説明

新規モルホリン架橋インダゾール誘導体

本発明は、可溶性グアニル酸シクラーゼを刺激する新規モルホリン架橋インダゾール誘導体、それらの製造方法、および医薬、特に中枢神経系の疾患の処置用医薬を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、可溶性グアニル酸シクラーゼを刺激する新規モルホリン架橋インダゾール誘導体、それらの製造方法、および医薬、特に中枢神経系の障害の処置用医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【0002】
哺乳動物細胞における最も重要な細胞シグナル伝達系の1つは、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)である。内皮から放出され、ホルモン性および機械性シグナルを伝達する一酸化窒素(NO)と共に、それはNO/cGMP系を形成する。グアニル酸シクラーゼは、グアノシン三リン酸(GTP)からのcGMPの生合成を触媒する。現在までに開示されたこのファミリーの代表例は、構造的特徴およびリガンドのタイプの両方に従って、2つのグループに分けることができる:即ち、ナトリウム排泄増加性ペプチドによって刺激され得る粒子状グアニル酸シクラーゼ、およびNOによって刺激され得る可溶性グアニル酸シクラーゼである。可溶性グアニル酸シクラーゼは、2つのサブユニットからなり、ヘテロダイマー1個につき少なくとも1個のヘムを含有する。ヘム基は、調節部位の一部であり、活性化メカニズムにとって中心的に重要なものである。NOは、ヘムの鉄原子に結合することができ、かくして酵素の活性を顕著に増加させる。これに対して、ヘム不含の調製物は、NOによって刺激され得ない。COも、ヘムの中心鉄原子に結合できるが、COによる刺激はNOによるものより明らかに小さい。
【0003】
cGMPの産生、並びに、その結果であるホスホジエステラーゼ類、イオンチャンネル類およびタンパク質キナーゼ類の調節を介して、グアニル酸シクラーゼは、種々の生理的過程において、特に平滑筋細胞の弛緩および増殖、血小板凝集および接着、および神経細胞のシグナル伝達、および上述の過程の欠陥に起因する障害において、重要な役割を担っている。病的条件下に、NO/cGMP系は抑制され得る。例えば、アルツハイマーの患者では、脳(大脳皮質)における可溶性グアニル酸シクラーゼのNOに刺激される活性は、大幅に低下している。
【0004】
実験動物において、cGMPレベルの低下を導くジゾシルピンの投与の際に、学習行動の低下を観察することができる(Yamada et al., Neuroscience 74 (1996), 365-374)。この欠陥は、膜透過可能形態のcGMPである8−Br−cGMPの注射によりなくすことができる。このことは、学習および記憶課題の後に、脳のcGMPレベルが上昇することを示す研究と合致する。
【0005】
NOに依存せず、生物のcGMPシグナル経路に影響を及ぼすことを目的とする実行可能な処置は、予想される高い効果と少ない副作用のために、可溶性グアニル酸シクラーゼを刺激するための将来有望なアプローチである。
【0006】
現在まで、有機硝酸塩のような化合物(その作用はNOの放出をベースとする)が、可溶性グアニル酸シクラーゼの治療的刺激に専ら使用されてきた。NOは、生物変換によって産生され、ヘムの中心鉄原子に結合することによって可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化する。副作用の他に、耐性の発生が、この処置様式の重大な欠点の1つである。
【0007】
可溶性グアニル酸シクラーゼを直接的に(即ち、事前のNO放出なしで)刺激する物質が、近年記載されてきた。例えば、3−(5'−ヒドロキシメチル−2'−フリル)−1−ベンジルインダゾール(YC-1, Wu et al., Blood 84 (1994), 4226; Muelsch et al., Brit. J. Pharmacol. 120 (1997), 681)、脂肪酸(Goldberg et al, J. Biol. Chem. 252 (1977), 1279)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Pettibone et al., Eur. J. Pharmacol. 116 (1985), 307)、イソリキリチゲニン(Yu et al., Brit. J. Pharmacol. 114 (1995), 1587)および種々の置換ピラゾール誘導体(WO98/16223)である。
【0008】
さらに、WO98/16507、WO98/23619、WO00/06567、WO00/06568、WO00/06569、WO00/21954、WO02/4229、WO02/4300、WO02/4301およびWO02/4302は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激物質としてピラゾロピリジン誘導体を記載している。これらの特許出願には、様々な基を有するピラゾロピリジン類も記載されている。このタイプの化合物は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激に関して、非常に高いインビトロ活性を有する。しかしながら、これらの化合物は、それらのインビボ特性、例えば、肝臓におけるそれらの挙動、それらの薬物動態学的挙動、それらの用量反応関係またはそれらの代謝経路に関して、いくつかの欠点を有することがわかってきた。
【0009】
従って、本発明の目的は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激物質として作用するが、上記で詳述した先行技術の化合物の欠点を有さない、さらなるピリミジン誘導体を提供することであった。中枢神経系の障害(例えば、学習および記憶の低下)の処置用の新規医薬の付加的利点は、末梢心血管効果に対する選択性の向上である。これを先行技術と比べて改善(例えば、より良好な脳への浸透による)することも同様に企図された。
【0010】
この目的は、本発明に従い、本発明の化合物により達成される。
具体的には、本発明は、式
【化1】

式中、
は、
【化2】

であり、ここで、
nは、1または2であり、そして、
は、水素またはNHである、
の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および/または塩の溶媒和物に関する。
【0011】
本発明の化合物(I)が不斉C原子を含有する場合、それらは、エナンチオマー、ジアステレオマーまたはそれらの混合物の形態であり得る。これらの混合物は、既知方法で立体異性体的に純粋な成分に分離できる。
【0012】
本発明のために好ましいは、本発明の化合物の生理的に許容し得る塩である。
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩は、本化合物の、無機酸、カルボン酸またはスルホン酸との酸付加塩であり得る。特に好ましい例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸または安息香酸との塩である。
【0013】
生理的に許容し得る塩は、通常の塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩)またはアンモニアもしくは有機アミン類(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジヒドロアビエチルアミン、1−エフェンアミン(ephenamine)またはメチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩でもあり得る。
【0014】
本発明の化合物の溶媒和物は、本発明のためには、本化合物またはそれらの塩の溶媒(例えば、水、エタノール)との化学量論的組成物である。
【0015】
本発明のためには、置換基は、一般的に以下の意味を有する:
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素である。フッ素、塩素および臭素が好ましく、フッ素および塩素が特に好ましい。
【0016】
好ましい式(I)の化合物は、式中、
が、
【化3】

であり、そして、
が、水素またはNHである、
もの、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0017】
同様に好ましい式(I)の化合物は、式中、
が、
【化4】

であり、そして、
が、水素である、
もの、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0018】
本発明の式(I)の化合物は、以下により製造できる;

【化5】

の化合物を、
A)式
【化6】

式中、Rは、上記の意味を有し、そして、
Alkは、C−C−アルキルである、
の化合物と反応させる、
または、
B)式
【化7】

式中、Rは、上記の意味を有する、
の化合物と反応させて、式
【化8】

式中、Rは、上記の意味を有する、
の化合物を得、続いて、ハロゲン化剤と反応させて、式
【化9】

式中、Rは、上記の意味を有し、そして、
は、ハロゲンである、
の化合物を得る、
そして最後に、加熱しながら加圧下で水性アンモニア溶液と反応させ、生じる式(I)の化合物を適するならば適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸と反応させ、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物を得る。
【0019】
式(II)の化合物は、以下の反応スキームに示す通りに製造できる:
【化10】

【0020】
式(II)の化合物は、文献(Salkowski,H.; Chem.Ber.; 17; 1884; 506 and Chem.Ber.; 22; 1889; 2139)からわかる3−シアノインダゾールおよび2−フルオロ臭化ベンジルからの、不活性溶媒中、塩基の存在下での2工程合成、および続く該ニトリル誘導体のナトリウムエトキシドとの反応、および最後の塩化アンモニウムとの反応により、得ることができる。
【0021】
式(III)の化合物は、例えば、以下のスキームに示す通りに製造できる:
スキームA
【化11】

【0022】
スキームB
【化12】

【0023】
対応する出発化合物2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフランおよびジメチルピリジン−2,6−ジカルボキシレートは、購入できる(例えば、Aldrich より)か、または、当業者に知られている経路により慣用のやり方で得ることができる。
【0024】
二環式[3.2.1]オクタンの場合、該二環系は、例えば、ビスヒドロキシメチルテトラヒドロフラン誘導体(ビストシレートとして活性化されたもの)を、ベンジルアミンと、求核置換反応により、かかる反応に慣用されている条件下で反応させることにより、構築(assemble)する。本発明によると、この反応を、有機溶媒、例えば炭化水素、好ましくは芳香族性炭化水素、特にトルエン中で、2−5倍過剰のアミンを使用して、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば2時間撹拌しながら、高い温度、例えば60−130℃、好ましくは80−120℃、特に100℃で、実行するのが好ましい。
【0025】
二環式[3.3.1]ノナンの場合、該二環系は、例えば、ピペリジン−2,6−ジヒドロキシメチル誘導体の2個のヒドロキシ基の分子内求核置換反応により、かかる反応に慣用されている条件下で構築する。本発明によると、この反応を、酸性条件下、例えば濃硫酸の存在下、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば24時間撹拌しながら、高い温度、例えば60−200℃、好ましくは80−190℃で、特に175℃で実行するのが好ましい。これに必要とされるピペリジン−2,6−ジヒドロキシメチル誘導体は、ピリジン−2,6−ジカルボン酸メチルエステルから、かかる反応に慣用されている条件下で、例えば、パラジウム/活性炭触媒上の水素で、水素化することにより、対応するピペリジン−2,6−ジカルボン酸メチルエステルを得、環の窒素を、例えば臭化ベンジルでベンジル化し(Goldspink, Nicholas J.; Simpkins, Nigel S.; Beckmann, Marion; Syn.Lett.; 8; 1999; 1292 - 1294 参照)、続いて該カルボン酸エステル基を、かかる反応に慣用されている条件下で、例えば水素化リチウムアルミニウムを用いて、有機溶媒、例えばエーテル、好ましくはジエチルエーテル中、2−5倍の還元剤を使用して、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば3時間撹拌しながら、高い温度、例えば30−100℃、好ましくは30−70℃、特に使用する溶媒の還流で、対応するヒドロキシメチル基に還元することにより製造できる。
【0026】
このようにして得られた二環系は、各場合で、かかる反応に慣用されている条件下で、例えばパラジウム/活性炭触媒上、水素で、有機溶媒、例えばアルコール、好ましくはエタノール中、好ましくは50−200barの加圧下、好ましくは100barで、反応溶液を数時間、例えば5時間撹拌しながら、高い温度、例えば60−130℃、好ましくは80−120℃、特に100℃で、ベンジル保護基を除去することにより、対応する二環式アミンに変換できる。これらは、適するアセトニトリル誘導体、例えばハロアセトニトリル類、好ましくはブロモアセトニトリルと、かかる反応に慣用されている条件下で、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒中、わずかに過剰のアセトニトリル誘導体を使用して、塩基、例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどのアミンおよびヨウ化ナトリウムなどのハロゲン化物の存在下、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば24時間撹拌しながら、高い温度、例えば40−130℃、好ましくは40−100℃、特に60℃で反応させることにより、対応するN−メチルニトリル誘導体に変換できる。式(III)の化合物は、それらから、最終的に、蟻酸エステル(例えば、蟻酸エチル)と、かかる反応に慣用されている条件下で、例えば、有機溶媒、例えばエーテル、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテル中、2−5倍過剰の蟻酸エステルを使用して、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数分間、例えば20−60分間撹拌しながら、室温で反応させ、続いて酢酸の存在下、かかる反応に慣用されている条件下で、例えば、わずかに過剰の酢酸無水物を使用し、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数分間、例えば20−60分間撹拌しながら、無水酢酸でアセチル化することにより製造できる。
【0027】
式(I)の化合物をもたらす式(II)および(III)の化合物の反応は、該反応物を等モル量で用いるか、または式(III)の化合物をわずかに過剰に使用して、有機溶媒、例えば炭化水素、好ましくは芳香族性炭化水素、そして特にトルエン中、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば12時間撹拌しながら、高い温度、例えば80−160℃、好ましくは100−150℃、特に120℃で実行できる。
【0028】
式(IV)の化合物は、市販されている(例えば、Mercachem より)か、または、当業者に知られているやり方で製造できる。
【0029】
式(VI)の化合物をもたらす式(II)および(IV)の化合物の反応は、該反応物を等モル量で用いるか、または式(IV)の化合物をわずかに過剰に使用して、有機溶媒、例えば炭化水素、好ましくは芳香族性炭化水素、そして特にトルエン中、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば12時間撹拌しながら、高い温度、例えば80−160℃、好ましくは100−150℃、特に140℃で実行できる。
【0030】
式(V)の化合物の式(VI)の化合物への変換は、式(V)の化合物をハロゲン化剤と、適するならばかかる反応に慣用されている有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)中、好ましくは大気圧下で、反応溶液を数時間、例えば3時間撹拌しながら、高い温度、例えば80−160℃、好ましくは100−120℃で、反応させることにより実行できる。本発明によると、好ましく用いることができるハロゲン化剤は、POClである。
【0031】
式(VI)の化合物の本発明の式(I)の化合物への変換は、式(VI)の化合物を、水性アンモニア溶液と、好ましくは加圧下で、例えばオートクレーブ中で進行する反応により反応混合物の自己圧下で反応が起こるようにして、反応溶液を数時間、例えば12時間撹拌しながら、高い温度、例えば80−160℃、好ましくは100−150℃、特に140℃で、反応させることにより実行できる。
【0032】
本発明の化合物は、予想し得なかった価値ある薬理効果の範囲を示す。
本発明の化合物は、神経のcGMPレベルを高め、従ってNO/cGMP系の障害を特徴とする中枢神経系疾患の制御のための有効成分である。それらは、中度認知障害、加齢性の学習および記憶障害、加齢性の記憶喪失、血管性痴呆、頭蓋脳外傷、卒中、卒中後に起こる痴呆(卒中後痴呆)、外傷後の頭蓋脳外傷、全般的集中障害、学習および記憶の問題を有する小児の集中障害、アルツハイマー病、レヴィー小体痴呆、ピック症候群を含む前頭葉の変性を伴う痴呆、パーキンソン病、進行性核性麻痺、大脳皮質基底核変性を伴う痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、多発性硬化症、視床変性、クロイツフェルト−ヤコブ痴呆、HIV痴呆、痴呆を伴う統合失調症またはコルサコフ精神病などの症状/疾患/症候群に特に関連して発生するもののような認知障害後の、知覚、集中、学習または記憶を改善するのに特に好適である。
【0033】
本発明の化合物は、また、血管弛緩、血小板凝集の阻害および血圧の低下、並びに冠状動脈血流の増加も導く。これらの作用は、可溶性グアニル酸シクラーゼの直接的刺激および細胞内cGMPの増加によって媒介される。加えて、本発明の化合物は、cGMPレベルを増大させる物質、例えば、EDRF(内皮由来弛緩因子)、NO供与体、プロトポルフィリンIX、アラキドン酸またはフェニルヒドラジン誘導体などの作用を増強し得る。
【0034】
従って、それらは、心血管障害の処置、例えば、高血圧および心不全、安定および不安定狭心症、末梢および心臓血管障害、不整脈の処置など、心筋梗塞、卒中、一過性虚血発作、末梢血流障害などの血栓塞栓性障害および虚血の処置、経皮経管動脈形成術(PTA)、経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)、バイパス術などのステントの使用による血栓溶解療法後の再狭窄の予防、および、動脈硬化症、喘息性障害、骨粗鬆症、胃不全麻痺、緑内障、および泌尿生殖器系の疾患、例えば、失禁、前立腺肥大、勃起機能不全、女性の性機能不全の処置のための医薬において用いることができる。
【0035】
それらは、中枢神経系障害、例えば、不安、緊張および抑鬱状態、CNS関連の性機能不全および睡眠障害の処置に、そして、食物、刺激物質および依存性物質の摂取の病的障害の制御にも適する。
【0036】
本発明の化合物は、さらに、脳血流の制御にも好適であり、偏頭痛を制御するための有効な物質であり得る。
それらは、卒中、脳虚血および頭蓋脳外傷のような脳梗塞の後遺症の予防および制御にも適する。本発明の化合物は、同様に、疼痛状態の制御にも用いることができる。
加えて、本発明の化合物は、抗炎症作用を有する。
【0037】
さらに、本発明は、本発明の化合物と、有機硝酸塩およびNO供与体との組合せを包含する。
本発明のための有機硝酸塩およびNO供与体は、一般的に、NOまたはNO前駆体を放出する物質である。ニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、イソソルビドモノニトレート、モルシドミンおよびSIN−1が好ましい。
【0038】
加えて、本発明は、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物との組合せを包含する。これらは、特に、ホスホジエステラーゼ1、2および5(Beavo and Reifsnyder (1990), TiPS 11 pp. 150 to 155 の命名法)の阻害物質である。これらの阻害物質は本発明の化合物の効果を増強し、所望の薬理作用が高まる。
【0039】
本発明の化合物のインビトロでの効果は、以下のアッセイで示すことができる:
初代大脳ニューロンにおけるcGMPの増加
ラットの胚(胚日齢17−19)を断頭し、大脳を取り出し、パパイン溶液5mlおよびDNAse250μl(Cell-System のパパインキット)を用いて、37℃で30分間インキュベートし、パスツールピペットを使用してホモジェナイズし、1200rpmで5分間遠心分離する。上清を除去し、細胞ペレットを再懸濁(EBSS[Earl の平衡塩溶液]2.7ml、オボムコイド/アルブミン(conc.)溶液300μl、DNAse150μl;Cell-System のパパインキット;中)し、オボムコイド/アルブミン溶液5mlの上に重ね、700rpmで6分間遠心分離する。上清を除去し、細胞を培養培地(Gibco 神経基礎(neurobasal)培地、B27 Supplement 50x1ml/100ml、2mM L−グルタミン)中で再懸濁し、計数し(約150000細胞/ウェル)、ポリ−D−リジン被覆96ウェルプレート(Costar)に200μl/ウェルで播く。37℃(5%CO)で6−7日後、ニューロンから培養培地をなくし、アッセイ緩衝液(154mM NaCl、5.6mM KCl、2.3mM CaCl・2HO、1mM MgCl、5.6mMグルコース、8.6mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、pH=7.4)で1回洗浄する。100μl/ウェルの試験物質をアッセイ緩衝液に溶解し、次いで、100μl/ウェルのIBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン;50mMエタノールに溶解、アッセイ緩衝液で最終濃度100μMに希釈)を添加する。37℃、20分間のインキュベーションの後、アッセイ緩衝液を溶解緩衝液(Amersham Pharmacia Biotech の cGMP EIA RPN 226)200μl/ウェルで置き換え、EIAアッセイキットを使用して溶解物のcGMP含量を測定する。
0.1μMの濃度の実施例1は、統計的に有意なcGMPの増加を導く。
【0040】
インビトロにおける血管弛緩作用
首の後ろに一撃を加えてウサギを気絶させ、放血させる。大動脈を取り出し、付着組織をなくし、1.5mm幅の輪に分割し、これを、以下の組成(mM):NaCl:119;KCl:4.8;CaClx2HO:1;MgSOx7HO:1.4;KHPO:1.2;NaHCO:25;グルコース:10を有する、37℃のカルボゲン(carbogen)ガス処理した Krebs-Henseleit 溶液を含有する器官浴5mL中で、1つずつ緊張状態におく。収縮力を Statham UC2 のセルで検出し、A/D変換器 (DAS-1802 HC, Keithley Instruments Munich) で増幅および数値化し、並行してチャートレコーダーに記録する。フェニレフリンを、増大する濃度で漸増的に浴に添加することによって、収縮を発生させる。数回の対照サイクルの後、被験物質(DMSO5μlに溶解)を、それぞれの後続ランにおいて、各場合で増加していく用量で試験し、収縮の高さを、直前の対照サイクルで到達した収縮の高さ(対照値)と比較する。対照値の高さを50%まで減少させるのに必要な濃度(IC50)を、これから算出する。
【0041】
インビトロでの肝臓クリアランスの測定
ラットを麻酔し、ヘパリン化し、門脈を介して肝臓をその場で灌流する。初代ラット肝細胞を、コラゲナーゼ溶液を使用して、肝臓からエクスビボで得る。2.10個の肝細胞/mlを、各場合で同じ濃度の被験化合物と、37℃でインキュベートした。被験基質の経時的な減少を、インキュベーション開始後0−15分間の期間中、各場合5点で、生体分析的に(bioanalytically;HPLC/UV、HPLC/蛍光またはLC/MSMS)測定した。これから、細胞計数および肝臓の重量によりクリアランスを算出した。
【0042】
インビボでの血漿クリアランスの測定
被験物質を、液剤としてラットに尾静脈を介して静脈投与する。定めた時点で、血液をラットから採取し、ヘパリン化し、そこから血漿を慣用手段により得る。物質を生物分析的に血漿中で定量する。薬物動態学的パラメーターを、このようにして測定された血漿濃度−時間経過から、この目的に使用される慣用の非コンパートメント法を利用して算出する。
【0043】
本発明の化合物の知覚、集中、学習および/または記憶の障害の処置への適合性は、例えば以下の動物モデルで示すことができる:
社会的認識試験における学習および記憶の測定
成体の Wistar ラット(Winkelmann, Borchen;4−5月齢)および4−5週齢の仔を、新しい環境に1週間慣れさせる。そこでは、3匹の動物を各ケージ(Makrolon type IV)で飼育し、12時間の昼夜リズム(06:00で点灯)で、水と食料を自由にとることができる。通常、動物10匹の4グループ(媒体対照グループ1、物質処置グループ3)を試験する。最初に、全動物は、試行1として習慣付けラン(habituation run)を経験するが、物質または媒体投与は行わない。試験物質を試行1の直後に投与する。社会的記憶を24時間後の試行2で測定する。
【0044】
試行1:試験30分前に、成体のラットを単体でケージ(Makrolon type IV)中で飼育する。試験4分前に、2枚のアルミニウム側壁、アルミニウム後壁および Plexiglas の前面(63x41x40cm)からなる箱をケージに合わせてかぶせ、ケージのふたを取り除く。仔を成体ラットと一緒にケージに入れ、社会的相互作用(例えば、臭いを嗅ぐ)の時間をストップウオッチで2分間測定する。その後、動物をそれらのケージに戻す。
【0045】
試行2:24時間後に同じ動物で試行1と同様に試験を繰り返す。試行1と試行2の社会的相互作用の時間の差を、社会的記憶の測定値とする。
【0046】
本発明の化合物は、ヒトおよび動物用の医薬としての使用に適する。
本発明は、不活性、非毒性、医薬的に適する賦形剤および担体の他に、1またはそれ以上の本発明の化合物を含むか、または、1またはそれ以上の本発明の化合物からなる医薬製剤、およびこれらの製剤の製造方法を包含する。
【0047】
本発明の化合物は、全混合物の0.1ないし99.5重量%、好ましくは0.5ないし95重量%の濃度で、これらの製剤中に存在すべきである。
医薬製剤は、本発明の化合物とは別に、他の有効医薬成分も含み得る。
【0048】
上述の医薬製剤は、既知方法により、例えば賦形剤または担体を用いて、慣用のやり方で製造できる。
【0049】
新規有効成分は、既知のやり方で、不活性、非毒性、医薬的に適する担体または溶媒を使用して、錠剤、被覆錠剤、丸剤、顆粒剤、エアゾル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤および液剤などの通常の製剤に変換できる。これらの場合では、治療的に有効な化合物は、各場合で全混合物の約0.5ないし90重量%の濃度で、即ち、上記の用量範囲に達するのに十分な量で、存在すべきである。
【0050】
製剤は、例えば、適するならば乳化剤および/または分散剤を使用して、有効成分を溶媒および/または担体で希釈することにより製造でき、例えば、水を希釈剤として使用する場合、適するならば有機溶媒を補助溶媒として使用することが可能である。
【0051】
投与は、常套のやり方で、好ましくは、経口、経皮または非経腸で、特に経舌または静脈内で行うことができる。しかしながら、例えば、スプレーを利用して口または鼻を通す吸入によって、または皮膚を介して局所的にも行うことができる。
【0052】
一般的に、体重の約0.001ないし10mg/kg、経口投与には好ましくは約0.005ないし3mg/kgの量を投与するのが、効果的な結果を達成するのに有利であることがわかった。
【0053】
それでもやはり、適するならば、特に体重または投与経路の性質、医薬に対する個体の反応、その製剤の性質および投与を行う時間または間隔の関数として、上述の量から外れることが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを一日にわたる複数の単回用量に分割するのが望ましい。
【0054】
略号:
【表1】

【0055】
分析方法:
GC−MS
【表2】

【0056】
LC−MS
【表3】

【0057】
出発化合物:
実施例I
(E/Z)−2−シアノ−2−(8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)エテニルアセテート
工程Ia
2,5−アンヒドロ−3,4−ジデオキシ−1,6−ビス−O−[(4−メチルフェニル)スルホニル]ヘキシトール
【化13】

2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン34.0g(261mmol)を、ジクロロメタン260mlに溶解する。ピリジン52mlおよびジクロロメタン130ml中のp−トルエンスルホニルクロリド99.0g(521mmol)の溶液をそれに滴下して添加する。室温で24時間撹拌した後、沈殿を吸引濾過し、ジクロロメタンで洗浄する。濾液および洗浄相を一緒にし、希塩酸で、次いで飽和水性重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発乾固させる。粗生成物をエタノールから再結晶化する。生成物112g(理論値の98%)を得る。
融点:125℃
MS(CIpos):m/z=441(M+H)
【0058】
工程Ib)
3−ベンジル−8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン
【化14】

トルエン500ml中の実施例Ia)由来2,5−アンヒドロ−3,4−ジデオキシ−1,6−ビス−O−[(4−メチルフェニル)スルホニル]ヘキシトール112g(250mmol)およびベンジルアミン90.7g(840mmol)を、還流下で20時間加熱する。次いで、沈殿を吸引濾過し、トルエンで洗浄する。一緒にしたトルエン相を回転エバポレーター中で濃縮し、真空で蒸留する。ベンジルアミンが先に出た(fore-run)後、生成物28.2g(理論値の54%)を得る。
沸点:96−99℃/8mbar
MS(CIpos):m/z=204(M+H)
【0059】
工程Ic)
8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン塩酸塩
【化15】

実施例Ib)由来3−ベンジル−8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン28.2g(136mmol)をエタノール200mlに溶解し、パラジウム/活性炭(10%)5.00gを添加し、水素100barで、オートクレーブ中、100℃で水素化を実行する。触媒を吸引濾過し、濾液を濃塩酸11.9mlと混合し、回転エバポレーター中で濃縮する。アセトンを残渣に添加し、生じる沈殿を吸引濾過し、五酸化リンで乾燥させる。生成物17.0g(理論値の84%)を得る。
融点:209−221℃
MS(CIpos):m/z=114(M+H)
【0060】
工程Id)
8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルアセトニトリル
【化16】

実施例Ic)由来の8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン塩酸塩1.54g(10.3mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド20mlに導入し、氷中で冷却しながら、N,N−ジイソプロピルエチルアミン2.94g(22.7mmol)を添加する。室温で30分間撹拌した後、ブロモアセトニトリル1.36g(11.4mmol)を滴下して添加し、ヨウ化ナトリウム89.9mg(0.60mmol)を添加し、混合物を60℃で終夜撹拌する。次いで反応混合物を蒸発乾固させ、残渣を少量のジクロロメタンに溶解する。溶液を、シリカゲルを通して、ジクロロメタン/メタノール50:1を溶離剤として用いて濾過し、生じる生成物画分を高真空下で乾燥させる。生成物1.24g(理論値の69%)を得る。
=0.80(ジクロロメタン/メタノール20:1)
GC−MS:R=11.23分
MS(CIpos.):m/z=153(M+H)
【0061】
工程Ie)
(E/Z)−2−シアノ−2−(8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)エテニルアセテート
【化17】

カリウムtert−ブトキシド2.00g(17.8mmol)を、無水テトラヒドロフラン10mlに導入する。氷中で冷却しながら、テトラヒドロフラン5ml中の実施例1d)由来の8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルアセトニトリル1.23g(8.08mmol)および蟻酸エチル1.37g(17.8mmol)の溶液を滴下して添加する。室温で1時間撹拌した後、酢酸無水物1.16g(11.3mmol)および酢酸1.07g(17.8mmol)の溶液を、氷中で冷却しながら滴下して添加し、混合物を室温で1時間撹拌する。続いて、シリカゲルを通して、ジクロロメタンを溶離剤として用いて、混合物を濾過する。生成物分画を40℃で蒸発乾固させる。生成物2.03g(理論値の54%)を得、これ以上精製せずに次の反応に用いる。
=0.64(ジクロロメタン/メタノール20:1)
【0062】
実施例II
(E)−2−シアノ−2−(3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル)エテニルアセテート
工程IIa)
[1−ベンジル−6−(ヒドロキシメチル)−2−ピペリジニル]メタノール
【化18】

水素化リチウムアルミニウム19.0g(500mmol)を、無水ジエチルエーテル300mlに導入し、それに無水ジエチルエーテル300ml中のジメチル1ベンジル−2,6−ピペリジンジカルボキシレート75.0g(250mmol)[ジメチルピリジン−2,6−ジカルボキシレートから、パラジウム/活性炭上で水素により水素化し、続いて形成されたジメチル2,6−ピペリジンジカルボキシレートと臭化ベンジルとを反応させる:Goldspink, Nicholas J., Simpkins, Nigel S., Beckmann, Marion, Syn. Lett. 8, 1292 1294 (1999) に従う]の溶液を、滴下して添加する。次いで、混合物を還流下で3時間加熱し、水40mlで注意深く加水分解し、15%強度水性水酸化カリウム溶液20mlと混合する。沈殿を吸引濾過し、ジオキサンと沸騰させる。合わせた濾液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、回転エバポレーター中で蒸発乾固する。粗生成物を真空蒸留に付す。生成物53.3g(理論値の91%)を得る。
沸点:170℃/0.2mbar
【0063】
工程IIb)
9−ベンジル−3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン
【化19】

実施例IIa)由来の[1−ベンジル−6−(ヒドロキシメチル)−2−ピペリジニル]メタノール40g(170mmol)を、66%強度硫酸129ml中、175℃で終夜撹拌する。室温に冷却し、続いて炭酸ナトリウムで中和し、水酸化ナトリウムでアルカリ性にし、ジクロロメタンで数回抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、回転エバポレーター中で蒸発乾固する。残渣を真空で蒸留する。生成物26.5g(理論値の72%)を得る。
沸点:101−103℃/8mbar
MS(CIpos.):m/z=218(M+H)
【0064】
工程IIc)
3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン塩酸塩
【化20】

実施例IIb)由来の9−ベンジル−3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン26.0g(120mmol)を、エタノール200mlに溶解し、パラジウム/活性炭(10%)5.00gを添加し、オートクレーブ中、水素100bar、100℃で水素化を実行する。触媒を吸引濾過し、濾液を濃塩酸10.9mlと混合し、回転エバポレーター中で濃縮する。残渣をアセトンと混合し、生じる沈殿を吸引濾過し、五酸化リンで乾燥させる。生成物12.0g(理論値の81%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, D2O): δ = 1.68-1.76 (m, 1H), 2.08-2.15 (m, 4H), 2.32-2.45 (m, 1H), 3.56 (mc, 2H), 4.07-4.17 (m, 4H) ppm.
【0065】
工程IId)
3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イルアセトニトリル
【化21】

実施例IIc)由来の3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン塩酸塩2.00g(12.2mmol)を、N,N−ジメチルホルムアミド20mlに導入し、氷中で冷却しながら、N,N−ジイソプロピルエチルアミン3.10g(26.9mmol)を添加する。室温で30分間撹拌した後、ブロモアセトニトリル1.61g(13.4mmol)を滴下して添加し、ヨウ化ナトリウム60.0mg(0.40mmol)を添加し、混合物を60℃で終夜撹拌する。次いで、反応混合物を蒸発乾固させ、残渣を少量のジクロロメタンに溶解する。溶液を、シリカゲルを通して、ジクロロメタン/メタノール50:1を溶離剤として濾過し、生じる生成物画分を高真空下で乾燥させる。生成物1.59g(理論値の76%)を得る。
=0.79(ジクロロメタン/メタノール20:1)
GC−MS:R=12.55分
MS(CIpos.):m/z=167(M+H)
【0066】
工程IIe)
(E)−2−シアノ−2−(3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル)エテニルアセテート
【化22】

カリウムtert−ブトキシド2.35g(20.9mmol)を、無水テトラヒドロフラン10mlに導入する。氷中で冷却しながら、テトラヒドロフラン5ml中の実施例IId)由来の3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イルアセトニトリル1.55g(9.50mmol)および蟻酸エチル1.55g(20.9mmol)の溶液を、滴下して添加する。室温で1時間撹拌した後、無水酢酸1.36g(13.3mmol)および酢酸1.26g(20.9mmol)の溶液を、氷中で冷却しながら滴下して添加し、混合物を室温で1時間撹拌する。その後混合物を、シリカゲルを通して、ジクロロメタンを溶離剤として用いて濾過する。生成物画分を40℃で蒸発乾固させる。生成物1.59g(理論値の39%)を得、これ以上精製せずに次の反応に用いる。
=0.66(ジクロロメタン/メタノール20:1)
【0067】
実施例III
1−(2−フルオロベンジル)−1H−インダゾール−3−カルボキシイミドアミド
工程IIIa)
1−(2−フルオロベンジル)−3−シアノインダゾール
【化23】

3−シアノインダゾール12.00g(83.9mmol)を、アルゴン下で無水テトラヒドロフラン100mlに溶解し、2−フルオロ臭化ベンジル20.60g(109.0mmol)を添加する。氷中で冷却しながら、水素化ナトリウム(95%)2.55g(100.0mmol)を数回に分けて添加する。反応混合物を室温で終夜撹拌し、溶媒を真空で元の容積の4分の1に減らす。混合物を蒸留水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で溶媒を除去する。生成物19.50g(理論値の93%)を得る。
=0.69(シクロヘキサン/酢酸エチル1:1)
【0068】
工程IIIb)
1−(2−フルオロベンジル)インダゾール−3−アミジニウムクロリド
【化24】

無水メタノール200ml中の1−(2−フルオロベンジル)−3−シアノインダゾール20.0g(79.9mmol)の溶液を、無水メタノール30ml中のナトリウム190mg(8.26mmol)から新しく製造したナトリウムメタノラート(methanolate)溶液に添加し、混合物を40℃で22時間撹拌する。酢酸0.46mlおよび塩化アンモニウム4.30g(80.4mmol)の添加後、混合物を蒸発乾固させる。残渣をアセトンに懸濁し、残っている沈殿を濾過し、乾燥させる。生成物20.5g(理論値の84%)を得る。
融点:>230℃
MS(EI):m/z(%)=268(31、遊離塩基のM)、251(15)、109(100)
【0069】
工程IIIc)
1−(2−フルオロベンジル)−1H−インダゾール−3−カルボキシイミドアミド
【化25】

炭酸ナトリウム2.61g(24.61mmol)を10%強度水性溶液として、酢酸エチル100ml中の実施例IIIb)由来の1−(2−フルオロベンジル)インダゾール−3−アミジニウムクロリド5.00g(16.41mmol)の懸濁液に添加し、混合物を室温で90分間撹拌する。1モル濃度の水酸化ナトリウム溶液を、相が分離するまで添加する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で溶媒を除去する。生成物3.33g(理論値の76%)を得る。
MS(ESIpos):m/z=269(M+H)
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 5.82 (s, 2H), 6.67 (br. s, 2H), 7.10-7.33 (m, 5H), 7.38-7.57 (m, 2H), 7.78 (d, 1H), 8.38 (d, 1H) ppm.
【0070】
例示的実施態様:
実施例1
2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−インダゾール−3−イル]−5−(3−オキサ−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−9−イル)−4−ピリミジニルアミン
【化26】

1−(2−フルオロベンジル)−1H−インダゾール−3−カルボキシイミドアミド(実施例III)500mg(1.86mmol)および新しく製造した(E)−2−シアノ−2−(3−オキサ−9−アザビシクロ−[3.3.1]ノナ−9−イル)エテニルアセテート(実施例II)594mg(2.52mmol)を、トルエン10mlに懸濁し、120℃で終夜撹拌する。真空で溶媒を除去し、残渣を分取HPLCにより精製する。生じる粗生成物を酢酸エチル/ジエチルエーテル中で撹拌する。固体を濾過し、乾燥させる。生成物37mg(理論値の4%)を得る。
LC−MS:R=2.05分
MS(ESIpos):m/z=455(M+H)
=0.37(ジクロロメタン/メタノール20:1)
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 1.60-1.83 (m, 3H), 1.97-2.22 (m, 2H), 2.35-2.65 (m, 1H), 3.78 (d, 2H), 4.04 (d, 2H), 5.77 (s, 2H), 6.34 (s, 2H), 7.02-7.51 (m, 6H), 7.73 (d, 1H), 8.18 (s, 1H), 8.63 (d, 1H) ppm.
【0071】
実施例2
2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−インダゾール−3−イル]−5−(8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)−4−ピリミジニルアミン
【化27】

実施例1の方法と同様に、適切な出発物質である1−(2−フルオロベンジル)−1H−インダゾール−3−カルボキシイミドアミド(実施例III)および(E/Z)−2−シアノ−2−(8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)エテニルアセテート(実施例I)を使用して、化合物を製造する。生成物の収量は、166mg(理論値の21%)である。
LC−MS:R=1.94分
MS(ESIpos):m/z=431(M+H)
=0.22(ジクロロメタン/メタノール20:1)
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 1.78-1.95 (m, 2H), 2.13-2.28 (m, 2H), 2.93 (s, 4H), 4.38 (br. s, 2H), 5.93 (s, 2H), 7.10-7.45 (m, 5H), 7.58 (t, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.99 (d, 1H), 8.69 (d, 1H) ppm.

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

式中、
は、
【化2】

であり、ここで、
nは、1または2であり、そして、
は、水素またはNHである、
の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
が、
【化3】

であり、そして、
が、水素またはNHである、
請求項1に記載の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項3】
式中、
が、
【化4】

であり、そして、
が、水素である、
請求項1に記載の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
本発明の式(I)の化合物の製造方法であって、式
【化5】

の化合物を、
A)式
【化6】

式中、Rは、上記の意味を有し、そして、
Alkは、C−C−アルキルである、
の化合物と反応させる、
または、
B)式
【化7】

式中、Rは、上記の意味を有する、
の化合物と反応させて、式
【化8】

式中、Rは、上記の意味を有する、
の化合物を得、続いて、ハロゲン化剤と反応させて、式
【化9】

式中、Rは、上記の意味を有し、そして、
は、ハロゲンである、
の化合物を得る、
そして最後に、加熱しながら加圧下で水性アンモニア溶液と反応させ、生じる式(I)の化合物を適するならば適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸と反応させ、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物を得る、
による製造方法。
【請求項5】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の本発明の化合物。
【請求項6】
少なくとも1つの医薬的に許容し得る本質的に非毒性の担体または賦形剤と一緒に混合された、少なくとも1つの請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物を含む医薬。
【請求項7】
中枢神経系疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項8】
知覚、集中、学習および/または記憶の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
中枢神経系疾患の処置および/または予防用の請求項5に記載の医薬。
【請求項10】
知覚、集中、学習および/または記憶の障害の処置および/または予防用の請求項5に記載の医薬。
【請求項11】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の有効量を投与することによる、ヒトまたは動物における知覚、集中、学習および/または記憶の障害の制御方法。

【公表番号】特表2006−503854(P2006−503854A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540624(P2004−540624)
【出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010273
【国際公開番号】WO2004/031186
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】