説明

施解錠制御システム

【課題】 電源供給線や信号線の配線が障害とならずに、設置場所の自由度が高い施解錠制御システムを提供すること。
【解決手段】 扉等の開閉機構1に設けた電気的開閉手段2を開閉制御する制御手段に対して制御信号を無線送信する携帯端末M1を備えた施解錠制御システムであって、この携帯端末M1が、扉等の開閉機構に対応付けた開閉機構IDを、記録媒体Tから読み取る手段13と、この読み取り手段13で読み取った開閉機構IDと当該携帯端末M1に保持された対照用IDとの対応関係の正否を判定する処理手段14と、その判定結果が正しいと上記処理手段14が判定したとき、当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段2の制御手段3に対して、解錠あるいは施錠許可信号を無線で出力する出力手段17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアなどに取り付けた電気錠の施解錠を制御するための施解錠制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気錠を設けた出入り口において、出入りを許可された人を判別して解錠するためのシステムが知られている。
例えば、図4に示す施解錠システムは、その出入りを許可された人が、自身のICカードCを使用してドア1に取り付けられた電気錠を解錠させるシステムである。
具体的には、ドア1に設けた電気錠2に、施解錠を制御する電気錠制御手段3を接続するとともに、ドア1の近くにはICカードCからカードIDを読み取るカード読み取り装置4を設置している。
上記カード読み取り装置4は、ICカードCからカードIDを読み取る読み取り部5と、解錠許可条件を記憶したデータ記憶部6とデータ処理部7とを備えた装置である。
【0003】
データ処理部7は、上記読み取り部5が読み取ったカードIDと記憶部6が記憶している解錠許可条件とを対比して解錠を許可するか否かを判定し、解錠を許可する場合に上記電気錠制御手段3に対して電気錠2を解錠させるための制御信号を出力するというものである。
なお、上記カード読み取り装置4に図示しないデータ入力部を備え、ユーザーがパスワードなどを入力し、上記カードIDとともに、入力されたパスワードも利用して解錠を許可すべきかどうかを判定するシステムなども知られている。
いずれにしても、従来から知られているシステムは、上記カード読み取り装置4をドア1付近に設けたものである。
【0004】
また、このシステムでは、上記電気錠制御手段3及びカード読み取り装置4に電源を供給するための電源8が必要である。この電源8は、電源供給線9を介してカード読み取り装置4のデータ処理部7に接続され、電源供給線11を介して上記電気錠制御手段3に接続される。
なお、上記データ処理部7と電気錠制御手段3との間には、電気錠2に対して制御信号を送信するための信号線10を設けている。また、図中符号12は、電気錠2と電気錠制御手段3とを接続する電源供給線と信号線とを含んだケーブルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−214234号公報
【特許文献2】特開2009−235824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示す従来の施解錠制御システムでは、上記電気錠2は、ドア1の枠に設けることができるし、電気錠制御手段3及び電源8は、ドア1から離れた場所に設けることができ、その間のケーブル12及び電源供給線11も天井裏などに設けることができる。しかし、カード読み取り装置4はドア1付近に設けなければならない。特に、ユーザーがICカードCを読み取らせるため、読み取り部5は人の手が届く範囲に設置しなければならない。具体的には、ドア1わきの壁面に設けることになる。
【0007】
そのため、壁面に設けたカード読み取り装置4に電源を供給する電源供給線9や、電気錠制御手段3に制御信号を送信するための信号線10も壁に配線しなければならない。
ところが、壁が大理石などでできていた場合、内部に配線をすることは困難である。また、ガラス製の壁の場合、配線工事が難しいだけでなく、見た目を損なうという問題もある。
【0008】
そのため、上記のようなカード読み取り装置をドア付近に設置する従来の施解錠制御システムは、設置可能な場所が制限されるという問題があった。
この発明の目的は、電源供給線や信号線の配線が障害とならずに、設置場所の自由度が高い施解錠制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、扉等の開閉機構に設けた電気的開閉手段を開閉制御する制御手段に対して制御信号を無線送信する携帯端末を備えた施解錠制御システムであって、この携帯端末が、扉等の開閉機構に対応付けた開閉機構IDを読み取る手段と、この読み取り手段で読み取った開閉機構IDと当該携帯端末に保持された対照用IDとの対応関係の正否を判定する処理手段と、その判定結果が正しいと上記処理手段が判定したとき当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段の制御手段に対して無線で解錠あるいは施錠許可信号を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
なお、上記「当該携帯端末に保持された対照用ID」には、携帯端末の記憶手段などに予め記憶させている対照用IDのほか、一時的に保持されたものも含まれる。一時的に保持された対照用IDとは、例えば、外部から入力され、処理手段が判定処理を行う間だけ保持するような対象用IDである。
また、上記「読み取った開閉機構IDと対照用IDとの対応関係の正否」とは、予め決められた所定の関係を保持しているか否かということであり、両IDが一致するか否かということだけではない。例えば、両IDの和や差が一定値になるというような関係も含まれる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の携帯端末が、携帯端末ユーザーに対応付けられた上記対照用IDである認証用IDを入力するための入力手段と、目的の上記開閉機構に対応付けられた開閉機構IDに、認証用IDを対応付けて記憶する記憶手段とを備え、上記処理手段は、上記読み取り手段が読み取った開閉機構IDと上記記憶手段に記憶した開閉機構IDとが一致するかどうかを判定する機能と、当該開閉機構IDに対応付けて上記記憶手段に記憶された認証用IDと上記入力手段から入力された認証用IDとが一致するかどうかを判定する機能とを備え、上記出力手段は、上記開閉機構ID同士及び上記認証用ID同士が一致したとき、当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段の制御手段に対して無線で解錠あるいは施錠許可信号を出力する機能を備えたことを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1の発明の携帯端末が、ユーザーが上記対照用IDである開閉機構IDを入力するための入力手段を備え、上記処理手段は、ユーザーが上記入力手段から入力した開閉機構IDと上記読み取り部が読み取った開閉機構IDとが一致するかどうかを判定する機能を備え、上記出力手段は、上記開閉機構ID同士が一致したとき、当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段の制御手段に対して無線で解錠あるいは施錠許可信号を出力する機能を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第3の発明によれば、扉等の開閉機構の近くに電源供給線や信号線を必要とする読み取り装置などを設置しないため、壁などに配線をする必要がなくなる。
そのため、配線工事が困難な場所にも、この発明の施解錠制御システムを設置することができるようになる。
【0014】
第2の発明によれば、携帯端末ユーザーは、どの開閉機構を制御したい場合でも、携帯端末に入力する対照用IDは、自身に対応付けられた認証用IDだけでよい。開閉機構ごとのIDを管理する場合と比べて、IDの管理や携帯端末の操作が容易である。
第3の発明によれば、携帯端末が開閉機構IDと対照用IDとの対応関係を記憶する記憶手段を備える必要がなく、携帯端末の構成を単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は第1実施形態の施解錠システムを示すブロック図である。
【図2】図2は第1実施形態の記憶部が記憶しているデータの一例を示したテーブルである。
【図3】図3は第2実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】図4は従来の施解錠制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す第1実施形態の施解錠システムは、開閉機構であるドア1に設けた電気錠2に接続した電気錠制御手段3に対し制御信号を出力するシステムで、その制御対象は図4に示す従来のものと同じである。そして、図4に示す従来例と同じ構成要素には、図4と同じ符号を用いている。
なお、上記電気錠2がこの発明の電気的開閉手段である。
また、図1において波線の矢印は、無線によるデータ通信を示したものである。
【0017】
この第1実施形態のシステムでは、図4の従来システムのICカードC及びカード読み取り装置4に変えて、ICタグT及び携帯端末M1を用いた点が特徴である。
上記ICタグTは、ドア1付近に取り付けられたもので、ドア1に対応づけた開閉機構IDであるドアIDを記憶したICタグである。そして、このドアIDは、後で説明する携帯端末M1が備えている読み取り部13によって読み取り可能に記憶されている。
【0018】
例えば、タグ内に設けたICチップにドアIDを記録し、上記読み取り部13からの問い合わせ信号に応じて、記憶しているドアIDを出力する機能を備えている。このICチップは、上記問い合わせ信号によって誘起される電圧で起動するようにし、電源の接続を不要にしている。
なお、上記ドアIDを記憶している記録媒体は、どのような形態でもよく、この実施形態のようなタグのほかシート状などでもよい。
また、上記電気錠2は開閉機構であるドア1に対応づけられているので、上記開閉機構IDとして電気錠2を特定する電気錠IDを用いてもよい。
【0019】
一方、携帯端末M1は、上記ICタグTからドアIDを読み取る読み取り手段である読み取り部13と、この発明の処理手段であるデータ処理部14と、記憶手段であるデータ記憶部15と、携帯端末M1のユーザーがユーザーIDを入力するためのデータ入力部16と、無線通信部17とを備えている。
上記データ記憶部15は、ドアIDと、そのドアに設けられた電気錠2の解錠を許可されたユーザーのユーザーIDを対応づけて記憶している。このユーザーIDがこの発明の認証用IDである。例えば、上記データ記憶部15は、図2に示すドアIDとユーザーIDとの対応テーブルを記憶している。
なお、図2では、ドアIDとユーザーIDとを1対1に対応させているが、一つのドア1の制御を許可されているユーザーが複数の場合には、一つのドアIDに対して複数のユーザーIDが対応づけられることになる。
【0020】
また、上記データ処理部14は、上記データ入力部16から入力されたユーザーIDと、上記読み取り部13がICタグTから読み取ったドアIDとに基づいて、電気錠2を解錠すべきかどうかを判定し、その判定結果に応じた制御信号を出力する機能を備えている。
さらに、上記無線通信部17は、データ処理部14から出力される制御信号を、上記電気錠制御手段3に対して無線で送信するこの発明の出力手段である。
【0021】
次に、この第1実施形態のシステムによって、電気錠2を解錠させる手順を上記データ処理部14の処理機能を中心に説明する。
まず、ユーザーが携帯端末M1をICタグTに近づけて、読み取り部13を介してドアIDを読み取るとともに、データ入力部16からユーザーIDを入力する。
これらのIDが外部から入力されたデータ処理部14は、データ記憶部15が記憶している対応テーブルに、上記外部から入力されたIDの対応関係と一致するIDの組み合わせがあるか否かを判定する。
【0022】
具体的には、読み取り部13が読み取ったドアID、例えばD1と一致するドアIDを上記対応テーブルから検索し、このドアIDであるD1に対応するユーザーID、すなわちY1を特定する。そして、この特定したユーザーIDであるY1と上記データ入力部16から入力されたユーザーIDとが一致するかどうかを判定する。その結果、一致するドアIDと対応するユーザーID同士が一致した場合には、上記無線通信部17を介して解錠を指示する制御信号を出力する。
【0023】
この第1実施形態の施解錠制御システムでは、ドア1付近に設け、ドアIDを記憶したICタグTには、信号線や電源供給線が不要である。
また、携帯端末M1も、制御信号を無線で送信するので、上記制御部3に信号線を接続する必要もない。電源は、別の場所で供給し、図示しないバッテリに蓄えておくことができる。
従って、図4に示す従来のように、壁面などに電源供給線や信号線を設ける必要がない。そのため、配線工事が困難な場所でもこの施解錠制御システムを利用することができる。
なお、上記電気錠2、ケーブル12、制御部3、電源供給線11及び電源8は、天井裏などに設置することが可能である。
【0024】
また、上記第1実施形態では、携帯端末M1のデータ入力部16から入力されるユーザーIDが、この発明のユーザーに対応づけられた認証用IDであり、入力後、携帯端末M1に保持されたこの発明の対照用IDでもある。
そして、データ処理部14は、上記読み取り部13が読み取ったドアIDとこの対照用IDとの対応関係の正否を、上記記憶部15が記憶している対応テーブルを参照して判定することになる。
【0025】
このように、第1実施形態のシステムでは、電気錠2に対応したドアIDと施解錠が許可されたユーザーのユーザーIDとを対応づけた対応テーブルを、上記データ記憶部15が記憶しているので、携帯端末M1のユーザーはどのドア1に対応した電気錠2を制御したい場合にも、同じユーザーIDをデータ入力部16から入力すればよい。つまり、ユーザーは、自身のユーザーIDのみを管理すればよく、IDの管理などが単純である。
【0026】
図3に示す第2実施形態は、上記第1実施形態の携帯端末M1に替えて携帯端末M2を用いた点が、上記第1実施形態と異なる。
この携帯端末M2は、上記携帯端末M1のデータ記憶部15を備えていないが、その他の構成は第1実施形態と同じで、ドア1に設けられた電気錠2の施解錠を制御するためのシステムである。そこで、第1実施形態と同じ構成要素には、図1と同じ符号を用いている。
【0027】
この第2実施形態では、携帯端末M2のユーザーは、電気錠2を解錠させたいとき、上記読み取り部13によってICタグからドアIDを読み取らせるとともに、データ入力部16に目的の電気錠2に対応づけられたドアIDを入力する。つまり、携帯端末M2のユーザーは、開けたいドアごとにそのドアに対応するドアIDを入力する必要がある。ただし、ドアとドアIDとは、必ずしも1対1対応でなくてもよい。
そして、この携帯端末M2のデータ処理部14は、データ処理部14が、読み取り部13がICタグTから読み取ったドアIDと、データ入力部16から入力されたドアIDとを直接対比してそれらが一致するか否かを判定する。データ処理部14は、両ID同士が一致したとき、解錠を指示する制御信号を出力する。
【0028】
この第2実施形態では、ユーザーがデータ入力部16から入力するドアIDがこの発明の対照用IDである。そして、この実施形態では、入力されたドアIDとICタグTから読み取ったドアIDとが一致したとき、両者の対応関係が正しいと判定しているが、読み取ったドアIDと対照用IDとが一致しなくても、その対応関係が予め設定された所定の関係をもっている場合には、対応関係が正しいと判定する。所定の関係とは、例えば、上記両IDの和や差が一定値になる関係などである。
このような対応関係は、上記データ処理部14に設定しておくものとする。
【0029】
この第2実施形態のシステムでも、ドア1の付近に、ICタグTを設ければよく、カード読み取り装置など、電源線や信号線を必要とする装置を設ける必要がない。そのため、壁への配線工事が難しい場所でも、このシステムを利用することができる。
【0030】
上記第1、第2実施形態では、データ処理部14が、ICタグTから読み取ったドアIDと対照用IDとの対応関係が正しい場合には、電気錠2を解錠させる制御信号を出力させるようにした例を説明している。ただし、解錠ではなく施錠に許可を必要とするに場合は、上記データ処理部14は上記対応関係が正しいと判定した時に、施錠させるための制御信号を出力させるようにしてもよい。このように、施錠に許可を必要とする場合としては、通常は自由に出入りをさせ、決まった時刻になったときに施錠をする必要がある施設などで、勝手に施錠されると不都合が生じるような場合である。
また、施錠時、解錠時の両方で、それぞれ対照用IDを判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の施解錠制御システムは、ドアの周囲の壁に配線工事ができなかったり、配線によって外観が損なわれてしまったりするような場所に、配線なしで設けることができる。
【符号の説明】
【0032】
T ICタグ
1 ドア
2 電気錠
3 電気錠制御手段
M1 携帯端末
13 読み取り部
14 データ処理部
15 データ記憶部
16 データ入力部
17 無線通信部
M2 携帯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉等の開閉機構に設けた電気的開閉手段を開閉制御する制御手段に対して制御信号を無線送信する携帯端末を備えた施解錠制御システムであって、この携帯端末が、扉等の開閉機構に対応付けた開閉機構IDを読み取る手段と、この読み取り手段で読み取った開閉機構IDと当該携帯端末に保持された対照用IDとの対応関係の正否を判定する処理手段と、その判定結果が正しいと上記処理手段が判定したとき当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段の制御手段に対して無線で解錠あるいは施錠許可信号を出力する出力手段とを備えた施解錠制御システム。
【請求項2】
上記携帯端末は、携帯端末ユーザーに対応付けられた上記対照用IDである認証用IDを入力するための入力手段と、目的の上記開閉機構に対応付けられた開閉機構IDに、認証用IDを対応付けて記憶する記憶手段とを備え、上記処理手段は、上記読み取り手段が読み取った開閉機構IDと上記記憶手段に記憶した開閉機構IDとが一致するかどうかを判定する機能と、当該開閉機構IDに対応付けて上記記憶手段に記憶された認証用IDと上記入力手段から入力された認証用IDとが一致するかどうかを判定する機能とを備え、
上記出力手段は、上記開閉機構ID同士及び上記認証用ID同士が一致したとき、当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段の制御手段に対して無線で解錠あるいは施錠許可信号を出力する機能を備えた請求項1に記載の施解錠制御システム。
【請求項3】
上記携帯端末は、ユーザーが上記対照用IDである開閉機構IDを入力するための入力手段を備え、上記処理手段は、ユーザーが上記入力手段から入力した開閉機構IDと上記読み取り部が読み取った開閉機構IDとが一致するかどうかを判定する機能を備え、上記出力手段は、上記開閉機構ID同士が一致したとき、当該開閉機構IDに対応した電気的開閉手段の制御手段に対して無線で解錠あるいは施錠許可信号を出力する機能を備えた請求項1に記載の施解錠制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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