説明

施工誤差を吸収できる壁下地の構造

【課題】 構造部の施工誤差やゆがみを壁下地や壁構成材に反映せずに壁を構成する。
【解決手段】 柱や耐力壁などの構造部より壁の厚さ方向の部材寸法が大きい部材により壁下地を構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁下地の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の構造では、外壁や間仕切壁などの壁を構成する場合には、まず、壁の骨組となる壁下地を構成し、その上に外装材や合板、せっこうボード、壁仕上げ材、断熱材などの壁構成材を取付けて壁を構成している。
この時、壁下地の部材としては、構造部と壁の厚さ方向の部材寸法が同じまたは小さい部材寸法の部材が用いられている。
【0003】
構造部の施工誤差やゆがみは、設計の際に構造耐力上支障のないものとしてその範囲が定められており、構造部はそれを遵守して施工されている。
しかし、壁構成材の中には、壁紙などのように薄い材料が多く、それらの材料は、わずかな施工誤差やゆがみであっても段差が明確になってしまうなど、施工誤差やゆがみの影響を大きく受ける。
【0004】
(1)主に木造の建築物などで見られるように構造部と壁の厚さ方向の部材寸法が同じ部材を用いて壁下地を構成する場合には、壁構成材を取付けた際に壁構成材に段差や浮きが生じないよう構造部と壁下地の壁構成材を取付ける面を同一の面とする必要がある。
このため、構造部に施工誤差やゆがみが生じている場合には、構造部に合わせて壁下地を構成すると構造部の施工誤差やゆがみが壁下地や壁構成材に反映されてしまう。
これらを回避するため構造部の施工誤差やゆがみを無くすよう構造部の調整が行われるが、構造部は上部の荷重を負担することや建物全体に連動していることから施工誤差やゆがみが生じやすく、それらを調整する事も難しい。
また、別の回避方法として部材を追加する方法が取られる。構造部の施工誤差から生じた構造部と壁下地の段差や傾きなどを調整または避けるため別個の部材を追加して取付ける。このため、部材点数の増加や工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどの欠点が生じている。
さらには、取付ける壁構成材を削る、切り欠くなどの方法も行われているが、品質の劣化はもちろんのこと、工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどの欠点も生じている。
また、床と壁の接合部や屋根と壁の接合部などの構造部と構造部が接合される箇所では構造部の施工誤差やゆがみが生じやすくなる上、複数の構造部とそれに付随する壁下地の壁構成材を取付ける面を同一面とする事が必要となる。さらには、構造部と構造部の接合のために必要なボルトやダイヤフラムなどの部材が構造部から突出することも多く見られる。
このため、より厳しく高度な構造部の施工誤差やゆがみの管理、調整が必要となる。また、上記のように段差や傾きを調整する部材を追加する、取付ける壁構成材を削る、切り欠くなどの対応を行う場合にもより多くの追加部材や調整箇所が生じ、品質の劣化、工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどの欠点が生じやすくなる。
【0005】
(2)主に鉄骨造などで見られるように構造部より壁の厚さ方向に小さい部材寸法の部材を用いて壁下地を構成する場合では、構造部と壁下地に段差が生じたまま壁構成材を取付ける場合と段差が生じないように壁下地を構成し壁構成材を取付けていく場合とがある。
構造部と壁下地に段差が生じたまま壁構成材を取付ける場合では、構造部の外形がそのまま露出する事になる。このため、意匠性が損なわれる、仕上げ面の増加による工種や工程の煩雑さ、設備・家具などを配置した時にデッドスペースが生じやすいなどの欠点がある。
段差が生じないよう壁下地を構成し壁構成材を取付けていく場合では、壁下地の部材を構造部の両側の面に配置する必要があり、部材点数の増加や工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどの欠点がある。
また、外壁の場合には構造部の施工誤差やゆがみの影響の他、上記(1)の構造部と構造部が接合される箇所での部材の突出などを避けるため、壁下地を構造部の屋外側に構造部から離して構成する事が多い。
この場合、壁下地が構造部から離れて構成されるため、施工誤差やゆがみ、部材の突出を避ける事は可能である。しかし、壁下地を構造部から離すための金物が必要になることや屋内側の壁構成材を取付けるために屋外側の壁下地とは別個に壁下地を構成する必要が生じることなど、部材の増加、工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどの欠点が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、上記(1)のように構造部の施工誤差やゆがみが壁下地や壁構成材に反映されてしまう点である。
【0007】
また、上記(1)及び上記(2)のような構造部の施工誤差やゆがみ、構造部からの部材の突出を壁下地や壁構成材に反映させないために生じる部材点数の増加や工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さ、壁構成材の品質の劣化なども問題点の1つである。
【0008】
さらに、上記(2)のような構造部の外形の露出により意匠性が損なわれる、仕上げ面の増加による工種や工程の煩雑さ、設備・家具などを配置した時にデッドスペースが生じやすいなどの点も挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、柱や耐力壁などの構造部より壁の厚さ方向の部材寸法が大きい部材により壁下地を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
構造部より壁の厚さ方向の部材寸法が大きい部材を用いることによって、壁下地の壁構成材を取付ける面が構造部から離れた位置となる。
このため、構造部に施工誤差やゆがみが生じている場合においても構造部に干渉されることがなく、施工誤差やゆがみを反映することなく壁構成材を取付ける事が可能となる。
このことにより、構造部の施工誤差から生じた構造部と壁下地の段差や傾きなどを調整または避けるため別個の部材を追加して取付ける必要がなく、部材点数の増加や工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどを抑える事が可能となる。
また、構造部と壁下地が離されることによって、施工精度の管理を構造部と壁下地とで別個に行う事が可能となり、施工精度の管理が明確かつ容易になる。
特に上記(1)のような構造部と構造部が接合されるような箇所では、複数の構造部とそれに付随する壁下地とを調整する事が必要であったが、構造部の施工誤差やゆがみが生じている場合でも、壁下地の壁構成材が取り付く面のみを同一面とすることで壁構成材を段差や浮きを生じることなく取付ける事が可能となる。
【0011】
さらには、構造部より壁の厚さ方向の部材寸法が大きい部材を用いているため、単一の部材を取付けていく事で構造部の両側に壁下地が構成されるため、上記(2)のように屋外と屋内の両側にそれぞれ別個に壁下地を構成する必要がなく、部材点数の増加や工種、工程の増加による工期や費用の増大、施工精度管理の煩雑さなどを抑える事が可能となる。
別の効果として、柱や耐力壁などを包含した形で壁が構成されるため、上記(2)の場合のように構造部の外形が露出することがなく、意匠性が損なわれる、仕上げ面の増加による工種や工程の煩雑さ、設備・家具などを配置した時にデッドスペースが生じやすいなどの欠点を解消することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記(1)、(2)のように壁を構成する際に生じる欠点を、最も簡易なかたちかつ最小の部材点数により解消することを可能とした。
【実施例】
【0013】
図1、図2は、本発明の1実施例の水平断面図であって、1は柱や耐力壁などの構造部、2は壁下地材、3は外装材などの屋外側の壁構成材、4はせっこうボードなどの屋内側の壁構成材である。
また、図3、図4は、本発明の1実施例の鉛直断面図であって、1aは上階の壁部の構造部、1bは下階の壁部の構造部、1cは床部の構造部、2は壁下地材、3は外装材などの屋外側の壁構成材、4はせっこうボードなどの屋内側の壁構成材である。
【0014】
図1、図2は1に施工誤差が生じた状態を表している。
図1では1が壁の中心線から傾いた状態となっており、図2では複数の1が配置されているが、1が壁の中心線からずれた位置に配置されている。
【0015】
図1、図2ともに1より壁の厚さ方向に大きな部材寸法の2を用いているため、1の施工誤差やゆがみに影響されず、3および4を取付ける面を同一面としつつ2を所定の位置に簡便に配置する事ができる。
2が所定の位置に正確に配置されているため3、4も所定の位置に施工する事が容易に可能である。
【0016】
図3、図4は1に施工誤差が生じた状態を表している。
図3では1a、1bに傾きが生じた状態を表しており、図4では1aと1c、1bと1cにそれぞれ段差が生じた状態を表している。
【0017】
図3、図4ともに、1a、1bより壁の厚さ方向に大きな部材寸法の2を用いているため、1の施工誤差やゆがみに影響されず、3および4を取付ける面を同一面としつつ2を所定の位置に簡便に配置する事ができる。
2が所定の位置に正確に配置されているため3、4も所定の位置に施工する事が容易に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明における壁下地の材質は、木製、鉄製、アルミニウム製など多様な材質によって利用する事が可能であり、構造部の材質や工法にとらわれず適宜採用する事が可能である。
また、構造部と壁下地の材質の組み合わせに関しても、鉄骨の構造部と木造の壁下地など様々な組み合わせが可能で、取付け方法や使用状況など考慮し適宜採用する事が可能である。
【0019】
また、本発明における壁下地の部材形状は、角型、C型、H型など様々な形状により利用する事ができ、壁構成材の取付けの状況などを考慮した特殊な形状から、一般的に流通している形状のものなど幅広く採用する事が可能である。
【0020】
さらに、本発明における壁下地の部材寸法は、構造部の施工誤差の許容範囲や取付け箇所の状況などを考慮し、適宜採用する事が可能である。
【0021】
本発明における壁下地の部材の取付け方法は、その材質や部材形状、部材寸法、構造部の状況などに応じて適宜採用する事が可能である。
【0022】
本発明における壁下地の部材の取付け方向は、基本的に縦又は横となるが、取付ける壁構成材の仕様や構造部の状況などに応じて適宜採用する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施方法を示した説明図である。
【図2】本発明の実施方法を示した説明図である。
【図3】本発明の実施方法を示した説明図である。
【図4】本発明の実施方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 構造部
1a 構造部(上階の壁部)
1b 構造部(下階の壁部)
1c 構造部(床部)
2 壁下地
3 屋外側の壁構成材
4 屋内側の壁構成材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱や耐力壁などの構造部より壁の厚さ方向の部材寸法が大きい部材を用いて構成することを特徴とする壁下地の構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−197566(P2009−197566A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72369(P2008−72369)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(500338779)アメリカンシルバーウッド株式会社 (5)
【Fターム(参考)】