説明

新規金属間化合物、それらの使用および製法

この発明は、磁気冷却用のNi3Sn2型の結晶構造を有する新規金属間化合物、それらの使用および製法に関する。この発明はさらに、磁気冷却用の新規磁気熱量化合物およびそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規金属間化合物、それらの使用および製法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の冷却システムおよび空調装置は、従来の気体圧縮に基づいており、オゾンを減少させる、すなわち地球温暖化をもたらす揮発性の液体冷媒をいまだに使用し、それゆえ環境に大きな影響を及ぼしている。
【0003】
これらの欠点を回避するため、磁気熱量化合物を用いた磁気冷却が開発されている。
【0004】
磁気冷却は、高効率で環境への影響が少ないため、近い将来、従来の気体圧縮に対抗するようになるものと期待されている(Gschneidner K. A. et al., Annu. Rev. Mater. Sci., 30, 387, 2000; Tishin A. M. et al., The magnetocaloric effect and its applications, (Institute of physics Publishing, Bristol, 2003); Gschneidner K. A. et al., Rep. Prog., Phys. 68, 1479, 2005)。そして、磁気熱量効果(MCE)、広くいえば、変動磁場中の固体の断熱温度変化(ΔTad)または等温磁気エントロピー変化(ΔSM)は、この冷却技術の核心である。
【0005】
Gd5Si2Ge2の巨大磁気熱量効果(GMCE)の発見(Pecharsky V. K. et al., Phys. Rev. Lett. 78, 4494, (1997))以来、冷媒材料に関する期待が著しく増大している。
【0006】
巨大磁気熱量特性は、一般に強いが急な反応を生じる1次磁気転移(FOMT)と関係がある。これに対し、広くて弱いピークは、2次磁気転移(SOMT)によって生じる。
【0007】
相転移は、自由エネルギーの熱力学的変数に関する1次導関数の不連続を示す1次相転移、または自由エネルギーの2次導関数の不連続を有する2次相転移になりうる。
【0008】
1次相転移には潜熱があり、1つの相から別の相に突然変化して構造的変化が起こりうる。
【0009】
研究は、はじめは高い磁気モーメントを有する希土類化合物に限定されていた。それゆえ、米国特許N° 5,362,339は、次の一般式LnaAbMcを有する磁気熱量化合物を開示している。ここで、Lnは、Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, TmおよびYbからなるグループから選択される希土類元素であり、Aは、AlまたはGaそしてMはFe, Co, Ni, CuおよびAgからなるグループから選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの磁気熱量材料は、Gdのような高価な元素の存在による高価格および室温近くまたは室温より高い温度、すなわち約200から約600Kで適用するには低すぎる利用温度という2つの大きな欠点を有する。
【0011】
もう1つの興味深い種類の材料は、立方NaZn13型構造に結晶化した希土類遷移金属化合物である。最近、極めて急激な磁気秩序転移により、(La, Fe, Si, Al)系が再調査された。米国特許N° 7,063,754は、式La (Fe1-xMx)13Hzの化合物を開示している。ここで、Mは、SiおよびAlからなるグループから選択される。これらの化合物は、室温領域で磁気相転移を示す磁性材料をもたらす。
【0012】
それにも関わらず、利用温度はあまりにも限定されており、多様な産業システムに適合しない。さらに、La (Fe,Si)13型の合金の転移段階において、1.5%の体積変化も観測されている(Wang et al., J. Phys. Condens Matter, 15, 5269-5278, 2003)。もし、この体積変化が度々生じるならば、材料は極めて脆くなり、壊れてさらに小さな粒状体になることもある。このことは、材料の耐食性ひいては冷却装置の寿命に明白な影響を及ぼしうる(Bruck E., J. Phys. D: Appl. Phys. 38, R381-R391, 2005)。
【0013】
この限定された利用温度を回避する唯一の方法は、異なる転移温度を有する2つの化合物を含む組成物をつくり、広範囲の利用温度を作り出すことである。
【0014】
しかしながら、この解決策は満足のいくものではない。というのは、各化合物の比率が低いため、弱い反応を有する材料が生じるからである。
【0015】
さらに、化合物の各々は、今度は転移温度に依存して作用する。それゆえ、この種の化合物の反応は一定ではない。
【0016】
低い原子モーメントにもかかわらず、金属間マンガン(Mn)を基礎にした化合物は、現在特に研究されている。なぜなら、それらはしばしば室温近くまたは室温より高い温度で整列し、比較的安価である。より顕著な反応が、FeMnP1-xAsx (WO 2003/012801, WO 2004/068512) および MnAs1-xSbx (WO 03/009314)に見られ、それらは室温付近のGd5Si2Ge2に匹敵するGMCEを示す。しかしながら、材料費の低下にもかかわらず、毒性の強い材料Asの存在により、これらの化合物の産業利用は許されていない。
【0017】
さらに、ヒステリシス損失、すなわち元の状態に完全には戻らない系、言い換えれば、状態が直接履歴に依存する系は、FOMT磁性および強磁性材料特有の現象である。
【0018】
その上、これもFOMTに特有であるが、遅い反応速度が高速周期の冷却装置内のGMCE材料の実際の効率を減少することもある(Gschneidner K. A. et al., Rep. Prog., Phys. 68, 1479, 2005; Provenzano V. et al., Nature, 429, 853, 2004)。
【0019】
要約すると、現在の磁気熱量材料の主な欠点は以下の通りである。
ヒステリシス損失および強いが急な反応を本質的に有するがゆえに限定された利用温度を有するFOMTの存在
毒性の強い材料の存在
高価な原料の存在による一般に高価な生産コスト
【0020】
したがって、この発明の課題の1つは、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、合金を形成して利用温度を著しく増大し、広い温度範囲を利用可能にし、特に室温近くでヒステリシス損失を示さない、Feによって置換された磁気化合物を提供することである。
【0021】
この発明のもう一つの課題は、2つの磁気化合物の結合により、多様な冷却系における利用を可能にする広い温度範囲を生じる磁気化合物の組成を提供することである。
【0022】
この発明のもう一つの課題は、磁気化合物の製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
それゆえ、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(I)
【化1】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0024】
ここで用いられる式(I)の化合物は、合金を形成している。
「磁気熱量物質」は、上で定義されるように、磁気熱量効果(MCE)を発揮しうる化合物である。
【0025】
この明細書の以下の記載において用いられる異なる用語、すなわち磁気冷媒(magnetic refrigerant)、冷媒材料(refrigerant material)、磁性材料(magnetic material)、磁気熱量材料(magnetocaloric material)、磁気熱量物質(magnetocaloric agent)、磁気熱量化合物(magnetocaloric compound)は、同一の意味を有し、磁気冷却に適した材料を表す。
【0026】
印加された磁場中で材料が磁化されるとき、磁場が材料の磁気秩序を変化させるため、磁気の自由度に関するエントロピー、いわゆる磁気エントロピーΔSmが変化する。断熱条件下では、ΔSmは、材料の温度変化をもたらす格子に関するエントロピーと等しいが逆の変化によって相殺されなければならない。
【0027】
この温度変化、ΔTad(すなわち、断熱温度変化)は、通常「MCE」と呼ばれ、転移温度(すなわち、キュリー温度、材料が常磁性状態から強磁性状態に変化する温度)で最大値(または最小値)に達する。
【0028】
このように、「転移温度」または相転移または磁気相転移または相変化は、Tcと呼ばれる(ここではピークもさす)温度の変化および
【0029】
【数1】

と呼ばれる最大等温磁気エントロピー変化における1つの相から他の相への熱力学系の変化である。
【0030】
この発明において、Ni3Sn2型、すなわち斜方晶系のPnmaの結晶構造を有する合金が、0.5より大きく約1までのFe含量によって置換されるとき、それらは少なくとも2つの強磁性転移(Tc1およびTc2)を示し続ける。それらの強磁性転移はそれぞれ2次のオーダーの磁気転移(SOMT)であり、Fe含量が0.5から1まで増加するとき、Tc1は約260Kから約300Kまで増加し、Tc2は約200Kから160Kまで減少する。そして、Fe含量がどのような量であっても、Ni3Sn2型構造を保ち、ヒステリシス損失を示さず、利用温度範囲の拡張が可能になる。
【0031】
Fe含量が0.5から1まで増加するとき、磁気熱量反応(-ΔSM(T))の状態は、理想的なEricssonおよびBraytonサイクル(-ΔSM(T)=一定)に必要な状態からAMR(能動的蓄冷器)サイクル(-ΔSM(T)の線形熱依存性)に必要な状態に変化し、磁気熱量反応の状態を望ましいサイクルに適用しうるようにする。
【0032】
温度範囲は、2次のオーダーの2つのピーク(Tc1およびTc2)の位置に依存し、前記2つのピーク間の距離に依存する。
磁気エントロピー変化の2つの最大値の発生は、特に150Kから300Kまでの温度範囲においてありふれた現象ではない。
【0033】
すでに前述したように、巨大磁気熱量特性は、一般に強いが急な反応を生じる1次のオーダーの磁気転移(FOMT)と関係がある。反対に、広くて弱いピークは、2次のオーダーの磁気転移(SOMT)によって生じる。
【0034】
2次のオーダーの相転移において、1つの相から他の相への変化は連続的であり、構造的変化および潜熱はない。
その上、反応速度が速く、経年劣化の問題を回避する。経年劣化の問題は、極めて脆い材料の存在を生じ、小さな粒状体に壊れさえして、耐食性ひいては系の寿命に影響を及ぼす。
【0035】
この発明のもう一つの利点は、低価格で主成分、すなわち化合物のMn, SnおよびFeの入手が容易である点である。
この発明のさらにもう一つの利点は、Mnの一部をT'に、および/またはSnの一部をXおよびX'に化学置換し、T', X, X'の各比率によってTc1およびTc2を変化し、多様な用途に適した磁気熱量化合物を生じる機会にある。
【0036】
このように、この発明は、上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関し、前記化合物は少なくとも2つの相転移を含み、各相転移は2次のオーダーであり、1つのピークを構成し、その最大値は0.5から1までのFe含量の増加に伴い増加する。
【0037】
それゆえ、式(I)の化合物は6つの元素を含む合金である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、2T(黒バツ印)、3T(白三角)、5T(黒四角)、7T(白菱形)および9T(黒丸)の場の変化について、Mn3Sn2の磁気エントロピー(y軸(mJ.cm-3.K-1))の温度(x軸、°K)に対する熱変動を示す。この図において、明細書に定義された
【数2】

【数3】

Tcold, ThotおよびMRCも示す。
【図2】図2は、Mn3-xCuxSn2(x = 0.1, 0.2および0.3)試料の結晶データを示す。
【図3】図3は、鉄(A:Mn3-xFexSn2試料;x = 0.1から1まで;黒四角:TC1;白丸:TC2;黒三角:Tt)、または銅(B:Mn3-xCuxSn2試料;x = 0.1から0.3まで;黒四角:TC1;白丸:TC2)の比率(x軸)に対する転移温度(y軸;°K)を示す。
【図4】図4は、x = 0.1(黒四角)、0.4(白三角)、0.7(黒星)、0.9(白五角形)の場の変化について、Mn3-xFexSn2の磁気エントロピー(y軸(mJ.cm-3.K-1))の温度(x軸、°K)に対する熱変動を示す。
【図5】図5は、この発明による磁気熱量材料を利用する冷却システムの実施形態を示す概念図である。
【図6】図6は、磁気冷却システム(WO2005/043052)の装置の概念図を示す。
【図7】図7は、1T(黒四角)、3T(白丸)および5T(黒三角)の場の変化について、Mn2.4Fe0.6Sn1.8Ge0.2の磁気エントロピー(y軸(mJ.cm-3.K-1))の温度(x軸、°K)に対する熱変動を示す。
【図8】図8は、1T(黒四角)、3T(白丸)および5T(黒三角)の場の変化について、Mn2.4Fe0.6Sn1.8In0.2の磁気エントロピー(y軸(mJ.cm-3.K-1))の温度(x軸、°K)に対する熱変動を示す。
【図9】図9は、1T(黒丸)、3T(白四角)および5T(黒三角)の磁場変化について、Mn2.3Fe0.7Sn1.9In0.1の磁気エントロピー(y軸(mJ.cm-3.K-1))の温度(x軸、°K)に対する熱変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
より好ましい実施形態によると、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(II)
【0040】
【化2】

(ここで、XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + y + y' ≦ 2.0である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0041】
それゆえ、式(II)の化合物は、yおよびy'の値に依存し、3,4または5つの元素を含む合金である。
【0042】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(III)
【0043】
【化3】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' < 0.5であり、
yは、0から1までの範囲に含まれ、
かつx + x' + y ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0044】
それゆえ、式(III)の化合物は、x'およびyの値に依存し、3,4または5つの元素を含む合金である。
【0045】
この発明の好ましい実施形態によると、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(IV)
【0046】
【化4】

(ここで、Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yは0から1までの範囲に含まれ、
かつx + y ≦ 2である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する、上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0047】
それゆえ、式(IV)の化合物は、xおよびyの値に依存し、3または4つの元素を含む合金である。
【0048】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(V)
【0049】
【化5】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
かつx' < 0.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する、上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0050】
それゆえ、式(V)の化合物はx'の値に依存し、3または4つの元素を含む合金である。
【0051】
もう一つのより好ましい実施形態によると、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(VI)
【0052】
【化6】

(ここで、0.5 < x ≦ 1である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する、上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0053】
それゆえ、式(VI)の化合物は3つの元素を含む合金である。
【0054】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、0より大きく約5Tまで印加される磁場に対する冷却能力qが、約50mJ/cm3から約5000mJ/cm3まで、特に、約100mJ/cm3から約4000mJ/cm3まで、とりわけ、約500mJ/cm3から約3000mJ/cm3まで、そしてとりわけ、約1000mJ/cm3から約2000mJ/cm3までの範囲に含まれる上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0055】
1つの熱力学サイクル(Gschneidner K. A.et al., Annu. Rev. Mater. Sci., 30, 387, 2000; Tishin A. M., et al., The magnetocaloric effect and its applications, Institute of physics Publishing, Bristol, 2003; Gschneidner K. A. et al., Tsokol, Rep. Prog., Phys. 68, 1479, 2005; Wood M. E. et al., Cryogenics, 25, 667, 2001)内で変化しうる磁気冷媒の冷媒能力(RC)は、3つの異なる方法で計算できる。
【0056】
1)第1の方法:T1およびT2間の-ΔSm(T)曲線下の面積の数値積分は、
【0057】
【数4】

の冷却能力を生じる(Gschneidner K. A. et al., Annu. Rev. Mater. Sci., 30, 387, 2000; Gschneidner K. A. et al., Tsokol, Rep. Prog., Phys. 68, 1479, 2005)。
【0058】
2)第2の方法:従来のキャレット(caret)状のMCEの動きに対する相対冷媒能力(RCP)は、最大値(-ΔSm)および半値全幅δTFWHMの積:
【0059】
【数5】

で与えられる。
RCPは、同じ温度間隔に対する冷却能力qより約4/3倍大きい(Gschneidner K. A.et al., Annu. Rev. Mater. Sci., 30, 387, 2000)。
【0060】
3)第3の方法:WoodおよびPotterにより以下のことが述べられている(Wood M. E. et al., Cryogenics, 25, 667, 2001)。ThotおよびTcold間の可逆サイクルに対し、冷媒能力はRC = -ΔSm ΔTcyclと定義される。ここで、-ΔSmはサイクルの高温および低温端での磁気エントロピー変化であり、これらは等しくなければならない。そして、ΔTcycl = Thot - ΔTcoldである。最大冷媒能力(MRC)は、-ΔSm ΔTcyclが最大のときに達成される。このように、材料が最も効果的となる高温および低温を定義する(図1)。
【0061】
しかしながら、T曲線に対するΔSMの幅および形状も考慮する冷媒能力(RC)は、冷媒材料の技術的な関心を評価する際により関連性のあるパラメータである。
【0062】
この基準に基づけば、FOMTおよびSOMT材料間のずれは目立たなくなる。
【0063】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、0より大きく約5Tまで印加される磁場に対する磁気エントロピー(-ΔSM)の温度変化が、約5 mJ/cm3/Kから約100 mJ/cm3/K、特に、約10 mJ/cm3/Kと約50 mJ/cm3/Kの間、とりわけ、約15 mJ/cm3/Kから約40 mJ/cm3/Kまで、そしてとりわけ、約20 mJ/cm3/Kから約30 mJ/cm3/Kまでの範囲に含まれる上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0064】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、0より大きく約5Tまで印加される磁場に対する断熱温度(ΔTad)の変化が、約0.5Kから約10K、特に、約1Kから約5Kまでの間、とりわけ、約1.5Kから約3Kまでの範囲に含まれる上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0065】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、約50Kから約550Kまで、特に約100Kから約400Kまで、とりわけ約150Kから約350Kまで、そしてとりわけ約150Kから約300Kまでの温度範囲にある2つのピークを含む上で定義された少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0066】
それゆえ、この発明の利点の1つは、2つの転移ピークの存在によって広がった温度範囲を有する化合物を提供する。
【0067】
図3は、Mn3-xFexSn2 (A)内のFe含量およびMn3-xCuxSn2 (B)内のCu含量に対する転移温度変化を示す。
【0068】
0.3より大きいとき、Cuは非磁性元素であり、対応する化合物は磁気冷却の点でもはや興味を引くものではない。
【0069】
Mn3-xFexSn2の温度範囲は、Mn3-xCuxSn2の温度範囲と比較して広がっている。
【0070】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、少なくとも2つの隣接するピーク間、特に、全ての隣接するピーク間の温度範囲が、約20Kから約150Kまでの範囲に含まれる少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0071】
表1は、Tc1, Tc2の値および様々なFe含量に対する差Tc1-Tc2を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
0.1≦ x ≦ 0.9に対するTc1の値は、0.1および0.5の間でほとんど一定であり、0.6から0.9まで増加する。一方、Tc2は減少する。このように、xの値の増加に伴ってTc1-Tc2が増加することから示されるように、温度範囲が増大する。
【0074】
Feは、TC1が増加する唯一知られたMnの置換体である。
それゆえ、好ましい実施形態によると、xは約0.6から約1までの範囲、好ましくは、約0.8から約0.9の範囲に含まれ、特に0.9である。
【0075】
もう一つの態様によると、この発明は、特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(VII)
【0076】
【化7】

(ここで、Aは、上で定義された少なくとも1つの化合物であり、
Bは、Gd, MgMn6Sn6, Mn4Ga2Sn, Gd5(Si1-zGez)4, MnFeP1-zAszからなるグループから選ばれる約300から約350Kまでの遷移のピークを有する少なくとも1つの第2の磁気熱量材料であり、
zは0から1までの範囲に含まれる)
を有する組成物に関する。
【0077】
上で定義された化合物Aの温度範囲をさらに広げるため、少なくとも1つの化合物Aおよび材料Bを混合して合成する。Bは、300 〜 350Kの温度範囲において少なくとも1つの転移ピークを示す公知の特定材料、特にGd, MgMn6Sn6, Mn4Ga2Sn, Gd5Si2Ge2, MnFePAsのいずれの材料でも可能である。
【0078】
合成において、Aは(150K 〜 300K)の低温領域で作用し、Bは(300K〜350K)の高温領域で作用する。
B材料は、FOMTまたはSOMT材料が可能である。
化合物Aの粉末および材料Bまたは各成分の多層混合物を混合して合成する。
【0079】
好ましい実施形態によると、この発明は、AおよびB間の比(w/w)は、約0.01から約99まで、特に約0.1から約10まで、そしてとりわけ約0.5から約5までの上で定義された組成物の1つに関する。
【0080】
それゆえ、それぞれの比と同様に、導入された化合物および材料に依存して、磁気エントロピーおよび温度範囲の調節が可能であり、そのようにして合成を望ましい冷却システムに適合可能にする。
【0081】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、約0から約5Tまで印加される磁場に対する冷却能力qが、約50 mJ/cm3から約5000 mJ/cm3、特に、約100 mJ/cm3から約4000 mJ/cm3まで、とりわけ、約500 mJ/cm3から約3500 mJ/cm3まで、そしてとりわけ、約1000 mJ/cm3から約3000 mJ/cm3までの範囲に含まれる上に定義された組成物の1つの使用に関する。
【0082】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、前記のピークが、約50Kから約600Kまで、特に、約100Kから約500Kまで、とりわけ約150Kから約400Kまで、そしてとりわけ約150Kから約350Kまでの温度範囲にある上で定義された組成物の1つの使用に関する。
【0083】
この発明の組成物の利点の1つは、現存する材料Bまたは上で定義された化合物A単独の場合と比較して、前記組成物の利用温度を広げることであり、その一方で、取り入れる材料Bの量が少なくなるため組成物の価格が下がることである。
【0084】
より好ましい実施形態によると、この発明は、少なくとも2つの隣接するピーク間、特に、全ての隣接するピーク間の温度範囲が約20Kから約150Kまでの範囲に含まれる上で定義された組成物のうち少なくとも1つの組成物の使用に関する。
【0085】
もう一つの態様によると、この発明は、以下の一般式(I)
【0086】
【化8】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する磁気熱量材料に関する。
【0087】
それゆえ、式(I)の化合物は、6つの元素を含む合金である。
【0088】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、以下の一般式(II)
【0089】
【化9】

(ここで、XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、かつx + y + y' ≦ 2.0である)
を有する上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0090】
それゆえ、式(II)の化合物は、yおよびy'の値に依存する5,4または3つの元素を含む合金である。
【0091】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、以下の一般式(III)
【0092】
【化10】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1、かつx' < 0.5であり、
yは、0から1までの範囲に含まれ、
かつx + x' + y ≦ 2.5である)
を有する上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0093】
それゆえ、式(III)の化合物は、yおよびx'の値に依存する5,4または3つの元素を含む合金である。
【0094】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、以下の一般式(IV)
【化11】

(ここで、Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yは0から1までの範囲に含まれ、
かつx + y ≦ 2である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0095】
それゆえ、式(IV)の化合物は、yの値に依存する4または3つの元素を含む合金である。
【0096】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、以下の一般式(V)
【0097】
【化12】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1
かつx' < 0.5である)
を有する上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0098】
それゆえ、式(V)の化合物は、x'の値に依存する4または3つの元素を含む合金である。
【0099】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、以下の一般式(VI)
【0100】
【化13】

(ここで、0.5 < x ≦ 1である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0101】
それゆえ、式(VI)の化合物は、3つの元素を含む合金である。
【0102】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、前記磁気熱量材料が少なくとも2つの相転移を含み、各相転移は2次のオーダーであり、1つのピークを構成する上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0103】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、0から約5Tまで印加される磁場に対する冷却能力qが、約50 mJ/cm3から約5000 mJ/cm3まで、特に、約100 mJ/cm3から約4000 mJ/cm3まで、とりわけ、約500 mJ/cm3から約3000 mJ/cm3まで、そしてとりわけ、約1000 mJ/cm3から約2000 mJ/cm3までの範囲に含まれる上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0104】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、0より大きく約5Tまで印加される磁場に対する磁気エントロピー(-ΔSM)の温度変化が、約5 mJ/cm3/Kから約50 mJ/cm3/Kまで、特に、約10 mJ/cm3/Kから約40 mJ/cm3/Kまでの間、とりわけ、約15 mJ/cm3/Kから約35 mJ/cm3/Kまで、そしてとりわけ、約20 mJ/cm3/Kから約30 mJ/cm3/Kまでの範囲に含まれる上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0105】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、0から約5Tまで印加される磁場に対する断熱温度ΔTad)の変化が、約0.5Kから約5Kまで、特に、約1Kから約4Kまで、そしてとりわけ、約1.5Kから約3Kまでの範囲に含まれる上で定義された磁気熱量材料の1つに関する。
【0106】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、前記2つのピークが、約50Kから約550Kまで、特に、約100Kから約400Kまで、とりわけ、約150Kから約350Kまで、そしてとりわけ、約150Kから約300Kまでの温度範囲にある前記磁気熱量材料の1つに関する。
【0107】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、少なくとも2つの隣接するピーク間、特に、全ての隣接するピーク間の温度範囲が約20Kから約150Kまでの範囲に含まれる前記磁気熱量材料の1つに関する。
【0108】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、
Mn3-xFexSn2
Mn3-xFexSn2-yGey
Mn3-xFexSn2-yIny
(ここで、0.5 < x ≦ 1、yは0から1までの範囲に含まれ、かつx+y ≦ 2である)
からなるグループから選ばれる前記磁気熱量材料の1つに関する。
【0109】
もう一つの好ましい実施形態によると、この発明は、
Mn3-xFexSn2
(ここで、0.5 < x ≦ 0.1である)
からなるグループから選ばれる前記磁気熱量材料の1つに関する。
【0110】
0.5より多いFe含量によるMnの一部の置換は、温度範囲およびエントロピー変化を調節しうる化合物を生じる(表IIおよび図4)。
【0111】
【表2】

【0112】
図4,7および8ならびに表2に示されるように、MnおよびSn副格子の化学置換は、対応する磁気熱量効果の大きさと同様に転移温度(TC1およびTC2)も変化させる。
【0113】
図4に見られるように、0.5より大きいとき、利用温度範囲は大きく広がり、Mn2.1Fe0.9Sn2に対しては約120Kに達し、Mn2.9Fe0.1Sn2 (54 K)の温度範囲の2倍よりも大きい。
【0114】
冷却能力qは、Fe置換においてはほとんど一定のままであるが、冷却能力は高温で増加し(TC1でのピーク強度は、幅が増加する間はほとんど一定のままである)、低温で減少する(TC2でのピーク強度は減少する)。
【0115】
その結果、化学置換は磁気熱量反応の温度範囲、動作温度および状態を調整する。それゆえ、採用した冷却サイクルによって必要とされる状態にこの状態を設計することが可能となる。
【0116】
もう一つの態様によると、この発明は、以下の一般式(VII)
【0117】
【化14】

(ここで、Aは、上で定義された少なくとも1つの化合物であり、
Bは、zが0から1までの範囲に含まれるものとして、Gd, MgMn6Sn6, Mn4Ga2Sn, Gd5(Si1-zGez)4, MnFeP1-zAszからなるグループから選ばれる約300から約350Kまでの転移ピークを有する少なくとも1つの第2の磁気熱量材料)
を有する磁気熱量組成物に関する。
【0118】
好ましい実施形態によると、この発明は、AおよびB間の比(w/w)が、約0.01から約99まで、特に約0.1から約10まで、そしてとりわけ約0.5から約5までの上に定義された磁気熱量組成物の使用に関する。
【0119】
好ましい実施形態によると、この発明は、
Mn3Sn2およびGd, Mn3Sn2およびMgMn6Sn6, Mn3Sn2およびMn4Ga2Sn, Mn3Sn2およびGd5(Si1-zGez)4, Mn3Sn2およびMnFeP1-zAsz,
Mn3-xFexSn2およびGd, Mn3-xFexSn2およびMgMn6Sn6, Mn3-xFexSn2およびMn4Ga2Sn, Mn3-xFexSn2およびGd5(Si1-zGez)4, Mn3-xFexSn2およびMnFeP1-zAsz
(ここで、xは上で定義されたものである)
からなるグループから選ばれる上で定義された磁気熱量組成物の使用に関する。
【0120】
この発明はまた、以下の一般式(I)
【化15】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5
yおよびy'は0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する化合物の製法であって、
約550℃から約850℃まで、特に約600℃から約800℃まで、とりわけ650℃から約750℃までの温度で適量の元素Mn, Fe, T', Sn, XおよびX'の均質化された混合物をアニールし、そのようにして得られた混合物を粒状にする第1の工程と、XおよびX'が特に純元素の上で定義されたものとして、適量の元素Mn, Fe, T', Sn, XおよびX'の混合物を300から600℃までの温度範囲で焼結することによって製造される前記の均質化された混合物を、480℃より低い温度、好ましくは約450℃から約480℃までの温度でアニールする第2の工程とからなる製法。
【0121】
元素の混合物を混ぜ合わせて均質にするため、焼結工程を実行する。アニーリングの第2工程の間、480℃より低い温度におけるこの均質化された混合物の処理は、Ni3Sn2構造型を有する特有の化合物Mn3Sn2を生じるのに不可欠である。
【0122】
好ましい実施形態によると、この発明は、元素Mn, Fe, T', Sn, X, X'の混合物を焼結することによって製造される前記均質化された混合物は、アモルファスまたは微結晶混合物を得るための第1の土台である、上で定義された製法に関する。
【0123】
アモルファスまたは微結晶混合物状の均質化された粉末を得るために製粉する。
【0124】
好ましい実施形態によると、この発明は、式(I)
(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, Cの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
の化合物を得るための上で定義された製法であって、
a)アモルファスまたは微小結晶混合物を得るため、適量の元素Mn, Fe, T', Sn, XおよびX'の混合物を任意に粒状にし、
b)均質化された混合物を得るため、300から600℃までの温度で前記アモルファスまたは微小結晶混合物を焼結し、
c)粉砕され密に詰まった混合物を得るため、前記の均質化された混合物を粉砕して密に詰め、
d)前記粉砕され密に詰まった混合物を第1の工程で650℃から750℃までの温度でアニールし、そのようにして得られた混合物を粒状にし、第2の工程で480℃より低い温度、好ましくは約450℃から約480℃までの温度でアニールする製法に関する。
【0125】
上で定義された化合物は、室温近くの磁気冷却装置(図5および図6)、冷凍庫、調整空気、ガス液化、電子部品の冷却、ヒートポンプ(図5)のようなシステムにおける磁気冷却用に用いることができる。
【実施例】
【0126】
実施例
1)様々な化合物の合成のための基本手順
一般組成Mn3-(x+x')T'x'Sn2-(y+y')XyX'yを有する合金および化合物を、純粋に市販の元素を適切な重量比で混合することによって製造する。
【0127】
結果として生じる混合物は、例えば鋼製金型を用いて固め、錠剤にする。熱処理中の酸化を避けるため、その後ペレットを不活性雰囲気(例えば、精製アルゴン300mg Hg)中で密封された石英管に封入する。
【0128】
焼結工程(すなわち、第1の熱処理)を、2〜3日の間、450〜500℃で行う。この温度で主要な成分の1つであるSnは液体状態にある。その後、石英アンプルを水中で急冷し、ペレットを手でしっかりと挽く。
【0129】
粉砕された混合物を、その後再び密に圧縮し、不活性雰囲気中で密封された石英管に封入する。続いてペレットを1週間加熱し、氷/水で急冷する。合成手順のこの部分を700℃で実施する。
【0130】
この週のアニールの後、ペレットを再びしっかりと挽いて密に圧縮し、保護雰囲気中で石英アンプル中に取り入れる。
【0131】
Ni3Sn2型の構造を確実に安定化し、より高い温度で形成される欠損のあるNi2In型でない組成物ならどのようなものでも、少なくとも1週間480℃より低い温度(好ましくは、450℃および480℃の間)で最終熱処理を行わなくてはならない。
【0132】
実際には、望ましい独特な2つのピークの磁気熱量効果を生じるのは、Ni3Sn2型である。これに対し、欠損のあるNi2In型で結晶化する化合物は、単一のピークしか示さない。
【0133】
2)化合物の特性
様々な合成化合物の幾つかは、X線回折パターンによって特徴付けられている。表3は、化合物の結晶学的データを示す。
【0134】
【表3】

【0135】
3)組成物(A, B)の合成
(A, B)ハイブリッド材料を製造するため、AおよびB化合物の粉末を手(またはボールミル粉砕)で混合でき、また必要な順(すなわち、高温端近くの高い規則化温度を有する化合物、低温端近くの低い規則化温度を有する化合物)で多層状に配列できる。
【0136】
4)磁気冷却およびヒートポンプの機能の概要
図5は、この発明による磁気熱量材料を用いた磁気冷却の動作原理を示す。それは、この発明による磁気熱量材料21(MCE材料)が動作に適した磁気冷却システムの一例に関する。この磁気冷却システムは、2つの位置間の磁気熱量材料21の直線変位によって特徴付けられる。第1の位置において、前記磁気熱量材料21を取り囲む永久磁石22により磁気熱量材料21を磁化する。
一方、図5の破線で示されるように、第2の位置において、磁気熱量材料21が永久磁石22から離れるとき消磁される。磁気熱量材料21の直線変位を与えるには、図示しない従来の手段を利用する。
もう一つの変形例は、一定の磁気熱量材料21を有する永久磁石22の変位であってもよい。熱伝導流体の流れ23は、ポンプ26のような従来の手段を用いて磁気熱量材料21、高温熱交換器24および低温熱交換器25を通過するよう制御する。図5に示されるように、このシステムの動作を周期的に行って磁気冷却を実現してもよい。周期の始めにおいて、システムは、室温または室温より低い温度を有する。その後、永久磁石22(ネオダイン磁石、0.1〜10Hz)によって磁場を磁気熱量材料21の内部に印加し、磁気モーメントを整列させて温度を上昇する。
【0137】
その後、高温熱交換器24と温度を交換し、磁気熱量材料21を初期温度に戻す。
印加場の切り替えにより磁気熱量材料21を消磁し、材料のモーメントを整列させて室温より低く温度を低下させる。
その後、低温熱交換器25(冷却装置)と温度を交換する。
ヒートポンプの動作原理は、高温熱源と低温熱源とを入れ替える以外は、上と同じである。
【0138】
5)磁気冷却システムの装置
図6は、この発明の磁気熱量化合物または組成物を用いた磁気冷却システムの一例を示す。
【0139】
このシステム1は、円を形成する12個の熱部11を備え、この発明の磁気熱量化合物または組成物(500g〜1kg)12を備える熱流束発生器10からなる。各熱部11は、熱伝導部13に結合しており、可動式支持部104に固定された磁気素子102,103によって磁場が印加されるかどうかに依存して、12から11へ高(または低)熱を伝える。熱部11を、プレート18上に固定し、シール19によって分離する。プレートおよびシールはいずれも、熱伝導流体を交換するための孔を有していてもよい。12内に取り入れるこの発明の磁気熱量化合物または組成物は、粉末、多層粉末、錠剤、ブロックの形状にもなりうる。
【符号の説明】
【0140】
1・・・磁気冷却システム
10・・・熱流束発生器
11・・・熱部
12・・・磁気熱量化合物または組成物
13・・・熱伝導部
18・・・プレート
19・・・シール
21・・・磁気熱量材料
22・・・永久磁石
23・・・熱伝導流体の流れ
24・・・高温熱交換器
25・・・低温熱交換器
26・・・ポンプ
102,103・・・磁気素子
104・・・可動式支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(I)
【化1】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項2】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(II)
【化2】

(ここで、XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + y + y' ≦ 2.0である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項3】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(III)
【化3】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' < 0.5であり、
yは、0から1までの範囲に含まれ、
かつx + x' + y ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項4】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(IV)
【化4】

(ここで、Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yは、0から1までの範囲に含まれ、
かつx + y ≦ 2である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する、請求項1に記載の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項5】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(V)
【化5】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
かつx' < 0.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する、請求項1に記載の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項6】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(VI)
【化6】

(ここで、0.5 < x ≦ 1である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する、請求項1に記載の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項7】
0より大きく約5Tまで印加される磁場に対する冷却能力qが、約50mJ/cm3から約5000mJ/cm3まで、特に、約100mJ/cm3から約4000mJ/cm3まで、とりわけ、約500mJ/cm3から約3000mJ/cm3まで、そしてとりわけ、約1000mJ/cm3から約2000mJ/cm3までの範囲に含まれる請求項1ないし3のいずれか1つに記載の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項8】
約50Kから約550Kまで、特に約100Kから約400Kまで、とりわけ約150Kから約350Kまで、そしてとりわけ約150Kから約300Kまでの温度範囲にある2つのピークを含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項9】
少なくとも2つの隣接するピーク間、特に、全ての隣接するピーク間の温度範囲が約20Kから約150Kまでの範囲に含まれる請求項1ないし5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項10】
特に磁気冷却用の磁気熱量物質として、以下の一般式(VII)
【化7】

(ここで、Aは、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の少なくとも1つの化合物であり、
Bは、Gd, MgMn6Sn6, Mn4Ga2Sn, Gd5(Si1-zGez)4, MnFeP1-zAszからなるグループから選ばれる約300から約350Kまでの遷移のピークを有する少なくとも1つの第2の磁気熱量材料であり、
zは0から1までの範囲に含まれる)
を有する組成物。
【請求項11】
AおよびB間の比(w/w)は、約0.01から約99まで、特に約0.1から約10まで、そしてとりわけ約0.5から約5までの、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
約0から約5Tまで印加される磁場に対する冷却能力qが、約50 mJ/cm3から約5000 mJ/cm3、特に、約100 mJ/cm3から約4000 mJ/cm3まで、とりわけ、約500 mJ/cm3から約3500 mJ/cm3まで、そしてとりわけ、約1000 mJ/cm3から約3000 mJ/cm3までの範囲に含まれる請求項10または11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記のピークが、約50Kから約600Kまで、特に、約100Kから約500Kまで、とりわけ約150Kから約400Kまで、そしてとりわけ約150Kから約350Kまでの温度範囲にある、請求項10ないし12のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【請求項14】
少なくとも2つの隣接するピーク間、特に、全ての隣接するピーク間の温度範囲が約20Kから約150Kまでの範囲に含まれる、請求項10ないし13のいずれか1つに記載の上で定義された少なくとも1つの組成物の使用。
【請求項15】
以下の一般式(I)
【化8】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する磁気熱量材料。
【請求項16】
以下の一般式(II)
【化9】

(ここで、XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yおよびy'は、0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、かつx + y + y' ≦ 2.0である)
を有する請求項15に記載の磁気熱量材料。
【請求項17】
以下の一般式(III)
【化10】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1、かつx' < 0.5であり、
yは、0から1までの範囲に含まれ、
かつx + x' + y ≦ 2.5である)
を有する請求項15に記載の磁気熱量材料。
【請求項18】
以下の一般式(IV)
【化11】

(ここで、Xは、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
yは0から1までの範囲に含まれ、
かつx + y ≦ 2である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する請求項15に記載の磁気熱量材料。
【請求項19】
以下の一般式(V)
【化12】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1であり、
かつx' < 0.5である)
を有する請求項15に記載の磁気熱量材料。
【請求項20】
以下の一般式(VI)
【化13】

(ここで、0.5 < x ≦ 1である)
を有する請求項15に記載の磁気熱量材料。
【請求項21】
前記磁気熱量材料が少なくとも2つの相転移を含み、各相転移は2次のオーダーであり、1つのピークを構成する、請求項15ないし20のいずれか1つに記載の磁気熱量材料。
【請求項22】
0から約5Tまで印加される磁場に対する冷却能力qが、約50 mJ/cm3から約5000 mJ/cm3まで、特に、約100 mJ/cm3から約4000 mJ/cm3まで、とりわけ、約500 mJ/cm3から約3000 mJ/cm3まで、そしてとりわけ、約1000 mJ/cm3から約2000 mJ/cm3までの範囲に含まれる、請求項15ないし21のいずれか1つに記載の磁気熱量材料。
【請求項23】
前記2つのピークが、約50Kから約550Kまで、特に、約100Kから約400Kまで、とりわけ、約150Kから約350Kまで、そしてとりわけ、約150Kから約300Kまでの温度範囲にある、請求項15ないし22のいずれか1つに記載の磁気熱量材料。
【請求項24】
少なくとも2つの隣接するピーク間、特に、全ての隣接するピーク間の温度範囲が約20Kから約150Kまでの範囲に含まれる、請求項15ないし23のいずれか1つに記載の磁気熱量材料。
【請求項25】
Mn3-xFexSn2
Mn3-xFexSn2-yGey
Mn3-xFexSn2-yIny
(ここで、0.5 < x ≦ 1、yは0から1までの範囲に含まれ、かつx+y ≦ 2である)
からなるグループから選ばれる、請求項15ないし24のいずれか1つに記載の磁気熱量材料。
【請求項26】
Mn3-xFexSn2
(ここで、0.5 < x ≦ 0.1である)
からなるグループから選ばれる、請求項15ないし25のいずれか1つに記載の磁気熱量材料。
【請求項27】
以下の一般式(VII)
【化14】

(ここで、Aは、請求項1ないし9のいずれか1つに定義された少なくとも1つの化合物であり、
Bは、zが0から1までの範囲に含まれるものとして、Gd, MgMn6Sn6, Mn4Ga2Sn, Gd5(Si1-zGez)4, MnFeP1-zAszからなるグループから選ばれる約300から約350Kまでの転移ピークを有する少なくとも1つの第2の磁気熱量材料)
を有する磁気熱量組成物。
【請求項28】
AおよびB間の比(w/w)が、約0.01から約99まで、特に約0.1から約10まで、そしてとりわけ約0.5から約5までの、請求項27に記載の磁気熱量組成物。
【請求項29】
Mn3-xFexSn2およびGd, Mn3-xFexSn2およびMgMn6Sn6, Mn3-xFexSn2およびMn4Ga2Sn, Mn3-xFexSn2およびGd5(Si1-zGez)4, Mn3-xFexSn2およびMnFeP1-zAsz
(ここで、xは、請求項1から9、zは、請求項10に定義されたものである)
からなるグループから選ばれる、請求項27または28に記載の磁気熱量組成物。
【請求項30】
以下の一般式(I)
【化15】

(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, C, Siの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5であり、
yおよびy'は0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
と、Ni3Sn2型の結晶構造とを有する化合物の製法であって、
約550℃から約850℃まで、特に約600℃から約800℃まで、とりわけ650℃から約750℃までの温度で適量の元素Mn, Fe, T', Sn, XおよびX'の均質化された混合物をアニールし、そのようにして得られた混合物を粒状にする第1の工程と、XおよびX'が、特に純元素の上で定義されたものとして、適量の元素Mn, Fe, T', Sn, XおよびX'の混合物を300から600℃までの温度範囲で焼結することによって製造される前記の均質化された混合物を、480℃より低い温度、好ましくは約450℃から約480℃までの温度でアニールする第2の工程とからなる製法。
【請求項31】
元素Mn, Fe, T', Sn, X, X'の混合物を焼結することによって製造される前記均質化された混合物は、アモルファスまたは微結晶混合物を得るための第1の土台である、請求項30に記載の製法。
【請求項32】
式(I)
(ここで、T'は、Ti, V, Cr, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Zr, Hf, Nb, Mo、またはLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Sc, Y, Luに属するグループから選択される希土類元素の中から選ばれ、
XおよびX'は、Ga, Ge, Sb, In, Al, Cd, As, P, Cの中から選ばれ、
0.5 < x ≦ 1かつx' ≦ 0.5であり、
yおよびy'は0から0.5までの範囲に含まれ、
y + y' ≦ 1、
かつx + x' + y + y' ≦ 2.5である)
の化合物を得るための請求項30または31に記載の製法であって
a)アモルファスまたは微小結晶混合物を得るため、適量の元素Mn, Fe, T', Sn, XおよびX'の混合物を任意に粒状にし、
b)均質化された混合物を得るため、300から600℃までの温度で前記アモルファスまたは微小結晶混合物を焼結し、
c)粉砕され密に詰まった混合物を得るため、前記の均質化された混合物を粉砕して密に詰め、
d)前記粉砕され密に詰まった混合物を第1の工程で650℃から750℃までの温度でアニールし、そのようにして得られた混合物を粒状にし、第2の工程で480℃より低い温度、好ましくは約450℃から約480℃までの温度でアニールする製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−520030(P2011−520030A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502354(P2011−502354)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053671
【国際公開番号】WO2009/121811
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509296214)ユニベルシテ アンリ ポアンカレ ナンシー 1 (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE HENRI POINCARE NANCY 1
【住所又は居所原語表記】24−30, rue du Lionnois, BP 60120, F−54003 Nancy Cedex, France
【Fターム(参考)】