説明

新規芳香族プレニルトランスフェラーゼ、それをコードする核酸およびそれらの用途

本発明においては、ナフテルピン生合成に関与するStreptomyces sp.株CL190由来の新規芳香族プレニルトランスフェラーゼOrf2を特定し、その構造を解明した。このプレニルトランスフェラーゼはプレニル基と芳香核含有化合物との間のC-C結合の形成を触媒し、C-O結合形成活性をも示す。例えば以下のようなプレニルトランスフェラーゼの多数の結晶構造が解明されており精密化されている:(1)バッファー分子(TAPS)と複合体形成したプレニルトランスフェラーゼ、(2)ゲラニルジホスフェート(GPP)およびMg2+との二成分複合体としてのプレニルトランスフェラーゼ、ならびに非加水分解性基質類似体ゲラニルS-チオロジホスフェート(GSPP)および(3)1,6-ジヒドロキシナフタレン(1,6-DHN)または(4)フラビオリン(すなわち、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン(THN)の酸化産物である2,5,7-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)のいずれかとの三成分複合体としてのプレニルトランスフェラーゼ。これらの構造は解明されており、それぞれ1.5オングストローム、2.25オングストローム、1.95オングストロームおよび2.02オングストロームまで精密化されている。芳香族プレニルトランスフェラーゼのこの最初の構造は、予想外かつ非正準な(β/α)バレル構造を示す。芳香族基質およびゲラニル含有基質(および類似体)の両方との複合体は活性部位を明らかに示し、プレニル基転移の、提示されている求電子メカニズムに合致している。これらの構造は、芳香族プレニルトランスフェラーゼのこの構造的に特有なファミリーにおけるプレニル鎖長の決定および芳香族補基質認識を理解するためのメカニズムの基礎をも提供する。この構造情報は、タンパク質の芳香族プレニルトランスフェラーゼ活性を予測するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規芳香族プレニルトランスフェラーゼ、それをコードする核酸、芳香族プレニルトランスフェラーゼの結晶形態およびそれらの種々の用途に関する。一実施形態においては、推定芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性および/または基質特異性を予測するための方法を提供する。別の実施形態においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合し及び/又はその活性をモジュレートする化合物を特定するための化合物のスクリーニング方法を提供する。さらに別の実施形態においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの潜在的基質を特定するための化合物のスクリーニング方法を提供する。さらに別の実施形態においては、芳香族構造体をプレニル化するための、ならびに芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を制御および/または改変するための方法を提供する。別の実施形態においては、新たに発見されたベータ/アルファ(β/α)バレル構造を有するタンパク質を特定するための方法を提供する。さらに別の実施形態においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの基質特異性を制御および/または改変するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
自然は、多様な生物学的標的と相互作用するよう進化生成した小さな分子の、大量生産者である。人間の健康の観点からみると、天然物は、多数の第一線の薬、ならびに健康および疾患に関連した基本的な分子経路を解明するための化学的プローブを提供することにより、我々の生活を劇的に変化させてきた。天然物は、US Food and Drug Administrationにより薬として承認される全ての新規化学物質の約半分を提供し続けているが、20世紀の後半における薬物発見は天然物に基づくものから合成ライブラリーに基づくものへと移行した。このパラダイム変化は、大きなコンビナトリアル合成ライブラリーの単純性に対する、小さな天然ライブラリーの複雑性を反映しており、産業用のハイスループットスクリーニング計画の膨大な可能性に対応するよう合理化された。しかし、コンビナトリアル化学ライブラリーからの新規薬物はこの時期には実現せず、依然として天然物が重要な薬物源であった。薬物のような天然物は、コンビナトリアル化合物より遥かに多様な化学的空間(chemical space)を包含し、それにより、この供給源の、豊かな化学的多様性を反映している。
【0003】
単離、特徴づけ、合成および生合成を含む天然物研究における最近の技術進歩は学界および産業界におけるそれらの研究に対する関心を再燃させている。現代の分子生物学の出現に伴い、天然物の構造多様性を新規化学的空間へと更に拡張させる生合成ライブラリーを作製するための新規アプローチにより、この10年の間に生合成の分野が開花した。コンビナトリアル生合成、ムタシンセシス(mutasynthesis)および前駆体標的生合成を含むin vivoアプローチならびに化学合成と酵素学とを組合せた相補的in vitroアプローチ(化学酵素合成)は、天然では決して見出されない新規分子の素晴らしいライブラリーをもたらしている。このようにして生合成により操作された天然物構造クラスには、ポリケチド、非リボソーム性ペプチド、テルペノイドおよびアルカロイドが含まれる。この急成長分野におけるほとんどの進歩は放線菌(土壌細菌)におけるものである。放線菌は、素晴らしい天然物群を提供し、その生合成遺伝子は通常クラスター化しており遺伝子操作に容易に適合しうる。しかし、生合成多様化プラットフォームにはない1つの注目すべき例外は、天然物のハイブリッド イソプレノイドクラスである。
【0004】
多様な化学的骨格のイソプレノイド(テルペノイド)ファミリーのような天然物は有機合成化学界にとって大きな関心事となっている。なぜなら、それらは、挑戦しがいのある合成対象であり、種々の生物活性および医学的特性を有するからである。テルペノイドファミリーのうち、セスキテルペン天然物および関連類似体の全合成が化学文献における主流をなし続けている。構造的に複雑なテルペンの、信頼しうる製造方法に対する要求が、ここ10年間で劇的に増大しており、それに対する関心が増大しつつある。テルペノイドに関するエレガントな合成スキームが開発されてはいるが、低い収率ならびに低いレジオ選択性およびエナンチオ選択性という欠点を有する。操作された大腸菌(E. coli)はmg/Lレベルのセスキテルペン炭化水素を産生する能力を有するが、より生物学的に活性なテルペンは、ヒドロキシル、メチル、アセチル、ハリド、炭水化物およびペルオキシド官能基で高度に官能基化されたものであり、これは、代謝共役に資する内膜系に結びついた多段階生合成メカニズムを要する。生合成の複雑性を合成の多様性と組合せることにより、テルペノイドの技術開発におけるこれらの障害の多くを克服することが可能かもしれない。
【0005】
さらに、テルペン由来残基を含有するハイブリッド化合物は、ヒトの健康において重要な役割を担う多種多様な天然物群を包含する(表1を参照されたい)。歴史的には、このクラスの化合物は、重要な薬物(例えば、抗癌剤ビンクリスチン、抗マラリア剤キニンおよび免疫抑制剤ミコフェノール酸モフェチル)および挑戦しがいのある合成標的(例えば、ストリキニーネおよびレセルピン)を提供した。天然物に加えて、電子伝達系において機能する多数の重要な補酵素(ユビキノンおよびプラストキノン)およびビタミン(トコフェロール、フィロキノンおよびメナキノン)もイソプレノイド基を含有する。
【表1】

【0006】
自然は、イソプレノイドが結合している無数の骨格を構築し、これらにはポリケチド(いわゆる、メロテルペノイド)、フラボノイド、クマリン、キノン、アルカロイド、フェナジンなどが包含される。しばしば、テルペノイド単位は更に、そのビルディングブロックへの結合に際して求電子環化および酸化化学反応により修飾され、それにより、この群で認められる大きな構造多様性をもたらす。これらの天然物のほとんどは種々の鎖長の単一のイソプレノイド単位を含有するが、テトラプレニル化ベンゾイルフロログルシノール誘導体サンプソニオン(sampsonione)A-Iのように複数のイソプレノイド単位を含有するものもある。
【0007】
ハイブリッドイソプレノイドの大多数は真核生物、特に植物に由来する。例えば、1000種を超えるモノテルペノイドインドールアルカロイドが特徴づけられており、これが植物アルカロイドの主要クラスとなっている。一方、テルペノイド、および特にハイブリッドイソプレノイドは、原核生物においては限られた分布しか有しないようである。放線菌は代謝的に非常に豊かな細菌であり、ポリケチド、非リボソーム性ペプチド、アミノグリコシドなどを含む多数の重要な生合成クラスの天然物を産生するが、テルペノイドは顕著に乏しい。その結果、他の天然物構造クラスは薬物発見分野において生合成的に利用されているが、ハイブリッドイソプレノイドは、生化学的および遺伝子レベルにおけるそれらの生合成に対する我々の理解が限られているため、顕著に欠けている。
【0008】
ハイブリッドイソプレノイドが植物、真菌および細菌においてどのようにして生合成されるかに関する基本的理解の大部分は標識前駆体でのフィード(feeding)実験に基づく。イソプレノイドジホスフェートのその小分子ビルディングブロックへの連結に関連する酵素およびそのコード遺伝子は非常に少数であり、ほとんどは、植物天然物、例えばシコニン、ならびに補酵素およびビタミン、例えばユビキノン、プラストキノン、メナキノンおよびトコフェロールに関連している。ごく最近、ストレプトミセス菌抗生物質クロロビオシンおよびノボビオシンならびにラン藻毒素リングビアトキシン(lyngbyatoxin)の生合成に関与する2つの原核生物プレニルトランスフェラーゼ(PTアーゼ)が見出された。これらの可溶性単量体PTアーゼは、真核生物から既に同定されている膜結合型PTアーゼとは対照的なものである。
【0009】
放線菌は、限られた組合せの純粋なハイブリッドテルペノイドを産生するに過ぎない。抗生物質ノボビオシンは、テルペノイド側鎖を有するものとして最初に見出されたストレプトミセス菌天然物であった。それ以来、この群は、ナフトキノン(ナフテルピン、フラキノシン、ナピラジオマイシン)、フェナジン(ラバンデュシアニン(lavanducyanin)、エスチボホエニン(aestivophoenin))、シキミ酸由来キノンおよび他の芳香族基質を含有する他のメンバーを包含するまでに拡大している(図1Bを参照されたい)。フィード実験は、ノボビオシン、ナフテルピンおよびフラキノシンなどに至る多数の生合成経路を明らかにし、放線菌が、そのイソプレンビルディングブロックを合成するためにメバロン酸および非メバロン酸(メチル-D-エリトリトール 4-ホスフェート(MEP))経路の両方を利用することを示した。
【0010】
天然物化学および生合成に関連した新規方法の開発には益々多大な関心が寄せられている。プレニル化芳香族天然物は、非常に有望なクラスの治療用化合物であると考えられている。芳香族化合物のプレニル化は、しばしば、新規C-C結合の生成および最終産物の骨格内への1以上の二重結合の導入の両方により、化合物の生物活性プロファイルにおける有意な改変をもたらす。そのような化合物は哺乳類における多種多様な生物学的系に影響を及ぼすことが可能であり、抗酸化剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗増殖剤および抗癌剤としての役割をになう。
【0011】
プレニルトランスフェラーゼ(PTアーゼ)は、アリル性イソプレンジホスフェートのアルキル部分により、電子に富むプレニル受容物質のアルキル化を触媒する遍在性酵素である。プレニルトランスフェラーゼはイソプレノイドジホスフェートを基質として利用し、イソペンテニルジホスフェート(IPP)、より高次のプレニルジホスフェート、芳香族に富む分子およびタンパク質への非環状プレニル部分の付加を触媒する。これまでのところ、少数の「芳香族」プレニルトランスフェラーゼが単離されているに過ぎず、それらのそれぞれは、限られた範囲の基質および/またはプレニル供与物質としか相互作用しないことが示されている。そのようなプレニルトランスフェラーゼは、その他の点では、名目的に特徴づけされているに過ぎず、そのようなプレニルトランスフェラーゼはいずれも、構造レベルでは特徴づけされていない。
【0012】
したがって、芳香族化合物のプレニル化を促進しうる新規酵素および芳香族化合物のプレニル化をモジュレートしうる化合物の特定が当技術分野で必要とされている。本明細書および特許請求の範囲に詳細に記載されているとおり、本発明はこれら及び他の必要性について検討するものである。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明においては、ナフテルピン生合成に関与するストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)株CL190(Shin-yaら, J. Antibiot. (Tokyo) 43, 444-447 (1990))由来の新規芳香族プレニルトランスフェラーゼOrf2を特定し、その構造を解明した。このプレニルトランスフェラーゼはプレニル基と芳香核含有化合物との間のC-C結合の形成を触媒し、C-O結合形成活性をも示す。例えば以下のようなプレニルトランスフェラーゼの多数の結晶構造が解明されており、精密化されている:(1)バッファー分子(TAPS)と複合体形成したプレニルトランスフェラーゼ、(2)ゲラニルジホスフェート(GPP)およびMg2+との二成分複合体としてのプレニルトランスフェラーゼ、ならびに非加水分解性基質類似体ゲラニルS-チオロジホスフェート(GSPP)および(3)1,6-ジヒドロキシナフタレン(1,6-DHN)または(4)フラビオリン(すなわち、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン(THN)の酸化産物である2,5,7-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)のいずれかとの三成分複合体としてのプレニルトランスフェラーゼ。これらの構造は解明されており、それぞれ1.5オングストローム、2.25オングストローム、1.95オングストロームおよび2.02オングストロームまで精密化されている。芳香族プレニルトランスフェラーゼのこの最初の構造は、予想外かつ非正準(non-canonical)な(β/α)バレル構造を示す。
【0014】
芳香族基質およびゲラニル含有基質(および類似体)の両方との複合体は活性部位を明らかに示し、プレニル基転移の、提示されている求電子メカニズムに合致している。これらの構造は、この構造的に特有な芳香族プレニルトランスフェラーゼのファミリーにおけるプレニル鎖長の決定および基質認識を理解するためのメカニズムの基礎をも提供する。この構造情報は、タンパク質の芳香族プレニルトランスフェラーゼ活性を予測するのに有用である。
【0015】
特に、本開示は、乱交雑(promiscuous)活性を有する2つの新規芳香族プレニルトランスフェラーゼ、すなわち、Streptomyces CL.190由来のOrf2およびStreptomyces coelicolor由来のHypScの特定を記載する。本開示は、多数の芳香族プレニル受容物質に関するOrf2の乱交雑活性に伴うメカニズム的特徴および十分に秩序だったプレニル鎖結合表面を介してプレニル鎖長特異性を調節するその手段を理解するために有用な構造テンプレートを与えるβ/αバレルの新規タイプの高分解能構造をも記載する。該β/αバレルは、芳香族化合物のプレニル化を触媒し、広範な芳香族基質を受容し、疎水性相互作用を利用してアリル性ジホスフェート基質(GPPまたはFPP)の炭化水素部分に結合する。
【0016】
この「生合成バレル」は微生物および植物由来の天然物のプレニル化の操作のための出発点として使用されうることが、本明細書中に示されている。この新たに特徴づけされた小分子プレニルトランスフェラーゼにおける基質特異性に関与する構造の詳細は、酵素設計および進化の構造的に導かれるプロセスを提供することにより、天然で見出される及び合成由来の多数の芳香族化合物の生合成的多様化を可能にして、in vivoトランスジェニックアプローチによる、あるいは究極的にはin vitroコンビナトリアル・ケミストリーのための、新規プレニル化天然物の製造および代謝的操作をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
ナフテルピンは、メバロン酸(MVA)イソプレノイド生合成経路およびポリケチド生合成経路の両方によりStreptomyces sp.株CL 190により産生される生物活性天然物(ヘミテルペノイド抗酸化剤)である(例えば、Shin-yaら, Tetrahedron Lett. 31, 6025-6026 (1990); Shin-yaら, J. Antibiot. (Tokyo) 43, 444-447 (1990); およびSetoら, Tetrahedron Letters 37(44):7979 (1996)を参照されたい;図1Aも参照されたい)。該化合物はテトラヒドロキシナフタレン(THN)誘導体およびゲラニル部分から構成される。THNは、Streptomyces griseus(Funaら, Nature 400, 897-899 (1999)を参照されたい)およびStreptomyces coelicolor(Izumikawaら, J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 30:510- 515 (2003)を参照されたい)からクローニングされたIII型ポリケチドシンターゼ(THNシンターゼ)の作用により5分子のマロニル補酵素A(CoA)から生合成されることが当技術分野で公知である。ナフテルピン、フラキノシン、ナピラジオマイシンおよびマリノンを含む、ナフトキノン環を有する化合物は、対称ポリケチド中間体1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン(THN; Shin-yaら, J. Antibiot. (Tokyo) 43, 444-447 (1990))(図1A)を介して生合成される。Streptomyces griseusおよびStreptomyces coelicolor A3 (2)においては、THNは、THNシンターゼ(THNS)として公知であるカルコンシンターゼ様III型ポリケチドシンターゼ(PKS)の産物である(AustinおよびNoel, Nat Prod Rep 20(l):79-l 10 (2003))。THNは容易に(または酵素的に)酸化されてヒドロキノン誘導体2,5,7-トリヒドロキシ-l,4-ナフトキノン(フラビオリン)を形成し、ついでその一部分が重合を受けて種々の着色重合化合物を形成する(Funaら, Nature 400(6747):897-9 (1999))。
【0018】
THN骨格は、色素産生におけるその役割に加えて、Streptomyces sp.株CL190において更に修飾され、ナフテルピン内に組込まれる(Shin-yaら, J. Antibiot (Tokyo) 45(1): 124-5 (1992))。
【0019】
放線菌においては、現在までに3つのメバロン酸遺伝子クラスターがクローニングされており、すなわち、CL190、Kitasatospora griseola(テルペンテシン産生体)(Hamanoら,Biosci. Biotechnol. Biochem. 65:1627-1635 (2001)を参照されたい)およびActinoplanes sp.株A40644(BE-40644産生体)(Kawasakiら, J. Antibiot. 56:957-966 (2003))からクローニングされている。これらのクラスターのすべてはメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、イソペンテニルジホスフェートイソメラーゼ、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル (HMG)-CoAレダクターゼおよびHMG-CoAシンターゼをコードしている。該遺伝子のそれぞれの順序は同じであり、それぞれの相同遺伝子はお互いに対して50〜80%のアミノ酸同一性を有する。
【0020】
メバロン酸経路遺伝子クラスターの高い保存性とは対照的に、それらの隣接領域には遺伝子の多様性が分布している。例えば、テルペンテシン生合成の鍵酵素であるゲラニルゲラニルジホスフェートシンターゼはメバロン酸キナーゼ遺伝子の直上流領域にコードされており、テルペンテシン生合成遺伝子クラスターは更に上流に位置する。また、BE-40644生合成の鍵酵素であるファルネシルジホスフェートシンターゼはメバロン酸キナーゼ遺伝子の直上流に位置し、BE-40644生合成遺伝子クラスターはメバロン酸経路遺伝子クラスターの下流領域に位置する。
【0021】
これらの事実を総合して、メバロン酸経路遺伝子はクラスター化しており、テルペノイド生合成遺伝子は通常、テルペノイド産生放線菌においてクラスター化しており、メバロン酸経路遺伝子クラスターは、テルペノイド産生放線菌からテルペノイド生合成遺伝子をクローニングするための良好なマーカーとなりうるという仮説を導いた。この仮説に基づき、ナフテルピン生合成遺伝子クラスターをクローニングするために、CL190からクローニングされたメバロン酸経路遺伝子クラスターの隣接領域を配列決定した。
【0022】
この混合テルペン/ポリケチド由来天然物の生合成経路を理解するために、ナフテルピン産生をもたらす遺伝子クラスターを、MVA経路生合成酵素をコードする遺伝子に対する接近性に基づいて特定した。MVA経路遺伝子を含有する遺伝子クラスターの上流領域は、orf1、orf2およびorf3と称される3つの新規なオープンリーディングフレーム(すなわち、orf)を示した。機能的に特徴づけられたタンパク質をコードする遺伝子に対するこれらのorfの比較分析を表2に要約する。PSI-BLAST検索は、Orf2と、3つの他の細菌タンパク質、すなわち、Streptomyces coelicolor A3(2)(HypSc, アクセッション番号AL939130)由来のタンパク質ならびにそれぞれStreptomyces roseochromogenesおよびStreptomyces spheroides NCIMB 11891由来の既に記載されている4-ヒドロキシフェニルピルベート:ジメチルアリルトランスフェラーゼ遺伝子cloQ(アクセッション番号AF329398)およびnovQ(アクセッション番号AF170880)との間の相同性を示した(図1B)。
【0023】
前記の遺伝子の機能を更に理解するために、Orf2遺伝子を破壊することにより突然変異体Streptomyces sp.(株CL190)を作製した。この突然変異体はナフテルピン産生を全く示さなかった。機能的に特徴づけされたプレニルトランスフェラーゼCloQ/NovQ(Pojerら, Proc Natl Acad Sci USA 100:2316-2321 (2003))とOrf2との間の高度の相同性(図1B)、およびTHNSに対してアミノ酸類似性を有するIII型ポリケチドシンターゼをOrf3がコードしているという事実は、orf2が、THNまたはTHN誘導体(orf3(およびおそらくは他の修飾酵素)の作用により産生される)へのゲラニル基転移に関与するプレニルトランスフェラーゼをコードしていることを確証するものである。
【0024】
Orf2は、大腸菌(E. coli)において発現された場合には、307残基を有する33kDaの可溶性単量体タンパク質である。酵素活性を評価するために、精製された組換えOrf2タンパク質を、1以上の芳香族基を有するいくつかの可能な基質(すなわち、プレニル受容物質)と共に以下のプレニル(ゲラニル)供与物質、すなわち、ジメチルアリルジホスフェート(DMAPP, C5)、ゲラニルジホスフェート(GPP,C10)またはファルネシルジホスフェート(FPP, C15)の1つの存在下でインキュベートした。種々のTHN類似体(例えば、1,3-ジヒドロキシナフタレン(1,3-DHN)、1,6-DHN、2,7-DHNおよびフラビオリン)はOrf2に対する基質として機能することが認められており、すなわち、Orf2によりそれらのプレニル化誘導体へと変換される(図2Aおよび2Bを参照されたい)。CloQ/NovQ(Pojerら, 前掲)の基質である4-ヒドロキシフェニルピルビン酸(4-HPP)も、そのプレニル化誘導体へとOrf2により変換された。これとは対照的に、関連分子であるフェニルアラニンおよびチロシンは基質として働かなかった(図2Bを参照されたい)。DMAPPでは活性は観察されず、GPPで最高の相対活性が観察され、FPPで弱い活性が観察された。要約すると、Orf2は種々の基質を認識する。
【0025】
さらに、ジヒドロキシ含有THN類似体で、有意なMg2+依存性in vitro活性が認められる(図2Aおよび2B)。例えば、Orf2を1,6-DHNおよびGPPと共にインキュベートした場合に、2つのプレニル化産物1,6-DHN-P1および1,6-DHN-P2が薄層クロマトグラフィーにより容易に検出された(TLC, 図2Aおよび2B)。GPPおよび1,6-DHNの存在下での大規模なインキュベーションは、MSおよび1H NMRの両方の分析によるそれらの構造解明を可能にする相当な量の両方の産物(おおよその比は10:1)を産生した。これらの化合物(トランス-5-ゲラニル 1,6-DHNおよびトランス-2-ゲラニル 1,6-DHN)は新規天然物であると考えられている(図2Aを参照されたい)。
【0026】
新規芳香族天然物の多様化のためのテンプレートとしてOrf2が機能する可能性を、種々のフラボノイド、イソフラボノイドおよび関連化合物(例えば、レスベラトロール; 図2Bを参照されたい)と相互作用するOrf2の能力をアッセイすることにより実証した。ダイドゼイン(daidzein)(7,4'-ジヒドロキシイソフラバノン)、ホルモノネチン(formononetin)(7-ヒドロキシ, 4'-メトキシイソフラバノン)、ゲニステイン(genistein)(5,7,4'-トリヒドロキシイソフラボン)およびレスベラトロール(resveratrol)(3,4',5-トリヒドロキシスチルベン)の存在下ではOrf2はプレニルトランスフェラーゼ活性を示したが、同じ試験条件においてフィセチン(fisetin)(3,3',4',7-テトラヒドロキシフラボン)の存在下では活性はほとんど又は全く観察されなかった。ナリンゲニン(naringenin)(5,7,4'-トリヒドロキシフラバノン)およびGPPの存在下、2つの反応産物、6-ゲラニルナリンゲニンおよび7-O-ゲラニルナリンゲニンが特定された(MSおよび1H NMRの両方の分析により; 図2Bを参照されたい)。6-ゲラニルナリンゲニン(ボナンニオン(bonannione)Aとしても知られている; Bruno, Heterocycles 23(5): 1147-1153 (1985)を参照されたい)は、有意な抗細菌活性を示すプレニル化フラバノンである(Schutz, Phytochemistry 40:1273-1277 (1995))。7-O-ゲラニルナリンゲニンは、イソフラボンにおいて時々見出されるに過ぎないエーテル部分の形態を有するプレニル単位を含有する、新規プレニル化フラボノイドである。
【0027】
ホップにおいて微量成分であるに過ぎない6-ゲラニルナリンゲニンは、より豊富なホップフラボノイドである2',4',6',4-テトラヒドロキシ-3'-ゲラニルカルコンの異性化(環化)により形成される。興味深いことに、Cladosporium herbarumを試験真菌として使用して、種々の黄花ルピナス成分の抗真菌活性が報告されている。イソフラボンの場合、6-プレニルおよび3'-プレニル化合物が8-プレニル類似体より真菌毒性であること、および環化誘導体へのプレニル基の変換が該真菌毒性作用を著しく軽減または排除することが見出された。
【0028】
Orf2はオリベトールおよびオリベトール酸の存在下においても活性であった(図2Bを参照されたい)。これらの化合物は、治療用植物由来ポリケチド-テルペン天然物Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)の生合成における中間体である。Δ9-THCは、タイマ(Cannabis sativa)において見出される主要精神活性成分である。その合成類似体、すなわち、ドロナビノール(dronabinol)は、悪心/嘔吐を軽減するために、ならびに癌およびエイズ患者における体重減少に対処するために食欲を刺激するために現在使用されている。タイマにおける主要精神活性成分であるΔ9-THCは、主として、2つの特異的カンナビノイド受容体(CB1およびCB2)を活性化することにより脳に影響を及ぼす。これらの受容体は、人体により天然で産生される「内因性」カンナビノイドにも結合する。カンナビノイドシグナル伝達系の最近の研究は、絶えず増加しつつある数の病理学的条件へのその関与を示している。タイマ(Cannabis sativa)におけるΔ9-THC生合成に関与するゲラニルプレニルトランスフェラーゼ活性は現在のところ、細胞抽出物において検出されているに過ぎないため、Δ9-THC生合成の2つの推定中間体であるオリベトールおよびオリベトール酸の両方の存在下でOrf2の活性を試験することにした。両方のΔ9-THC前駆体で、Orf2の反応産物がTLC上で検出された。これは、オリベトレート分子の存在下においてのみ活性が観察されたタイマ内因性酵素とは異なる。これらの結果は、エンドカンナビノイド(endocannabinoid)系をモジュレートする能力に基づき新規治療への道を切り開くために非常に有望である。
【0029】
したがって、本発明においては、β/αバレル構造を有する芳香族プレニルトランスフェラーゼを提供する。
【0030】
本明細書中で用いる「β/αバレル構造」なる語は、本明細書中に更に詳しく説明されているとおり、中央βバレルコアの周囲に配置された逆平行βストランドを含む閉じたβシートであって、それ自体がαヘリックスの環により包囲されていて該β/αバレルの外部溶媒露出表面を形成しているものを意味する。したがって、芳香族プレニルトランスフェラーゼは、特有のβ/αバレル二次構造を有すると理解される。
【0031】
このタンパク質は、混合ポリケチド-イソプレノイド生合成経路、すなわちナフテルピン生合成に関与する最初に特定され構造的に特徴づけられた酵素である。このタンパク質ファミリーはStreptomyces細菌から特定され特徴づけられたが、植物には多数のプレニル化芳香族天然物が見出されている。例えば、治療的に重要な天然物であるテトラヒドロカンナビノール(THC)は混合ポリケチド-イソプレノイドである。生合成の理屈からすると、植物は、構造および機能においてOrf2に類似した酵素を含有すると考えられるが、そのような酵素は未だかつて特定されていない。この可能性を考慮すると、Orf2/CloQ/NovQ/HypScは、触媒的に興味深い広範な酵素ファミリーの最初に特定されたメンバーであると考えられる。
【0032】
本発明の典型的な芳香族プレニルトランスフェラーゼは配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的変異を有する。ただし、該変異ポリペプチドはプレニルトランスフェラーゼ活性を保有する。本明細書中で用いる「保存的変異」は、アミノ酸残基の、別の生物学的に類似した残基による置換を意味する。保存的変異の具体例には、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンのような1つの疎水性残基から別の疎水性残基への置換、あるいは1つの極性残基から別の極性残基への置換、例えば、アルギニンからリシンへ、グルタミン酸からアスパラギン酸へ、またはグルタミンからアスパラギンへの置換などが含まれる。保存的置換の他の例示的具体例には、アラニンからセリンへ、アルギニンからリシンへ、アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへ、アスパラギン酸からグルタミン酸へ、システインからセリンへ、グルタミンからアスパラギンへ、グルタミン酸からアスパラギン酸へ、グリシンからプロリンへ、ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへ、イソロイシンからロイシンまたはバリンへ、ロイシンからバリンまたはイソロイシンへ、リシンからアルギニン、グルタミンまたはグルタミン酸へ、メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへ、フェニルアラニンからチロシンへ、ロイシンからメチオニンへ、セリンからトレオニンへ、トレオニンからセリンへ、トリプトファンからチロシンへ、チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへ、バリンからイソロイシンまたはロイシンへなどの変化が含まれる。「保存的変異」なる語は、非置換アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することをも包含する。
【0033】
ここで意図される修飾および置換はアミノ酸の置換に限定されるものではない。安定性の増強、溶解度の増加または立体配置関係のような種々の目的に、当業者は、他の修飾を(例えば欠失、置換または付加により)導入する必要性を認識する。そのような他の修飾の具体例には、希有アミノ酸、D-アミノ酸、グリコシル化部位、シトシン(特異的ジスルフィド架橋形成のため)の組込みが含まれる。修飾ペプチドを化学合成することが可能であり、あるいは単離された遺伝子を部位特異的に突然変異誘発させることが可能であり、あるいは合成遺伝子を合成し、細菌、酵母、バキュロウイルス、組織培養などにおいて発現させることが可能である。
【0034】
配列番号2に記載のアミノ酸配列と実質的に同一である配列を有する芳香族プレニルトランスフェラーゼも本発明において意図される。「実質的に同一」は、ポリペプチドまたは核酸が基準アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の相同性を示すことを意味する。ただし、「実質的に同一」なポリペプチドはプレニルトランスフェラーゼ活性を保有する。
【0035】
あるいは、本発明の芳香族プレニルトランスフェラーゼは配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。配列相同性および同一性は、しばしば、配列解析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705のSequence Analysis Software Package)を使用して測定される。2以上の核酸またはポリペプチド配列の場合の「同一性」なる語は、2以上の配列または部分配列が、多数の配列比較アルゴリズムを使用して又は手動アライメントおよび目視検査により測定された場合に、比較ウィンドウまたは示された領域にわたって、最大一致度となるようアライメントされ比較された場合に、同一である、または特定された割合の同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有することを指す。2以上の核酸またはポリペプチド配列の場合の「相同性」なる語は、2以上の配列または部分配列が、多数の配列比較アルゴリズムを使用して又は手動アライメントおよび目視検査により測定された場合に、比較ウィンドウまたは示された領域にわたって、最大一致度となるようアライメントされ比較された場合に、相同である、または特定された割合の相同なアミノ酸残基またはヌクレオチドを有することを指す。前記のプログラムは、比較されている配列の間の相同性の度合を決定することにより、類似アミノ酸によるアミノ酸の置換を許容する。
【0036】
配列比較の場合、典型的には、1つの配列を基準配列として使用し、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験配列および基準配列をコンピューターに入力し、必要に応じて配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターを使用することが可能であり、あるいは代替パラメーターを指定することが可能である。ついで該配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメーターに基づき、基準配列に対する試験配列の配列同一性(%)を計算する。
【0037】
本明細書中で用いる「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適にアライメントされた後で同数の連続的残基の基準配列に対して配列が比較されうるセグメント(典型的には約20から約600個までの連続的残基)に対する言及を含む。比較のための配列のアライメントの方法は当技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適アライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. MoI. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Person & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sd. USA 85:2444 (1988)の類似性方法のための検索、これらのアルゴリズムの電算化実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または手動アライメントおよび目視検査により行うことが可能である。相同性または同一性を決定するための他のアルゴリズムには、BLAST(National Center for Biological InformationにおけるBasic Local Alignment Search Tool)プログラムに加えて、例えば、ALIGN、AMAS(Analysis of Multiply Aligned Sequences)、AMPS(Protein Multiple Sequence Alignment)、ASSET(Aligned Segment Statistical Evaluation Tool)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN(Biological Sequence Comparative Analysis Node)、BLIMPS(BLocks IMProved Searcher)、FASTA、Intervals & Points、BMB、CLUSTAL V、CLUSTAL W、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、Smith-Watermanアルゴリズム、DARWIN、Las Vegasアルゴリズム、FNAT(Forced Nucleotide Alignment Tool)、Framealign、Framesearch、DYNAMIC、FILTER、FSAP(Fristensky Sequence Analysis Package)、GAP(Global Alignment Program)、GENAL、GIBBS、GenQuest、ISSC(Sensitive Sequence Comparison)、LALIGN(Local Sequence Alignment)、LCP(Local Content Program)、MACAW(Multiple Alignment Construction & Analysis Workbench)、MAP(Multiple Alignment Program)、MBLKP、MBLKN、PIMA(Pattern-Induced Multi-sequence Alignment)、SAGA(Sequence Alignment by Genetic Algorithm)およびWHAT-IFが含まれる。そのようなアライメントプログラムは、実質的に同一な配列を有するポリヌクレオチド配列を特定するためにゲノムデータベースをスクリーニングするためにも使用されうる。多数のゲノムデータベースが利用可能であり、例えば、ヒトゲノムの相当な部分がHuman Genome Sequencing Project(J. Roach, URL “weber.u.Washington.edu/~roach/human_ genome_ progress 2.html”におけるワールド・ワイド・ウェブ(www)でアクセス可能)(Gibbs, 1995)の一部として利用可能である。いくつかの機能情報を伴ってアノテーションされたゲノム情報を含有するいくつかのデータベースが種々の機関により維持されており、ワールド・ワイド・ウェブ(www)上のインターネットを介して、例えばURL“tigr.org/tdb”、“genetics.wisc.edu”、“genome-www.stanford.edu/~ball”、“hiv-web.lanl.gov”、“ncbi.nlm.nih.gov”、“ebi.ac.uk”、“Pasteur.fr/other/biology”および“genome.wi.mit.edu”においてアクセス可能である。
【0038】
有用なアルゴリズムの一例としてBLASTおよびBLAST 2.0が挙げられ、これらはそれぞれAltschulら, Nucl. Acids Res. 25:3389-3402 (1977) およびAltschulら, J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアはURL“ncbi.nlm.nih. gov”のワールド・ワイド・ウェブ(www)のNational Center for Biotechnology Informationから公に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワードと整列された場合に幾つかの正値閾値スコア(positive-valued threshold score)Tにマッチする又はそれを満足する、エントリー配列内の長Wの短いワードを特定することにより、ハイスコアリング配列ペア(HSP)を最初に特定することを含む。Tは近傍ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と称される(Altschulら, 前掲)。これらの初期類似ワードヒットは、それらを含有する、より長いHSPを見出すための検索を開始するためのシード(seed)として働く。累積アライメントスコアが増加する限り、該ワードヒットを各配列に沿って両方向へ伸長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合には、パラメーターM(マッチ残基のペアに関する報酬(reward)スコア; 常に> 0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合には、累積スコアを計算するためにスコアリングマトリックスを使用する。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少した場合、1以上の負スコア残基アライメントの蓄積のために累積スコアが0以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは該アライメントの感度および速度を定める。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4および両鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列の場合には、BLASTPプログラムは、3のワード長(W)、および10の期待値(E)、および50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照されたい)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4および両鎖の比較をデフォルトとして用いる。
【0039】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析を行う(例えば、KarlinおよびAltschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873 (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の尺度の1つは最小総和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間のマッチが偶然に生じる確率の指標を与える。例えば、基準核酸に対する試験核酸の比較における最小総和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合には、核酸は基準配列に類似しているとみなされる。
【0040】
一実施形態においては、タンパク質および核酸配列相同性を、Basic Local Alignment Search Tool(「BLAST」)を使用して評価する。特に、以下のタスクを行うために5つの特定のBLASTプログラムを使用する。
【0041】
(1)BLASTPおよびBLAST3はタンパク質配列データベースに対してアミノ酸エントリー配列を比較する。
【0042】
(2)BLASTNはヌクレオチド配列データベースに対してヌクレオチドエントリー配列を比較する。
【0043】
(3)BLASTXはタンパク質配列データベースに対してエントリーヌクレオチド配列(両鎖)の6フレームの概念上の翻訳産物を比較する。
【0044】
(4)TBLASTNは、全6リーディングフレームにおいて翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対してエントリータンパク質配列を比較する。
【0045】
(5)TBLASTXはヌクレオチド配列データベースの6フレーム翻訳物に対してヌクレオチドエントリー配列の6フレーム翻訳物を比較する。
【0046】
BLASTプログラムは、好ましくはタンパク質または核酸配列データベースから得られる試験配列とエントリーアミノまたは核酸配列との間で「ハイ・スコアリング・セグメント・ペア(high-scoring segment pair)」と本明細書中で称される類似セグメントを特定することにより、相同配列を特定する。ハイ・スコアリング・セグメント・ペアは、好ましくは、スコアリングマトリックス(その多くが当技術分野で公知である)を使用して特定(すなわち、アライメント)される。好ましくは、使用するスコアリングマトリックスはBLOSUM62マトリックス(Gonnetら, Science 256:1443-1445 (1992); HenikoffおよびHenikoff, Proteins 17:49-61 (1993))である。それほど好ましいわけではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用されうる(例えば、SchwartzおよびDayhoff編, Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation (1978)を参照されたい)。BLASTプログラムはU.S. National Library of Medicineを介してアクセス可能であり、例えば、ncbi.nlm.nih.gov.におけるワールド・ワイド・ウェブ(www)上でアクセス可能である。
【0047】
前記アルゴリズムと共に使用するパラメーターは、調べる配列長および相同性の度合に応じて適合化されうる。いくつかの実施形態においては、パラメーターは、使用者からの指示無しにアルゴリズムにより使用されるデフォルトパラメーターでありうる。
【0048】
本発明の別の態様においては、遺伝コードの縮重により含まれるすべての変異を含む前記プレニルトランスフェラーゼのいずれかをコードする核酸を提供する。本発明の典型的な核酸には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、配列番号1に記載のヌクレオチド配列(またはその相補体)に特異的にハイブリダイズする、芳香族プレニルトランスフェラーゼをコードする核酸が含まれる。
【0049】
ハイブリダイゼーション法は分子生物学の当業者によく知られている。「特異的にハイブリダイズしうる」および「特異的に相補的」は、第1核酸とDNAまたはRNA標的との間で安定かつ特異的な結合が生じるのに十分な程度の相補性を示す用語である。第1核酸は、特異的にハイブリダイズしうるその標的配列に100%相補的である必要はない。特異的結合が望まれる条件下で、非標的配列への第1核酸の非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する場合に、第1核酸は特異的にハイブリダイズする。そのような結合は特異的ハイブリダイゼーションと称される。
【0050】
2つの核酸分子が密接に関連していることを示すもう1つの指標は、それらの2つの分子がお互いにハイブリダイズすることである。ある実施形態においては、orf2核酸変異体は、低いストリンジェンシー、中等度または高いストリンジェンシー条件下、開示されているorf2核酸配列(またはその断片)にハイブリダイズする。個々の度合のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、選択するハイブリダイゼーション法の性質ならびにハイブリダイズする核酸配列の組成および長さによって様々である。洗浄回数もストリンジェンシーに影響を及ぼすが、一般には、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーションバッファーのイオン強度(例えば、Na+濃度)がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する。個々の度合のストリンジェンシーを得るのに必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算はSambrookら (編), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989, chapters 9 and 11に記載されている。
【0051】
以下の典型的な組合せのハイブリダイゼーション条件は限定的なものではない。高いストリンジェンシー条件は、5×SSC中、65℃で16時間のハイブリダイゼーション、2×SSC中、室温(RT)でそれぞれ15分間の2回の洗浄および0.5×SSC中、65℃でそれぞれ20分間の2回の洗浄を含む。中等度のストリンジェンシー条件は、5×〜6×SSC中、65℃〜70℃で16〜20時間のハイブリダイゼーション、2×SSC中、室温でそれぞれ5〜20分間の2回の洗浄および1×SSC中、55℃〜70℃でそれぞれ30分間の2回の洗浄を含む。低いストリンジェンシー条件は、6×SSC中、室温〜55℃で16〜20時間のハイブリダイゼーションおよび2×〜3×SSC中、室温〜55℃でそれぞれ20〜30分間の2回の洗浄を含む。
【0052】
あるいは、本発明の核酸には、配列番号1に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、芳香族プレニルトランスフェラーゼをコードする核酸が含まれる。
【0053】
プレニル鎖長決定、芳香族基質選択性およびプレニル基転移のメカニズムに伴う構造的特徴を調べるために、4つのOrf2基質/基質類似体複合体[すなわち、TAPSバッファー分子と複合体形成したOrf2、GPPおよびMg2+を含有する二成分Orf2複合体、非加水分解性GPP類似体(GSPP)、Mg2+および1,6-DHNとの三成分Orf2複合体、ならびにGSPP、Mg2+およびフラビオリンとの三成分Orf2複合体]のX線結晶構造を決定した(結果を表3に要約する)。
【0054】
Orf2の三次元構造は、新規バレルタイプの構造を形成する単一ドメインよりなる(図3)。本明細書中ではβ/αバレルと称されるこの新規バレルは、中央βバレルコアを形成するのに十分な逆平行βストランド(典型的には約6から12個までの範囲のβストランド)を含む閉じたβシートであり、該中央βバレルコアは、該バレルの外部溶媒露出表面を形成するαヘリックスの環により包囲されている(図3B)。β/αバレル構造が10個のβストランドを含む特定の例においては、二次結合性は(ααββ)5分類にほぼ適合するが、共に結晶格子内のプロトン間接触に関与するヘリックス6および8がヘリックス「キンク」を示す(ααββ)4-(αββ)-α命名法を用いて、より詳しく説明される。
【0055】
β/αバレルの最も疎水性の部分は、円筒状βバレルの外部表面と包囲αヘリックスのベルトとの間に存在する領域である。また、該バレルの内部に位置する多数の疎水性残基は、GPPおよびGSPP分子のプレニル尾部を収容し、一方、それぞれ基質および基質類似体のジホスフェートまたはチオ-ジホスフェート頭部基は、該バレルの、「上方」の、より極性な末端部を向き、ここに、Mg2+イオンが配位している。典型的には、該バレルの底は、短いC末端ヘリックスでキャップされている。β/αバレル構造が10個のβストランドを含む特定の例においては、該C末端ヘリックスはα11となる。
【0056】
TIMバレルまたはβバレル構造ファミリー(それらは共に、β/αバレルとは顕著に異なる結合パターンを有するバレルフォールドを示す)に属する構造的に関連したタンパク質が、本明細書中に例示されている(図3を参照されたい)。TIMバレルタンパク質(すなわち、pdbエントリーコード2ACQにより代表されるアルド-ケトレダクターゼファミリー)は、たいていは8個の反復を含有する反復βストランド-ループ-αヘリックス-ループモチーフよりなり、ここで、該平行βストランドは、開いたバレルの内部を形成しており、該ヘリックスは完全タンパク質の外部ベルトを形成している(GerltおよびRaushel, Curr Opin Chem Biol 7(2):252-64 (2003))(図3A)。
【0057】
ヒト脂肪酸結合性タンパク質(FABP, pdbエントリーコード1HMT)を含むβバレルタンパク質は、2つの短いαヘリックスにより底がキャップされた楕円形バレルとして配置された10個の逆平行βストランドよりなる(Sacchettiniら, J Mol Biol 208(2):327-39 (1989); Xuら, J Mol Biol 268(11):7874-84 (1993))(図3D)。
【0058】
ヘリックスにより包囲された楕円形βバレルを示すもう1つのクラスのタンパク質は二量体フェレドキシン様α+βサンドイッチフォールドであり、S. coelicolor A3由来のActVA-Orf6モノオキシゲナーゼ(pdbエントリーコード1LQ9)は後者のクラスに属し、βシートとαヘリックスとの間に位置する2つの活性部位において、比較的大きな三環性芳香族基質を酸化する小さな酵素である(図3C)。
【0059】
α/βバレルは、大きな構造体(少なくとも200アミノ酸)として定められており、主として、交互のαヘリックスおよびβストランドから構成され、平行βストランドは、アルファヘリックスの「タイヤ」により包囲された「ハブ(hub)」を形成し(BrandenおよびTooze, Introduction to protein structure. Second edn. (1999), New York: Garlandを参照されたい)、一方、α+βクラスは、主として逆平行βシートを有するが分離(segregated)したαヘリックスおよびβシート領域を有するタンパク質を包含する。この点に関して、αヘリックスにより連結された平行βストランドから専ら構成されるタンパク質ドメインを含むα/βクラスの定義は、Orf2の新規構造であるβ/αバレルを含むよう拡張されるべきであると提案されている。β/αバレルは、α/βクラスのサブカテゴリーとして、αヘリックスにより連結され包囲された逆平行βストランドを含むがα/βバレルサブカテゴリーとは異なる新規β/αバレルのカテゴリーを導入する。
【0060】
興味深いことに、最後のタイプのバレルであるα-αバレルドメインは、Rasおよび幾つかの他のシグナル伝達タンパク質のカルボキシル末端プレニル化を触媒するヘテロ二量体ヒトタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニット内に見出すことができる(Parkら, Science 275(5307): 1800-4 (1997))(図3D)。このドメインは、非常に異なる全体的フォールドを示すが、Orf2に関して本明細書に記載されているとおり、類似した芳香族リッチ基質結合ポケットおよび活性部位トポロジーを示す(Parkら, 前掲; Longら, Nature 419(6907):645-50 (2002))。
【0061】
実際、イソプレニルジホスフェートシンターゼ、タンパク質プレニルトランスフェラーゼおよびプレニルトランスフェラーゼ(PTアーゼ)はすべて、プレニル化合物の結合に関与しており、活性部位環境に関して類似した方法を利用しているようである。ほとんどの場合、プレニル鎖結合は、高度に保存された残基を有する大きな疎水性トンネル内で生じる。トランス型ファルネシルジホスフェートシンターゼの構造は、4層ヘリックス束を形成するようホモ二量体として会合した2つの同一サブユニットを示す。これらのヘリックスのうちの8個は、タンパク質プレニルトランスフェラーゼに関して既に記載されているα-αドメインと同様にドメイン内に集合している。シス型二量体酵素である、E. coliおよびM. luteus由来のウンデカプレニルピロホスフェートシンターゼ(UPPS)の構造は、2つのαヘリックスおよび4つのβストランドによりそれぞれが包囲された2つの疎水性トンネルを示す。どちらのUPPS酵素も、ほとんどの他のトランス-プレニルトランスフェラーゼおよびテルペンシンターゼにおいて見出される古典的プレニルジホスフェートMg2+結合モチーフ(すなわち、(N/D)DXXDモチーフ)をそれらが共に欠く場合であっても、活性のためにMg2+を要する。ペンタレンシンターゼ、5-エピ-アリストロケンシンターゼおよびトリコジエンシンターゼのようなテルペノイドシクラーゼの構造は、イソプレニルピロホスフェートシンターゼおよびタンパク質プレニルトランスフェラーゼにおいても見られるとおり、10〜12個の大抵は逆平行のαヘリックスを有する「テルペノイドシンターゼフォールド」と称される類似した構造特徴を有する(Liang, Eur J Biochem 269(14):3339-54 (2002)を参照されたい)。前記で引用した構造のすべては、本明細書に記載のβ/αバレルフォールドとは著しく異なる。
【0062】
第1 Orf2構造における結合TAPS分子はジホスフェート結合部位のおよその位置をAsp62付近に仮説的に示したが(図4A)、GPPまたは非加水分解性類似体GSPPと複合体形成した構造は、完全なGPP基質の認識および結合に関与する残基を明確に定める(図4Bおよび4C)。該バレルの開いた極性末端部の付近に位置するLys 119、Asn 173およびArg 228はGSPP分子の末端βホスフェートに水素結合している(図4C)。ゲラニル鎖に結合したαホスフェートはTyr 216およびLys 284に水素結合しており、また、Mg2+イオンに配位している。このMg2+イオンの完全配位幾何構造は完全な八面体対称を示し、4つのエクアトリアルに配置された水分子および2つのアキシアルに位置した酸素原子がAsp62の側鎖カルボキシレートおよびGSPP分子のαホスフェート非架橋性酸素により補われている(図4Bおよび4C)。(N/D)DXXDモチーフが存在しないにもかからわず、第2の良く保存された残基であるAsp 110は、三次元構造においてAsp 62の近傍に位置し、4つのエクアトリアルに配置された水分子の1つを介してMg2+イオンに間接的に配位している。Tyr 121は、ジホスフェート部分をC10ゲラニル鎖に連結する架橋性原子(GSPP内の硫黄およびGPP内の酸素)の水素結合距離内に位置する。最後に、GPPまたはGSPP分子の疎水性ゲラニル鎖はVal 49、Phe 123、Met 162、Tyr 175およびTyr 216の側鎖に寄り掛かっている(図4C)。
【0063】
Mg2+、GSPPおよび1,6-DHNまたはフラビオリンのいずれかとの三成分複合体は芳香族基質結合部位の化学的性質を示す(図4A、4Bおよび4C)。1,6-DHNはGSPPプレニル尾部に寄り掛かっており、Met 162およびPhe 213の側鎖間で分離されている。短いC末端ヘリックスにより与えられるGln 295およびLeu 298側鎖は、Phe 213、Ser 214およびTyr 288の側鎖を介して生じる追加的な接触を伴う基質結合ポケットの壁に沿って位置する。フラビオリンは、1,6-DHNとは若干異なる位置で結合し、水素結合の剰余ペアがSer 214、Tyr 288およびGln 295で形成され、一方、1,6-DHNおよびフラビオリンの両方の芳香族平面は同じ活性部位配向で位置する(図4A)。
【0064】
いずれの理論によっても束縛されるものではないが、該基質および産物の構造はアルキル化の場合の求電子芳香核置換に合致する。理論的には、芳香族基質のプレニル化に関して2つの触媒メカニズムが考えられうる。1つは、GPPのC1炭素上で炭素媒介求核攻撃を引き起こすものであり、ジホスフェート部分が、ジホスフェート結合部位の塩基性およびMg2+配位により安定化される脱離基として働く。このSn2様メカニズムはタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼに関して記載されている(Parkら, 前掲; Longら, 前掲)。第2のメカニズムは、アリル性ジホスフェート生合成およびプレニル基環化に関与するテルペンシンターゼを連想させるものであり、FPPシンターゼ(Tarshisら, Biochemistry 33(36):10871-7 (1994))および二次代謝の多数のテルペンシンターゼ(シクラーゼ)(Cane, Comprehensive Naturals Products Chemistry: Isoprenoids, D. E. Cane編, 1998, Elsevier Science: Oxford, UK)のトランス-プレニルトランスフェラーゼ反応に関して提示されているとおりのカルボカチオン媒介求電子捕捉を引き起こす。
【0065】
プレニル化のための部位であると特定されている1,6-DHNのC5原子またはフラビオリンのC3原子とGSPPのC1原子との間の距離はそれぞれ4オングストロームおよび7オングストロームである。注目すべきことに、これらの距離は、結合ファルネシルジホスフェート(FPP)分子のC1原子とペプチド基質上のCys残基との間のヒトタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼにおいて最近記載された7.3オングストロームの分離(Long, 2002 前掲)に近い。プレニルトランスフェラーゼに関してSn2様メカニズムが提示されているとしても、基質および産物の構造と、切断されたプレニル鎖のコンホメーション変化が要求されることとを併せて考えると、これらの距離は芳香族基質のOrf2媒介アルキル化に関する求電子芳香核置換メカニズムに符合する(図5を参照されたい)。
【0066】
プレニル受容基として働く1,6-DHNを有するOrf2により触媒される全反応に関するモデルを、図5に示す。まず、Mg2+配位、Lys 119、Arg 228、Asn 173およびLys 284との静電的水素結合ならびに補基質結合により誘発されるジホスフェート部分のイオン化によりカルボカチオン中間体が生じると提示される。ゲラニルカルボカチオンの正荷電C1原子は、プレニル受容物質上の7オングストローム離れた位置の標的二重結合に向かって回転する(ヒトタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼに関して既に記載されているとおり; Long, 2002, 前掲も参照されたい)。Tyr 121、Tyr 175およびTyr 216を含み、GPPの10個の原子を包囲し、ヒトタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼにおいて観察されたもの(Parkら, 前掲; Longら, Biochemistry 37(27):9612-8 (1998))に類似した「チロシンベルト」が、カチオン-π相互作用を介してカルボカチオン中間体を安定化し配置するのを助けるのかもしれない(WiseおよびCroteau, Comprehensive Naturals Products Chemistiy: Isoprenoids, D. E. Cane編, 1998, Elsevier Science: Oxford, UK)。
【0067】
この工程は、共鳴安定化カルボカチオンまたはσ錯体を形成する、1,6-DHN分子のC5原子への反応性求電子物質の結合を含む(OlahおよびMo, J. Am. Chem. Soc. 94:9241 (1972))(図5)。最後に、GPP分子のジホスフェート部分と相互作用するTyr 216は、該ジホスフェート部分に結合しており補基質結合位置の直上に位置する保存され十分に秩序だったネットワークの水分子に水素結合している。図5において強調表示されているこれらの水分子の1つは、理想的には、カチオンσ錯体のプレニル化C5原子から酸性プロトンを引き抜くよう配置されていて、共有結合ゲラニル鎖を今や含有する中性芳香核の回復を可能にする。
【0068】
ある活性部位残基の酵素的重要性を確認するために、Orf2の予備的突然変異研究を行い、突然変異酵素を含有する細胞抽出物を使用して残存活性をモニターした。D62SおよびD62N単一突然変異ならびにD62S/S51RおよびD62N/S51K二重突然変異体はGPPの存在下(Mg2+の存在下または非存在下)でのみ、残存活性を示したが、D62A単一突然変異体では、GPPまたはDMAPPのいずれをプレニル供与物質として使用しても、検出可能な活性は観察されなかった。このことはD62の触媒過程におけるD62の重要性を示している。
【0069】
プレニルジホスフェート鎖長選択性、芳香族基質認識の分子的決定因子および二価カチオン依存性を明らかにするために、CloQ(Streptomyces roseochromogenes, アクセッション番号AF329398)、NovQ(Streptomyces spheroides NCIMB 11891, アクセッション番号AF170880)およびHypSc(Streptomyces coelicolor A3(2), アクセッション番号AL939130)配列の相同性モデリングを、構造テンプレートとしてOrf2の三次元構造を用いて行った(図6)。これらの配列間の大きな度合の全体的配列類似性およびOrf2とCloQ/NovQ/HypScとの間の相当な度合の活性部位保存性は、芳香族プレニルトランスフェラーゼのこのファミリーに関するβ/αバレルフォールドの保存性を示している。
【0070】
HypScモデルにおいては、Asp 62はAsn残基により置換され、Arg残基によるSer 52の置換により相補される。また、CloQ/NovQモデルにおいて観察されるとおり、Arg 65とGlu 278との間の塩橋の存在は、モデリングからは、C5より長いアルキル鎖(すなわち、C10またはC15)へのプレニル供与物質の結合を妨げることがわかる。このモデリング解析から、Streptomyces coelicolor由来の推定タンパク質はDMAPP特異性およびMg2+非依存的プレニルトランスフェラーゼ活性を示すと予想される。
【0071】
このモデルを実証するために、HypScをゲノムDNAからサブクローニングし、大腸菌(E. coli)内でオクタ-ヒスチジンタグ付きタンパク質として過剰発現させ、Ni2+-キレート化クロマトグラフィーにより精製した。ついでこの精製酵素を、DMAPPおよびGPPをプレニル供与物質として使用して、プレニルトランスフェラーゼ活性に関してアッセイした。Mg2+の非存在下にDMAPPおよび1,6-DHNを基質として使用して、顕著なプレニルトランスフェラーゼ活性が検出された。このことは、本発明酵素の鎖長選択性およびMg2+非依存性に関する本明細書に記載の仮説に基づくモデルに合致している。
【0072】
本発明の更に別の態様においては、本明細書に記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼを結晶形態で含む組成物を提供する。場合によっては、そのような組成物は更に、芳香族プレニルトランスフェラーゼに対する1以上の基質を含む。本明細書中で用いる「基質」は、本発明のプレニルトランスフェラーゼの作用に付される化合物、例えば、テトラヒドロキシナフタレン、その類似体、ホモログおよび代謝産物のような反応性芳香族化合物を意味する。
【0073】
本明細書中で用いる「類似体」は、前記芳香族基質に関連した化合物であって、その生物活性を保有するが親化合物に対して1以上の置換および/または修飾(例えば、-O-から-CH2-への置換)を有する化合物を意味する。あるいは、類似体は、比較的低い一次構造類似性を有するが、類似した二次および/または三次構造的特徴、電子的特性などの結果として、基質の生物活性を尚も示す。
【0074】
本明細書中で用いる「ホモログ」は、メチレン単位のような単純な単位またはそのような単位の幾つかの複数体、例えば-(CH2)X-の存在または非存在により前記芳香族基質に関連している化合物を意味する。
【0075】
本明細書中で用いる「代謝産物」は、投与形態の化合物に対する身体の作用によりヒトまたは動物の体内で得られるそのような化合物の一形態としての、前記基質に関連した化合物(例えば、メチル化化合物の投与後に該メチル化化合物に対する身体による作用の結果として体内で得られる、メチル基を含有する化合物の脱メチル化類似体)を意味する。
【0076】
X線結晶学は本発明の結晶形態の三次元構造を解明しうる。典型的には、X線結晶学による結晶形態の最初の特徴づけにより該結晶内の単位格子の形状およびその配向を決定しうる。「単位格子」なる語は、結晶の単位パターンを完全に表す、結晶の最も小さく且つ最も単純な体積要素を意味する。単位格子の寸法は以下の6つの数により定義される:寸法a、bおよびcならびに角度α、βおよびγ。結晶は、複数の単位格子の、効率的に充填された配置とみなされうる。結晶学的用語の詳細な説明はHahn, THE INTERNATIONAL TABLES FOR CRYSTALLOGRAPHY, VOLUME A, 4th Ed., Kluwer Academic Publishers (1996); およびShmueli, THE INTERNATIONAL TABLES FOR CRYSTALLOGRAPHY, VOLUME B, 1st Ed., Kluwer Academic Publishersに記載されている。「空間群」なる語は単位格子の対称性を意味する。空間群表示(例えば、P2)において、大文字は格子タイプを示し、その他の記号は、単位格子の外観を変化させることなく単位格子上で行われうる対称操作を表す。
【0077】
「セレノメチオニン置換」なる語は、化学的に修飾された形態のタンパク質結晶の製造方法の1つを意味する。該タンパク質は、メチオニンが枯渇しセレノメチオニンが補足された培地内で細菌により発現される。それにより、メチオニン硫黄の代わりにセレンが結晶内に取り込まれる。セレンの位置は該結晶のX線回折解析により決定される。この情報は、該タンパク質の三次元構造を構築するために用いられる位相情報を得るために用いられる。
【0078】
「重原子誘導体化」は、化学的に修飾された形態のタンパク質結晶の製造方法の1つを意味する。実際には、結晶内に拡散しタンパク質表面に結合する重原子塩または有機金属化合物(例えば、塩化鉛、金チオマラート、チメロサール、ウラニルアセタートなど)を含有する溶液内に結晶を浸漬する。結合重原子の位置は該浸漬結晶のX線回折解析により決定されうる。ついでこの情報を用いて位相情報を構築し、ついでこれを用いて、BlundelおよびJohnson, PROTEIN CRYSTALLOGRAPHY, Academic Press (1976)(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおりに該酵素の三次元構造を構築することが可能である。
【0079】
X線回折パターンから得られた知見を、他の相同ポリペプチドの結合部位の三次元構造の決定において用いることが可能である。これは、構造座標のセットから分子またはその一部の三次元グラフィック表示を作成しうる当技術分野で公知の商業的に入手可能なソフトウェアを使用することにより達成される。結合ドメインは種々のコンピューターモデルによっても予想できる。解明された構造の構造的X線座標に基づき、解明された構造の突然変異体および変異体を設計することも可能である。
【0080】
本発明の典型的な単離された芳香族プレニルトランスフェラーゼは、付録1に記載の構造座標により更に特徴づけられている。
【0081】
本発明の更に別の態様においては、推定芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性および/または基質特異性の予測方法であって、
既知芳香族プレニルトランスフェラーゼの三次元表示と推定芳香族プレニルトランスフェラーゼの三次元表示とを比較することを含み、ここで、それらの2つの表示の間の相違が芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性および/または基質特異性を予測させるものである、前記方法を提供する。
【0082】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物のスクリーニング方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼまたはその断片の複数の原子座標により定められた、該芳香族プレニルトランスフェラーゼまたはその断片のドメインの1以上と相互作用する潜在的結合物質をモデル化し、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼへの結合に関して該芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する該潜在的結合物質の能力を測定することを含む、前記方法を提供する。
【0083】
本明細書中で用いる「分子置換」は、構造座標が未知であるポリペプチドの予備モデルを作成することを意味し、これは、該未知結晶の観察回折パターンに最も良く合致するよう、構造座標が既知である分子を該未知結晶の単位格子内に配向させ配置することにより行う。ついで位相をこのモデルから計算し、観察された振幅と組合せて、座標が未知である構造の近似フーリエ合成を得ることが可能である。今度はこれを精密化のいくつかの形態のいずれかに付して、該未知結晶の最終的な正確な構造を得ることが可能である(Lattman, Meth. Enzymol. 115:55-77 (1985); Rossmann, MG.編, THE MOLECULAR REPLACEMENT METHOD (1972), Int. Sci. Rev. Ser. No. 13, Gordon & Breach, New York)。本明細書に記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの構造座標を使用し、分子置換を用いて、芳香族プレニルトランスフェラーゼの結晶性突然変異体、ホモログまたは異なる結晶形態の構造座標を決定することが可能である。
【0084】
本発明においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼまたはその一部を、任意の公知または推定基質および/または結合物質と会合または複合体形成した状態で結晶化することが可能である。ついで一連のそのような複合体の結晶構造を分子置換により解明し、天然芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子の場合と比較することが可能である。このようにして、芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子またはそれに対する対応基質および/もしくは結合物質における修飾のための潜在的部位を、芳香族プレニルトランスフェラーゼとそれに対する基質および/または結合物質との間の相互作用点に基づいて特定することが可能である。この情報は、いずれかの合成または修飾を行う前であっても、芳香族プレニルトランスフェラーゼと推定化学物質または化合物との間の最も効率的な結合相互作用(例えば、疎水性相互作用の増強)を決定するための追加的な手段となる。
【0085】
前記の複合体のすべては、本明細書に記載の良く知られたX線回折技術を用いて研究することが可能であり、例えばX-PLOR(Yale University, 1992, Molecular Simulations, Inc.により頒布)のようなコンピューターソフトウェアを使用して2〜3オングストロームの解像度のX線データに対して約0.20以下のR値まで精密化することが可能である。例えば、Blundel & Johnson, 前掲; Methods in Enzymology, vol. 114および115, H. W. Wyckoffら編, Academic Press (1985)を参照されたい。このようにして、この情報を用いて、公知クラスの芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質および/または結合物質(例えば、天然THN)を最適化し、新規クラスの芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質および/または結合物質を設計し、修飾し、および/または合成することが可能である。
【0086】
芳香族プレニルトランスフェラーゼに対する基質および/または結合物質、すなわち、本発明の芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドに結合し及び/又はそれをモジュレートする化合物のモデリング(モデル化)または設計は、一般には、2つの要因の検討を含む。第1に、該化合物または分子は、芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子と物理的および構造的に会合しうるものでなければならない。芳香族プレニルトランスフェラーゼと推定基質および/または結合物質との会合において重要な非共有結合分子相互作用には、水素結合、ファンデルワールスおよび疎水性相互作用などが含まれる。
【0087】
第2に、該化合物または分子は、それが芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子と会合することを可能にするコンホメーションをとりうるものでなければならない。該化合物または分子の或る部分はこの会合に直接的には関与しないかもしれないが、それらの部分は該分子の全体的なコンホメーションに尚も影響を及ぼしうる。これが今度は、該受容体に対するアフィニティに有意な影響を及ぼしうる。そのようなコンホメーション要件には、結合部位の全部または一部に対する該化合物または分子の全体的な三次元構造および配向、あるいは芳香族プレニルトランスフェラーゼと直接的に相互作用する幾つかの化学的実体を含む化合物または分子の官能基の間の空間的配置が含まれる。
【0088】
本明細書中で用いる「モデリング(モデル化)」なる語は、物理的な分子とは異なり該分子のコンピューター作製表示を利用することによる芳香族プレニルトランスフェラーゼと既知または試験化合物または分子との相互作用の解析を意味する。
【0089】
芳香族プレニルトランスフェラーゼへの試験化合物の潜在的結合は、コンピューターモデリング技術を用いて、その実際の合成および試験の前に解析されうる。与えられた化合物の理論的構造が、それと芳香族プレニルトランスフェラーゼとの間の不十分な相互作用および会合を示す場合には、該化合物の合成および試験を省略することができる。一方、コンピューターモデリングが強力な相互作用を示す場合には、ついで該分子を芳香族プレニルトランスフェラーゼへのその結合能に関して試験することが可能である。芳香族プレニルトランスフェラーゼ活性に関するアッセイ方法は当技術分野で公知である(本明細書中で特定され考察されているとおり)。潜在的結合物質の効果のアッセイ方法は芳香族プレニルトランスフェラーゼの既知結合物質の存在下で行われうる。例えば、潜在的結合物質の効果は、既知結合物質と競合する該潜在的結合物質の能力を測定することによりアッセイされうる。
【0090】
その基質および/または結合物質と会合した芳香族プレニルトランスフェラーゼの個々の結合ポケットまたは他の領域と会合する能力に関して化学的実体または断片をスクリーニングし選択する一連の工程により、試験化合物をコンピューターにより評価し設計することが可能である。
【0091】
当業者は、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合しうる分子を予測するための、および芳香族プレニルトランスフェラーゼ、より詳しくは、芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドの個々の活性部位(例えば、結合ポケットおよび/または特異的な相互作用点)と試験化合物が会合する能力に関して該試験化合物をスクリーニングするための幾つかの方法の1つを用いることが可能である。この方法は、例えば、芳香族プレニルトランスフェラーゼの結晶から得られたX線回折データから導出された構造座標(例えば、付録1に記載のもの)に基づくコンピュータースクリーン上の芳香族プレニルトランスフェラーゼの結合ポケットの目視検査により開始することが可能である。ついで、選択された断片または化学的実体を該芳香族プレニルトランスフェラーゼの個々の結合ポケット内に種々の配向で配置し、またはドッキングさせることが可能である。ドッキングは、QuantaおよびSybylのようなソフトウェアを使用して実施することが可能であり、ついで、CHARMMおよびAMBERのような標準的な分子力学力場でのエネルギー最小化および分子動力学に付すことが可能である。
【0092】
専門化されたコンピュータープログラムも、この段階において断片または化学的実体を選択する過程を支援しうる。これらには以下のものが含まれる。
【0093】
1. GRID (Goodford, P. J.,“A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules”, J. Med. Chem., 28, pp. 849-857 (1985))。GRIDはOxford University, Oxford, UK.から入手可能である。
【0094】
2. MCSS (Miranker, A.およびM. Karplus,“Functionality Maps of Binding Sites: A Multiple Copy Simultaneous Search Method.” Proteins: Structure. Function and Genetics, 11, pp. 29-34 (1991))。MCSSはMolecular Simulations, Burlington, Mass.から入手可能である。
【0095】
3. AUTODOCK (Goodsell, D. S.およびA. J. Olsen,“Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing”, Proteins: Structure. Function, and Genetics, 8, pp. 195-202 (1990))。AUTODOCKはScripps Research Institute, La Jolla, Calif.から入手可能である。
【0096】
4. DOCK (Kuntz, I. D.ら,“A Geometric Approach to Macromolecule-Ligand Interactions”, J. Mol. Biol., 161, pp. 269-288 (1982))。DOCKはUniversity of California, San Francisco, Calif.から入手可能である。
【0097】
適当な化学的実体または断片を選択したら、それらを、候補基質および/または結合物質である単一の化合物へと集合させることが可能である。集合は、付録1に記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子の構造座標に関する、コンピュータースクリーン上に示される三次元イメージ上での該断片の互いの関連性を目視検査することにより実施できる。この後、QuantaまたはSybylのようなソフトウェアを使用する手動モデル構築を行うことになろう。
【0098】
個々の化学的実体または断片の連結において当業者を支援する有用なプログラムには以下のものが含まれる。
【0099】
1. CAVEAT (Bartlett, P. A.ら,“CAVEAT: A Program to Facilitate the Structure-Derived Design of Biologically Active Molecules”. In “Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems”, Special Pub., Royal Chem. Soc, 78, pp. 182-196 (1989))。CAVEATはUniversity of California, Berkeley, Calif.から入手可能である。
【0100】
2. 3Dデータベースシステム、例えばMACCS-3D (MDL Information Systems, San Leandro, Calif.)。この分野はMartin, Y. C, “3D Database Searching in Drug Design”, J. Med. Chem., 35, pp. 2145-2154 (1992)に概説されている。
【0101】
3. HOOK (Molecular Simulations, Burlington, Mass.から入手可能)。
【0102】
前記のとおりに一度に1つの断片または化学的実体を処理する逐次的な様態で基質および/または結合物質を構築し特定する方法に加えて、芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質および/または結合物質を、空の結合ポケットを使用して又は場合によっては既知基質および/もしくは結合物質の幾つかの部分を含めて、全体として又は「デゥ・ノボ(de novo)」で設計することが可能である。これらの方法には以下のものが含まれる。
【0103】
1. LUDI (Bohm, H.-J.,“The Computer Program LUDI: A New Method for the De Novo Design of Enzyme Inhibitors”, J. Comp. Aid. Molec. Design, 6, pp. 61-78 (1992))。LUDIはBiosym Technologies, San Diego, Calif.から入手可能である。
【0104】
2. LEGEND (Nishibata, Y.およびA. Itai, Tetrahedron, 47, p. 8985 (1991))。LEGENDはMolecular Simulations, Burlington, Mass.から入手可能である。
【0105】
3. LeapFrog (Tripos Associates, St. Louis, Mo.から入手可能である)。
【0106】
本発明においては、他の分子モデリング技術を用いることも可能である。例えば、Cohen, N. C.ら, “Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry”, J. Med. Chem., 33, pp. 883-894 (1990)を参照されたい。また、Navia, M. A.およびM. A. Murcko,“The Use of Structural Information in Drug Design”, Current Opinions in Structural Biology, 2, pp. 202-210 (1992)も参照されたい。
【0107】
前記方法により試験化合物または結合物質を設計し又は選択したら、その化合物が芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合しうる効率をコンピューターによる評価により試験し最適化することが可能である。
【0108】
推定基質および/または結合物質として設計し又は選択した化合物を更に、その結合状態において、それが、好ましくは、標的部位との反発性静電的相互作用を欠くよう、コンピューターにより最適化することが可能である。そのような非相補的(例えば、静電的)相互作用には、反発性電荷-電荷、双極子-双極子および電荷-双極子相互作用が含まれる。特に、基質および/または結合物質が芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合した場合の結合物質と芳香族プレニルトランスフェラーゼとの間の全ての静電的相互作用の総和は、好ましくは、結合のエンタルピーに対して中性または有利な寄与をもたらす。
【0109】
化合物変形エネルギーおよび静電的相互作用を評価するための特定のコンピューターソフトウェアが当技術分野において入手可能である。そのような用途に設計されたプログラムの具体例には、Gaussian 92, revision C (M. J. Frisch, Gaussian, Inc., Pittsburgh, Pa., 1992); AMBER, version 4.0 (P. A. Kollman, University of California at San Francisco, 1994); QUANTA/CHARMM (Molecular Simulations, Inc., Burlington, Mass. 1994); およびInsight II/Discover (Biosysm Technologies Inc., San Diego, Calif, 1994)が含まれる。これらのプログラムは、例えばSilicon Graphicsワークステーション, IRIS 4D/35またはIBM RISC/6000ワークステーションモデル550を使用して実行されうる。速度および容量が絶えず改変される他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは当業者に公知となろう。
【0110】
本発明においては、他の分子モデリング技術を用いることも可能である。典型的な概説および技術に関しては、例えば、Cohenら,“Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry, J. Med. Chem., 33, pp. 883-894 (1990)を参照されたい。また、M. A. NaviaおよびM. A. Murcko,“The Use of Structural Information in Drug Design”, Current Opinions in Structural Biology, 2, pp. 202-210 (1992); L. M. Balbesら,“A Perspective of Modern Methods in Computer- Aided Drug Design”, in Reviews in Computational Chemistry, Vol. 5, K. B. LipkowitzおよびD. B. Boyd編, VCH, New York, pp. 337-380 (1994)も参照されたい。また、W. C. Guida,“Software For Structure-Based Drug Design”, Curr. Opin. Struct. Biology, 4, pp. 777-781 (1994)も参照されたい。
【0111】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物をスクリーニングするための代替方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて該芳香族プレニルトランスフェラーゼの相互作用部位を定め、
該相互作用部位内に空間的にフィットする潜在的結合物質をモデル化し、
芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質の存在下、該潜在的結合物質を該芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させ、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼへの結合に関して該潜在的結合物質が該芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する能力を測定することを含む、前記方法を提供する
本発明の別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物をスクリーニングするための追加的な方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて該芳香族プレニルトランスフェラーゼの相互作用部位を定め、
該相互作用部位内に空間的にフィットする潜在的結合物質をモデル化し、
芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質の存在下、該潜在的結合物質を該芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させることにより、該相互作用部位に関して該潜在的結合物質が該芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する能力を測定することを含む、前記方法を提供する。
【0112】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物をスクリーニングするための追加的な方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標により定められる該芳香族プレニルトランスフェラーゼの相互作用部位内に空間的にフィットする潜在的結合物質をモデル化し、
芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質の存在下、該潜在的結合物質を該芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させ、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼへの結合に関して該潜在的結合物質が該芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する能力を測定することを含む、前記方法を提供する。
【0113】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物をスクリーニングするための追加的な方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標により定められる該芳香族プレニルトランスフェラーゼの相互作用部位内に空間的にフィットする潜在的結合物質をモデル化し、
芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質の存在下、該潜在的結合物質を該芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させることにより、該相互作用部位に関して該潜在的結合物質が該芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する能力を測定することを含む、前記方法を提供する。
【0114】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物をスクリーニングするための追加的な方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼへの結合に関して該潜在的結合物質が該芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する能力を測定することを含み、ここで、複数の原子座標により定められる芳香族プレニルトランスフェラーゼ相互作用部位内に空間的にフィットするよう該潜在的結合物質をモデル化する、前記方法を提供する。
【0115】
本発明の更に別の態様においては、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位を定め、
該活性部位にフィットする潜在的基質を特定し、
芳香族プレニルトランスフェラーゼを該潜在的基質と接触させ、それに対するその活性を測定することを含む、芳香族プレニルトランスフェラーゼの潜在的基質を特定するための方法を提供する。
【0116】
本発明の更に別の態様においては、ある化合物が芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質であるかどうかを判定するために化合物をスクリーニングする方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または産物との間の相互作用の点を決定し、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの類似相互作用を有する化合物を選択し、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼにより変換される能力に関して、選択した化合物を試験することを含む、前記方法を提供する。
【0117】
本発明の更に別の態様においては、ある化合物が芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質であるかどうかを判定するために化合物をスクリーニングするための代替方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの相互作用点を有する化合物を選択し、ここで、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または産物との間の相互作用の類似点が決定されており、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼにより変換される能力に関して、選択した化合物を試験することを含む、前記方法を提供する。
【0118】
本発明の更に別の態様においては、ある化合物が芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質であるかどうかを判定するために化合物をスクリーニングするための追加的な方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼにより変換される能力に関して化合物を試験することを含み、
ここで、該化合物は、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの相互作用点を有するものとして選択されたものであり、
ここで、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または産物との間の相互作用の類似点が決定されている、前記方法を提供する。
【0119】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼを、前記方法のいずれかにより特定された化合物の有効量と接触させることを含む、芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を刺激するための方法を提供する。
【0120】
そのような化合物は、典型的には、前記化合物の少なくとも1つをその製薬上許容される担体中に含む製剤の一部として投与される。典型的な製薬上許容される担体には、固体、溶液、エマルション、分散液、ミセル、リポソームなどが含まれる。場合によっては、本発明において使用する製薬上許容される担体は更に、腸溶コーティングを含む。
【0121】
本発明の実施における使用を意図した製薬上許容される担体としては、本発明化合物を経口送達、経皮送達、静脈内送達、筋肉内送達、局所送達、鼻腔内送達などに適したものにするものが挙げられる。
【0122】
例えば、本発明の実施における使用を意図した製剤は、固体、溶液、エマルション、分散液、ミセル、リポソームなどの形態で使用することが可能であり、この場合、得られる製剤は、経口または非経口適用に適した有機または無機担体または賦形剤と共に、本発明の化合物の1以上を有効成分として含有する。有効成分は、例えば、錠剤、ペレット剤、カプセル剤、坐剤、水剤(溶液剤)、乳剤、懸濁剤および用途に適した任意の他の製剤のための製薬上許容される通常の無毒性担体と共に配合されうる。使用しうる担体には、固体、半固体または液体形態の、グルコース、ラクトース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、マグネシウムトリシリケート、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素、中鎖長トリグリセリド、デキストランおよび製剤の製造における使用に適した他の担体が含まれる。また、補助剤、安定剤、増粘剤および着色剤および香料が使用されうる。活性化合物は、該プロセスまたは病態に対して所望の効果をもたらすのに十分な量で製剤中に含まれる。
【0123】
有効成分を含有する本発明の実施における使用を意図した製剤は、経口用途に適した形態、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性または油性懸濁剤、分散可能な散剤または顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤またはエリキシル剤でありうる。経口用途を意図した製剤は、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法により製造することが可能であり、そのような製剤は、製薬上優美で美味な製剤を得るために、甘味剤、例えばスクロース、ラクトースまたはサッカリン、香味剤、例えばペパーミント、トウリョクジュまたはサクランボの油、着色剤および保存剤よりなる群から選ばれる1以上の物質を含有しうる。使用する製薬上許容される無毒性賦形剤と共に有効成分を含有する錠剤は、例えば、(1)不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム、(2)顆粒化および崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸、(3)結合剤、例えばトラガカントガム、コーンスターチ、ゼラチンまたはアカシア、および(4)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクを含有しうる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、あるいは胃腸管内での崩壊および吸収を遅延させて長期にわたる持続作用を得るために公知技術によりコーティングされたものであってもよい。例えば、遅延性物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが使用されうる。それらは、コントロールリリース用の浸透圧治療用錠剤を得るための米国特許第4,256,108号、第4,160,452号および第4,265,874号に記載されているような技術によってもコーティングされうる。
【0124】
いくつかの場合には、経口用途を意図した製剤は、有効成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合された硬ゼラチンカプセル剤の形態でありうる。それらはまた、有効成分が水または油性媒体、例えばラッカセイ油、液体パラフィンまたはオリーブ油と混合された軟ゼラチンカプセルの形態でありうる。
【0125】
本発明の実施における使用を意図した製剤は無菌注射懸濁液の形態でありうる。この懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤または懸濁化剤を使用する公知方法により製剤化されうる。無菌注射剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液でありうる。無菌不揮発性油が溶媒または懸濁化媒体として簡便に使用される。この目的には、合成モノまたはジグリセリド、脂肪酸、天然に存在する植物油、例えばゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、綿実油など、あるいは合成脂肪ビヒクル、例えばオレイン酸エチルなどを含む任意の無刺激性の不揮発性油が使用されうる。必要に応じて、バッファー、保存剤、抗酸化剤などを加えることが可能である。
【0126】
本発明の実施における使用を意図した製剤は、薬物の直腸投与のための坐剤の形態としても投与されうる。これらの製剤は、常温では固体であるが直腸腔内で液化および/または溶解して薬物を放出する適当な無刺激性賦形剤、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコールの合成グリセリドエステルと薬物とを混合することにより製造されうる。個々の対象は症状の重症度における広範なばらつきを示すことがあり、各薬物はその特有の治療特徴を有するため、各対象に使用する厳密な投与方法および投与量は臨床医の判断に委ねられる。
【0127】
求められる個々の治療目的に有効な量は、勿論、治療する状態の重症度ならびに対象の体重および全身状態に左右される。「有効量」の決定において考慮する種々の一般的考慮事項は当業者に公知であり、例えばGilmanら編, Goodman And Gilman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th ed., Pergamon Press, 1990およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0128】
本発明の実施における使用を意図した化合物に適用される「有効量」なる語は、所望の治療結果を得るのに必要な量、例えば、治療用化合物を投与しようとする病態の症状を治療し、治癒させ若しくは改善するのに又は恒常性を確立するのに有効なレベルを意味する。個々の対象は症状の重症度における広範なばらつきを示すことがあり、各薬物または活性物質はその特有の治療特徴を有するため、各対象のための厳密な投与方法、使用する投与量および治療プロトコールは臨床医の判断に委ねられる。
【0129】
芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を刺激するための前記方法は多数の状況において適用されうる。例えば、化学療法に対する癌細胞抵抗性は、しばしば、ATP加水分解により細胞毒性薬を押し出す細胞膜ABC(ATP結合カセット)輸送体であるP-糖タンパク質の過剰発現により引き起こされる。最近、プレニル化フラボイノイドは、ABC輸送体スーパーファミリーに属するヒト多剤耐性タンパク質(MRP1)の潜在的インヒビターであることが報告された。これらのプレニル化化合物の幾つかはHIV抑制効果をも示している。最近、プレニル化フラボノイドの共通の形態がビールにおいて特定された。すなわち、ホップ(Hamulus lupulus L.)には6-および8-プレニルナリンゲニン(prenylnaringenin)、キサントフモール(xanthohumol)およびイソキアントフモールが高濃度で存在し、それらのエストロゲン効力がin vitroおよび動物モデル系において確認されており、それらは、イソフラボンクラスより強力なエストロゲンであることを、データは示している(Milliganら, J Clin Endocrinol Metab 84:2249-52 (1999)を参照されたい)。
【0130】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの潜在的モジュレーターを特定するための方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドの複数の原子座標に基づいて芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその断片を定め、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドのドメインの1以上と相互作用する潜在的結合物質をモデル化し、
該潜在的結合物質を該芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドと接触させ、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの生物機能を該潜在的結合物質がモジュレートする能力を測定し、それにより、芳香族プレニルトランスフェラーゼポリペプチドの潜在的モジュレーターを特定することを含む、前記方法を提供する。
【0131】
本明細書中で用いる「モジュレーター」なる語は、直接的(プレニルトランスフェラーゼへの結合により)または間接的(プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物の前駆体として、またはプレニルトランスフェラーゼに結合する化合物が前駆体から産生されるのを促進する誘導物質として)にプレニルトランスフェラーゼの活性を誘導する又はプレニルトランスフェラーゼの活性を抑制する化合物を意味する。本発明の実施において意図される典型的なモジュレーターには、フラボノイド、イソフラボノイドなどが含まれる。
【0132】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性の潜在的モジュレーターを特定するための代替方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位を定め、
基質の存在下、該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位にフィットする潜在的化合物を該芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させ、
該基質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を該化合物がモジュレートする能力を測定することを含む、前記方法を提供する。
【0133】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性の潜在的モジュレーターを特定するための追加的な方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて活性部位にフィットする潜在的化合物を接触させ、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を該化合物がモジュレートする能力を測定することを含む、前記方法を提供する。
【0134】
本発明の別の態様においては、活性をモジュレートする化合物をスクリーニングするための方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または基質模倣体との間の相互作用の点を決定し、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの類似相互作用を有する化合物を選択し、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする能力に関して、選択した化合物を試験することを含む、前記方法を提供する。
【0135】
本明細書中で用いる「モジュレート」は、プレニルトランスフェラーゼに対するモジュレーターが直接的または間接的にプレニルトランスフェラーゼ活性を誘導し又はプレニルトランスフェラーゼ活性を抑制する能力を意味する。本発明におけるモジュレートに関して意図される典型的な過程には、コレステロール代謝、脂質恒常性の調節、胆汁輸送および吸収の刺激、胆汁酸の排泄および輸送に関与する遺伝子(腸胆汁酸結合性タンパク質(IBABP)を含む)の発現の調節、胆汁酸塩輸出ポンプ(BSEP)および細管多特異的有機アニオン輸送体(cMOAT)などが含まれる。
【0136】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする化合物をスクリーニングするための代替方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼとの相互作用の点を有する化合物を選択し、ここで、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または基質模倣体との間の相互作用の類似点が決定されており、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする能力に関して、選択した化合物を試験することを含む、前記方法を提供する。
【0137】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする化合物をスクリーニングするための追加的な方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする能力に関して化合物を試験することを含み、
ここで、該化合物は、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの相互作用点を有するものとして選択されたものであり、
ここで、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または基質模倣体との間の相互作用の類似点が決定されている、前記方法を提供する。
【0138】
本発明の更に別の態様においては、プレニル化条件下、芳香族基質を、本明細書に記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させることを含む、芳香族基質をプレニル化するための方法を提供する。
【0139】
本発明の更に別の態様においては、β/αバレル構造を有するタンパク質を特定するための方法であって、
本明細書に記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの三次元構造表示を、β/αバレル構造を有する推定タンパク質の三次元表示と比較することを含み、ここで、それらの2つの表示の間の類似性が、β/αバレル構造を有する芳香族プレニルトランスフェラーゼタンパク質を予測させるものである、前記方法を提供する。
【0140】
本発明の別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を制御するための方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を制御するのに十分な程度に活性部位のディメンション(寸法、dimension)を変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を改変することを含む、前記方法を提供する。
【0141】
本明細書中で用いる「プレニル化の度合」は、基質に付加されるイソプレノイド単位の数を意味する。これは、複数部位におけるプレニル化、および単一部位における1以上のイソプレノイド単位の導入を包含する。
【0142】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を改変するための方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を改変するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を修飾することを含む、前記方法を提供する。
【0143】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの基質特異性を制御するための方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼによりプレニル化される芳香族基質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの選択性を制御するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を改変することを含む、前記方法を提供する。
【0144】
本明細書中で用いる「基質特異性」は、酵素が基質を認識する選択性を意味する。選択的なプレニルトランスフェラーゼは、単一の又は限られた数の基質のみを認識する。一方、非選択的(乱交雑性)なプレニルトランスフェラーゼは多数の基質を認識する。
【0145】
本発明の別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの基質特異性を改変するための方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼによりプレニル化される芳香族基質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの選択性を改変するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を修飾することを含む方法を提供する。
【0146】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの供与物質特異性を制御するための方法であって、
芳香族基質をプレニル化するために用いられるプレニル供与物質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの選択性を制御するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を改変することを含む、前記方法を提供する。
【0147】
本明細書中で用いる「供与物質特異性」は、酵素がプレニル供与物質を認識する選択性を意味する。選択的なプレニルトランスフェラーゼは、単一の又は限られた数のプレニル供与物質のみを認識する。一方、非選択的(乱交雑性)なプレニルトランスフェラーゼは多数のプレニル供与物質を認識する。典型的なプレニル供与物質には、ジメチルアリルジホスフェート(DMAPP, C5)、イソペンテニルジホスフェート(IPP, C5)、ゲラニルジホスフェート(GPP, C10)、ファルネシルジホスフェート(FPP, C15)などが含まれる。
【0148】
本発明の別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの供与物質特異性を改変するための方法であって、
芳香族基質をプレニル化するために用いられるプレニル供与物質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの選択性を改変するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を修飾することを含む、前記方法を提供する。
【0149】
本発明の更に別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて芳香族プレニルトランスフェラーゼまたはその断片をコンピューターに定めさせる命令を含む、コンピューター読取り可能な媒体上のコンピュータープログラムを提供する。
【0150】
本発明の別の態様においては、芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子もしくは分子複合体または該芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子もしくは分子複合体のホモログから得られたX線回折データに対応する構造座標の少なくとも一部を決定するためのコンピューターであって、
(i)機械で読取り可能なデータでコードされたデータ保存マテリアルを含むコンピューター読取り可能なデータ保存媒体、ここで、該データは付録1の構造座標の少なくとも一部を含み、
(ii)コンピューター読取り可能なデータでコードされたデータ保存マテリアルを含むコンピューター読取り可能なデータ保存媒体、ここで、該データは、該芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子もしくは分子複合体または該芳香族プレニルトランスフェラーゼ分子もしくは分子複合体のホモログから得られたX線回折データを含み、
(iii)(i)および(ii)のコンピューター読取り可能なデータを処理するための命令を保存するための作動メモリ、
(iv)(i)の機械で読取り可能なデータのフーリエ変換を行うための及び(ii)のコンピューター読取り可能なデータを構造座標へと処理するための、該作動メモリに並びに(i)および(ii)のコンピューター読取り可能なデータ保存媒体に接続された中央処理装置、ならびに
(v)該分子または分子複合体の構造座標を表示するための、該中央処理装置に接続されたディスプレイ
を含むコンピューターを提供する。
【0151】
本明細書中で用いる「コンピューター」なる語は、中央処理装置(例えば、Intel CorporationのPentium III、またはSun、Motorola、Compaq、AMDもしくはInternational Business Machinesの同様のプロセッサー)、ランダムアクセスメモリまたはコアメモリ、大容量記憶メモリ(例えば、記録されたデータを含有する1以上のフロッピーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブまたは磁気テープ)でありうる作動メモリ、少なくとも1つの表示用末端装置、少なくとも1つのキーボードならびにそれらのための付属の入力および出力装置および接続から構成されうる。コンピューターは、典型的には、入力データを処理し、アクセスし、および操作するための機構を含む。当業者であれば、現在利用可能なコンピューターシステムのいずれかが適切であると容易に理解しうる。
【0152】
機械で読取り可能なデータを入力するための、意図される入力装置には、例えば、電話モデムライン、ケーブルモデム、CD-ROM、キーボードまたはディスクドライブが含まれる。該コンピューターは、有利には、データ保存コンポーネントまたは入力装置からデータを読むための適当なソフトウェア、例えば、後記で詳細に説明する論理的薬物設計に使用する計算プログラムを含み、あるいはそれによりプログラムされうる。意図される出力装置には、当技術分野で公知の通常のシステム、例えば表示用末端装置、プリンタ、または出力を更に保存するためのディスクドライブが含まれる。
【0153】
本発明の実施形態は、本明細書に記載の座標および配列情報を保存し操作するシステム(例えば、インターネットに基づくシステム)、特にコンピューターシステムを含む。コンピューターシステム100の一例を図8のブロック図に例示する。本明細書中で用いる「コンピューターシステム」は、座標および配列(例えば、付録1に記載のもの)を解析するために使用するハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネントおよびデータ保存コンポーネントを意味する。コンピューターシステム100は、典型的には、該配列データを処理し、アクセスし、操作するためのプロセッサーを含む。プロセッサー105は、任意のよく知られたタイプの中央処理装置、例えば、Intel CorporationのPentium III、またはSun、Motorola、Compaq、AMDもしくはInternational Business Machinesのような他の供給業者からの同様のプロセッサーでありうる。
【0154】
典型的には、コンピューターシステム100は、プロセッサー105およびデータを保存するための1以上の内部データ保存コンポーネント110、ならびにデータ保存コンポーネント上に保存されたデータを取り出すための1以上のデータ取り出し装置を含む汎用システムである。当業者であれば、現在利用可能なコンピューターシステムのいずれかが適切であると容易に理解しうる。
【0155】
特定の一実施形態においては、コンピューターシステム100は、主メモリ115(好ましくは、RAMとして実行される)および1以上の内部データ保存装置110(例えば、記録データを含有するハードドライブおよび/または他のコンピューター読取り可能な媒体)に接続されたバスに接続されたプロセッサー105を含む。いくつかの実施形態においては、コンピューターシステム100は更に、内部データ保存装置110上に保存されたデータを読むための1以上のデータ取り出し装置118を含む。
【0156】
データ取り出し装置118は、例えば、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブ、遠隔データ保存システムに(例えばインターネット経由で)接続しうるモデムなどが相当しうる。いくつかの実施形態においては、内部データ保存装置110は、記録された制御論理および/またはデータを含有する取り外し可能なコンピューター読取り可能な媒体、例えばフロッピーディスク、コンパクトディスク、磁気テープなどである。コンピューターシステム100は、有利には、データ取り出し装置内に一旦挿入されたデータ保存コンポーネントから制御論理および/またはデータを読取るための適当なソフトウェアを含むことが可能であり、あるいはそれによりプログラムされうる。
【0157】
コンピューターシステム100は、コンピューター使用者に対して出力を表示するために使用するディスプレイ120を含む。コンピューターシステム100は、コンピューターシステム100への集中(centralized)アクセスを提供するネットワークまたは広範囲ネットワーク内の他のコンピューターシステム125a-cに接続されうることにも注目すべきである。
【0158】
付録1の座標および配列にアクセスしそれらを処理するためのソフトウェア(例えば、検索手段、比較手段およびモデリング手段など)は、実行中、主メモリ115内に存在しうる。
【0159】
本明細書に記載の結晶構造情報を使用して構造および基質をモデル化するために必要な作業を行うコンピュータープログラムは広範に利用可能である。具体例には、以下に挙げるコンピュータープログラムが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0160】
Catalyst Databases(商標)- BioByte Master File、Derwent WDIおよびACDのような化学データにアクセスする情報取り出しプログラム。
【0161】
Catalyst/HYPO(商標)-化合物のモデルを作製し、薬物候補の構造による活性のばらつきを説明する仮説を与える。
【0162】
Ludi(商標)- 相補的な極性および疎水性基を特定し合致させることによりタンパク質の活性部位内に分子をフィットさせる。
【0163】
Leapfrog(商標)- 使用者の制御下のパラメーターでアルゴリズムを使用して新規リガンドを「成長(grow)」させる。
【0164】
また、種々の汎用装置を、本明細書中の教示に従い書かれたプログラムと共に使用することが可能であり、あるいは、作業を行うための、より特殊化された装置を構築することが、より簡便かもしれない。しかし、好ましくは、これは、少なくとも1つのプロセッサー、少なくとも1つのデータ保存システム(揮発性および不揮発性メモリならびに/または保存要素を含む)、少なくとも1つの入力装置および少なくとも1つの出力装置をそれぞれが含むプログラム可能なシステム上で実行される1以上のコンピュータープログラムにおいて実行される。該プログラムは、本明細書に記載の機能を実施するためのプロセッサー上で実行される。
【0165】
以下の実施例は、本発明の態様を更に例示するために記載されている。これらの実施例は非限定的なものであり、本発明のいずれの態様をも限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0166】
すべての溶媒および試薬はAldrich Chemical Company(Milwaukee, WI)から入手した。
【0167】
(実施例1)
ORF2のクローニング
メバロン酸経路遺伝子クラスターおよび隣接領域(CL190からクローニングされたもの)を含有するコスミドpCLC7(Takagiら, J Bacterid 182:41534157 (2000)を参照されたい)を配列決定した。Orf2のDNA配列を標準的な技術により決定し、配列番号1に記載する。Orf2のアミノ酸配列を該DNA配列から推定し、配列番号2に記載する。
【0168】
この配列決定は、メバロン酸キナーゼおよびジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼを含有する9.0kbのBamHI-BamHI DNA断片において3つの新たな完全なorf(orfl、orf2およびorf3)および部分的なorf4を示した(図6のpCL3301を参照されたい)。各orfの機能を推定するために、データベース検索を行った。結果を表2に要約する。
【表2】

【0169】
ORF2はまた、既に記載されているそれぞれSteptomyces roseochromogenesおよびStreptomyces spheroides NCIMB 11891由来の4-ヒドロキシフェニルピルベート:ジメチルアリルトランスフェラーゼcloQ(アクセッション番号AF329398)およびnovQ(アクセッション番号AF170880)(Pojerら, 前掲)に対する配列類似性を示した。ORF3は、THNを産生するIII型ポリケチドシンターゼをコードしている可能性が非常に高い。これらのデータは、ORF2が、THNまたはORF3の作用により産生されたTHN誘導体へのゲラニル転移を触媒するゲラニルトランスフェラーゼをコードしていることを証明している。
【0170】
(実施例2)
ORF2遺伝子のクローニング、発現および精製
Streptomyces sp.株CL190由来のorf2遺伝子(GenBankアクセッション番号AB187169)を、大腸菌(E. coli)発現ベクターpQE30(Qiagen)内への連結のために設計されたオリゴヌクレオチドを使用して、CL190由来の全ゲノムDNAのPCR増幅によりクローニングして、発現プラスミドpQEORF2を得た。大腸菌(E. coli)発現ベクターpHIS8(Jezら, Biochemistry 39(5):890-902 (2000))内への連結のために設計されたオリゴヌクレオチドを使用して、pQEORF2のPCR増幅を、以下のプライマー:
フォワードプライマー配列:5'- GGG GGG GGA TCC TCC GAA GCC GCT GAT GTC G-3' (配列番号3; BamHl部位に下線)、および
リバースプライマー配列:5'-GGG GGG GAA TTC TCA GTC CTC CAG CGA GTC G-3' (配列番号4; EcoRI部位に下線)
を使用して行って、発現ベクターpHIS8ORF2を得た。pHIS8ORF2の構築物をNovagenの大腸菌(E. coli)BL21(DE3)内に形質転換した。既に記載されている(Jezら, 前掲)標準的なプロトコールを用いて、組換えOrf2タンパク質を得、精製した。セレノメチオニン(Se-Met)置換タンパク質を、メチオニン経路抑制アプローチ(Doublie, 1997)を用いてM9最少培地内で増殖させた大腸菌(E. coli)から得、該天然タンパク質に関して記載されているとおりに精製した。
【0171】
(実施例3)
Orf2の結晶化
Orf2タンパク質の初期結晶(50μm×30μm×10μm)を4℃での蒸気拡散法により得た。同じ溶液の500μlレザバー上で平衡化された結晶化バッファー(28% [w/v] PEG 4000, 0.3 M 硝酸マグネシウム, 2 mM DL-ジチオトレイトール (DTT), 0.1 M PIPES pH 8.5)と15 mg.ml-1タンパク質との1:1混合物を含有する2μlの懸滴は一晩で小さな回折結晶を生成した。同一条件におけるマクロ・シーディング(macro-seeding)技術により、より大きな結晶が得られた。凍結防止溶液(30% (w/v) PEG 4000, 15% (v/v) グリセロール, 0.3 M 硝酸マグネシウム, 2 mM DTT, 0.1 M TAPS, pH 8.5)に短時間浸漬することにより、結晶を安定化させ、データ収集の前に液体窒素中で瞬間冷凍した。Orf2結晶は、a = 71オングストローム、b = 92オングストローム、c = 48オングストローム、α=β=γ=90°の平均単位格子寸法を有するP21212空間群に属し、非対称単位当たり1の単量体を含有し、45%の溶媒含有率を有する。Se-Met置換結晶は、記載されているとおり(Doublie, Methods Enzymol 276:523-30 (1997))に得た。5 mM GPP、10 mM GSPPおよび40 mM 1,6-DHNおよび10 mM GSPPおよび10 mM フラビオリン(GPPおよびGSPPはEchelon Biosciences Inc.から購入した)を含有する安定化溶液に野生型Orf2結晶を浸漬することにより、種々の複合体を得た。
【0172】
(実施例4)
構造決定および精密化
Brookhaven National Laboratory (BNL)において、ビーム線X8C上、Se-Metが取り込まれたタンパク質結晶上のセレン端において多波長異常分散(MAD)データセットを集めた。データをHKL2000(OtwinowskiおよびMinor, Methods Enzymol 307-326 (1997))で処理し、1.6オングストロームの分解能までのインデックス付き強度のユニークセットに変換した。単波長データセットを、種々の複合体(表1)に関して、社内、Brookhaven National Laboratory (BNL)、European Synchrotron Facility (ESRF) およびStanford Synchrotron Radiation Laboratory (SSRL)で集めた。位相決定(phasing)、密度修正および自動モデル構築を、7つの特定されたSe部位を用いて、高品質の初期電子密度地図を与えるプログラムSolve/Resolve(Terwilliger, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 58(Pt 11): 1937-40 (2002); TerwilligerおよびBerendzen, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 55(Pt 4):849-61 (1999))を使用して行った。構築および精密化の更なるラウンドをそれぞれプログラムO(Jones, The O Manual, 1993, Upsalla, Sweden)およびCNS(Brunger, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 54(Pt 5): 905-21 (1998))で行った。この最初のモデルを使用して、AMoReでの分子置換(Navaza, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 57(Pt 10): 1367-72 (2001))により種々の複合体を解析した。
【0173】
(実施例5)
ORF2のプレニルトランスフェラーゼ活性の検出
使用した基礎反応バッファーは、20μlの最終容量中に50 mM HEPES (pH 7.5)、5 mM MgCl2、5 mM DTT (必要に応じて)、5 mM プレニル受容物質 (DHNl、DHN2およびDHN3; 図2Bを参照されたい)および場合によっては5 mM FPPまたはGPPを含有するものであった。20μgのORF2タンパク質を該基礎アッセイ混合物に加えることにより、反応(対照以外)を開始させた。室温で4時間のインキュベーションの後、SpeedVacを使用して該反応混合物を乾燥させ、乾燥残渣をシリカゲルTLCプレート上にスポットした。該プレートをクロロホルム:メタノール(15〜30:1)で展開させた。反応産物を254nmのUVで検出した。
【0174】
プレニル受容物質DHN1およびDHN2ならびにプレニル供与物質FPPまたはGPPを使用した場合、プレニルトランスフェラーゼ活性が観察された。プレニル受容物質DHN3を使用した場合には、GPPでプレニルトランスフェラーゼ活性が観察された。
【0175】
追加的な研究を、ORF2ならびに(a)1,6-DHN (2)、(b)2,7-DHN (3)、(c)ダイドゼイン(daidzein)(7,4'-ジヒドロキシイソフラボノン, 5)、(d)ゲニステイン(genistein)(5,7,4'-トリヒドロキシイソフラボン, 8)、(e)ナリンゲニン(naringenin)(5,7,4'-トリヒドロキシフラボノン, 9)、(f)オリベトール(olivetol)(12)、およびレスベラトロール(resveratrol)(3,4',5-トリヒドロキシスチルベン, 13)を使用して行った。これらのプレニル受容物質は以下の反応産物を与えた。
【0176】
(a) 5-ゲラニル-l,6-DHNおよび2-ゲラニル-l,6-DHN;
(b) l-ゲラニル-2,7-DHNおよびl,6-ジゲラニル-2,7-DHN;
(c) 7-O-ゲラニル-ダイドゼイン;
(d) 7-O-ゲラニル-ゲニステイン;
(e) 6-ゲラニル-ナリンゲニンおよび7-O-ゲラニル-ナリンゲニン;
(f) 2-ゲラニル-オリベトールおよび4-ゲラニル-オリベトール、ならびに
(g) 4-ゲラニル-レスベラトロール。
【0177】
(実施例6)
ORF2のMg2+依存性プレニルトランスフェラーゼ活性
使用した基礎反応バッファーは、20μlの最終容量中に50 mM HEPES (pH 7.5)、5 mM DTT (必要に応じて)、5 mM プレニル受容物質, DHN2および5 mM GPPを含有するものであった。マグネシウム含有反応混合物は5 mM MgCl2を含有していた。20μgのORF2タンパク質を該基礎アッセイ混合物に加えることにより、反応を開始させた。室温で4時間のインキュベーションの後、SpeedVacを使用して該反応混合物を乾燥させ、乾燥残渣をシリカゲルTLCプレート上にスポットした。該プレートをクロロホルム:メタノール(15〜30:1)で展開させた。反応産物を254nmのUVで検出した。
【0178】
反応混合物中にマグネシウムが存在する場合にはプレニル化産物が容易に認められたが、反応混合物中にマグネシウムが存在しない場合にはプレニル化産物は全く認められなかった。
【0179】
(実施例7)
種々のフラボノイドおよび他の化合物に対するORF2の乱交雑活性
使用した反応バッファーは、20μlの最終容量中に50 mM HEPES (pH 7.5)、5 mM DTT (必要に応じて)、5 mM MgCl2、0.1 mMの各プレニル受容物質、0.1 mM GPPおよび0.01 mM [14C]GPPを含有するものであった。20μgのORF2タンパク質を該アッセイ混合物に加えることにより、反応を開始させた。室温で4時間のインキュベーションの後、SpeedVacを使用して該反応混合物を乾燥させ、乾燥残渣をシリカゲルTLCプレート上にスポットした。該プレートをクロロホルム:メタノール(15〜30:1)で展開させた。反応産物をホスホイメージャーで検出した。試験した化合物はダイドゼイン(daidzein)、フィセチン(fisetin)、ホルモノネチン(formononetin)、ゲニステイン(genistein)、ナリンゲニン(naringenin)、4-HPPおよびDHN2であった。
【0180】
試験したプレニル受容物質のそれぞれで、プレニル化産物が容易に認められた。
【0181】
(実施例8)
Streptomyces sp.株CL190におけるノックアウトORF2突然変異体
ORF2の機能の洞察を得るために、orf2内へのフレームシフト突然変異によりORF2ノックアウト突然変異体を構築した。例えば、orf2を含有する9.0kbのBamHI-BamHI DNA断片を、大腸菌(E. coli)のベクターであるpUC118(Takara, Kyoto, Japan)のBamHI部位内にクローニングした。得られたプラスミドpCL3301をEcoRIで消化し、ついで3.5kbのEcoRI-EcoRI DNA断片をpUC118のEcoRI部位内にクローニングしてpCL3301E3を得た。また、pCL3301内の2.0kbのBamHI-EcoRI DNA断片をpBluescript(Toyobo, Tsuruga, Japan)のBamHI-EcoRI部位内にクローニングしてpCL3301BE2を得た。pCL3301BE3を、その認識部位が標的化orf2内に存在するBglIIで消化し、ついでT4 DNAポリメラーゼ(Takara)で平滑末端化した。次にこの平滑末端化DNA断片を自己連結させて、フレームシフト突然変異を有するorf2を含有するpCL3301E3Bgを得た。pCL3301E3Bgから切断した3.5kbのEcoRI-EcoRI DNA断片をpCL3301BE2のEcoRI部位内にクローニングしてpBluedORF2を得た。最後に、5.0kbのXbaI-KpnI(共に、その認識部位がベクターpBluescript内に存在する)断片を、Streptomyces-E. coliシャトルベクターである pSE101(Dairiら, Biosci Biotechnol Biochem 59:1835-1841 (1995)を参照されたい)内の同じ部位内に連結してpSEdORF2を得た。
【0182】
Streptomyces sp.株CL190をpSEdORF2で形質転換し(Kieserら, in “Practical Streptomyces Genetics”, eds. The John Innes Foundation, Norwich (2000). General considerations about gene cloning in Streptomyces. pp. 211-228)、所望の形質転換体を、20μg/ml チオストレプトンを含有するR2YEプレート上で選択した。次に該形質転換体を、20μg/ml チオストレプトンを含有するSK2液体培地内で30℃で3日間培養した。Kieserら (前掲)に記載されているとおり、プロトプラストを形質転換体菌糸から調製し、チオストレプトンを含有しないR2YE培地上で再生させた。各再生コロニーを同時に、チオストレプトンの存在下および非存在下でBennetプレート上に接種し、チオストレプトン感受性コロニーを選択して、ORF2ノックアウト突然変異体Streptomyces sp.株CL190 dORF2-8を得た。該突然変異体はorf2内にフレームシフト突然変異を実際に有することがPCRにより確認された(図7)。
【0183】
構築された突然変異体およびCL190を、Shin-yaら, J. Antibiot. (Tokyo) 43, 444-447 (1990)において報告されているとおりに培養した。菌糸を遠心分離により集め、ついで、CL190により産生されたナフテルピンを、既に報告されている同じ方法(Shin-yaら, 前掲)により該CL190菌糸から抽出した。また、該突然変異体の菌糸を同じ方法により抽出した。それらの抽出物の両方を、記載されているとおりにシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)上で分析した。その結果、CL190からの抽出物においてはナフテルピンが検出されたが、該突然変異からの抽出物においては検出されなかった(図7)。この結果は、ORF2がナフテルピン生合成に必須であることを明白に示している。
【0184】
(実施例9)
データベース検索
配列および構造ホモログに関するデータベース検索を、Protein Data Bank(ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“rcsb.org/pdb/”においてアクセス可能)、Structural Classification of Proteins(SCOP, ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“scop.mrc-lmb.cam.ac.uk/scop”においてアクセス可能)およびCATH Protein構造分類(ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“biochem.ucl.ac.uk/bsm/cath”においてアクセス可能)を介して、それぞれPSI-BLASTおよびVAST(ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“ncbi.nlm.nih.gov”においてアクセス可能)、SSMおよびDALI(ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“ebi.ac.uk/msd-srv/ssm”においてアクセス可能)、CE(ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“cl.sdsc.edu/ce.html”においてアクセス可能)ならびにDEJAVU(ワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してURL“portray.bmc.uu.se/”においてアクセス可能)で行った。
【0185】
(実施例10)
モデル化(モデリング)
CloQ/NovQおよびHypScのモデル化を、構造テンプレートとしてOrf2を使用して、Modeller-4パッケージ(Saliら, Proteins 23(3):318-26 (1995))で行った(図6を参照されたい)。各配列につき、5つの異なるモデルを計算し、評価した。ついで、それらの種々のモデルとのOrf2構造の重ね合わせに基づいて、多重配列アライメントを手動修正した。モデラー(Modeller)を再実行させ、反復作製したモデルを視覚的に検査し、必要に応じて調節した。モデル品質をPROCHECK(Laskowskiら, J Appl Cryst 26:283-291 (1993))で評価した。種々の活性部位の間で潜在的に有意なばらつきを示す側鎖を表示し、ラベル付けした。それらの種々のモデルにおける保存残基にはAsp 110、Lys 119、Asn 173、Tyr 175、Tyr 216およびArg 228が含まれ、明瞭化のためにそれらのうちのAsp 110およびArg 228だけが表示されている。
【0186】
(実施例11)
CloQ/NovQおよびhypScの比較モデリング
かなりの程度の活性部位残基の一致は該相同性モデルの妥当性に適ったものであるが、鍵活性部位残基における、小さいが決定的に重要な相違は、CloQ/NovQの、より短いプレニル鎖長の特異性の、および芳香族基質選択性における相違の原因となる(Pojerら, 前掲)。また、HypScの相同性モデルは、この推定タンパク質におけるプレニル鎖長特異性の仮定に合致する。Orf2におけるGPP結合に関与するTyr 121は、すべての他の配列において、Trp(CloQ/NovQにおいては115、HypScにおいては117)により置換され、モデル化環配向はTyr 121と同一であり、一方、嵩高さの増大は、DMAPPのより短いC5プレニル鎖を、より良好に隔離(sequester)しうる。それぞれArg(CloQ/NovQにおいては59、HypScにおいては61)およびGlu(CloQ/NovQ/HypSCにおいては274)により置換されたSer 64およびGly 286は、Orf2活性部位内に実験的に配置されたGPP分子の第2 C5イソプレン単位の位置の厳密に上に、内部塩橋を形成するよう保たれている。HypScプレニルトランスフェラーゼモデルにおいて観察された同じ変化は、この酵素がまた、DMAPPをプレニル供与物質として利用することを予測するものである。注目すべきことに、Orf2においては、GPP分子のゲラニル鎖はバレル開口部の隣で終わり、このことは、Orf2がFPP単位のC15プレニル鎖を収容しうることに関する考えられうる根拠となる。
【0187】
さらに、CloQ/NovQおよびHypScモデルに対するOrf2の構造アライメントは、Orf2が二価カチオンを要することに関する分子的決定因子を示す。配位したMg2+イオンを介してOrf2のジホスフェート結合に直接的に関与するAsp 62は、HypScにおいてはAsn 59により保存的に置換されるが、CloQ/NovQにおいてはSer 57に変化する。相補的な様態で、Orf2におけるSer51はCloQ/NovQにおいては正荷電Lys 47により、HypScにおいては正荷電Arg 47により置換され、それらは、僅かな回転異性体配置を伴って、Orf2において見出されるMg2+イオン上に配置されうる。さらに、これらの塩基性側鎖は、理想的には、GPP分子の負荷電αホスフェートへの静電的結合のために配置される。しかし、水分子を介してMg2+の結合に間接的に関与するAsp 110は、調べた全ての配列において保存されており(図1B)、このことは、CloQおよびNovQがMg2+の非存在下で活性であるが2.5 mM Mg2+の存在下で最高活性を示すこと(Pojerら, 前掲)についての理由を説明するものである。4-HPPに対するCloQの特異性に関しては、Orf2のGln 161およびSer 177はArg(CloQにおいては153および169)により置換され、おそらく4-HPP基質の負荷電尾部に結合するよう配置される。
【0188】
この解析は、HypSc酵素がプレニルトランスフェラーゼであり、基質としてDMAPPのみを受容し、一方、その活性にはMg2+を要しないことを予測させるものであり、相同性モデリングに基づくこの仮説はHypScのクローニング、タンパク質発現および酵素アッセイにより証明されている(図7を参照されたい)。
【表3】

【0189】
例えば、表3は、4つのOrf2基質/基質類似体複合体(すなわち、TAPSバッファー分子と複合体形成したOrf2、GPPおよびMg2+を含有する二成分Orf2複合体、非加水分解性GPP類似体, GSPP、Mg2+および1,6-DHNとの三成分Orf2複合体、ならびにGSPP、Mg2+およびフラビオリンとの三成分Orf2複合体)のX線結晶構造を得ることにより決定された、プレニル鎖長決定、芳香族基質選択性およびプレニル基転移メカニズムに伴う構造特徴を要約している。
(実施例12)
hypScプレニルトランスフェラーゼ活性の検出
実施例5に記載のアッセイを、hypScならびに(a)1,6-DHN (2)、(b)2,7-DHN (3)、(c)ダイドゼイン(daidzein)(7,4'-ジヒドロキシイソフラボノン, 5)、(d)ゲニステイン(genistein)(5,7,4'-トリヒドロキシイソフラボン, 8)、(e)ナリンゲニン(naringenin)(5,7,4'-トリヒドロキシフラボノン, 9)、(f)オリベトール(olivetol)(12)、およびレスベラトロール(resveratrol)(3,4',5-トリヒドロキシスチルベン, 13)を使用して繰返した。これらのプレニル受容物質は以下の反応産物を与えた。
【0190】
(a) 5-ジメチルアリル-l,6-DHN;
(b) l-ジメチルアリル-2,7-DHN;
(c) 反応産物は検出されなかった;
(d) 反応産物は検出されなかった;
(e) 6-ジメチルアリル-ナリンゲニン;
(f) 2-ジメチルアリル-オリベトールおよび4-ジメチルアリル-オリベトール、ならびに
(g) 4-ジメチルアリル-レスベラトロール。
【0191】
(実施例13)
海洋放線菌からのハイブリッドイソプレノイドの生合成
所有しているPTアーゼOrf2およびHypScを使用して、異なる基質特異性を有する他の放線菌PTアーゼを特定することが可能である。この目的のために、多種多様なハイブリッドイソプレノイド天然物を産生する一群の海洋放線菌をまとめた(図1B、表4を参照されたい)。
【表4】

【0192】
株CNH099は、3つのイソプレノイド化学型(すなわち、ファルネシル化ナフテルピン類似体マリノン、転位誘導体ネオマリノンおよびフェナジンラバンデュシアニン)を産生する。標識前駆体でのフィード実験はこれらの代謝産物の生合成経路を明らかにした。該マリノン類に共通のナフトキノンコアの生合成は、観察された標識パターンを満足するためにはTHNのような対称ペンタケチド中間体を経て進行しなければならない。THNの公知の自己酸化産物であるフラビオリンは、直接的に又はS-アデノシルメチオニンを介してC10においてメチル化された形態で、ネオマリノン生合成における中間体として働きうる。MEP経路由来のFPPはセスキテルペノイド側鎖を供与する。プレニル化は、FPPのC3の結合を介したC-プレニル化を経て直接的に又はフラビオリンのC5もしくはC7-ヒドロキシ基のO-プレニル化を経て間接的に生じ、ついでクライゼン転位により同じフラン中間体が生成しうる。ワーグナー・メーヤワイン転位後の直鎖状ジエンのプロトン補助環化はネオマリノンを与える。
【0193】
それぞれの生合成遺伝子クラスターに関する予備検索は、E. coli-StreptomycesシャトルコスミドpOJ446におけるコスミドライブラリーの作製、pKC1139に基づく温度感受性プラスミドの大腸菌(E. coli)からCNH099への接合導入が関わる相同組換えのためのこの株における遺伝学系の開発、ならびにTHNおよびフェナジンの生合成をコードする遺伝子の配列解析を可能にする。また、エスチボホエニン(aestivophoenin)産生体Streptomyces purpeofuscusのpOJ446コスミドライブラリーが調製されている。この情報は新規芳香族PTアーゼの特定およびクローニングに有用である。
【0194】
(実施例14)
ゲラニル化産物と複合体化したOrf2のX線結晶構造
それぞれGPPおよび1,6-DHNおよびナリンゲニンと共にインキュベートされたOrf2の反応産物は、それぞれトランス-5-ゲラニル 1,6-DHN/トランス-2-ゲラニル 1,6-DHNおよび6-ゲラニルナリンゲニン/7-O-ゲラニルナリンゲニンとして特定されている(図2Bを参照されたい)。これらの化合物の大規模生産を、20〜50 mM GPPおよび20〜50 mM 1,6-DHNまたは(2S)-ナリンゲニンを含有する本明細書に記載のアッセイバッファー中、500μLの反応容量を用いてin vitroで行うことが可能である。インキュベーションを一晩にわたって行い、得られた溶液のサンプルをHPLC-MSにより分析して、産物の収率および反応の度合を評価することが可能である。複数の反応(約5〜10個の反応)の反応液を合せ、各回等容量の酢酸エチルで2回抽出し、合せた有機抽出物を乾燥させ、ついで最少量のメタノールに溶解させ、ついでHPLC上に注入し、分取逆相カラム上で精製することが可能である。ついで、精製された産物を特徴づけることが可能である。精製されたトランス-5-ゲラニル、1,6-DHN、トランス-2-ゲラニル、1,6-DHN、6-ゲラニルナリンゲニンおよび7-O-ゲラニルナリンゲニンを100%エタノールまたはメタノールに飽和近く(約100〜200 mM)まで溶解させることが可能である。それらの4つのOrf2産物複合体のそれぞれは、共結晶化および浸漬法を用いて調製することが可能である。Orf2結晶における該産物が最高占有率を有するように、共結晶化および浸漬アプローチは共にグリッド(grid)を使用し、それにより、それぞれの産物の濃度が5〜25mMとなるようにする。
【0195】
(実施例15)
DMAPPの効率的利用が可能なOrf2突然変異体の作製ならびにDMASPPおよび1,6-DHNの存在下のその三次元構造の解明
プレニルジホスフェート鎖長選択性、芳香族基質認識の分子的決定因子および二価カチオン依存性を更に明らかにするために、Orf2の三次元座標を構造テンプレートとして使用して、CloQ、NovQおよびHypSc配列の相同性モデリングを行った(図6)。活性部位残基の一致度は前記の相同性モデルに符合するが、鍵活性部位残基における若干の相違は、CloQ/NovQの、より短いプレニル鎖特異性、および芳香族基質選択性における相違を説明しうる。また、Streptomyces coelicolor由来の新たに特定されたPTアーゼHypScの相同性モデルは、DMAPP特異的でMg2+非依存的なPTアーゼとしてのHypScの生化学的特徴づけをもたらす。Orf2におけるプレニル鎖長依存性は種々の方法で評価することが可能である。1つのアプローチは、図6に示すCloQ/NovQおよびHypScの初期相同性モデルに基づいて、限られた組合せの部位特異的突然変異体を作製することを含む。もう1つのアプローチは、既にマッピングされたゲラニル結合部位の周辺に集中した、HypScまたはCloQ/NovQとのOrf2の比較分析から導かれた全ての可能なアミノ酸置換を有する、いくつかの1024メンバー突然変異体ライブラリーを作製することを含む。
【0196】
Orf2の第1セットは、伝統的なクイック・チェンジ(QuickChange)プロトコールを用いて構築することが可能である。特に、Trp残基(CloQ/NovQにおける残基115、HypScにおける残基117)はOrf2においてはTyr 121により置換される。Orf2におけるフェノール環と比較した場合のHypSc/CloQ/NovQにおけるインドール環の嵩高さの増大は、DMAPPの、より短いC5プレニル鎖を、より良好に収容しうる。また、HypSc/CloQ/NovQにおいては、ArgおよびGlu残基はOrf2におけるそれぞれSer 64およびGly 286(CloQ/NovQにおける残基59および274ならびにHypScにおける残基61および274)により置換される。DMAPP特異的PTアーゼにおけるこの見掛け上の塩橋は、GPP分子の第2 C5イソプレン単位の位置上に保たれて位置する。注目すべきことに、HypScの相同性モデルにおけるこの変化は、この新たに見出されたS. coelicolor酵素の、DMAPP特異的PTアーゼとしての生化学的特徴づけをもたらす。酵素操作へと方向づけられたこのアプローチは、プレニル鎖長の決定に対する隣接残基の潜在的影響を最小にする。この突然変異誘発法がOrf2のプレニル鎖長特異性を有意に改変しない場合には、実施例17に記載のSCOPEアプローチを用いて、突然変異Orf2の、より大きなライブラリーを調製することが可能である。
【0197】
更なる機能検査のための残基を最初に選択するために用いる比較相同性モデリングは、Orf2を構造テンプレートとして使用するパッケージModeller-4を使用して行う。新規配列が特定されるにつれて、追加的なモデルを構築することが可能である。各配列につき、5つの異なるモデルを計算し、評価する。ついで、個々のモデルとのOrf2構造の重ね合わせに基づいて、該多重配列アライメントを手動で修正する。ついでModeller-4を再実行し、反復作製モデルを視覚的に検査し、必要に応じて調節する。モデルの質をPROCHECKで評価する。
【0198】
(実施例16)
推定PTアーゼ動力学的アッセイの開発
PTアーゼの定常状態の動力学的パラメーターを決定するために、放射TLCアッセイを用いることが可能である。使用される典型的な反応バッファーは、20μlの最終容量中、50 mM HEPES (pH 7.5)、0.1〜10 mM 芳香族受容物質、0.1〜5 mM [14C]-DMAPP、[14C]-GPPまたは[14C]-FPP(New England Nuclear)、5 mM MgCl2よりなる。該アッセイ混合物に10ng〜5μgのPTアーゼを加えることにより、反応を開始させる。酵素濃度範囲は、ミカエリス・メンテン動力学に従い最適PTアーゼ濃度を達成するよう選ばれうる。インキュベーションを行い、最初の1〜120分間の時間範囲にわたって4〜6個の時点を三重に集めることが可能である。反応を酢酸エチルでクエンチすることが可能である。抽出物を蒸発乾固させ、メタノールに再溶解させ、Whatman LK6DシリカTLCプレートに適用する。該TLCプレートをクロロホルム/メタノール(20:1)溶媒混合物で展開させることが可能である。芳香族反応産物は、254nmで、またはイメージングプレートを使用してオートラジオグラフィーにより検出することが可能である。Ecolumeシンチレーション流体中にTLCプレート断片を剥ぎ取り、シンチレーションカウンターで[14C]-放射能を検出し、[14C]-DMAPP、[14C]-GPPまたは[14C]-FPPの最終的な比放射能を用いて補正cpmを産物のnmolに変換することにより、産物を定量することが可能である。産物生成がモニター時間(低活性PTアーゼまたはその突然変異体では2時間まで)にわたって直線的である場合の初速度の測定から、動力学的定数を決定することが可能である。2つの基質を使用すると仮定すると、プレニル供与物質のKM値は、芳香族受容物質の飽和濃度(典型的には50mM)を用いて確定され、プレニル受容物質のKM値は、プレニル供与物質の飽和濃度(典型的には50mM)を用いて確定される。50mMのプレニル供与物質を得るためには、非放射性DMAPP、GPPまたはFPPを使用して該放射性サンプルを50mMに希釈し、適宜、希釈度に関する補正を行う。
【0199】
(実施例17)
プレニル基転位をモニターするための迅速UPLC-MSに基づく定性的アッセイ
プレニル化反応に関する定性的(または半定量的)アッセイとしては、効率的な分析技術を用いることが望ましい。特に、モニターすべき生合成的変換は、野生型および突然変異型PTアーゼに対する天然基質および非天然基質の両方のプレニル化(IPP、GPPおよびFPPを経由するもの)を含む。そのようなアッセイの効率は速度、分離能(分解能)および感度により定められる。該アッセイは、いくつかの1024突然変異体ライブラリーを評価するためには多数のサンプルに対応したもの(ハイスループット)でなければならず、(反応の数および試薬の関連コストを考慮すると)低容量(ミリリットル以下)の反応容量の分析をもたらすものでなければならない。イソプレノイドジホスフェートの選択を伴う天然基質に対するこれらの酵素および酵素ライブラリーのスクリーニングに加えて、化学的ビルディングブロックの位置特異的プレニル化を支配する基質-反応性の関係を探るよう意図された種々の非天然基質に関するスクリーニングも望ましいかもしれない。最後に、Orf2の、確認された乱交雑性、およびそれが複数の産物を生成しうることを考慮すると、該アッセイはまた、1反応当たり複数のプレニル化種を分離し特定するものでなければならない。
【0200】
これらの要件を考慮すると、ESCi質量分析と組合された超高性能液体クロマトグラフィー(Ultra Performance Liquid Chromatography)(UPLC-MS)が、前記アッセイ要件を満足する適当な技術であると目されている。簡潔に説明すると、UPLCは、分離技術において最近発展したものである。15,000 psiに近い運転圧力と組合された、その新たな1.7μm粒子の技術は、5μm粒子を使用する標準的なHPLCに対して、カラム長が標準化された場合に分離能において1.7倍、速度において3倍および感度において1.7倍の向上をもたらす。しかし、この技術の最大の利点は、分離能(L/dp)を標準化した場合に得られ、この場合、通常のHPLC 5μm粒子に対して、分離能において1倍、速度において9倍および感度において3倍の向上が得られる。速度および感度におけるこれらの有意な向上は、定性的アッセイを行うのに非常に有益である。
【0201】
この方法のもう1つの利点は、方法の開発のための時間における500%の減少からもたらされる。好ましくは、マイクロウェルプレート(96または384ウェルフォーマット)を使用して実験を行い、この場合、PTアーゼ、イソプレノイドジホスフェートおよび芳香族基質をストック溶液から逐次的に加え、混合する。突然変異酵素のライブラリーは、小規模(5〜10ml)培養およびヒスチジンタグ付きタンパク質の多重精製用の自動Qiagenロボットを用いて、平行して簡便に精製される。最適反応時間の後、反応をクエンチし、アッセイのためにUPLCサンプル オーガナイザー/マネージャー内にローディングする。目標となる運転パラメーターには、LC実施時間 < 5分(僅か1分の実施時間も達成される)、およびサンプル損失の問題を回避するためのクエンチ反応混合物の直接注入が含まれる。直接注入がハイスループットに適さない場合には、それほど極性ではない有機溶媒を使用する抽出工程を含めることが可能であり、ついでサンプルを、蒸発および後続のサンプル濃縮の問題に対処するよう考慮されている場合であっても反応ウェルの最上層から直接採取することが可能である。
【0202】
最後に、MSの入手を誘発するダイオードアレイ検出器により産物の検出を行うことが可能である。僅か0.1μlの注入容量が可能であり、保持時間は非常に短いため、< 5ml/サンプルの総容量で、すべてのピークの検出を確保しながらESCi MSから直接的に実施に付される。親イオンの情報を用いて、プレニル化産物の特定を容易に実施できる。Mass Lynxデータマネジメントシステムはデータ解析の自動化を可能にし、産物の質量の表を予め定めることにより、関心のあるピークを迅速に特定する。
【0203】
(実施例18)
構造の解明
大規模なin vitro反応および全細胞発酵を、フォトダイオードアレイ検出器(PDA)、自動サンプリングおよび画分収集装置を備えたWaters 600 HPLCまたはAgilent 1100 HPLC上で直接的に分析することが可能である。分離は、0.5ml/分の流速で30分間にわたる水中の0.15% TFAからメタノールへの直線溶媒勾配で、共にYMC ODS-AQ 4.6×150 mm逆相カラムを使用して達成される。あるいは、まず、該サンプルを酢酸エチルで抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、乾燥させ、分析のためにメタノールに再溶解させる。可能な場合には、真正標準物と共に注入を行うことによりクロマトグラフィーピークを特定する。PDA検出およびインラインMicroMass ZQ ESCi(組合せAPCI-ESI)質量分析計(低分離能質量分析用)を備えたWaters Acquity UPLC上で自動化スクリーニングが行われる。純粋な成分の単離は、10ml/分までの流速で作動しうる20×250 mm YMC充填ODS-A HPLCカラムを使用して、予め分画されたサンプルで行う。
【0204】
純粋な代謝産物の構造は、Bruker DRX-300およびDRX-600分光計またはVarian Unity Inova 500分光計を使用する1Dおよび2D-NMR分光法により解明することが可能である。プロトンおよび炭素の帰属は、COSY、HSQC、HMBCおよびnOeスペクトルデータから入手することが可能である。等核1H結合性は、相感受性二重量子フィルター(phase-sensitive, double-quantum filtered)COSY実験により測定することが可能である。一結合異核1H-13C結合性は、勾配増強プロトン検出(gradient-enhanced proton-detected)HSQS実験により測定することが可能である。二および三結合1H-13C結合性は、勾配増強プロトン検出(gradient-enhanced proton-detected)HMBC実験により測定することが可能である。等核1H nOeは、種々のnOe実験により、および二次元ROESY実験により得ることが可能であり、これにより相対立体化学が得られる。一方、新規化合物の絶対立体化学は、しばしば、修飾されたMosher分析法または単結晶X線解析により得られる。適当な場合には、安定な同位体(例えば、ナトリウム[l,2-13C2]アセテートまたは[U-13C6]グルコース)で標識された生合成中間体を培地に投与して、13C INADEQUATEまたは関連実験により類似体の特定を補助することが可能である。高分解能質量測定は、TOF-ESI(TSRI Mass Spectroscopy Laboratory)またはFABにより行うことが可能である。他の特徴づけ技術には、偏光分析(Perkin-Elmer 341 Polarimeter)およびフーリエ変換赤外分光法(Nicolet 4700 FT-IR)が含まれる。
【0205】
本発明は、その或る好ましい実施形態に関して詳細に記載されているが、改変および変更も、開示されており特許請求されている本発明の精神および範囲内であると理解される。
【0206】

【0207】

【0208】

【0209】

【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】

【0215】

【0216】

【0217】

【0218】

【0219】

【0220】

【0221】

【0222】

【0223】

【0224】

【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1A】図1Aは、放線菌(Actinomycete)により産生されるハイブリッド・テルペノイド-ポリケチド化合物の構造を示す。ナフテルピン(naphterpin)の合成は、GPP補基質を使用するTHN、フラビオリン(flaviolin)または由来代謝産物のプレニル化を含む。THNは、orf3によりコードされるTHNシンターゼの作用によりマロニル-CoAから産生される。THNは容易に酸化されてヒドロキノン誘導体2,5,7-トリヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(フラビオリン)を与える。THN骨格は更に修飾され、プレニル化され、ナフテルピン、フラキノシン(furaquinocin)A、ナピラジオマイシン(napyradiomycin)Aおよびマリノン(marinone)のようなハイブリッド・テルペノイド-ポリケチド化合物内に組込まれる。
【図1B】図1Bは、放線菌由来の代表的なハイブリッド・イソプレノイドの構造を示す。イソプレノイド単位は、適宜、C-、N-およびO-結合を介して、ナフトキノン(ナフテルピン(naphterpin)、マリノン(marinone)、ネオマリノン(neomarinone)およびQ525.518を参照されたい)、フェノール(ノボビオシン(novobiocin)を参照されたい)、フェナジン(ラバンデュシアニン(lavanducyanin)およびエスチボホエニン(aestivophoenin)Bを参照されたい)およびニトロピロール(Q509.364を参照されたい)基に結合している。
【図1C】図1Cは、構造に基づく多重配列アライメントを示す。Streptomyces sp.株CL190由来のorf2遺伝子産物Orf2は、307残基を含む33kDaの可溶性単量体タンパク質である。PSI-BLAST検索は、Orf2と、3つの他の細菌タンパク質、すなわち、Streptomyces coelicolor A3(2)(HypSc, アクセッション番号AL939130)由来のタンパク質ならびにそれぞれStreptomyces roseochromogenesおよびStreptomyces spheroides NCIMB 11891由来の既に記載されている4-ヒドロキシフェニルピルベート:ジメチルアリルトランスフェラーゼ遺伝子cloQ(アクセッション番号AF329398)およびnovQ(アクセッション番号AF170880)との間の強力な相同性を示した。残基(1文字のアミノ酸記号)はOrf2の配列に基づいて番号付けされている。ダッシュは挿入および欠失を表す。このアライメントは公知Orf2二次構造に関連づけられており、ESPript(URL “prodes.toulouse.inra.fr/ESPript”のワールド・ワイド・ウェブ上のインターネットを介してアクセス可能)を使用してレンダリングされた。コーディングは以下のとおりである:灰色上の灰色は、活性部位内に位置する残基を表し、黒色上の白色は、厳密に保存された残基を表し、灰色上の白色の上塗りは、厳密に保存され、かつ、活性部位内に位置する残基を表す。灰色の枠で囲まれた残基は該アライメント配列内の類似残基を表す。
【図2A】図2Aは1,6-DHNのMg2+依存性プレニル化を示す。反応バッファーは、20μlの最終容量中の50 mM HEPES (pH 7.5)、5 mM 1,6-DHNおよび5 mM GPPよりなるものであった。該反応は、20μgのOrf2をアッセイ混合物に加えることにより開始させた。25℃で4時間のインキュベーションの後、該混合物を乾燥させ、シリカゲルTLCプレート上にスポットした。該TLCプレートをクロロホルム/メタノール(20:1)溶媒混合物で展開させた。1,6-DHNおよび反応産物を254nmで検出した。それらの2つのHPLC精製産物の化学分析をMSおよび1H NMRの両方の分析により行った。レーン1(対照)においては、Orf2を添加前に煮沸した。レーン2内の反応混合物はMgCl2を含有していなかった。一方、レーン3には5 mM MgCl2を加えた。
【図2B】図2Bは乱交雑(promiscuous)活性を示す。種々の潜在的基質、すなわち、1,3-DHN (1)、1,6-DHN (2)、2,7-DHN (3)、4-HPP (4)ならびにいくつかのイソフラボノイドおよびポリケチド誘導体、例えばダイドゼイン(daidzein)(7,4'-ジヒドロキシイソフラボノン, 5)、ホルモノネチン(formononetin)(7-ヒドロキシ, 4'-メトキシイソフラボノン, 6)、フィセチン(fisetin)(3,3',4',7-テトラヒドロキシフラボン, 7)、ゲニステイン(genistein)(5,7,4'-トリヒドロキシイソフラボン, 8)、ナリンゲニン(naringenin)(5,7,4'-トリヒドロキシフラボノン, 9)、フラビオリン(flaviolin)(10)、オリベトール(olivetol)(11)、オリベトール酸(olivetolic acid)(12)およびレスベラトロール(resveratrol)(3,4',5-トリヒドロキシスチルベン, 13)を使用して、いくつかのアッセイを行った。4つの反応産物(すなわち、1,6-ジヒドロキシ 2-ゲラニルナフタレン(14)、1,6-ジヒドロキシ 5-ゲラニルナフタレン(15)、6-ゲラニルナリンゲニン(16)および7-O-ゲラニルナリンゲニン(17))の化学構造はMSおよび1H NMRの両方の分析により決定した。反応バッファーは、20μlの最終容量中の50 mM HEPES (pH 7.5)、5 mM MgCl2および0.1 mM GPP、0.009 mM [14C]GPPおよび0.1 mMの各基質よりなるものであった。該反応は、30μgのOrf2をアッセイ混合物に加えることにより開始させた。25℃で6時間のインキュベーションの後、該混合物を乾燥させ、シリカゲルTLCプレート上にスポットした。該TLCプレートをクロロホルム/メタノール(15:1)溶媒混合物で展開させた。反応産物を[14C]イメージングプレート(Fuji Photo Film)で検出した。
【図3】図3は全体として、種々のタイプのタンパク質バレルトポロジーの比較を示す。タンパク質バレルの二次元トポロジー概要図および三次元図が上から下へ示されている。各二次構造要素(環(またはらせん状のリボン)として表されているヘリックスおよび三角形(または平坦なリボン)として表されているβ-ストランド)は、「上方」(該図の平面から外へ)または「下方」(該図の平面の中へ)のいずれかの方向性(NからCへ)を維持している。要素の方向は、連結線から、また、該ストランドの配向から推定されうる。図3Aは、α/β-バレル(例えば、NADP+およびグルコース6-ホスフェートと複合体形成したヒト アルド-ケトレダクターゼ(pdbエントリー2ACQ))を示す。図3Bは、β/α-バレル(例えば、GSPP、DHN2およびMg2+と複合体形成したStreptomyces sp.株CL 190 Orf2芳香族プレニルトランスフェラーゼ)を示す。図3Cは、α+β-バレル(例えば、S. coelicolor A3由来のActVA-Orf6モノオキシゲナーゼの二量体フェロドキシン様α+βサンドイッチフォールド(pdbエントリー1LQ9))を示す。図3Dは、β-バレル(例えば、1分子のステアリン酸と複合体形成したヒト脂肪酸結合性タンパク質M-FABP(pdbエントリー1HMT))を示す。図3Eは、α-αバレル(例えば、同時に結合したファルネシル化Ras4Bペプチド産物およびファルネシルジホスフェート基質と複合体形成したRattus norvegicusタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼのβ-サブユニット(pdbエントリー1KZO))を示す。
【図4A】図4は全体として、種々の複合体におけるOrf2活性部位の拡大図を示す。図4Aは以下の複合体を示す:TAPS分子、結合GPP、および1,6-DHNまたはフラビオリンのいずれかを伴うGSPP。
【図4B】図4Bは、二価金属結合部位の構造を示す。代表的な2f0-fc電子密度地図(1.0σレベルで正規化地図からレンダリングされたもの)はMg2+イオンの八面体配位を示し、ここで、2個の酸素原子(1個はAsp62からのもの、1個はGSPP分子のジホスフェート部分からのもの)が4個の水分子と共に該八面体配位幾何構造に寄与している。
【図4C】図4Cは、Orf2活性部位の概要図を示す。Mg2+、GSPPおよび1,6-DHN結合に関与する側鎖が灰色の点線としての水素結合および配位結合と共に示されている。黒色の点線は、水分子を介した間接的な水素結合を表す。この拡大図は、図4Aの場合と同じ配向で示されており、図4Bに示したものと比べると垂直軸に沿って180度回転している。半円は、それらの2つの基質とのファンデルワールス接触を示す。仮のデプス・キューイング・コーディング(depth queuing coding)は以下のとおりである:灰色は、GSPP-1,6-DHN平面の背部における残基を表し、黒色は同一平面に対応し、肉太の黒色は前部における残基を表す。
【図5】図5は、Orf2活性部位における芳香族プレニル化に関する、提示されているメカニズムの概要構造図を示す。このパネルは、GPP分子の隣の芳香族基質の結合、ゲラニルカルボカチオン(G+で示されている)の生成、生成コンホメーションへのプレニル鎖の回転、1,6-DHNの芳香環への該カルボカチオンの求電子攻撃、σ錯体の形成および水分子による最終的なプロトン除去を示す。
【図6】図6は、Orf2ホモログの活性部位モデルを示す。構造テンプレートとしてOrf2を使用して、CloQ/NovQおよびHypScのモデリングを行った。種々の活性部位間で潜在的に有意な変動を示す側鎖が示されており、名称表示されている。それらの種々のモデルにおける保存残基には、Asp 110、Lys 119、Asn 173、Tyr 175、Tyr 216およびArg 228が含まれ、このうち、明瞭化のために、Asp 110およびArg 228のみが示されている。
【図7】図7は、HypScの機能評価に関する。例えば、図2Aに関して前記で説明されているとおりに、プレニル受容物質として1,6-DHNを使用して(レーン1〜4のそれぞれ;レーン1にはプレニル受容物質は存在しない;レーン2および3にはDMAPPが存在する;レーン4にはGPPが存在する)、HypScプレニルトランスフェラーゼ活性をアッセイした。レーン2では、Mg2+を使用しなかった。該サンプルを室温で一晩インキュベートした。
【図8】図8は、本発明の実施に使用するよう意図されたコンピューターシステムのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β/αバレル構造を有する芳香族プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその保存的変異を有する、請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項3】
配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項4】
請求項1記載のプレニルトランスフェラーゼをコードする核酸。
【請求項5】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼをコードする核酸。
【請求項6】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼを結晶形態で含む組成物。
【請求項7】
該芳香族プレニルトランスフェラーゼに対する1以上の基質を更に含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
付録1に記載の構造座標を有する、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
推定芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性および/または基質特異性を予測する方法であって、
既知芳香族プレニルトランスフェラーゼの三次元表示と推定芳香族プレニルトランスフェラーゼの三次元表示とを比較することを含み、ここで、それらの2つの表示の間の相違が芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性および/または基質特異性を予測させるものである、前記方法。
【請求項10】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼへの結合に関して芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質と競合する潜在的結合物質の能力を測定することを含み、ここで、該潜在的結合 複数の原子座標、前記方法。
【請求項11】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの潜在的基質を特定するための方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位を定め、
該活性部位にフィットする潜在的基質を特定し、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼを該潜在的基質と接触させ、該潜在的基質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を測定することを含む、前記方法。
【請求項12】
ある化合物が芳香族プレニルトランスフェラーゼ基質であるかどうかを判定するための化合物のスクリーニング方法であって、
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼにより変換される能力に関して化合物を試験することを含み、
ここで、該化合物は、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの相互作用点を有するものとして選択されたものであり、
ここで、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または産物との間の相互作用の類似点が決定されている、前記方法。
【請求項13】
芳香族プレニルトランスフェラーゼを、請求項12記載の方法により特定された化合物の有効量と接触させることを含む、芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を刺激するための方法。
【請求項14】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性の潜在的モジュレーターを特定するための方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて活性部位にフィットする潜在的化合物を接触させ、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性を該化合物がモジュレートする能力を測定することを含む、前記方法。
【請求項15】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする化合物をスクリーニングする方法であって、
芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性をモジュレートする能力に関して化合物を試験することを含み、
ここで、該化合物は、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとの相互作用点を有するものとして選択されたものであり、
ここで、該芳香族プレニルトランスフェラーゼとその基質または基質模倣体との間の相互作用の類似点が決定されている、前記方法。
【請求項16】
プレニル化条件下、芳香族基質を、請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼと接触させることを含む、芳香族基質をプレニル化する方法。
【請求項17】
β/αバレル構造を有するタンパク質を特定するための方法であって、
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの三次元表示を、β/αバレル構造を有する推定タンパク質の三次元表示と比較することを含み、ここで、それらの2つの表示の間の類似性が、β/αバレル構造を有する芳香族プレニルトランスフェラーゼタンパク質を予測させるものである、前記方法。
【請求項18】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を制御または改変する方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼにより促進されるプレニル化の度合を制御または改変するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を改変または修飾することを含む、前記方法。
【請求項19】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼの基質特異性を制御または改変する方法であって、
該芳香族プレニルトランスフェラーゼによりプレニル化される芳香族基質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの選択性を制御または改変するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を改変または修飾することを含む、前記方法。
【請求項20】
請求項1記載の芳香族プレニルトランスフェラーゼのプレニル供与物質特異性を制御または改変する方法であって、
芳香族基質をプレニル化するために用いられるプレニル供与物質に対する該芳香族プレニルトランスフェラーゼの選択性を制御または改変するのに十分な程度に活性部位のディメンションを変化させるよう該芳香族プレニルトランスフェラーゼの活性部位残基の1以上を改変または修飾することを含む、前記方法。
【請求項21】
芳香族プレニルトランスフェラーゼの複数の原子座標に基づいて芳香族プレニルトランスフェラーゼまたはその断片をコンピューターに定めさせる命令を含む、コンピューター読取り可能な媒体上のコンピュータープログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−528036(P2008−528036A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553311(P2007−553311)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/003161
【国際公開番号】WO2006/081537
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(596086505)
【氏名又は名称原語表記】The Salk Institute For Biological Studies
【住所又は居所原語表記】10010 North Torrey Pines Road,La Jolla,California 92037,United States of America
【出願人】(899000024)株式会社東京大学TLO (50)
【Fターム(参考)】