D
48) F31Y/S66P/N113Y/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N344D
49) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
50) F31Y/S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
51) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S
52) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R
53) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S
54) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D
55) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280R/N282D
56) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R
57) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/N331S
58) F31Y/S66P/Q97R/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N282D/N331S
59) S66P/N113Y/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
60) S66P/Q97R/N113Y/N173H/V181A/A215T/Q259R/Q280S/N331S
61) F31Y/S66P/Q97R/Q149K/N173H/V181H/A215T/Q259R/Q280S/N331S
62) S66P/A215T/Q259R
63) S3R/S66P/A215T/Q259R
からなる群より選択される変異とを含むマンナナーゼ変異体。
【請求項19】
i)請求項1〜18のいずれか一項に記載のマンナナーゼをコードする核酸分子;
j)請求項1〜18のいずれか一項に記載の改変マンナナーゼの誘導体をコードする核酸分子、好ましくは前記誘導体において、一つ又は複数のアミノ酸残基が保存置換されている;
k)配列番号5に示す核酸分子のフラクション、変異体、相同体、誘導体又は断片である核酸分子;
l)a)〜d)の核酸分子のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸分子
m)a)〜d)の核酸分子のいずれかの相補体とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸分子
n)a)〜f)の核酸分子のいずれかと少なくとも95%の配列同一性を有し、マンナナーゼをコードする核酸分子、
o)a)〜f)の核酸分子のいずれかと少なくとも70%の配列同一性を有し、マンナナーゼをコードする核酸分子、
p)又はa)〜h)の核酸分子のいずれかの相補体
からなる群より選択される核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターで形質転換され、かつ/又は請求項19に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項22】
配列番号5の核酸分子。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の改変マンナナーゼを調製する方法であって、請求項21に記載の宿主細胞を培養するステップと、培養物から改変マンナナーゼを単離するステップとを含む方法。
【請求項24】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の改変マンナナーゼを含む組成物。
【請求項25】
食物及び飼料加工のため、食物及び飼料への補充物質として、紙パルプの酵素補助漂白のため、水圧破砕による油井及びガス井刺激のため、洗浄剤として、生物膜の除去のため、又は送達系において適切な、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
・食物及び飼料加工のため、
・コーヒー抽出のため、
・コーヒー廃棄物の加工のため、
・食物及び飼料への補充物質として、
・紙パルプの酵素補助漂白のため、
・繊維産業における漂白剤及び/又は糊抜き剤として、
・水圧破砕による油井及びガス井刺激のため、
・洗浄剤として、
・生物膜の除去のため、
・送達系において、並びに/或いは
・バイオ燃料の生産を意図する再生可能資源の加工のための、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の改変マンナナーゼの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−516960(P2013−516960A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548343(P2012−548343)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007123
【国際公開番号】WO2011/085747
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】