新規化合物及び摂食行動に対するそれらの効果
PYYのペプチド類似体、前記類似体を含む組成物、並びに、代謝障害、例えば、エネルギー代謝障害、例えば、糖尿病及び肥満の治療及び予防のため、及び対象の食欲減少、食物摂取量の減少又はカロリー摂取量の減少のための前記類似体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、食欲、摂食量、食物摂取量、エネルギー消費量及びカロリー摂取量の制御への、特に肥満の分野における薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)(NHANES III、1988〜1994年)によれば、米国の男性及び女性の1/3〜1/2は、過体重である。米国では、20才以上の年齢の男性60パーセント及び女性の51%パーセントが過体重又は肥満のいずれかである。更に、米国のかなりの割合の小児は、過体重又は肥満である。
【0003】
肥満の原因は、複雑であり、多因子である。肥満が、単純な自己制御の問題でなく、食欲調節及びエネルギー代謝に影響を与える複合疾患であることを示唆する証拠が増えている。更に、肥満は、人口における罹患率及び死亡率の増加と関連する種々の状態と関連している。肥満の病因は明確には確証されていないが、遺伝子的、代謝的、生化学的、文化的及び心理社会的因子が一因となると考えられている。一般に、肥満は、過剰な体脂肪が個体を健康リスクに曝している状態と表現されている。
【0004】
肥満が罹患率及び死亡率の増加と関連している強力な証拠がある。心血管疾患リスク及び2型糖尿病リスクなどの疾病リスクは、ボディーマスインデックス(BMI)の増加に伴って、独立して増加する。実際に、このリスクは、24.9超のBMIの1ポイントについて、女性の心臓病リスクを5パーセント増加させ、男性の心臓病リスクを7パーセント増加させると定量化された(Kenchaiahら、N. Engl. J. Med. 347:305、2002年;Massie、N. Engl. J. Med. 347:358、2002年を参照のこと)。更に、肥満者における体重減少が重要な疾病リスク因子を減らす実質的な証拠がある。過体重及び肥満の成人における初期体重の、10%といったわずかな体重減少であっても、高血圧症、高脂血症及び高血糖症などのリスク因子の減少と関連している。
【0005】
食事及び運動が、体重増加を減少させるための簡単な方法を提供するにもかかわらず、過体重及び肥満の個体は、効果的に体重を減少させるほどには十分にこれらの因子を制御することができないことが多い。薬物療法が利用でき、総合的な減量プログラムの一部として使用できるいくつかの減量薬が、食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって認可されている。しかし、これらの薬の多くには、重篤で有害な副作用がある。より低侵襲性の方法が役に立たず、しかも、肥満に関連する患者の罹患率又は死亡率のリスクが高い場合には、減量手術が、慎重に選択された、臨床的に重度の肥満を有する患者における選択肢となる。しかし、これらの治療は高リスクであり、限られた数の患者にのみ適する。減量を望むのは、肥満対象だけではない。推奨範囲内の体重を有する人々、例えば、推奨範囲の上部の体重を有する人々は、体重を減少させて、理想体重により近づけることを望む場合がある。したがって、過体重及び肥満の対象の減量に使用できる薬剤に対するニーズが依然として存在する。
【0006】
WO03/026591には、ペプチドYY(以下、PYY)又はそのアゴニストの対象への末梢投与が、食品摂取量、カロリー摂取量及び食欲の減少並びにエネルギー代謝の変化をもたらすことが開示されている。PYY又はそのアゴニストは好ましくは、N末端が除去されたPYY分子PYY 3-36 NH2であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO03/026591
【特許文献2】WO93/09227
【特許文献3】米国特許第6,355,478号
【特許文献4】米国特許第6,420,352号
【特許文献5】米国特許第6,410,707号
【特許文献6】米国特許第5,936,092号
【特許文献7】米国特許第6,093,692号
【特許文献8】米国特許第6,225,445号
【特許文献9】米国特許第4,179,337号
【特許文献10】米国特許第6,447,743号
【特許文献11】米国特許第5,700,486号
【特許文献12】米国特許第6,436,091号
【特許文献13】米国特許第5,939,380号
【特許文献14】米国特許第5,993,414号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)(NHANES III、1988〜1994年)
【非特許文献2】Kenchaiahら、N. Engl. J. Med. 347:305、2002年
【非特許文献3】Massie、N. Engl. J. Med. 347:358、2002年
【非特許文献4】Jequier、Am. J Clin. Nutr. 45:1035〜47頁、1987年
【非特許文献5】Barlow及びDietz、Pediatrics 102:E29、1998年
【非特許文献6】National Institutes of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)、Obes. Res. 6(suppl. 2):51S-209S、1998年
【非特許文献7】Lyznickiら、Am. Fam. Phys. 63:2185、2001年
【非特許文献8】Dumontら、Society for Neuroscience Abstracts 19:726, 1993年
【非特許文献9】Bowieら、Science 247:1306〜1310頁、1990年
【非特許文献10】Kopelman、Nature 404:635〜43頁、2000年
【非特許文献11】Rissanenら、British Med. J. 301、835、1990年
【非特許文献12】E. W. Martin著、Remington's Pharmaceutical Sciences
【非特許文献13】Wang, Y. J.及びHanson, M. A.、Journal of Parenteral Science and Technology、Technical Report No. 10, Supp. 42:2S(1988年)
【非特許文献14】Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed Eng. 14:201、1987年
【非特許文献15】Buchwaldら、Surgery 88:507、1980年
【非特許文献16】Saudekら、N. Engl. J. Med. 321 :574、1989年
【非特許文献17】Langer、Science 249:1527〜1533頁、1990年
【非特許文献18】Morgan DG、Lambert PD、Smith DM、Wilding JPH及びBloom SRmJ. Reduced NPY induced feeding in diabetic but not steroid treated rats: lack of evidence for changes in receptor number or affinity. Neuroendocrinol 1996年、8 283〜290頁
【非特許文献19】Druce MR、Minnion JS、Field BC、Patel SR、Shillito JC、Tilby M、Beale KE、Murphy KG、Ghatei MA & Bloom SR. Investigation of structure-activity relationships of oxyntomodulin (oxm) using oxm analogues. 2009年 Endocrinology 150(4) 712〜22頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定のアミノ酸残基が除去され及び/又は置換されているPYYの類似体もまた、食物摂取量の減少、カロリー摂取量の減少、食欲の減少及びエネルギー代謝の変化をもたらすために対象に投与できるという発見に基づく。多くの場合、本発明の類似体は、作用強度が改善され、並びに/又は未修飾のPYYよりも作用持続時間が長く及び/若しくは副作用が少ない。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、式(I)
【化1】
[式中、
Xaa2は、Pro及びGlyからなる群から選択され、
Xaa4は、Arg、His、Lys及びOrnからなる群から選択され、
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択され、
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択され、
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択され、
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択され、
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択され、
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択され、
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される]
で表されるアミノ酸配列を含むPYYの類似体、又はそれらの変形体(variant)及び/若しくは誘導体である化合物、或いはこのような変形体及び/又は誘導体の塩並びにこのような変形体及び/若しくは誘導体及び/又は塩の溶媒和物を包含する、それらの塩及び/又は溶媒和物であって、変形体が、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸が異なるアミノ酸で置き換えられているアミノ酸配列である、PYYの類似体が提供される。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、医薬品として使用するための、本発明によるPYYの類似体が提供される。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、本発明によるPYYの類似体を、医薬として許容される担体及び任意選択で他の治療成分と共に含む医薬組成物が提供される。
【0013】
本発明の更なる態様によれば、代謝障害の治療に使用するための、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、対象の食欲の減少に使用するための、対象の食物摂取量の減少に使用するための又は対象のカロリー摂取量の減少に使用するための、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物が提供される。
【0015】
本発明の更なる態様によれば、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物の皮下投与を含む、疾病若しくは障害又は他の望ましくない生理的状態の治療方法が提供される。
【0016】
本発明によれば、更に、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、代謝障害の治療を必要としている対象の代謝障害の治療方法が提供される。
【0017】
更に、代謝障害を治療するための医薬品を製造するための、本発明によるPYYの類似体の使用が提供される。
【0018】
更に、対象の食欲の減少のための、対象の食物摂取量の減少のための、又は対象のカロリー摂取量の減少のための医薬品を製造するための、本発明によるPYYの類似体の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のPYY類似体のアミノ酸配列(類似体番号1〜26)、これらのPYY類似体を用いた結合実験の結果、及び本発明のこれらのPYY類似体のマウスにおける食欲抑制効果を、実施例1に記載した、未修飾PYY 3-36 NH2と比較した実験の結果を示す。
【図2】実施例2に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図3】実施例3に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図4】実施例4に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図5】実施例5に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図6】実施例6に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図7】実施例7aに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図8】実施例7aに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図9】実施例8に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図10】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図11】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図12】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図13】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図14】実施例10に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図15】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図16】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図17】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図18】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図19】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図20】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図21】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図22】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図23】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図24】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図25】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図26】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図27】実施例12に記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図28】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図29】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図30】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図31】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図32】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図33】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図34】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図35】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図36】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列表
本出願中に記載したアミノ酸配列は、アミノ酸に対して標準的な文字略語を使用して示してある。図1に示した特定の配列は、本発明の特定の好ましい実施形態に関する。
【0021】
定義
本開示の種々の実施形態の検討を容易にするために、特定の用語について以下の説明を示す。
【0022】
動物:例えば、哺乳類及び鳥類を包含するカテゴリーである、生きている多細胞の脊椎動物。用語「哺乳類」は、ヒト及びヒト以外の哺乳類を包含する。同様に、用語「対象」は、ヒト及び獣医学的対象を包含する。
【0023】
食欲:食物に対する自然な欲求又は渇望。一実施形態において、食欲は、食物に対する欲求を評価する調査によって測定する。一般に、食欲が増加すれば、摂食行動が増加する。
【0024】
食欲抑制剤:食物に対する欲求を減少させる化合物。市販の食欲抑制剤としては、アンフェプラモン(ジエチルプロピオン)、フェンテルミン、マジンドール及びフェニルプロパノールアミン、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン並びにフルオキセチンが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0025】
ボディーマスインデックス(BMI):ケトレー指数(Quetelet's Index)と称することもある、体質量を数値化するための数式。BMIは、体重(kg)÷身長2(m2)によって算出される。「標準的」と認められている現行基準は、男性及び女性共に、BMI 20〜24.9kg/m2である。一実施形態において、25kg/m2を超えるBMIを使用して、肥満対象を特定できる。グレードIの肥満は、BMI 25〜29.9kg/m2に相当し、グレードIIの肥満は、BMI 30〜40kg/m2に相当し、グレードIIIの肥満は、BMI 40kg/m2超に相当する(Jequier、Am. J Clin. Nutr. 45:1035〜47頁、1987年)。理想体重は、種間及び個体間で、身長、体格、骨構造及び性別によって異なるであろう。
【0026】
保存的置換(conservative substitution):ポリペプチド中アミノ残基の、生物学的に類似している別の残基による置換。用語「保存的変形(conservative variation)」は、置換ポリペプチドに対して産生される抗体も非置換ポリペプチドと免疫反応するならば、親アミノ酸の代わりに、置換アミノ酸、即ち、1つ又は複数の原子が別の原子又は基で置き換えられているアミノ酸の使用も含む。
【0027】
糖尿病:インスリンの内因性欠乏及び/又はインスリン感受性の欠損により、細胞が、それらの膜を横切るように内因性グルコースを輸送できない状態。糖尿病は、インスリンの不十分な分泌又は標的組織のインスリン抵抗性による、炭水化物、タンパク質及び脂質の代謝障害の慢性症候群である。糖尿病は、病因、病態、遺伝的特質、発症年齢及び治療の点で異なる、インスリン依存型糖尿病(IDDM、1型)及びインスリン非依存性糖尿病(NIDDM、2型)の2つの主要形態で発症する。
【0028】
糖尿病のこれら2つの主要形態はいずれも、グルコース恒常性の制御に必要な量及び正確なタイミングでインスリンを送達できないことを特徴とする。1型糖尿病型又はインスリン依存型糖尿病(IDDM)は、β細胞の破壊、その結果としての内因性インスリンの不十分なレベルによって引き起こされる。2型糖尿病型又はインスリン非依存性糖尿病は、身体のインスリン感受性の欠損及びインスリン産生の相対的な欠乏の両方に起因する。
【0029】
食物摂取量:個体によって消費される食物の量。食物摂取量は、体積又は重量によって測定できる。例えば、食物摂取量は、個体によって消費される食物の総量であり得る。又は、食物摂取量は、タンパク質、脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン、ミネラル若しくは個体の全ての他の食物成分の量であることができる。「タンパク質摂取量」は、個体によって消費されるタンパク質の量を指す。同様に、「脂肪摂取量」、「炭水化物摂取量」、「コレステロール摂取量」、「ビタミの摂取量」及び「ミネラル摂取量」は、個体によって消費される脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン又はミネラルの量を指す。
【0030】
過分極:細胞の膜電位の減少。抑制性神経伝達物質は、過分極によって神経インパルスの伝達を阻害する。この過分極は、抑制性シナプス後電位(IPSP)と称される。細胞の閾電圧に帯電していないが、過分極細胞は、閾値に達するためにより強い興奮性刺激を必要とする。
【0031】
正常な1日の食事:所与の種の個体の平均食物摂取量。正常な1日の食事は、カロリー摂取量、タンパク質摂取量、炭水化物摂取量及び/又は脂肪摂取量に換算して表すことができる。ヒトの正常な1日の食事は一般に、約2,000カロリー、約2,400カロリー又は約2,800カロリーからそれよりかなり高カロリーまでを含む。更に、ヒトの正常な1日の食事は一般に、タンパク質約12〜約45g、炭水化物約120〜約610g及び脂肪約11〜約90gを含む。低カロリー食は、ヒト個体の正常なカロリー摂取量の約85%以下、好ましくは約70%以下であろう。
【0032】
動物では、カロリー所要量及び栄養所要量は、動物の種及び大きさによって異なる。例えば、ネコでは、総カロリー摂取量/ポンド並びにタンパク質、炭水化物及び脂肪の構成比(percent distribution)は、ネコの年齢及び生殖状態によって異なる。しかし、ネコのための一般的基準は、40cal/lb/日(18.2cal/kg/日)である。約30〜約40%はタンパク質摂取量から、約7〜約10%は炭水化物摂取量から、約50〜約62.5%は脂肪摂取量から得るべきである。当業者ならば、全ての種の個体の正常な1日の食事を容易に特定できる。
【0033】
肥満:過剰な体脂肪がヒトを健康リスクに曝す可能性がある状態(Barlow及びDietz、Pediatrics 102:E29、1998年;National Institutes of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)、Obes. Res. 6(suppl. 2):51S-209S、1998年を参照のこと)。過剰な体脂肪は、エネルギー摂取量とエネルギー消費量のアンバランスの結果である。例えば、ボディーマスインデックス(BMI)を、肥満の評価に使用できる。1つの一般的に用いられている慣習では、BMI 25.0〜29.9kg/m2は過体重、BMI 30kg/m2以上は肥満である。
【0034】
別の慣習では、胴囲を、肥満の評価に使用する。この慣習においては、男性では胴囲102cm以上を肥満とみなし、女性では胴囲89cm以上を肥満とみなす。肥満が、個体の罹患率及び死亡率のいずれにも影響を及ぼすことを示す強力な証拠がある。例えば、肥満個体は、特に、心疾患、インスリン非依存性(2型)糖尿病、高血圧症、脳卒中、癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌及び大腸癌)、脂質異常症、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、生殖能低下及び変形性関節症のリスクが高い(Lyznickiら、Am. Fam. Phys. 63:2185、2001年を参照のこと)。
【0035】
過体重:体重が理想体重を上回る個体。過体重個体は肥満であり得るが、必ずしも肥満ではない。例えば、過体重個体は、減量を望む任意の個体である。1つ慣習では、過体重個体は、BMIが25.0〜29.9kg/m2の個体である。
【0036】
ペグ化される及びペグ化:ポリ(アルキレングリコール)、好ましくは活性化ポリ(アルキレングリコール)を反応させて共有結合の形成するプロセス。促進剤、例えば、アミノ酸、例えば、リジンを使用してもよい。「ペグ化」は、ポリ(エチレングリコール)又はその誘導体、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)を用いて実施されることが多いが、この用語は本明細書中では、メトキシポリ(エチレングリコール)の使用に限定するのではなく、任意の他の有用なポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(プロピレングリコール)の使用も含む。
【0037】
pI:pIは等電位点の略語である。場合によって使用される別の略語は、IEPである。pIは、特定の分子が正味電荷を有さないpHである。そのpI未満のpHでは、タンパク質又はペプチドは、正味の正電荷を有する。そのpIを超えるpHでは、タンパク質又はペプチドは、正味の負電荷を有する。タンパク質及びペプチドは、等電点電気泳動と称される技術を用いて、それらの等電位点に従って分離できる。等電点電気泳動とは、ポリアクリルイミドゲル中に含まれるpH勾配を利用する電気泳動法である。
【0038】
ペプチドYY(PYY):本明細書中で使用する用語「PYY」は、下部小腸(回腸)及び結腸の内側を覆っている細胞によって血液中に分泌されるホルモンであるペプチドYYポリペプチドを指す。天然に存在する、種々の種の野生型PYY配列を、Table 1(表1)に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
末梢投与:中枢神経系の以外の投与。末梢投与は、脳への直接投与を包含しない。末梢投与としては、血管内投与、筋肉内投与、皮下投与、吸入投与、経口投与、直腸内投与、経皮投与又は鼻腔内投与が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0041】
ポリペプチド:モノマーが、アミド結合によって結合しているアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がα-アミノ酸である場合には、L-光学異性体又はD-光学異性体のいずれを使用してもよく、L-異性体が好ましい。本明細書中で使用する用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、任意のアミノ酸配列を網羅し、糖タンパク質などの修飾配列を包含する。用語「ポリペプチド」は特に、天然に存在するタンパク質及び組換えによって又は合成によって生成されたものを網羅する。用語「ポリペプチド断片」は、ポリペプチドの一部、例えば、受容体を結合する際に有用な少なくとも1つの配列を示す断片を指す。用語「ポリペプチドの機能性断片」は、ポリペプチドの活性を保持するポリペプチドの全ての断片を指す。生物学的機能性ペプチドはまた、当該ペプチドがその望ましい活性を減少させない別のペプチドに融合している融合タンパク質を包含し得る。
【0042】
皮下投与:皮下投与は、皮膚の真皮と下にある組織との間に見られる脂肪の皮下層への物質の投与である。皮下投与は、例えば、注射器又は「ペン」型注射装置に装着した皮下注射針を用いる注射によることができる。他の投与方法、例えば、極微針を使用してもよい。皮下注射針による注射は典型的には、レシピエントにはある程度の疼痛を伴う。このような疼痛は、局部麻酔薬又は鎮痛薬の使用によってマスクできる。しかし、感知される注射の疼痛を低減するのに用いられている一般的な方法は、注射直前及び注射中にただ単に気を散らすことである。疼痛は、比較的小さいゲージの皮下注射針を用いることによって、比較的小容量の物質を注射することによって、及び対象が注射部位に「刺す」感覚を感じる原因となり得る、過度に酸性又はアルカリ性の組成物を回避することによって、最小限に抑えることができる。pH4〜10の組成物は通常、認容できる程度に苦痛がないとみなされている。
【0043】
治療有効量:障害の進行を予防するのに十分な、若しくは障害を退縮させるのに十分な、又は障害の徴候若しくは症状を軽減できる、若しくは望ましい結果を達成できる用量。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の治療有効量は、体重増加を阻害若しくは停止するのに十分な量、或いは食欲を減少させるのに十分な量、或いはカロリー摂取量若しくは食物摂取量を減少させるか又はエネルギー消費量を増加させるのに十分な量である。
【0044】
本発明の第1の態様によれば、式(I)
【化2】
[式中、
Xaa2は、Pro及びGlyからなる群から選択され、
Xaa4は、Arg、His、Lys及びOrnからなる群から選択され、
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択され、
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択され、
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択され、
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択され、
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択され、
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択され、
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される]
で表されるアミノ酸配列を含むPYYの類似体、又はそれらの変形体及び/若しくは誘導体である化合物、或いはこのような変形体及び/又は誘導体の塩並びにこのような変形体及び/若しくは誘導体及び/又は塩の溶媒和物を包含する、それらの塩及び/又は溶媒和物であって、変形体が、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸が異なるアミノ酸で置き換えられているアミノ酸配列である、PYYの類似体が提供される。
【0045】
本発明のPYY類似体は、Xaa2がPro又はGlyである配列を含む。特定の実施形態によれば、Xaa2はProである。他の実施形態によれば、Xaa2はGlyである。
【0046】
特定の好ましい実施形態によれば、Xaa2はProである。
【0047】
本発明のPYY類似体は、Xaa4がArg、His、Lys及びOrnからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa4はHisである。他の実施形態において、Xaa4はLysである。
【0048】
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa6はHis、Ser及びGluからなる群から、又はHis、Ser、Glu及びValからなる群から、又はHis及びValからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa6はHisである。本発明の一部の実施形態において、Xaa6はValである。他の実施形態において、Xaa6はSer及びGluからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa6はSerである。他の実施形態において、Xaa6はGluである。
【0049】
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択される。好ましくは、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa16はGlnである。他の実施形態において、Xaa16はGluである。
【0050】
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa17はIleである。他の実施形態において、Xaa17はLeuである。
【0051】
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa18はAla、Asn及びValからなる群から選択される。より好ましくは、Xaa18はAsn及びValからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa18はAsnである。他の実施形態において、Xaa18はValである。
【0052】
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa19はArgである。他の実施形態において、Xaa19はHisである。
【0053】
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択される。好ましくは、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択される。より好ましくは、Xaa21はPhe及びTyrからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa21はPheである。他の実施形態において、Xaa21はTyrである。
【0054】
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa22はAlaである。他の実施形態において、Xaa22はIleである。
【0055】
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択される。好ましくは、Xaa25はArg及びHisからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa25はArgである。他の実施形態において、Xaa25はHisである。
【0056】
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される。好ましくは、Xaa30はHis、Lys及びLeuからなる群から選択される。より好ましくは、Xaa30はHis及びLysからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa30はHisである。他の実施形態において、Xaa30はLysである。
【0057】
本発明のPYY類似体の1つの好ましい群において、Xaa2は、Proであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択される。
【0058】
PYY類似体の1つの好ましい群において、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa18はVal及びAsnからなる群から選択され、Xaa21はPhe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はIle及びAlaからなる群から選択される。他の位置の残基は、前記と同様であることができる。
【0059】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択される。
【0060】
本発明のPYY類似体の更なる好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAlaとIleからなる群から選択され、Xaa25はArgである。
【0061】
本発明のPYY類似体のなお更なる好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6は、Glu及びSerからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHis、Leu及びLysからなる群から選択される。
【0062】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6はGlu及びSerからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHis、Leu及びLysからなる群から選択される。
【0063】
本発明のPYY類似体の更に好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6はGlu及びSerからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6はGluであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0065】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0066】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0067】
本発明のPYY類似体の更に別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0068】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0069】
本発明のPYY類似体の更に別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0070】
本発明のPYY類似体のなお更なる好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0071】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa18はValであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0072】
本発明のPYY類似体の更に他の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa18はValであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はPheであり、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa18はValであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はPheであり、Xaa22はIleであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0074】
式(I)のPYY類似体としては、本明細書の実施例及び図中に具体的に記載したPYY類似体が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0075】
本発明による化合物は好ましくは、ヒトPYYよりも、食物摂取量の減少に対して持続的な効果があるか、又は食物摂取量の減少に強い効果がある。好ましくは、本発明による化合物は、食物摂取量の減少に対して効果があり、その効果は天然のヒトPYYと少なくとも同じ強さであるが、より持続する。食欲抑制の持続時間の増加は、「エスケープ」として知られている効果を回避するのに特に重要である可能性がある。持続時間の短い食欲抑制剤は、1回の食事によってカバーされる食欲又は時間を減少させることができ、その食事において、対象は典型的にはより少ない食物を摂取する。しかし、その場合に、食欲抑制剤が対象において代謝されるか、さもなければ対象の血液循環から除去されるならば、次の食事までに対象は、その「正常な」食欲を回復する可能性がある。対象が以前の食事時間で少量の食事を取っていることを考慮すると、対象は実際には、2回目の食事の際に食欲が増加している可能性がある。対象がその食欲を満たすならば、2回の食事にわたる合計食物摂取量は、食欲抑制剤を用いなかった場合の食物摂取量よりも少なくないこともあり得る。即ち、対象は、食欲抑制剤の作用から「エスケープ」した可能性がある。「エスケープ」は、追加用量の食欲抑制剤を用いることによって、又は作用持続時間がより長い食欲抑制剤を用いることによって、減少させることができる。対象の食欲がより長期間減少している場合には、個々の1回の食事の総容量には実際的な限界があるので、1回の食事の不足を次回の食事において補い得る程度が減少する。
【0076】
好ましくは、本発明の化合物は、Y2受容体に選択的である。即ち、本発明の化合物は、Y1、Y3、Y4、Y5及びY6などの他の受容体と比較して、Y2により高い親和性で結合する。これらの受容体は、結合親和性、薬理及び配列に基づいて認識されている。全てではないにしてもこれらの受容体のほとんどは、Gタンパク質結合型受容体である。Y1受容体は一般にシナプス後受容体であると考えられており、末梢でニューロペプチドYの既知の作用の多くを緩和する。最初は、この受容体は、ニューロペプチドYのC末端断片、例えば、13〜36断片に対する親和性が低いとされたが、全長ニューロペプチドY及びペプチドYYと等しい親和性で相互作用する(PCT公開公報WO93/09227を参照のこと)。
【0077】
薬理学的には、Y2受容体は、ニューロペプチドYのC末端断片に親和性を示すことによって、Y1と識別される。Y2受容体は、多くの場合、ニューロペプチドY(13〜36)の親和性によって差別化されるが、ニューロペプチドY及びペプチドYYの3〜36断片は改善された親和性と選択性を示す(Dumontら、Society for Neuroscience Abstracts 19:726,1993年を参照のこと)。Y1及びY2受容体の両方を介するシグナル伝達は、アデニル酸シクラーゼの阻害と共役している。Y2受容体との結合はまた、N型カルシウムチャネルの選択的阻害によって、シナプスにおけるカルシウムの細胞内レベルを減少させるともわかった。更に、Y2受容体は、Y1受容体と同様に、セカンドメッセンジャーに対して差次的な共役(differential coupling)を示す(米国特許第6,355,478号を参照)。Y2受容体は、海馬、黒質-外側、視床、視床下部及び脳幹を含む種々の脳領域で見られる。ヒト、マウス、サル及びラットのY2受容体は、クローン化されている(例えば、米国特許第6,420,352号及び米国特許第6,355,478号を参照のこと)。
【0078】
本発明によるPYYの類似体は好ましくは、溶液中で(即ち、例えば組織液又は血漿中に見られるような、生理的状態に近い溶液中で)総イオン電荷を有さない。インビボ条件下での正味電荷の欠如がそのインビボ溶解度を制限し、これが高濃度ペプチドの皮下投与後のより緩徐な吸収、したがって血液循環における長時間の存在の一因となると仮定される。
【0079】
本発明の好ましい一態様によれば、本発明によるPYY 3-36 NH2の類似体は、天然のPYY 3-36 NH2分子の4、6、19、21、25又は30位に相当するアミノ酸の少なくとも1つがヒスチジンと置換されている。より好ましくは、ヒスチジンに対する複数の置換が行われている。特定の実施形態によれば、天然PYY 3-36 NH2配列の4、6、19、21、25及び30位のアミノ酸残基のうちの2、3又は4個が、ヒスチジン残基と置換されている。好ましくは、特許請求される類似体の配列中の、結果として得られるヒスチジン残基の総数は、少なくとも2個である。
【0080】
更なる説明として、ヒスチジンは、pH7.4で(血液循環における生理的条件下で又は皮下投与後の皮下で)荷電しない点で独特なアミノ酸である。しかし、ヒスチジンのNH側鎖のpIは約6.0であるので、ヒスチジンはpH5(又はそれ以下)では完全に荷電する。特定の好ましい実施形態によれば、本発明によるPYYの類似体は、生理的pH(pH7.4)においては総電荷が低いか又はゼロであり、好ましくは、約pH5(例えば、pH4.5〜pH6.0-概ねpH4又は5より低いpHは、注射部位で疼痛を増す恐れがあるので、注射可能な組成物には望ましくないと考えられる)のpHを有する組成物の一部として製剤化して、このような比較的低いpHでヒスチジンイオン化を示すように、好ましくは総正味電荷を示すようにする。荷電残基数の増加により、注射可能な組成物のバイアル中での溶解度が増加し、したがって、比較的高濃度のペプチド溶液の小容量の注射が可能となる。しかし、皮下注射後に、この類似体は生理的pHに曝露され、そのpHではイオン化残基数、特にイオン化ヒスチジン残基数が減少し、したがって、溶解度が低下する。これにより、ペプチドが皮下に析出する。His残基の存在は、この効果を増強する。
【0081】
特定の好ましい実施形態によれば、本発明によるPYY類似体は、以下の好ましい特徴の組み合わせを有する。
1)pH7.4では正味電荷を有さず、且つ全体的に比較的少ない荷電基及び親水性基を有することによって固有溶解度を低下し得る、ペプチド配列。
2)投与前の貯蔵のためにpH5で正味正電荷及び良い溶解度を生じ、且つ低粘度投与溶液(pH5)を可能にする、多くのヒスチジンの存在。
3)pH5でなくpH7.4において低容量及び溶解度定数を上回る高濃度の皮下投与に適すること。
【0082】
ヒスチジンが、このような差次的なpH依存性溶解度効果を引き起こすのに特に有利なアミノ酸残基であることに加えて、亜鉛イオンと共に製剤化されるならば、ヒスチジン残基を含有するペプチドの差次的な溶解度は大幅に向上する。これは、亜鉛イオンが水溶液中で非荷電ヒスチジン残基と結合するためである。亜鉛イオンは同時に最高4つの非荷電ヒスチジンと結合できると考えられる。これにより、亜鉛はいくつかの個々ペプチド分子中のヒスチジン残基と配位し、それによってペプチド分子を他の類似のペプチド分子に弱く架橋させて、溶解度を低下させることができる。しかし、亜鉛イオンは、荷電ヒスチジンとは結合しない。したがって、亜鉛イオンを含有する組成物中のヒスチジン含有ペプチドは、pH7.4では弱いイオン結合によって架橋結合されるが、pH5.0では架橋されない。したがって、亜鉛イオンに結合しているHis残基の存在は、皮下注射後のペプチドの析出を増大するが、投与前のバイアル又は注射器中での溶解度には影響を及ぼさない。これは、総pIが約7であるペプチドは、ほぼ中性のpHでは荷電残基を有さず、亜鉛イオンを含む製剤中の、ヒスチジン残基を含むペプチドは、バイアル又は注射器中で有利に可溶性であるが、投与後に皮下に析出することを意味する。したがって、亜鉛イオンを含む製剤中における、ヒスチジンを有するpH7の中性ペプチドは、バイアル及び注射器中で有利に可溶性であるが、投与後に皮下に析出する。更にまた、亜鉛イオンが注射部位から徐々に洗い流されるにつれて、注射後の亜鉛イオンの濃度は減少するので、亜鉛によって増大された析出は徐々に可逆的となる。したがって、薬物動態がはるかに良好であるがバイオアベイラビリティの減少のない皮下吸収の遅延が観察される。所定のヒスチジン含有中性ペプチドの吸収速度は、亜鉛の添加量によって制御できる。
【0083】
少なくとも1つの追加のヒスチジン残基の導入により、好ましくは、1〜3つの介在アミノ酸残基によって互いに離間されている2つのヒスチジン残基(1対のヒスチジン残基)が少なくとも1箇所存在する本発明のPYY類似体が得られる。このような離間は、単一の亜鉛残基が、水溶液中で1対のヒスチジン残基の両方と会合するのに最適であると思われる。本発明の有利な一実施形態において、天然のPYY 3-36 NH2配列の4位及び6位の両方のアミノ酸が、ヒスチジン残基と置換されている。この実施形態において、1対のヒスチジン残基の両方が人工的に導入され、2つのヒスチジン残基間に1つの介在アミノ酸残基が存在する。本発明の別の有利な実施形態において、天然のPYY 3-36 N2配列の30位のアミノ酸は、ヒスチジン残基と置換されている。この実施形態において、1対のヒスチジン残基の一方(26位)は天然に存在し、1対のヒスチジン残基の他方(30位)は人工的に導入されている。
【0084】
本発明による類似体は、総pIが好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは7.0〜8.0、より好ましくは7.1〜7.7、より好ましくは7.2〜7.6である。より好ましくは、この類似体は約7.4の総pIを有する。これは、生理的pHでは、この類似体が大きい総電荷を有さないことを意味する。分子の総pIは、当業者に周知の技術を用いて算出できるか、又は別法として、等電点電気泳動を用いて実験的に決定できる。
【0085】
この効果を十分に利用するためには、以下の特徴の組み合わせが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。
1)pH7.4において、固有溶解度を低下させるために正味電荷がゼロであり且つ荷電基及び親水性基が比較的少ないペプチド配列。
2)投与前の貯蔵のため及びpH5の低粘度投与溶液を実現するための、pH5において正味正電荷及び良好な溶解度を生じる複数のヒスチジンの存在。
3)pH7.4においては溶解度定数を超えるがpH5においては超えない、低容量で高濃度の皮下投与のための溶解度。
4)pH7.4において非荷電のヒスチジン残基と隣接分子とを架橋させるが、投与前pH又は約pH5においては荷電ヒスチジンを架橋しない亜鉛イオンの存在。
【0086】
変形体:
変形体は、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸(例えば、0、1又は2つ)が、本発明の分子中に存在する場合に対応非変形体分子の活性の少なくとも一部を保持する種々のアミノ酸で置き換えられている(例えば、保存的置換及び非保存的置換;例えば、下記Table 2(表2)を参照)式(I)によって表されるアミノ酸配列を含む本発明のPYY類似体を含む。
【0087】
典型的には、保存的置換は、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの間での相互の置き換え;ヒドロキシ残基を含有するSer及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基AsnとGlnとの交換、塩基性残基Lys及びArgの交換、芳香族残基Phe及びTyrの交換並びに小型アミノ酸Ala、Ser、Thr、Met及びGlyの交換である。表現型的にサイレントなアミノ酸置換、即ち、発現された表現型を変化させない置換を行う方法に関する手引きは、Bowieら、Science 247:1306〜1310頁、1990年に示されている。
【0088】
【表2】
【0089】
変形体としては、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸(例えば、0、1又は2つ)が、ヒト以外の種に由来するPYY中の同等の位置に存在するアミノ酸で置き換えられているPYY類似体を更に挙げることができる。種々の種のPYYの配列は、前記Table 1(表1)に列挙してある。
【0090】
誘導体
本発明の化合物は、アミド化、グリコシル化、カルバミル化、アシル化、例えばアセチル化、硫酸化、リン酸化、環化、脂質化及びペグ化を含む周知の方法によって修飾された式(I)の構造を含むことができる。式(I)の構造は、分子内のランダムな位置で又は分子内の所定の位置で修飾でき、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の結合された化学的部分を含んでいてもよい。
【0091】
本発明の化合物は、式(I)の構造が、当業界で知られている組換え法を用いて別のタンパク質又はポリペプチド(融合パートナー)に融合されている、融合タンパク質であってもよい。或いは、このような融合タンパク質は、任意の既知の方法によって合成的に合成することもできる。このような融合タンパク質は、式(I)の構造を含む。融合パートナーとしては、任意の適当なペプチド又はタンパク質(例えば、血清アルブミン、炭酸脱水酵素、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ又はチオレドキシンなど)を使用できる。好ましい融合パートナーは、インビボで有害な生物活性を有さない。このような融合タンパク質は、融合パートナーのカルボキシ末端を式(I)の構造のアミノ末端に連結することによって又はその逆によって作製できる。任意選択で、切断可能なリンカーを、式(I)の構造を融合パートナーに連結するのに使用できる。結果として生じる切断可能な融合タンパク質は、本発明の化合物の活性型が放出されるように、インビボで切断されることもできる。このような切断可能なリンカーの例としては、リンカーD-D-D-D-Y[配列番号44]、G-P-R、A-G-G及びH-P-F-H-L[配列番号45]が挙げられるが、これらに限定するものではなく、それらはそれぞれ、エンテロキナーゼ、トロンビン、ユビキチン切断酵素及びレニンによって切断され得る。例えば、米国特許第6,410,707号参照。
【0092】
本発明の化合物は、式(I)の構造の生理学的機能性誘導体であることができる。本明細書中において、用語「生理学的機能性誘導体」とは、式(I)の非修飾化合物と同じ生理学的機能を有する、対応する、式(I)の化合物の化学誘導体を意味するのに用いる。例えば、生理学的機能性誘導体は、体内で式(I)の化合物に変換可能であることができる。本発明によれば、生理学的機能性誘導体の例としては、エステル、アミド及びカルバミン酸塩、好ましくはエステル及びアミドが挙げられる。
【0093】
本発明の化合物の医薬として許容されるエステル及びとアミドは、C1〜20アルキル-、C2〜20アルケニル-、C5〜10アリール-、C5〜10アル-C1〜20アルキル-、又は適当な箇所で、例えば酸基において結合しているアミノ酸-エステル若しくは-アミドを含むことができる。適当な部分の例は、炭素原子4〜26個、好ましくは5〜19個の疎水性置換基である。適当な脂質基としては、以下:ラウロイル基(C12H23)、パルミチル基(C15H31)、オレイル基(C15H29)、ステアリル基(C17H35)、コール酸基及びデオキシコール酸基が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0094】
脂肪族酸誘導体によるスルフヒドリル含有化合物の脂質化方法は、米国特許第5,936,092号、米国特許第6,093,692号及び米国特許第6,225,445号に開示されている。本発明の化合物がジスルフィド連結部(disulfide linkage)を介して脂肪酸に連結されている本発明の化合物の脂肪族酸誘導体は、ニューロン細胞及び組織への本発明の化合物の送達に使用できる。脂質化は、対応する非脂質化化合物の吸収速度を基準とする化合物の吸収を著しく増加し、化合物の血液滞留及び組織滞留を延長する。更に、脂質化誘導体中のジスルフィド連結部は、細胞中で比較的不安定であり、したがって、脂肪族酸部分からの分子の細胞内放出を容易にする。適当な脂質含有部分は、炭素原子4〜26個、好ましくは5〜19個の疎水性置換基である。適当な脂質基といては、以下:パルミチル基(C15H31)、オレイル基(C15H29)、ステアリル基(C17H35)、コール酸基及びデオキシコール酸基が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0095】
環化方法は、ジスルフィド架橋の形成による環化及び環化樹脂を用いる頭-尾環化を含む。
環化ペプチドは、それらの構造制約の結果として、向上した安定性、例えば、酵素分解に対する増大した抵抗性を有し得る。環化は特に、非環化ペプチドがN末端システイン基を含む場合に好都合であると考えられる。適当な環化ペプチドは、モノマー及びダイマー頭-尾環化構造を含む。環化ペプチドは、1つ又は複数の追加残基、特に、ジスルフィド結合(disulfide bond)の形成のために組み込まれる追加システイン、又は樹脂ベースの環化の目的で組み込まれる側鎖を含み得る。
【0096】
本発明の化合物は、式(I)のペグ化構造であってもよい。本発明のペグ化化合物は、更なる利点、例えば、ポリペプチドの溶解度、安定性及び循環時間の増加又は免疫原性の低下をもたらすことができる(米国特許第4,179,337号を参照)。
【0097】
本発明の化合物の誘導体化のための化学部分はまた、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどから選択し得る。本発明の化合物の誘導体化のためのポリマー部分は、任意の分子量であってもよく、また、分岐鎖であっても非分岐鎖であってもよい。取扱い及び製造を容易にするために、本発明の化合物の誘導体化のためのポリエチレングリコールの好ましい分子量は、約1〜約100kDaであり、この用語「約」は、ポリエチレングリコールの調製において、一部の分子が記載した分子量よりも大きく、一部の分子が記載した分子量よりも小さいことを示している。望ましい治療プロファイル、例えば、要求される持続放出の持続時間、もしあれば生物活性に対する効果、取扱い易さ、抗原性の程度又は欠如、及び治療用タンパク質又は類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の効果によっては、他の分子量のポリマーも使用できる。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000又は100,000kDaの平均分子量を有し得る。
【0098】
医薬品への使用に適当な本発明の化合物の塩及び溶媒和物は、対イオン又は会合溶媒が医薬として許容されるものである。しかし、例えば、式(I)の化合物及びそれらの医薬として許容される塩又は溶媒和物の調製に中間体として使用するための、非医薬として許容される対イオン又は会合溶媒を有する塩及び溶媒和物は、本発明の範囲内である。
【0099】
本発明による適当な塩には、有機又は無機の酸又は塩基を用いて形成されるものがある。医薬として許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びイセチオン酸を用いて形成されるものが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体は医薬として許容されないが、本発明の化合物及びそれらの医薬として許容される塩を得る際に中間体として有用であり得る。塩基との医薬として許容される塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、カリウム塩及びナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びに有機塩基、例えば、ジシクロヘキシルアミン及びN-メチル-D-グルコサミンとの塩が挙げられる。
【0100】
有機化学分野の当業者ならば、多くの有機化合物が、それらを反応させる溶媒又それらを析出若しくは結晶化させる溶媒と複合体を形成することがあることがわかるであろう。このような複合体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られている。本発明は、本発明の化合物の溶媒和物を提供する。
【0101】
条件:
本発明は、式(I)の化合物を、医薬として許容される担体及び任意選択で他の治療成分と共に含む医薬組成物と、関連する方法とを提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は注射器又はヒトへの皮下投与のための他の投与装置中に存在する。
【0102】
本発明は更に、医薬品として使用するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0103】
本発明はまた、肥満又は糖尿病の治療に使用するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物、或いは式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明は更に、対象の食欲の減少に使用するための、対象の食物摂取量の減少に使用するための、又は対象のカロリー摂取量の減少に使用するための、式(I)の化合物又は式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0104】
本発明は更に、代謝障害、例えば、エネルギー代謝障害、例えば、肥満若しくは糖尿病、前糖尿病又は耐糖能障害を治療するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。本発明はまた、対象の食欲の減少のための、対象の食物摂取量の減少のための、又は対象のカロリー摂取量の減少のための医薬品を製造するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0105】
本発明は更に、代謝障害、例えば、エネルギー代謝障害、例えば、肥満若しくは糖尿病、前糖尿病又は耐糖能障害の治療を必要としている対象に、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物又は式(I)の化合物を含む医薬組成物の有効量を投与する工程を含む、代謝障害の治療方法を提供する。本発明はまた、対象に式(I)の化合物又は式(I)の化合物を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、対象の食欲を減少させるか、対象の食物摂取量を減少させるか、又は対象のカロリー摂取量を減少させる方法を提供する。
【0106】
一部の実施形態において、化合物は非経口的に投与する。一部の実施形態において、化合物は皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経皮投与又は舌下投与する。
【0107】
化合物を投与する対象は、過体重、例えば、肥満であってもよい。或いは又は更に、対象は、例えばインスリン抵抗性若しくはグルコース不耐性又は両者を有する糖尿病患者であってもよい。対象は、真性糖尿病を患っていてもよく、例えば、対象は2型糖尿病を患っていてもよい。対象は、過体重、例えば、肥満であって、しかも真性糖尿病、例えば、2型糖尿病を患っていてもよい。
【0108】
更に又は或いは、対象は、肥満若しくは過体重がリスク因子である障害を有してもよいし、又はそのような障害のリスクがあってもよい。このような障害としては、心血管疾患、例えば、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全及び脂質異常症;脳卒中;胆嚢疾患;変形性関節症;睡眠時無呼吸;生殖障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群;癌、例えば、乳癌、前立腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌及び食道癌;静脈瘤;黒色表皮腫;湿疹;運動不耐性;インスリン抵抗性;高血圧症;高コレステロール血症;胆石症;変形性関節症;整形外科的外傷;インスリン抵抗性、例えば、2型糖尿病及びシンドロームX(内臓脂肪症候群);並びに血栓塞栓性疾患が挙げられるが、これに限定されるものではない(Kopelman、Nature 404:635〜43、2000年;Rissanenら、British Med. J. 301、835、1990年を参照のこと)。
【0109】
肥満と関連する他の障害としては、うつ病、不安症、パニック発作、片頭痛、PMS(月経前症候群)、慢性疼痛状態、線維筋痛、不眠症、衝動性、強迫性障害とミオクローヌスが挙げられる。更にまた、肥満は、全身麻酔の合併症の発生率増加について認識されているリスク因子である(例えば、Kopelman、Nature 404:635〜43頁、2000年参照のこと)。一般に、肥満は寿命を短縮し、前述のような共存症の重大なリスクを伴う。
【0110】
肥満と関連する他の疾患又は障害は、先天性欠損症、神経管欠損症の発生率の増加と関連する母体肥満、手根管圧迫症候群(CTS);慢性静脈不全(CVI);日中の眠気;深在静脈血栓症(DVT);末期腎疾患(ESRD);痛風;熱中症;免疫応答障害;呼吸機能障害;不妊症;肝疾患;腰痛;産婦人科合併症;膵臓炎;並びに腹部ヘルニア;黒色表皮腫;内分泌異常;慢性低酸素血症及び慢性高炭酸ガス血症;皮膚科学的影響;象皮病;胃食道逆流症;踵骨棘;下肢浮腫;ブラストラップ痛、皮膚損傷、頸部痛、慢性臭、及び乳房下の皮膚のひだの感染などの相当な問題を起こすマンメガリー(mammegaly);大きな前腹壁腫瘤、例えば、歩行を妨げ、頻繁な感染症、臭気、衣服の問題、腰痛を引き起こす、頻繁な皮下脂肪組織炎を伴う腹部皮下脂肪組織炎;筋骨格疾患;偽性脳腫瘍(又は良性頭蓋内圧亢進症)及び滑脱裂孔ヘルニアである。
【0111】
本発明は更に、対象のエネルギー消費量を増加させる方法を提供する。この方法は、例えば、対象に本発明の化合物の治療有効量を末梢投与し、それによってエネルギー消費量を変化させることを含む。エネルギーは、全ての生理的プロセスにおいて燃焼される。それらのプロセスの効率を調整するか、又は起こっているプロセスの数及び性質を変化させることによって、体はエネルギー消費率を直接変えることができる。例えば、消化の間に、体はエネルギーを消費して、腸を通して食物を移動させ、食物を消化し、細胞内で、程度の差はあるが熱を産生するように、細胞代謝の効率を変化させることができる。
【0112】
一態様において、本発明の方法は、食物摂取量を協調的に変化させ且つエネルギー消費量を相反的に変化させる弓形回路網の操作を伴う。エネルギー消費量は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率及びカロリー利用率の結果である。したがって、本発明のこの態様において、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物の投与は、エネルギー消費量を増加させ、カロリー利用効率を低下させる。
【0113】
本発明はまた、対象の脂質プロファイルを改善する方法を提供する。本発明はまた、栄養素利用性を低下させることによって軽減できる状態又は障害を軽減する方法を提供する。
【0114】
食欲は、当業者に知られている任意の手段によって測定できる。例えば、食欲の減少は、心理学的アセスメントによって評価できる。例えば、本発明の化合物の投与は、知覚される空腹、満腹及び/又は膨満を変化させる。空腹は、当業者に知られている任意の手段によって評価できる。例えば、空腹は、心理的アッセイを使用して、例えば、視覚的アナログスコア(Visual Analog Score)(VAS)質問票(これに限定するものではないが)などの質問票を用いる空腹感及び感覚認知の評価によって評価する。特定の非限定的な一例において、空腹は、飲食物に対する欲求、予想される食物消費量、嘔気、及び嗅覚又は味覚に関する認知に関して質問に答えることによって評価する。
【0115】
本発明の化合物は、体重管理及び肥満の治療、例えば、減少又は予防に、特に以下:体重増加の予防及び減少;体重減少の誘発及び促進;並びにボディーマスインデックスによって測定される肥満の減少の任意の1つ又は複数に使用できる。本発明の化合物は、食欲、満腹及び空腹のうち任意の1つ又は複数、特に以下:食欲の減少、抑制及び阻害;満腹及び満腹感の誘発、増加、増強及び促進;並びに空腹及び空腹感の減少、阻害及び抑制の任意の1つ又は複数の制御に使用できる。本発明の化合物は、望ましい体重、望ましいボディーマスインデックス、望ましい容姿及び良好な健康状態のうち任意の1つ又は複数の維持に使用できる。
【0116】
対象は、体重減少を望む対象、例えば、容姿の変化を望む男女の対象であることができる。対象は、空腹感の減少を望んでいる者であってもよく、例えば、対象は、高レベルの集中を必要とする長期にわたる任務に従事している者、例えば、戦地に待機している軍人、航空交通管制官又は長距離ルートのトラック運転手などであってもよい。
【0117】
本発明はまた、比較的高い栄養素利用性によって引き起こされるか、複雑化するか又は悪化する状態又は障害の治療、予防、寛解又は緩和に使用できる。本明細書中で、「カロリー(栄養素)利用性の減少によって緩和され得る状態又は障害」という表現は、比較的高い栄養素利用性によって引き起こされるか、複雑化するか若しくは悪化する患者の任意の状態若しくは障害、又は栄養素利用性の減少によって、例えば、食物摂取量の減少によって緩和できる患者の任意の状態若しくは障害を意味するのに使用する。インスリン抵抗性であるか、グルコース不耐性であるか、又は任意の型の真性糖尿病、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病若しくは妊娠性糖尿病を患っている対象もまた、本発明による方法から利益を享受できる。
【0118】
カロリー摂取量の増加と関連する状態又は障害としては、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、2型糖尿病を含む糖尿病、摂食障害、インスリン抵抗性症候群及びアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0119】
本発明によれば、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物は、好ましくはヒトの治療に使用する。しかし、本発明の化合物は典型的には、ヒト対象の治療に使用するが、他の脊椎動物、例えば、他の霊長類;家畜、例えば、ブタ、牛及び家禽;競技動物、例えば、ウマ;コンパニオンアニマル、例えば、イヌとネコにおける類似又は同一の状態の治療にも使用できる。
【0120】
組成物
有効成分は単独で投与できるが、医薬製剤又は組成物中に存在するのが好ましい。したがって、本発明は、上記に定義した、式(I)の化合物、又はその変形体若しくは誘導体、又はそれらの塩若しくは溶媒和物及び医薬として許容される賦形剤を含む医薬製剤を提供する。本発明の医薬組成物は、下記の医薬製剤の形態をとることができる。
【0121】
本発明による医薬製剤は、経口投与、非経口投与(皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与及び関節内投与を包含する)、吸入投与(種々の型の定量加圧エアゾール、ネブライザー又は注入器によって発生させることができる微粒子ダスト又はミストを包含する)、直腸投与及び局所投与(皮膚投与、経皮投与、経粘膜投与、頬側投与、舌下投与及び眼内投与を包含する)に適当なものを包含するが、最も適当な投与経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害によって異なり得る。
【0122】
製剤は好都合には単位投与形態で提供でき、薬剤学の分野で周知の任意の方法で調製できる。方法は全て、有効成分を、1種又は複数の補助成分を構成する担体との関連させる工程を含む。一般に、製剤は、均一且つ十分に、有効成分と液体担体若しくは微細固体担体又は両者とを関連させ、次いで必要ならば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製する。
【0123】
経口投与に適当な本発明の製剤は、個別単位として、例えば、所定量の有効成分をそれぞれ含有するカプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤として;散剤又は顆粒剤として;水性液体若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤として;又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として提供できる。有効成分はまた、ボーラス、舐剤又はペースト剤としても提供できる。種々の医薬として許容される担体及びそれらの製剤が、標準的な薬剤処方の専門書、例えば、E. W. Martin著、Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。Wang, Y. J.及びHanson, M. A.、Journal of Parenteral Science and Technology、Technical Report No.10, Supp. 42:2S(1988年)も参照のこと。
【0124】
錠剤は、圧縮又は成形によって、任意選択で1種又は複数の補助成分を用いて製造できる。圧縮錠は、粉末又は顆粒などのさらさらした形態の有効成分を、任意選択で結合剤、滑剤、不活性希釈剤、滑沢剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、圧縮することによって調製できる。湿製錠は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適当な機械中で成形することによって製造できる。錠剤は任意選択でコーティングするか又は刻み目を付けてもよく、有効成分の緩徐な放出又は制御放出をもたらすように、製剤化できる。本化合物は、例えば、即時放出又は長期放出(extended release)に適当な形態で投与できる。即時放出又は長期放出は、本化合物を含む適当な医薬組成物を用いて、又は特に長期放出の場合には、皮下インプラント又は浸透圧ポンプなどの装置を用いて、達成できる。本化合物は、リポソームとして投与することもできる。
【0125】
好ましくは、本発明による組成物は、例えば注射による、皮下投与に適当である。特定の実施形態によれば、組成物は、金属イオン、例えば、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトイオンを含有していてもよい。このようなイオンの存在は、溶解度を制限でき、したがって皮下投与部位から、循環系への吸込を遅延できる。特に好ましい実施形態において、組成物は亜鉛イオンを含有する。亜鉛イオンは、任意の適当な濃度で、例えば、ペプチド分子に対するモル比10:1〜1:10、8:1〜1:8、5:1〜1:5、4:1〜1:4、3:1〜1:3、2:1〜1:2又は1:1で存在できる。
【0126】
経口投与のための例示的な組成物には、例えば、嵩を与えるための微結晶セルロース、沈殿防止剤としてのアルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、粘度増強剤としてのメチルセルロース及び甘味剤又は矯味矯臭剤、例えば、当業界で知られているものを含有し得る懸濁剤;並びに、例えば、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウム及び/若しくはラクトース並びに/又は他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤及び滑剤、例えば、当業界で知られているものを含有し得る即時放出錠剤が含まれる。式(I)の化合物、又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物はまた、舌下投与及び/又は頬側投与によって口腔を介して送達してもよい。湿製錠、圧縮錠又は冷凍乾燥錠は、使用し得る例示的な形態である。例示的な組成物には、本化合物をマンニトール、ラクトース、スクロース及び/又はシクロデクストリンなどの速溶性希釈剤と共に配合しているものが含まれる。このような製剤はまた、セルロース(Avicel)又はポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量賦形剤を含んでいてもよい。このような製剤はまた、粘膜への粘着を補助する賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えば、Gantrez)、及び放出を制御する作用剤、例えば、ポリアクリルコポリマー(例えば、Carbopol 934)を含み得る。滑剤、流動促進剤、矯味矯臭剤、着色剤及び安定剤もまた、作製及び使用を容易にするために添加してもよい。
【0127】
非経口投与用の製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を所期のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射液;並びに沈殿防止剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁剤が含まれる。これらの製剤は、単位用量又は多用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアルに入れた状態で提供してもよく、また、使用直前に滅菌液体担体、例えば、注射用生理食塩水又は注射用蒸留水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で貯蔵してもよい。即時注射液及び懸濁剤は、前記の種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製できる。非経口投与用の例示的な組成物には、例えば、適当な無毒性の、非経口的に許容される希釈剤若しくは溶剤、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、又は他の適当な分散剤若しくは湿潤剤及び沈殿防止剤(例えば、合成モノグリセリド又はジグリセリド)及び脂肪酸(例えば、オレイン酸又はCremaphor)を含有し得る注射可能な液剤又は懸濁剤が含まれる。水性担体は、例えば、pH約3.0〜約8.0、好ましくは約3.5〜約7.4、例えば3.5〜6.0、例えば3.5〜約5.0の等張緩衝液であることができる。有用な緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム-クエン酸及びリン酸ナトリウム-リン酸及び酢酸ナトリウム/酢酸緩衝剤が挙げられる。組成物は好ましくは、酸化剤並びにPYY及び関連分子に有害であることが知られている他の化合物を含まない。含まれ得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミン又は血漿製剤などの他のタンパク質である。所望ならば、医薬組成物はまた、少量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0128】
鼻内エアゾール又は吸入投与用の例示的な組成物には、例えば、ベンジルアルコール若しくは他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを向上させる吸収促進剤及び/又は他の溶解補助剤若しくは分散剤、例えば、当業界で知られているものを含有し得る生理食塩水中溶液が含まれる。好都合には、鼻内エアゾール又は吸入投与用の組成物において、本発明の化合物は、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当な気体を用いて、加圧パック又はネブライザーからエアゾール噴霧剤の形態で送達する。加圧エアゾールの場合には、投与単位は、定量を送達する弁を設けることによって決定できる。吸入器又は注入器に使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と適当な粉末基剤、例えば、ラクトース又は澱粉との粉末混合物を含有するように製剤化できる。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物は、アクチュエーターとしても知られるエアゾールアダプターによって定量弁からエアゾール剤として投与する。任意選択で、安定剤も含まれ、且つ/又は肺深部への送達のための多孔質粒子が含まれる(例えば、米国特許第6,447,743号を参照のこと)。
【0129】
直腸投与用の製剤は、カカオバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコールなどの通常の担体と共に停留浣腸剤又は坐剤として提供できる。このような担体は典型的には、常温では固体であるが、直腸腔内では液化及び/又は溶解して薬物を放出する。
【0130】
口内への局所投与用の製剤、例えば、頬側投与又は舌下投与用の製剤としては、スクロース及びアカシア又はトラガカントなどの香味をつけた基剤中に活性成分を含む口内錠、並びにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの基剤中に活性成分を含むパステル剤が挙げられる。局所投与用の例示的な組成物は、プラスチベース(ポリエチレンでゲル化された鉱油)などの局所用担体を含む。
【0131】
好ましい単位投与量製剤は、活性成分の前記有効用量、又はその適切な一部分を含有するものである。
【0132】
特に前述した成分に加えて、本発明の製剤は、当該製剤の型を考慮して、当業界で常用される他の作用剤を含んでいてもよく、例えば、経口投与に適当な製剤は矯味矯臭剤を含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0133】
本発明の化合物はまた、適当には持続放出系として投与する。本発明の持続放出系の適当な例には、造形品の形態の適当なポリマー材料、例えば、半透性ポリマーマトリックス、例えば、フィルム若しくはマイクロカプセル;例えば、許容される油中のエマルジョンとして適当な疎水性材料;又はイオン交換樹脂;及び本発明の化合物の難溶性誘導体、例えば、難溶性塩が含まれる。持続放出系は、経口投与、直腸内投与、非経口投与、大槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(例えば、粉剤、軟膏剤、ゲル剤、ドロップ剤若しくは経皮貼付剤として、又は口腔内噴霧剤若しくは鼻内噴霧剤として)が可能である。
【0134】
投与用の製剤は、本発明の化合物の制御放出をもたらすように、適当に製剤化できる。例えば、医薬組成物は、生分解性ポリマー、多糖類ジェル化及び/若しくは生体接着性ポリマー、両親媒性ポリマー、式(I)の化合物の粒子の界面特性を変更できる作用剤のうち1種又は複数を含む粒子の形態であることができる。これらの組成物は、活性物質の制御放出を可能にする特定の生体適合性を示す。米国特許第5,700,486号を参照のこと。
【0135】
本発明の化合物は、ポンプを介して(Langer、上記; Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed Eng. 14:201、1987年; Buchwaldら、Surgery 88:507、1980年; Saudekら、N. Engl. J. Med. 321:574、1989年を参照のこと)又は連続的な皮下注入によって、例えばミニポンプを用いて、送達してもよい。静脈内バッグ溶液を使用してもよい。適当な用量を選択する主要因は、総体重若しくは体脂肪量対除脂肪体重の比の減少によって、或いは肥満の制御若しくは予防又は肥満関連状態の予防を測定するための、開業医によって適当とみなされる他の基準によって得られる結果である。他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249:1527〜1533頁、1990年)に記載されている。開示の別の態様において、本発明の化合物は、例えば、米国特許第6,436,091号;米国特許第5,939,380号;米国特許第5,993,414号に記載されている埋め込みポンプを介して送達する。
【0136】
植込み型薬注入装置は、患者に薬物又は任意の他の治療薬の一定の長期投与量又は注入を提供するのに使用される。基本的には、このような装置は、能動的又は受動的のいずれかとして分類し得る。本発明の化合物は、デポ製剤として製剤化してもよい。このような長時間作用するデポ製剤は、埋め込みによって、例えば、皮下若しくは筋肉内への埋め込みによって、又は筋肉内注射によって投与できる。したがって、例えば、化合物は、適当なポリマー若しくは疎水性材料と共に、例えば、許容される油中エマルジョンとして;又はイオン交換樹脂と共に;又は難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化できる。
【0137】
本発明の化合物の治療有効量は、単一パルス用量として、ボーラス投与量として、又はある一定期間にわたって投与されるパルス用量として投与してもよい。したがって、パルス投与では、本発明の化合物をボーラス投与し、その後に対象に本発明の化合物を投与しない時間を設け、その後に2回目のボーラス投与を行う。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物のパルス用量は、1日の間に、1週間の間に又は1ヶ月の間に投与する。
【0138】
一実施形態において、本発明の化合物の治療有効量は、別の作用剤、例えば、追加の食欲抑制剤、食物摂取量を減少させる作用剤、血漿中グルコースを減少させる作用剤又は血漿中脂質を変化させる作用剤の治療有効量と共に投与する。追加の食欲抑制剤の特定の非限定的な例としては、アンフェプラモン(ジエチルプロピオン)、フェンテルミン、マジンドール及びフェニルプロパノールアミン、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、並びにフルオキセチンが挙げられる。本発明の化合物は、追加の食欲抑制剤と同時に投与してもよいし、又は連続的に投与してもよい。したがって、一実施形態において、本発明の化合物は、単一用量として食欲抑制剤と共に製剤化し、投与する。
【0139】
本発明の化合物は、効果、例えば、食欲抑制、食物摂取量の減少若しくはカロリー摂取量の減少が望まれる際にいつでも、又は効果が望まれるより少し前に、例えば、効果が望まれる時間の約10分前、約15分前、約30分前、約60分前、約90分前若しくは約120分前(これらに限定するものではないが)に投与できる。
【0140】
本発明の化合物の治療有効量は、使用される分子、治療を受けている対象、苦痛の重症度及び型、並びに投与方法及び投与経路によって決まる。例えば、本発明の化合物の治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重〜約1g/kg体重、例えば、約0.1μg/kg体重〜約20mg/kg体重、例えば、約1μg/kg体重〜約5mg/kg体重、又は約5μg/kg体重〜約1mg/kg体重であることができる。
【0141】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は対象に、5〜1000nmol/kg体重、例えば10〜750nmol/kg体重、例えば、20〜500nmol/kg体重、特に30〜240nmol/kg体重で投与できる。75kgの対象に対しては、このような用量は、375nmol〜75μmol、例えば、750nmol〜56.25μmol、例えば、1.5〜37.5μmol、特に2.25〜18μmolの投与量に相当する。
【0142】
代替的実施形態において、本発明の化合物は、対象に、0.5〜135ピコモル(pmol)/kg体重、例えば、5〜100pmol/kg体重、例えば、10〜90pmol体重、例えば、約72pmol/kg体重で投与できる。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物は、約1nmol以上、2nmol以上又は5nmol以上の用量で投与する。この例において、本発明の化合物の用量は、一般に100nmol以下、例えば、90nmol以下、80nmol以下、70nmol以下、60nmol以下、50nmol以下、40nmol以下、30nmol以下、20nmol以下、10nmolである。例えば、投与量範囲は、特定の下限用量のいずれかと特定の上限用量のいずれかとの任意の組み合わせを含むことができる。したがって、本発明の化合物の非限定的な用量範囲の例は、1〜100nmol、2〜90mol、5〜80nmolの範囲内である。
【0143】
特定の非限定的な一例において、約1〜約50nmol、例えば、2〜約20nmol、例えば、約10nmolの本発明の化合物を、皮下注射剤として投与する。正確な用量は、当業者によって、使用される特定の化合物、化合物の送達経路並びに対象の年齢、体重、性別及び生理的状態に基づいて容易に決定される。
【0144】
本発明の化合物の適当な用量はまた、カロリー摂取量、食物摂取量若しくは食欲の減少、又はカロリー摂取量、食物摂取量若しくは食欲の減少に相当するエネルギー消費量の増加をもたらす用量、或いはPYYの正常な食後レベルによってもたらされるエネルギー消費量を増加させる用量を含む。用量の例としては、PYYの血清レベルが約40〜約60pM、又は約40〜約45pM又は約43pMである場合に立証されている効果を生じる用量が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0145】
前記用量は、例えば、1日に1回、2回、3回与えることができる。或いは、それらは2日に1回、3日に1回又は4日に1回与えることもできる。亜鉛を含有する遅延放出(slow release)製剤では、1用量を、3、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21日に1回与えることも可能な場合がある。特定の実施形態によれば、それらは、各食事の摂取直前に1回投与することができる。
【0146】
本発明の特定の配列
本発明の特定の具体的な実施形態によれば、PYYの類似体は、図1に記載した特定の配列の1つで示されるアミノ酸配列を有する。
【0147】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって例示する。
【0148】
(実施例)
材料及び方法
動物
全てのマウス実験に、雄のC57BL/6マウス(Harlan)を使用した。全てのラット実験に、雄のWistarラット(Charles River)を使用した。
【0149】
ペプチド合成
ペプチドは、標準的な自動化フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固体相ペプチド合成(SPPS)法によって作製した。ペプチド合成は、三環式アミドリンカー樹脂上で行った。アミノ酸は、Fmocストラテジーを使用して結合させた。各アミノ酸は、C末端からN末端まで連続的に加えた。ペプチドカップリングは、試薬TBTUを介して行った。樹脂からのペプチド切断は、捕捉剤の存在下においてトリフルオロ酢酸を用いて達成した。天然のPYY 3-36 NH2は、前述のようにして入手し(WO03/026591);三環式アミド樹脂とFmoc化学反応を用いるデノボ合成も可能である。
【0150】
ペプチドは、逆相HPLCによって精製した。全ての精製ペプチドについて完全な品質管理を行い、ペプチドは、2つの緩衝剤系中でのHPLCによって純度が95%より高いことが示された。酸加水分解後のアミノ酸分析により、アミノ酸組成を確認した。MALDI-MSは、予想される分子イオンを示した。
【0151】
(実施例1)
結合試験
ヒトY2受容体を過剰発現するHEK 293細胞(NPYR200000、Missouri S&T cDNA Resource Centre)の膜標品を、Morganら(Morgan DG、Lambert PD、Smith DM、Wilding JPH及びBloom SRmJ. Reduced NPY induced feeding in diabetic but not steroid treated rats: lack of evidence for changes in receptor number or affinity. Neuroendocrinol 1996年、8 283〜290頁)によって記載されるようして、浸透圧溶解及び分画遠心法によって単離した。受容体結合アッセイは、Druceらによって記載されるようにして完了させた(Druce MR、Minnion JS、Field BC、Patel SR、Shillito JC、Tilby M、Beale KE、Murphy KG Ghatei MA & Bloom SR. Investigation of structure-activity relationships of oxyntomodulin (oxm) using oxm analogues. 2009年 Endocrinology 150(4) 712〜22頁)。但し、使用した緩衝剤が、0.02M HEPES pH7.4、5mM CaCl2、1mM MgCl2、1%ウシ血清アルブミン、0.1mMジブロチンA、0.2mM PMSF、10μMホスホラミドンであり、放射標識としての125I-PYY1-36及びヒトのY2受容体を使用した。
【0152】
マウスの急性摂食試験
マウスは1匹ずつ、IVCケージに収容した。動物は、体重による層別化によって治療群に無作為化した。マウスは、ペプチド又はビヒクルの投与前に一晩(16時間)絶食させた。ペプチド溶液は全て、投与直前に新しく調製した。全ての試験に使用したビヒクルは、水5容量%及び塩化ナトリウム(0.9%w/v)95容量%であった。体重に対して補正された投与量で、ペプチド及びビヒクルを皮下注射によって投与した。最大注射容量は、100μlであった。ビヒクル又はペプチドを09:00に投与し、動物を、既知量の食物を含むそれらのホームケージに戻した。食物摂取量は、注射後1、2、4、8及び24時間に測定した。全ての統計は、Dunnettポストテストに関して一元配置ANOVAを用いて、又はBonferroniのポストテストに関して一元配置ANOVAで計算する。
【0153】
結果
図1は、本発明(類似体番号1〜19)の例のPYY類似体のアミノ酸配列、結合実験の結果、及び本発明の化合物のマウスにおける食欲抑制剤効果をヒトPYY 3-36 NH2と比較した実験の結果を示している。第1列は類似体番号を含み、第2列は参照番号を含む。以降の列は、各例のPYY類似体のアミノ酸配列を示す。「結合比」と表題を付けた列は、ヒトPYY 3-36 NH2を基準とした各例のPYY類似体のヒトY2受容体への結合の強さを示す。1.0を超える値は、ヒトY2受容体への結合が、ヒトPYY 3-36 NH2によって示されるよりも強いことを示している。「食物摂取比」と表題を付けた列は、0〜24時間(ペプチドの投与から測定される時間)の期間における、各例のPYY類似体に関する、生理食塩水を基準とした食物摂取量の減少を示し、生理食塩水を投与した動物を基準とした、天然のヒトPYY 3-36 NH2を投与した動物によって示される食物摂取量の減少の比率として表している。1.0を超える値は、ヒトPYY 3-36 NH2で達成されるよりも良好な食物摂取量の減少を示す。
【0154】
(実施例2)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、PYY 3-36 NH2(50nmol/kg)若しくは配列:
【化3】
を有する類似体番号1(50nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。結果を、図2に示す。図2において、PYY 3-36 NH2の投与が、生理食塩水と比較して、食物摂取量を減少させることが示されている。しかし、類似体番号1は、PYY 3-36 NH2と比較して食物摂取量減少の増加を示している。
【0155】
(実施例3)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、配列:
【化4】
を有する類似体番号15(1000nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。結果を、図3に示す。図3において、類似体番号15の投与が、生理食塩水と比較して食物摂取量を著しく減少させることが示されている。
【0156】
(実施例4)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、配列:
【化5】
を有する類似体番号15(5000nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。結果を、図4に示す。図4において、類似体番号15の投与が、生理食塩水と比較して食物摂取量を著しく減少させることが示されている。
【0157】
(実施例5)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、PYY 3-36 NH2(50nmol/kg)若しくは配列:
【化6】
を有する類似体番号3(50nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。図5は、0〜1時間、1〜2時間、2〜4時間、4〜8時間及び8〜24時間の期間における食物摂取量を示し、生理食塩水を注射したマウスで観察される食物摂取量を基準とした増加百分率として示してある。図5からわかるように、PYY 3-36 NH2は約4時間までは食物摂取量を著しく減少させ、その後に食物摂取量は正常値に戻る。類似体番号3は、食物摂取量のより持続的な減少を示し、それは4〜8時間の時点で明らかである。
【0158】
(実施例6)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、PYY 3-36 NH2(50nmol/kg)若しくは配列:
【化7】
を有する類似体番号2(50nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。図6は、0〜1時間、1〜2時間、2〜4時間、4〜8時間及び8〜24時間の期間における食物摂取量を示し、生理食塩水を注射したマウスで観察される食物摂取量を基準とした増加百分率として示してある。図6からわかるように、PYY 3-36 NH2は約4時間までは食物摂取量を著しく減少させ、その後に食物摂取量は正常値に戻る。類似体番号2は、食物摂取量のより持続的な減少を示し、それは4〜8時間の時点で明らかである。
【0159】
(実施例7a)
インビボでの薬物動態試験
材料及び方法
雄のWistarラットに、配列:
【化8】
を有する類似体番号15を皮下注射した。各注射は、総容量が20μl/ラットであり、濃度がペプチド10mg/ml又は20mg/ml及び亜鉛イオン(ZnCl2として)1個/ペプチド分子であった。
【0160】
ラットを断頭し、体幹血液を、2時間、4時間、8時間及び24時間(ペプチド10mg/ml)並びに10分、20分、1時間、3時間、8時間、24時間、32時間、48時間及び72時間(ペプチド20mg/ml)(n=2〜3/群)に採取した。血液は、基礎(内因性) PYYレベルを確認するためにペプチドを注射しなかった2匹のラットからも採取した。
【0161】
血漿ペプチドレベルを、一般的なPYY RIAによって、各場合に測定されているのと同様な類似体を標準として用いて測定した。
【0162】
結果
結果を、図7及び8に示す。内因性PYYの半減期がわずか数分であるにもかかわらず、類似体の循環レベルは、24時間(図7)及びその後の時点(図8)において依然として高かった。
【0163】
(実施例7b)
実施例7aと同様な実験を、類似体19、15、20、21、26、24、22、23及び26(配列については図1を参照のこと)に関して行った。1時間、3時間、6時間、1日、2日、4日及び7日の時点で、血液を採取し、分析した。
【0164】
結果
結果は、図28以降に示す。これらの結果は、内因性PYYの半減期がわずか数分であるにもにもかかわらず、類似体の循環レベルが数日間高いままであり得ることを示している。
【0165】
(実施例8)
ラットにおける摂食試験
1匹ずつ収容された雄のWistarラットに、PYY 3-36 NH2、配列:
【化9】
を有する類似体番号12又は生理食塩水を、25日間にわたって1日1回18:00pmに皮下注射した。各ペプチドは容量20μlで200nmol/kgの濃度で投与し、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)1つが存在する濃度とした。ラットは、食物及び水を自由に摂取できるようにした。ラットの数は、生理食塩水処理群で12匹とした以外は、各治療群7〜9匹とした。注射時に、食物摂取量及び体重を測定した。ラットは毎日、体重を測定した。平均体重の変化(g)(生理食塩水に対して補正)を、図9にプロットする。図9からわかるように、類似体番号12の連日投与によって約40g/ラットの体重減少が得られた。
【0166】
(実施例9)
肥満マウスにおける摂食試験
この試験の開始の13週間前に、C57BL/6マウスに高脂肪食(脂肪60kcal%)を与えることによって、食事誘発肥満(DIO)マウスを得た。この食事を、試験全体を通じて用いた。マウスは、IVCケージに収容した。試験の開始時に、マウスのコホートは、平均体重が34.8g(範囲28.3〜40.4g)であった。動物は、体重による層別化によって治療群(n=7〜8)に無作為化した。
【0167】
生理食塩水(0.9%w/v)、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)を1つ含むPYY 3-36 NH2(300nmol/kg)又は配列:
【化10】
を有する類似体番号15(300nmol/kg)を1日1回皮下注射した。注射容量は全治療群について10μlとし、51日間にわたって16:00にマウスに投薬した。マウスは、注射の60分後に摂食させ、翌日の07:30までは自由に摂食させ、07:30に食事を計量し、除去した。
【0168】
結果
マウスは毎日、体重を測定した。各治療群の平均体重を、図10にプロットする。図11は、生理食塩水群の平均体重の%として表した、平均体重の変化を示している。図からわかるように、PYY 3-36 NH2は、生理食塩水と比較して平均体重に持続効果を及ぼさなかった。これに対して、類似体番号15の投与では、生理食塩水群と比較して約5%の体重減少が達成された。
【0169】
図12は、本試験全体にわたって、各治療群の食物摂取量(g)で示している。図13は、生理食塩水群の累積食物摂取量(g)を基準として表した累積食物摂取量(g)を示している。図からわかるように、PYY 3-36 NH2は、生理食塩水と比較して累積食物摂取量に持続効果を及ぼさなかった。これに対して、類似体番号15の投与では、生理食塩水群と比較して食物摂取量の減少が達成された。
【0170】
(実施例10)
ラットにおける摂食試験
1匹ずつ収容された雄のWistarラットに、PYY 3-36 NH2、配列:
【化11】
を有する類似体番号12、配列:
【化12】
を有する類似体番号15、又は生理食塩水を、47日間にわたって毎日16:00pmに皮下注射した。各ペプチドは200nmol/kgの濃度で投与し、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)1つが存在する濃度とした。PYY 3-36 NH2及び類似体番号15は、1000nmol/kgの濃度でも投与し、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)1つが存在する濃度とした。各注射の総容量は20μl/ラットとした。ラットは、食物及び水を自由に摂取できるようにした。ラットの数は、生理食塩水処理群で12匹とした以外は、各治療群8匹とした。注射時に毎日、食物摂取量及び体重を測定した。
【0171】
結果
図14は、生理食塩水群の平均体重の%として表した、平均体重の変化を示している。PYY 3-36 NH2で観察される結果と対照的に、類似体番号12又は類似体番号15の投与では、生理食塩水群と比較して平均体重が減少した。
【0172】
(実施例11)
インビトロでのペプチド析出試験
材料及び方法
以下の配列:
類似体番号2:
【化13】
類似体番号3:
【化14】
類似体番号11:
【化15】
類似体番号12:
【化16】
類似体番号13:
【化17】
類似体番号14:
【化18】
類似体番号16:
【化19】
を有するヒトPYYのペプチド類似体を入手した。ペプチドは、ペプチド分子に対する亜鉛イオンの分子比が2:1、10:1又は50:1となるような種々の濃度で亜鉛イオンが存在するpH4.5のZnCl2溶液中に、1mg/mlの濃度で溶解させた。溶解後、全てのペプチド溶液のpHは、全ての場合にpH3.8未満であることが観察された。ウシ血清アルブミン(BSA)は、結果に「BSAなし」とラベル表示した溶液を除いて、全ての溶液に0.5%w/vの濃度で加えた。ペプチド及びBSAは共に、全ての場合に完全に溶解できることが観察された。ペプチドを析出させるために、全ての試料に0.2M NaOHを加えた。析出物を、遠心分離によってペレット化させた。析出物を、各回、pH7.4の新しい生理食塩水+0.5%v/w BSAを用いて、更に複数回(典型的には更に5回、又は析出物が完全に溶解するまで)洗浄した。洗浄は1時間間隔で行い、洗浄と洗浄の間の1時間は、サンプルを振盪トレイ上で37℃に保持した。これらの反復洗浄後、いかなる残留析出物も、pH4.5で生理食塩水中に再懸濁させて、完全に再溶解させた。各洗浄液及び最終再懸濁溶液中に存在する析出物の量を、ラジオイムノアッセイを使用してアッセイした。
【0173】
結果
各実験について、最初の析出の上清中のペプチドの量(即ち、析出しなかったペプチド)、以後の各洗浄液中のペプチドの量、及びいかなる最終残留析出物も再懸濁させることによって得られた溶液中のペプチドの量を、図15〜26のぞれぞれに、存在する総ペプチドの百分率として示す。各グラフ中の第1のカラムは、「1」とラベル表示し、第1の析出の上清中に存在するペプチドの割合(即ち、最初の高いpHで析出しなかったペプチドの割合)を表す。以降のカラムは、連続したpH7.4での各洗浄において再可溶化されたペプチドの割合を表す。各グラフの最終カラムは、実験中にpH7.4での洗浄の間に再可溶化されなかったが最終のpH4.5の工程で再可溶化されたペプチドの割合を表す。
【0174】
結果は、ペプチドは低いpHで溶解できるが、pHを上昇させると、かなりの割合のペプチドが溶液から析出することを実証している。析出は、亜鉛イオンの存在によっては少なくとも部分的に依存する。これは、析出物を新しい、亜鉛を含まない生理食塩水で洗浄する場合には亜鉛イオンが析出物から洗い落とされ、ペプチドが一定の期間の間に再可溶化されるが、これが最初の製剤に加えられた亜鉛の濃度によって左右される可能性があるためである。
【0175】
(実施例12)
Zn2+の有無の比較
材料及び方法
亜鉛(ZnCl2として)を10:1のZn2+:ペプチド分子比で含有する組成物及び亜鉛を含有しない組成物中の1mg/mlの皮下用ヒトPYY 3-36 NH2をラットに注射するように、実施例7の方法を適合させた。血漿ペプチドを、5、10、15、30、45及び60分に測定した。
【0176】
結果
図27で示されるように、亜鉛を含有する組成物は、亜鉛を含有しない組成物の場合(約10〜15分にピーク)よりも遅い、約30分に血漿PYY 3-36 NH2のピークをもたらした(即ち、より遅延放出性であった)。
【技術分野】
【0001】
本出願は、食欲、摂食量、食物摂取量、エネルギー消費量及びカロリー摂取量の制御への、特に肥満の分野における薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)(NHANES III、1988〜1994年)によれば、米国の男性及び女性の1/3〜1/2は、過体重である。米国では、20才以上の年齢の男性60パーセント及び女性の51%パーセントが過体重又は肥満のいずれかである。更に、米国のかなりの割合の小児は、過体重又は肥満である。
【0003】
肥満の原因は、複雑であり、多因子である。肥満が、単純な自己制御の問題でなく、食欲調節及びエネルギー代謝に影響を与える複合疾患であることを示唆する証拠が増えている。更に、肥満は、人口における罹患率及び死亡率の増加と関連する種々の状態と関連している。肥満の病因は明確には確証されていないが、遺伝子的、代謝的、生化学的、文化的及び心理社会的因子が一因となると考えられている。一般に、肥満は、過剰な体脂肪が個体を健康リスクに曝している状態と表現されている。
【0004】
肥満が罹患率及び死亡率の増加と関連している強力な証拠がある。心血管疾患リスク及び2型糖尿病リスクなどの疾病リスクは、ボディーマスインデックス(BMI)の増加に伴って、独立して増加する。実際に、このリスクは、24.9超のBMIの1ポイントについて、女性の心臓病リスクを5パーセント増加させ、男性の心臓病リスクを7パーセント増加させると定量化された(Kenchaiahら、N. Engl. J. Med. 347:305、2002年;Massie、N. Engl. J. Med. 347:358、2002年を参照のこと)。更に、肥満者における体重減少が重要な疾病リスク因子を減らす実質的な証拠がある。過体重及び肥満の成人における初期体重の、10%といったわずかな体重減少であっても、高血圧症、高脂血症及び高血糖症などのリスク因子の減少と関連している。
【0005】
食事及び運動が、体重増加を減少させるための簡単な方法を提供するにもかかわらず、過体重及び肥満の個体は、効果的に体重を減少させるほどには十分にこれらの因子を制御することができないことが多い。薬物療法が利用でき、総合的な減量プログラムの一部として使用できるいくつかの減量薬が、食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって認可されている。しかし、これらの薬の多くには、重篤で有害な副作用がある。より低侵襲性の方法が役に立たず、しかも、肥満に関連する患者の罹患率又は死亡率のリスクが高い場合には、減量手術が、慎重に選択された、臨床的に重度の肥満を有する患者における選択肢となる。しかし、これらの治療は高リスクであり、限られた数の患者にのみ適する。減量を望むのは、肥満対象だけではない。推奨範囲内の体重を有する人々、例えば、推奨範囲の上部の体重を有する人々は、体重を減少させて、理想体重により近づけることを望む場合がある。したがって、過体重及び肥満の対象の減量に使用できる薬剤に対するニーズが依然として存在する。
【0006】
WO03/026591には、ペプチドYY(以下、PYY)又はそのアゴニストの対象への末梢投与が、食品摂取量、カロリー摂取量及び食欲の減少並びにエネルギー代謝の変化をもたらすことが開示されている。PYY又はそのアゴニストは好ましくは、N末端が除去されたPYY分子PYY 3-36 NH2であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO03/026591
【特許文献2】WO93/09227
【特許文献3】米国特許第6,355,478号
【特許文献4】米国特許第6,420,352号
【特許文献5】米国特許第6,410,707号
【特許文献6】米国特許第5,936,092号
【特許文献7】米国特許第6,093,692号
【特許文献8】米国特許第6,225,445号
【特許文献9】米国特許第4,179,337号
【特許文献10】米国特許第6,447,743号
【特許文献11】米国特許第5,700,486号
【特許文献12】米国特許第6,436,091号
【特許文献13】米国特許第5,939,380号
【特許文献14】米国特許第5,993,414号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)(NHANES III、1988〜1994年)
【非特許文献2】Kenchaiahら、N. Engl. J. Med. 347:305、2002年
【非特許文献3】Massie、N. Engl. J. Med. 347:358、2002年
【非特許文献4】Jequier、Am. J Clin. Nutr. 45:1035〜47頁、1987年
【非特許文献5】Barlow及びDietz、Pediatrics 102:E29、1998年
【非特許文献6】National Institutes of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)、Obes. Res. 6(suppl. 2):51S-209S、1998年
【非特許文献7】Lyznickiら、Am. Fam. Phys. 63:2185、2001年
【非特許文献8】Dumontら、Society for Neuroscience Abstracts 19:726, 1993年
【非特許文献9】Bowieら、Science 247:1306〜1310頁、1990年
【非特許文献10】Kopelman、Nature 404:635〜43頁、2000年
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【非特許文献15】Buchwaldら、Surgery 88:507、1980年
【非特許文献16】Saudekら、N. Engl. J. Med. 321 :574、1989年
【非特許文献17】Langer、Science 249:1527〜1533頁、1990年
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【非特許文献19】Druce MR、Minnion JS、Field BC、Patel SR、Shillito JC、Tilby M、Beale KE、Murphy KG、Ghatei MA & Bloom SR. Investigation of structure-activity relationships of oxyntomodulin (oxm) using oxm analogues. 2009年 Endocrinology 150(4) 712〜22頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定のアミノ酸残基が除去され及び/又は置換されているPYYの類似体もまた、食物摂取量の減少、カロリー摂取量の減少、食欲の減少及びエネルギー代謝の変化をもたらすために対象に投与できるという発見に基づく。多くの場合、本発明の類似体は、作用強度が改善され、並びに/又は未修飾のPYYよりも作用持続時間が長く及び/若しくは副作用が少ない。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、式(I)
【化1】
[式中、
Xaa2は、Pro及びGlyからなる群から選択され、
Xaa4は、Arg、His、Lys及びOrnからなる群から選択され、
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択され、
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択され、
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択され、
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択され、
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択され、
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択され、
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される]
で表されるアミノ酸配列を含むPYYの類似体、又はそれらの変形体(variant)及び/若しくは誘導体である化合物、或いはこのような変形体及び/又は誘導体の塩並びにこのような変形体及び/若しくは誘導体及び/又は塩の溶媒和物を包含する、それらの塩及び/又は溶媒和物であって、変形体が、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸が異なるアミノ酸で置き換えられているアミノ酸配列である、PYYの類似体が提供される。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、医薬品として使用するための、本発明によるPYYの類似体が提供される。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、本発明によるPYYの類似体を、医薬として許容される担体及び任意選択で他の治療成分と共に含む医薬組成物が提供される。
【0013】
本発明の更なる態様によれば、代謝障害の治療に使用するための、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、対象の食欲の減少に使用するための、対象の食物摂取量の減少に使用するための又は対象のカロリー摂取量の減少に使用するための、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物が提供される。
【0015】
本発明の更なる態様によれば、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物の皮下投与を含む、疾病若しくは障害又は他の望ましくない生理的状態の治療方法が提供される。
【0016】
本発明によれば、更に、本発明によるPYYの類似体又は本発明によるPYYの類似体を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、代謝障害の治療を必要としている対象の代謝障害の治療方法が提供される。
【0017】
更に、代謝障害を治療するための医薬品を製造するための、本発明によるPYYの類似体の使用が提供される。
【0018】
更に、対象の食欲の減少のための、対象の食物摂取量の減少のための、又は対象のカロリー摂取量の減少のための医薬品を製造するための、本発明によるPYYの類似体の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のPYY類似体のアミノ酸配列(類似体番号1〜26)、これらのPYY類似体を用いた結合実験の結果、及び本発明のこれらのPYY類似体のマウスにおける食欲抑制効果を、実施例1に記載した、未修飾PYY 3-36 NH2と比較した実験の結果を示す。
【図2】実施例2に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図3】実施例3に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図4】実施例4に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図5】実施例5に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図6】実施例6に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図7】実施例7aに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図8】実施例7aに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図9】実施例8に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図10】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図11】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図12】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図13】実施例9に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図14】実施例10に記載した動物摂食試験の結果を示す。
【図15】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図16】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図17】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図18】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図19】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図20】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図21】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図22】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図23】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図24】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図25】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図26】実施例11に記載したインビトロ溶解度実験の結果を示す。
【図27】実施例12に記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図28】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図29】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図30】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図31】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図32】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図33】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図34】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図35】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【図36】実施例7bに記載したラットの薬物動態試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列表
本出願中に記載したアミノ酸配列は、アミノ酸に対して標準的な文字略語を使用して示してある。図1に示した特定の配列は、本発明の特定の好ましい実施形態に関する。
【0021】
定義
本開示の種々の実施形態の検討を容易にするために、特定の用語について以下の説明を示す。
【0022】
動物:例えば、哺乳類及び鳥類を包含するカテゴリーである、生きている多細胞の脊椎動物。用語「哺乳類」は、ヒト及びヒト以外の哺乳類を包含する。同様に、用語「対象」は、ヒト及び獣医学的対象を包含する。
【0023】
食欲:食物に対する自然な欲求又は渇望。一実施形態において、食欲は、食物に対する欲求を評価する調査によって測定する。一般に、食欲が増加すれば、摂食行動が増加する。
【0024】
食欲抑制剤:食物に対する欲求を減少させる化合物。市販の食欲抑制剤としては、アンフェプラモン(ジエチルプロピオン)、フェンテルミン、マジンドール及びフェニルプロパノールアミン、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン並びにフルオキセチンが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0025】
ボディーマスインデックス(BMI):ケトレー指数(Quetelet's Index)と称することもある、体質量を数値化するための数式。BMIは、体重(kg)÷身長2(m2)によって算出される。「標準的」と認められている現行基準は、男性及び女性共に、BMI 20〜24.9kg/m2である。一実施形態において、25kg/m2を超えるBMIを使用して、肥満対象を特定できる。グレードIの肥満は、BMI 25〜29.9kg/m2に相当し、グレードIIの肥満は、BMI 30〜40kg/m2に相当し、グレードIIIの肥満は、BMI 40kg/m2超に相当する(Jequier、Am. J Clin. Nutr. 45:1035〜47頁、1987年)。理想体重は、種間及び個体間で、身長、体格、骨構造及び性別によって異なるであろう。
【0026】
保存的置換(conservative substitution):ポリペプチド中アミノ残基の、生物学的に類似している別の残基による置換。用語「保存的変形(conservative variation)」は、置換ポリペプチドに対して産生される抗体も非置換ポリペプチドと免疫反応するならば、親アミノ酸の代わりに、置換アミノ酸、即ち、1つ又は複数の原子が別の原子又は基で置き換えられているアミノ酸の使用も含む。
【0027】
糖尿病:インスリンの内因性欠乏及び/又はインスリン感受性の欠損により、細胞が、それらの膜を横切るように内因性グルコースを輸送できない状態。糖尿病は、インスリンの不十分な分泌又は標的組織のインスリン抵抗性による、炭水化物、タンパク質及び脂質の代謝障害の慢性症候群である。糖尿病は、病因、病態、遺伝的特質、発症年齢及び治療の点で異なる、インスリン依存型糖尿病(IDDM、1型)及びインスリン非依存性糖尿病(NIDDM、2型)の2つの主要形態で発症する。
【0028】
糖尿病のこれら2つの主要形態はいずれも、グルコース恒常性の制御に必要な量及び正確なタイミングでインスリンを送達できないことを特徴とする。1型糖尿病型又はインスリン依存型糖尿病(IDDM)は、β細胞の破壊、その結果としての内因性インスリンの不十分なレベルによって引き起こされる。2型糖尿病型又はインスリン非依存性糖尿病は、身体のインスリン感受性の欠損及びインスリン産生の相対的な欠乏の両方に起因する。
【0029】
食物摂取量:個体によって消費される食物の量。食物摂取量は、体積又は重量によって測定できる。例えば、食物摂取量は、個体によって消費される食物の総量であり得る。又は、食物摂取量は、タンパク質、脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン、ミネラル若しくは個体の全ての他の食物成分の量であることができる。「タンパク質摂取量」は、個体によって消費されるタンパク質の量を指す。同様に、「脂肪摂取量」、「炭水化物摂取量」、「コレステロール摂取量」、「ビタミの摂取量」及び「ミネラル摂取量」は、個体によって消費される脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン又はミネラルの量を指す。
【0030】
過分極:細胞の膜電位の減少。抑制性神経伝達物質は、過分極によって神経インパルスの伝達を阻害する。この過分極は、抑制性シナプス後電位(IPSP)と称される。細胞の閾電圧に帯電していないが、過分極細胞は、閾値に達するためにより強い興奮性刺激を必要とする。
【0031】
正常な1日の食事:所与の種の個体の平均食物摂取量。正常な1日の食事は、カロリー摂取量、タンパク質摂取量、炭水化物摂取量及び/又は脂肪摂取量に換算して表すことができる。ヒトの正常な1日の食事は一般に、約2,000カロリー、約2,400カロリー又は約2,800カロリーからそれよりかなり高カロリーまでを含む。更に、ヒトの正常な1日の食事は一般に、タンパク質約12〜約45g、炭水化物約120〜約610g及び脂肪約11〜約90gを含む。低カロリー食は、ヒト個体の正常なカロリー摂取量の約85%以下、好ましくは約70%以下であろう。
【0032】
動物では、カロリー所要量及び栄養所要量は、動物の種及び大きさによって異なる。例えば、ネコでは、総カロリー摂取量/ポンド並びにタンパク質、炭水化物及び脂肪の構成比(percent distribution)は、ネコの年齢及び生殖状態によって異なる。しかし、ネコのための一般的基準は、40cal/lb/日(18.2cal/kg/日)である。約30〜約40%はタンパク質摂取量から、約7〜約10%は炭水化物摂取量から、約50〜約62.5%は脂肪摂取量から得るべきである。当業者ならば、全ての種の個体の正常な1日の食事を容易に特定できる。
【0033】
肥満:過剰な体脂肪がヒトを健康リスクに曝す可能性がある状態(Barlow及びDietz、Pediatrics 102:E29、1998年;National Institutes of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)、Obes. Res. 6(suppl. 2):51S-209S、1998年を参照のこと)。過剰な体脂肪は、エネルギー摂取量とエネルギー消費量のアンバランスの結果である。例えば、ボディーマスインデックス(BMI)を、肥満の評価に使用できる。1つの一般的に用いられている慣習では、BMI 25.0〜29.9kg/m2は過体重、BMI 30kg/m2以上は肥満である。
【0034】
別の慣習では、胴囲を、肥満の評価に使用する。この慣習においては、男性では胴囲102cm以上を肥満とみなし、女性では胴囲89cm以上を肥満とみなす。肥満が、個体の罹患率及び死亡率のいずれにも影響を及ぼすことを示す強力な証拠がある。例えば、肥満個体は、特に、心疾患、インスリン非依存性(2型)糖尿病、高血圧症、脳卒中、癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌及び大腸癌)、脂質異常症、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、生殖能低下及び変形性関節症のリスクが高い(Lyznickiら、Am. Fam. Phys. 63:2185、2001年を参照のこと)。
【0035】
過体重:体重が理想体重を上回る個体。過体重個体は肥満であり得るが、必ずしも肥満ではない。例えば、過体重個体は、減量を望む任意の個体である。1つ慣習では、過体重個体は、BMIが25.0〜29.9kg/m2の個体である。
【0036】
ペグ化される及びペグ化:ポリ(アルキレングリコール)、好ましくは活性化ポリ(アルキレングリコール)を反応させて共有結合の形成するプロセス。促進剤、例えば、アミノ酸、例えば、リジンを使用してもよい。「ペグ化」は、ポリ(エチレングリコール)又はその誘導体、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)を用いて実施されることが多いが、この用語は本明細書中では、メトキシポリ(エチレングリコール)の使用に限定するのではなく、任意の他の有用なポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(プロピレングリコール)の使用も含む。
【0037】
pI:pIは等電位点の略語である。場合によって使用される別の略語は、IEPである。pIは、特定の分子が正味電荷を有さないpHである。そのpI未満のpHでは、タンパク質又はペプチドは、正味の正電荷を有する。そのpIを超えるpHでは、タンパク質又はペプチドは、正味の負電荷を有する。タンパク質及びペプチドは、等電点電気泳動と称される技術を用いて、それらの等電位点に従って分離できる。等電点電気泳動とは、ポリアクリルイミドゲル中に含まれるpH勾配を利用する電気泳動法である。
【0038】
ペプチドYY(PYY):本明細書中で使用する用語「PYY」は、下部小腸(回腸)及び結腸の内側を覆っている細胞によって血液中に分泌されるホルモンであるペプチドYYポリペプチドを指す。天然に存在する、種々の種の野生型PYY配列を、Table 1(表1)に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
末梢投与:中枢神経系の以外の投与。末梢投与は、脳への直接投与を包含しない。末梢投与としては、血管内投与、筋肉内投与、皮下投与、吸入投与、経口投与、直腸内投与、経皮投与又は鼻腔内投与が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0041】
ポリペプチド:モノマーが、アミド結合によって結合しているアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がα-アミノ酸である場合には、L-光学異性体又はD-光学異性体のいずれを使用してもよく、L-異性体が好ましい。本明細書中で使用する用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、任意のアミノ酸配列を網羅し、糖タンパク質などの修飾配列を包含する。用語「ポリペプチド」は特に、天然に存在するタンパク質及び組換えによって又は合成によって生成されたものを網羅する。用語「ポリペプチド断片」は、ポリペプチドの一部、例えば、受容体を結合する際に有用な少なくとも1つの配列を示す断片を指す。用語「ポリペプチドの機能性断片」は、ポリペプチドの活性を保持するポリペプチドの全ての断片を指す。生物学的機能性ペプチドはまた、当該ペプチドがその望ましい活性を減少させない別のペプチドに融合している融合タンパク質を包含し得る。
【0042】
皮下投与:皮下投与は、皮膚の真皮と下にある組織との間に見られる脂肪の皮下層への物質の投与である。皮下投与は、例えば、注射器又は「ペン」型注射装置に装着した皮下注射針を用いる注射によることができる。他の投与方法、例えば、極微針を使用してもよい。皮下注射針による注射は典型的には、レシピエントにはある程度の疼痛を伴う。このような疼痛は、局部麻酔薬又は鎮痛薬の使用によってマスクできる。しかし、感知される注射の疼痛を低減するのに用いられている一般的な方法は、注射直前及び注射中にただ単に気を散らすことである。疼痛は、比較的小さいゲージの皮下注射針を用いることによって、比較的小容量の物質を注射することによって、及び対象が注射部位に「刺す」感覚を感じる原因となり得る、過度に酸性又はアルカリ性の組成物を回避することによって、最小限に抑えることができる。pH4〜10の組成物は通常、認容できる程度に苦痛がないとみなされている。
【0043】
治療有効量:障害の進行を予防するのに十分な、若しくは障害を退縮させるのに十分な、又は障害の徴候若しくは症状を軽減できる、若しくは望ましい結果を達成できる用量。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の治療有効量は、体重増加を阻害若しくは停止するのに十分な量、或いは食欲を減少させるのに十分な量、或いはカロリー摂取量若しくは食物摂取量を減少させるか又はエネルギー消費量を増加させるのに十分な量である。
【0044】
本発明の第1の態様によれば、式(I)
【化2】
[式中、
Xaa2は、Pro及びGlyからなる群から選択され、
Xaa4は、Arg、His、Lys及びOrnからなる群から選択され、
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択され、
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択され、
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択され、
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択され、
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択され、
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択され、
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される]
で表されるアミノ酸配列を含むPYYの類似体、又はそれらの変形体及び/若しくは誘導体である化合物、或いはこのような変形体及び/又は誘導体の塩並びにこのような変形体及び/若しくは誘導体及び/又は塩の溶媒和物を包含する、それらの塩及び/又は溶媒和物であって、変形体が、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸が異なるアミノ酸で置き換えられているアミノ酸配列である、PYYの類似体が提供される。
【0045】
本発明のPYY類似体は、Xaa2がPro又はGlyである配列を含む。特定の実施形態によれば、Xaa2はProである。他の実施形態によれば、Xaa2はGlyである。
【0046】
特定の好ましい実施形態によれば、Xaa2はProである。
【0047】
本発明のPYY類似体は、Xaa4がArg、His、Lys及びOrnからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa4はHisである。他の実施形態において、Xaa4はLysである。
【0048】
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa6はHis、Ser及びGluからなる群から、又はHis、Ser、Glu及びValからなる群から、又はHis及びValからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa6はHisである。本発明の一部の実施形態において、Xaa6はValである。他の実施形態において、Xaa6はSer及びGluからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa6はSerである。他の実施形態において、Xaa6はGluである。
【0049】
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択される。好ましくは、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa16はGlnである。他の実施形態において、Xaa16はGluである。
【0050】
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa17はIleである。他の実施形態において、Xaa17はLeuである。
【0051】
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa18はAla、Asn及びValからなる群から選択される。より好ましくは、Xaa18はAsn及びValからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa18はAsnである。他の実施形態において、Xaa18はValである。
【0052】
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa19はArgである。他の実施形態において、Xaa19はHisである。
【0053】
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択される。好ましくは、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択される。より好ましくは、Xaa21はPhe及びTyrからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa21はPheである。他の実施形態において、Xaa21はTyrである。
【0054】
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択される。好ましくは、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa22はAlaである。他の実施形態において、Xaa22はIleである。
【0055】
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択される。好ましくは、Xaa25はArg及びHisからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa25はArgである。他の実施形態において、Xaa25はHisである。
【0056】
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される。好ましくは、Xaa30はHis、Lys及びLeuからなる群から選択される。より好ましくは、Xaa30はHis及びLysからなる群から選択される。本発明の一部の実施形態において、Xaa30はHisである。他の実施形態において、Xaa30はLysである。
【0057】
本発明のPYY類似体の1つの好ましい群において、Xaa2は、Proであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択される。
【0058】
PYY類似体の1つの好ましい群において、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa18はVal及びAsnからなる群から選択され、Xaa21はPhe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はIle及びAlaからなる群から選択される。他の位置の残基は、前記と同様であることができる。
【0059】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択される。
【0060】
本発明のPYY類似体の更なる好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAlaとIleからなる群から選択され、Xaa25はArgである。
【0061】
本発明のPYY類似体のなお更なる好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6は、Glu及びSerからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHis、Leu及びLysからなる群から選択される。
【0062】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6はGlu及びSerからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHis、Leu及びLysからなる群から選択される。
【0063】
本発明のPYY類似体の更に好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6はGlu及びSerからなる群から選択され、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態において、Xaa2はProであり、Xaa4はLysであり、Xaa6はGluであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はLeuであり、Xaa18はAsnであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はTyrであり、Xaa22はAlaであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0065】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0066】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHis及びLysからなる群から選択され、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0067】
本発明のPYY類似体の更に別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0068】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGln及びGluからなる群から選択され、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa30はHisである。
【0069】
本発明のPYY類似体の更に別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIle及びLeuからなる群から選択され、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0070】
本発明のPYY類似体のなお更なる好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0071】
本発明のPYY類似体の別の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa18はValであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はHis、Phe及びTyrからなる群から選択され、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0072】
本発明のPYY類似体の更に他の好ましい群において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa18はValであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はPheであり、Xaa22はAla及びIleからなる群から選択され、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態において、Xaa2はProであり、Xaa4はHisであり、Xaa6はHisであり、Xaa16はGluであり、Xaa17はIleであり、Xaa18はValであり、Xaa19はHisであり、Xaa21はPheであり、Xaa22はIleであり、Xaa25はArgであり、Xaa30はHisである。
【0074】
式(I)のPYY類似体としては、本明細書の実施例及び図中に具体的に記載したPYY類似体が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0075】
本発明による化合物は好ましくは、ヒトPYYよりも、食物摂取量の減少に対して持続的な効果があるか、又は食物摂取量の減少に強い効果がある。好ましくは、本発明による化合物は、食物摂取量の減少に対して効果があり、その効果は天然のヒトPYYと少なくとも同じ強さであるが、より持続する。食欲抑制の持続時間の増加は、「エスケープ」として知られている効果を回避するのに特に重要である可能性がある。持続時間の短い食欲抑制剤は、1回の食事によってカバーされる食欲又は時間を減少させることができ、その食事において、対象は典型的にはより少ない食物を摂取する。しかし、その場合に、食欲抑制剤が対象において代謝されるか、さもなければ対象の血液循環から除去されるならば、次の食事までに対象は、その「正常な」食欲を回復する可能性がある。対象が以前の食事時間で少量の食事を取っていることを考慮すると、対象は実際には、2回目の食事の際に食欲が増加している可能性がある。対象がその食欲を満たすならば、2回の食事にわたる合計食物摂取量は、食欲抑制剤を用いなかった場合の食物摂取量よりも少なくないこともあり得る。即ち、対象は、食欲抑制剤の作用から「エスケープ」した可能性がある。「エスケープ」は、追加用量の食欲抑制剤を用いることによって、又は作用持続時間がより長い食欲抑制剤を用いることによって、減少させることができる。対象の食欲がより長期間減少している場合には、個々の1回の食事の総容量には実際的な限界があるので、1回の食事の不足を次回の食事において補い得る程度が減少する。
【0076】
好ましくは、本発明の化合物は、Y2受容体に選択的である。即ち、本発明の化合物は、Y1、Y3、Y4、Y5及びY6などの他の受容体と比較して、Y2により高い親和性で結合する。これらの受容体は、結合親和性、薬理及び配列に基づいて認識されている。全てではないにしてもこれらの受容体のほとんどは、Gタンパク質結合型受容体である。Y1受容体は一般にシナプス後受容体であると考えられており、末梢でニューロペプチドYの既知の作用の多くを緩和する。最初は、この受容体は、ニューロペプチドYのC末端断片、例えば、13〜36断片に対する親和性が低いとされたが、全長ニューロペプチドY及びペプチドYYと等しい親和性で相互作用する(PCT公開公報WO93/09227を参照のこと)。
【0077】
薬理学的には、Y2受容体は、ニューロペプチドYのC末端断片に親和性を示すことによって、Y1と識別される。Y2受容体は、多くの場合、ニューロペプチドY(13〜36)の親和性によって差別化されるが、ニューロペプチドY及びペプチドYYの3〜36断片は改善された親和性と選択性を示す(Dumontら、Society for Neuroscience Abstracts 19:726,1993年を参照のこと)。Y1及びY2受容体の両方を介するシグナル伝達は、アデニル酸シクラーゼの阻害と共役している。Y2受容体との結合はまた、N型カルシウムチャネルの選択的阻害によって、シナプスにおけるカルシウムの細胞内レベルを減少させるともわかった。更に、Y2受容体は、Y1受容体と同様に、セカンドメッセンジャーに対して差次的な共役(differential coupling)を示す(米国特許第6,355,478号を参照)。Y2受容体は、海馬、黒質-外側、視床、視床下部及び脳幹を含む種々の脳領域で見られる。ヒト、マウス、サル及びラットのY2受容体は、クローン化されている(例えば、米国特許第6,420,352号及び米国特許第6,355,478号を参照のこと)。
【0078】
本発明によるPYYの類似体は好ましくは、溶液中で(即ち、例えば組織液又は血漿中に見られるような、生理的状態に近い溶液中で)総イオン電荷を有さない。インビボ条件下での正味電荷の欠如がそのインビボ溶解度を制限し、これが高濃度ペプチドの皮下投与後のより緩徐な吸収、したがって血液循環における長時間の存在の一因となると仮定される。
【0079】
本発明の好ましい一態様によれば、本発明によるPYY 3-36 NH2の類似体は、天然のPYY 3-36 NH2分子の4、6、19、21、25又は30位に相当するアミノ酸の少なくとも1つがヒスチジンと置換されている。より好ましくは、ヒスチジンに対する複数の置換が行われている。特定の実施形態によれば、天然PYY 3-36 NH2配列の4、6、19、21、25及び30位のアミノ酸残基のうちの2、3又は4個が、ヒスチジン残基と置換されている。好ましくは、特許請求される類似体の配列中の、結果として得られるヒスチジン残基の総数は、少なくとも2個である。
【0080】
更なる説明として、ヒスチジンは、pH7.4で(血液循環における生理的条件下で又は皮下投与後の皮下で)荷電しない点で独特なアミノ酸である。しかし、ヒスチジンのNH側鎖のpIは約6.0であるので、ヒスチジンはpH5(又はそれ以下)では完全に荷電する。特定の好ましい実施形態によれば、本発明によるPYYの類似体は、生理的pH(pH7.4)においては総電荷が低いか又はゼロであり、好ましくは、約pH5(例えば、pH4.5〜pH6.0-概ねpH4又は5より低いpHは、注射部位で疼痛を増す恐れがあるので、注射可能な組成物には望ましくないと考えられる)のpHを有する組成物の一部として製剤化して、このような比較的低いpHでヒスチジンイオン化を示すように、好ましくは総正味電荷を示すようにする。荷電残基数の増加により、注射可能な組成物のバイアル中での溶解度が増加し、したがって、比較的高濃度のペプチド溶液の小容量の注射が可能となる。しかし、皮下注射後に、この類似体は生理的pHに曝露され、そのpHではイオン化残基数、特にイオン化ヒスチジン残基数が減少し、したがって、溶解度が低下する。これにより、ペプチドが皮下に析出する。His残基の存在は、この効果を増強する。
【0081】
特定の好ましい実施形態によれば、本発明によるPYY類似体は、以下の好ましい特徴の組み合わせを有する。
1)pH7.4では正味電荷を有さず、且つ全体的に比較的少ない荷電基及び親水性基を有することによって固有溶解度を低下し得る、ペプチド配列。
2)投与前の貯蔵のためにpH5で正味正電荷及び良い溶解度を生じ、且つ低粘度投与溶液(pH5)を可能にする、多くのヒスチジンの存在。
3)pH5でなくpH7.4において低容量及び溶解度定数を上回る高濃度の皮下投与に適すること。
【0082】
ヒスチジンが、このような差次的なpH依存性溶解度効果を引き起こすのに特に有利なアミノ酸残基であることに加えて、亜鉛イオンと共に製剤化されるならば、ヒスチジン残基を含有するペプチドの差次的な溶解度は大幅に向上する。これは、亜鉛イオンが水溶液中で非荷電ヒスチジン残基と結合するためである。亜鉛イオンは同時に最高4つの非荷電ヒスチジンと結合できると考えられる。これにより、亜鉛はいくつかの個々ペプチド分子中のヒスチジン残基と配位し、それによってペプチド分子を他の類似のペプチド分子に弱く架橋させて、溶解度を低下させることができる。しかし、亜鉛イオンは、荷電ヒスチジンとは結合しない。したがって、亜鉛イオンを含有する組成物中のヒスチジン含有ペプチドは、pH7.4では弱いイオン結合によって架橋結合されるが、pH5.0では架橋されない。したがって、亜鉛イオンに結合しているHis残基の存在は、皮下注射後のペプチドの析出を増大するが、投与前のバイアル又は注射器中での溶解度には影響を及ぼさない。これは、総pIが約7であるペプチドは、ほぼ中性のpHでは荷電残基を有さず、亜鉛イオンを含む製剤中の、ヒスチジン残基を含むペプチドは、バイアル又は注射器中で有利に可溶性であるが、投与後に皮下に析出することを意味する。したがって、亜鉛イオンを含む製剤中における、ヒスチジンを有するpH7の中性ペプチドは、バイアル及び注射器中で有利に可溶性であるが、投与後に皮下に析出する。更にまた、亜鉛イオンが注射部位から徐々に洗い流されるにつれて、注射後の亜鉛イオンの濃度は減少するので、亜鉛によって増大された析出は徐々に可逆的となる。したがって、薬物動態がはるかに良好であるがバイオアベイラビリティの減少のない皮下吸収の遅延が観察される。所定のヒスチジン含有中性ペプチドの吸収速度は、亜鉛の添加量によって制御できる。
【0083】
少なくとも1つの追加のヒスチジン残基の導入により、好ましくは、1〜3つの介在アミノ酸残基によって互いに離間されている2つのヒスチジン残基(1対のヒスチジン残基)が少なくとも1箇所存在する本発明のPYY類似体が得られる。このような離間は、単一の亜鉛残基が、水溶液中で1対のヒスチジン残基の両方と会合するのに最適であると思われる。本発明の有利な一実施形態において、天然のPYY 3-36 NH2配列の4位及び6位の両方のアミノ酸が、ヒスチジン残基と置換されている。この実施形態において、1対のヒスチジン残基の両方が人工的に導入され、2つのヒスチジン残基間に1つの介在アミノ酸残基が存在する。本発明の別の有利な実施形態において、天然のPYY 3-36 N2配列の30位のアミノ酸は、ヒスチジン残基と置換されている。この実施形態において、1対のヒスチジン残基の一方(26位)は天然に存在し、1対のヒスチジン残基の他方(30位)は人工的に導入されている。
【0084】
本発明による類似体は、総pIが好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは7.0〜8.0、より好ましくは7.1〜7.7、より好ましくは7.2〜7.6である。より好ましくは、この類似体は約7.4の総pIを有する。これは、生理的pHでは、この類似体が大きい総電荷を有さないことを意味する。分子の総pIは、当業者に周知の技術を用いて算出できるか、又は別法として、等電点電気泳動を用いて実験的に決定できる。
【0085】
この効果を十分に利用するためには、以下の特徴の組み合わせが特に好ましいことを、本発明者らは発見した。
1)pH7.4において、固有溶解度を低下させるために正味電荷がゼロであり且つ荷電基及び親水性基が比較的少ないペプチド配列。
2)投与前の貯蔵のため及びpH5の低粘度投与溶液を実現するための、pH5において正味正電荷及び良好な溶解度を生じる複数のヒスチジンの存在。
3)pH7.4においては溶解度定数を超えるがpH5においては超えない、低容量で高濃度の皮下投与のための溶解度。
4)pH7.4において非荷電のヒスチジン残基と隣接分子とを架橋させるが、投与前pH又は約pH5においては荷電ヒスチジンを架橋しない亜鉛イオンの存在。
【0086】
変形体:
変形体は、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸(例えば、0、1又は2つ)が、本発明の分子中に存在する場合に対応非変形体分子の活性の少なくとも一部を保持する種々のアミノ酸で置き換えられている(例えば、保存的置換及び非保存的置換;例えば、下記Table 2(表2)を参照)式(I)によって表されるアミノ酸配列を含む本発明のPYY類似体を含む。
【0087】
典型的には、保存的置換は、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの間での相互の置き換え;ヒドロキシ残基を含有するSer及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基AsnとGlnとの交換、塩基性残基Lys及びArgの交換、芳香族残基Phe及びTyrの交換並びに小型アミノ酸Ala、Ser、Thr、Met及びGlyの交換である。表現型的にサイレントなアミノ酸置換、即ち、発現された表現型を変化させない置換を行う方法に関する手引きは、Bowieら、Science 247:1306〜1310頁、1990年に示されている。
【0088】
【表2】
【0089】
変形体としては、Xaa2、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸(例えば、0、1又は2つ)が、ヒト以外の種に由来するPYY中の同等の位置に存在するアミノ酸で置き換えられているPYY類似体を更に挙げることができる。種々の種のPYYの配列は、前記Table 1(表1)に列挙してある。
【0090】
誘導体
本発明の化合物は、アミド化、グリコシル化、カルバミル化、アシル化、例えばアセチル化、硫酸化、リン酸化、環化、脂質化及びペグ化を含む周知の方法によって修飾された式(I)の構造を含むことができる。式(I)の構造は、分子内のランダムな位置で又は分子内の所定の位置で修飾でき、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の結合された化学的部分を含んでいてもよい。
【0091】
本発明の化合物は、式(I)の構造が、当業界で知られている組換え法を用いて別のタンパク質又はポリペプチド(融合パートナー)に融合されている、融合タンパク質であってもよい。或いは、このような融合タンパク質は、任意の既知の方法によって合成的に合成することもできる。このような融合タンパク質は、式(I)の構造を含む。融合パートナーとしては、任意の適当なペプチド又はタンパク質(例えば、血清アルブミン、炭酸脱水酵素、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ又はチオレドキシンなど)を使用できる。好ましい融合パートナーは、インビボで有害な生物活性を有さない。このような融合タンパク質は、融合パートナーのカルボキシ末端を式(I)の構造のアミノ末端に連結することによって又はその逆によって作製できる。任意選択で、切断可能なリンカーを、式(I)の構造を融合パートナーに連結するのに使用できる。結果として生じる切断可能な融合タンパク質は、本発明の化合物の活性型が放出されるように、インビボで切断されることもできる。このような切断可能なリンカーの例としては、リンカーD-D-D-D-Y[配列番号44]、G-P-R、A-G-G及びH-P-F-H-L[配列番号45]が挙げられるが、これらに限定するものではなく、それらはそれぞれ、エンテロキナーゼ、トロンビン、ユビキチン切断酵素及びレニンによって切断され得る。例えば、米国特許第6,410,707号参照。
【0092】
本発明の化合物は、式(I)の構造の生理学的機能性誘導体であることができる。本明細書中において、用語「生理学的機能性誘導体」とは、式(I)の非修飾化合物と同じ生理学的機能を有する、対応する、式(I)の化合物の化学誘導体を意味するのに用いる。例えば、生理学的機能性誘導体は、体内で式(I)の化合物に変換可能であることができる。本発明によれば、生理学的機能性誘導体の例としては、エステル、アミド及びカルバミン酸塩、好ましくはエステル及びアミドが挙げられる。
【0093】
本発明の化合物の医薬として許容されるエステル及びとアミドは、C1〜20アルキル-、C2〜20アルケニル-、C5〜10アリール-、C5〜10アル-C1〜20アルキル-、又は適当な箇所で、例えば酸基において結合しているアミノ酸-エステル若しくは-アミドを含むことができる。適当な部分の例は、炭素原子4〜26個、好ましくは5〜19個の疎水性置換基である。適当な脂質基としては、以下:ラウロイル基(C12H23)、パルミチル基(C15H31)、オレイル基(C15H29)、ステアリル基(C17H35)、コール酸基及びデオキシコール酸基が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0094】
脂肪族酸誘導体によるスルフヒドリル含有化合物の脂質化方法は、米国特許第5,936,092号、米国特許第6,093,692号及び米国特許第6,225,445号に開示されている。本発明の化合物がジスルフィド連結部(disulfide linkage)を介して脂肪酸に連結されている本発明の化合物の脂肪族酸誘導体は、ニューロン細胞及び組織への本発明の化合物の送達に使用できる。脂質化は、対応する非脂質化化合物の吸収速度を基準とする化合物の吸収を著しく増加し、化合物の血液滞留及び組織滞留を延長する。更に、脂質化誘導体中のジスルフィド連結部は、細胞中で比較的不安定であり、したがって、脂肪族酸部分からの分子の細胞内放出を容易にする。適当な脂質含有部分は、炭素原子4〜26個、好ましくは5〜19個の疎水性置換基である。適当な脂質基といては、以下:パルミチル基(C15H31)、オレイル基(C15H29)、ステアリル基(C17H35)、コール酸基及びデオキシコール酸基が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0095】
環化方法は、ジスルフィド架橋の形成による環化及び環化樹脂を用いる頭-尾環化を含む。
環化ペプチドは、それらの構造制約の結果として、向上した安定性、例えば、酵素分解に対する増大した抵抗性を有し得る。環化は特に、非環化ペプチドがN末端システイン基を含む場合に好都合であると考えられる。適当な環化ペプチドは、モノマー及びダイマー頭-尾環化構造を含む。環化ペプチドは、1つ又は複数の追加残基、特に、ジスルフィド結合(disulfide bond)の形成のために組み込まれる追加システイン、又は樹脂ベースの環化の目的で組み込まれる側鎖を含み得る。
【0096】
本発明の化合物は、式(I)のペグ化構造であってもよい。本発明のペグ化化合物は、更なる利点、例えば、ポリペプチドの溶解度、安定性及び循環時間の増加又は免疫原性の低下をもたらすことができる(米国特許第4,179,337号を参照)。
【0097】
本発明の化合物の誘導体化のための化学部分はまた、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどから選択し得る。本発明の化合物の誘導体化のためのポリマー部分は、任意の分子量であってもよく、また、分岐鎖であっても非分岐鎖であってもよい。取扱い及び製造を容易にするために、本発明の化合物の誘導体化のためのポリエチレングリコールの好ましい分子量は、約1〜約100kDaであり、この用語「約」は、ポリエチレングリコールの調製において、一部の分子が記載した分子量よりも大きく、一部の分子が記載した分子量よりも小さいことを示している。望ましい治療プロファイル、例えば、要求される持続放出の持続時間、もしあれば生物活性に対する効果、取扱い易さ、抗原性の程度又は欠如、及び治療用タンパク質又は類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の効果によっては、他の分子量のポリマーも使用できる。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000又は100,000kDaの平均分子量を有し得る。
【0098】
医薬品への使用に適当な本発明の化合物の塩及び溶媒和物は、対イオン又は会合溶媒が医薬として許容されるものである。しかし、例えば、式(I)の化合物及びそれらの医薬として許容される塩又は溶媒和物の調製に中間体として使用するための、非医薬として許容される対イオン又は会合溶媒を有する塩及び溶媒和物は、本発明の範囲内である。
【0099】
本発明による適当な塩には、有機又は無機の酸又は塩基を用いて形成されるものがある。医薬として許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びイセチオン酸を用いて形成されるものが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体は医薬として許容されないが、本発明の化合物及びそれらの医薬として許容される塩を得る際に中間体として有用であり得る。塩基との医薬として許容される塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、カリウム塩及びナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びに有機塩基、例えば、ジシクロヘキシルアミン及びN-メチル-D-グルコサミンとの塩が挙げられる。
【0100】
有機化学分野の当業者ならば、多くの有機化合物が、それらを反応させる溶媒又それらを析出若しくは結晶化させる溶媒と複合体を形成することがあることがわかるであろう。このような複合体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られている。本発明は、本発明の化合物の溶媒和物を提供する。
【0101】
条件:
本発明は、式(I)の化合物を、医薬として許容される担体及び任意選択で他の治療成分と共に含む医薬組成物と、関連する方法とを提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は注射器又はヒトへの皮下投与のための他の投与装置中に存在する。
【0102】
本発明は更に、医薬品として使用するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0103】
本発明はまた、肥満又は糖尿病の治療に使用するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物、或いは式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明は更に、対象の食欲の減少に使用するための、対象の食物摂取量の減少に使用するための、又は対象のカロリー摂取量の減少に使用するための、式(I)の化合物又は式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0104】
本発明は更に、代謝障害、例えば、エネルギー代謝障害、例えば、肥満若しくは糖尿病、前糖尿病又は耐糖能障害を治療するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。本発明はまた、対象の食欲の減少のための、対象の食物摂取量の減少のための、又は対象のカロリー摂取量の減少のための医薬品を製造するための、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0105】
本発明は更に、代謝障害、例えば、エネルギー代謝障害、例えば、肥満若しくは糖尿病、前糖尿病又は耐糖能障害の治療を必要としている対象に、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物又は式(I)の化合物を含む医薬組成物の有効量を投与する工程を含む、代謝障害の治療方法を提供する。本発明はまた、対象に式(I)の化合物又は式(I)の化合物を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、対象の食欲を減少させるか、対象の食物摂取量を減少させるか、又は対象のカロリー摂取量を減少させる方法を提供する。
【0106】
一部の実施形態において、化合物は非経口的に投与する。一部の実施形態において、化合物は皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経皮投与又は舌下投与する。
【0107】
化合物を投与する対象は、過体重、例えば、肥満であってもよい。或いは又は更に、対象は、例えばインスリン抵抗性若しくはグルコース不耐性又は両者を有する糖尿病患者であってもよい。対象は、真性糖尿病を患っていてもよく、例えば、対象は2型糖尿病を患っていてもよい。対象は、過体重、例えば、肥満であって、しかも真性糖尿病、例えば、2型糖尿病を患っていてもよい。
【0108】
更に又は或いは、対象は、肥満若しくは過体重がリスク因子である障害を有してもよいし、又はそのような障害のリスクがあってもよい。このような障害としては、心血管疾患、例えば、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全及び脂質異常症;脳卒中;胆嚢疾患;変形性関節症;睡眠時無呼吸;生殖障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群;癌、例えば、乳癌、前立腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌及び食道癌;静脈瘤;黒色表皮腫;湿疹;運動不耐性;インスリン抵抗性;高血圧症;高コレステロール血症;胆石症;変形性関節症;整形外科的外傷;インスリン抵抗性、例えば、2型糖尿病及びシンドロームX(内臓脂肪症候群);並びに血栓塞栓性疾患が挙げられるが、これに限定されるものではない(Kopelman、Nature 404:635〜43、2000年;Rissanenら、British Med. J. 301、835、1990年を参照のこと)。
【0109】
肥満と関連する他の障害としては、うつ病、不安症、パニック発作、片頭痛、PMS(月経前症候群)、慢性疼痛状態、線維筋痛、不眠症、衝動性、強迫性障害とミオクローヌスが挙げられる。更にまた、肥満は、全身麻酔の合併症の発生率増加について認識されているリスク因子である(例えば、Kopelman、Nature 404:635〜43頁、2000年参照のこと)。一般に、肥満は寿命を短縮し、前述のような共存症の重大なリスクを伴う。
【0110】
肥満と関連する他の疾患又は障害は、先天性欠損症、神経管欠損症の発生率の増加と関連する母体肥満、手根管圧迫症候群(CTS);慢性静脈不全(CVI);日中の眠気;深在静脈血栓症(DVT);末期腎疾患(ESRD);痛風;熱中症;免疫応答障害;呼吸機能障害;不妊症;肝疾患;腰痛;産婦人科合併症;膵臓炎;並びに腹部ヘルニア;黒色表皮腫;内分泌異常;慢性低酸素血症及び慢性高炭酸ガス血症;皮膚科学的影響;象皮病;胃食道逆流症;踵骨棘;下肢浮腫;ブラストラップ痛、皮膚損傷、頸部痛、慢性臭、及び乳房下の皮膚のひだの感染などの相当な問題を起こすマンメガリー(mammegaly);大きな前腹壁腫瘤、例えば、歩行を妨げ、頻繁な感染症、臭気、衣服の問題、腰痛を引き起こす、頻繁な皮下脂肪組織炎を伴う腹部皮下脂肪組織炎;筋骨格疾患;偽性脳腫瘍(又は良性頭蓋内圧亢進症)及び滑脱裂孔ヘルニアである。
【0111】
本発明は更に、対象のエネルギー消費量を増加させる方法を提供する。この方法は、例えば、対象に本発明の化合物の治療有効量を末梢投与し、それによってエネルギー消費量を変化させることを含む。エネルギーは、全ての生理的プロセスにおいて燃焼される。それらのプロセスの効率を調整するか、又は起こっているプロセスの数及び性質を変化させることによって、体はエネルギー消費率を直接変えることができる。例えば、消化の間に、体はエネルギーを消費して、腸を通して食物を移動させ、食物を消化し、細胞内で、程度の差はあるが熱を産生するように、細胞代謝の効率を変化させることができる。
【0112】
一態様において、本発明の方法は、食物摂取量を協調的に変化させ且つエネルギー消費量を相反的に変化させる弓形回路網の操作を伴う。エネルギー消費量は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率及びカロリー利用率の結果である。したがって、本発明のこの態様において、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物の投与は、エネルギー消費量を増加させ、カロリー利用効率を低下させる。
【0113】
本発明はまた、対象の脂質プロファイルを改善する方法を提供する。本発明はまた、栄養素利用性を低下させることによって軽減できる状態又は障害を軽減する方法を提供する。
【0114】
食欲は、当業者に知られている任意の手段によって測定できる。例えば、食欲の減少は、心理学的アセスメントによって評価できる。例えば、本発明の化合物の投与は、知覚される空腹、満腹及び/又は膨満を変化させる。空腹は、当業者に知られている任意の手段によって評価できる。例えば、空腹は、心理的アッセイを使用して、例えば、視覚的アナログスコア(Visual Analog Score)(VAS)質問票(これに限定するものではないが)などの質問票を用いる空腹感及び感覚認知の評価によって評価する。特定の非限定的な一例において、空腹は、飲食物に対する欲求、予想される食物消費量、嘔気、及び嗅覚又は味覚に関する認知に関して質問に答えることによって評価する。
【0115】
本発明の化合物は、体重管理及び肥満の治療、例えば、減少又は予防に、特に以下:体重増加の予防及び減少;体重減少の誘発及び促進;並びにボディーマスインデックスによって測定される肥満の減少の任意の1つ又は複数に使用できる。本発明の化合物は、食欲、満腹及び空腹のうち任意の1つ又は複数、特に以下:食欲の減少、抑制及び阻害;満腹及び満腹感の誘発、増加、増強及び促進;並びに空腹及び空腹感の減少、阻害及び抑制の任意の1つ又は複数の制御に使用できる。本発明の化合物は、望ましい体重、望ましいボディーマスインデックス、望ましい容姿及び良好な健康状態のうち任意の1つ又は複数の維持に使用できる。
【0116】
対象は、体重減少を望む対象、例えば、容姿の変化を望む男女の対象であることができる。対象は、空腹感の減少を望んでいる者であってもよく、例えば、対象は、高レベルの集中を必要とする長期にわたる任務に従事している者、例えば、戦地に待機している軍人、航空交通管制官又は長距離ルートのトラック運転手などであってもよい。
【0117】
本発明はまた、比較的高い栄養素利用性によって引き起こされるか、複雑化するか又は悪化する状態又は障害の治療、予防、寛解又は緩和に使用できる。本明細書中で、「カロリー(栄養素)利用性の減少によって緩和され得る状態又は障害」という表現は、比較的高い栄養素利用性によって引き起こされるか、複雑化するか若しくは悪化する患者の任意の状態若しくは障害、又は栄養素利用性の減少によって、例えば、食物摂取量の減少によって緩和できる患者の任意の状態若しくは障害を意味するのに使用する。インスリン抵抗性であるか、グルコース不耐性であるか、又は任意の型の真性糖尿病、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病若しくは妊娠性糖尿病を患っている対象もまた、本発明による方法から利益を享受できる。
【0118】
カロリー摂取量の増加と関連する状態又は障害としては、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、2型糖尿病を含む糖尿病、摂食障害、インスリン抵抗性症候群及びアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0119】
本発明によれば、式(I)の化合物又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物は、好ましくはヒトの治療に使用する。しかし、本発明の化合物は典型的には、ヒト対象の治療に使用するが、他の脊椎動物、例えば、他の霊長類;家畜、例えば、ブタ、牛及び家禽;競技動物、例えば、ウマ;コンパニオンアニマル、例えば、イヌとネコにおける類似又は同一の状態の治療にも使用できる。
【0120】
組成物
有効成分は単独で投与できるが、医薬製剤又は組成物中に存在するのが好ましい。したがって、本発明は、上記に定義した、式(I)の化合物、又はその変形体若しくは誘導体、又はそれらの塩若しくは溶媒和物及び医薬として許容される賦形剤を含む医薬製剤を提供する。本発明の医薬組成物は、下記の医薬製剤の形態をとることができる。
【0121】
本発明による医薬製剤は、経口投与、非経口投与(皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与及び関節内投与を包含する)、吸入投与(種々の型の定量加圧エアゾール、ネブライザー又は注入器によって発生させることができる微粒子ダスト又はミストを包含する)、直腸投与及び局所投与(皮膚投与、経皮投与、経粘膜投与、頬側投与、舌下投与及び眼内投与を包含する)に適当なものを包含するが、最も適当な投与経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害によって異なり得る。
【0122】
製剤は好都合には単位投与形態で提供でき、薬剤学の分野で周知の任意の方法で調製できる。方法は全て、有効成分を、1種又は複数の補助成分を構成する担体との関連させる工程を含む。一般に、製剤は、均一且つ十分に、有効成分と液体担体若しくは微細固体担体又は両者とを関連させ、次いで必要ならば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製する。
【0123】
経口投与に適当な本発明の製剤は、個別単位として、例えば、所定量の有効成分をそれぞれ含有するカプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤として;散剤又は顆粒剤として;水性液体若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤として;又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として提供できる。有効成分はまた、ボーラス、舐剤又はペースト剤としても提供できる。種々の医薬として許容される担体及びそれらの製剤が、標準的な薬剤処方の専門書、例えば、E. W. Martin著、Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。Wang, Y. J.及びHanson, M. A.、Journal of Parenteral Science and Technology、Technical Report No.10, Supp. 42:2S(1988年)も参照のこと。
【0124】
錠剤は、圧縮又は成形によって、任意選択で1種又は複数の補助成分を用いて製造できる。圧縮錠は、粉末又は顆粒などのさらさらした形態の有効成分を、任意選択で結合剤、滑剤、不活性希釈剤、滑沢剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、圧縮することによって調製できる。湿製錠は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適当な機械中で成形することによって製造できる。錠剤は任意選択でコーティングするか又は刻み目を付けてもよく、有効成分の緩徐な放出又は制御放出をもたらすように、製剤化できる。本化合物は、例えば、即時放出又は長期放出(extended release)に適当な形態で投与できる。即時放出又は長期放出は、本化合物を含む適当な医薬組成物を用いて、又は特に長期放出の場合には、皮下インプラント又は浸透圧ポンプなどの装置を用いて、達成できる。本化合物は、リポソームとして投与することもできる。
【0125】
好ましくは、本発明による組成物は、例えば注射による、皮下投与に適当である。特定の実施形態によれば、組成物は、金属イオン、例えば、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、ニッケル又はコバルトイオンを含有していてもよい。このようなイオンの存在は、溶解度を制限でき、したがって皮下投与部位から、循環系への吸込を遅延できる。特に好ましい実施形態において、組成物は亜鉛イオンを含有する。亜鉛イオンは、任意の適当な濃度で、例えば、ペプチド分子に対するモル比10:1〜1:10、8:1〜1:8、5:1〜1:5、4:1〜1:4、3:1〜1:3、2:1〜1:2又は1:1で存在できる。
【0126】
経口投与のための例示的な組成物には、例えば、嵩を与えるための微結晶セルロース、沈殿防止剤としてのアルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、粘度増強剤としてのメチルセルロース及び甘味剤又は矯味矯臭剤、例えば、当業界で知られているものを含有し得る懸濁剤;並びに、例えば、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウム及び/若しくはラクトース並びに/又は他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤及び滑剤、例えば、当業界で知られているものを含有し得る即時放出錠剤が含まれる。式(I)の化合物、又はその変形体、誘導体、塩若しくは溶媒和物はまた、舌下投与及び/又は頬側投与によって口腔を介して送達してもよい。湿製錠、圧縮錠又は冷凍乾燥錠は、使用し得る例示的な形態である。例示的な組成物には、本化合物をマンニトール、ラクトース、スクロース及び/又はシクロデクストリンなどの速溶性希釈剤と共に配合しているものが含まれる。このような製剤はまた、セルロース(Avicel)又はポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量賦形剤を含んでいてもよい。このような製剤はまた、粘膜への粘着を補助する賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えば、Gantrez)、及び放出を制御する作用剤、例えば、ポリアクリルコポリマー(例えば、Carbopol 934)を含み得る。滑剤、流動促進剤、矯味矯臭剤、着色剤及び安定剤もまた、作製及び使用を容易にするために添加してもよい。
【0127】
非経口投与用の製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を所期のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性滅菌注射液;並びに沈殿防止剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁剤が含まれる。これらの製剤は、単位用量又は多用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアルに入れた状態で提供してもよく、また、使用直前に滅菌液体担体、例えば、注射用生理食塩水又は注射用蒸留水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で貯蔵してもよい。即時注射液及び懸濁剤は、前記の種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製できる。非経口投与用の例示的な組成物には、例えば、適当な無毒性の、非経口的に許容される希釈剤若しくは溶剤、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、又は他の適当な分散剤若しくは湿潤剤及び沈殿防止剤(例えば、合成モノグリセリド又はジグリセリド)及び脂肪酸(例えば、オレイン酸又はCremaphor)を含有し得る注射可能な液剤又は懸濁剤が含まれる。水性担体は、例えば、pH約3.0〜約8.0、好ましくは約3.5〜約7.4、例えば3.5〜6.0、例えば3.5〜約5.0の等張緩衝液であることができる。有用な緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム-クエン酸及びリン酸ナトリウム-リン酸及び酢酸ナトリウム/酢酸緩衝剤が挙げられる。組成物は好ましくは、酸化剤並びにPYY及び関連分子に有害であることが知られている他の化合物を含まない。含まれ得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミン又は血漿製剤などの他のタンパク質である。所望ならば、医薬組成物はまた、少量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0128】
鼻内エアゾール又は吸入投与用の例示的な組成物には、例えば、ベンジルアルコール若しくは他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを向上させる吸収促進剤及び/又は他の溶解補助剤若しくは分散剤、例えば、当業界で知られているものを含有し得る生理食塩水中溶液が含まれる。好都合には、鼻内エアゾール又は吸入投与用の組成物において、本発明の化合物は、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当な気体を用いて、加圧パック又はネブライザーからエアゾール噴霧剤の形態で送達する。加圧エアゾールの場合には、投与単位は、定量を送達する弁を設けることによって決定できる。吸入器又は注入器に使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と適当な粉末基剤、例えば、ラクトース又は澱粉との粉末混合物を含有するように製剤化できる。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物は、アクチュエーターとしても知られるエアゾールアダプターによって定量弁からエアゾール剤として投与する。任意選択で、安定剤も含まれ、且つ/又は肺深部への送達のための多孔質粒子が含まれる(例えば、米国特許第6,447,743号を参照のこと)。
【0129】
直腸投与用の製剤は、カカオバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコールなどの通常の担体と共に停留浣腸剤又は坐剤として提供できる。このような担体は典型的には、常温では固体であるが、直腸腔内では液化及び/又は溶解して薬物を放出する。
【0130】
口内への局所投与用の製剤、例えば、頬側投与又は舌下投与用の製剤としては、スクロース及びアカシア又はトラガカントなどの香味をつけた基剤中に活性成分を含む口内錠、並びにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの基剤中に活性成分を含むパステル剤が挙げられる。局所投与用の例示的な組成物は、プラスチベース(ポリエチレンでゲル化された鉱油)などの局所用担体を含む。
【0131】
好ましい単位投与量製剤は、活性成分の前記有効用量、又はその適切な一部分を含有するものである。
【0132】
特に前述した成分に加えて、本発明の製剤は、当該製剤の型を考慮して、当業界で常用される他の作用剤を含んでいてもよく、例えば、経口投与に適当な製剤は矯味矯臭剤を含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0133】
本発明の化合物はまた、適当には持続放出系として投与する。本発明の持続放出系の適当な例には、造形品の形態の適当なポリマー材料、例えば、半透性ポリマーマトリックス、例えば、フィルム若しくはマイクロカプセル;例えば、許容される油中のエマルジョンとして適当な疎水性材料;又はイオン交換樹脂;及び本発明の化合物の難溶性誘導体、例えば、難溶性塩が含まれる。持続放出系は、経口投与、直腸内投与、非経口投与、大槽内投与、腟内投与、腹腔内投与、局所投与(例えば、粉剤、軟膏剤、ゲル剤、ドロップ剤若しくは経皮貼付剤として、又は口腔内噴霧剤若しくは鼻内噴霧剤として)が可能である。
【0134】
投与用の製剤は、本発明の化合物の制御放出をもたらすように、適当に製剤化できる。例えば、医薬組成物は、生分解性ポリマー、多糖類ジェル化及び/若しくは生体接着性ポリマー、両親媒性ポリマー、式(I)の化合物の粒子の界面特性を変更できる作用剤のうち1種又は複数を含む粒子の形態であることができる。これらの組成物は、活性物質の制御放出を可能にする特定の生体適合性を示す。米国特許第5,700,486号を参照のこと。
【0135】
本発明の化合物は、ポンプを介して(Langer、上記; Sefton、CRC Crit. Ref. Biomed Eng. 14:201、1987年; Buchwaldら、Surgery 88:507、1980年; Saudekら、N. Engl. J. Med. 321:574、1989年を参照のこと)又は連続的な皮下注入によって、例えばミニポンプを用いて、送達してもよい。静脈内バッグ溶液を使用してもよい。適当な用量を選択する主要因は、総体重若しくは体脂肪量対除脂肪体重の比の減少によって、或いは肥満の制御若しくは予防又は肥満関連状態の予防を測定するための、開業医によって適当とみなされる他の基準によって得られる結果である。他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249:1527〜1533頁、1990年)に記載されている。開示の別の態様において、本発明の化合物は、例えば、米国特許第6,436,091号;米国特許第5,939,380号;米国特許第5,993,414号に記載されている埋め込みポンプを介して送達する。
【0136】
植込み型薬注入装置は、患者に薬物又は任意の他の治療薬の一定の長期投与量又は注入を提供するのに使用される。基本的には、このような装置は、能動的又は受動的のいずれかとして分類し得る。本発明の化合物は、デポ製剤として製剤化してもよい。このような長時間作用するデポ製剤は、埋め込みによって、例えば、皮下若しくは筋肉内への埋め込みによって、又は筋肉内注射によって投与できる。したがって、例えば、化合物は、適当なポリマー若しくは疎水性材料と共に、例えば、許容される油中エマルジョンとして;又はイオン交換樹脂と共に;又は難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤化できる。
【0137】
本発明の化合物の治療有効量は、単一パルス用量として、ボーラス投与量として、又はある一定期間にわたって投与されるパルス用量として投与してもよい。したがって、パルス投与では、本発明の化合物をボーラス投与し、その後に対象に本発明の化合物を投与しない時間を設け、その後に2回目のボーラス投与を行う。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物のパルス用量は、1日の間に、1週間の間に又は1ヶ月の間に投与する。
【0138】
一実施形態において、本発明の化合物の治療有効量は、別の作用剤、例えば、追加の食欲抑制剤、食物摂取量を減少させる作用剤、血漿中グルコースを減少させる作用剤又は血漿中脂質を変化させる作用剤の治療有効量と共に投与する。追加の食欲抑制剤の特定の非限定的な例としては、アンフェプラモン(ジエチルプロピオン)、フェンテルミン、マジンドール及びフェニルプロパノールアミン、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、並びにフルオキセチンが挙げられる。本発明の化合物は、追加の食欲抑制剤と同時に投与してもよいし、又は連続的に投与してもよい。したがって、一実施形態において、本発明の化合物は、単一用量として食欲抑制剤と共に製剤化し、投与する。
【0139】
本発明の化合物は、効果、例えば、食欲抑制、食物摂取量の減少若しくはカロリー摂取量の減少が望まれる際にいつでも、又は効果が望まれるより少し前に、例えば、効果が望まれる時間の約10分前、約15分前、約30分前、約60分前、約90分前若しくは約120分前(これらに限定するものではないが)に投与できる。
【0140】
本発明の化合物の治療有効量は、使用される分子、治療を受けている対象、苦痛の重症度及び型、並びに投与方法及び投与経路によって決まる。例えば、本発明の化合物の治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重〜約1g/kg体重、例えば、約0.1μg/kg体重〜約20mg/kg体重、例えば、約1μg/kg体重〜約5mg/kg体重、又は約5μg/kg体重〜約1mg/kg体重であることができる。
【0141】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は対象に、5〜1000nmol/kg体重、例えば10〜750nmol/kg体重、例えば、20〜500nmol/kg体重、特に30〜240nmol/kg体重で投与できる。75kgの対象に対しては、このような用量は、375nmol〜75μmol、例えば、750nmol〜56.25μmol、例えば、1.5〜37.5μmol、特に2.25〜18μmolの投与量に相当する。
【0142】
代替的実施形態において、本発明の化合物は、対象に、0.5〜135ピコモル(pmol)/kg体重、例えば、5〜100pmol/kg体重、例えば、10〜90pmol体重、例えば、約72pmol/kg体重で投与できる。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物は、約1nmol以上、2nmol以上又は5nmol以上の用量で投与する。この例において、本発明の化合物の用量は、一般に100nmol以下、例えば、90nmol以下、80nmol以下、70nmol以下、60nmol以下、50nmol以下、40nmol以下、30nmol以下、20nmol以下、10nmolである。例えば、投与量範囲は、特定の下限用量のいずれかと特定の上限用量のいずれかとの任意の組み合わせを含むことができる。したがって、本発明の化合物の非限定的な用量範囲の例は、1〜100nmol、2〜90mol、5〜80nmolの範囲内である。
【0143】
特定の非限定的な一例において、約1〜約50nmol、例えば、2〜約20nmol、例えば、約10nmolの本発明の化合物を、皮下注射剤として投与する。正確な用量は、当業者によって、使用される特定の化合物、化合物の送達経路並びに対象の年齢、体重、性別及び生理的状態に基づいて容易に決定される。
【0144】
本発明の化合物の適当な用量はまた、カロリー摂取量、食物摂取量若しくは食欲の減少、又はカロリー摂取量、食物摂取量若しくは食欲の減少に相当するエネルギー消費量の増加をもたらす用量、或いはPYYの正常な食後レベルによってもたらされるエネルギー消費量を増加させる用量を含む。用量の例としては、PYYの血清レベルが約40〜約60pM、又は約40〜約45pM又は約43pMである場合に立証されている効果を生じる用量が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0145】
前記用量は、例えば、1日に1回、2回、3回与えることができる。或いは、それらは2日に1回、3日に1回又は4日に1回与えることもできる。亜鉛を含有する遅延放出(slow release)製剤では、1用量を、3、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21日に1回与えることも可能な場合がある。特定の実施形態によれば、それらは、各食事の摂取直前に1回投与することができる。
【0146】
本発明の特定の配列
本発明の特定の具体的な実施形態によれば、PYYの類似体は、図1に記載した特定の配列の1つで示されるアミノ酸配列を有する。
【0147】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって例示する。
【0148】
(実施例)
材料及び方法
動物
全てのマウス実験に、雄のC57BL/6マウス(Harlan)を使用した。全てのラット実験に、雄のWistarラット(Charles River)を使用した。
【0149】
ペプチド合成
ペプチドは、標準的な自動化フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固体相ペプチド合成(SPPS)法によって作製した。ペプチド合成は、三環式アミドリンカー樹脂上で行った。アミノ酸は、Fmocストラテジーを使用して結合させた。各アミノ酸は、C末端からN末端まで連続的に加えた。ペプチドカップリングは、試薬TBTUを介して行った。樹脂からのペプチド切断は、捕捉剤の存在下においてトリフルオロ酢酸を用いて達成した。天然のPYY 3-36 NH2は、前述のようにして入手し(WO03/026591);三環式アミド樹脂とFmoc化学反応を用いるデノボ合成も可能である。
【0150】
ペプチドは、逆相HPLCによって精製した。全ての精製ペプチドについて完全な品質管理を行い、ペプチドは、2つの緩衝剤系中でのHPLCによって純度が95%より高いことが示された。酸加水分解後のアミノ酸分析により、アミノ酸組成を確認した。MALDI-MSは、予想される分子イオンを示した。
【0151】
(実施例1)
結合試験
ヒトY2受容体を過剰発現するHEK 293細胞(NPYR200000、Missouri S&T cDNA Resource Centre)の膜標品を、Morganら(Morgan DG、Lambert PD、Smith DM、Wilding JPH及びBloom SRmJ. Reduced NPY induced feeding in diabetic but not steroid treated rats: lack of evidence for changes in receptor number or affinity. Neuroendocrinol 1996年、8 283〜290頁)によって記載されるようして、浸透圧溶解及び分画遠心法によって単離した。受容体結合アッセイは、Druceらによって記載されるようにして完了させた(Druce MR、Minnion JS、Field BC、Patel SR、Shillito JC、Tilby M、Beale KE、Murphy KG Ghatei MA & Bloom SR. Investigation of structure-activity relationships of oxyntomodulin (oxm) using oxm analogues. 2009年 Endocrinology 150(4) 712〜22頁)。但し、使用した緩衝剤が、0.02M HEPES pH7.4、5mM CaCl2、1mM MgCl2、1%ウシ血清アルブミン、0.1mMジブロチンA、0.2mM PMSF、10μMホスホラミドンであり、放射標識としての125I-PYY1-36及びヒトのY2受容体を使用した。
【0152】
マウスの急性摂食試験
マウスは1匹ずつ、IVCケージに収容した。動物は、体重による層別化によって治療群に無作為化した。マウスは、ペプチド又はビヒクルの投与前に一晩(16時間)絶食させた。ペプチド溶液は全て、投与直前に新しく調製した。全ての試験に使用したビヒクルは、水5容量%及び塩化ナトリウム(0.9%w/v)95容量%であった。体重に対して補正された投与量で、ペプチド及びビヒクルを皮下注射によって投与した。最大注射容量は、100μlであった。ビヒクル又はペプチドを09:00に投与し、動物を、既知量の食物を含むそれらのホームケージに戻した。食物摂取量は、注射後1、2、4、8及び24時間に測定した。全ての統計は、Dunnettポストテストに関して一元配置ANOVAを用いて、又はBonferroniのポストテストに関して一元配置ANOVAで計算する。
【0153】
結果
図1は、本発明(類似体番号1〜19)の例のPYY類似体のアミノ酸配列、結合実験の結果、及び本発明の化合物のマウスにおける食欲抑制剤効果をヒトPYY 3-36 NH2と比較した実験の結果を示している。第1列は類似体番号を含み、第2列は参照番号を含む。以降の列は、各例のPYY類似体のアミノ酸配列を示す。「結合比」と表題を付けた列は、ヒトPYY 3-36 NH2を基準とした各例のPYY類似体のヒトY2受容体への結合の強さを示す。1.0を超える値は、ヒトY2受容体への結合が、ヒトPYY 3-36 NH2によって示されるよりも強いことを示している。「食物摂取比」と表題を付けた列は、0〜24時間(ペプチドの投与から測定される時間)の期間における、各例のPYY類似体に関する、生理食塩水を基準とした食物摂取量の減少を示し、生理食塩水を投与した動物を基準とした、天然のヒトPYY 3-36 NH2を投与した動物によって示される食物摂取量の減少の比率として表している。1.0を超える値は、ヒトPYY 3-36 NH2で達成されるよりも良好な食物摂取量の減少を示す。
【0154】
(実施例2)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、PYY 3-36 NH2(50nmol/kg)若しくは配列:
【化3】
を有する類似体番号1(50nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。結果を、図2に示す。図2において、PYY 3-36 NH2の投与が、生理食塩水と比較して、食物摂取量を減少させることが示されている。しかし、類似体番号1は、PYY 3-36 NH2と比較して食物摂取量減少の増加を示している。
【0155】
(実施例3)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、配列:
【化4】
を有する類似体番号15(1000nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。結果を、図3に示す。図3において、類似体番号15の投与が、生理食塩水と比較して食物摂取量を著しく減少させることが示されている。
【0156】
(実施例4)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、配列:
【化5】
を有する類似体番号15(5000nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。結果を、図4に示す。図4において、類似体番号15の投与が、生理食塩水と比較して食物摂取量を著しく減少させることが示されている。
【0157】
(実施例5)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、PYY 3-36 NH2(50nmol/kg)若しくは配列:
【化6】
を有する類似体番号3(50nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。図5は、0〜1時間、1〜2時間、2〜4時間、4〜8時間及び8〜24時間の期間における食物摂取量を示し、生理食塩水を注射したマウスで観察される食物摂取量を基準とした増加百分率として示してある。図5からわかるように、PYY 3-36 NH2は約4時間までは食物摂取量を著しく減少させ、その後に食物摂取量は正常値に戻る。類似体番号3は、食物摂取量のより持続的な減少を示し、それは4〜8時間の時点で明らかである。
【0158】
(実施例6)
マウスへのPYY類似体の投与
マウスに、PYY 3-36 NH2(50nmol/kg)若しくは配列:
【化7】
を有する類似体番号2(50nmol/kg)又は生理食塩水を注射した。食物摂取量は、24時間にわたる時間間隔で測定した。図6は、0〜1時間、1〜2時間、2〜4時間、4〜8時間及び8〜24時間の期間における食物摂取量を示し、生理食塩水を注射したマウスで観察される食物摂取量を基準とした増加百分率として示してある。図6からわかるように、PYY 3-36 NH2は約4時間までは食物摂取量を著しく減少させ、その後に食物摂取量は正常値に戻る。類似体番号2は、食物摂取量のより持続的な減少を示し、それは4〜8時間の時点で明らかである。
【0159】
(実施例7a)
インビボでの薬物動態試験
材料及び方法
雄のWistarラットに、配列:
【化8】
を有する類似体番号15を皮下注射した。各注射は、総容量が20μl/ラットであり、濃度がペプチド10mg/ml又は20mg/ml及び亜鉛イオン(ZnCl2として)1個/ペプチド分子であった。
【0160】
ラットを断頭し、体幹血液を、2時間、4時間、8時間及び24時間(ペプチド10mg/ml)並びに10分、20分、1時間、3時間、8時間、24時間、32時間、48時間及び72時間(ペプチド20mg/ml)(n=2〜3/群)に採取した。血液は、基礎(内因性) PYYレベルを確認するためにペプチドを注射しなかった2匹のラットからも採取した。
【0161】
血漿ペプチドレベルを、一般的なPYY RIAによって、各場合に測定されているのと同様な類似体を標準として用いて測定した。
【0162】
結果
結果を、図7及び8に示す。内因性PYYの半減期がわずか数分であるにもかかわらず、類似体の循環レベルは、24時間(図7)及びその後の時点(図8)において依然として高かった。
【0163】
(実施例7b)
実施例7aと同様な実験を、類似体19、15、20、21、26、24、22、23及び26(配列については図1を参照のこと)に関して行った。1時間、3時間、6時間、1日、2日、4日及び7日の時点で、血液を採取し、分析した。
【0164】
結果
結果は、図28以降に示す。これらの結果は、内因性PYYの半減期がわずか数分であるにもにもかかわらず、類似体の循環レベルが数日間高いままであり得ることを示している。
【0165】
(実施例8)
ラットにおける摂食試験
1匹ずつ収容された雄のWistarラットに、PYY 3-36 NH2、配列:
【化9】
を有する類似体番号12又は生理食塩水を、25日間にわたって1日1回18:00pmに皮下注射した。各ペプチドは容量20μlで200nmol/kgの濃度で投与し、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)1つが存在する濃度とした。ラットは、食物及び水を自由に摂取できるようにした。ラットの数は、生理食塩水処理群で12匹とした以外は、各治療群7〜9匹とした。注射時に、食物摂取量及び体重を測定した。ラットは毎日、体重を測定した。平均体重の変化(g)(生理食塩水に対して補正)を、図9にプロットする。図9からわかるように、類似体番号12の連日投与によって約40g/ラットの体重減少が得られた。
【0166】
(実施例9)
肥満マウスにおける摂食試験
この試験の開始の13週間前に、C57BL/6マウスに高脂肪食(脂肪60kcal%)を与えることによって、食事誘発肥満(DIO)マウスを得た。この食事を、試験全体を通じて用いた。マウスは、IVCケージに収容した。試験の開始時に、マウスのコホートは、平均体重が34.8g(範囲28.3〜40.4g)であった。動物は、体重による層別化によって治療群(n=7〜8)に無作為化した。
【0167】
生理食塩水(0.9%w/v)、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)を1つ含むPYY 3-36 NH2(300nmol/kg)又は配列:
【化10】
を有する類似体番号15(300nmol/kg)を1日1回皮下注射した。注射容量は全治療群について10μlとし、51日間にわたって16:00にマウスに投薬した。マウスは、注射の60分後に摂食させ、翌日の07:30までは自由に摂食させ、07:30に食事を計量し、除去した。
【0168】
結果
マウスは毎日、体重を測定した。各治療群の平均体重を、図10にプロットする。図11は、生理食塩水群の平均体重の%として表した、平均体重の変化を示している。図からわかるように、PYY 3-36 NH2は、生理食塩水と比較して平均体重に持続効果を及ぼさなかった。これに対して、類似体番号15の投与では、生理食塩水群と比較して約5%の体重減少が達成された。
【0169】
図12は、本試験全体にわたって、各治療群の食物摂取量(g)で示している。図13は、生理食塩水群の累積食物摂取量(g)を基準として表した累積食物摂取量(g)を示している。図からわかるように、PYY 3-36 NH2は、生理食塩水と比較して累積食物摂取量に持続効果を及ぼさなかった。これに対して、類似体番号15の投与では、生理食塩水群と比較して食物摂取量の減少が達成された。
【0170】
(実施例10)
ラットにおける摂食試験
1匹ずつ収容された雄のWistarラットに、PYY 3-36 NH2、配列:
【化11】
を有する類似体番号12、配列:
【化12】
を有する類似体番号15、又は生理食塩水を、47日間にわたって毎日16:00pmに皮下注射した。各ペプチドは200nmol/kgの濃度で投与し、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)1つが存在する濃度とした。PYY 3-36 NH2及び類似体番号15は、1000nmol/kgの濃度でも投与し、ペプチド分子1分子当たり亜鉛イオン(ZnCl2として)1つが存在する濃度とした。各注射の総容量は20μl/ラットとした。ラットは、食物及び水を自由に摂取できるようにした。ラットの数は、生理食塩水処理群で12匹とした以外は、各治療群8匹とした。注射時に毎日、食物摂取量及び体重を測定した。
【0171】
結果
図14は、生理食塩水群の平均体重の%として表した、平均体重の変化を示している。PYY 3-36 NH2で観察される結果と対照的に、類似体番号12又は類似体番号15の投与では、生理食塩水群と比較して平均体重が減少した。
【0172】
(実施例11)
インビトロでのペプチド析出試験
材料及び方法
以下の配列:
類似体番号2:
【化13】
類似体番号3:
【化14】
類似体番号11:
【化15】
類似体番号12:
【化16】
類似体番号13:
【化17】
類似体番号14:
【化18】
類似体番号16:
【化19】
を有するヒトPYYのペプチド類似体を入手した。ペプチドは、ペプチド分子に対する亜鉛イオンの分子比が2:1、10:1又は50:1となるような種々の濃度で亜鉛イオンが存在するpH4.5のZnCl2溶液中に、1mg/mlの濃度で溶解させた。溶解後、全てのペプチド溶液のpHは、全ての場合にpH3.8未満であることが観察された。ウシ血清アルブミン(BSA)は、結果に「BSAなし」とラベル表示した溶液を除いて、全ての溶液に0.5%w/vの濃度で加えた。ペプチド及びBSAは共に、全ての場合に完全に溶解できることが観察された。ペプチドを析出させるために、全ての試料に0.2M NaOHを加えた。析出物を、遠心分離によってペレット化させた。析出物を、各回、pH7.4の新しい生理食塩水+0.5%v/w BSAを用いて、更に複数回(典型的には更に5回、又は析出物が完全に溶解するまで)洗浄した。洗浄は1時間間隔で行い、洗浄と洗浄の間の1時間は、サンプルを振盪トレイ上で37℃に保持した。これらの反復洗浄後、いかなる残留析出物も、pH4.5で生理食塩水中に再懸濁させて、完全に再溶解させた。各洗浄液及び最終再懸濁溶液中に存在する析出物の量を、ラジオイムノアッセイを使用してアッセイした。
【0173】
結果
各実験について、最初の析出の上清中のペプチドの量(即ち、析出しなかったペプチド)、以後の各洗浄液中のペプチドの量、及びいかなる最終残留析出物も再懸濁させることによって得られた溶液中のペプチドの量を、図15〜26のぞれぞれに、存在する総ペプチドの百分率として示す。各グラフ中の第1のカラムは、「1」とラベル表示し、第1の析出の上清中に存在するペプチドの割合(即ち、最初の高いpHで析出しなかったペプチドの割合)を表す。以降のカラムは、連続したpH7.4での各洗浄において再可溶化されたペプチドの割合を表す。各グラフの最終カラムは、実験中にpH7.4での洗浄の間に再可溶化されなかったが最終のpH4.5の工程で再可溶化されたペプチドの割合を表す。
【0174】
結果は、ペプチドは低いpHで溶解できるが、pHを上昇させると、かなりの割合のペプチドが溶液から析出することを実証している。析出は、亜鉛イオンの存在によっては少なくとも部分的に依存する。これは、析出物を新しい、亜鉛を含まない生理食塩水で洗浄する場合には亜鉛イオンが析出物から洗い落とされ、ペプチドが一定の期間の間に再可溶化されるが、これが最初の製剤に加えられた亜鉛の濃度によって左右される可能性があるためである。
【0175】
(実施例12)
Zn2+の有無の比較
材料及び方法
亜鉛(ZnCl2として)を10:1のZn2+:ペプチド分子比で含有する組成物及び亜鉛を含有しない組成物中の1mg/mlの皮下用ヒトPYY 3-36 NH2をラットに注射するように、実施例7の方法を適合させた。血漿ペプチドを、5、10、15、30、45及び60分に測定した。
【0176】
結果
図27で示されるように、亜鉛を含有する組成物は、亜鉛を含有しない組成物の場合(約10〜15分にピーク)よりも遅い、約30分に血漿PYY 3-36 NH2のピークをもたらした(即ち、より遅延放出性であった)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
Xaa2は、Pro及びGlyからなる群から選択され、
Xaa4は、Arg、His、Lys及びOrnからなる群から選択され、
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択され、
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択され、
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択され、
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択され、
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択され、
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択され、
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される]
で表されるアミノ酸配列を含むPYYの類似体、又はそれらの変形体及び/若しくは誘導体である化合物、或いはこのような変形体及び/又は誘導体の塩並びにこのような変形体及び/若しくは誘導体及び/又は塩の溶媒和物を包含する、それらの塩及び/又は溶媒和物であって、変形体が、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸が異なるアミノ酸で置き換えられているアミノ酸配列である、PYYの類似体。
【請求項2】
Xaa16がGluである、請求項1に記載のPYYの類似体。
【請求項3】
Xaa25がArgである、請求項2に記載のPYYの類似体。
【請求項4】
Xaa2がProであり、
Xaa4がLysであり、
Xaa6が、Glu及びSerからなる群から選択され、
Xaa17がLeuであり、
Xaa18がAsnであり、
Xaa21がTyrであり、
Xaa22がAlaであり、
Xaa30がHis、Leu及びLysからなる群から選択される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項5】
Xaa2がProであり、
Xaa4がHisであり、
Xaa6がHisであり、
Xaa17がLeuであり、
Xaa18がAsnであり、
Xaa21がTyrであり、
Xaa22がAlaであり、
Xaa30がHisである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項6】
Xaa19がHisである、請求項4又は5に記載のPYYの類似体。
【請求項7】
Xaa30がHisである、請求項6に記載のPYYの類似体。
【請求項8】
Xaa6がGluである、請求項7に記載のPYYの類似体。
【請求項9】
アミド化、グリコシル化、カルバミル化、アシル化、硫酸化、リン酸化、環化、脂質化及びペグ化からなる群から選択される1つ又は複数の方法によって修飾された誘導体である、請求項1から8のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項10】
融合タンパク質である誘導体である、請求項1から9のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項11】
組換え法によって製造される、請求項10に記載のPYY類似体。
【請求項12】
合成法によって製造される、請求項10に記載のPYY類似体。
【請求項13】
医薬品として使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体を、医薬として許容される担体及び任意選択で他の治療成分と共に含む、医薬組成物。
【請求項15】
ヒトに皮下投与するための注射器又は他の投与装置中に存在する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物の皮下投与を含む、疾病若しくは障害又は他の望ましくない生理的状態の治療又は予防方法。
【請求項17】
肥満又は糖尿病の治療に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
対象の食欲の減少に使用するための、対象の食物摂取量の減少に使用するための又は対象のカロリー摂取量の減少に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、肥満又は糖尿病の治療を必要としている対象の肥満又は糖尿病の治療方法。
【請求項20】
対象が過体重である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象が肥満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
対象が糖尿病である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
化合物を非経口投与する、請求項16、及び19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物を、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経皮投与又は舌下投与する、請求項16、及び19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
肥満又は糖尿病を治療するための医薬品を製造するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体の使用。
【請求項26】
対象の食欲の減少のための、対象の食物摂取量の減少のための、又は対象のカロリー摂取量の減少のための医薬品を製造するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体の使用。
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
Xaa2は、Pro及びGlyからなる群から選択され、
Xaa4は、Arg、His、Lys及びOrnからなる群から選択され、
Xaa6は、Asp、Glu、His、Lys、Ser、Thr及びValからなる群から選択され、
Xaa16は、Asn、Asp、Gln及びGluからなる群から選択され、
Xaa17は、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa18は、Ala、Asn、Asp及びValからなる群から選択され、
Xaa19は、Arg及びHisからなる群から選択され、
Xaa21は、His、Phe、Trp及びTyrからなる群から選択され、
Xaa22は、Ala、Ile、Leu及びValからなる群から選択され、
Xaa25は、Arg、Gln及びHisからなる群から選択され、
Xaa30は、Arg、His、Leu及びLysからなる群から選択される]
で表されるアミノ酸配列を含むPYYの類似体、又はそれらの変形体及び/若しくは誘導体である化合物、或いはこのような変形体及び/又は誘導体の塩並びにこのような変形体及び/若しくは誘導体及び/又は塩の溶媒和物を包含する、それらの塩及び/又は溶媒和物であって、変形体が、Xaa4、Xaa6、Xaa16、Xaa17、Xaa18、Xaa19、Xaa21、Xaa22、Xaa25及びXaa30以外の2つ以下のアミノ酸が異なるアミノ酸で置き換えられているアミノ酸配列である、PYYの類似体。
【請求項2】
Xaa16がGluである、請求項1に記載のPYYの類似体。
【請求項3】
Xaa25がArgである、請求項2に記載のPYYの類似体。
【請求項4】
Xaa2がProであり、
Xaa4がLysであり、
Xaa6が、Glu及びSerからなる群から選択され、
Xaa17がLeuであり、
Xaa18がAsnであり、
Xaa21がTyrであり、
Xaa22がAlaであり、
Xaa30がHis、Leu及びLysからなる群から選択される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項5】
Xaa2がProであり、
Xaa4がHisであり、
Xaa6がHisであり、
Xaa17がLeuであり、
Xaa18がAsnであり、
Xaa21がTyrであり、
Xaa22がAlaであり、
Xaa30がHisである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項6】
Xaa19がHisである、請求項4又は5に記載のPYYの類似体。
【請求項7】
Xaa30がHisである、請求項6に記載のPYYの類似体。
【請求項8】
Xaa6がGluである、請求項7に記載のPYYの類似体。
【請求項9】
アミド化、グリコシル化、カルバミル化、アシル化、硫酸化、リン酸化、環化、脂質化及びペグ化からなる群から選択される1つ又は複数の方法によって修飾された誘導体である、請求項1から8のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項10】
融合タンパク質である誘導体である、請求項1から9のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項11】
組換え法によって製造される、請求項10に記載のPYY類似体。
【請求項12】
合成法によって製造される、請求項10に記載のPYY類似体。
【請求項13】
医薬品として使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体を、医薬として許容される担体及び任意選択で他の治療成分と共に含む、医薬組成物。
【請求項15】
ヒトに皮下投与するための注射器又は他の投与装置中に存在する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物の皮下投与を含む、疾病若しくは障害又は他の望ましくない生理的状態の治療又は予防方法。
【請求項17】
肥満又は糖尿病の治療に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
対象の食欲の減少に使用するための、対象の食物摂取量の減少に使用するための又は対象のカロリー摂取量の減少に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体又は請求項14若しくは15に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、肥満又は糖尿病の治療を必要としている対象の肥満又は糖尿病の治療方法。
【請求項20】
対象が過体重である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象が肥満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
対象が糖尿病である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
化合物を非経口投与する、請求項16、及び19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物を、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経皮投与又は舌下投与する、請求項16、及び19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
肥満又は糖尿病を治療するための医薬品を製造するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体の使用。
【請求項26】
対象の食欲の減少のための、対象の食物摂取量の減少のための、又は対象のカロリー摂取量の減少のための医薬品を製造するための、請求項1から12のいずれか一項に記載のPYYの類似体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公表番号】特表2013−518090(P2013−518090A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550512(P2012−550512)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000110
【国際公開番号】WO2011/092473
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511052152)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000110
【国際公開番号】WO2011/092473
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511052152)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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