説明

方向伝達装置

【課題】触覚を利用して方向を含む情報を直感的に分かり易く伝達することができる方向伝達装置を提供すること。
【解決手段】方向伝達装置10は、手により把持可能な筒型筐体11と、筒型筐体11内部から外周に向かって上下左右の開口孔11aから突出する位置に3次元配置されるソレノイド15a〜15dと、筒型筐体11の動きを検出する加速度センサ23と、ソレノイド15a〜15d及び加速度センサ23を制御する制御部21とを備える。制御部21が筒型筐体11内部のソレノイド15a〜15dを駆動すると、ロッド16a〜16dの突端が、筒型筐体11の右の開口孔11aから突出して弾力性シート12に当接し、ユーザはこの衝撃を掌及び手指で感知して、方向伝達装置10から方向の情報伝達を受け取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚を利用して方向などの情報を伝達する方向伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器や各種アミューズメント装置の普及が拡大し、利用が多くなるにつれて、これらの機器にはより面白く、斬新な機能を持つことが求められている。例えば、携帯機器にタッチパネルを導入することで、より直感的なインターフェースを実現する。また、手の動作をセンシングし、その動きに基づいて動作を認識するものがある。
【0003】
特許文献1には、触覚を利用して利用者の周囲の広範囲の方向や位置を提示するヒューマンインタフェース装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、利用者に提示すべき方向と位置検出部が検出した配置情報とに基づいて、利用者の身体表面位置に対して、触覚提示部を用いて触覚刺激を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−75705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の方向呈示装置にあっては、触覚デバイス(機械的な力,風船,形状記憶合金,熱,流体,電気的な刺激など)の単なる例示と、触覚デバイスの単なる配置例(円周内側配置,球面内側配置,円筒外側配置など)を例示しているだけで、特定の触覚デバイスをどのように適用するか構成例は記載されていない。例えば、アームやワイヤによって機械的な力を加えると記載されているだけでいかような構成を採ればよいのか具体的構造や動作は何ら開示されていない。すなわち、体表面位置に対して、触覚提示部を用いて触覚刺激を提示するという概念が示されているだけで、技術的な記載が一切開示されていない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、触覚を利用して方向を含む情報を直感的に分かり易く伝達することができる方向伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方向伝達装置は、把持可能な筐体と、前記筐体内部に設置され、かつ呈示する方向に応じて前記筐体の外周面に刺激を与える刺激付与機構と、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、方向を含む情報を、触覚により直感的に分かり易く伝達することができる。視覚・聴覚ではなく触覚により方向情報などが伝達されることにより、新しい感覚が得られ、さらにそのまま操作を行うことができ、直感的な操作を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る方向伝達装置の全体構成を示す透過斜視図
【図2】上記実施の形態に係る方向伝達装置の透過図
【図3】上記実施の形態に係る方向伝達装置の要部断面図
【図4】上記実施の形態に係る方向伝達装置の構成を示す図
【図5】上記実施の形態に係る方向伝達装置のソレノイドの取り付け例を説明する図
【図6】上記実施の形態に係る方向伝達装置の刺激を与える機構を説明する図
【図7】上記実施の形態に係る方向伝達装置の刺激を与える機構を説明する図
【図8】上記実施の形態に係る方向伝達装置のシステム構成を示すブロック図
【図9】上記実施の形態に係る方向伝達装置の使用方法を説明する図
【図10】上記実施の形態に係る方向伝達装置のシステムの制御を示すフローチャート
【図11】上記実施の形態に係る方向伝達装置のPCの表示部に表示されるゲームの画面を示す図
【図12】上記実施の形態に係る方向伝達装置の刺激を与える機構に圧電素子を利用した方向伝達装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る方向伝達装置の全体構成を示す透過斜視図であり、図1(a)はその正面方向から見た透過斜視図、図1(b)はその側面方向から見た透過斜視図である。図2は、上記方向伝達装置の透過図であり、図2(a)はその上面図、図2(b),(c),(d)はその3方向から見た側面図、図2(e)はその底面図である。図3は、上記方向伝達装置の要部断面図である。本実施の形態は、手に方向を伝達する方向伝達デバイスに適用した例である。
【0012】
図1乃至図3に示すように、方向伝達装置10は、樹脂等で形成された円筒形状をした筒型筐体11を有する。筒型筐体11は、円筒軸線上に所定間隔ごとに上下左右の開口孔11aが形成され、開口孔11aを塞ぐように硬質ゴム等の弾力性シート12が貼り付けられる。筒型筐体11は、筒型筐体11全体を覆うようにラバーシート13が被覆される。筒型筐体11は、円筒外周の一端に、入力指示を切り替えるスイッチ14が取り付けられる。
【0013】
筒型筐体11内部には、互いに90度ごとずらした4つのソレノイド15a〜15dが配置される。ソレノイド15a〜15dのロッド16a〜16dは、筒型筐体11内部から外周に向かって上下左右の開口孔11aから突出する位置に配置される。
【0014】
筒型筐体11内部は、ソレノイド15a〜15dを載置する土台となる切欠17aを有するプレート17が取り付けられる。切欠17aは、各段の空気を連通させて筒型筐体11の柔軟性を保つとともに、ソレノイド15a〜15dのリード線(図示略)を底面まで導く連通路となる。各プレート17上には、固定具18がネジ止めにより固定され、固定具18にはソレノイド15a〜15dがネジ止めにより固定される。ソレノイド15a〜15dが、プレート17及び固定具18により筒型筐体11内部に設置されると、ソレノイド15a〜15dのロッド16a〜16dは、筒型筐体11内部から外周に向かって、90度ずつずれて開口孔11aから突出する。
【0015】
筒型筐体11底部11bには、橋脚19を介してドライバ基板20が取り付けられる。ドライバ基板20は、方向伝達装置10全体を制御するマイクロコンピュータ等からなる制御部21を有する。ドライバ基板20は、導線22(図3参照)により方向伝達装置10外部と接続される。また、筒型筐体11上蓋11cには、方向伝達装置10の使用状態を検出する加速度センサ23(図3参照)が取り付けられる。スイッチ14、ソレノイド15a〜15d及び加速度センサ23とドライバ基板20とは、図示しないリード線により接続される。なお、筒型筐体11は、例えば手で握れる程度の大きさであることが好ましい。
【0016】
以下、各部の詳細について説明する。
【0017】
方向伝達装置10は、筒型筐体11内部に、90度ごとに配置した4つのソレノイド15a〜15dを備える。ソレノイド15a〜15dは、筒型筐体11の該当方向の壁を、ロッド16a〜16dにより叩いて振動させ衝撃を与える。ユーザは方向伝達装置10を把持しており、振動・衝撃を受けた側を情報として感知する。以上が基本的な考え方である。しかし本発明者らの実験等によれば、単に四方の壁に振動を与えるだけでは十分な情報を与えることができないことが判明した。
【0018】
図4は、試作品の方向伝達装置30の構成を示す図である。図1乃至図3と同一構成部分には同一符号を付している。
【0019】
図4に示すように、方向伝達装置30は、樹脂等により形成された名刺ほどの大きさの矩形の筐体31を有する。筐体31内部には、互いに90度ごとずらした4つのソレノイド15a〜15dが固定される。ソレノイド15a〜15dのロッド16a〜16dは、筐体31内部から外方に向かい、内壁に貼り付けられた弾力性シート12に当接可能である。
【0020】
上記試作品の方向伝達装置30は、下記の点で改良の余地があった。
【0021】
(1)筐体形状
ユーザは、名刺ほどの大きさ筐体31を手で把持する。図4の場合、ユーザは幅の狭い側を掌で掴んで握る。このため、筐体31の長尺方向の端部は、手からはみ出すことになる。ソレノイド15b,15dのロッド16b,16d方向が、手からはみ出した部分となる。はみ出した部分については、皮膚に方向伝達のための刺激が伝わらない。そこで、本実施の形態の方向伝達装置10は、方向伝達がどの方向についても手に伝わるように、手に収まりやすい円柱形状の筒型筐体11とした。円柱形状の場合、直径が約30mm程が適当である。筒型筐体11を握った場合、掌及び手指の内側全体に筒型筐体11の外周が接触し、ソレノイド15a〜15dが筒型筐体11の四方の壁面のいずれを振動させても振動を感知することができる。筒型筐体11内部の機構としては、確実な方向伝達を行うために局所的な振動が求められる。本実施の形態では、ソレノイドを使用した。ソレノイドに代えてリニアモータ,偏芯軸受モータであってもよい。
【0022】
なお、筒型筐体11の形状は、円柱形状には限定されず、直方体であってもよい。
【0023】
(2)刺激を与える機構の配置
図4の試作品の方向伝達装置30では、刺激を与える機構(ここではソレノイド15a〜15d)は、同一平面状の2次元配置であった。ソレノイド15a〜15dは、所定の大きさ及びロッド16a〜16d長さを有するため、2次元配置では図4のような配置を採らざるを得ない。これでは、上述したように、手からはみ出した筐体部分に、方向伝達のための刺激が伝わらない。但し、筐体31及びソレノイド15a〜15dが、手に収まる程度に十分な小型であれば、図4の2次元配置の構成も有効である。この場合、筐体31の厚みが少ないため、装置の薄型化に適している。
【0024】
本実施の形態では、図1乃至図3に示すように、刺激を与える機構(ソレノイド15a〜15d)を、筒型筐体11内の高さ方向で3次元配置した。方向伝達装置10を把持した場合、筒型筐体11を手で包み込むような持ち方となるため、掌及び手指で四方向全ての刺激を知覚することができる。刺激を与える機構の3次元配置にすることにより、方向伝達装置10を自然に把持した状態で方向伝達が可能となる。
【0025】
図5は、ソレノイド15a〜15dの取り付け例を説明する図であり、ソレノイド15aを代表して示す。
【0026】
図5に示すように、土台であるプレート17に、固定具18を固定し、固定具18にソレノイド15aを取り付ける。ソレノイド15aが取り付けられたプレート17ごと筒型筐体11内部に固定する。
【0027】
(3)十分な刺激を与える機構
本発明者らは、図4に示す試作品の方向伝達装置30に先立って、ソレノイド15a〜15dのロッド16a〜16dが筐体の四方の壁面を直接叩く構造を試作した。しかし、ソレノイド15a〜15dが筐体の四方の壁面を直接叩く衝撃では、衝撃が周囲の部材で吸収されること、また衝撃が筐体全体に拡散することで、ユーザに十分伝わる刺激とはならないことが判明した。
【0028】
図6及び図7は、刺激を与える機構を説明する図であり、ソレノイド15aを代表して示す。
【0029】
上述したように、ソレノイド15aが筐体の壁面を叩く衝撃では、ユーザに対し十分な刺激にならない。そこで、図6に示すように、筒型筐体11にソレノイド15aのロッド16aが突出する開口孔11aを形成し、ロッド16aが開口孔11aを介して筒型筐体11から飛び出るように取り付けることが考えられる。これにより、ロッド16aの突端が直接皮膚に接触することで、ロッド16aの刺激が減衰されずに皮膚に伝達される。
【0030】
しかし、ロッド16aの突端を直接皮膚に当てる方法では、皮膚に当接する位置が局所的過ぎて、方向伝達装置10の握り方によっては、上記ロッド16aの突端が指の隙間などに位置し、情報伝達ができない可能性がある。本実施の形態では、図7に示すように、ロッド16aの突端を覆うように、筒型筐体11に弾力性シート12を貼り付ける。これにより、筒型筐体11を握った時の指の隙間などを埋めることができ、また弾力性シート12がロッド16aの振動を局所的に拡散するので、刺激箇所と皮膚が多少ずれてもユーザに情報を伝達することができる。さらに、弾力性シート12が貼り付けてあることが刺激箇所の目印となり、ユーザはこの弾力性シート12部分に皮膚を当てることを意識することで、方向伝達を円滑に行う補助的な役割も果たすことになる。
【0031】
なお、図4の試作品の方向伝達装置30においても、ソレノイド15a〜15dのロッド16a〜16dは、筐体31の内壁に貼り付けられた弾力性シート12に当接する。上記方向伝達装置10の場合と同様の効果を得ることができる。
【0032】
次に、方向伝達装置10の使用方法について説明する。
【0033】
図8は、方向伝達装置10のシステム構成を示すブロック図である。図9は、方向伝達装置10の使用方法を説明する図である。
【0034】
図8に示すように、方向伝達装置10は、USB(Universal Serial BUS)などの汎用シリアルケーブルを介して外部制御装置40に接続される。外部制御装置40は、例えばノート型PC(Personal Computer)である。また、体感型ゲーム機器本体に適用して好適である。なお、外部制御装置40は、どのような電子機器であってもよく、方向伝達装置10を接続するインターフェースもどのような規格のものであってもよい。
【0035】
方向伝達デバイス10Aは、図1乃至図3に示す方向伝達装置10から、スイッチ14、加速度センサ23、制御部21及びドライバ基板20等を除く、方向伝達機構である。具体的には、方向伝達デバイス10Aは、筒型筐体11と、筒型筐体11内部に3次元配置された四方向のソレノイド15a〜15dとを主要部とする。
【0036】
方向伝達装置10は、外部制御装置40からの方向伝達情報に従って、制御部21が方向伝達機構10Aを駆動してユーザに方向伝達を行う。例えば、図1に示すように、ユーザが、スイッチ14を親指で押すような位置で筒型筐体11を右手で握っているとする。この状態で、制御部21が筒型筐体11内部のソレノイド15bを駆動すると、そのロッド16bの突端が、筒型筐体11の右の開口孔11aから突出して弾力性シート12に当接し、ユーザはこの衝撃を右手の右側の皮膚で感知して、方向伝達装置10から右方向の情報伝達を受け取る。
【0037】
ユーザは、方向伝達装置10から方向伝達の刺激を受けると、その情報に応じた入力を行う。この入力は、手に把持する筒型筐体11を該当方向に振ることによる。
【0038】
図9(a)に示すように、筒型筐体11上蓋11c(図3参照)には、方向伝達装置10の使用状態を検出する加速度センサ23が取り付けられている。図9(b)矢印に示すように、ユーザは筒型筐体11底部11b(図1参照)を基点として筒型筐体11を該当位置に振る。加速度センサ23は、この動きを、入力として制御部21に送信し、制御部21はユーザからの入力を外部制御装置40に送信する。
【0039】
以上は、ユーザが筒型筐体11を把持した状態で触覚により感知でき、また入力は、同じくユーザが筒型筐体11を把持した状態で必要最小限で、かつ極めて自然な操作感で行うことができる。すなわち、方向伝達装置10は、情報伝達そのものを触覚を利用して行うことができるという特徴を有する。これに加えて、筒型筐体11内に、ユーザの使用状態を検出するセンサ(本実施の形態では、加速度センサ23)を組み込むことで、情報に応じたボタンを押下するなどの方法に比べてより直感的に操作することできる。方向伝達装置10は、ユーザに対して、とても分かり易く情報伝達を行うことができ、かつ直感的な入力が可能になり、情報伝達デバイスとして効果的である。
【0040】
次に、方向伝達装置10を備えるシステムの制御方法について説明する。
【0041】
図10は、図8に示す方向伝達装置10のシステムの制御を示すフローチャートである。図中、Sはフローの各ステップを示す。図8の外部制御装置40は、PCであり、PC上で実行されるソフトウェアにより、方向伝達装置10に対して方向伝達が行われるとともに、方向伝達装置10の加速度センサ23によりPCに対して入力を行う場合を例に採る。PCにより実行されるソフトウェアは、宝探しゲームソフトウェアである。
【0042】
図11は、PCの表示部に表示されるゲームの画面50を示す図である。図10及び図11に示すゲームは、ユーザがキャラクタ51を操作して宝箱52まで到達させるゲームである。図11は、キャラクタ51が宝箱52まで到達したので迷路53の全容が表示されている。ユーザがキャラクタ51を操作して宝箱52を見つけるまでは、図11の表示は行われない。ユーザは、方向伝達装置10の筒型筐体11の手で把持して振動から方向を判断し、判断を元に筒型筐体11を振って宝箱52を見つける。
【0043】
図10に示すように、ステップS11では、ユーザは、宝箱のある方向を尋ねたいとき、方向伝達装置10のスイッチ14を操作する。
【0044】
ステップS12では、制御部21は、スイッチ14が操作された時点のキャラクタ51の現在位置を検出し、宝箱52方向を判断する。
【0045】
ステップS13では、制御部21は、宝箱52方向に対応するソレノイド15a〜15dに対して駆動信号を出力する。制御部21からの信号を受けて、対応するソレノイド15a〜15dが駆動し、ロッド16a〜16dを筒型筐体11内部から開口孔11aを介して突出させ、弾力性シート12を介して筒型筐体11の該当方向を振動させる。
【0046】
ステップS14では、ユーザは、手に把持している筒型筐体11の振動から方向を触覚により知覚し、キャラクタ51を動かしたい方向に筒型筐体11を振る(図9(b)参照)。加速度センサ23は、振られた方向を検知し、制御部21に出力する。
【0047】
ステップS15では、制御部21は、加速度センサ23からの検知信号が所定閾値以上か否かを判別し、検知信号が所定閾値より小さければ、規定以上の動きがないか誤差であると判断して上記ステップS14に戻る。
【0048】
加速度センサ23からの検知信号が所定閾値以上の場合は、ステップS16で制御部21は、PC上のソフトウェアに対して加速度センサ23により検知した方向に対応するシリアル信号を送る。この場合、加速度センサ23により検知した方向(すなわち、ユーザが指示した方向)にキャラクタ51を移動させる信号を送る。
【0049】
ステップS17では、PC上のソフトウェアは、方向伝達装置10からの方向情報を基にゲームの画面50上のキャラクタ51を指示方向に動かし、キャラクタ51が宝箱52に到達したことを判断する。キャラクタ51の移動に伴い、宝箱52に到達した場合は、ゲーム終了と判断して、ステップS18でPC上のソフトウェアは、図11に示す画面50に迷路53の全容を表示して本フローを終了する。この終了画面には、ゲーム達成を祝うメッセージや経過時間などを表示してもよい。
【0050】
上記ステップS17でキャラクタ51が移動しても宝箱52に到達しなかった場合は、PC上のソフトウェアは、制御部21に対して再実行の指示信号を送る(ステップS17のNOからステップS11に戻るフロー参照)。これにより、制御部21は、ユーザによるスイッチ14の操作を待つ(ステップS11参照)。ユーザは、宝箱のある方向を尋ねたいときは、スイッチ14を操作する。
【0051】
図12は、刺激を与える機構に圧電素子を利用した方向伝達装置の構成を示す図である。
【0052】
図12(a)に示すように、方向伝達装置60は、筒型筐体61に、バイモルフ構造のPZT素子を利用してピンを上下する触覚刺激装置62を備える。
【0053】
図12(b)に示すように、触覚刺激装置62は、PZT素子からなる圧電バイモルフ63の上にピン64を配置し、電源65により定格電圧を印加する。バイモルフ構造は、上下のピエゾ板間に導電板を挟んで一体化し、ピエゾ板あるいは導電板のいずれか一方を共通電極、他方をセグメント電極とした構造である。バイモルフ構造の長手方向のアームの長さを十分にとると、ピン64の高さ方向の位置変化を大きくすることができる。
【0054】
触覚刺激装置62は、筒型筐体61内部に設置され、筒型筐体61表面の把持位置には、ピン64が突出する開口孔61aが開口している。方向伝達装置60は、図1乃至図3と同様の制御部(図示略)を備えており、この制御部からの指示に基づき、該当する電源65の電圧を与えることで、圧電バイモルフ63の上にピン64を上下させる。ピン64が上がると、図12(a)に示すように筒型筐体61の開口孔61aから突出し、ユーザはピン64の刺激位置により方向などの情報を感知することができる。
【0055】
圧電バイモルフ63を用いた刺激を与える機構は、応答性が良いため、周波数の高い振動や様々なパターンの刺激をユーザに与えることができる。
【0056】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の方向伝達装置10は、手により把持可能な筒型筐体11と、筒型筐体11内部から外周に向かって上下左右の開口孔11aから突出する位置に3次元配置されるソレノイド15a〜15dと、筒型筐体11の動きを検出する加速度センサ23と、ソレノイド15a〜15d及び加速度センサ23を制御する制御部21とを備える。制御部21は、方向伝達装置10に接続された外部制御装置40からの指示に基づきソレノイド15a〜15dを駆動する。制御部21が筒型筐体11内部のソレノイド15a〜15dを駆動すると、ロッド16a〜16dの突端が、筒型筐体11の右の開口孔11aから突出して弾力性シート12に当接し、ユーザはこの衝撃を掌及び手指で感知して、方向伝達装置10から方向の情報伝達を受け取る。また、筒型筐体11には、加速度センサ23が搭載されている。ユーザは筒型筐体11を振ることで、与えられた刺激に対して直感的に反応することができる。
【0057】
方向伝達装置10は、情報を触覚によってユーザに伝達する。ユーザは、方向伝達装置10から教示される方向情報を、視覚・聴覚ではなく触覚により受け取ることにより、新しい感覚が得られ、さらにそのまま操作を行うことができ、直感的な操作を得ることができる。
【0058】
方向伝達装置10は、触覚により方向伝達を行うため、機器の使用中に画面や音声を確認する必要がなくなる。周囲に雑音がある環境や画面を注視できない状況であっても、ユーザに確実に方向を伝えることができる。
【0059】
本実施の形態の方向伝達装置10は、手に収まる形状であるため、使用中及び携帯する際に身体に負担がかからず、持ち運びをするのに非常に適している。また、方向伝達は、片手であるため、他の箇所は拘束されない利点がある。
【0060】
本実施の形態では、円筒形状の筒型筐体11であるため、把持しやすく方向を認識しやすい。さらに、把持する筒型筐体11を振るだけで、与えられた刺激に対して直感的に反応することができる。すなわち、ユーザに方向などの情報が伝達されると、一連の動きの過程で入力操作に移ることができ、違和感なく、直感的な操作が可能になる。
【0061】
以上の効果に加えて、さらに以下のような効果を期待することができる。
【0062】
ユーザが方向伝達装置10の使用に慣れると、方向指示の刺激が伝達されてからユーザが判断するまでの速度が上がることが確認された。刺激を感じた瞬間に脳が判断する速度は、視覚により眼を画面まで移動させて認識する判断動作、聴覚により耳で音声を聴き取り認識する動作に比べて格段に速く、迅速な方向伝達が可能になる。
【0063】
視覚・聴覚動作が不要で、かつ迅速な方向伝達が可能な本方向伝達装置10は、ゲーム機器の情報出力装置としては勿論のこと、車両のカーナビゲーションシステムに適用して好適である。例えば、刺激を与える機構(図1乃至図3のソレノイド15a〜15d、図12の触覚刺激装置62など)を自動車などのハンドルに組み込み、搭載するナビゲーションシステムと連動させる。これにより、視覚・聴覚動作に依存することなく、迅速な方向伝達を実現することができる。当然のことながら既存の視覚・聴覚による方向伝達と併用してもよく、この場合はより安全性を向上させることができる。
【0064】
また、刺激を与える回数又は間隔を変化させるようにしてもよい。このように制御すれば、より理解し易く効率的な方向伝達が可能になる。一回の刺激の場合、理解できなかったり、判断に迷う場合が考えられるが、皮膚に有効に周波数で振動を繰り返し与えることでより確実な情報伝達が可能になる。
【0065】
刺激を与える回数又は間隔を変える、又は組み合わせて使用することは、伝達すべき情報量を増やすことにもつながる。方向以外の情報を伝達することができ、また、方向であっても、単に方向だけではなく、その方向を維持し続けるなどの情報を伝達することができる。
【0066】
本実施の形態では、方向伝達装置10を、宝探しゲームソフトウェアに適用した場合について説明したが、ナビゲーションシステムなどに適用できることは言うまでもない。例えば、本方向伝達装置10を、現在携帯電話機などで使用されている道案内システムに適用した場合には、目的地を入力した後は、画面の確認をすることなく目的地まで移動することが可能になる。また、方向伝達後のユーザの反応から、間違いや追加する内容(間違っていたら、もう一度方向伝達開始など)を与えることができる。
【0067】
また、図10及び図11に示したように、テレビゲームなどの入出力端末装置として用いて好適である。ゲーム中にユーザに対して方向に関連した情報を与えたい場合、視覚だけではなく、触覚にも訴えることで、より臨場感が増し、その反応に応じた入力操作を直感的な動作で返すことができ、いままでにない斬新な面白さを提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能であり、本発明がこれらに及ぶことは当然である。
【0069】
上記実施の形態では、上下左右の四方向の方向を伝達しているが、同様の構成により、その中間方位を含めて8方位などとしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、方向伝達装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、情報呈示装置、方向伝達デバイス等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る方向伝達装置は、手などの接触呈示対象部位に各種情報を伝達する触覚呈示デバイスに用いて有用である。また、テレビゲームなどの入出力端末装置、自動車のハンドルなどに組み込んでナビゲーションシステムに適用して好適である。
【符号の説明】
【0072】
10,30,60 方向伝達装置
11,61 筒型筐体
11a,61a 開口孔
12 弾力性シート
13 ラバーシート
14 スイッチ
15a〜15d ソレノイド
16a〜16d ロッド
17 プレート
17a 切欠
18 固定具
19 橋脚
20 ドライバ基板
21 制御部
40 外部制御装置
62 触覚刺激装置
63 圧電バイモルフ
64 ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持可能な筐体と、
前記筐体内部に設置され、かつ呈示する方向に応じて前記筐体の外周面に刺激を与える刺激付与機構と、
を備えることを特徴とする方向伝達装置。
【請求項2】
前記筐体の動きを検出する検出部と、
前記刺激付与機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記刺激付与機構の制御後に、前記検出部により検出された動き情報を基に前記刺激付与機構をさらに制御する請求項1記載の方向伝達装置。
【請求項3】
前記刺激付与機構は、複数の刺激部を有し、前記複数の刺激部の刺激の組み合わせにより方向を含む情報を伝達する請求項1記載の方向伝達装置。
【請求項4】
前記筐体は、筒型であり、
前記刺激付与機構は、前記筐体の軸線に対して垂直方向に刺激を与える複数の刺激部を有し、前記複数の刺激部が、方向を含む情報を伝達する請求項1記載の方向伝達装置。
【請求項5】
前記刺激付与機構は、前記筐体の軸線に対して、3次元配列した前記複数の刺激部を有する請求項4記載の方向伝達装置。
【請求項6】
前記筐体は、直方体型であり、
前記刺激付与機構は、前記筐体の面のうち、少なくとも周面に対して垂直方向に刺激を与える複数の刺激部を有し、前記複数の刺激部が、方向を含む情報を伝達する請求項1記載の方向伝達装置。
【請求項7】
前記刺激付与機構は、ソレノイド、モータ、又は圧電素子を用いたピンを駆動して、刺激を与える請求項1記載の方向伝達装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記筐体の外周面に形成された開口孔と、前記開口孔を覆うダンパとを有し、
前記刺激付与機構は、前記開口孔からピンを突出させて前記ダンパを叩いて刺激を与える請求項1記載の方向伝達装置。
【請求項9】
前記刺激付与機構は、前記筐体の外周面の壁面を叩いて刺激を与える請求項1記載の方向伝達装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−198484(P2010−198484A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44606(P2009−44606)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】