説明

旋回圧入装置

【課題】ワークの圧入時に把持爪に大きな圧入負荷がかからないような旋回圧入装置及び旋回圧入方法を提供すること。
【解決手段】軸線を有する一方圧入ワークを側方から把持可能な把持爪20と、把持爪の一方圧入ワークに対する把持動作及び開放動作を駆動する開閉駆動機構と、把持爪及び開閉駆動機構を軸線回りに回転させる回転機構と、把持爪に把持された一方圧入ワークからの軸線方向の荷重を受ける荷重受部材50と、を備え、把持爪、開閉駆動機構及び回転機構は、荷重受部材に対して、軸線方向に相対移動可能な機構を介して連結されていることを特徴とする旋回圧入装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線を有する一方ワークを旋回し、所定の位相で所定の他方ワークに圧入するための旋回圧入装置及び旋回圧入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワークの旋回装置は、例えば、特公平7−115252号公報(特許文献1)や、実用新案登録25208678号公報(特許文献2)から知られている。
【0003】
これらの文献に開示された従来の旋回装置は、いずれも、ワークを把持するための把持機構と、ワークを切削する際にワークに軸線方向に付与される荷重を受けるための機構(荷重受部材)とが、キー溝やボルトによる嵌合により一体化されている。具体的には、ワークを把持する把持爪と、ワークを切削加工する際にワークに付与される軸線方向の荷重を受ける荷重受部材(フェイスドライバ、ワークストッパ)とが、互いに嵌合していて、一体に回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−115252号公報
【特許文献2】実用新案登録25208678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような従来の旋回装置において、ワークを軸線方向に移動する移動機構を組み付ければ、旋回圧入装置を構成することができる。
【0006】
しかしながら、そのような旋回圧入装置においては、前述のように、ワークを把持する把持爪もワークを圧入する際に発生する圧入荷重を受けることになるため、把持爪に相応の負荷耐力が必要となり、すなわち、把持爪の大型化(極太化)や把持爪との接続部の各種部材の圧肉化が必要となり、把持爪の駆動形式も強い駆動力が得られる装置に限定されてしまう等、把持構造のスペース上の問題及びコスト上の問題が生じる。また、装置の小型化も阻害される。さらに、把持爪の駆動力(把持力)を高めると、ワークの過剰把持が生じ易くなり、ワーク表面に傷が付き易くなる。
【0007】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、ワークの圧入時に把持爪に大きな圧入負荷がかからないような旋回圧入装置及び旋回圧入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸線を有する一方圧入ワークを側方から把持可能な把持爪と、前記把持爪の一方圧入ワークに対する把持動作及び開放動作を駆動する開閉駆動機構と、前記把持爪及び前記開閉駆動機構を前記軸線回りに回転させる回転機構と、前記把持爪に把持された一方圧入ワークからの前記軸線方向の荷重を受ける荷重受部材と、を備え、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構は、前記荷重受部材に対して、前記軸線方向に相対移動可能な機構を介して連結されていることを特徴とする旋回圧入装置である。
【0009】
本発明によれば、一方圧入ワークを他方圧入ワークに圧入する際に発生する荷重を受ける荷重受部材を、把持爪とは独立した部材として構成しているため、荷重受部材にかかる荷重(負荷)が把持爪にかかることがない。従って、把持爪を含む旋回機能のための構成要素について、圧入荷重を受けるという構成が必要ないので、十分な小型化・低コスト化を図ることが可能である。
【0010】
好ましくは、前記荷重受部材は、前記開閉駆動機構及び前記回転機構に設けられた孔に非係合状態で挿入されており、前記把持爪に把持された一方圧入ワークが他方圧入ワークからの反力を受ける際に、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構に対して前記軸線方向に相対移動するようになっている。このような態様によれば、前記把持爪に把持された一方圧入ワークが荷重受部材と接触していなかった場合において、当該一方圧入ワークが他方圧入ワークから受ける反力を利用して、荷重受部材を当該一方圧入ワークに確実に接触させることができる。
【0011】
この場合、更に好ましくは、前記荷重受部材は、前記把持爪に把持された一方圧入ワークが他方圧入ワークからの反力を受けるまで、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構に対して前記軸線方向に相対移動しないようになっている。このような態様によれば、前記荷重受部材を、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構と一体の状態で、他方圧入ワークの方へ移動させることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記相対移動可能な機構は、案内シャフトと、ボールブッシュと、を有している。この場合、相対移動可能な機構を極めてシンプルに構成することができ、コスト上も有利である。
【0013】
また、好ましくは、前記荷重受部材は、前記把持爪に把持された一方圧入ワークの前記軸線方向の後退を規制しており、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構と共に当該一方圧入ワークを前記軸線方向に相対移動させて、他方圧入ワークに接触させるようになっている。このような態様によれば、前記把持爪に把持された一方圧入ワークが荷重受部材と接触していなくても、把持爪に把持された状態のまま、他方圧入ワークの方へ移動される。
【0014】
また、好ましくは、前記荷重受部材は、基端側に本体部を有しており、先端側に当該本体部に対して前記軸線回りに回転可能な荷重受突起要素を有しており、当該荷重受突起要素は、フランジを有する一方圧入ワークからの前記軸線方向の荷重を受けるべく、当該フランジと当接可能となっている。このような態様によれば、一方圧入ワークのフランジを利用して一方圧入ワークに所望の圧入力を作用させることができる。特に、荷重受突起要素が把持爪と共に連れ回ることができるため、旋回機能に何らの支障も来すことなく、旋回操作から圧入操作までの時間も短縮化できる。
【0015】
この場合、更に好ましくは、前記把持爪は、複数の爪要素を有しており、前記荷重受部材は、複数の荷重受突起要素を有しており、当該複数の荷重受突起要素は、前記複数の爪要素の間に配置されている。このような態様によれば、一方圧入ワークのフランジを利用して、一方圧入ワークにバランスよく圧入力を作用させることができる。
【0016】
この場合、更に好ましくは、前記複数の荷重受突起要素は、前記複数の爪要素の間に交互に配置されている。このような態様によれば、一方圧入ワークのフランジを利用して、一方圧入ワークにより一層バランスよく圧入力を作用させることができる。
【0017】
また、好ましくは、前記開閉駆動機構は、空気圧で作動するようになっている。例えば、開閉駆動機構として、市販の安価なエアチャックが採用可能である。
【0018】
また、本発明は、前記のような特徴を備えた旋回圧入装置を用いて、軸線を有する一方圧入ワークを所定の位相に調整してから所定の他方圧入ワークに圧入する旋回圧入方法であって、軸線を有する一方圧入ワークを側方から把持爪によって把持させる工程と、前記把持爪及び前記開閉駆動機構を前記軸線回りに回転させて、前記一方圧入ワークを所定の位相に調整する工程と、前記荷重受部材を所定の位相に調整された前記一方圧入ワークに当接させる工程と、前記荷重受部材によって、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構と共に当該一方圧入ワークを所定の他方圧入ワークに対して前記軸線方向に相対移動させて圧入する工程と、を備えたことを特徴とする旋回圧入方法である。
【0019】
あるいは、本発明は、前記のような特徴を備えた旋回圧入装置を用いて、軸線を有する一方圧入ワークを所定の位相に調整してから所定の他方圧入ワークに圧入する旋回圧入方法であって、軸線を有する一方圧入ワークを側方から把持爪によって把持させる工程と、前記把持爪及び前記開閉駆動機構を前記軸線回りに回転させて、前記一方圧入ワークを所定の位相に調整する工程と、前記荷重受部材を、所定の位相に調整された一方圧入ワークを把持する前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構と共に、前記軸線方向に沿って他方圧入ワークの方へ相対移動させる工程と、前記把持爪に把持された一方圧入ワークが他方圧入ワークからの反力を受ける際に、必要に応じて、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構を当該荷重受部材の基端側に待避させ、前記荷重受部材を前記一方圧入ワークに確実に接触させる工程と、前記荷重受部材によって、前記把持爪、前記開閉駆動機構及び前記回転機構と共に当該一方圧入ワークを所定の他方圧入ワークに対して前記軸線方向に相対移動させて圧入する工程と、を備えたことを特徴とする旋回圧入方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一方圧入ワークを他方圧入ワークに圧入する際に発生する荷重を受ける荷重受部材を、把持爪とは独立した部材として構成しているため、荷重受部材にかかる荷重(負荷)が把持爪にかかることがない。従って、把持爪を含む旋回機能のための構成要素について、圧入荷重を受けるという構成が必要ないので、十分な小型化・低コスト化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態の旋回圧入装置の概略縦断面図である。旋回機能を司り、圧入時の反力を受ける際に摺動する部分(旋回機能構造体)に斜線を付してある。
【図2】図1と同様の図であるが、圧入機能を司る部分(圧入機能構造体)に斜線を付してある。
【図3】爪要素と荷重受突起要素とを下面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の旋回圧入装置の要部の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態の旋回圧入装置の概略縦断面図である。図1では、旋回機能を司り、圧入時の反力を受ける際に摺動する部分(旋回機能構造体60)に斜線を付してあり、図2では、圧入機能を司る部分(圧入機能構造体70)に斜線を付してある。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の旋回圧入装置10は、軸線を有する一方圧入ワークとしてのシャフト100を、他方圧入ワークとしてのカム駒(カムロブ)200の孔に圧入するための装置である。本実施の形態の旋回圧入装置10は、案内シャフト80と不図示の電動シリンダまたは油圧シリンダとによって、詳細には後述するように、上部装置10aの全体が下部装置10bに対して鉛直方向に移動可能に構成されている。旋回圧入装置10に対する水平面内でのカム駒200の位置決めは、下部装置10bにおいてカム駒200を保持する機構が設置されたターンテーブルの方を水平面内で移動制御することで実現されている。同様に、把持前のシャフト100についても、旋回圧入装置10に対する水平面内での位置決めは、そのステーションが設置されたテーブルの方を水平面内で移動制御することで実現されている。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の旋回圧入装置10の上部装置10aは、シャフト100の把持部102を側方から把持可能な把持爪20を有している。本実施の形態の把持爪20は、周方向に等間隔に分配されて配置された複数(本実施の形態では3個)の爪要素20a、20b、20cを有している(図3参照)。図3は、爪要素と荷重受要素(後述する)とを下面側から見た斜視図である。それらの爪要素20a、20b、20cのシャフト100の把持部102に対する把持動作及び開放動作を駆動する開閉駆動機構として、汎用のグリッパー30が採用されている。より詳細には、市販の空圧式の三爪平行開閉グリッパーが採用されている。なお、図1から明らかなように、グリッパー30は軸線領域が中空となっており、軸線方向に貫通する孔30aを有する。
【0026】
そして、それらの把持爪20(爪要素20a、20b、20c)及びグリッパー30を、把持爪20に把持された状態でのシャフト100の軸線回りに回転させる回転機構として、薄型回転モータ40が設けられている(必ずしも薄型でなくてもよい)。図1から明らかなように、薄型回転モータ40も、軸線領域が中空となっており、軸線方向に貫通する孔40aを有する。
【0027】
以上に挙げた旋回機能を司る構成要素、すなわち、把持爪20、グリッパー30及び薄型回転モータ40は、これらの旋回機能を司る構成要素を支持する支持部材41と共にボルト等による締結やキー溝による嵌合により一体の構造物となって旋回機能構造体60を構成し、案内シャフト80によって鉛直方向に支持されている。
【0028】
案内シャフト80の下端部は、支持部材41を貫通してストッパー81に固定されており、案内シャフト80の上端部は、不図示の旋回圧入装置10の枠体を貫通している。案内シャフト80は、セットカラー82及び支持部材58を介して、後述するセンターシャフト51に固定されて支持されている。
【0029】
案内シャフト80の外周には、旋回機能構造体60を鉛直方向に摺動させる摺動部材としてのボールブッシュ85が挿入されており、当該ボールブッシュ85が支持部材41の上部に一体的に連結されている。これにより、旋回機能構造体60は、所定の外力が作用する際に、案内シャフト80に対して、すなわち、当該案内シャフト80に変位不能に固定されたセンターシャフト51に対して、上方側に移動(変位)することが可能となっている。また、当該外力が解除される際には、旋回機能構造体60は、その自重により、案内シャフト80すなわち当該案内シャフト80に固定されたセンターシャフト51に対して元の位置(旋回機能構造体60の支持部材41がストッパー81上に乗っかっている位置)まで移動(変位)するようになっている。
【0030】
続いて、図2に示すように、本実施の形態の旋回圧入装置10の上部装置10aは、把持爪20に把持されたシャフト100をその軸線方向に移動してカム駒200の孔に圧入する際に発生する圧入荷重を受ける荷重受部材50(本実施の形態では、押圧部材と言うこともできる)を有している。
【0031】
この荷重受部材50は、本実施の形態では、図2に示すように、基端側の基部シャフト55と、基部シャフト55に連結されたセンターシャフト51と、先端側の荷重受突起要素52(本実施の形態では、押圧突起要素と言うこともできる)と、を有している。センタシャフト51は、グリッパー30の孔30a、回転モータ40の孔40a等の旋回機能構造体の孔に非係合状態で挿入されている。本実施の形態では、等間隔に分配されて配置された複数(本実施の形態では3個)の荷重受突起要素52a、52b、52cが設けられており、3個の爪要素20a、20b、20cの間に交互に配置されている(図3参照)。そして、3個の荷重受突起要素52a、52b、52cは、摺動部材であるブッシュ53とガイドボルト54とを介してセンターシャフト51の下端部に取り付けられていて、前記軸線回りに回転可能となっている。ここで、センターシャフト51の下端面と荷重受突起要素52a、52b、52cの上端面との間に少々の隙間が残されるように、ガイドボルト54の位置決めがなされている。そして、ブッシュ53が軸線方向へも摺動可能であるために、所定の外力が作用する際に、荷重受突起要素52a、52b、52cはその隙間分だけセンターシャフト51に対して上昇可能(当接可能)となっている。
【0032】
センターシャフト51は、その基端側において、支持部材58及びセットカラー82を介して、案内シャフト80に固定されている。また、センターシャフト51の上部の基部シャフト55は、不図示の電動シリンダに直結されていて、鉛直方向に任意に移動可能となっている。この基部シャフト55の鉛直方向の移動に伴ってセンターシャフト51も鉛直方向移動し、旋回圧入装置10の上部装置10aが鉛直方向に移動するようになっている。
【0033】
次に、本実施の形態の旋回圧入装置10の作用について説明する。
【0034】
軸線を有する一方圧入ワークであるシャフト100が、不図示の下部装置10bのステーションに設置される。前述の通り、当該シャフト100は、フランジ101付きの形状を有している。シャフト100が設置されたステーションは、不図示のテーブル制御系によって、本実施の形態の旋回圧入装置10の上部装置10aの直下、詳細には、センターシャフト51の軸線の直下に位置決めされる。この時の旋回圧入装置10は、把持爪20がグリッパー30によって解放された状態にある(図3参照)。
【0035】
次に、不図示の電動シリンダによって荷重受部材50が鉛直方向に降下する。これに伴って、旋回圧入装置10の上部装置10aの全体が同様に降下する。荷重受部材50の荷重受突起要素52がフランジ101の上方部位に設けられたシャフト100の把持部102に挿入されると、降下が停止される。
【0036】
そして、把持爪20の把持動作がグリッパー30によって駆動され、図1及び図2に示すように、フランジ101の上方部位の側面(把持部102)において(側方から)シャフト100が把持爪20の爪要素20a、20b、20cによってバランスよく把持される。
【0037】
次に、シャフト100が把持爪20に把持された状態で、不図示の電動シリンダによって荷重受部材50が鉛直方向に上昇する。これに伴って、旋回圧入装置10の上部装置10aの全体が同様に上昇する。
【0038】
荷重受部材50が所定の上方位置(例えば初期位置)にまで上昇した後、シャフト100の旋回位相調整が開始される。具体的には、薄型回転モータ40の回転が制御されて、把持爪20及びグリッパー30並びに把持爪20に把持されたシャフト100の軸線回りの回転位相が調整される。
【0039】
ここで、図3に示すように、荷重受突起要素52a、52b、52cが爪要素20a、20b、20cの間に介在しているが、荷重受突起要素52a、52b、52cも前述のブッシュ53によりシャフト100の軸線回りに回転可能で、荷重受突起要素52a、52b、52cの上端面とセンターシャフト51の下端面との間に所定の隙間が確保されているため、荷重受突起要素52a、52b、52cは何らの不都合なく爪要素20a、20b、20cと共に連れ回ることができ、すなわち、旋回機能に何らの支障も生じない。
【0040】
この回転位相調整と同時に、他方圧入ワークであるカム駒200の孔の位置決めが行われる。具体的には、下部装置10bのシャフト100が設置されていたステーションが旋回圧入装置10の上部装置10aの直下から待避される一方で、カム駒200が設置されたステーションが、旋回圧入装置10の上部装置10aの直下に位置決めされる。
【0041】
次に、不図示の電動シリンダによってセンターシャフト51が再び鉛直方向に降下する。これに伴って、旋回圧入装置10の上部装置10aの全体が同様に降下する。この降下状態は、シャフト100の下端がカム駒200に当接して抵抗(反力)を受けるまで継続される。
【0042】
シャフト100の下端がカム駒200に当接して抵抗(反力)を受けても、荷重受部材50の降下は依然として継続される。シャフト100の下端が受ける反力は、そのままシャフト100を通じて旋回機能構造体60へ伝達され、旋回機能構造体60の降下を停止させる。結果として、ボールブッシュ85の摺動作用により、旋回機能構造体60が、荷重受部材50の基端側に僅かに移動(待避)することとなる。
【0043】
シャフト100の下端が受ける反力によって、そのまま旋回機能構造体60の降下が停止された状態で、荷重受部材50の降下が継続されることにより、荷重受突起要素52a、52b、52cの下端がシャフト100のフランジ101に確実に当接する。
【0044】
その後、更に荷重受部材50の降下が継続されることにより、ブッシュ53の摺動機能のために、荷重受突起要素52a、52b、52cの上端面がセンターシャフト51の下端面に当接する。これにより、荷重受部材50に与えられる下降力が、荷重受突起要素52a、52b、52cを介して、シャフト100のフランジ101に圧入力として確実に伝達される状態となる(圧入開始位置)。
【0045】
当該状態に至った後、更に荷重受部材50の降下が継続されることにより、3個の荷重受突起要素52a、52b、52cを介してシャフト100のフランジ101へと圧入力がバランスよく伝達され、シャフト100がカム駒200の孔に次第に圧入されていく。この圧入工程時においても、把持爪20はシャフト100を把持したままであり、シャフト100の圧入による下降に従って、旋回機能構造体60も同様に下方に下降する。
【0046】
所定の圧入深さまでシャフト100を圧入することができたら、不図示の電動シリンダによって荷重受部材50が鉛直方向に上昇し、カム駒200が圧入されたシャフト100が把持爪20に把持された状態で旋回圧入装置10の上部装置10aの全体が上昇する。その後、第二のカム駒200を圧入するためにシャフト100の旋回位相調整が開始される。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、シャフト100をカム駒200の孔に圧入する荷重受部材として、基部シャフト55、センターシャフト51及び荷重受突起要素52を用いているが、当該荷重受部材50は、旋回機能構造体60とは完全に独立した部材として構成されている。このため、荷重受部材50にかかる荷重(負荷)が、旋回機能構造体60の把持爪20にかかることがない。従って、把持爪20を含む旋回機能構造体60、すなわち、把持爪20、グリッパ−30及び薄型回転モータ40について、十分な小型化・低コスト化を図ることが可能である。
【0048】
実際に、本実施の形態で採用した把持爪20、グリッパ−30及び薄型回転モータ40は、いずれも軽量で低コストである。
【0049】
また、本実施の形態では、シャフト100がカム駒200からの反力を受けるまで、シャフト100を把持する把持爪20を有する旋回機能構造体60は、その自重により荷重受部材50の移動と共にカム駒200の方へ移動するようになっている。このため、シャフト100が荷重受部材50と接触していなくても、把持爪20に把持された状態のまま、シャフト100が安定的にカム駒200の方へ移動される。
【0050】
そして、本実施の形態では、シャフト100がカム駒200に当接して抵抗(反力)を受けると、ボールブッシュ85の摺動作用により、旋回機能構造体60が、荷重受部材50の基端側に僅かに移動(待避)する。そして、更に荷重受部材50の降下が継続されることにより、荷重受突起要素52の下端がシャフト100のフランジ101に確実に当接する。従って、シャフト100を把持爪20が把持する際には、荷重受突起要素52の下端をフランジ101に当接させておく必要がなく、把持時の位置決めの自由度が高い。、また、荷重受突起要素52やシャフト100のフランジ101に衝突痕が付くおそれも回避できる。
【0051】
また、本実施の形態では、把持爪20が3個の爪要素20a、20b、20cを有しており、荷重受突起要素52a、52b、52cは、3個の爪要素20a、20b、20cの間に配置されて、シャフト100の軸線回りに爪要素20a、20b、20cと共に連れ回ることができるようになっている(図3参照)。
【0052】
特に、荷重受突起要素52a、52b、52cが爪要素20a、20b、20cと共に連れ回されることができるため、旋回機能に何らの支障が生じることもない。また、ガイドボルト54の適宜の位置決めによって、荷重受突起要素52a、52b、52cの上端面は、シャフト100に圧入力を付与する時以外は、センターシャフト51の下端面との間に少々の隙間が確保されているため、荷重受突起要素52a、52b、52cが爪要素20a、20b、20cによって連れ回される際にセンターシャフト51に対して摺れて磨耗する等の不具合が生じることもない。
【0053】
また、本実施の形態では、図3に示すように、荷重受突起要素52a、52b、52cの下端が爪要素20a、20b、20cの下端よりも下方に突出していて、旋回調整完了時にすでに荷重受突起要素52a、52b、52cの下端がフランジ101の近傍位置にあるため、旋回操作から圧入操作までの移行時間が短くなっている。
【0054】
また、本実施の形態では、図3に示すように、3個の爪要素20a、20b、20cと3個の荷重受突起要素52a、52b、52cとが交互に配置されているため、極めてバランスよくシャフト100に圧入力を作用させることができる。
【0055】
更に、本実施の形態では、上部装置10a側でシャフト100の位相を決め、下部装置10b側はカムシャフトを構成するシャフト100、カム駒200等を所定の位相で保持するだけでよく、下部装置10b側の設計自由度が向上する。
【0056】
なお、以上の実施の形態では、軸線を有する一方圧入ワークとしてフランジ101付きのシャフト100を例にとり、他方圧入ワークとしてカム駒200を例にとって説明しているが、本発明がこれらの例に限定されないことは勿論である。
【0057】
例えば、フランジを有しないワークを旋回圧入する場合について、以下に説明する。図4は、そのような態様に対応する、本発明の第2の実施の形態の旋回圧入装置の要部の概略縦断面図である。
【0058】
図4に示す旋回圧入装置10’の上部装置10a’は、フランジ無しのワークとして、フランジ無しのシャフト120を圧入するようになっている。この場合、圧入力は、シャフト120の上端面から与えることになる。従って、荷重受突起要素52’は、爪要素20a’、20b’、20c’の間を延びることなく、爪要素20a’、20b’、20c’がシャフト120を把持する部位よりも上方であって、シャフト120の軸線に近い(径方向に短距離の)箇所に配置されている。
【0059】
図4に示す第2の実施の形態のその他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同様である。第2の実施の形態において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施の形態によれば、荷重受突起要素52’が爪要素20a’、20b’、20c’の間に介在していないため、荷重受突起要素52’が爪要素20a’、20b’、20c’と共に連れ回る必要はないが、その他については、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
本実施の形態では、前述の通り、荷重受突起要素52’が爪要素20a’、20b’、20c’と共に連れ回る必要がないため、ブッシュ53’とガイドボルト54’とを設けることなく、センターシャフト51と荷重受突起要素52’とを直結したり、一体化したりすることも可能である。
【0062】
なお、以上の各実施の形態では、他方圧入ワークを固定して当該他方圧入ワークの孔に一方圧入ワークとしての軸部材を圧入しているが、逆に、軸部材の方を固定して孔付きのワークの方を圧入するような態様も採用可能である。例えば、シャフトを固定して、カム駒の方を移動させて圧入するという態様も採用可能である。
【0063】
また、以上の各実施の形態では、一方圧入ワークと他方圧入ワークとの相対移動の方向が鉛直方向となっているが、少なくとも本願出願の時点では、これに限定されない。例えば、一方圧入ワークと他方圧入ワークとが水平方向に相対移動するような装置も実現可能である。
【符号の説明】
【0064】
10、10’ 旋回圧入装置
10a、10a’ 上部装置
10b 下部装置
20 把持爪
20a、20b、20c 爪要素
30 グリッパー
40 薄型回転モータ
41 支持部材
50 荷重受部材(押圧部材)
51 センターシャフト(荷重受部材)
52、52a、52b、52c、52’ 荷重受突起要素(押圧突起要素)(荷重受部材)
53、53’ ブッシュ
54、54’ ガイドボルト
55 基部シャフト(荷重受部材)
60 旋回機能構造体
70 圧入機能構造体
58 支持部材
80 案内シャフト
81 ストッパー
82 セットカラー
85 ボールブッシュ
100 シャフト
101 フランジ
102 把持部
120 フランジ無しのシャフト
200 カム駒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を有する一方圧入ワーク(100)を側方から把持可能な把持爪(20)と、
前記把持爪(20)の一方圧入ワーク(100)に対する把持動作及び開放動作を駆動する開閉駆動機構(30)と、
前記把持爪(20)及び前記開閉駆動機構(30)を前記軸線回りに回転させる回転機構(40)と、
前記把持爪(20)に把持された一方圧入ワーク(100)からの前記軸線方向の荷重を受ける荷重受部材(50)と、
を備え、
前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)は、前記荷重受部材(50)に対して、前記軸線方向に相対移動可能な機構(80、85)を介して連結されている
ことを特徴とする旋回圧入装置。
【請求項2】
前記荷重受部材(51)は、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)に設けられた孔(30a、40a)に非係合状態で挿入されており、前記把持爪(20)に把持された一方圧入ワーク(100)が他方圧入ワーク(200)からの反力を受ける際に、前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)に対して前記軸線方向に相対移動するようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載の旋回圧入装置。
【請求項3】
前記荷重受部材(50)は、前記把持爪(20)に把持された一方圧入ワーク(100)が他方圧入ワーク(200)からの反力を受けるまで、前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)に対して前記軸線方向に相対移動しないようになっている
ことを特徴とする請求項2に記載の旋回圧入装置。
【請求項4】
前記相対移動可能な機構(80、85)は、案内シャフト(80)と、ボールブッシュ(85)と、を有している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の旋回圧入装置。
【請求項5】
前記荷重受部材(50)は、前記把持爪(20)に把持された一方圧入ワーク(100)の前記軸線方向の後退を規制しており、前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)と共に当該一方圧入ワーク(100)を前記軸線方向に相対移動させて、他方圧入ワーク(200)に接触させるようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の旋回圧入装置。
【請求項6】
前記荷重受部材(50)は、基端側に本体部(51、55)を有しており、先端側に当該本体部(51、55)に対して前記軸線回りに回転可能な荷重受突起要素(52)を有しており、
当該荷重受突起要素(52)は、フランジ(101)を有する一方圧入ワーク(100)からの前記軸線方向の荷重を受けるべく、当該フランジ(101)と当接可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の旋回圧入装置。
【請求項7】
前記把持爪(20)は、複数の爪要素(20a、20b、20c)を有しており、
前記荷重受部材(50)は、複数の荷重受突起要素(52a、52b、52c)を有しており、
当該複数の荷重受突起要素(52a、52b、52c)は、前記複数の爪要素(20a、20b、20c)の間に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の旋回圧入装置。
【請求項8】
前記複数の荷重受突起要素(52a、52b、52c)は、前記複数の爪要素(20a、20b、20c)の間に交互に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の旋回圧入装置。
【請求項9】
前記開閉駆動機構は、空気圧で作動するようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の旋回圧入装置。
【請求項10】
請求項1に記載の旋回圧入装置を用いて、軸線を有する一方圧入ワーク(100)を所定の位相に調整してから所定の他方圧入ワーク(200)に圧入する旋回圧入方法であって、
軸線を有する一方圧入ワーク(100)を側方から把持爪(20)によって把持させる工程と、
前記把持爪(20)及び前記開閉駆動機構(30)を前記軸線回りに回転させて、前記一方圧入ワーク(100)を所定の位相に調整する工程と、
前記荷重受部材(50)を所定の位相に調整された前記一方圧入ワーク(100)に当接させる工程と、
前記荷重受部材(50)によって、前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)と共に当該一方圧入ワーク(100)を所定の他方圧入ワーク(200)に対して前記軸線方向に相対移動させて圧入する工程と、
を備えたことを特徴とする旋回圧入方法。
【請求項11】
請求項2に記載の旋回圧入装置を用いて、軸線を有する一方圧入ワーク(100)を所定の位相に調整してから所定の他方圧入ワーク(200)に圧入する旋回圧入方法であって、
軸線を有する一方圧入ワーク(100)を側方から把持爪(20)によって把持させる工程と、
前記把持爪(20)及び前記開閉駆動機構(30)を前記軸線回りに回転させて、前記一方圧入ワーク(100)を所定の位相に調整する工程と、
前記荷重受部材(50)を、所定の位相に調整された一方圧入ワーク(100)を把持する前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)と共に、前記軸線方向に沿って他方圧入ワーク(200)の方へ相対移動させる工程と、
前記把持爪(20)に把持された一方圧入ワーク(100)が他方圧入ワーク(200)からの反力を受ける際に、必要に応じて、前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)を当該荷重受部材(50)の基端側に待避させ、前記荷重受部材(50)を前記一方圧入ワーク(100)に確実に接触させる工程と、
前記荷重受部材(50)によって、前記把持爪(20)、前記開閉駆動機構(30)及び前記回転機構(40)と共に当該一方圧入ワーク(100)を所定の他方圧入ワーク(200)に対して前記軸線方向に相対移動させて圧入する工程と、
を備えたことを特徴とする旋回圧入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49129(P2013−49129A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189700(P2011−189700)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000238360)武蔵精密工業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】