説明

施療子及びそれを用いたマッサージ器

【課題】小型軽量且つ取り扱いが容易であって、人の肌を微小力で押圧することが可能な施療子及びそれを用いたマッサージ器を提供する。
【解決手段】電磁石5と、その電磁石5の励磁を制御する制御部6と、前記電磁石5により磁界を付与される磁性流体4が可撓性の袋状体3に封入されたパッド2とにより施療子1を構成した。この施療子1においては、電磁石5の励磁が断続的に行われることにより、パッド2の少なくとも一部が、膨出することと膨出前の形状への復帰との間で形状変化を繰り返すようになっている。この膨出により肌をマッサージする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の肌を押圧する施療子及びその施療子を用いたマッサージ器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指を用いた按摩や指圧に替わって、人体をマッサージするために様々な種類の機械・器具が用いられている。
特許文献1に開示されているエアマッサージ器は、把持部を有するマッサージ器本体の一対の搖動リングのそれぞれの端部に揉み玉が設けられている。その対向した揉み玉の間に体の一部を挟み、挟み揉みをするようになっている。
【0003】
特許文献2に開示されている足用エアマッサージ器は、複数の空気室が内装されたカフ帯を足の施療部位に装着して、足をマッサージするようになっている。この複数の空気室は、それぞれが膨張と収縮とからなるマッサージ動作を制御されるようになっている。
【0004】
特許文献3に開示されている施療子は、その内部に充填された磁気粘性流体を励磁することによる粘性の高まりを利用して、施療子が人体の施療部位を押圧するときの揉み状態を、しっかり揉みと柔らか揉みとの二種類の揉み状態とし得るようになっている。
【特許文献1】特開2000−79148号公報([要約]を参照)
【特許文献2】特開2000−254187号公報([要約]を参照)
【特許文献3】特開2004−141568号公報([要約]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1〜3に開示されているマッサージ器は、人体の緊張した部位等を揉み解すことを目的としており、美容のために人の肌を微小力で押圧するマッサージ器として転用することが難しい。特に女性の顔の肌をマッサージする器具としては、小型軽量且つ取り扱いが容易であって、作動音等が耳障りでないものが求められている。その点でも、特許文献1及び2のように、エアー圧を用いているものは、エアーポンプを駆動するモーターの音や排気音等が騒音として感じられるので好ましいものではない。
【0006】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、小型軽量且つ取り扱いが容易であって、人の肌を微小力で押圧することが可能な施療子及びそれを用いたマッサージ器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために請求項1に記載の施療子の発明は、電磁石と、その電磁石の励磁を制御する制御装置と、前記電磁石により磁界を付与される磁性流体が可撓性の袋状体に封入されたパッドとにより形成された施療子であって、前記電磁石の励磁が断続的に行われることにより、前記パッドの少なくとも一部が膨出と膨出前の形状への復帰との間で形状変化を繰り返すことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の施療子において、前記磁性流体は、表面に界面活性剤を吸着させた強磁性の微粒子を溶媒中に分散させたコロイド溶液であって、前記微粒子の直径が1〜10nmであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の施療子において、前記袋状体の少なくとも人体に接する面が合成樹脂製シートで形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の施療子において、前記合成樹脂製シートは、表面側から順に合成樹脂製の発泡体シートと非発泡体シートとが積層された積層体であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載のマッサージ器の発明は、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の施療子を支持体に複数配置し、前記施療子のそれぞれの励磁が個別に制御される制御回路を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のマッサージ器において、前記支持体がフェイスマスクであることを特徴とするものである。
(作用)
本発明の施療子においては、可撓性の袋状体に磁性流体が封入されたパッドに対して電磁石を用いて磁界を付与すれば、袋状体内の磁性流体が、磁力が作用する部分に引き寄せられる挙動を示して、パッドの一部が膨出する。そして、その膨出が、パッドが人の肌に接した状態で発現すれば、その膨出部分により、肌を微小力で押圧することができる。更に、パッドに対する磁界の付与を断続的に行えば、指先で軽くタッチするような心地よい刺激を肌に繰り返し与えることができる。
【0013】
また、複数の施療子を支持体に配置して、それぞれの作動を個別に制御できるようにしたマッサージ器においては、隣り合うパッドが交互に膨出を行うようにしたり、複数並置されたパッドの膨出を端のパッドから順に行うようにしたりすることができる。前者のように交互に膨出するようにすれば、その膨出力が微小なものであっても、肌は敏感に反応することができる。そして、後者のように、並置されたパッドが順番に膨出されれば、肌に微小力でタッチした状態で指先を移動する場合と同様に、膨出が順番に行われる方向に優しく摩るようなマッサージを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可撓性の袋状体に磁性流体が封入されたパッドに対して磁界を付与して、パッドの一部が膨出するようにしたので、小型軽量且つ取り扱いが容易であって、人の肌を微小力で押圧することが可能な施療子及びそれを用いたマッサージ器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した施療子1の実施形態を図1を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の施療子1は、電磁石5と、電磁石5の上面に接して配置されて袋状体3に磁性流体4が封入されたパッド2と、電磁石5の励磁を制御する制御装置としての制御部6と、制御部6に電気を供給する電源7とより構成されている。袋状体3は、十分に可撓性がある合成樹脂製シートの表面材3aと、裏面材3bとにより形成されている。
【0016】
図1において、二点鎖線で示すパッド2は、電磁石5が励磁されず、従って、磁性流体4が磁界の影響を受けずに袋状体3の自然状態の形状に維持されている。また、実線で示す膨出状パッド2aは、パッド2が電磁石5により磁界を付与されて一方向へ膨出した状態を示している。即ち、磁界を付与されたパッド2においては、袋状体3の内部の磁性流体4が、変形自在な磁性体のように磁力に引き寄せられて、磁力の強い部分に集合する。すると、袋状体3を形成する表面材3aが、一ヶ所に寄せ集められて盛り上がった磁性流体4の圧力を受けて容易に変形し、パッド2の一部が盛り上がって膨出状パッド2aを形成する。この、自然状態のパッド2の形状から、磁界を付与されて膨出状パッド2aの形状に変化したときの高さの差の分が、パッド2が宛がわれた肌に押圧力を与えることになる。
【0017】
なお、この袋状体3の基本形状(図1の2点鎖線の部分)が例えば6面体の場合、表面材3aは、その6面体のうちの人の肌を指向する1面のみを指すのではなく、電磁石5に接する裏面材3bの1面を除く5面のことを指している。このように、本実施形態では、明確な形状的区別ではなく、パッド2が変形したときに人の肌に接する可能性がある部分を表面材3aとしている。
【0018】
制御部6は、リチウムイオン電池等の電源7から電磁石5に対する通電を制御するためのもので、例えば、電磁石5の励磁を、例えば数回/秒のサイクルで繰り返し行うように制御するようになっている。電源7としては、その他の電池、或いは二次電池や家庭用の電源を用いることも可能である。
【0019】
ここで、本実施形態のパッド2を構成する各部位に好適に用いられる材質等について説明する。
磁性流体4は、表面に界面活性剤を吸着させた強磁性であり、直径が1〜30nmの微粒子を溶媒中に分散させたコロイド溶液である。微粒子としては、Fe、Ni、Co等の磁性金属微粒子、マグネタイト及びその他の各種フェライト等の微粒子を用いることができる。溶媒としては、水、炭化水素系オイル、フッ素系オイル等を用いることができる。
【0020】
本実施形態の袋状体3は、合成樹脂製シートの表面材3aと裏面材3bとを図示しない接合部で接合して袋状に形成されている。表面材3aは、表面側から、微小気泡を有するNBR(ニトリルブタジエンラバー)ラテックスの発泡体シートと、NBR製非発泡体シートとが順に積層された積層体である。裏面材3bは、同じくNBR製非発泡体シートが用いられ、不織布等で補強されている。このような構成のパッド2は、表面に微小気泡を有する発泡体が配置されているので、人の肌に対する柔らかなフィット感があるものとなる。なお、表面材3aは必ずしも上記積層体である必要はなく、また、NBRに限らない。表面材3a又は裏面材3bとしては、NBR以外のシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム系エラストマー、或いは、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマーのシートを用いることができる。
【0021】
次に図2〜4を用いて、本発明を具体化したマッサージ器10の実施形態を説明する。図3及び図4は、顔の形に近似した形状のフェイスマスク11状としたマッサージ器10及びその使用状態を示す。なお、図3におけるA矢視の部分を模式的に示したものが図2である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態のマッサージ器10は、支持体8に複数(本実施形態の場合は4個)のパッド2が配置されている。そして、それぞれのパッド2に磁界を付与する電磁石5の励磁を集中的に制御するための制御回路9が設けられ、電源7から電力を得ている。
【0023】
そして、図2における支持体8としてのPE(ポリエチレン)製シートの成形体を、顔の形に近似して形成したフェイスマスク11には、マッサージに要する所定時間、顔に装着することが可能なように、両目の位置に合わせた一対の開口部12、鼻の位置に合わせた開口部13及び口の位置に合わせた開口部14が設けられている。そして、本実施形態の場合、額に対応する位置に3個のパッド2が配置され、左右の目じりの外側に対応する位置にそれぞれ1個のパッド2が配置され、左右の頬に対応する位置にそれぞれ3個のパッド2が配置されている。このように、複数のパッド2が所定位置に配置されたマッサージ器10を用いることにより、顔の肌に対する微小力タッチによる様々なパターンのマッサージが可能となるので、特に女性の肌の若返りや皺の除去又は減少を目的とするマッサージ器10を得ることができる。
【0024】
図4に示すように、フェイスマスク11には、フェイスマスク11を頭部17に装着することが可能なようにバンド16が取り付けられ、そのバンド16には制御ユニット15が設置されている。この制御ユニット15内には、電源7及び制御回路9が組み込まれ、図示しない配線を介して各パッド2とフェイスマスク11との間に支持される電磁石5の励磁が制御されるようになっている。
【0025】
即ち、図2は、人体に対するマッサージの一つの方法を示している。複数のパッド2は、磁界が付与されずに自然状態の形状を保っているパッド2と、磁界が付与されて一部が膨出状態となっている膨出状パッド2aとが図2の右側から順に交互に配置されている。そして、所要時間が経過後、制御回路9により制御されて、パッド2が膨出状パッド2aに形状変化し、膨出状パッド2aがパッド2の形状に復帰するようになっている。こうすることで、パッド2の形状から膨出状パッド2aの形状に変化したとき、その高さの差の分の押圧力が小さなものであっても、その交互に与えられる押圧力が、心地よい刺激として肌において敏感に感じることができる。
【0026】
また、図示しないが、複数のパッド2の膨出状パッド2aへの変化を、例えば、並置されたパッド2の端から順に適宜間隔で行うようにすれば、肌に指先を微小力でタッチした状態でその指先を移動する場合と同様に、端から順に優しく摩るようなマッサージを行うことができる。
【0027】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、磁性流体4が封入されたパッド2に対して電磁石5による励磁を断続的に行えるようにした。そのため、磁力に引き寄せられた磁性流体4が盛り上がることにより、パッド2の一部が膨出して膨出状パッド2aの形状になったり、磁界が付与されずにその膨出状パッド2aが膨出前のパッド2の形状に復帰したりする。すると、膨出前後のパッド2と膨出状パッド2aとの高さの差により押圧力とその解除が連続するので、指先で軽くタッチするような心地よい刺激を肌に繰り返し与えることが可能な施療子1を提供できる。
【0028】
(2)上記実施形態では、磁性流体4を、表面に界面活性剤が吸着された強磁性の微粒子を溶媒中に分散させたコロイド溶液とし、その微粒子の直径が1〜30nmであるようにした。そのため、磁性流体4が封入されたパッド2に磁界を付与すると、磁性流体4が変形自在な磁性体のように、磁力に引き寄せられて盛り上がったり、元の状態に復帰したりして、パッド2と膨出状パッド2aとの高さの差による押圧力を生じることができるので、その押圧力を利用してマッサージをすることができる。
【0029】
(3)上記実施形態では、NBRラテックスの発泡体シート及びNBR製非発泡体シートが積層された表面材3aとNBR製非発泡体シートを不織布で補強した裏面材3bとで袋状体3を形成した。そのため、袋状体3の内部に磁性流体4を封入したとき、NBR製非発泡体シートは、磁力により磁性流体4が盛り上がることを許容する柔軟性を発現する。また、NBRラテックスの発泡体シートが肌に触れるので、表面材3aは肌触りが微妙なクッション性を感じられるものとなる。従って、磁性流体4が袋状体3に封入されて形成されたパッド2を用いることにより、肌に優しくフィットする施療子1を提供できる。
【0030】
(4)上記実施形態では、支持体8に複数の施療子1を配置してマッサージ器10を形成した。そのため、それぞれの施療子1のパッド2に磁界を付与して膨出状パッド2aとする際、隣同士の施療子1において交互に膨出状パッド2aとなるように励磁を制御したり、並置された施療子1において、一方の端から順にパッド2から膨出状パッド2aへの形状変化が起きるように励磁を制御したりすることができる。従って、膨出状パッド2aの押圧力による様々なパターンのマッサージが可能なマッサージ器10を提供できる。
【0031】
(5)上記実施形態では、支持体8を、合成樹脂製板状体をPEの成形体としたので、人体の各部位に沿わせる形状にすることが可能となる。
(6)上記実施形態では、支持体8を顔に沿わせることが可能なフェイスマスク11として、バンド16により頭部17に装着することができるようにした。そのため、マッサージ器10を用いる人は、両手が自由な状態で様々な姿勢をとり得る。従って、取り扱いに優れた美顔用のマッサージ器10を提供できる。
【0032】
なお、本実施形態の支持体8は、合成樹脂製板状体や織物からなる帯状体等、様々な形態とすることができる。合成樹脂製板状体として、例えば、PEの成形体とすれば、人体の各部位に沿わせることが可能な形状の支持体8とすることができる。また、支持体8を、ポリエステル繊維等の合成樹脂製繊維の織物や木綿製の織物等からなる帯状体とした場合、足や腕に巻きつけることができる。具体的には、脚半状、包帯状或いはバンド状の支持体8とすることにより、足や腕に巻きつけることが容易となる。従って、人体の各部位に用いることが容易なマッサージ器10を提供できる。
【0033】
(変更例)
なお、前記両実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 上記実施形態では、支持体8に複数の施療子1を一列に配置したが、一列ではなく二列以上の複数の列に配置すること。
・ 上記実施形態では、1個のパッド2に1個の電磁石5を配置したが、複数のパッド2に1個の電磁石5を配置すること、また、1個のパッド2に複数の電磁石5を配置すること。このようにすれば、複数の小さなパッド2を一つの動作パターンにより励磁することができ、また、1個のパッド2を部分的に異なる動作パターンにより励磁することができる。
・ 上記実施形態では、フェイスマスク11をPE製としたが、より高級感を醸し出すためにアクリル製、ポリカーボネート製、ポリエチレンテレフタレート製等とすること。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の施療子の実施形態を示す模式図。
【図2】本発明のマッサージ器の実施形態を示す模式図。
【図3】フェイスマスクとしてのマッサージ器の実施形態を示す模式図。
【図4】図3のマッサージ器の使用状態を模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1…施療子、2…パッド、3…袋状体、4…磁性流体、5…電磁石、8…支持体、9…制御回路、11…フェイスマスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石と、その電磁石の励磁を制御する制御装置と、前記電磁石により磁界を付与される磁性流体が可撓性の袋状体に封入されたパッドとにより形成された施療子であって、前記電磁石の励磁が断続的に行われることにより、前記パッドの少なくとも一部が膨出と膨出前の形状への復帰との間で形状変化を繰り返すことを特徴とする施療子。
【請求項2】
前記磁性流体は、表面に界面活性剤を吸着させた強磁性の微粒子を溶媒中に分散させたコロイド溶液であって、前記微粒子の直径が1〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の施療子。
【請求項3】
前記袋状体の少なくとも人体に接する面が合成樹脂製シートで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の施療子。
【請求項4】
前記合成樹脂製シートは、表面側から順に合成樹脂製の発泡体シートと非発泡体シートとが積層された積層体であることを特徴とする請求項3に記載の施療子。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の施療子を支持体に複数配置し、前記施療子のそれぞれの励磁が個別に制御される制御回路を設けたことを特徴とするマッサージ器。
【請求項6】
前記支持体がフェイスマスクであることを特徴とする請求項5に記載のマッサージ器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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