説明

新規親水化剤/HSP代替物

本発明は、新規親水化剤、水性及び/又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートの製造におけるその使用、並びにそのようなブロックトポリイソシアネートの製造方法及び改良された腐食制御特性を有する、所望により自己架橋性の焼付け系におけるブロックトポリイソシアネートの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規親水化剤、水性及び/又は水希釈性ブロックトポリイソシアネートの製造におけるその使用、並びにそのようなブロックトポリイソシアネートの製造方法及び改良された腐食制御特性を有する、所望により自己架橋性の焼付け系におけるブロックトポリイソシアネートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンをその合成後に水相に移行させるために並びに/若しくは溶液及び/又は分散液を沈降に対して安定化するために、ポリウレタンの溶液及び/又は分散液を調製する際に、親水化剤が使用される。
【0003】
使用される親水化剤は、種々のカチオン性、アニオン性 及び/又は非イオン性化合物、例えば、モノ-及び/又はジヒドロキシカルボン酸若しくは一官能性アルキルエトキシレートであり、これらは、相互の混合物としても使用される。
【0004】
適切な親水化剤を選択する場合に考慮すべき重要な点の1つは、入手の容易さ又は製造の容易さである。
【0005】
ヒドロキシ含有アルキルアミドカルボン酸は、例えばアルキルアミン及びカルボン酸無水物から容易に製造できるが、これまで、分散液の調製においてまれにしか使用されていない。
【0006】
従って、米国特許第6,641,922号及び6,613,859号のみが、ジエタノールアミンと無水フタル酸との反応生成物をトリレンジイソシアネート及びシリコーン樹脂と反応させ、次いで中和することにより調製された水希釈性生成物を記載している。
【0007】
Tang, Jialingらの論文(Zhangguo Pige(1998)、27(7)、15-17)は、フタル酸のビスヒドロキシエチルモノアミドにより親水化されたポリウレタン分散液を記載している。Lin, Jianhongらの論文(Gaofenzi Xuebao(2001)(1)127-129)は、フタル酸のビスヒドロキシエチルモノアミドにより、製造中に親水化されたポリウレタン分散液についての研究を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術のいずれの研究も、水性焼付け系において使用するためのブロックトポリイソシアネートの製造において、そのようなモノアミドを使用することには、関係していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも二官能性のカルボン酸のヒドロキシ官能性アミドは、ポリイソシアネート又はポリウレタンを親水化するのに非常に適していることが見出された。本発明に従って親水化されたポリウレタン又はポリイソシアネートは、ブロックトNCO基及び親水性基を含む。この種の化合物は、自己架橋性水性焼付け塗料組成物を製造するのにとりわけ適している。
【0010】
そこで、本発明は、式(1):
【化1】

[式中、
mは、0〜8の数であり、
nは、0〜8の数であり、
m+nは、2以上であり、
R1 及びR2 は、相互に独立して、それぞれ、水素原子、又は水酸基を含まない場合により置換されたC1-C8アルキル又はシクロアルキル基であり、
R4 は、少なくとも2個の炭素原子を有する二官能性脂肪族ジカルボン酸の基、少なくとも6個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸の基又は少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の基であり、
R3 は、R1 又はR2 と同じであるか、若しくは式(2):
【化2】

(ここで、R1 及びR2 は先に定義したとおりであり、R6 は、場合によりブロックされたNCO基を有するジ-又はポリイソシアネートから誘導されるアルキル又はアリール基である。)
で示される基である。]
で示される少なくとも1つの構造単位を含む、珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタンを提供する。
【0011】
R3 は、好ましくは、基R1 及びR2 の定義に当てはまる。
このようなポリウレタンは、好ましくは、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネート、より好ましくはHDI及び/又はIPDIに基づく。
【0012】
更に本発明は、A)ポリイソシアネートを、
B)式(3):
【化3】

[式中、m 及びn 並びに基R1、R2 及びR4 は先に定義したとおりであり、
R5 は、R1 又はR2 と同じであるか、若しくは式(6):
【化4】

で示される基である。]
で示されるモノアミド、
C)ポリオール、及び
D)場合により、イソシアネート基と反応性の更なる化合物
と反応させる、請求項5又は6に記載の珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタンの製造方法を提供する。
【0013】
この目的で、A)において使用されるポリイソシアネートは、当業者には既知の、好ましくは2以上の官能価を有するNCO-官能性化合物である。このような化合物は、通例、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジ-又はトリイソシアネート、並びにウレタン基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトジオン基及び/又はイソシアヌレート基並びに2個以上の遊離NCO基を有するより高分子量のそれらの誘導体である。
それらの
【0014】
好ましいジ-又はトリイソシアネートは、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-及び1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナト-メチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリイソシアナトノナン、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン 2,4'-及び/又は4,4'-ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタン-4,4´-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、及びこれらの相互の所望混合物である。
【0015】
このようなポリイソシアネートは、通常0.5〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%のイソシアネート含有量を有する。
【0016】
本発明のポリイソシアネート又はポリウレタンを製造するのに好ましいポリイソシアネートA)は、上記の種類の化合物に相当し、ビウレット基、イソシアヌレート基及び/又はウレトジオン基を含み、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートに基づく。
【0017】
B)で使用されるモノアミは、1個又は2個の遊離OH基と1個の1級又は2級アミノ基を有するヒドロキシアミンを、1分子あたり少なくとも2個のカルボン酸基又はそれに代えて少なくとも1個の無水物基を有する化合物と反応させることにより、得ることができる。各遊離COOH or COO官能基につき0.5当量のヒドロキシアミン、又は各無水物官能基につき1当量のヒドロキシアミンを使用することが好ましい。
【0018】
二官能性カルボン酸及びそれらの無水物が好ましく、無水物が特に好ましい。
【0019】
このような無水物は、通常、下記式(4)に相当する:
【化5】

[式中、R4 は、少なくとも2個の炭素原子を有する二官能性脂肪族ジカルボン酸の基、少なくとも6個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸の基、又は少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の基である。]。
【0020】
好ましい式(4)の無水物は、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ヘキサ-及びテトラヒドロフタル酸及び無水マレイン酸である。特に好ましい無水物は、無水フタル酸、無水トリメリット酸及び無水ヘキサヒドロフタル酸である。
【0021】
使用されるヒドロキシアミンは、下記式(5)に相当する:
【化6】

[式中、m 及び n は、0〜8の整数であり、それらの和m + n は、2又はそれ以上であり、
R1 及びR2 は、相互に独立して、水素原子、又は水酸基を含まない場合により置換されたC1-C8アルキル又はシクロアルキル基であり、
R5 は、R1 及びR2 の定義に当てはまるか、又は式(6):
【化7】

(ここで、R1 及びR2 は先に定義したとおりである。)
で示される基である。]。
【0022】
好ましいヒドロキシアミンは、R5 が基R1 及びR2 の定義に当てはまる式(5)の化合物であり、従って、ヒドロキシアミンはモノヒドロキシ官能性である。
【0023】
特に好ましいヒドロキシアミンは、1-アミノプロパノール、アルキル基中に1〜5個の炭素原子を有するアルキルエタノールアミン又はアルキルイソプロパノールアミンである。N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン又は1-アミノプロパノールがとりわけ好ましい。
【0024】
このようなOH-及びCOOH-含有モノアミドは、カルボン酸又はカルボン酸無水物とヒドロキシアミンとを、例えば10〜80℃、好ましくは25〜60℃の温度において、好ましくは、溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン又はメトキシプロピルアセテート)中で反応させることにより、調製される。
【0025】
C)において使用されるポリオールは、例えば、少なくとも500g/mol、好ましくは500〜8000g/mol、より好ましくは800〜5000g/molの数平均分子量を有するポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール及びポリエーテルポリオールの群からの比較的高分子量の化合物である。
【0026】
適当なポリエステルポリオールには、特に直鎖ポリエステルジオール又は分岐ポリエステルポリオールが包含され、これらは、脂肪族、脂環式又は芳香族ジ-又はポリカルボン酸若しくはそれらの酸無水物(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸又はトリメリット酸、並びに酸無水物、例えば、無水o-フタル酸、無水トリメリット酸又は無水コハク酸、若しくはこれらの混合物)と、多価アルコール(例えば、エタンジオール、ジ-、トリ-、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジ-、トリ-、テトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-メチロールシクロヘキサン、オクタン-1,8-ジオール、デカン-1,10-ジオール、ドデカン-1,12-ジオール又はこれらの混合物)とから、より高官能性のポリオール(例えば、トリメチロールプロパン又はグリセロール)を共使用して又はせずに、常套の方法で調製することができる。ポリエステルポリオールを調製するのに適する多価アルコールにはもちろん、脂環式及び/又は芳香族ジ-及びポリヒドロキシ化合物も含まれる。ポリエステルを調製するために、遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物、又は低級アルコールとの対応するポリカルボン酸エステル、若しくはこれらの混合物を使用することもできる。
【0027】
もちろん、ポリエステルポリオールは、ラクトン又はラクトン混合物(例えば、ブチロラクトン、ε-カプロラクトン及び/又はメチル-ε-カプロラクトン)を、2及び/又はそれ以上の官能価を有する適当な出発分子(例えば、ポリエステルポリオールの合成用成分として先に記載した低分子量多価アルコール)との付加反応に付すことにより得られるラクトンのホモポリマー又はコポリマーであってもよい。ε-カプロラクトンの対応するポリマーが特に好ましい。
【0028】
ヒドロキシ含有ポリカーボネート、例えば、ジオール(1,4-ブタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオール)をジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)又はホスゲンと反応させて調製されるようなポリカーボネートも、ポリヒドロキシ成分として好ましい。
【0029】
ポリエーテルポリオールは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンとの重付加生成物若しくはそれらの共付加物及びグラフト生成物、更に、多価アルコール又はそれらの混合物を縮合して得られるポリエーテルポリオール、並びに多価アルコール、アミン及びアミノアルコールをアルコキシル化して得られるポリエーテルポリオールであってもよい。
【0030】
加えて、低分子量ポリヒドロキシ化合物、好ましくは62〜499g/molの範囲の分子量を有するジオールを使用することが好ましい。適当な化合物には、例えば、多価アルコール、特にポリエステルポリオールの調製のために示した2価アルコール、更に、低分子量ポリエステルジオール、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)アジペート、又は芳香族ジオールから出発して調製されるエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの短鎖単独付加物又は共付加物を包含する。エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの短鎖ホモポリマー及びコポリマーのための出発化合物として使用される芳香族ジオールの例は、1,4-、1,3-、1,2-ジヒドロキシベンゼン又は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
【0031】
D)において、当業者に既知のブロック剤が使用できる。その例は、ε-カプロラクタム、ジエチルマロネート、エチルアセトアセテート、オキシム(例えば、ブタノンオキシムI,アミン(例えば、N-t-ブチルベンジルアミン又はジイソプロピルアミン)、ジメチルピラゾール、トリアゾール若しくはこれらの混合物である。
【0032】
他の親水化剤も、D)の成分として適している。D)において、B)からの本発明の親水化剤に加えて、この目的に適している全てのカチオン性、アニオン性及び/又は非イオン性化合物、例えば、モノ-及び/又はジヒドロキシカルボン酸若しくは一官能性アルキルエトキシレートを使用することができる。異種親水化剤の混合物を使用することもできる。
【0033】
好ましい態様においては、反応生成物中に遊離NCO基がなお存在するように、最初にA)をB)と反応させる。この場合のNCO/OH比は、好ましくは20:1〜1.5:1、より好ましくは15:1〜2:1である。続いて、親水化されたNCO-含有ポリマーを、先に規定した種類のポリオール成分C)と、NCO基を含まないOH-官能性ポリマーが得られるような比で、反応させる。加熱すると、この種のポリマーは、脱ブロックでき、遊離OH基により架橋される。しかし、このようなポリマーも、ブロックトNCO基又は遊離NCO基を含むOH成分として、使用することができる。
【0034】
本発明の方法において、ポリウレタン化学の分野の当業者に知られている、触媒、添加剤、助剤及び溶媒を、更に使用することができる。触媒は、使用されるなら、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4質量%、より好ましくは0.07〜1.5質量%の量で使用する。
【0035】
本発明はまた、本発明のポリウレタンを含んでなる分散液を提供する。
【0036】
水性分散液は、ポリイソシアネートを水と混合する前、間又は後に、塩基を添加して遊離カルボキシル基の一部又は全部を中和することにより、本発明の珪素無含有ブロックトポリイソシアネート及び/又はポリウレタンから調製することができる。中和は、例えば、所望のアミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチル-及びエチル-ジイソプロピルアミン又はジメチルエタノールアミン)を用いて行うことができる。アンモニアも適している。トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン及びジメチルエタノールアミンが、中和には好ましい。中和は、通常、室温と110℃との間の温度で行われる。塩基のモル量(物質の量)は、通常、アニオン性基のモル量の50%〜150%の間、好ましくは60%〜100%の間である。
【0037】
一般に、上記の方法により、分散液中に、20%〜70%、好ましくは25%〜50%の固形分が達成される。
【0038】
本発明のポリウレタンは、自己架橋性ポリマーなどとして、ポリオール及び塗装技術において常套の更なる助剤及び添加剤と組み合わせて、塗料組成物、接着剤及びエラストマーを調製するために、使用することができる。
【0039】
従って、本発明は更に、少なくとも本発明のポリウレタン及び所望によりポリオールを含んでなる塗料組成物をも提供する。
【0040】
適当なポリオールは、少なくとも500g/mol、好ましくは500〜8000g/mol、より好ましくは800〜5000g/molの数平均分子量を有する、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール及びポリエーテルポリオールの群から選択される、既に記載した比較的高分子量の化合物である。
【0041】
このような塗料組成物は、基材、好ましくは、金属、鉱物、木材、プラスチックの基材を塗装するのに適しており、例えば、繊維製品の被覆、及び自動車のOEM仕上げにおける商業的塗装に適している。このような目的のために、塗料組成物は、ナイフコーティング、浸漬、噴霧塗布(例えば、圧縮空気噴霧塗布又は無気噴霧塗布)、及び静電塗装(例えば、高速回転ベル塗装)により、適用することができる。乾燥塗膜厚は、例えば、10〜120μmであり得る。乾燥膜は、90〜160℃、好ましくは110〜140℃、より好ましくは120〜130℃の範囲の温度で焼き付けることにより、硬化される。
【0042】
ワニス、塗料及び他の組成物は、本発明のポリイソシアネート及び/又はポリウレタンから、通常の方法により調製される。ポリイソシアネート及び所望のポリオールに加えて、組成物は、添加される常套の添加剤又は他の助剤、例えば、含量、充填剤、流れ調節剤、消泡剤、分散助剤及び触媒を、当業者なら容易に決定できる量で、含んでいてよい。
【実施例】
【0043】
別途記載がない限り、全てのパーセント(%)は、質量%である。
【0044】
記載された粘度は、Anton Paar Germany GmbH(ドイツ Ostfildern)製回転粘度計を用い、DIN 53019に従い、回転粘度として測定した。
【0045】
別途明記されていない限り、NCO含有量は、DIN-EN ISO 11909 に従って、容量分析により測定した。
【0046】
記載された粒径は、レーザ相関分光法(装置:Malvern Zetasizer 1000(Malvern Instr. Limited 製)を用いて、測定した。
【0047】
遊離NCO基の確認は、IR分光法(2260cm-1のバンド)により行った。
【0048】
DesmodurTM N 3300:ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくイソシアヌレート(Bayer MaterialScience AG、ドイツ Leverkusen)
DesmophenTM D 270:ヒドロキシ含有ポリエステル(Bayer MaterialScience AG、ドイツ Leverkusen)
Additol XW 395:流れ調節助剤/消泡剤(UCB Chemicals、米国セントルイス)
Surfynol 104:流れ調節助剤/消泡剤(NMP中50%)(Air Products、ドイツ Hattingen)
【0049】
実施例1
117.67g(1.2 mol)の無水マレイン酸を、207.80gのN-メチルピロリドンに溶解した。室温から始め、しかし激しく攪拌しながら、40分間かけて、90.13g(1.2 mol)の2-メチルアミノエタノールを、温度が50℃を超えないような速度で添加した。このようにしながら、カルボン酸無水物基がIR分光法により検出されなくなるまで(約60分)、50℃で攪拌を続けた。室温まで冷却すると、50%の固形分を有する透明溶液が得られた。
【0050】
実施例2
296.2g(0.2 mol)の無水フタル酸を446.42gのアセトンと混合し、混合物を、60℃に加熱し、透明溶液が形成されるまで(約1時間)攪拌した。次いで、攪拌しながら60分かけて、60℃で、150.22g(2 mol)の2-メチルアミノエタノールを添加し、続いて、混合物を、カルボン酸無水物基がIR分光法により検出されなくなるまで(約75分)、55℃で攪拌した。その後、223.21gのアセトン及び50gのN-メチルピロリドンを加え、反応混合物を室温まで冷却した。これにより、38.28%の固形分を有する透明溶液が得られた。
【0051】
実施例3
308.34g(2 mol)の無水ビスヘキサヒドロフタル酸を458.56gのアセトンに溶解した。150.22g(2 mol)の2メチルアミノエタノールを、攪拌し、30℃に冷却しながら、60分間にわたり滴加した。次いで、カルボン酸無水物基がIR分光法により検出されなくなるまで(約2時間)、40℃で攪拌を続けた。室温まで冷却すると、濃度50%の透明溶液が得られた。
【0052】
実施例4
343.20g(1.76当量NCO)のDesmodurTM N 3300 を9.45g(0.16当量OH)の1,6-ヘキサンジオールと混合し、反応混合物を、約5時間後にNCO含有量が19.05%になるまで、70℃で攪拌した。次いで、混合物を30℃に冷却し、220.11g(0.48当量OH)の実施例3からの化合物を、30℃に冷却しながら20分かけて、添加した。その後、1017.9gのアセトンを添加し、さらに反応混合物を、2.78%のNCO含有量に達するまで、30℃で1時間攪拌した。次いで、97.57g(1.12 mol)のブタノンオキシムを、30℃で10分かけて添加し、混合物を室温まで冷却し、さらに30分間攪拌した。その後、NCO基はIR分光法により最早検出されなかった。反応混合物の酸価は、15.73mg KOH/gであった。続いて、室温で攪拌しながら、47.07g(0.528 mol)のジメチルエタノールアミンを添加し、その後、10分間攪拌し、1127.9gの脱イオン水を15分かけて添加した。次いで、アセトンを、最終的に120bar及び40℃で、1時間減圧留去した。室温に冷却し、続いて4時間攪拌すると、下記の性質を有する分散液が得られた:
固形分:32.2%
pH:9.18
粘度(23℃):400mPas
粒径:41nm
【0053】
実施例5
343.20g(1.76当量NCO)のDesmodurTM N 3300 を9.45g(0.16当量OH)の1,6-ヘキサンジオールと混合し、反応混合物を、約5時間後に19.03%のNCO値に到達するまで、70℃で攪拌した。次いで、334.60gのアセトン及び223.21g(0.40当量OH)の実施例2からの化合物を50℃で添加し、反応混合物を、4.9%のNCO値に到達するまで、50℃で攪拌した。次いで、混合物を787.9gのアセトンにより希釈し、30℃に冷却し、93.55g(1.072 mol)のブタノンオキシムを、20分かけて添加し、攪拌を50分間続けた。その後、NCO基は、IR分光法により最早検出されなかった。混合物を室温まで冷却した後、39.22g(0.44 mol)のジメチルエタノールアミンを、10分かけて添加し、次に、10分間攪拌し、次いで、1067.3gの脱イオン水と混合した。続いて、アセトンを、最終的に40℃/120mbarで、1時間減圧留去した。その後、混合物を、攪拌しながら室温まで冷却し、更に4時間攪拌した。得られた分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:32.4%
pH:9.21
粘度(23℃):14,700mPas
粒径:45nm
【0054】
実施例6
343.20g(1.76当量NCO)のDesmodurTM N 3300 を9.45g(0.16当量OH)の1,6-ヘキサンジオールと混合し、混合物を、19.03%のNCO値に到達するまで、70℃で攪拌した。次に、69.70g(0.8 mol)のブタノンオキシムを、30分かけて添加し、その後、混合物を552.54gのアセトンで希釈し、35℃に冷却し、83.12g(0.24当量OH)の実施例1からの化合物を添加し、3時間後に1.58%のNCO値に到達するまで、攪拌を続けた。その後、34.85g(0.4 mol)のブタノンオキシムを、10分かけて添加し、続いて、混合物を、NCO基がIR分光法により最早検出されなくなるまで、30分間攪拌した。その後、584.82gのアセトン及び23.53g(0.264 mol)のジメチルエタノールアミンを室温で添加し、混合物を10分間攪拌し、次いで、776.8gの室温脱イオン水を添加した。次に、アセトンを減圧留去した。その後、分散液を室温まで冷却し、さらに4時間攪拌した。分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:27.5%
pH:8.83
粘度(23℃):480mPas
粒径:131 nm
【0055】
実施例7
実施例3からの化合物を最初に1,6-ヘキサンジオールに導入し、その後、DesmodurTM N 3300 を添加した以外は、実施例4の手順を繰り返した。次いで、混合物を、2.91%のNCO値に到達するまで、さらに35℃で攪拌した。分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:32.6%
pH:9.26
粘度(23℃):7250mPas
粒径:74 nm
【0056】
実施例8
化合物3,1,6-ヘキサンジオール及びDesmodurTM N 3300 を、2.65%のNCO値に到達するまで攪拌した以外は、実施例7の手順と同じであった。分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:32.0%
pH:9.28
粘度(23℃):300mPas
粒径:27 nm
【0057】
実施例9
139.93g(0.24当量OH)の実施例2からの化合物、110.12(1.264 mol)のブタノンオキシム及び14.71g(0.264 mol)のジメチルエタノールアミンを使用した以外は、実施例5の手順を繰り返した。得られた分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:30.0%
pH:8.89
粘度(23℃):<50mPas
粒径:55 nm
【0058】
実施例10
実施例2からの化合物と共に16.00g(0.032当量OH)のポリエチレンオキシド(平均分子量500;メタノールから出発して調製)を添加し、かつ、108.73g(1.248当量)のみのブタノンを使用した以外は、実施例9に記載の手順を繰り返した。分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:39.0%
pH:8.58
粘度(23℃):1850mPas
粒径:44 nm
【0059】
実施例11(比較)
本発明のモノアミドに代えてヒドロキシピバリン酸を使用した以外は、実施例7に記載の手順を繰り返した。分散液は、以下の性質を有していた:
固形分:30.0%
pH:9.06
粘度(23℃):4400mPas
粒径:39 nm
【0060】
実施例12〜17(性能試験)
以下の組成を有するクリアコート材料を調製した。クリアコート材料を使用して、フィルムを製造し、フィルムを室温で10分間乾燥し、165℃で30分間焼き付けた。得られたフィルムを、性能評価試験に付した。結果を下記表にまとめて示す。量は「質量部」である。
【0061】
【表1】

【0062】
塩水噴霧試験では、塗料材料を、重力送りカップ型ガンを用いて、スチールパネルに噴霧し、焼付けた。塩水噴霧試験は、DIN 53 167 に従って行った。
【0063】
塗膜についての性能試験では、実施例12の場合、その耐溶剤性は、比較実施例17により示される耐溶剤性よりも優れていた。実施例12、13及び14の場合、塩水噴霧試験におけるフィルム下への移行は比較的少なく、これは、優れた接着性及び耐腐食性を示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素無含有ポリイソシアネート及びポリウレタンを親水化するための、少なくとも2感応性のカルボン酸のヒドロキシ官能性アミドの使用。
【請求項2】
ヒドロキシ官能性アミドはモノヒドロキシ官能性アミドである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ヒドロキシ官能性アミドは、Nメチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン及び1-アミノプロパノールの群からの1つ又はそれ以上のモノヒドロキシ官能性アミンと無水フタル酸、無水トリメリット酸及び無水ヘキサヒドロフタル酸の群からの1つ又はそれ以上の酸無水物との等モル反応により形成される付加物である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
親水化ポリイソシアネート又はポリウレタンは、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートに基づいており、ビウレット、イソシアヌレート及び/又はウレトジオン基を含むことができる、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
式(1):
【化1】

[式中、
mは、0〜8の数であり、
nは、0〜8の数であり、
m+nは、2以上であり、
R1 及びR2 は、相互に独立して、それぞれ、水素原子、又は水酸基を含まない場合により置換されたC1-C8アルキル又はシクロアルキル基であり、
R4 は、少なくとも2個の炭素原子を有する二官能性脂肪族ジカルボン酸の基、少なくとも6個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸の基又は少なくとも6個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸の基であり、
R3 は、R1 又はR2 と同じであるか、若しくは式(2):
【化2】

(ここで、R1 及びR2 は先に定義したとおりであり、R6 は、場合によりブロックされたNCO基を有するジ-又はポリイソシアネートから誘導されるアルキル又はアリール基である。)
で示される基である。]
で示される少なくとも1つの構造単位を含む、珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタン。
【請求項6】
R3 は、基R1 及びR2の定義に当てはまる請求項5に記載された珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタン。
【請求項7】
A)遊離NCO基を有するポリイソシアネートを、
B)式(3):
【化3】

[式中、m 及びn 並びに基R1、R2 及びR4 は先に定義したとおりであり、
R5 は、R1 又はR2 と同じであるか、若しくは式(6):
【化4】

で示される基である。]
で示されるモノアミド、
C)ポリオール、及び
D)場合により、イソシアネート基と反応性の更なる化合物
と反応させる、請求項5又は6に記載の珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
R5 は基R1 及びR2 の定義に当てはまり、従って式(3)のモノアミドはモノヒドロキシ官能性である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
B)のアミドは、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン及び1-アミノプロパノールの群からの1つ又はそれ以上のモノヒドロキシ官能性アミンと、無水フタル酸、無水トリメリット酸及び無水ヘキサヒドロフタル酸の群からの1つ又はそれ以上の酸無水物との等モル反応により形成された付加物である、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
A)に使用されるポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートに基づいており、ビウレット基、イソシアヌレート基及び/又はウレトジオン基を含むことができる、請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
C)において、800〜5000g/molの数平均分子量を有する、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール及びポリエーテルポリオールを用いる、請求項7〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
触媒及び/又は溶媒を使用する、請求項7〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
D)において、ブロック剤及び/又は親水化剤を使用する、請求項7〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
請求項5又は6に記載の珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタンを含んでなる分散体。
【請求項15】
請求項5又は6に記載の珪素無含有ポリイソシアネート又はポリウレタンを使用して得られる塗料組成物、接着剤又はエラストマー。

【公表番号】特表2008−545052(P2008−545052A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519821(P2008−519821)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005880
【国際公開番号】WO2007/003268
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】