説明

新規レクチン及びその製造方法、並びに糖鎖検出方法及び糖鎖分別方法

【課題】グルコースα1→6結合、及び、マンノースα1→6結合を認識する新規なレクチンを提供する。
【解決手段】(1)分子量が、10,000〜30,000であり、(2)N−末端領域のアミノ酸配列が、Thr-Ile-Gly-であり、(3)Glcα1→6Glc、及び、Manα1→6Manに結合するヌメリガサ属(Hygrophorus)担子菌に由来するレクチンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規レクチン及びその製造方法に関し、特にキノコ抽出物由来の新規レクチン及びその製造方法、並びに該レクチンを用いた糖鎖検出方法及び糖鎖分別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レクチンは、植物、動物のほか菌類などにも存在するタンパク質又は糖タンパク質のうち、糖に対する特異的結合活性をもった物質の総称である。レクチンは、単糖のみならず糖鎖中の糖も認識するため、有用糖鎖プロファイラーとして広く用いられている。またレクチンは糖鎖に対する特異的な結合能が高いため、これを利用した目的物質の検出が可能である。目的物質の検出をより効率よく行うために、従来のレクチンとは特異性や結合能の高さなどが異なる新規なレクチンが探索され、種々見出されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
一方、糖鎖の研究の進歩に伴って、糖鎖が生体内外で重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。例えば、ウィルス感染や癌等の各種疾患における糖鎖の役割が重要視されてきている。このため、より詳細な糖鎖研究が求められており、糖鎖の分析や癌などの診断において、特定の糖鎖を認識可能なレクチンは、有用なツールとして利用されてきている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第2630431号公報
【特許文献2】特許第2895962号公報
【特許文献3】特開平10−307138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在知られているレクチンでは認識が困難な糖鎖があり、新規なレクチンの開発に対する要請が大きくなっている。特に、コンカナバリンAやエンドウ豆レクチンなどの公知のグルコース、マンノース特異的レクチンでは、グルコースやマンノースの結合様式までは、判断することができない。
本発明は、グルコースやマンノースの結合において、特に、α1→6結合を有するグルコースオリゴマー又はマンノースオリゴマーを特異的に検出可能なレクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレクチンは、(1)分子量が、約10,000〜30,000であって、(2)N−末端領域のアミノ酸配列が、Thr-Ile-Gly-であって、(3)Glcα1→6Glc及びManα1→6Manに結合するヌメリガサ属(Hygrophorus)担子菌に由来のレクチンである。
前記N−末端領域のアミノ酸配列は、Thr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-であることが好ましい。
また、本発明のレクチンは、ヌメリガサ属担子菌の水系媒体抽出物を、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖を含有する溶出液と、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含有する担体とを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製して得られるものであることが好ましい。
【0006】
また、本発明のレクチンの製造方法は、ヌメリガサ属担子菌の子実体から水系媒体抽出物を得る抽出工程と、前記水系媒体抽出物を、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖を含有する溶出液と、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含有する担体とを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製する精製工程を有する。
前記ヌメリガサ属担子菌はサクラシメジ、ヒメサクラシメジ、サクラシメジモドキからなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の標識レクチンは、前記レクチンと標識手段とを含む。
また、本発明の糖鎖化合物の検出方法は、前記レクチン又は前記標識レクチンを用いて、Glcα1→6Glc及びManα1→6Manの少なくとも1種を含む糖鎖を検出する工程を含む糖鎖検出方法である。
【0008】
また、本発明のレクチン固定化担体は、前記レクチンと支持担体とを含む。
更に、本発明の糖鎖化合物の分別方法は、前記レクチン又は前記レクチン固定化担体を用いて、Glcα1→6Glc及びManα1→6Manの少なくとも1種を含む糖鎖を分別する工程を含む糖鎖分別方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グルコースやマンノースの結合において、特に、α1→6結合を有するグルコースオリゴマー又はマンノースオリゴマーを特異的に検出可能なレクチンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の上記レクチンは、ヌメリガサ属に属する担子菌に由来するレクチンである。なかでもヌメリガサ属担子菌の子実体(キノコ)に由来するレクチンであることが好ましい。
本発明におけるヌメリガサ属担子菌としては、サクラシメジ、ヒメサクラシメジ、サクラシメジモドキ、アケボノサクラシメジ、ウコンガサ、キヌメリガサ、コケイロヌメリガサ、シモフリヌメリガサ、フキサクラシメジ、ヤギタケ等を挙げることができ、このうちレクチンの糖認識特異性とレクチンの回収効率の観点から特に、サクラシメジ、ヒメサクラシメジ及びサクラシメジモドキから選択された少なくとも1種であることが好ましく、サクラシメジであることがより好ましい。
【0011】
本発明のレクチンは、SDS電気泳動法による分子量が10,000〜30,000であるが、15,000〜20,000であることが好ましい。
SDS電気泳動法による分子量の測定は、例えば、Laemmiの方法(Nature, 227巻, 680頁, 1976年)に準じて行うことができる。
【0012】
また、本発明のレクチンは、N−末端領域にThr-Ile-Gly-(配列番号1)からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を含むものであるが、N−末端領域のアミノ酸残基は、Thr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-(配列番号2)であることが好ましい。ここで、前記Xは任意のアミノ酸残基であってよいが、Thr又はCysであることが好ましい。
中でも、N−末端領域が、Thr-Ile-Gly-Thr-Ala-Lys-Pro-Ile-Leu-Ala-Gln-Thr-Ala-Ile-Val-Gly-Gly-Pro-Ser-Val-Pro-Phe-Asp-Asp-Ala-Arg-Glu-Val-Ala-Ser-Trp-Pro-Ala-Lys-Leu-Glu-Ile-Ala-Gln-Asp-(配列番号3)、Thr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-Val-Leu-Val-Gln-Asn-Val-Leu-Leu-Gly-Gly-Pro-Ala-Val-(配列番号4)又はThr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-Val-Leu-Val-Gln-Thr-Gly-Ile-Val-Gly-Gly-Pro-X-Val-(配列番号5)からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を含むものであることがより好ましい。
【0013】
また、本発明のレクチンは、Glcα1→6Glc及びManα1→6Manに対して高い結合特異性を有していることを特徴とする。
ここでGlcα1→6Glcは、2分子のグルコースがα1→6結合で結合したイソマルトース構造を意味する。また、Manα1→6Manは、2分子のマンノースがα1→6結合で結合したα1→6マンノビオース構造を意味する。
本発明のレクチンは、グルコース又はマンノースがα1→6結合で結合した部分構造を有する糖鎖を特異的に認識することができるという従来のレクチンには知られていなかった糖結合特異性を有する。
【0014】
レクチンの糖結合特異性は、例えば、当該レクチンが特異的に凝集させることができる赤血球を用いて、その赤血球の凝集反応を阻止しうる糖類の種類とその濃度を調べることにより確認することができる。
【0015】
本発明のレクチンは、ヌメリガサ属担子菌から、公知の抽出方法、分離方法及び精製方法等を適宜組み合わせて行うことにより単離して製造することができる。中でも、以下に説明する製造方法で得られるレクチンであることが好ましい。
【0016】
本発明のレクチンの製造方法は、前記ヌメリガサ属担子菌の子実体を原料とし、水系媒体を抽出溶媒として用いて、水系媒体抽出物を得る抽出工程を有する。
【0017】
水系媒体としては、各種の緩衝液、水と混合しうる各種の有機溶媒と水又は緩衝液との混合物等を挙げることができる。緩衝液又は有機溶媒と緩衝液の混合物を用いることが好ましい。
緩衝液としては、特に制限されることなく公知の緩衝液を用いることができる。中でも、pH3〜pH10の範囲に緩衝能を有するものが好ましく、pH6〜pH8の範囲に緩衝能を有する緩衝液がより好ましい。
【0018】
本発明に用いられる緩衝液としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液等を挙げることができる。中でも抽出効率の観点から、リン酸緩衝液等が好ましい。
緩衝液の塩濃度については、特に制限はないが、抽出効率と緩衝能の点から、1mM〜100mMであることが好ましく、5mM〜20mMであることがより好ましい。
【0019】
また、緩衝液は各種の塩類を更に含むことができ、例えば、リン酸緩衝液に食塩を更に加えたリン酸緩衝化生理食塩水等を本発明における水系媒体として好ましく用いることができる。
【0020】
また、有機溶媒としては水と混合しうる有機溶媒であれば特に制限なく用いることができるが、中でも、アセトン、メタノール、エタノール、2-プロパノール及びアセトニトリルを好ましく挙げることができる。有機溶媒と水又は緩衝液を混合する場合の有機溶媒の含有量としては10質量%〜40質量%であることが好ましい。
【0021】
水系媒体とヌメリガサ属担子菌の子実体とから、水系媒体抽出物を得る方法については、水系媒体とヌメリガサ属担子菌の子実体とを接触させることができれば特に制限はない。抽出効率の観点から、水系媒体中でヌメリガサ属担子菌の子実体を粉砕して懸濁液とする方法が好ましい。また粉砕する方法としては、ミキサーやホモジナイザー等通常の粉砕方法を挙げることができる。
【0022】
本発明における抽出工程は、水系媒体とヌメリガサ属担子菌の子実体との混合物から、水系媒体に対する不溶物を除去する工程を更に含むことが好ましい。不溶物の除去方法としては、濾過、遠心分離等の方法を挙げることができるが、除去効率の観点から遠心分離が好ましい。
【0023】
本発明の抽出工程は、リン酸緩衝化生理食塩水中で、ヌメリガサ属担子菌の子実体を粉砕し、遠心分離によって不溶物を除去して水系媒体抽出物を得る工程であることが特に好ましい。
【0024】
本発明のレクチンの製造方法においては、上記抽出工程によって得られた水系媒体抽出物を、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類を含有する溶出液と、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含有する担体とを用いたアフィニティークロマトグラフィーに付して精製する精製工程を有する。これにより、より効率的に精製を行うことができる。
【0025】
本発明における担体としては、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含有する担体であれば特に制限なく用いることができる。中でも、α1→6結合を有するグルコース残基を含有する担体であることが好ましい。α1→6結合を有するグルコース残基を含有する担体としては、例えば、デキストラン担体を挙げることができる。
前記デキストラン担体は、架橋デキストランを含有する担体であることが好ましく、中でも分画範囲が100,000Da以下の担体を用いることがより好ましく、1,500〜80,000Daの担体を用いることがより好ましい。具体的には、例えば、Sephadex担体(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)製)を挙げることができる。中でも、精製効率の観点から、Sephadex G−50又はSephadex G−75を用いることが特に好ましい。
【0026】
本発明におけるアフィニティークロマトグラフィーにおいては、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含む担体を充填剤としたカラムを用いることが好ましい。前記水系媒体抽出物を前記カラムに吸着させ、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類を含有する溶出液を用いて分離及び分画することで、より効率よく本発明のレクチンを精製することができる。
また本発明においては、前記水系媒体抽出物を前記カラムに吸着させた後に、適当な洗浄液、例えば、上述した緩衝液を用いて洗浄を行った後に、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類を含有する溶出液を用いて分離及び分画することがより好ましい。
【0027】
前記溶出液としては、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類を含有する溶液であれば、特に制限なく用いることができる。グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類としては、例えば、イソマルトオリゴ糖、グルコース、マンノース、メチル-α-マンノシド、2αマンノビーオース、3αマンノビーオース、4αマンノビーオース、6αマンノビーオース等を挙げることができる。中でも、本発明のレクチンの糖特異性の観点から、イソマルトオリゴ糖、グルコース、マンノースを用いることが好ましい。
前記溶出液に含まれる糖類の濃度には特に制限はないが、例えば、イソマルトオリゴ糖を含む溶出液における糖類の含有量としては、精製効率の点から、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜2質量%であることがより好ましい。また、グルコース又はマンノースを含む溶出液における糖類の濃度としては、精製効率の点から、10mM〜1000mMであることが好ましく、10mM〜500mMであることがより好ましい。
尚、グルコース、マンノース及びイソマルトオリゴ糖は市販のものを好適に用いることができる。
【0028】
本発明における精製工程としては、デキストラン担体を充填剤としたカラムに前記水系媒体抽出物を吸着させ、緩衝液、特に、リン酸緩衝化生理食塩水を用いて非吸着成分の洗浄をおこなった後に、マンノース、グルコース、イソマルトオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種を10mM〜500mM含有する溶出液を用いて精製する工程であることが特に好ましい。
【0029】
本発明のレクチンの製造方法は、前記精製工程で得られたレクチンを含む画分を透析処理する工程と、透析処理後のレクチン溶液を凍結乾燥する工程とを含むことができる。これにより、レクチンを単離することができる。
透析処理する工程及び凍結乾燥する工程は、通常用いられる公知の方法によって行うことができる。
【0030】
本発明のレクチンは、従来公知のレクチンとは物理化学的性質、及び、糖鎖への結合特異性などの生化学的性質が異なる新規のレクチンである。特にグルコース及びマンノースのα1→6結合を特異的に認識することから、検査試薬、免疫調節剤、糖質の分離分析用特異的吸着剤等として用いることができる。
【0031】
本発明の標識レクチンは、前記レクチンと標識手段とを少なくとも含み、検出可能に標識化されていることを特徴とする。標識手段としては、特に制限なく公知の標識化方法を適用することができ、例えば、放射性同位元素による標識化、標識化合物の結合等を挙げることができる。
標識化合物としては、この用途に通常用いられるものであれば特に制限なく適用することができ、例えば、直接又は間接標識化合物、酵素、蛍光化合物等を挙げることができる。具体的にはビオチン、ジゴキシゲニン、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ、フルオレセインイソチオシアネート、CyDye等を挙げることができる。これらの標識化合物は常法によりレクチンと結合することができる。
【0032】
本発明の糖鎖検出方法は、前記レクチン又は前記標識レクチンを用いて、Glcα1→6Glc及び/又はManα1→6Manを含む糖鎖を検出する工程を含むことを特徴とする。前記レクチンはGlcα1→6Glc及びManα1→6Manを特異的に認識して結合できることから、Glcα1→6Glc及び/又はManα1→6Manを含む糖鎖を含有する多糖類、糖脂質、糖タンパク質等の糖鎖化合物を特異的に検出することができる。
【0033】
レクチンが結合した糖鎖化合物の検出は、例えば、標識手段によってレクチンを予め標識化することで容易に行うことができる。中でも、感度と検出の容易さから、標識化合物を予めレクチンに結合してレクチンを標識化しておき、標識化合物を検出することによって行うことが好ましい。
標識レクチンの検出手段は、用いられた標識手段に応じて適宜選択される。例えば、吸光度測定、発光強度測定、蛍光強度測定、目視等により行うことができる。
【0034】
本発明のレクチン固定化担体は、前記レクチンと支持担体とを少なくとも含む。支持担体を構成する材料としては、特に制限はなく、例えば、無機材料、有機材料、及びこれらの複合材料を挙げることができる。無機材料としては、金属、半導体、金属酸化物等の金属化合物、セラミックス、ガラス、シリカ等を挙げることができる。また、有機材料としては、ゴム、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン等のポリビニルポリマー類、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ゼラチン等のポリアミド類、セルロース、アガー、アガロース等の多糖類等を挙げることができる。
また支持担体の構造としては、特に制限はなく、例えば、多孔質構造、繊維状構造、ゲル状構造等を挙げることができる。
【0035】
本発明における支持担体としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、アガロース、ビニルポリマー等を挙げることができ、糖鎖の分別効率の観点から、アガロース等が好ましい。
レクチンは前記支持担体に対して、支持担体に応じた常法を用いて固定化することができる。また、レクチンと支持担体との間には、連結基(スペーサー)が設けられていても良い。
【0036】
本発明の糖鎖分別方法は、前記レクチン又は前記レクチン固定化担体を用いて、Glcα1→6Glc及び/又はManα1→6Manを含む糖鎖を分別する工程を含むことを特徴とする。前記レクチンはGlcα1→6Glc及びManα1→6Manを特異的に認識して結合できることから、Glcα1→6Glc及び/又はManα1→6Manを含む糖鎖を含有する多糖類、糖脂質、糖タンパク質等の糖鎖化合物を特異的に分別することができる。
【0037】
レクチンが結合する糖鎖化合物の分別は、例えば、レクチンを固定化した担体を用いることによって容易に行うことができる。糖鎖化合物の分別方法は、レクチンを固定化した担体に応じて適宜選択され、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、B/F分離(bound/free分離)等により行えばよい。
【0038】
本発明の糖鎖検出方法及び糖鎖分別方法においては、本発明のレクチンを用いるが、糖鎖検出感度、糖鎖分別効率の観点から、Glcα1→6Glc及びManα1→6Manを含む糖鎖との相互作用強度が、Glcα1→6Glc及びManα1→6Manを含まない糖鎖との相互作用強度の10倍以上であることが好ましい。レクチンと糖鎖との相互作用強度は、例えば、赤血球凝集反応阻害試験を用いて測定することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0040】
(実施例1)
山梨県山林中より採取したヌメリガサ属サクラシメジ(Hygrophorus russula)の子実体100gに、10mMリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4、以下「PBS」ということがある)を100ml加えて、ミキサーにて粉砕した。これを4℃で昼夜放置した後、遠心分離(8500×g、20分間、4℃)し、上清を粗抽出液(水系媒体抽出物)とした。
得られた粗抽出液を、PBSで平衡化したSephadex G−75アフィニティーカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製;φ5×15cm)に付した。非吸着分をPBS(約700ml)にて洗浄した後、300mMのマンノース溶液を用いて溶出し、レクチン含有画分を得た。尚、レクチンを含有する画分は280nmにおける吸光度及び赤血球凝集活性を測定することによって同定した。
得られたレクチン含有画分を、常法により透析処理し、凍結乾燥することでヌメリガサ属担子菌に由来するレクチン(Hygrophorus russula lectin : HRL)を6mg得た。
【0041】
<レクチンの評価>
実施例1で得られたレクチン(HRL)に対して以下の評価を行った。
[SDS−ポリアクリルアミド電気泳動]
Laemmliらの方法に従い10%のSDSを含む濃縮ゲル5%T、分離ゲル15%Tのアクリルアミドスラブゲルを作製した。
レクチン10μgを蒸留水31.25μlに溶解し、ついで10%SDS10μl、0.5Mトリス緩衝液(pH6.8)6.25μl、2−メルカプトエタノール2.5μlを加えて、総量50μlとした。これを10分間煮沸した後、0.05%ブロモフェノールブルー、70%グリセロールを各5μl加えて、試料溶液とした。また、分子量マーカーとしては、XL-Ladder Low range(APRO社製)を使用した。
泳動はコンパクト−PAGE(ATTO社製)を用いて行った。試料溶液、分子量マーカーは共に5μl用いた。泳動槽用緩衝液として、0.1%のSDSを含むトリス25mM、グリシン192mMを含む緩衝液を用いた。泳動終了後、ゲルを直ちに染色液(0.1%CBB R-250、30%メタノール、10%酢酸)に浸し、60℃で30分間緩やかに振とうしながら染色した。ついで脱色液(30%メタノール、10%酢酸)に浸し、同様に60℃で時折脱色液を交換しながら脱色した。十分脱色後、ゲルを濾紙上にてゲル乾燥機により乾燥し、相対移動度から分子量を推定した。結果を図1に示した。
【0042】
図1から、HRLの分子量が15,000〜20,000であることが分かる。
また、上記試料液の調製において、蒸留水を33.75μl用い、2-メルカプトエタノールを添加しなかった以外は同様にして調製した試料溶液を用いて、上記と同様にして電気泳動を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。このことから、本発明のレクチンはサブユニットがジスルフィド結合で結合したタンパク質ではないことが分かる。
【0043】
[MALDI−TOF質量分析]
HRL10μgをTA(0.1%TFAとアセトニトリルの体積比2:1の混合物)に溶解した。TAに溶解した飽和マトリックスとHRLのTA溶液を体積比4:1で混合したもの1.0μlをターゲットプレートに滴下してサンプルを調製した。質量分析装置としてブルカーダルトニクス社製Autoflexを用い、LPモードでHRLの分子量を測定した。その結果、HRLの分子量は約18,500であった。
【0044】
[ゲル濾過クロマトグラフィー]
ゲル濾過カラムとして、TSK-gel BioAssist G3SWXL(φ7.8×300mm、東ソー(株)製)を用い、HPLCによるゲル濾過クロマトグラフィーを以下のようにして行い、未変性状態のHRLの分子量を測定した。
あらかじめPBSで平衡化しておいたカラムに試料溶液を付した。流速0.5ml/minで溶出し、試料の溶出時間から分子量を推定した。尚、検出は280nmにおける吸光度で行い、分子量推定用検量線の作製には、Molecular weight markers for gel filtration chromatography(Sigma社製)を使用した。
【0045】
ゲル濾過クロマトグラフィーの結果から、未変性状態におけるHRLの分子量は74kDaであることが分かった。したがって本発明のレクチンは分子量18,500のサブユニットの4量体であると推定できる。
【0046】
[N−末端領域のアミノ酸配列]
HRLのN−末端領域のアミノ酸配列を、Protein Peptide Sequencer PPSQ-21 System(島津製作所社製)を用いて解析したところ、下記アミノ酸配列(配列番号3)であることが分かった。
Thy-Ile-Gly-Thr-Ala-Lys-Pro-Ile-Leu-Ala-Gln-Thr-Ala-Ile-Val-Gly-Gly-Pro-Ser-Val-
Pro-Phe-Asp-Asp-Ala-Arg-Glu-Val-Ala-Ser-Trp-Pro-Ala-Lys-Leu-Glu-Ile-Ala-Gln-Asp
【0047】
[等電点電気泳動]
市販のゲル(PhastGel IEF 3−10;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、付属のインストラクションマニュアルに従って等電点電気泳動を行った。
試料として10μgのHRLを蒸留水10μlに溶解したものを用い、等電点マーカーはBroad pI calibration kit(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いた。
本発明のレクチンの等電点はpI6.55であった。
【0048】
[温度安定性]
50μgのHRLを生理食塩水1mlに溶解し、各試験温度で30分間インキュベートした。直ちに氷冷し10分後に上記と同様にして赤血球凝集活性を測定した。結果を図2に示した。
【0049】
図2から、本発明のレクチンは0℃〜70℃における温度安定性を示すことが分かる。
【0050】
[pH安定性]
50μgのHRLを生理食塩水1mlに溶解し、これを試験管に分取した。等量の下記の各pH緩衝液をそれぞれ加え、4℃にて24時間インキュベートした後、上記と同様にして赤血球凝集活性を測定した。結果を図3に示した。
【0051】
−pH緩衝液−
pH2.0−3.5 : 20mM KCl−HCl緩衝液
pH4.0−5.5 : 20mM 酢酸緩衝液
pH6.0−7.5 : 20mM リン酸緩衝液
pH8.0−8.5 : 20mM トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)緩衝液
pH9.0−10.5 : 20mM グリシン−NaOH緩衝液
尚、各緩衝液は0.15M 塩化ナトリウムを含む。
【0052】
[タンパク質含有量]
タンパク質含有量は、IgGを標準としたBradford色素結合法により測定した。10μg/ml〜1.25μg/mlのIgG溶液を調製した。それぞれの溶液800μlにバイオラッドプロテインアッセイ染色液(日本バイオラッドラボラトリーズ社製)200μlを加え、激しく攪拌した。30分後に595nmの吸光度を測定して、検量線を作成した。
20〜5μg/mlのHRL試料溶液を調製し、上記と同様にして吸光度を測定し、検量線からタンパク質含有量を推定した。
HRLのタンパク質含有量は、79.6%であった。
【0053】
[中性糖含有量]
グルコースを標準としたフェノール−硫酸法により中性糖含有量を測定した。0〜30%のグルコース溶液を調製し、グルコース溶液100μlを比色管に分注した。5%フェノール0.5ml、ついで濃硫酸2.5mlを素早く加え、激しく振盪した。そして、室温になるまで冷却した後、485nmの吸光度を測定し、検量線を作成した。
試料としてHRLの1mg/ml水溶液を用い、グルコースと同様にして、吸光度を測定し、検量線から中性糖含有量を推定した。
HRLの中性糖含有量は3.5%であった。
【0054】
[ウサギ赤血球凝集活性試験]
ウサギ血液10mlを採血後、直ちに3.8%クエン酸ナトリウム溶液2.0mlを加えた試験管内でよく混合し、血液の凝固を阻止した。次に遠心分離(3000×g、3min、常温)を行い血漿及び白血球を除去し、赤血球のみとした。これにPBSを赤血球の約3倍量加えてよく混合し、同様の条件で遠心分離し上清を取り除いた。これを3回繰り返すことで血漿及び白血球を完全に取り除き、これを洗浄赤血球とした。この洗浄赤血球をPBSで希釈し、ウサギ3%赤血球懸濁液とした。
【0055】
−赤血球凝集活性の測定−
96ウェルタイタープレートの一段にPBSを各20μl入れ、ウェルに、レクチン溶液(20μg/ml)を20μl入れ、順次1/2希釈系列を作製した。上記で得られたウサギ3%赤血球溶液をそれぞれ20μl添加し、室温で約60分放置後、赤血球凝集活性を肉眼にて観察した。凝集が認められた最大稀釈度の逆数を原液の凝集力価とし、凝集力価の2を底とする対数を赤血球凝集活性として表1に示した。
【0056】
[ヒツジ赤血球凝集活性試験]
ウサギ赤血球凝集活性試験において、ウサギ血液の代わりにヒツジ血液を用いた以外は同様にして、ヒツジ赤血球凝集活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0057】
[ヒト赤血球凝集活性試験]
A型、B型、O型のヒト血液10mlを採血後、直ちに3.8%クエン酸ナトリウム溶液2.0mlを加えた試験管内でよく混合し、血液の凝固を阻止した。次に遠心分離(3000×g、3min、常温)を行い血漿及び白血球を除去し、赤血球のみとした。これにPBSを赤血球の約3倍量加えてよく混合し、同様の条件で遠心分離し上清を取り除いた。これを3回繰り返すことで血漿及び白血球を完全に取り除き、これを洗浄赤血球とした。この洗浄赤血球をPBSで希釈し、A型、B型、O型の3%赤血球懸濁液とした。次いで以下の処理を行い、アクチナーゼE処理赤血球懸濁液、トリプシン処理赤血球懸濁液、ノイラミニダーゼ処理赤血球懸濁液を調製した。
【0058】
・アクチナーゼE処理赤血球懸濁液の調製
上記で得られた洗浄赤血球1mlを、4mgのアクチナーゼEを溶解させた9mlのPBSに懸濁し、45℃で30分間振とうして反応させた。反応後、遠心分離(3,000×g、3min、常温)し、上清を取り除くことで赤血球のみとする洗浄を3回繰り返した。この赤血球をPBSで希釈し、3%アクチナーゼE処理赤血球懸濁液とした。
【0059】
・トリプシン処理赤血球懸濁液の調製
上記で得られた洗浄赤血球1mlを1mgのトリプシンを溶解させた9mlのPBSに懸濁し、37℃で90分間振とうして反応させた。さらに、1mgのトリプシンを添加し、37℃で90分間振とうして反応させた。反応後、遠心分離(3,000×g、3min、常温)し、上清を取り除くことで赤血球のみとする洗浄を3回繰り返した。この赤血球をPBSで希釈し、3%トリプシン処理赤血球懸濁液とした。
【0060】
・ノイラミダーゼ処理赤血球懸濁液の調製
上記で得られた洗浄赤血球1mlを1Uのノイラミダーゼを溶解させた9mlのPBSに懸濁し、37℃で60分間振とうして反応させた。反応後、遠心分離(3,000×g、3min、常温)し、上清を取り除くことで赤血球のみとする洗浄を3回繰り返した。この赤血球をPBSで希釈し、3%ノイラミダーゼ処理赤血球懸濁液とした。
【0061】
上記で得られたA型、B型、O型のアクチナーゼE処理赤血球懸濁液、トリプシン処理赤血球懸濁液、ノイラミニダーゼ処理赤血球懸濁液を用いた以外はウサギ赤血球凝集活性試験と同様にしてヒト赤血球凝集活性を測定した。結果を表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
[糖結合特異性]
種々の単糖、オリゴ糖、多糖および糖タンパクを用いて赤血球凝集反応阻害試験によりレクチンの糖結合特異性を評価した。96穴U底マイクロタイタープレートに10μlの糖溶液の2倍希釈系列を作製した。力価4にあらかじめ調節しておいたレクチン溶液をそれぞれの穴に10μlずつ加えた。室温にて1時間静置して感作させた後、20μlの3%赤血球懸濁液をそれぞれの穴に加え、さらに室温にて1時間静置した。その後、赤血球の凝集を完全に阻害するサンプル溶液の希釈倍率を肉眼にて判定した。阻害を示す最低濃度を最小阻害濃度とした。この最小阻害濃度が小さいほど、レクチンに対する特異性が高いことを示している。結果を下記表2及び表3に示した。
また、これらの特異性を市販のグルコース・マンノース特異的レクチンであるコンカナバリンAレクチン(ConA)ならびに、エンドウマメレクチン(PSA)について評価した結果を下記表2及び表3に併せて示した。
【0064】
【表2】

【0065】
また、表2には示さなかったが、ガラクトース、フコース、L−フコース、アラビノース、L−アラビノース、リボース、ラフィノース、L−ラムノース、サッカロース、ラクトース、ラクチトール、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルラクトサミン、メチルβ−グルコシド、メチルα−ガラクシド、メチルβ−ガラクシド、メリビオース、キシロース、ガラクロン酸、グルクトサミン塩酸塩、ガラクトサミン塩酸塩、マンノサミン塩酸塩、グルロン酸、2−デオキシリボース、キトビオース、及び、マルトースは、100mMで赤血球凝集阻害活性を示さなかった。
更に、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸は、40mMで赤血球凝集阻害活性を示さなかった。
【0066】
【表3】

【0067】
また、表3には示さなかったが、α−酸性糖タンパク質、トランスフェリン、ヒアルロン酸、及びウシアルブミンは、1mg/mlで赤血球凝集阻害活性を示さなかった。
【0068】
上記の結果から、実施例1で得られたレクチン(HRL)は、Glcα1→6Glc、及び、Manα1→6Manに特異的に結合することが分かる。
【0069】
[マイトジェン活性]
F344ラット(オス、8週齢)を用いて、常法により脾臓リンパ球を調製した。培地としてRPMI1640(10%FCS、グルタミン、2−メルカプトエタノール、ペニシリン/ストレプトマイシン、アンホテリシンBを添加)を用い、細胞数が1ウェル当たり1×10個となるようにした脾臓リンパ球の培養液に、終濃度が0μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、2μg/ml、4μg/ml、8μg/ml、25μg/mlとなるように、HRLをそれぞれ添加した。5%二酸化炭素雰囲気下で37℃、38時間培養した。培養上清を回収し、培養上清中のサイトカイン(IL−6及びIFN−γ)の含有量をELISA法にて測定した。また、HRLの代わりにConAを4μg/ml用い、同様にして培養上清中のサトカイン量を測定した。結果を図4及び図5に示した。
【0070】
図4及び図5から、HRLはIFN−γとIL−6の産生誘導活性を有することが分かる。IFN−γ産生は、HRL濃度に依存して誘導されることから、HRLはマイトジェン活性を有していることが分かる。また、ConAとは異なり、HRLはIL−6の産生を著しく向上させることが明らかとなった。
【0071】
(実施例2)
実施例1において、サクラシメジの代わりにヒメサクラシメジ(Hygrophorus capreolarius)を用いた以外は実施例1と同様にしてヌメリガサ属担子菌に由来するレクチン(HCL)を1mg得た。
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動の結果を図1に示した。図1からHCLの分子量は15,000〜20,000であることが分かる。
【0072】
[N−末端領域のアミノ酸配列]
HCLのN−末端領域のアミノ酸配列を、実施例1と同様にして解析したところ、下記アミノ酸配列(配列番号4)であることが分かった。
Thr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-Val-Leu-Val-Gln-Asn-Val-Leu-Leu-Gly-Gly-Pro-Ala-Val-
尚、XはN−末端アミノ酸分析では、決定できなかったことより、Cysであることが予想される。
【0073】
[赤血球凝集活性]
HRLの代わりにHCLを用いた以外は実施例1と同様にして、ウサギ、ヒツジ及びヒト赤血球凝集活性を測定した。結果を表1に示した。
上記の結果から、HCLはウサギ及びヒツジの赤血球凝集活性を示すことが分かる。
【0074】
[糖結合特異性]
HRLの代わりにHCLを用いた以外は実施例1と同様にして、HCLの糖結合特異性を評価した。結果を表2及び表3に示した。
上記の結果から、HCLは、Glcα1→6Glc、及び、Manα1→6Manに特異的に結合することが分かる。
【0075】
(実施例3)
実施例1において、サクラシメジの代わりにサクラシメジモドキ(Hygrophorus purpurascens)を用いた以外は実施例1と同様にしてヌメリガサ属担子菌に由来するレクチン(HPL)を各1mg得た。
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動の結果を図1に示した。図1からHPLの分子量は15,000〜20,000であることが分かる。
【0076】
[N−末端領域のアミノ酸配列]
HPLのN−末端領域のアミノ酸配列を実施例1と同様にして解析したところ、下記アミノ酸配列(配列番号5)であることが分かった。
Thr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-Val-Leu-Val-Gln-Asn-Val-Leu-Leu-Gly-Gly-Pro-Ala-Val-
尚、XはN−末端アミノ酸分析では、決定できなかったことより、Cysであることが予想される。
【0077】
[赤血球凝集活性]
HRLの代わりにHPLを用いた以外は実施例1と同様にして、ウサギ、ヒツジ及びヒト赤血球凝集活性を測定した。結果を表1に示した。
上記の結果から、HPLはウサギ及びヒツジの赤血球凝集活性を示すことが分かる。
【0078】
[糖結合特異性]
HRLの代わりにHPLを用いた以外は実施例1と同様にして、HPLの糖結合特異性を評価した。結果を表2及び表3に示した。
上記の結果から、HPLは、Glcα1→6Glc、及び、Manα1→6Manに特異的に結合することが分かる。
【0079】
以上より、本発明のヌメリガサ属担子菌に由来するレクチンは、SDS電気泳動法による分子量が10,000〜30,000であって、N−末端領域のアミノ酸配列が、Thr−Ile−Gly−であって、Glcα1→6Glc、及び、Manα1→6Manに結合することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】SDS−PAGEによる分子量測定の結果を示す図である。
【図2】HRLの温度安定性を示す図である。
【図3】HRLのpH安定性を示す図である。
【図4】HRLのIFN−γ誘導活性を示す図である。
【図5】HRLのIL−6誘導活性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有するヌメリガサ属(Hygrophorus)担子菌に由来するレクチン:
(1)SDS電気泳動法による分子量が、10,000〜30,000であり、
(2)N−末端領域のアミノ酸配列が、Thr-Ile-Gly-であり、
(3)Glcα1→6Glc、及び、Manα1→6Manに結合する。
【請求項2】
前記N−末端領域のアミノ酸配列は、Thr-Ile-Gly-X-Ala-Lys-Pro-である請求項1に記載のレクチン。
【請求項3】
前記ヌメリガサ属担子菌が、サクラシメジ、ヒメサクラシメジ、サクラシメジモドキからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のレクチン。
【請求項4】
ヌメリガサ属担子菌の水系媒体抽出物を、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類を含有する溶出液と、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含有する担体とを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製することにより得られる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のレクチン。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレクチンの製造方法であって、ヌメリガサ属担子菌の子実体から水系媒体抽出物を得る抽出工程と、前記水系媒体抽出物を、グルコース残基及び/又はマンノース残基を有する糖類を含有する溶出液と、グルコース残基及び/又はマンノース残基を含有する担体を含有する担体とを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製する精製工程と、を有するレクチンの製造方法。
【請求項6】
前記ヌメリガサ属担子菌が、サクラシメジ、ヒメサクラシメジ、サクラシメジモドキからなる群より選択された少なくとも1種である請求項5に記載のレクチンの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレクチンと、標識手段とを含む標識レクチン。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレクチン又は請求項7に記載の標識レクチンを用いて、Glcα1→6Glc及び/又はManα1→6Manを含む糖鎖を検出する工程を含む糖鎖検出方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレクチンと、支持担体とを含むレクチン固定化担体。
【請求項10】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレクチン又は請求項9に記載のレクチン固定化担体を用いて、Glcα1→6Glc及び/又はManα1→6Manを含む糖鎖を分別する工程を含む糖鎖分別方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−13138(P2009−13138A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179571(P2007−179571)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月5日 社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2007年度(平成19年度)大会」において文書をもって発表
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(302042678)株式会社J−オイルミルズ (75)
【Fターム(参考)】