説明

新規組成物

フッ化物イオンの供給源並びに0.01〜1.5重量%のキサンタンガム、0.01〜1.5重量%のポリアクリル酸、0.01〜2.0重量%のカラギナンガム及び増粘性シリカを含む歯磨剤組成物であって、ここで先の組成物は5.5〜6.5のpHを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然歯のエナメルを強化し保護し、そのことにより酸性のチャレンジに対する保護をもたらすためのフッ化物イオンの供給源を有する歯磨剤組成物に関する。かかる組成物は虫歯(う蝕)と戦う(すなわち、虫歯を予防、阻害または治療する)のに有用である。かかる組成物はまた、歯牙酸蝕症および/または歯牙摩耗と戦うのに有用である。これらの組成物はまた、組成物のレオロジーを増強するのに有用な増粘系を含有する。
【背景技術】
【0002】
歯のミネラルは主としてカルシウムヒドロキシアパタイト、すなわちCa10(PO4)6(OH)2、から構成され、これは部分的にカーボネート若しくはフッ化物のようなアニオンや亜鉛若しくはマグネシウムのようなカチオンで置き換えられ得る。歯のミネラルはまた、リン酸オクタカルシウムや炭酸カルシウムのような非アパタイト性ミネラル相を含有し得る。
【0003】
歯の喪失は虫歯の結果として生じうるが、虫歯は多因子性の疾患であり乳酸のような細菌性の酸が完全には再石灰化されない表面下の脱ミネラル化を生じ、結果的に進行性の組織喪失があり最終的には虫歯の穴が形成される。プラークバイオフィルムの存在は虫歯の必須の前提条件であり、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)のような酸産生性細菌は、スクロースのような容易に発酵できる糖質が長時間にわたり上昇していると、病原性となりうる。
【0004】
疾患の不在下においても、酸蝕症および/または物理的な歯牙摩耗の結果として歯科硬組織の喪失は生じることがあり、こうした過程は相乗的に作用すると考えられている。歯科硬組織の酸への曝露は脱ミネラル化をもたらし、結果的に表面が軟化し、ミネラル密度が低下する。正常な生理学的条件下では、脱ミネラル化された組織は唾液の再石灰化作用により自己修復される。唾液はカルシウム及びリン酸に関して過飽和されており、健常な固体において唾液分泌は酸チャレンジを洗い流し、pHを上昇させ、そのことにより平衡が変更されミネラル沈着に有利になる。
【0005】
歯牙酸蝕症 (すなわち酸蝕症又は酸摩耗)は脱ミネラル化を伴う表面現象であり、究極的には細菌由来ではない酸により歯牙表面が完全に溶解する。最も一般的には酸は食事に由来するものであり、例えば果実又は炭酸飲料からのクエン酸、コーラ飲料からのリン酸及びビネグレット等からの酢酸である。歯牙酸蝕症はまた、胃で産生される塩酸(HCl)との反復的接触により生じることがあり、胃で産生される塩酸は胃食道逆流のような無意識の反応により又は過食症の罹患者において直面されうる誘発された応答を介して口腔に侵入する可能性がある。
【0006】
歯牙摩耗(すなわち物理的歯牙摩耗)は摩耗および/または摩滅により引き起こされる。摩耗は歯の表面が互いに擦り合わせられる(二体摩耗の一形態)ときに生じる。多くの場合印象的な例は、歯ぎしりをする被験者において観察されるそれである。歯ぎしりは、加えられる力が高い、歯を擦り合わせる癖であり、特に咬合面において、促進摩耗を特徴とする。摩耗は典型的には三体摩耗の結果生じ、最も一般的な例は歯磨剤での歯磨きに関連するそれである。完全に石灰化されたエナメルについては、市販の歯磨剤により生じる摩耗のレベルは最少であり、臨床的な結果は乏しいか又は全くない。しかし、エナメルが脱ミネラル化され、浸食性のチャレンジへの曝露により軟化されると、エナメルは歯牙摩耗により感受性となる。象牙質はエナメルよりも大幅に軟質であり、その結果より摩耗しやすい。曝露された象牙質を有する被験者は、高度に摩耗性の歯磨剤、例えばアルミナに基づくもの、の使用を避けるべきである。浸食性のチャレンジによる象牙質の軟化により、組織の摩耗しやすさは、やはり増大する。
【0007】
EP-A-691124 (Sara Lee)はN-ビニルピロリドン及びアクリル酸のコポリマーを有する口腔ケア製品を記載しており、同製品により、歯のエナメルにおけるエナメルフッ化物取込の増強がもたらされる、とされている。同Sara Lee文献の第11頁には、キサンタンガムとcarbopol(登録商標)の組み合わせを含め、種々の増粘剤を含有する種々の配合の相対的なエナメルフッ化物取込効力が記載されている。
【0008】
仏国特許第2755010号 (Sara Lee)はキサンタンガム及びカルボキシル化ビニルポリマーの組合わせを含むフッ化物を含有する口腔ケア製品を記載している。Sara Lee氏は、特に、この組合せの使用がフッ化物の効力を増強すると主張する。他の増粘剤を含有する口腔ケア製品の具体的な開示はない。ただし、歯磨剤のような口腔ケア製品がヘクトライト、カラギナン、トラガカントガム、デンプン、ポリビニルピロリドン、種々のヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム及びコロイド状シリカを含む種々の増粘剤を含むことができると提案されている。
【0009】
国際公開第08/068323号は、キサンタンガムである第1増粘剤、カラギナンおよび/またはポリアクリル酸である第2増粘剤並びに増粘性シリカである第3増粘剤、と組成物を泡状物質へと拡張させる後発発泡(post-foaming)剤との組合せを含む、少なくとも80,000 mPas の粘度を有する後発発泡性の歯磨剤組成物を記載している。国際公開第08/068323号における実施例はいずれも、キサンタンガム、カラギナン及び増粘性シリカを含む増粘系を有する歯磨剤組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP-A-691124
【特許文献2】仏国特許発明第2755010号
【特許文献3】国際公開第08/068323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のSara Lee氏の特許における教示とは反対に、本出願人は、口腔ケア製品におけるキサンタンガム及びポリアクリル酸 (すなわちカルボキシル化ビニルポリマー)の組み合わせが、キサンタンガムの不在下でポリアクリル酸を含有する対応する製品と比較したときに、増強されたフッ化物効力をもたらさないことを見出した。本明細書の実施例4からは、キサンタンガムの存在がポリアクリル酸を含有する口腔ケア製品の増強された効力を低減するようである。
【0012】
さらに、本出願人は、キサンタンガム、ポリアクリル酸及び増粘性シリカの組み合わせを有する口腔ケア製品がレオロジーに乏しく、それにより該製品は粘性が低すぎて、歯ブラシ上に分配されたときに形状保持性(stand-up)が乏しいという課題に苦しめられることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
出願人はかかる課題が、キサンタンガム、カラギナンガム、ポリアクリル酸及び増粘性シリカを歯磨剤組成物中の増粘系として使用することにより解決することができることを見出した。この新規な配合物は、良好な安定性に加え極めて優れた型維持(build)および構造を示し、したがって歯ブラシ上に乗せたときに良好な形状保持性(stand-up)を生じる。もたらされる良好な型維持(build)および構造は、縞模様の歯磨剤製品を調製するときに特に有益となる。
【0014】
従って、本発明は、フッ化物イオンの供給源、並びに増粘系として0.01〜1.5重量%のキサンタンガム、0.01〜1.5重量%のポリアクリル酸、0.01〜2.0重量%のカラギナンガム及び増粘性シリカの組み合わせを含む歯磨剤組成物であって、ここで該組成物は5.5〜6.5のpHを有する、該歯磨剤組成物を提供する。
【0015】
さらに、本発明の組成物は、下記のデータに示すように、良好なエナメル強化に加えて良好なエナメル保護特性を有する。エナメル強化の程度は、エナメルフッ化物取込(EFU)データから計算することができ、他方、エナメル保護はエナメル可溶性低減(ESR)データから計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例D〜GとEFUとの関係を示す。
【図2】実施例1〜CとEFUとの関係を示す。
【図3】実施例1〜CとESRとの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
適当に、キサンタンガムは、全組成の0.1〜1.0%、例えば0.5〜1.0重量%の量にて存在する。
【0018】
本発明に用いるのに適当なキサンタンガムはKeltrol Fである。Keltrol FはCP Kelco Biospecialities Group社(USA)より入手することができる。
【0019】
適当にポリアクリル酸は全組成の0.1〜1.0%、例えば0.2〜0.6重量%の量にて存在する。
【0020】
適当に、ポリアクリル酸の例としては、カルボマー、アクリレート/アルキルアクリレートクロスポリマー又はポリカルボフィルが挙げられる。本発明に用いるのに最も適当なカルボマーは、B.F Goodrich社から入手可能なCarbopol(登録商標)型、例えばCarbopol(登録商標) 980又はCarbopol(登録商標) ETD 2020 NFのものである。遠くに適当であるのは、Carbopol(登録商標) ETD 2020 NFである。
【0021】
適当に、カラギナンは全組成の0.05〜0.5%、例えば0.1〜0.3重量%の量にて存在する。
【0022】
本発明に用いるのに適当なカラギナンはGenuvisco TPH-1である。Genuvisco TPH-1はCP Kelto Biospecialities Group, USAから入手可能である。
【0023】
上記増粘剤の他に、既知の研磨性シリカと比較して相対的に研磨効果が小さいシリカである増粘性シリカ、が存在する。増粘性シリカは組成物のレオロジーをさらに改善するために加えられる。
【0024】
適当な増粘性シリカは既知であり、商標Zeodent、例えばZeofree 153B及びZeodent 167の名称でHuber社により取り扱われているもの、商標SIDENT(登録商標)としてDegussa AGにより取り扱われているもの、例えばSIDENT 22S(登録商標)、並びに商標SYLOBLANC(登録商標)としてGrace-Davison Chemical Division社により取り扱われているもの、例えばSYLOBLANC 15(登録商標)が挙げられる。
【0025】
本発明に用いる適当な増粘性シリカはZeofree 153Bである。例えば組成物は
全組成の最大で20 重量%の増粘性シリカ、典型的には総組成の5〜15 重量%を含有し得る。
【0026】
適当に、組成物のpHは5.5〜6.5、例えば5.5〜6.0である。典型的には組成物は、全組成の最大で0.5重量%の水酸化ナトリウムを含有して適当なpHをもたらすことができる。
【0027】
本発明の組成物はまた、歯科用研磨剤、例えばシリカ研磨剤を有してもよく、又は、WO 05/027858 (Glaxo Group Ltd)に記載されているように、いかなる添加研磨剤を含有しないこともできる。
【0028】
適当なシリカ性歯科用研磨剤としては、以下の商標、Zeodent(登録商標)、Sident(登録商標)、Sorbosil(登録商標)若しくはTixosil(登録商標)(Huber社より)、Degussa、Ineos及びRhodiaによりそれぞれ市販されているものが挙げられる。
【0029】
適当に、シリカ研磨剤は、全組成の最大で25重量%の量、例えば全組成の2〜20重量%、例えば5〜15重量%の量にて存在する。
【0030】
フッ化物イオンの供給源の他に、本発明の組成物は、歯磨剤組成物に慣用的に使用される1以上の活性な物質、例えば、脱感作剤脱感作剤、抗微生物剤、抗プラーク剤、抗結石剤、白色化剤、口臭剤またはこれらの少なくとも2つの混合物を含み得る。かかる物質は、所望の処置効果を提供するレベルにて含めることができる。
【0031】
本発明の組成物に用いるのに適当なフッ化物イオンの供給源としては、25〜3500pmのフッ化物イオン、好ましくは100〜1500ppmのフッ化物イオンをもたらす量の、フッ化ナトリウムのようなアルカリ金属フッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウムのようなモノフルオロリン酸アルカリ金属、フッ化スズ、またはアミンフッ化物が挙げられる。典型的なフッ化物の供給源はフッ化ナトリウムであり、例えば組成物は0.1〜0.5重量%のフッ化ナトリウム、例えば0.204重量% (927ppmのフッ化物イオンと同等)、0.2542重量% (1150ppmのフッ化物イオンと同等)又は0.315重量% (1426ppmのフッ化物イオンと同等)を含み得る。
【0032】
かかるフッ化物イオンは歯の再石灰化の促進を助け、また、虫歯、歯牙酸蝕症(すなわち酸摩耗)および/または歯牙摩耗と戦うために歯科硬組織の酸耐性を増大させることができる。本発明の組成物中のポリアクリル酸の存在は、別の増粘剤を含む対応する製品と比較したときに、フッ化物イオンの効力を増強することが見出された。
【0033】
歯の過敏性を処置するために、本発明の組成物は脱感作剤を含みうる。脱感作剤の例としては、小管遮断剤または神経脱感作剤及びその混合物、例えばWO 02/15809 (Block)に記載されているもの、が挙げられる。脱感作剤の例としては、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、若しくは硝酸ストロンチウムのようなストロンチウム塩、又はクエン酸カリウム、塩化カリウム、重炭酸カリウム、グルコン酸カリウム及び特に硝酸カリウムのようなカリウム塩が挙げられる。
【0034】
カリウム塩のような脱感作剤は、一般に全組成の2〜8重量%にて存在し、例えば5重量%の硝酸カリウムを使用することができる。
【0035】
本発明の組成物は、白色化剤、例えばポリリン酸、例えばトリポリリン酸ナトリウム(STP) から選択される白色化剤を含んでもよく、かつ/または、存在する任意の追加のシリカ研磨剤は高い洗浄特性を有しうる。STPは全組成の2〜15%、例えば5〜10重量%の量にて存在しうる。高度に洗浄性のシリカ研磨剤の例としては、Zeodent (登録商標)124、Tixosil(登録商標) 63、Sorbosil(登録商標) AC39、Sorbosil(登録商標) AC43及びSorbosil(登録商標) AC35として市販されているものが挙げられ、これらは上記に記載したとおりの適当な量にて存在しうる。
【0036】
本発明の組成物は口臭剤、例えば酸化亜鉛のような亜鉛塩を含み得る。
【0037】
本発明の組成物は、口腔衛生組成物の分野において慣用的に用いられているものから選択される、界面活性剤、保湿剤、香味剤、甘味剤、乳白化剤又は着色剤、保存剤及び水、のような追加の配合物をかかる目的のために含有する。
【0038】
本発明に用いるのに適当な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、例えばC10-18アルキル硫酸ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウムは一般にアニオン性であり強力に荷電されているとされ、歯磨に高レベルの発泡が望まれる場合には有用である。
【0039】
あるいはまた、両性イオン性、両性および非イオン性または低イオン性界面活性剤をアニオン性界面活性剤に加え又はその代わりに使用することができる。
【0040】
カリウム塩のような脱感作剤を有する本発明の歯磨剤組成物については、界面活性剤の典型的な一群としては、両性または弱イオン性界面活性剤、またはそれらの混合物が挙げられ、これらはラウリル硫酸ナトリウムと比較してさほどイオン性ではなく、さほど強力に荷電されていない。適当に、カリウム塩を含む本発明の組成物はC1-18アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤を含有しない。C1-18アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤は、良好な界面活性及び洗浄特性を有する一方で、不溶性のラウリル硫酸カリウム沈殿物の形成を生じうる。
【0041】
両性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルベタイン類、例えば「Empigen BB」の商標にてAlbright & Wilson社により市販されている製品、長鎖アルキルアミドアルキルベタイン類、例えばコカミドプロピルベタイン、又は低イオン性界面活性剤、例えばCroda社により商標名Adinol CTの付されているメチルココイルタウレートナトリウム又は少なくとも2つのその組合せが挙げられる。
【0042】
適当に、界面活性剤は、全組成の0.1〜15%の範囲、例えば0.5〜10%または1.0〜5重量%にて存在する。
【0043】
本発明の組成物に用いるのに適当な保湿剤としては、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール、又はこれらの少なくとも2つの混合物が挙げられ、該保湿剤は全組成の10〜80%、例えば20〜70%又は30〜60重量%の範囲にて存在し得る。
【0044】
本発明の組成物は、適当な任意の順で成分を適当な相対量にて混合し、必要であればpHを最終的な所望の値となるように調整することにより調製することができる。
【0045】
pHは、組成物を、組成物と水の重量比1:3にて水にスラリー化したときに測定する。
【0046】
本発明の組成物は、当技術分野で慣用される積層管またなポンプに入れ、そこから分配するのに適している。
【0047】
本発明の組成物を製造する典型的な方法は、成分を、適当に真空下で、均質な混合物が得られるまで混合すること、及び必要であればpHを調整すること、を伴う。
【実施例】
【0048】
ここで本発明を、下記の非限定的な実施例により説明する。
【表1】

【0049】
上記の実施例1、2及び3は、フッ化物供給源、5.5〜6.5のpH、及び増粘剤であるキサンタンガム、ポリアクリル酸、カラギナンガム並びに増粘性シリカを有する、本発明の歯磨剤組成物を示す。
【0050】
比較例A〜Cは本発明の範囲外であり、ポリアクリル酸を有しないおよび/またはpHが5.0よりも高い。
【0051】
実施例4
エナメルフッ化物取込 (EFU)
この生体外研究の目的は、初期のエナメル損傷へのフッ化物取込促進に対する、キサンタンガムおよび/またはPAAを含有する種々の溶液のpH 6.0における作用を決定することであった。この溶液の組成の詳細は以下のとおりであった。
【表2】

【0052】
試験方法は、FDA Monographにおける手法40(Procedure 40)と識別される方法と同一であったが、ただし損傷は0.1M乳酸及び0.2% Carbopol (登録商標)907、かつ、pH 5.0にてHAPで50%飽和された溶液を用いて形成した。
【0053】
手法
ウシの健康な上顎中切歯を選択し、付着している全ての軟組織を洗い落とした。直径3mmのエナメルのコアを、中空コアダイアモンドドリルビットを用いて唇側面に垂直に切断することにより、各々の歯から調製した。これは標本の加熱を防止するために水中で行った。各標本は、プレキシガラスロッド(直径1/4インチx長さ2インチ)の端にメチルメタクリレートを用いて嵌め込んだ。過剰なアクリレート材料は切り落とし、エナメル表面を露出させた。エナメル標本は600グリットの湿った/乾燥した紙で磨き、ついで超微細ガンマアルミナで磨いた。得られた標本はエナメルの3mmディスクであり、露出している表面以外は全てアクリルで被われていた。
【0054】
次いで各々のエナメル標本を0.5 mlの1M HCl04に15秒浸漬することによりエッチング処理した。エッチング期間全体にわたり、エッチング溶液は連続的に撹拌した。次に各溶液のサンプルを総イオン強度調節バッファー (TISAB)を用いてpHを5.2 (0.25 ml サンプル、0.5 ml TISAB及び0.25 ml 1N Na0H)とし、次いでフッ化物含量を同様に調整した標準曲線(1 ml std及び1 ml TISAB)との比較により決定した。エッチング処理の深さの計算に用いるために、エッチング処理溶液のCa含量を50μlを取得し原子吸光によりCaについて分析(0.05 ml qs〜5ml)することで決定した。こうしたデータは、処置前の各標本の本来のフッ化物レベルであった。
【0055】
標本を再度、上記のように擦り研磨した。0.1M乳酸/0.2% Carbopol(登録商標) 907溶液に24時間、室温で浸漬することにより各々のエナメル標本に初期損傷を形成した。こうした標本を次いで蒸留水でよく流し、使用するまで湿潤な環境で保存した。
【0056】
処置は口内洗浄液を希釈せずに使用することで行った。標本は継続的に撹拌しながら(350 rpm) 30分間、その割り当てられた口内洗浄液25 mlに浸漬した。処置に続き、標本を蒸留水で洗い流した。次いで各々の標本からエナメルの層一つを取り、上記のように(すなわち、15秒エッチング処理)フッ化物およびカルシウムについて分析した。次いで各々の標本の処理前のフッ化物(固有)レベルを、処置後の値から除算して、試験処置に起因するエナメルフッ化物の変化を決定した。
【0057】
統計分析
統計分析は、Sigma Stat ソフトウェア(3.1)を使用し、一元配置分散分析モデルにより行った。
【0058】
結果
結果を以下の表3及び図1に示す。
【表3】

【0059】
実施例E、F、及びGによる処置は、実施例Dと比較して、統計的に有意に高いEFUをもたらし、実施例Fが全ての処置のうちで最も高いEFUをもたらした。さらに、実施例Fは実施例E及びGと比較してEFUが優れており、実施例Gは実施例Eよりも優れていた。
【0060】
図1に言及すると、キサンタンガム及びポリアクリル酸 (実施例G)の組合せが、キサンタンガムの不在下でポリアクリル酸を含む対応する製品(実施例F)と比較して、EFUに基づいて測定したときに、増強されたフッ化物効力をもたらさないことは明らかである。キサンタンガムの存在が、ポリアクリル酸を含有する口腔ケア製品の増強された効力を低減するようである。
【0061】
実施例5
エナメルフッ化物取込(EFU)
この生体外実験の目的は、pHの関数としての、初期エナメル損傷へのフッ化物取込の促進に対する本発明の影響を決定することであった。歯磨剤の組成は上記表1に見出される。
【0062】
試験方法は、FDA Monographにおける手法40(Procedure 40)と識別される方法と同一であったが、ただし損傷は0.1M乳酸及び0.2% Carbopol (登録商標)907、かつ、pH 5.0にてHAPで50%飽和された溶液を用いて形成した。
【0063】
手法
ウシの健康な上顎中切歯を選択し、付着している全ての軟組織を洗い落とした。直径3mmのエナメルのコアを、中空コアダイアモンドドリルビットを用いて唇側面に垂直に切断することにより、各々の歯から調製した。これは標本の加熱を防止するために水中で行った。各標本は、プレキシガラスロッド(直径1/4インチx長さ2インチ)の端にメチルメタクリレートを用いて嵌め込んだ。過剰なアクリレート材料は切り落とし、エナメル表面を露出させた。エナメル標本は600グリットの湿った/乾燥した紙で磨き、ついで超微細ガンマアルミナで磨いた。得られた標本はエナメルの3mmディスクであり、露出している表面以外は全てアクリルで被われていた。
【0064】
次いで、各々のエナメル標本を、0.5 mlの1M HCl04に15秒浸漬するいことによりエッチング処理した。エッチング期間全体にわたり、エッチング溶液を連続的に撹拌した。次いで、各溶液のサンプルを総イオン強度調節バッファー(TISAB)でpH 5.2 (0.25 mlサンプル、0.5 ml TISAB及び0.25 ml 1N Na0H)へと緩衝し、フッ化物含量を、同じ様に調製した標準曲線(1 ml std及び1 ml TISAB)との比較により決定した。エッチングの深さの計算に当たり、エッチング溶液のCa含量は、50μlを取得し、原子吸光によりCaについて分析する(0.05 ml qs 〜5ml)ことにより決定した。これらのデータは、処置前の各標本の固有フッ化物レベルとした。
【0065】
標本を再度、上記のように研磨し磨いた。0.1M乳酸/0.2% Carbopol(登録商標) 907溶液に24時間、室温で浸漬することにより各々のエナメル標本に初期損傷を形成した。こうした標本を次いで蒸留水でよく流し、使用するまで湿潤な環境で保存した。
【0066】
処置は歯磨剤スラリーの上清を用いて行った。スラリーは、1部の歯磨剤及び3部(9g:27ml、w/w)の蒸留水からなるものであった。スラリーを十分に混合し、次いで約10,000 rpmにて10分遠心分離した。次いで標本を25 mlのその割り当てられた上清に、定常的に撹拌しながら(350 rpm)30分浸漬した。処置に続き、標本を蒸留水で洗浄した。次いで各標本からエナメルの層を一つ取得し、上記のようにして(すなわち15秒エッチング)フッ化物およびカルシウムについて分析した。次いで各標本の処置前フッ化物(固有)レベルを、処置後の値から除算し、試験処置に起因するエナメルフッ化物の変化を決定した。
【0067】
統計分析
統計分析は、Sigma Stat ソフトウェア(3.1)を使用し、一元配置分散分析モデルにより行った。
【0068】
結果
結果を以下の表4および図2に示す。
【表4】

【0069】
実施例1及び2での処置は、実施例 3、A、B、及びCよりも統計的に有意に高いEFUをもたらし、全ての処置のうちで実施例1が最も高いEFUをもたらした。実施例 3、A、及びCの間にはEFUの統計的な差異はなかったが、いずれも実施例Bよりは優れていた。
【0070】
図2に言及すると、EFUについては強いpH依存性が認められ、本発明の増粘剤系は、本発明の増粘剤の2つのみを有するほとんど同一の配合(実施例C)との関係において、pH≧6.5ではEFUにより測定するとフッ化物効力の増大がもたらされないことは明らかである。
【0071】
実施例6
エナメル可溶性低下(ESR)
この生体外研究の目的は、pHの関数として、処置後の乳酸による脱ミネラル化に対するエナメル抵抗の増強に関する本発明の効力を決定することであった。歯磨剤の配合は表1にある。
【0072】
手法
歯牙調製
3つの健康なヒト臼歯を、赤いボクシングワックスのディスクに配置し、エナメル表面のみが露出するようにした。各々の歯磨剤試験について、3つの歯からなる1セットを用意した。すべての標本は、軽石スラリーの粉と鎖歯車で洗浄し磨いて、堆積物や染みを除いた。
【0073】
乳酸バッファー調製
2モル(203.58 gの88.5%純粋な)の乳酸を約500 mlの蒸留水に希釈した。これに
約600 mlの蒸留水に溶解させた84 g NaOHの溶液を加えた。次に合計の容積を2000 mlに調節した。これが緩衝化された1.0 M乳酸溶液である。
【0074】
別の1.0乳酸溶液を2モル乳酸を蒸留水2000 mlに希釈することにより調製した。乳酸及び水酸化ナトリウムの溶液を4000 mlビーカーに配置し、pH電極を溶液に配置した。1.0 M乳酸溶液を使用して緩衝化された溶液のpHを4.5に調整した。0.1実用濃度(全ての脱灰のため)を得るために、この1.0 Mバッファーを蒸留水で10倍希釈した。
【0075】
脱保護
各使用に先だって、それ以前の処置による残留する抗可溶性保護を消去する。こうした標本の脱保護は歯を上記に調製した0.1 M乳酸バッファー溶液にて2つの1時間期間エッチング処理することにより達成する。2つの脱保護期間中、3つの標本の各ディスクを約100 mlの乳酸バッファーで室温にて撹拌した。脱保護の直後に歯牙を蒸留水で十分に洗浄した。
【0076】
前処理エッチング
試験は予め加温した(37℃)歯のセット及び乳酸バッファーをインキュベーター内で用いて行った。脱保護した歯のセットを、溶解した赤色ボクシングワックスを用いて1/4インチ直径アクリル製ロッドにマウントした。処置およびエッチングにはマルチプレイス撹拌機を用いた。すべてのスラリー及び溶液は予め37℃に加温した。実際の処置及びエッチングは、予め加温した溶液を用いてベンチトップで行った。エッチング処置には、プラスチック製の標本容器 (120 ml)を用いた。1/4インチの孔を各容器の蓋に穿ち、歯のセットをマウントするプラスチック製のロッドを収容した。40 mlの量の0.1 M乳酸バッファーを、1インチ磁気撹拌棒と共に各容器に配置した。最初の歯のセットのロッドを蓋の孔より押し込み、第1容器に配置し、全てのエナメル表面がバッファー溶液に浸漬するように調節した。次いで容器を第1磁気撹拌機上に配置し、撹拌を開始した。この時点でタイマーを開始させた。30秒の間隔を置いて他の歯のセットも同様に開始した。緩衝化された乳酸溶液への15分の曝露後に第1セットを停止し、直ちに蓋と歯のセットを容器から取りだし、蒸留水のトレイに配置してエッチングを終了させた。他のセットも同様に、30秒間隔でそれらを開始したのと同じ順で取りだし、乳酸バッファー溶液をリン分析のために回収した。歯のセットを、処置ステップの準備のために、37℃水槽に再度配置した。
【0077】
処理
9グラムの量の各歯磨剤を計量し、27 mlの蒸留水をそれぞれに加え十分に混合した。次いで歯磨剤スラリーを10分間、10,000 rpmにて遠心分離した。これにより各々の歯のセットを処置するために十分な上清が調製できた。全ての歯のセットは同時に処置した(各々の製品につき1回)。処置の手法は、エッチング手法と類似していたが、但し、酸の代わりに歯磨剤上清を用いた。歯磨剤スラリーからの30 mlの量の予め加温した上清を第1の歯のセットに加え、歯を上清に浸漬し、容器を第1の撹拌機の上に配置した。撹拌機とタイマーを開始させた。30秒の間隔にて、他の歯のセットも同様に開始させた。5分の処置の終わりに、第1セットを停止し、歯のセットを取りだし、蒸留水で十分に洗浄した。他のセットは30秒間隔で取りだし、十分に洗浄した。処置溶液は廃棄する。
【0078】
後処理
次に二次的な乳酸曝露を前処理エッチングと同じ方法で行い、乳酸緩衝溶液をリン分析のために回収した。前処理および後処理溶液をKlett-Summerson Photelectric Colorimeterを用いて分析した。
【0079】
反復分析
歯のセットを脱保護し、該手法を追加的な回数分、反復し、これにより各々の歯磨剤を各々の歯のセットについて処置しアッセイした。処置の設計はラテン方格法による設計であり、ある処置が連続してさらなる処置に続くことはないようにした。
【0080】
E.S.R.の計算
エナメル可溶性低減のパーセントは、酸前および後の溶液中のリンの量の間の差をプレ溶液中のリンの量で除算しこれに100を積算することにより計算した。
【0081】
統計分析
統計分析は、Sigma Stat ソフトウェア(3.1)を使用し、一元配置ANOVA分散分析モデルを用いて行った。有意な「F」値が見出されたら、スチューデント・ニューマン−クールズ(Student Newman-Keuls) (SNK)検定を用いて、個々の平均値間の統計的に有意な差を決定した。
【0082】
結果
結果を以下の表5および図3に示す。
【表5】

【0083】
実施例 1、2、3、A、及びB (いずれもPAA含有)での処理は、実施例Cと比較して統計的に有意に高いESRをもたらし、全ての処置のうち実施例1が最も高いESRをもたらした。実施例 2、3、A、及びBの間にはESRの統計的な差異はなかった。
【0084】
図3に言及すると、ESRに関しては弱いpH依存性があり、本発明の増粘剤系は、本発明の増粘剤の2つのみを含有するほとんど同一の配合(実施例C)との関係において、ESRにより測定されるとおり、pHにかかわらず増強されたエナメル保護をもたらすことは明らかである。
【0085】
実施例5及び6からは、本発明の配合物は、EFU及びESRにより測定されるとおり、pH ≦6.5においてのみ、増大した、全体としての効力をもたらす、と結論付けることができる。ある実施形態においてpHは5.5〜6.5である。別の実施形態においてpHは5.5〜6.0である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオンの供給源並びに0.01〜1.5重量%のキサンタンガム、0.01〜1.5重量%のポリアクリル酸、0.01〜2.0重量%のカラギナンガム及び増粘性シリカを含む歯磨剤組成物であって、該組成物は5.5〜6.5のpHを有する、該歯磨剤組成物。
【請求項2】
pHが5.5〜6.0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリアクリル酸がカルボマー、アクリル酸/アルキルアクリル酸クロスポリマー又はポリカルボフィルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアクリル酸がカルボマーであり、全組成の0.2〜0.6重量%の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
キサンタンガムが全組成の0.5〜1.0重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
カラギナンガムが全組成の0.1〜0.3重量%の量で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
シリカ性の歯科用研磨剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
フッ化物イオン供給源がフッ化ナトリウムである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
脱感作剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
白色化剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
口臭剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
縞模様の歯磨剤の形態である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−504113(P2012−504113A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528353(P2011−528353)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062499
【国際公開番号】WO2010/037701
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】