説明

新規化合物

【課題】 脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患には神経成長因子(NGF)が必要なことから,NGF様作用を有し,且つ食品として使用されている安全な植物を利用して通常の食事形態をとりながら摂取・服用が可能である神経性疾患の予防及び治療に有用な化合物を提供する。
【解決手段】 インドネシア産のショウガ科植物のジャワショウガに含まれる神経細胞突起伸展作用を有する下記式(1)の新規化合物を製造し,それを有効成分として含有する食品素材、組成物及び食品に利用する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞突起伸展作用を有する新規化合物に関する。即ち、神経細胞突起伸展作用による脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び/又は治療が期待できる新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進行に伴って老人性認知症(痴呆)が増加傾向にあり,社会問題となってきている。老人性認知症としてはアルツハイマー病や脳血管性認知症が知られているが,アルツハイマー病はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬などによる治療が試みられているものの限定的であり,病因が不明で進行性のために未だ有効な治療法がない。そこで,神経細胞の成長,突起形成や活動維持には神経細胞栄養・神経成長因子(以下NGFと記す)が必要なことから,認知症の予防及び治療のためにNGF産生促進物質又はNGF様作用物質の開発が強く望まれている。
【0003】
また,このNGFは,特にアルツハイマー病において顕著な脱落を起こすニューロン群として前脳基底野のマイネルト基底核コリン作動性ニューロンに作用する神経栄養因子であることから,アルツハイマー病の治療に直接用いる試みがなされているが(非特許文献1),高分子のタンパクであるために血液脳関門を通過できないので,脳室内投与となり,問題が多い。それ故,神経細胞賦活作用に関しての出願が種々されている。食品に使用される植物由来の例としては,大豆イソフラボン(特許文献1),ヨモギ,クマザサ(特許文献2),ミカン科植物由来のポリアルコキシフラボノイド(特許文献3),きのこ抽出物(特許文献4),雙參に含まれるトリテルペノイド(特許文献5),シキミ科植物に含まれるトリシクロイリシノン(特許文献6)並びにローズマリー及びセージ由来のカフェ酸及びカルノシン酸(特許文献7)が開示されている。
【0004】
日本でよく使用されているショウガ科植物の成分としては,ジンゲロール,クルクミン,クルクメンなどが知られているが(非特許文献2),インドネシア産のショウガ属植物には血小板活性化因子拮抗作用(特許文献8)及びケモカイン発現阻害作用(特許文献9及び10)を示す置換シクロヘキセン化合物が含まれていることが開示されている。しかし,神経細胞に関しての記載はなされていない。
【特許文献1】特開2001−511117号公報
【特許文献2】特開平10−276719号公報
【特許文献3】特開2002−60340号公報
【特許文献4】特開2005−15362号公報
【特許文献5】特開平9−100295号公報
【特許文献6】特開2005−139153号公報
【特許文献7】特開2007−230945号公報
【特許文献8】特開2001−192339号公報
【特許文献9】特開2003−306438号公報
【特許文献10】特開2004−269450号公報
【非特許文献1】生化学辞典第3版(今堀和友,山川民夫監修),P.711,東京化学同人(1998)
【非特許文献2】食品薬学ハンドブック(北川勲,吉川雅之編),PP.54,122,講談社(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,上記問題に鑑み,食品として使用されている安全な植物成分を利用することにより,通常の食事形態をとりながら摂取・服用が可能であって脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び/又は治療に有用な新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、インドネシア産のショウガ科ショウガ属のインドネシア名Bangle(学名Zingiber purpureum Roxb.、以下ジャワショウガと記す)の成分が神経細胞突起伸展作用を示すことを見出し,本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、神経細胞突起伸展作用及び神経細胞死保護による脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び/又は治療に有効な新規化合物並びに新規化合物を有効成分とする食品素材、組成物及び食品に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、東南アジアでよく食されているジャワショウガに含有する新規化合物は安全であり,優れた神経細胞突起伸展作用を有するので,神経細胞の成長,突起形成や活動が賦活されて脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患の予防及び治療に貢献できる。また,このような作用を有する新規化合物を含有する食品素材、組成物及び食品,更にはジャワショウガを利用した飲食品及び植物エキス並びに神経疾患の予防及び治療剤を包含する健康組成物を摂取又は服用して日常生活の中で神経性疾患の予防,改善或いは治療に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で言う下記式(1)で表される新規化合物(以下新規化合物(1)と記す)は、抽料を溶媒抽出して得られる抽出物を分離精製することにより製造することができる物質である。抽料にはジャワショウガの根茎が好適であるが、ショウガ科の植物だけでなく新規化合物(1)を含有する植物が使用できる。抽料は乾燥或いは未乾燥の何れでも使用することができる。分離精製にはシリカゲル、ポーラスポリマー、逆相カラムクロマトグラフ法又はゲル濾過クロマトグラフ法などが利用できる。
【化5】


(式中,R1及びR2はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
【0009】
新規化合物(1)中のビシクロヘキサン環の1位の絶対配置がR及び/又はS配置及び4位の絶対配置がR及び/又はS配置であって5位の絶対配置がR及び/又はS配置である化合物を指し,1位の絶対配置がR配置及び5位の絶対配置がR配置であって4位の絶対配置がR又はS配置である化合物が好ましい。
【0010】
本発明で使用する好適なジャワショウガは,ショウガ科ショウガ属に属し,熱帯・亜熱帯地方に生える植物のことであり、その中のバングレ(別名ベングル、学名Zingiber purpureum Roxb.、インドネシア名Bangle、Bengle)及び/又はポンツクショウガ(学名Zingiber cassumunar Roxb.、インドネシア名Bangle、Bengle)は、東南アジアで広く栽培され、インドネシアではジャムー(民間薬)として食されている。本発明においては全草を利用することができるが,根茎を使用することが好ましく,乾燥或いは未乾燥の何れでも使用することができる。
【0011】
本発明で言う食品素材とは、種々の食品素材を使用して加工食品を製造するときに配合する材料のことであり、新規化合物(1)を含有するジャワショウガ自体及び抽出物(エキス)を指し、抽出液、濃縮液、半固形状の濃縮物、固形状の濃縮物などが挙げられる。
【0012】
本発明における組成物とは、新規化合物(1)を有効成分として含有し、食品の加工に使いやすい加工食品用製剤並びに神経性疾患の予防及び治療用の健康組成物のことを言い、健康組成物は健康食品、更には特定保健用食品とすることもできる。新規化合物(1)の配合量は0.001〜10%の範囲、好ましくは、0.005〜5%の範囲であり、食品素材の使用にあっては含有量を換算して配合する。製剤は、使用目的に応じて散剤(粉末)、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、半固形剤,経皮吸収剤などの剤形とすることができ、目的とする剤形に応じて賦形剤、結合剤、懸濁化剤、増粘ゲル化剤、崩壊剤、滑沢剤、包接剤、界面活性剤、乳化剤、半固形剤用基剤、甘味料、酸味料、強化剤、調味料、品質改良剤などを配合することができる。
【0013】
賦形剤としては、ブドウ糖、乳糖、デキストリン、オリゴ糖などの水溶性糖類、澱粉、穀粉、結晶セルロースなどの多糖類、塩化ナトリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、りん酸カルシウム、りん酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機物などが挙げられる。結合剤としては、α化澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられ、懸濁化剤、増粘ゲル化剤及び湖料としては、α化澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては寒天、澱粉、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなど、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルク、二酸化ケイ素などが挙げられる。溶解補助及び矯味のために、α−、β−及びγ−シクロデキストリン、分岐(又は分枝)シクロデキストリンなどの包接剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ユッカ抽出物などの界面活性剤(乳化剤)などを使用することができる。半固形剤においては植物油、動物油、硬化油、ミツロウ、マクロゴール、流動パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マクロゴール脂肪酸エステル、ステアリン酸、ゼラチン、ステアリルアルコール、加水ラノリン、セタノールなどの基剤を用いることができる。必要に応じてアラビアゴム、グリセリン、D−ソルビトール、プロピレングリコール、単シロップなどの保湿剤・品質改良剤を配合することもできる。
【0014】
健康組成物である飲食品の味を整えるために、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、マルトース、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖などの甘味料、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸などの酸味料、アミノ酸などの調味料などを配合することができ、ビタミン類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウムなどの強化剤、カルシウム塩類、着色料、膨張剤、着香料、保存料など、一般的飲食品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。
【0015】
神経性疾患の予防及び治療のための飲食品の例としては、清涼飲料、ジュース、コーヒー、紅茶、リキュール、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、飴(キャンデー)、キャラメル、チューインガム、チョコレート、グミ、アイスクリーム、プディング、卵製品、羊羹、水羊羹、おかき、餅、団子、煎餅、クレープ、お好み焼き、パン、クッキー、麺類、ハンバーグ、水練製品、てんぷら、発酵食品などが挙げられる。
【0016】
必要ならば、トマト,玉葱,人参,ブロッコリー,キャベツ,インゲン豆,カボチャ,レタス,赤ピーマン,セロリ,ホウレンソウ,リンゴ,レモン,アセロラ,ミカンなどの野菜・果実及びそのエキスなどだけでなく明日葉、甘茶、アマチャヅル、アロエ、イチョウ葉、ウーロン茶、ウコン、ウラジロガシ、エゾウコギ、エゾウコギ、オオバコ、カキオドシ、柿、カミツレ、カモミール、カリン、ガルシニア、河原決明、菊花、クチナシ、桑、クコ、月桂樹、紅茶、紅豆杉、コンフリー、昆布、桜、サフラン、シイタケ、シソ、ショウガ、しょうが、スギナ、スワンギ、セキショウ、センダングサ、センブリ、ソバ、タマリン度、タラノキ、タンポポ、チコリ、杜仲、ナタマメ、ニワトコ、ネズミモチ、ハトムギ、ハブ、バングレ、松葉、マテ、麦茶、メグスリノキ、ユーカリ、ヨモギ、羅漢果、緑茶、ルイボス、霊芝、ガランガル、ギムネマ、グァバ葉、ゲンノショウコ、玄米、ゴボウ、ドクダミ、バナバ、ビワの葉、紅花などのいわゆる生薬・健康茶及びそれらの抽出物などを添加配合してもよい。更には牛乳,クリームなどの乳製品,豆乳,豆腐などの大豆製品などを添加することもできる。
【0017】
本発明の健康組成物を、神経細胞突起伸展作用及び神経細胞死保護による脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患の予防及あるいは改善のために飲食品として用いる場合の服用(投与)量は、服用の目的や服用者の状況(性別、年齢、体重、肥満度、総合的健康度合いなど)により異なるが、通常、1日の服用量として、新規化合物(1)を重量換算で、0.1〜100mg/体重kgの範囲で服用することができる。原料の植物は常食にされているので100mg/体重kgを超える服用も何ら問題はない。また、動物にあっても同様に適用することができる。
【0018】
本発明で言う食品は、前記食品素材を配合及び新規化合物(1)含有食品用製剤を使用して製造した飲食品のことである。
【0019】
必要ならば,新規化合物(1)を含有する未乾燥植物をカットして得られる固形状物,未乾燥植物を湿式粉砕機で粉砕して得られるペースト状物,これを凍結乾燥機又は乾燥機で乾燥して得られる固形状物,更にこれを粉砕するか或いは乾燥植物を破砕機又は粉砕機で粉砕して得られる破砕状又は粉末状物,乾燥又は未乾燥植物を裁断機やスライサーで裁断して得られるスライス状物などをそのまま或いは加熱加工やエキス化などして健康組成物に利用することができる。
【0020】
また、目的に応じて通常動物飼料に用いられている各種成分を適宜配合して粉末、顆粒、ペースト、カプセル、シロップ、固形状、ゲル状、液状、懸濁液、乳液などの形態とすることにより家畜用飼料やキャットフード、ドッグフードやウサギ用フードなどのペットフードなどの動物飼料とすることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1(粉末の製造)
ジャワショウガの乾燥物5kgを粉砕機で粉砕してジャワショウガ粉末4.7kgを得た。
【0023】
実施礼2(エキスの製造)
バングレ5kgの裁断物をメタノール40Lに2週間浸漬し、抽出液を減圧濃縮乾固してバングレエキスを350g得た。
【0024】
実施礼3(新規化合物(1)の製造)
実施例2のバングレエキス(23.9g)を水/酢酸エチルで分配し,酢酸エチル層を減圧下溶媒留去して20.1gを得,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=3:2)により,10個のフラクションに分画した。フラクション4(2.891g)を逆相(ODS)カラムクロマトグラフィー(溶出液:90%メタノール)により7個のフラクションに分画した。フラクション4(113mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジエチルエーテル=1:2)により6個のフラクションに分画した。フラクション2(47mg)を逆相(ODS)カラムクロマトグラフィー(溶出液:90%メタノール)により分離精製して新規化合物(1)の(1R,4R,5R)−4−((E)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)ブタ−3−エンイルオキシ)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン(11mg,以下新規化合物(1A)と記す)及びそのエピマーである(1R,4S,5R)−4−((E−4−(3,4−ジメトキシフェニル)ブタ−3−エンイルオキシ)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン(15mg,以下新規化合物(1B)と記す)を無色油状物として得た。
【0025】
新規化合物(1A)の機器分析データ:[a] −9.59°(c1.0, 24℃,クロロホルム);IR(ATR, cm−1):1588,1512 ; UVλmax (メタノール,nm):267(a13200);PMR(600MHz, 重クロロホルム,δ):6.91(1H,d,J=2.0Hz),6.87(1H,dd,J=8.2,2.0Hz),6.80(1H,d,J=8.2Hz),6.38(1H,dt,J=15.9,1.4Hz),6.14(1H,dt,J=15.9,7.0Hz),3.89(3H,s),3.87(3H,s),3.53(1H,dt,J=8.8,6.9Hz),3.47(1H,dt,J=8.8,7.0Hz),2.43(1H,dddd,J=7.0, 7.0,6.9,1.4Hz),1.83(1H, ddd,J=11.9,11.1,8.6Hz),1.70(1H,dd,J=14.1,8.6Hz),1.53(1H,dd,J=11.9,8.0Hz),1.44(1H,dd,J=6.9,6.9Hz),1.25 (3H,s),1.20(1H,dd,J=8.5,3.6Hz),1.08(1H,ddd,J=14.1,11.1,8.0Hz),0.96(3H,d,J=6.9Hz,0.89(3H,d,J=6.9Hz),0.36(1H,dd,J=8.5,4.9Hz),0.18(1H,dd,J=4.9,3.6Hz);CMR(150MHz,重クロロホルム,δ):12.4,20.0,21.4,26.7,31.4,32.3,33.4,34.5,34.6,55.7,55.9,61.8,85.0,108.5,111.1,118.9,125.8,130.8,131.0,148.3,149.0;EIMSm/z(相対強度):344[M](33),177(100),137(34),81(47); HREIMS実験値m/z344.2364,計算値344.2352(C2232として)。
【0026】
新規化合物(1B)の機器分析データ:[α]−20.7°(c2.02,クロロホルム);IR(ATR,cm−1);1587,1512;UVλmax (メタノール,nm):267(ε7800);PMR(600MHz,重クロロホルム,δ):6.92(1H,d,J=1.9Hz),6.88(1H,dd,J=8.2,1.9Hz),6.80(1H,d,J=8.2Hz),6.39(1H,dt,J=15.8,1.5Hz),6.13(1H,dt,J=15.8,7.0Hz),3.89(3H,s),3.87(3H,s),3.56(1H,dt,J=8.7,7.3Hz),3.53(1H,dt,J=8.7,7.1Hz),2.44(1H,dddd,J=7.3,7.1,7.0,1.5Hz),1.61(2H,m),1.52(1H,ddd,J=12.4,6.6,2.5),1.41(1H,dd,J=12.4,10.3Hz),1.32(1H,dd,J=6.9,6.7Hz),1.29(3H,s),1.04(1H,dd,J=8.0,3.7Hz),0.92(3H,d,J=6.7Hz),0.88(3H,d,J=6.9Hz),0.68(1H,dd,J=4.9,3.7Hz),0.34(1H,dd,J=8.0,4.9 Hz);CMR(150MHz,重クロロホルム,δ):11.8,19.5,19.7,24.3,24.8,30.3,32.8,33.2,34.1,34.3,55.8,55.9,63.5,83.7,108.5,111.1,118.9,125.7,130.8,131.0,149.0,148.3;EIMSm/z(相対強度):344[M](17),208(72),177(100),146(44),137(34); HREIMS実験値m/z344.2344,計算値344.2352(C2232として)。
【0027】
実施例4(神経細胞突起伸展作用)
ラット副腎髄質褐色細胞PC12を,ラット尾由来コラーゲンでコーティングされた培養フラスコ内の10%HS,5%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマシン含有DMEM培地中,湿度95%,二酸化炭素5%,37℃環境下のインキュベーター内で培養後,PC12細胞を単離した。この細胞(2000細胞/cm)をコラーゲンコーティング48ウエルプレートの各ウエルに播種し,10%HS,5%FBS含有DMEM培地中24時間同環境下のインキュベーター内で培養した後,試料を含む2%HS,1%FBS含有DMEM培地に交換した。同環境下96時間培養後,細胞形態を顕微鏡観察して突起の伸展を確認及び写真撮影した。試料調製は,実施例2で製造したバングレエキスの場合20mgを50%エタノールに溶解し,実施例3で単離した化合物の場合50%エタノールに溶解後培地で100倍希釈,又はDMSOに溶解後培地で1000倍希釈して行った。陽性対照にはNGF10ng/mLを使用した。
【0028】
試験の結果を図1に示す。図に示す通り,対照では神経突起伸展が全く認められなかったのに対し,本発明のバングレエキスでは濃度25μg/mLで陽性対照のNGFと同等の神経突起伸展活性が見られ,新規化合物(1A)及び異性体(1B)の何れも1μMより神経突起伸展が現れ,10μMから濃度依存的に神経突起伸展活性が増加し,30μMでははっきりと伸展した突起があり,50μMでは更に突起が長く伸びていた。
【0029】
実施例5(粉末の製造)
実施例3の新規化合物(1B)0.01g,アビセル(旭化成製)0.99g及びデキストリン(マックス1000、松谷化学製)2gを乳鉢でよく混合して粉末3gを製造した。
【0030】
実施例6(硬カプセルの製造)
実施例5の粉末3gにステアリン酸マグネシウム0.01gを混合した後,ゼラチンカプセルに充填して硬カプセルを製造した。
【0031】
実施例7(錠剤の製造)
実施例2のバングレエキス100g、デキストリン(マックス1000、松谷化学製)100g、乳糖200g及びステアリン酸マグネシウム2gを混合し、本混合物を単発式打錠機で打錠し、直径8mm、重量200mgの錠剤(バングレエキス99mg含有)を製造した。
【0032】
実施例8(硬カプセルの製造)
実施例2のバングレエキス100g、コーンスターチ30g,アビセル20g及びりん酸一水素カルシウム10gを混合し,本混合物をゼラチンカプセルに充填して硬カプセルを製造した。
【0033】
実施例9(キャンディー)
実施例2のバングレエキス1部、グラニュー糖280部、水 飴210部、ク エ ン酸5部、香料1部及び色素1部を配合してキャンディーを製造した。本キャンディーの味は良好であった。
【0034】
実施例10(ジュース)
実施例2のバングレエキス1部、冷凍濃縮温州みかん果汁25部、果糖ブドウ糖液糖55部、クエン酸1部、L−アスコルビン酸0.1部、香料1部、色素0.5部及び水400部を配合してジュースを製造した。本ジュースはみかんの風味や色に変化がなかった。
【0035】
実施例11(チューインガム)
実施例2のバングレエキス1部、チューインガムベース300部、ショ糖800部、水飴300部、軟化剤60、香料13部及び色素1部を配合してチューインガムを製造した。本チューインガムの味は良好であった。
【0036】
実施例12(チョコレート)
実施例2のバングレエキス1部、チョコレート220部、ショ糖75、カカオバター100部及び全脂粉乳100部を配合してチョコレートを製造した。配合されたバングレエキスがチョコレートの風味や色に影響を与えることはなく、美味しいものであった。
【0037】
実施例13(クッキー)
実施例1のジャワショウガ粉末1部、薄力粉2.3部、全卵1.6部、マーガリン1.9部、上白糖2.5部、ベーキングパウダー0.02及び水0.73部を配合してクッキーを製造した。本クッキーは風味がよく、味は良好であった。
【0038】
実施例14(おかき))
実施例1のジャワショウガ粉末1部、餅粉5部、食塩0.1部及び水6部を配合しておかきを製造した。本おかきは風味が良く、良好な味であった。
【0039】
実施例15(クレープ)
実施例1のジャワショウガ粉末1部、薄力粉2部、全卵1部、牛乳1部、食塩0.05部、バニラエッセンス適量及び水2部を配合してクレープを製造した。本クレープは良好な風味と味を有していた。
【0040】
実施例16(ペースト)
ジャワショウガ8kgに水2kgを加えながら粉砕機で粉砕後,更に超音波破砕機で微粉末状にしてジャワショウガペースト10kgを得た。
【0041】
実施例17(ジュース)
実施例13のジャワショウガペースト1部に水2部を加えて混合してジュースを製造した。本ジュースは風味がよく,美味しいものであった。
【0042】
実施例18(固形ドッグフード)
実施例1のジャワショウガ粉末1部、ミートミール2.4部、チキンエキス0.35部、植物油脂0.3部、炭水化物1.2部、炭酸カルシウム0.03部、食塩0.01部、複合ビタミン剤0.05部及び水0.6部を配合してドッグフードを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によると,東南アジアでよく食されているジャワショウガから得られる本発明の新規化合物(1)は,安全で神経細胞突起伸展作用を有するので,神経細胞の成長,突起形成や活動が賦活されて脳虚血,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病などの神経性疾患の予防,改善及び治療に有用である。また,このような作用を有する新規化合物(1)を有効成分として含有する本発明の食品素材、組成物及び食品,更にはジャワショウガを利用した飲食品及び植物エキス並びにそれらからなる健康組成物は,このような神経疾患の予防及び治療剤として日常生活の中で通常の食事形態をとりながら摂取又は服用することができて有用である。近年ペットの高齢化により増加傾向にある神経症に対しても本発明の新規化合物(1)を含有する健康組成物をペットや家畜などの動物の飼料として使用することは,飼育者にとって負担が軽減されて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】対照の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図2】NGF(10ng/mL)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図3】新規化合物1A(50iM)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)
【図4】新規化合物1B(50iM)の神経細胞突起伸展作用を示した写真である。(実施例4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とする新規化合物
【化1】


(式中,R1及びR2はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
【請求項2】
下記式(1)で表される新規化合物を含有してなることを特徴とする食品素材
【化2】


(式中,R1及びR2はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
【請求項3】
下記式(1)で表される新規化合物を含有してなることを特徴とする組成物
【化3】


(式中,R1及びR2はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)
【請求項4】
下記式(1)で表される新規化合物を含有してなることを特徴とする食品
【化4】


(式中,R1及びR2はヒドロキシ基又はC1〜C6の低級アルコキシ基である)



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−6324(P2011−6324A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148156(P2009−148156)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月28日 「日本薬学会第129年会」において文書をもって発表
【出願人】(391012040)株式会社ホソダSHC (14)
【Fターム(参考)】