説明

新鮮なコンクリートまたはコーティング組成物を修飾する方法

【課題】少なくても1種の混和材を、接着剤、コーティング、塗料および他のマトリックス組成物、例えばセメント、コンクリート、メーソンリー、モルタル、防火物、吹付けコンクリートに導入する新規な方法を提供する。
【解決手段】混和材および添加剤を接着剤、コーティング、塗料および他のマトリックス組成物、例えばセメント、コンクリート、メーソンリー、モルタル、防火物、吹付けコンクリートなどに送り込むのに有用な実質的に水和したセメント系粒子が提供される。好適な態様では、少なくとも1種の混和材と水と水和性セメント系結合剤を混合することで実質的に水和して硬化した塊を生じさせ、そしてその硬化した塊を粉砕して得られた粒子を新鮮なコンクリートに導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混和材を実質的に水和したセメント系粒子の形態で接着剤、コーティング、防火物(fireproofing)および可鋳性マトリックスコーティング(castable matrix coating)組成物などに導入して、それらを修飾する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「混和材」は、コンクリートまたはモルタルを製造する時に用いられる水硬性セメント、水および骨材以外の材料を記述する技術用語であり、これはそのバッチ(batch)に混合する前または混合中に添加される。
【0003】
混和材は、コンクリートまたはモルタルの特性を修飾する目的で用いられる。混和材を用いる理由には、(1)結果として生じる硬化したコンクリートが特定の物性を達成するようにすること、(2)不利な気候または交通条件の間に混合、輸送、設置および硬化段階を連続的に行うことで生じさせるコンクリートの品質を向上させること、(3)コンクリート作成操作中の個々の問題を回避すること、そして(4)建設または労力の費用を低くすることが含まれる。
【0004】
そのような混和材が水溶性の固体もしくは粉末の形態で供給された場合には、それを使用地点でコンクリートスラリーまたはプレスラリー水(pre−slurry water)の中に混合する。混和材が使用の準備が出来ている液体として供給された場合には、それを典型的にはばら荷(bulk)の状態で用いて、混合装置(mix plant)で既に混合されているトラック(ready−mix trucks)の中に直接バッチ毎に(batch−by−batch)調合する。
【0005】
混和材の効果的な使用は、それらを調製して計り分ける時の正確さに依存する。計り分ける過程では、材料を混合装置に導入する前または導入中に、コンクリートまたはモルタルの各バッチ毎にそれらの重量または体積を注意深く測定する必要がある。使用する混和材の量の測定が正確でないと、計り分けるコンクリートまたはモルタルの性能または物性が大きな影響を受ける可能性があり、その結果として、まず第一に混和材を導入する目的が妨害される可能性がある。そのバッチに添加すべき混和材の量を正確に測定する必要性は特に必要な量が比較的少量の場合に深刻である。
【0006】
自由流れする流体、半流体および固体状の混和材を取り扱い、測定しそして調合する時に伴う困難さを克服しようとする試みが成されてきた。水溶性容器が特許文献1に開示されており、その容器を湿式混合装置(wet mixer)の中で溶解させた時に固体または粉末状の混和材が放出される。他方、湿った状態のコンクリート混合物の粉砕の影響下で崩壊し、それによって、混和材をコンクリート全体に渡って放出する水不溶性包装材が特許文献2に開示された。流体もしくは半流体の混和材をコンクリート混合物に導入するに適した崩壊性ゼラチンもしくは蝋製カプセルが特許文献3に開示された。
【0007】
また、粉末または圧縮固化乾燥形態の特定の混和材を調合する試みも成された。ナフタレンスルホン酸誘導体−ホルムアルデヒド縮合物、NH基を少なくとも2つ有するアミノ−s−トリアジンが基になっていて亜硫酸塩もしくはスルホン酸により変性された樹脂、亜硫酸塩もしくはスルホン酸による修飾を受けたメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物、スチレンとアクリロニトリルが基になった共重合体、リグニンスルホネートまたはフェノール−スルホン酸−ホルムアルデヒド重縮合生成物で構成させた固体ペレット状の添加
剤が特許文献4に開示された。
【0008】
同様な概念が特許文献5に開示されており、そこでは、粉末またはフレーク状のセメント混和材を特定量で圧縮することで、セメント系混合物、例えば湿った状態のコンクリートなどの中で溶解または壊れるように設計された圧縮固化単位(compacted unit)を生じさせている。その圧縮固化単位は、取り扱いおよび貯蔵中には構造的一体性を維持するに充分な強度を有するが、湿った状態のコンクリート混合物の中で撹拌された時に溶解するか或は脆くなることを意図したものである。
【0009】
セメント粒子を被覆する方法が特許文献6に開示されており、その方法は、乾燥した粉末状態のセメント系粒子を空気で回転させそしてその渦巻き回転している粒子を水[これに場合により混和材、例えば減水剤(water reducing agent)などを入れておいてもよい]と一緒に噴霧することを伴う。
【0010】
別の被覆方法が特許文献7に開示された。疎水化用添加剤を担体粒子、例えば澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セメント、砂、シリカ、フライアッシュ(fly ash)、アルミノケイ酸塩、粘土材料、石灰、炭酸カルシウム、ポリスチレン球およびポリアクリレート球などに被覆することが行われた。例えば、流動床を用いて有機ポリシロキサン材料と結合剤材料(binder material)(例えばポリビニルアルコール)を担体粒子の外側表面に噴霧することで、溶媒の冷却または蒸発を通して、前記有機ポリシロキサンと結合剤を前記担体粒子の表面の上で固化させることが特許文献7に記述された。
【0011】
しかしながら、本発明者らは、混和材の乾式圧縮固化(dry−compacting)そして混和材による担体粒子の被覆を伴う方法は複雑で骨が折れると考えている。コンクリートおよびモルタル用の混和材は液体として製造されることから典型的に液状形態で供給される。それらを乾燥させるか、それらを圧縮固化させるか或は流動床コーティング蒸発方法(fluidized bed coating evaporative methods)でそれらをペレットまたは顆粒にするには費用と時間がかなり消費されるであろう。更により簡単な形態の被覆、例えばバーミキュライトおよびゼオライト(これらは高い表面積を有する)などの如き担体粒子材料を用いた被覆は高価であり、かつコンクリート、モルタルまたはグラウト(grout)組成物の中に望まれない材料が入り込む可能性がある。
【0012】
従来技術の欠点を鑑み、求められているのは、固体状混和材系(solid admixture system)の新規な製造方法、新規な混和材、そして水和性(hydratable)セメント系組成物、例えばコンクリート、モルタル、メーソンリー(masonry)、グラウトおよび他のマトリックス(matrix)組成物などに修飾を受けさせる新規な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】Smith他、米国特許第4,961,790号
【特許文献2】Valle他、米国特許第5,203,629号
【特許文献3】DeMars他、米国特許第5,320,851号
【特許文献4】Aignesberger他、米国特許第4,284,433号
【特許文献5】Bury他、米国特許第5,728,209号
【特許文献6】Nomachi他、米国特許第5,236,501号
【特許文献7】Butler他、米国特許第5,766,323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、従来技術の方法、特に担体粒子を混和材1種または2種以上で被覆する方法とは対照的に、少なくとも1種の混和材をマトリックスおよびコーティング組成物、例えば可鋳性セメント系組成物[例えばコンクリート、モルタル、防火物、吹付けコンクリート(shotcrete)]およびコーティング(例えば塗料、下塗り剤)および他の組成物[例えば接着剤、マスティクス(mastics)]などに導入する新規な方法を考案した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より重要なことに、本発明は、実質的に水和した少なくとも1種のセメント系結合剤から生じさせて平均粒子直径が5から250ミクロメートル(および6センチメートル以上に及ぶ)になるように粉砕しておいた高い表面積を有する粒子に関する。混和材をセメント系結合剤と混合した後、それを硬化させ、粉砕して粒子を生じさせることができる。混和材1種または2種以上および/または添加剤を前記粒子に混合する代わりまたはそれに加えて、粉砕しておいた粒子の表面を混和材および/または添加剤で相対的に高い添加率で被覆することも可能である。従って、本発明の典型的な方法は、水和性セメント系結合剤と水を混合して水和性セメント系スラリー(hydratable cementitious slurry)を得、前記スラリーを硬化させて実質的に水和した塊を生じさせ、そして前記硬化させた塊を粉砕して平均粒子直径が5から250ミクロメートルの多数の粒子を生じさせることを含んで成る。セメント添加剤(cement addtives)をクリンカー粉砕工程(clinker intergrinding processes)に送り込む目的の場合、前記粒子は6センチメートルの如く大きくてもよい。典型的な水和性セメント系結合剤にはポートランドセメント、石膏、プラスター(plaster)[場合により1種以上のポゾラン(pozzolans)と一緒であってもよい]が含まれる。そのような結合剤を水と混合してペースト(またはスラリー)を生じさせた後、それを実質的に水和させることで固化した塊を生じさせ、それを粉砕して粒子にする。
【0016】
本発明の好適な方法では、少なくとも1種の混和材を前記結合剤と混合した後、それを硬化させて塊にし、粉砕して粒子にする。そのような1種以上の混和材、結合剤または両方に混合用水(mix water)を一度に直接添加してもよいか、或は混和材1種以上を入れておいた水性分散液、乳液または溶液の中に混合用水を添加してもよい。例えば、腐食抑制剤である混和材、例えば亜硝酸カルシウムの分散液などをポートランドセメントと混合し、硬化させて塊にした後、粉砕して粒子にしてもよい。
【0017】
そのような混和材を混合する方法の代わりまたはそれに加えて、前記粒子を1種以上の混和材で被覆してもよい。前記粒子は高充填表面(high loading surface)を与える。本発明のさらなる態様では、前記粒子に1種以上の混和材(例えば亜硝酸カルシウム)を含有させておき、それを他の1種以上の混和材[例えばポリオキシアルキレン系減水剤(またはいわゆる超可塑剤)]、ポリオキシアルキレン系収縮軽減用混和材(shirinkage reduction admixtures)または他の混和材]で被覆してもよい。これは、容易には相溶しない(他の様式で同じ溶液の中で用いると)混和材または作用剤を同時に用いる手段を提供するものである。
【0018】
本発明の粉砕しておいた実質的に水和したセメント系粒子(cementitious
particulates)の表面を顕微鏡下で見ると、高度に個々別々の粒子状(glanular)であり、それでも、顕微的に現実に粗い表面を有する粒子(granulose)である。これらの粒子は「個々別々の粒子」であるばかりでなく顕微的に「粗い表面の粒子」である、と言うのは、これらは小粒表面質感(small granul
ate surface textures)、即ち個々別々の粒状の粒子(granule particulates)の上に小さい粒を有する。
【0019】
従って、本発明の粒子は、化学添加剤、例えば混和材などを可鋳性マトリックス組成物(例えばコンクリート、モルタル、メーソンリー)、噴霧可能マトリックス組成物(例えば吹付けコンクリートまたは噴霧可能防火物、例えば石膏が基になった防火物)、コーティング組成物(例えばラテックスおよび非水性塗料、下塗り剤)、ならびに接着剤組成物などに送り込むに適した新規な優れた担体粒子系(carrier particle system)を与えるものである。本発明の粒子を用いて混和材、例えば亜硝酸カルシウムなどをコンクリートに混合すると、驚くべきことに、その亜硝酸カルシウムをコンクリートに導入する時にそれが最初は水和したセメントの中に埋め込まれた状態であっても腐食抑制を与える能力を保持していることを見いだした。別の例として、本発明の粒子を用いて混和材、例えば亜硝酸カルシウムなどを塗料またはコーティング組成物、例えば鋼リバー(rebar)用のエポキシコーティングなどに混合することができる。
【0020】
本発明者らは、本発明の方法を用いると時間を消費する労力、エネルギー費用および工程の複雑さが回避される点ばかりでなくまた混和材1種または2種以上を担体材料1単位当たり高濃度で充填する時の便利さおよび均一に分ける実行(uniform dosing practice)を手に入れる時の便利さの点で有意な利点を得ることができると考えている。本発明の方法を用いて水和性セメント系結合剤を混和材1種または2種以上と混合して水和させる時にセメントの重量を基準にして混和材1種または2種以上が少なくとも10重量%、より好適には少なくとも12重量%から90重量%、より好適には15−60重量%であると言った高い混和材対セメント比を実現することができると考えている。
【0021】
また、セメント系−混和材粒子(cementitious−admixtures particulate)を製造する時にセメントを用いた場合、最終コンクリート、モルタル、メーソンリー、防火物または吹付けコンクリート組成物に入れる水/セメント比を通常の液状混和材を用いた時に比べて低くすることが可能になる。その上、本発明者らは、水和したセメントを用いると時々起こる混和材とセメントの非相溶性の問題が回避されることで最終組成物に有害でなくなるであろうとも考えている。
【0022】
本発明は、また、上述した粒子を修飾を受けさせるべきマトリックス組成物、例えば可鋳性セメント系組成物[例えばレディーミックス(ready−mix)コンクリート、プレキャスト(pre−cast)コンクリート、モルタル、グラウト、メーソンリーコンクリート、吹付けコンクリート、石膏、プラスター]、ならびにラテックスおよび非水性重合体[例えばアクリル樹脂(acrylic)、アルキド、エポキシ、ポリエステル、ウレタン]などに導入することで前記マトリックスもしくはコーティング組成物に修飾を受けさせる方法も提供する。
【0023】
本発明のさらなる利点および特徴を本明細書の以下に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、模擬流動床手順を用いて混和材を噴霧で被覆したセメント粒子(従来技術)の顕微鏡写真(2500x)である。
【図2】図2は、模擬流動床手順を用いて混和材を噴霧で被覆したセメント粒子(従来技術)の顕微鏡写真(5000x)である。
【図3】図3は、微細な粗い粒子表面質感を有する本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子の顕微鏡写真(2500x)である。
【図4】図4は、微細な粗い粒子表面質感を有する本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子の顕微鏡写真(5000x)である。
【図5】図5は、液状の収縮軽減用混和材(SRA)を添加しておいたセメント混合物サンプルおよび本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子(同じSRAを包含)を添加しておいたセメント混合物サンプルが示した収縮性能のグラフ図である。
【図6】図6は、液状の硬化促進剤である混和材を添加しておいたセメント混合物サンプルおよび本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子(同じ硬化促進剤を包含)を添加しておいたセメント混合物サンプルが示した硬化時間性能のグラフ図である。
【図7】図7は、液状の硬化促進剤である混和材を添加しておいたセメント混合物サンプルおよび本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子(同じ硬化促進剤を包含)を添加しておいたセメント混合物サンプルが示した圧縮強度のグラフ図である。
【図8】図8は、液状の腐食抑制剤である混和材を添加しておいたモルタル混合物サンプルおよび本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子(同じ液状の腐食抑制剤を包含)を添加しておいたいろいろなモルタル混合物サンプルが示した強度発生のグラフ図である。
【図9】図9に、構造用鋼の腐食性能を比較する2つの図を含め、左側の図はエポキシで被覆しておいた鋼(対照)を示し、そして右側の図は、セメントと亜硝酸カルシウム(CaNi)で構成させた本発明の粒子を含有させておいたエポキシで被覆しておいた鋼を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で用いる如き用語「セメント」は、ポートランドセメントを意味しかつそれを包含し、これは、建設業界で用いられるように、水硬性ケイ酸カルシウム[これらは全部が通常は1種以上の形態の硫酸カルシウムをASTMタイプI、II、III、IVまたはVと一緒に粉砕された添加(interground addition with ASTM types I,II,III,IV or V)として含有する]で構成されているクリンカーを微粉砕することで作られた水和性セメントを意味する。
【0026】
「セメント系」材料は、水の存在下で硬化して固まる点で単独で水硬性接合特性(hydraulic cementing properties)を有する材料である。セメント系材料には、粉砕された粒状の高炉スラグ(ある種の空気冷却されたスラグも同様にセメント系であると見なすことができるが)および天然のセメント(例えば通常のポートランドセメント)が含まれる。「セメント系」材料にはまた石膏(例えば硫酸カルシウム水化物)、アルミナセメント(aluminous cement)、セラミックセメント、油井掘搾用セメント(oil well drilling cement)なども含まれ得る。
【0027】
本発明の混ざり合っていて水和した(intermiexed−hydrated)セメント系−混和材粒子の製造で用いるに有用なセメントには、ポートランドセメントに加えて、更に、ポゾラン[これはセメント系価(cementitious value)をほとんどが或は全く持たないが微細形態において水の存在下でポートランドセメントの水和によって放出される水酸化カルシウムと化学的に反応してセメント系特性を示す材料を形成するシリカ質またはアルミノシリカ質(aluminosiliceous)材料である]も含まれ得る。ケイソウ土、石灰石、粘土、頁岩、フライアッシュ、シリカフューム(silica fume)および高炉スラグが公知ポゾランのいくつかである。特定の粉砕された粒状の高炉スラグおよび高カルシウムフライアッシュはポゾラン特性とセメント系特性の両方を有する。
【0028】
本発明の別の典型的な「水和性セメント系結合剤」は、例えば下記のようにポートランドセメントを全く必要としない可能性がある:シリカフュームが5−20重量%でフライアッシュが10−60重量%でスラグが10−75重量%。
【0029】
別の例として、本発明の粒子、例えば粉砕された実質的に水和したポートランドセメントおよび/または石膏粒子などを水含有材料の代替品として噴霧で塗布される防火物(spray−applied fireproofing)に混合することも可能である[例えば、噴霧で塗布される防火物でボーキサイトを用いることを開示しているBerneburg他の米国特許第5,556,576号(引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照]。
【0030】
この上に要約したように、本発明の典型的な方法は、水和性セメント系結合剤と水を混合し、前記結合剤を実質的に水和させて塊を生じさせそしてその硬化させた塊を微粉砕して多数の粒子を生じさせることを伴う。これらの粒子の平均直径サイズの範囲は最終使用に応じて多様であり得る。例えば、本発明者らは、混和材をマトリックス材料、例えばコンクリートなどに混合する用途に好適なサイズ範囲は約5−250マイクロメートルであると考えている。混和材、例えば亜硝酸カルシウムなどを塗料またはコーティング組成物(例えばエポキシ塗料)などに混合する場合に好適なサイズ範囲は約5から20マイクロメートルである。クリンカー粉砕工程中にセメント添加剤をボールミル(ball mills)に入れる場合の好適なサイズ範囲は約5マイクロメートルから6センチメートル以上に及ぶ。そのような使用もまた本発明の典型的な態様である。
【0031】
用語「スラリー」を本明細書で用いる場合、これは「ペースト」と同義であるか或は交換可能である、と言うのは、ここで重要なことは、単に、そのスラリー(ペースト)が硬化して塊になった後にそれを微粉砕してより小さな粒子にする、例えばプレスまたはローラー(例えば鋼製)間で硬化した塊を機械的に破砕することなどで微粉砕して小さな粒子にすることができるように、セメント系結合剤粒子をこの結合剤の水和を開始させるに充分な量の水と実質的に混合することを示す点にあるからである。
【0032】
さらなる態様では、水和性セメント系結合剤を1種以上の混和材と一緒にすることに加えて個別の混合用水を添加してもよい。別法として、混和材1種または2種以上を混合用水が既に入っている水性分散液もしくは乳液の形態で添加することも可能である。この混和材1種または2種以上をまた水性セメント系スラリー、例えばモルタル(微細骨材、例えば砂などが入っている)またはコンクリート(更に粗骨材、例えば破砕された砂利または石も入っている)などの中に組み込んでもよいが、これは輸送費用を増加させる可能性があることからあまり望ましくない。
【0033】
用語「混和材」は、この上で「背景技術」の中で考察したように、モルタルまたはコンクリートの材料として用いられるセメント、水および骨材以外の材料を指し、これは、混合直前または混合中のバッチに添加される。ある種の混和材は新鮮なコンクリート、モルタルおよびグラウトの流動特性を修飾する目的で用いられる一方、他の混和材は硬化したコンクリート、モルタルおよびグラウトを修飾する目的で用いられる。本発明で用いるいろいろな混和材は、下記の目的でコンクリート、モルタルまたはグラウトに入れて用いられ得る材料である:(1)水含有量を多くすることなく作業可能にするか或は作業性を同じにしながら水含有量を下げる目的、(2)初期の硬化時間を遅らせるか或は速める目的、(3)完成した材料の沈下を遅らせるか或は防止するか或はそれを若干膨張させる目的、(4)染み出し率および/または容量を変える目的、(5)成分である材料が分離する度合を低くする目的、(6)浸透およびポンプ輸送性(pumpability)を向上させる目的、(7)スランプ損失の割合(rate of slump loss)を低くする目的、(8)初期硬化中の熱発生を低下させる目的、(9)初期段階の強度発生速
度を速める目的、(10)完成材料の強度(圧縮、引張りまたは曲げ)を高める目的、(11)苛酷な大気条件にさらされた時の耐久性または耐性を向上させる目的、(12)材料の中で起こる水の毛細管流れを低下させる目的、(13)材料が液体の中に浸透する度合を低くする目的、(14)アルカリが特定の骨材成分と反応することで引き起こされる膨張を制御する目的、(15)気泡コンクリートを生じさせる目的、(16)コンクリートと補強構成要素である鋼の結合を高める目的、(17)古いコンクリートと新しいコンクリートの間の結合を高める目的、(18)完成材料の耐衝撃性および耐摩滅性を向上させる目的、(19)埋め込まれている金属の腐食を抑制、例えばコンクリートマトリックスの中の補強用鋼を保護する目的、そして(20)着色したコンクリートまたはモルタルを生じさせる目的。従って、通常の混和材を本発明の目的で用いることができる。以下のパラグラフに本産業で理解されている機能的混和材分類に従って系統立てた説明的リストを示すが、これは完全なリストではない。
【0034】
硬化促進剤はコンクリートの硬化および初期の強度発生を促進させる目的で用いられる。この機能を達成する目的で使用可能な一般的材料のいくつかは塩化カルシウム、トリエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、蟻酸カルシウム、亜硝酸カルシウムおよび硝酸カルシウムである(これらの中のいくつか、例えば亜硝酸カルシウムなどはまた腐食抑制用混和材としても機能する)。
【0035】
遅延剤または硬化遅延用混和材はコンクリートの硬化速度を遅らせるか、遅延させるか或は遅くする目的で用いられる。遅延剤はコンクリートを硬化させる時に暑い気候によって促進される影響を相殺するか或は仕事現場への搬送に問題が生じたことで設置が困難な状態が起こった時にコンクリートまたはグラウトの初期硬化を遅らせる目的か或は特殊な仕上げ工程を行う時間が得られるようにする目的で用いられる。大部分の遅延剤はまた減水剤としても働きかつまたコンクリートの中に空気をいくらか連行させる目的でも用いられ得る。リグノスルホネート、ヒドロキシル化カルボン酸、リグニン、ボラックス、グルコン酸、酒石酸および他の有機酸およびそれらの対応する塩そして特定の炭水化物が遅延用混和材として用いられ得る。
【0036】
空気吐出し剤(air detrainers)はコンクリート混合物の中の空気含有量を低くする目的で用いられ得る。トリブチルホスフェート、フタル酸ジブチル、オクチルアルコール、水に不溶な炭酸エステルおよびホウ酸エステルおよびシリコンがこの効果を達成する目的で用いられ得る一般的な材料のいくつかである。
【0037】
空気連行(air−entraining)用混和材は顕微的気泡をコンクリートの中に連行させる目的で意図的に用いられる。空気を連行させると、凍結解凍サイクル中に水分にさらされるコンクリートの耐久性が劇的に向上する。加うるに、連行された空気はコンクリートが化学的氷結防止剤が原因で起こる表面のスケール化に対して示す耐性を大きく向上させる。空気連行はまた新鮮なコンクリートの作業性を向上させると同時に分離および染み出しをなくさせるか或は低下させる。そのような所望効果を達成する目的で用いられる材料は、木の樹脂(Vinsol樹脂)の塩、合成洗剤、スルホン化リグニンの塩、石油酸の塩、蛋白質系材料の塩、脂肪酸および樹脂状酸およびこれらの塩、アルキルベンゼンスルホネートおよびスルホン化炭化水素の塩から選択可能である。
【0038】
アルカリ反応性低下剤(alkali−reactivity reducers)は、アルカリ−骨材膨張(alkali−aggregate expansion)を低下させる能力を有し、これらにはリチウムおよびバリウムの塩が含まれ得る。ある種のポゾラン、例えばフライアッシュ、シリカフュームおよび高炉スラグなどはまたアルカリ反応性低下剤としても働き得る。
【0039】
結合用混和材は、一般に、古いコンクリートと新しいコンクリートの間の結合強度を高める目的でポートランドセメント混合物に添加される。それらには有機材料、例えばゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレンとブタジエンの共重合体および他の粉末状のポリマーが含まれる。
【0040】
減水用混和材は、特定のスランプ(slump)を示すコンクリートを生じさせるか、水とセメントの比率を低くするか或はスランプを高めようとする時に必要な混合用水の量を低くする目的で用いられる。減水剤は典型的にコンクリート混合物の水含有量を約5%から10%低くするであろう。
【0041】
超可塑剤は高い等級の(high−range)減水剤もしくは減水用混和材である。それらは高いスランプ流れ(high−slump flowing)のコンクリートを作成する目的、従って水とセメントの比率を低くする目的でコンクリートに添加される。このような混和材は、水を大きな度合で減少させるか、或は過度の硬化遅延をもたらすことも空気をコンクリートのモルタルの中に連行することもなく流動性を高くする。超可塑剤として使用可能な材料は、とりわけ、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、特定の有機酸、リグノスルホネートおよび/またはこれらの混合物である。特に好適な超可塑剤はポリエーテル基を含有する超可塑剤、例えばArfaeiの米国特許第4,814,014号および4,960,465号に開示されている超可塑剤、より好適には、ポリオキシアルキレン基を含有する超可塑剤、例えばDarwin他の米国特許第5,703,174号に開示されている超可塑剤などであり、前記文献は全部引用することによって本明細書に組み入れられる。本発明で用いるに適切であると思われる適切なポリオキシアルキレン含有超可塑剤をGrace Construction Products(Cambridge、MA)から商品名ADVAの下で入手可能である。
【0042】
天然および合成混和材は美および安全の理由でコンクリートに色を付ける目的で用いられる。そのような着色用混和材は一般に顔料で構成されており、それらにはカーボンブラック、酸化鉄、フタロシアニン、アンバー、酸化クロム、酸化チタンおよびコバルトブルーが含まれる。
【0043】
コンクリートに入れる腐食抑制用混和材は埋め込まれている補強用鋼を腐食から保護する目的で用いられる。コンクリートは高いアルカリ性を有することから鋼の上に不動の保護酸化物膜を形成させる。しかしながら、炭酸飽和(carbonation)が起こるか或は氷結防止剤または海水に由来する塩化物イオンが存在すると時にはそのような膜が保護を示さなくなり得る。腐食抑制用混和材はそのような腐食反応を化学的に阻止する。腐食を抑制する目的で最も通常用いられる材料はカルシウムの亜硝酸塩および/または硝酸塩、ナトリウムの亜硝酸塩および/または硝酸塩、安息香酸ナトリウム、特定のホスフェート、フルオロアルミネートおよびフルオロシリケートである。他の材料にはアミン、エステル、モリブデン酸塩、燐酸塩、脂肪酸エステルまたはこれらの混合物が含まれ得る。
【0044】
腐食抑制剤はGrace Construction Productsから商品名DCIの下で入手可能な亜硝酸カルシウム溶液として商業的に入手可能である。
【0045】
防湿用混和材は、セメント含有量が低いか、水とセメントの比率が高いか或は骨材に入っている微細物が不足しているコンクリートの透過性を低くする。このような混和材は水分が乾燥コンクリートの中に入り込む速度を遅くし、これらには特定の石鹸、ステアリン酸塩および石油製品が含まれる。
【0046】
グラウティング剤(grouting agents)、例えば空気連行用混和材、促進剤、遅延剤、そして非収縮(non−shrink)および作業性剤(workability agents)などは、特定の用途で所望の結果が達成されるようにグループ特性(group properties)を調整する。例えばポートランドセメントグループは多種多様な目的で用いられ、それらの各々に関して、基礎を安定にするか、機械の基礎を設置するか、コンクリート作業で亀裂および接合部を埋めるか、油井をセメントで接着させるか、メーソンリー壁の中心部を埋めるか、或は骨材コンクリートを注入する目的でいろいろな作用剤を必要とし得る。
【0047】
時には、コンクリートおよびグラウトが硬化する前にそれらを若干膨張させる目的で、気体発生剤または気体を発生する作用剤が非常に少量添加される。その膨張の度合はその使用する気体発生用材料の量および新鮮な混合物の温度に依存する。アルミニウム粉末、樹脂石鹸および植物もしくは動物性糊、サポニンまたは蛋白質加水分解物が気体発生剤として用いられ得る。
【0048】
透過性低下剤(permeability reducers)は、加圧下で水がコンクリートの中を透過する速度を遅くする目的で用いられる。コンクリートの透過性を低くする目的でシリカヒューム、フライアッシュ、粉砕スラグ、天然のポゾラン、減水剤およびラテックスが用いられ得る。ポゾランはシリカ質もしくはシリカ質とアルミ質の材料であり、これ自身はほとんどか或は全くセメント系価値を持たない。しかしながら、ポゾランは微細形態の時に水分が存在すると通常の温度で水酸化カルシウムと化学的に反応して、セメント系特性を有する化合物を生じる。
【0049】
ポンピング助剤(pumping aids)は、ポンプ輸送性を向上させる目的で混合されたコンクリートに添加される。このような混和材は流動するコンクリートを濃密にする、即ちそれの粘度を高めることで、ペーストがポンプによる圧力下にある時に脱水を起こす度合を低くする。コンクリートに入れるポンピング助剤として用いられる材料は、とりわけ、有機および合成のポリマー、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはHECと分散剤(dispersants)の混合物、有機凝集剤(flocculents)、パラフィンの有機乳液、コールタール、アスファルト、アクリル樹脂、ベントナイトおよび高温反応シリカ(pyrogenic silicas)、天然ポゾラン、フライアッシュおよび水和石灰である。
【0050】
殺菌・殺カビ性、殺菌性および殺虫性混和材(本明細書では以降「殺生物剤」と呼ぶが)を用いると、ある程度ではあるが、硬化したコンクリートの上または中で増殖する細菌および菌・カビの増殖を制御することができる。このような目的で最も高い効果を示す材料は多ハロゲン化フェノール、ジエルドリンエマルジョン(dieldrin emulsions)および銅化合物である。
【0051】
収縮軽減用混和材(SRA)は、コンクリートが乾燥する時の収縮が原因で起こる亀裂現象を最小限にすることが知られている。いろいろなオキシアルキレン付加体がこの目的で用いるに適する(例えば米国特許第3,663,251号および4,547,223号を参照)。末端がアルキルエーテル化もしくはアルキルエステル化されているオキシアルキレン重合体がこの目的で用いるに有効であると考えられた(例えば米国特許第5,147,820号を参照)。特開昭58−60293号には、脂肪族、脂環式または芳香族基が末端に位置するオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン繰り返し鎖単位である化合物を添加するとセメントが起こす収縮の軽減を達成することができることが教示されている。Shawl他の米国特許第5,938,835号に教示されているように、典型的なSRAは、特定のアルキルエーテルオキシアルキレン付加体と特定のオキシアルキレングリコールの混合物を含んで成り、これは、モルタルもしくはコンクリートのセメント
組成物が乾燥する時の収縮を抑制すると同時に実質的な空気連行を起こさせかつ圧縮強度を向上させる。Shawl他の米国特許第5,556,460号に開示されている好適なSRAは、ポリオキシアルキレン鎖とカルボン酸基を多数有する少なくとも1種の高分子量櫛形重合体と低分子量のオキシアルキレンポリオールまたはポリオールのエーテル付加体で構成されている。この上に示した特許は全部引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0052】
用語「混和材」に、コンクリート用混和材に加えてまた「メーソンリー用混和材(masonry admixtures)」(これ用の多くの材料をこの上に既に示した)も包含させる。しかしながら、メーソンリー用の追加的混和材をここでいくらか示すのは価値有ることである。メーソンリーでは、水分含有量が低いコンクリートから作られた製造単位[例えばブロック、舗道(paver)、他の単位]の水透過度合を低くする目的で一体式はっ水剤(integral water repellents)が用いられる。より具体的には、そのような製造単位の外側表面からこの単位の内部に向かって水が毛細管作用で透過する度合を最小限にする目的で一体式はっ水剤が用いられる。典型的な用途は、建物の外壁で用いられるコンクリートメーソンリー単位(concrete masonry unit)の中に一体式はっ水剤を用いる用途である。一体式はっ水剤に一般的ないくつかの原料には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛およびオレイン酸ブチルが含まれる。好適には、本発明の粒子をそのような脂肪酸で被覆してもよく、従って、それをメーソンリーセメントまたはコンクリートにか或はモルタルに混合してもよい。そのような製造単位(例えばブロック)の表面に生じる白華を減少させる目的で用いられる別のメーソンリー(低水分のコンクリート)用混和材は白華制御剤(efflorescence control agent)である。白華は、水分がメーソンリー単位の中を移動して蒸発する時に生じる可溶塩および不溶塩の白色がかった沈着または被覆(encrustation)である。通常の原料にはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸ブチルおよびトール油脂肪酸が含まれる。また、本発明の粒子をそのような脂肪酸で被覆することも可能である。
【0053】
従って、本発明の典型的な方法および粒子は、1種以上の公知混和材、例えば減水剤、超可塑剤、硬化遅延剤、硬化促進剤、空気連行用混和材、空気吐出し用混和材、収縮軽減用混和材、腐食抑制用混和材、アルカリ反応性低下剤、透過性低下用混和材、結合剤、ポンピング剤、気体発生剤、着色剤、グラウティング剤、防湿剤、殺生物剤、メーソンリー用混和材、白華制御用混和材またはこれらの混合物などの使用を伴い得る。例えば、ポートランドセメントおよび/または高炉スラグを場合により1種以上のポゾランと一緒にして亜硝酸カルシウム分散液(混合用水が入っている)と混合してスラリーを生じさせた後、これを硬化させて塊にし、次に粉砕(例えばプレスまたは鋼製ローラーを用いることなどで)することで、本発明の典型的な混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子を生じさせる。
【0054】
従って、本発明は、処理を受けさせるべきコンクリート、モルタル、グラウトまたは他のマトリックス組成物に送り込むべき混和材(または添加剤)の量を正確に測定、特に混和材1種または2種以上を少量調合する場合に正確に測定する方法を提供するものである。調合すべき混和材1種または2種以上の量の正確な測定を得ることができる、と言うのは、混和材1種または2種以上をセメント系結合剤と一緒にしておくと、この混和材を硬化前の結合剤と混合するか、その結合剤を硬化させそして粉砕して粒子にした後の粒子を混和材で被覆するか、或は両方を行うかに拘らず、その一緒にしたものを多量に測定する方がより容易であり得るからである。処理すべきマトリックス組成物(例えばコンクリート)またはコーティング組成物(例えば塗料)の中に導入すべき混和材の量を測定する時、単に、多量の粒子と相対量の混和材1種または2種以上(これは結合剤の乾燥重量を基準にして10−90%またはそれ以上のどこかを構成し得る)を測定することで実施可能
である。
【0055】
従って、本発明を用いると、また、相溶性に問題がある混和材を一緒にすることも可能になる。本発明の典型的なさらなる方法では、腐食抑制剤、例えば亜硝酸カルシウムなどを用いて混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子(溶液の形態で結合剤、例えばポートランドセメントなどと一緒に混合しておいた)を製造することができ、そしてその水和した塊を粉砕して粒子にした後、その粒子[この上に記述したように高度に「微細な粗い粒子(micro−granulose)」表面を有する]をこの上に記述した如き超可塑剤(例えばポリオキシアルキレン型)および/または収縮軽減用混和材(例えばオキシアルキレン型)で被覆することなどで、前記粒子にさらなる処理を受けさせてもよい。このようにして、所定バッチのコンクリート、モルタル、グラウト、塗料、コーティングまたは接着剤毎に2種以上の混和材を組み合わせた同時調合を正確に測定および制御することが可能になる。
【0056】
本発明の別の典型的な態様において、本発明者らは、粉砕しておいた水和したセメント粒子(この粒子の中に他の混和材を埋め込むか或は埋め込まないで作成)をこの上に記述した如きポリオキシアルキレン含有櫛形重合体型の超可塑剤および/またはオキシアルキレン型の収縮軽減用混和材で被覆してもよいと考えている。
【0057】
本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子を得る目的で水和性セメント系結合剤と一緒にすべき混和材1種または2種以上の比率は、混和材1種または2種以上/セメント系結合剤が5−95重量%:95−5重量%、より好適には少なくとも10−90重量%:90−10重量%、最も好適には少なくとも15−85重量%:85−15重量%の比率であってもよい。典型的には、処理を受けさせるべきコンクリートもしくはモルタルに混和材を通常に添加する場合の量は、セメント系結合剤の重量を基準にして通常は約0.01−5%であり、その結果として、そのような充填パーセントの範囲を高い混和材/セメント比で始めて、好適には高くして行く。
【0058】
この混合過程における主要な考慮は、混和材(または組み合わせた場合には混和材2種以上)の含有量が可能な最も高い量になるようにしかつ妥当な時間で硬化して堅くなるに充分な粘ちょう度を有するペーストまたはスラリーが得られるようにすることにある。液状の混和材(セメントと混合すべき)が水を含有しない場合、硬化して堅くなることが1−2日以内に達成され得るように、水和を開始させるに充分な量で水を添加すべきである。
【0059】
本発明の混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子は好適にはある程度実質的に水和している。この粒子の中に入っている水の量は、JIS R 5202(Method for Chemical Analysis of Portland Cement)に従う強熱減量(loss on ignition)(LOI)試験を用いて測定可能である。サンプルを5分毎に集めてもよい(5分の時に開始して160分間に亘って進める)。強熱減量は、ある物質に強熱を950℃の空気中で15分間受けさせることを繰り返し受けさせた時の重量損失であり、この重量損失は、この過程中に減少した水分、有機物および二酸化炭素の量を示している。本発明の典型的な粒子が示すLOIは好適には約5−45%である。より好適には、強熱減量を8−40%にすべきである。このような範囲は、例えば従来技術のコーティング方法(Nomachi他の米国特許第5,236,501号を参照、実施例1を参照)に教示されている水和の度合よりも実質的に高い。
【0060】
実質的に水和している硬化したセメント系塊(セメント結合剤を単独で水和させたか或はポゾラン系材料および/または1種以上の混和材と組み合わせて水和させたかに拘らず
)の粉砕は、その塊に圧縮力または粉砕力、例えばジョークラッシャー(jaw crusher)、ローラークラッシャー(roller crusher)(例えば向かい合う鋼製ローラー)、ボールミル(ball mill)、ディスクミル(disc mill)またはグラインダー(grinder)などを用いて受けさせることで達成可能である。平均粒子サイズを好適には#50のメッシュよりも細かくするが、本発明の用途はいろいろであることから幅広い平均粒子範囲(例えば1−250マイクロメートルから6センチメートルまたはそれ以上に及ぶ)も適切であると考えている。これらの粒子の大きさは用途に依存するであろう。これらの粒子を水和性セメント系組成物(コンクリート、モルタル)に混合しようとする場合にはより粗くてもよい可能性があり、そしてそれらを他のマトリックス組成物、例えばエポキシ接着剤もしくはコーティング、ウレタン接着剤もしくはコーティング、ラテックス(例えば塗料)または他の組成物に混合しようとする場合には、より微細であってもよい。
【0061】
本粒子は添加剤をポートランドセメントに送り込む目的、例えばクリンカーまたは高炉スラグ(好適には顆粒状)の粉砕中に粉砕助剤もしくは加工助剤をボールミルに導入して水和性セメント系結合剤を生じさせる目的などで使用可能である。例えば、水和したセメント粒子(1種以上の混和材が粒子内に封じ込められておりそして/または粒子表面の上を覆っている)を大きさが1マイクロメートルから6センチメートルの桁で用いてもよい。セメントをボールミル、ローラーミラー(roller miller)またはロールプレスミル操作で製造中に本粒子をクリンカーと一緒に粉砕してもよい。高炉スラグ粉砕用の典型的な添加剤には、カナダ特許第1,163,394号および米国特許第4,286,962号に開示されている如き特定のアリールヒドロキシ化合物のアミン塩(例えばトリエタノールアンモニウムフェノキサイド)が含まれ得る。他の添加剤は、CheungおよびGaidisの米国特許第5,720,796号および5,977,224号に開示されている如きポリアクリル酸およびこれのアルカリ金属塩である。セメントもしくはセメントクリンカー粉砕用の典型的な添加剤には、カナダ特許第1,224,495号に開示されている如き芳香基含有カルボン酸のアミン塩(例えば安息香酸トリエタノールアミン)が含まれ得る。別のセメント添加剤には、米国特許第4,643,362号に開示されているようにポリオール、例えばアルキレングリコールなどを一塩基性カルボン酸、例えば酢酸などと反応させることで生じさせたジエステルが含まれる。他の典型的なセメント添加剤には、Cheungの米国特許第6,213,415号に開示されているように、ローラーが用いられているミル用の結合濃密化剤(binding−densifying agents)、例えばポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリオキシエチレン、ポリスルホン酸またはこれの塩などが含まれる。更に別の典型的なセメント添加剤には、Gaidis他の米国特許第4,943,323号に開示されている如きアルカノールアミン、およびCheungおよびMyersの米国特許第6,048,393号に開示されている如きジエタノールアミン、イソプロパノールアミンが含まれる。別の典型的なセメント添加剤には、米国特許第4,375,987号に開示されているように、ポートランドメーソンリーセメントにはっ水性および/または硬化遅延を与える目的で用いられるアルコール類、ケトン類、アミド類および/またはアルデヒド類の使用が含まれる。
【0062】
図1および2は、通常の混和材(亜硝酸カルシウム分散液)を用いてこれを従来技術の流動床コーティング方法に類似した様式で表面に噴霧しておいた(水和していない)セメント粒子をそれぞれ2500倍率および5000倍率の顕微鏡で撮った写真である。その流動床コーティング方法は、ポートランドセメントを1グラム未満の量で用いてこれを多孔質紙の上に広げる方法に近い方法である。極めて微細な霧を分散させ得るスプレーガン(spray gun)を用い、亜硝酸カルシウムの30%溶液を用いて粒子に被覆を受けさせた後、乾燥を110℃のオーブン内で受けさせた。この過程を数回繰り返し、噴霧段階後直ちに乾燥段階を設けることで、粒子の水和を最小限にしながら亜硝酸カルシウム
の充填量を多くしていった。従って、この上で説明した如き充填を受けさせた水和していないセメント粒子を図1および2に示す。
【0063】
それとは対照的に、図3および4は、この上で考察した本発明の方法を用いて製造した典型的な混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子(亜硝酸カルシウムを混和材として包含)[この混和材を硬化および粉砕前のセメント系結合剤と混合しておいた]をそれぞれ2500倍率および5000倍率の顕微鏡で撮った写真である。亜硝酸カルシウム分散液[Grace Construction Products(Cambridge、Mass.)の「DCI」ブランドの腐食抑制剤]をポートランドセメントと混合してペーストを生じさせ、これを硬化させた後、プレスの破砕力を用いて粒状にした。図3および4に示すように、この微粒子状の粒子は、図1および2で見た表面がより滑らかであるのと対照的に、非常に微細な粗い粒子表面質感を有しており、このことは、表面積がずっとより大きくかつ構造的間隙を有することを示唆している。本発明の典型的なさらなる態様では、水和前の結合剤と混合した混和材と同じか或は異なる混和材1種または2種以上を用いてセメント系−混和材粒子を被覆してもよい。
【0064】
粒子と混ざり合っているか或は粒子の表面を覆っている混和材と一緒に分散剤を含有させると、その粒子の分布または分散性が向上し得る。そのような分散剤はこの上に記述した減水剤または超可塑剤である混和材から選択可能であり、分散の目的の分散剤には、好適には、リグノスルホネート(例えばリグノスルホン酸ナトリウム)、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、または超可塑剤のいずれも含まれるであろう。分散剤と他の混和材(混合する混和材が減水剤でも超可塑剤でもない場合)の比率を成分の乾燥重量を基にして約1:1から約1:15、より好適には1:6から約1:9にするが、このような分散剤の濃度はしばしば分散剤自身の性質に依存するであろう。また、このような粒子は非常に微細な粗い粒子表面質感を有することから、従来技術のコーティング方法で用いられた水和していないセメント粒子を用いた時に比べて、被覆される表面積がずっと大きくなるであろう。
【0065】
本発明者らは、また、溶媒を用いてこの上に挙げたEO/PO櫛形の超可塑剤および/またはオキシアルキレン系収縮軽減用混和材を粉砕しておいた水和したセメント系粒子、例えばこの上に挙げたセメント系−混和材粒子にか或は水和および粉砕に先立って混和材と混合していない水和したセメント系粒子に噴霧で付着させることも可能であると考えている。
【0066】
本発明の多数の顆粒状粒子(granular particulates)をマトリックス組成物、例えばコンクリート、吹付けコンクリート、モルタル、グラウトおよび他のセメント系組成物の中に分散させる時、箱(bins)の中に分散させるばら荷粉末としてか、或は公知の包装/分与(packaging/dispensing)方法、例えば本粒子を水溶性容器(例えば米国特許第4,961,790号を参照)または米国特許第5,203,629号(両方の特許とも引用することによって本明細書に組み入れられる)の水不溶性包装材に入れて導入する方法などで容易に分散させることができる。
【0067】
本発明の典型的な混ざり合っていて水和したセメント系−混和材粒子をまた他のマトリックス組成物、例えばラテックス、コーティング、塗料、接着剤および他の硬化し得るマトリックス系に混合することも可能である。例えば、腐食抑制剤、例えば亜硝酸カルシウムなどを含有させておいたセメント系−混和材粒子を、補強コンクリートに入れるリバー(補強用鋼製棒材)に塗布される種類のエポキシコーティングに混合してもよい。これは腐食抑制剤および/または他の添加剤1種または2種以上の高い充填量の達成に役立つであろう。別の用途は、本発明の亜硝酸カルシウム含有粒子を金属表面(例えば水タンク、金属製屋根、鋼もしくはアルミニウム製サイディング、金属製ビーム、パイプ、ケーブル
および他の金属表面)で用いられるコーティングに混合する用途であろう。
【0068】
従って、別の典型的な態様は、本発明の粒子をエポキシコーティングに混合する態様であろう。例えば、亜硝酸カルシウムをセメントにセメントの重量を基準にして10−30%の量で混合した後、これに水を添加して水和させ、硬化させた後、微粉砕して微細な粒子を生じさせる。次に、その粉砕しておいた水和した粒子をエポキシコーティングにエポキシコーティングの重量を基準にして10−85重量%、より好適には20−50重量%の量で混合してもよいであろう。従って、そのようなエポキシコーティングに入れることができる亜硝酸カルシウムの範囲は重量を基準にして1−25%であろう。
【0069】
本発明は、また、マトリックス組成物に修飾を受けさせる方法も提供し、この方法は、本粒子ならびに本粒子を含有させておいたマトリックス組成物を混合することを伴う。
【0070】
本発明の典型的なさらなる態様は、少なくとも1種の混和材を含んで成る多数の水和したセメント系粒子を含んで成る粒子に関し、ここで、前記粒子は可鋳性セメント系組成物に混合するに有効であり、そしてここで、前記少なくとも1種の混和材は前記可鋳性セメント系組成物に修飾を受けさせるに有効である。例えば、本明細書の上に記述したように、前記少なくとも1種の混和材を前記粒子に混合することでそれを前記粒子の水和したセメントマトリックスの中に埋め込んだ。別の例として、混和材1種または2種以上で前記粒子の表面を被覆するが、この被覆は、前記粒子の水和したマトリックスの中に埋め込まれている混和材と一緒にか或は前記粒子への単独の充填として実施可能である。このような粒子は、好適には、顕微鏡を補助で用いた時に見られるような微粒子を粒子表面に有するであろう。
【0071】
以下に示す実施例は本発明のいろいろな態様を説明する目的で示すものである。
【実施例】
【0072】
実施例1
収縮軽減用混和材(「SRA」)(例えばGrace Construction Productsから名称「ECLIPSE(商標)」の下で入手可能)をセメントに全粉末量が13質量%[セメントに対して20%(固体に対する固体、即ち「s/s」)]の硬化したセメントペースト混合物がもたらされるように追加的水と一緒に添加した。これは最大現場用量(maximum field dosages)であるセメントに対して約2%s/sよりかなり高い。この製品を硬化させた後、粉砕して微粉末にして、セメントと微細骨材と水の混合物に添加した。
【0073】
図5に、SRA無しのセメント混合物サンプル、液状のSRAを用いたセメント混合物サンプル、および本発明で製造したSRA包含粒子を用いたセメント混合物サンプルが示した収縮性能を示す。この粉末を用いて達成した収縮軽減率は液体を用いて達成したそれの約70%であり、かつコンクリートサンプルの強度は匹敵していた。
【0074】
実施例2
硬化促進用混和材[例えばGraceから入手可能なPOLARSET(商標)ブランド]をセメントに追加的水なしに加えた(セメント1部当たり0.8部の混和材)、と言うのは、この混和材は水を58%含有しており、この量は水和に充分であったからである。硬化させた最終ペーストは混和材の固体を乾燥セメントの重量を基準にして18.8%含有していた。この混和材はこれを使用時に現場で用いる時には通常はセメントに対して2%s/sを超える濃度では添加されない。図6は、本発明の混ざり合っている水和粒子を用いて促進剤を混合すると硬化促進性能が向上することを示している。いろいろな混合物サンプルから得た圧縮強度データを図7に示し、これは、本発明の粒子を用いた混合物
サンプルの強度は前記促進剤を液状の形態で用いた時に得たそれに匹敵していることを示唆している。
【0075】
実施例3
腐食抑制剤[GraceのDCI(商標)ブランド]をセメントに追加的水なしに加えた(固体含有量が33%の溶液をセメント1部当たり1部)。硬化させた最終ペーストは固体状混和材をセメントを基準にして16.5%の固体含有量で有していた。この混和材は現場使用では一般にセメントの2.5%(固体)以下の添加率で添加される。図8に示すように、本発明の粒子を用いた処理を受けさせたセメント混合物サンプルが示す強度発生は液状の混和材を用いて通常に処理された混合物サンプルのそれに匹敵している。コンクリートにおける腐食性能は一般に長期間に亘って試験されることから、本発明者らは、腐食抑制剤が経時的に示す性能の指標として、混合用水に入っている亜硝酸塩の含有量を試験した。従って、コンクリートサンプルを混合して5分後に亜硝酸塩の含有量を検査した。液体方法とセメントペースト添加方法の間に差がなく、このことは、本発明の混ざり合っている亜硝酸カルシウム含有粒子を含有させたセメント混合物と液状の亜硝酸カルシウムを含有させたセメント混合物は腐食の抑制の点で経時的に同様な挙動を示すであろうことを示唆している。
【0076】
実施例4
JIS R 5202(Method for Chemical Analysis
of Portland Cement)に従う強熱減量手順を用いて本発明の混和材含有粒子の水和の度合を試験した。サンプルの収集を5分の時に開始して160分間に亘って5分毎に測定した。このデータを以下の表に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
この上に示したデータは、本発明の方法で得た粒子が達成した水和の度合は高く、従来技術のコーティング方法のそれを超えていることを立証している。例えば、その度合は、米国特許第5,236,501号の実施例1(これは粒子を空気室の中で渦巻き撹拌しながらそれの表面を被覆することに関する)に開示された2.0−2.4%LOIよりも高い。
【0079】
実施例5
33%の亜硝酸カルシウム溶液とセメントを同じ質量で一緒にすることで液状の亜硝酸カルシウムをセメントの中に封じ込めた。その結果として得た生成物を粉砕することで、これを厚みが5ミル(125マイクロメートル)のエポキシコーティングの中に組み込むことができるようにした。この粉末を用いて商業的海洋用エポキシ(commercia
l marine epoxy)の50質量%を置き換えた。鋼板(ASTM A36)をサンプル片に切断して、各々に脱グリースを受けさせた。1つのサンプル片の1つの表面を海洋用エポキシ(亜硝酸カルシウムを封じ込めていない)で被覆した。2番目のサンプル片の1つの表面を本発明に従って亜硝酸カルシウムを封じ込めておいたエポキシで覆った。前記エポキシを硬化させた後、両方の板サンプルを飽和水酸化カルシウム溶液に接触させた(コンクリートの孔に入っている水を模擬する)。前記水酸化物溶液のpHは約12.5から13であり、これは塩化ナトリウムを約3.5%含有していた。この接触を10日間行った後、亜硝酸カルシウムを封じ込めていないエポキシで覆っておいた鋼板サンプルでは表面部分に目に見える腐食が生じておりかつ基準電極に対して大きな負の電位(飽和塩化第一水銀に対して−0.6V)を示し、このことは、この試験片がひどく腐食していることを示している。電位値が−0.28V(カロメルに対して)より負であることは腐食性であると見なされる。亜硝酸カルシウムを封じ込めておいたエポキシで被覆した鋼板試験片は目に見える腐食を全く示さずかつ基準電極に対する電位(飽和カロメルに対して−0.052V)は不動態に関係した領域であり、従って、腐食が始まらなかったことを示していた。目に見える比較を図9に示す。
【0080】
実施例6
本発明者らは、また、硬化促進剤を含有させておいた粒子を接着剤またはコーティング材料に混合しておくとその接着剤またはコーティング材料と湿気を帯びているか或は湿っている(例えば新しく流し込まれそして/または水で覆われている)か或は湿るか或は湿気を帯びるであろうセメント系表面の接着力が向上する可能性があるとも考えている。従って、仮定実施例として、本発明に従って製造した粒子に公知の硬化促進剤(例えばトリエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、蟻酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、亜硝酸塩、塩化物、蟻酸塩、硝酸塩またはこれらの混合物)を取り込ませることができそしてそのような粒子をラテックス塗料、防水用下塗り剤(例えばアクリレート、スチレン、ブタジエン、ビチュウメン)に混合した後、湿っているセメント系表面、例えばコンクリート製デッキ、基礎、ブリック、モルタル、メーソンリーブロック、舗道、吹付けコンクリートなどに塗布することができるであろう。そのセメント系表面の上に存在しそして/またはそれに由来する水分が前記粒子のある程度水和したセメントとの反応を開始させ、新しい水和生成物(これは湿っているセメント系表面との結合に役立つであろう)を生じさせるであろう。このように、本発明者らは、従って、硬化促進剤を取り込ませておくと結合速度が速くなるであろうと考えている。
【0081】
実施例7
本発明者らは、硬化遅延剤を含有させておいた本発明の粒子をコーティングに入れてこれを用いるとコンクリートの上に特殊な表面仕上げを達成することができると考えている。例えば、コンクリート(粗骨材、例えば砕石および砂利などが入っている)を壁、ブロック、基礎またはコンクリートの形状に流し込む。本発明の硬化遅延剤含有粒子を入れておいたコーティングを流し込み前の鋳型(または「型枠」)の露出している表面の内張りで用いる。流し込んだ片が硬化し始めた後、その被覆しておいた表面をハケで拭くことで外側表面に骨材を露出させることができる。前記硬化遅延剤はコンクリートの硬化を遅らせることで、そのように骨材を露出させるのを助長するであろう。その後、その露出させたコンクリート表面に別のコーティング、例えば硬化促進剤、顔料、はっ水剤またはこれらの混合物などを取り込ませておいた本発明の粒子を含有させておいたコーティングなどを塗布してもよい。このように、本発明の粒子は水和性セメント系製品の製造および仕上げで用いられ得るコーティング系に大きな柔軟性を与えることができるであろう。
【0082】
実施例8
本発明者らは、本発明を用いると他の様式では同じ液状溶液の中で用いた時に相溶しない可能性のある添加剤または混和材を一緒にすることが可能になると考えている。例えば
、亜硝酸カルシウムとジプロピレングリコールt−ブチルエーテル(DPTB)はこれらを一緒にした濃度が水中で10%を超えると安定な溶液を容易には生じない。この二者をセメントスラリーの中で一緒にして、硬化させることで塊にした後、粉砕して本発明の粒子を生じさせておくと、ここに、この2種類の混和材(他の様式では相溶しない)をこの上に示した調合と同じようにして水和性セメント系組成物の中に一緒に混合することが可能になる[また、DPTBはそのようにしないと用量が多い時に硬化遅延性質を有するが亜硝酸カルシウムの硬化促進特性によってそれが相殺される可能性がある点でそのような特別な組み合わせも興味の持たれる特徴を与えることになるであろう]。
【0083】
実施例9
1種以上の混和材をセメントと混合して粒子を生じさせた後にそれを他の1種以上の混和材で被覆することを通して、複数の混和材をコンクリートまたはモルタルに添加することが可能になる。このような技術を用いると互いにあまり相溶しない混和材を組み合わせることができる。相溶しない混和材組み合わせには、例えば、一方のGrace Construction Productsから「DCI」ブランド名の下で水性分散液として入手可能な亜硝酸カルシウム(CANI)と他方のGrace Construction ProductsからADVA(商標)商品名で入手可能な如き超可塑剤が含まれ得る。別の相溶しない組み合わせはCANIと収縮軽減用混和材、例えばGrace Construction ProductsからECLIPSE(商標)名の下で入手可能な収縮軽減用混和材であろう。CANIは典型的に分散液としてコンクリートに添加される一方、超可塑剤および収縮軽減用混和材は典型的に液体として添加される。しかしながら、本発明者らは、CANIとセメントを混合してスラリー/ペーストを生じさせ、これを硬化させて塊にし、この塊を粉砕して粒子にした後、この粒子を超可塑剤成分で被覆した[ポリマー(これは他の様式では液状の超可塑剤を製造する目的で用いられ、これはチャート(chart)に「PAJ」と表示されている)を溶媒に溶解させた後、前記CANI含有粒子の外側表面に噴霧することで]。これらの粒子をコンクリートサンプルの中に導入し(使用する砂の一部を部分的に置き換え)そしてそのサンプルに圧縮強度に関する試験を受けさせた。本発明者らは、そのようなサンプルが示す圧縮強度は前記混和材の一方もしくは両方を通常通り添加したサンプルのそれと同じであることを見いだした。
【0084】
【表2】

【0085】
このように、本発明の混和材を混合しておいた(または「封じ込めておいた」)粒子を用いると、これをさらなる混和材で被覆して(「それを含浸させて」)おいた時でも、混和材を通常に添加したサンプルに比較して充分な圧縮強度値を与えることが分かった。
【0086】
実施例10
水和したセメント担体(hydrated cement carrier)の可能な2種類の源は、コンクリート再生器に由来するセメントが豊富なケーキ(cake)、または廃棄コンクリートの粉砕に由来するモルタル画分である。好適には、これらの材料に含浸を受けさせる前に乾燥を受けさせておく。米国特許第5,039,556号に、100℃を超える温度で乾燥させておいた固体状コンクリートに亜硝酸カルシウム溶液をかなりの量で染み込ませることができることが教示されている。この用途は構造の点でコンクリート全体に関する用途であった。この場合の工程速度は有意に高い可能性がある、と言うのは、それは一般に多孔質ではない粗骨材を伴わない粉砕された材料に適用されたからである。
【0087】
実施例11
本発明者らが考える別の用途は、本発明の実質的に水和した粉砕粒子(ポートランドセメント、石膏または両方を結合剤として用いた)を噴霧で塗布される防火物または吹付けコンクリート用の水和用水含有骨材として用いる用途である。現在、噴霧で塗布される防火物ではボーキサイトが用いられている、と言うのは、それは水を含有しかつ砂の代替として使用可能であるからである。水和したセメントが基になった粒子を用いると、水和した粒子(これは「水和用水含有」粒子としても機能し得る)を防火物または吹付けコンクリート混合物に混合するにより安価な方法が得られるであろう。場合により、収縮軽減用混和材、空気制御用混和材(連行および/または吐出し)、減水用混和材(例えば超可塑剤)などの如き混和材をセメントに混合しそして/またはそれで前記実質的に水和した粒子を被覆してもよい。このように、本発明の典型的なさらなる態様には、乾燥粉末形態で市販されている防火用もしくは吹付けコンクリート組成物に少なくとも1種の結合剤(例えばポートランドセメント、石膏、高炉スラグなど)と本発明に従う多数の粒子を含有させる態様が含まれる。これらの粒子に当該組成物の特性を修飾するための1種以上の混和材を含有させてもよい(混合および/または被覆で)。
【0088】
この上に示した実施例および態様は単に説明の目的を意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮なコンクリート又はコーティング組成物を修飾するための方法であって、ポートランドセメントを含んでなる水和性セメント系結合剤と、該結合剤の乾燥重量を基準にして10%〜95%の量の、硬化促進剤、腐蝕抑制剤又はそれらの混合物を含んでなる少くとも一つの混和材と、該ポートランドセメントがスラリーを形成して実質的に水和するに充分な量の水とを混合し、該スラリーを実質的に水和した塊に硬化させ、該硬化した塊を粉砕して平均直径が5〜250マイクロメートルの多数の粒子を生じさせることによって得られた粒子を、新鮮なコンクリート、又はアクリル酸もしくはこれの塩、アルキド樹脂、エポキシ、ポリエステルまたはそれらの混合物を含んで成るコーティング組成物に添加する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記水和性セメント系結合剤が更に高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石、又はそれらの混合物を含んでなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記腐蝕抑制剤が、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウムまたはそれらの混合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記多数の前記実質的に水和した粒子をポリオキシアルキレン系超可塑剤、ポリオキシアルキレン系収縮軽減用混和材またはそれらの混合物で被覆することも更に含んで成る請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕しておいた多数の実質的に水和した粒子をJIS R 5202に従って測定した時にこれが5%以上の強熱減量から45%以下の強熱減量を示す請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−196888(P2009−196888A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102169(P2009−102169)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【分割の表示】特願2003−526853(P2003−526853)の分割
【原出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】