説明

方向切換弁

【課題】弁内部が高圧状態になっても軽い力で切換え操作を行える方向切換弁を提供する。
【解決手段】バタフライ型の流体仕切板を有する流体用の方向切換弁において、流体仕切板の弁軸の円周方向に弁軸を中心とする円形の圧力仕切り板を弁軸と直角に設けることにより、流体仕切板の一の側と弁軸を挟んだ他の側にそれぞれ独立した入出力ポート5と圧力バランスポート6A、6Bを有し、一の側の入出力ポート5と他の側の圧力バランスポート6A、6B、及び他の側の入出力ポート5と一の側の圧力バランスポート6A、6Bがそれぞれ独立して通じるための圧力調整孔3を流体仕切板に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の方向切換弁の構造及び切換えに関する。
【背景技術】
【0002】
方向切換弁は、様々な分野で使用されており、使用する用途や物質によって異なるものである。また、流体の圧力や流量によっても、ボール弁やバタフライ弁、パイロット式やロータリ式などその種類は多岐に及んでいる。
【0003】
従来の方向切換弁は、例えば特許文献1に記載されているように、弁本体の中心部分に弁室を有する形状が一般的である。図11に示すように、流入口16方向から流体を通過させる際、弁本体8の内部に高い圧力が掛かり、弁本体8と切換スプール9との接地面(矢印部分)に摩擦抵抗を生むため、その状態で、切換スプール9を回転させるには大きなトルクが必要だった。そのため、一般的には、切換スプール9を回転させる為の別の動力が必要となり、電気系アクチュエータや、流体系アクチュエータを切換モータとして使用している。
【0004】
前記のように切換えには、アクチュエータ等が必要で、電気エネルギの供給配線は不可欠で、水周りの使用では漏電などの恐れがある。また、手動方向切換弁では、重い切換え操作を行うため、梃の原理を使った長い切換えハンドルが備え付けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2667450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、従来の方向切換弁は流入口16から流体を進入させた際、切換スプール9に流体の圧力が加わり、弁本体8と切換スプール9との間に強い摩擦抵抗が発生し、スムーズな切換えが行えなかった。その状態で流体の切換作業を行うためには、更に強い力で切換スプール9を回転させる必要があった。そこで、この発明は、弁内部が高圧状態になっても軽い力で切換え操作を行える方向切換弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1は、バタフライ型の流体仕切板18を有する流体用の方向切換弁において、流体仕切板18の弁軸の円周方向に弁軸を中心とする円盤型の圧力仕切板19を弁軸と直角に設けることにより、流体仕切板18の一の側と前記弁軸を挟んだ他の側にそれぞれ独立した入出力ポート5A、5Bと圧力バランスポート6A、6Bを有し、一の側の入出力ポート5Aと他の側の圧力バランスポート6B、及び他の側の入出力ポート5Bと一の側の圧力バランスポート6Aがそれぞれ独立して通じるための圧力調整孔3を前記流体仕切板16に設けたことを特徴とする方向切換弁に係る。
【0008】
請求項2は、圧力仕切板19を少なくとも2枚有することにより入出力ポート5A、5Bを弁軸の軸方向の中央部に有し、圧力バランスポート6A、6Bを弁軸の軸方向の両端部に有する、請求項1記載の方向切換弁に係る。
【0009】
一の側の入出力ポート5Aの流体仕切板18の受圧面積と他の圧力バランスポート6Bの受圧面積、及び一の側の圧力バランスポート6Aの流体仕切板18の受圧面積と他の側の入出力ポート5Bの流体仕切板18の受圧面積をそれぞれ等しくした。
【0010】
一の弁軸を共有し、弁軸の円周方向に放射状に配置された複数の前記流体仕切板を備えたことを特徴とする。
【0011】
圧力仕切板19を少なくとも2枚有することにより、圧力調整孔3で通じる対となる出力ポート5A、5Bと圧力バランスポート6A、6Bの組合せを、弁軸の軸方向に複数有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1によれば、切換スプール2の流体仕切板18の弁軸から円周方向の中心部分に圧力調整孔3を有することにより、流入配管14側の流体圧力を入出力ポート5A、5Bから、排出配管15側の圧力バランスポート6A、6Bに伝えることにより、切換スプール2の摩擦抵抗が軽減され、軽くスムーズに切換作業が行えるようになった。
【0013】
請求項2によれば、流体仕切板18の弁軸中央部に入出力ポート5A、5Bを有するのに対し、弁軸両端部に圧力バランスポート6A、6Bを有することにより、切換スプール2の傾きが軽減され、圧力仕切板19の偏摩耗が減少した。
【0014】
請求項3によれば、前述した入出力ポート5の流体仕切板18の受圧面積とそれぞれ対となる圧力バランスポート6A、6Bの受圧面積等しくすることによって、更に流入配管14側と排出配管15側の圧力が近くなり、摩擦抵抗と切換スプール2の傾きが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 この発明の一実施形態を示す正面斜視図である。
【図2】 正面図である。
【図3】 上面図である。
【図4】 切換スプールの45度回転図である。
【図5】 A−A断面図 方向切換弁の流路図である。
【図6】 B−B断面図
【図7】 C−C断面図
【図8】 D−D断面図(流体圧力ポートを示す。)
【図9】 圧力作用解説図
【図10】 他の実施形態(三方弁)流路図である。
【図11】 従来技術(四方弁)を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る方向切換弁の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1、図2、図3はこの発明の全体の外観図で円筒状の弁シリンダ1(弁本体)には、対角線上に流入配管14、排出配管15などが45度の間隔で4つ設けられている。
【0017】
円筒形の弁シリンダ1(弁本体)の底には弁底板13と、上部には弁上蓋12が備えられ、内部に切換スプール2を嵌め込む形状となっている。弁上蓋12中央部分には穴が開いており、リング状となった部分からスプール軸4が突出し、切換レバー7が結合されている。それぞれの結合部分には公知のパッキンを設けることにより、漏れ防止の措置を施している。
【0018】
この発明の一実施形態では、弁シリンダ1(弁本体)の形状を円筒形としているが、本発明の圧力調整作用を得られるのであれば、球形、樽型でもよい。
【0019】
一方、切換スプール2とは図4(a)(b)(c)(d)に示す通り、例えるなら弁シリンダ1(弁本体)の内部を入力側と出力側に分けるバタフライ式の流体仕切板18が垂直に備えられているのに対し、円盤型の圧力仕切板19を直角に有する形状となっている。この円盤型の圧力仕切板19は、4枚の組み合わせによって、入力側、出力側にそれぞれ3室ずつ作ることとなり、弁シリンダ1(弁本体)内部には、合計6個の圧力室を形成させている。
【0020】
図6、図7、図8に示すように切換スプール2の入出力ポート5A、5Bには、圧力調整孔3が穴加工されており、切換スプール2の中心から二手に枝分かれし、圧力バランスポート6A、6Bに貫通している。
【0021】
この弁シリンダ1(弁本体)と切換えスプール2は、使用する流体によって異なる材質を使用することができる。例えば、一般的に水の方向切換えに使用するのであればステンレスの材質番号304番を使用することができる。その場合、弁シリンダ1と切換えスプール2が溶着しないよう異なった番手を使用することが望ましい。また、流体の圧力によっても材質を変えることができる。一般的な水道圧程度であれば、塩化ビニル樹脂等を使用したとしても十分使用可能である。
【0022】
今回使用した切換スプール2は、圧力調整孔3を穴加工したため、丸い形状の穴となっているが、流体の圧力を圧力バランスポート6A、6Bに伝えるという目的を果たせるのであれば、四角形でも三角形でも、穴の形状は特に拘らない。
【0023】
また、圧力調整孔3の径については、切換スプール2本体の軸の厚さを考慮して最適な大きさにする必要はあるが、パスカルの原理に従えば、特に穴の大きさには拘らない。しかし、大き過ぎれば切換スプール自体の耐久性が落ち、小さ過ぎればその分、流量が減ることとなり圧力バランスポート6A、6Bに流体圧力が溜まるまでに時間が掛かり過ぎるのである。従って、今回の実施形態では、最初に縦の穴加工を10ミリのバイパス穴としてあけ、その寸法と同等の横穴を加工した。縦穴にはタップ穴加工し、六角穴付止ネジにて漏れ防止の措置を施してある。
【0024】
更に、圧力バランスポート6A、6Bに流された流体が切換スプール2を傾けることなく圧力を伝えられるために、入出力ポート5A、5Bの約2分の1の容積となるようにそれぞれの圧力バランスポート6A、6Bに圧力仕切板18が設けられている。
【0025】
図9は、図6の切換スプール2の位置での圧力作用を示す図である。この構造によって、図9の矢印部に示す通り、入出力ポート5Aに進入した流体は、圧力調整孔3を通過し、弁軸方向の両端に位置する圧力バランスポート6Bで受けることによって、切換スプール2本体を入力側に戻す力を得るものである。
【0026】
圧力調整孔3は切換スプール2の裏表両面2か所に設けられており、切換え面のどちら側であっても同じ効果が得られるようになっている。また、この一実施形態では、切換スプール2の内部に穴加工をしているが、他の実施形態では、例えば流体仕切板18の一部を貫通させ管を沿わせるようにしてもよい。そうすることによって流体仕切板18の薄肉化により弁自体の小型化が図れる。その他の方法では、入出力ポート5A、5Bから直接ドリルなどを使って圧力バランスポート6A、6Bまで直線の穴加工をしてもよい。
【0027】
一般的な方向切換弁の用途では、冷暖房、水、油、薬品等の液体に使用すること多いが、この方向切換弁も、弁シリンダ1、切換スプール2、パッキンの材質を変えることによって、酸類などの危険物や気体など、様々な流体に使用することができる。
【0028】
一の側の入出力ポート5Aの流体仕切板18に作用する流体圧力と、他の側の圧力バランスポート6Bの流体仕切板18に作用する流体圧力、及び一の側の圧力バランスポート6Aの流体仕切板に作用する流体圧力と、他の側の入出力ポート5Bの流体仕切板に作用する流体圧力がそれぞれ等しくなるように入出力ポート5A、5Bと圧力バランスポート6A、6Bの大きさを定めている。
【0029】
この発明によれば、入出力ポート5A、5Bで受けた圧力をそのまま排出側の圧力バランスポート6A、6Bに伝えるため、高圧状態となった方向切換弁内部の圧力が均一となり、従来摩擦抵抗により強い力が必要だった切換え操作が、軽くスムーズに行え、高圧弁としての使用も可能である。
【0030】
本発明の実施形態では図5の流路に対して効果的であるが、他の実施形態では図10に示すように、流入側の入出力ポート5A、5Bと同等の受圧面積の圧力バランスポート6A、6Bを排出側に設けることにより、多彩な方向切換や流体経路を有する方向切換弁を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 弁シリンダ(弁本体)
2 切換スプール
3 圧力調整孔
4 スプール軸
5 入出力ポートA、B
6 圧力バランスポートA、B
7 切換レバー
8 従来技術の弁本体
9 従来技術の切換スプール
10 流入口
11 排出口
12 弁上蓋
13 弁底板
14 流入配管
15 排出配管
16 従来技術の流入口
17 従来技術の排出口
18 流体仕切板
19 圧力仕切板
20 方向切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バタフライ型の流体仕切板(18)を有する流体用の方向切換弁において、
切換スプール(2)に備えられた前記流体仕切板(18)の弁軸の円周方向に前記弁軸を中心とする円盤型の圧力仕切板(19)を前記弁軸と直角に設けることにより、前記流体仕切板(18)の一の側と前記弁軸を挟んだ他の側にそれぞれ独立した入出力ポート(5A、5B)と圧力バランスポート(6A、6B)を有し、
一の側の入出力ポート(5A)と他の側の圧力バランスポート(6B)、及び他の側の入出力ポート(5B)と一の側の圧力バランスポート(6A)がそれぞれ独立して通じるための圧力調整孔(3)を前記流体仕切板(18)に設けたことを特徴とする方向切換弁。
【請求項2】
前記の圧力仕切板(19)を少なくとも2枚有することにより前記入出力ポート(5A、5B)を前記弁軸の軸方向の中央部に有し、前記圧力バランスポート(6A、6B)を前記弁軸の軸方向の両端部に有する、請求項1記載の方向切換弁。
【請求項3】
前記一の側の入出力ポート(5A)の流体仕切板(18)の受圧面積と前記他の圧力バランスポート(6B)の受圧面積、及び前記一の側の圧力バランスポート(6A)の流体仕切板(18)の受圧面積と前記他の側の入出力ポート(5B)の流体仕切板18の受圧面積をそれぞれ等しくした、
請求項1または2のいずれか1項に記載の方向切換弁。
【請求項4】
前記弁軸を共有し、前記弁軸の円周方向に放射状に配置された複数の前記流体仕切板(18)を有する請求項1ないし3に記載の方向切換弁。
【請求項5】
前記圧力仕切板(19)を少なくとも2枚有することにより、前記圧力調整孔(3)で通じる対となる前記入出力ポート(5A、5B)と前記圧力バランスポート(6A、6B)の組合せを、前記弁軸の軸方向に複数有する請求項1ないし4に記載の方向切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−252596(P2011−252596A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137700(P2010−137700)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(510168416)株式会社ロコテック (1)
【Fターム(参考)】