説明

既存構造物の基礎杭上端部又は柱の上下端部の曲げ耐力増強方法

【課題】地震等の水平力が作用する既存構造物の増築、増量に対して、既存構造物の基礎構造体の下面相当に位置する基礎杭上端部、又は梁又はスラブの上面又は下面相当に位置する柱の上下端部の曲げ耐力を増強する方法を提供する。
【解決手段】既存構造物2の基礎構造体4の下面相当位置である基礎杭1の上端部1’外周へ切り欠き5…を設け、又は欠き込み7を設けて、杭上端部1’の中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、杭上端部1’の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、杭上端部1’の曲げ耐力を増強させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震等の水平力が作用する既存構造物の増築、増量に対して、既存構造物の基礎構造体(基礎梁、基礎スラブ、フーチング或いはパイルキャップなどを含む。以下、同じ。)の下面相当に位置する基礎杭上端部、又は梁又はスラブの上面又は下面相当に位置する柱の上下端部の曲げ耐力(安全性)を増強する(高める)方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、既存構造物の基礎杭上端部1’には、図9Aに応力分布図を示したように、常時、構造物の長期鉛直荷重による圧縮応力σ9Aが働いている。この負荷状態で地震等の水平力が作用すると、図9Bに応力分布図を示したように、前記圧縮応力σ9Aと共に曲げ荷重による曲げモーメントが合成されて作用し、杭上端部1’に過大な合成応力σ9Bが働く。既存構造物の設計段階では、水平剛性及び曲げ剛性を十分に備えた基礎杭1及び基礎梁4(又は基礎スラブ)を設計していたが、増築、増量等で構造物の長期鉛直荷重(上載荷重)が増大すると、地震等の水平力による杭上端部1’への水平力負荷(地震力)が増大し、杭上端部1’の水平剛性及び曲げ剛性が不足する場合が生ずる。即ち、杭上端部1’へ過大なせん断力及び曲げモーメントが作用し、杭上端部1’が損傷する問題が起こる。とはいえ、既存構造物の基礎杭上端部の耐力を、水平力負荷の増大に対応するべく増強することは容易なことではない。このことは、既存構造物において架構された柱の上下端部においても同様のことが言える。
ちなみに、特許文献1〜4に開示された発明は、既存構造物の下方を掘削して露出させた基礎杭と基礎梁(又は基礎スラブ)との間に免震装置を設置して、主に地震等の水平力による免震効果を期待する構成である。
【0003】
【特許文献1】特開2002−309593号公報
【特許文献2】特開2002−138497号公報
【特許文献3】特開平9−125705号公報
【特許文献4】特開平9−302703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜4に開示された発明は、免震装置の作用から杭上端部に作用するせん断力及び曲げモーメントを軽減できる。しかし、前記免震装置を設置するには、既存構造物の下方を掘削して基礎杭の杭上端部を露出させて、該基礎杭の周辺に構造物を支える新規杭を設置し、前記基礎杭の杭上端部を切断し、該切断箇所に免震装置を設置するといった大掛かりな作業となる。しかも本来、免震装置は、地震等の水平力に対する構造物の免震効果を期待するもので、基礎杭の耐力(安全性)を増強する(高める)ことを目的としていない。
【0005】
本発明の目的は、既存構造物の増築、増量が行われ、地震等の水平力による杭上端部の水平力負荷(地震力)が増大する場合に、常時の杭上端部外周部分の圧縮応力を低減させることにより、杭上端部の曲げ耐力(安全性)を増強する(高める)既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、既存構造物の増築、増量が行われ、地震等の水平力による柱の上下端部の水平力負荷(地震力)が増大する場合に、常時の柱の上下端部外周部分の圧縮応力を低減させることにより、柱の上下端部の曲げ耐力(安全性)を増強する(高める)既存構造物の柱の上下端部の曲げ耐力増強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法は、
地震等の水平力が作用する既存構造物2の増築、増量に対して基礎杭1の上端部1’の曲げ耐力を増強する方法であって、
既存構造物2の基礎構造体4の下面相当位置である基礎杭1の上端部1’外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設け、又は前記杭上端部1’の外周部分を削り取った欠き込み7を設けて、前記杭上端部1’の中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、杭上端部1’の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、杭上端部1’の曲げ耐力を増強させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法において、
杭上端部1’外周へ設けた切り欠き5…又は欠き込み7へ無収縮のグラウト等の補修剤6を充填し、又は欠き込み7から削り取ったブロック若しくは別途用意したブロックで埋めることにより、長期鉛直荷重を負担する有効断面積を回復させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法において、
杭上端部1’外周へ設けた切り欠き5…の深さは、下方位置のものほど小さく設けることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明に係る既存構造物の柱の上端部の曲げ耐力増強方法は、
地震等の水平力が作用する既存構造物2の増築、増量に対して柱3の上端部3aの曲げ耐力を増強する方法であって、
梁又はスラブ8の下面相当位置である柱3の上端部3a外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設け、又は前記柱3の上端部3aの外周部分を削り取った欠き込み7を設けて、前記上端部3aの中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱上端部3aの外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の上端部3aの曲げ耐力を増強させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明に係る既存構造物の柱の下端部の曲げ耐力増強方法は、
地震等の水平力が作用する既存構造物2の増築、増量に対して柱3の下端部3bの曲げ耐力を増強する方法であって、
梁又はスラブ8の上面相当位置である柱3の下端部3b外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設け、又は前記柱3の下端部3bの外周部分を削り取った欠き込み7を設けて、前記下端部3bの中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱下端部3bの外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の下端部3bの曲げ耐力を増強させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載した発明に係る既存構造物の柱の上下端部の曲げ耐力増強方法は、
地震等の水平力が作用する既存構造物2の増築、増量に対して柱3の上下端部3a、3bの曲げ耐力を増強する方法であって、
梁又はスラブ8の上面又は下面相当位置である柱3の上下の端部3a、3b外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設け、又は前記柱の上下端部3a、3bの外周部分を削り取った欠き込み7を設けて、前記上下端部3a、3bの中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱の上下端部3a、3bの外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の上下端部3a、3bの曲げ耐力を増強させることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載した発明は、請求項4〜6のいずれか一に記載した既存構造物の柱の端部の曲げ耐力増強方法において、
柱の端部3a、3b外周へ設けた切り欠き5…又は欠き込み7へ無収縮のグラウト等の補修剤6を充填し、又は欠き込み7から削り取ったブロック若しくは別途用意したブロックで埋めることにより、長期鉛直荷重を負担する有効断面積を回復させることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載した発明は、請求項4〜7のいずれか一に記載した既存構造物の柱の端部の曲げ耐力増強方法において、
柱3の上端部3a外周へ設けた切り欠き5…の深さは、下方位置のものほど小さく設け、前記柱3の下端部3b外周へ設けた切り欠き5…の深さは、上方位置のものほど小さく設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜3に記載した発明に係る既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法によれば、既存構造物の基礎構造体の下面相当位置である基礎杭の杭上端部外周へ水平方向にスリット状の切り欠きを設け、又は杭上端部の外周部分を削り取った欠き込みを設けて、杭上端部外周の長期鉛直荷重(上載荷重)による圧縮歪を解放したので、杭上端部の曲げ耐力が向上でき、構造物としての安全性を確保できる。
【0016】
請求項4〜8に記載した発明に係る既存構造物の柱の上下端部の曲げ耐力増強方法によれば、梁又はスラブの上面又は下面相当位置である柱の上下の端部外周へ水平方向にスリット状の切り欠きを設け、又は柱の上下端部の外周部分を削り取った欠き込みを設けるので、柱端部外周の長期鉛直荷重(上載荷重)による圧縮歪を解放したので、柱の端部の曲げ耐力が向上でき、構造物としての安全性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
既存構造物2の基礎構造体4の下面相当に位置する基礎杭1の杭上端部1’外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設け、又は杭上端部1’の外周部分を削り取った欠き込み7を設けて、杭上端部1’の中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、杭上端部1’の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、杭上端部1’の曲げ耐力を増強させる。
【0018】
梁又はスラブ8の上面又は下面相当位置である柱3の上下の端部3a、3b外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設け、又は前記柱の上下端部3a、3bの外周部分を削り取った欠き込み7を設けて、前記上下端部3a、3bの中心部分へ構造物2の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱の上下端部3a、3bの外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の上下端部3a、3bの曲げ耐力を増強させる。
【実施例1】
【0019】
以下に、請求項1〜3に記載した発明に係る既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法の実施例を、図1〜図5に基づいて説明する。
【0020】
図1は、増築、増量した既存構造物2の基礎構造体である基礎梁4の下面相当位置である基礎杭上端部1’の外周へ、切り欠き5…を設けた実施例を示している。前記基礎構造体4は、図示例では基礎梁を示しているが、基礎スラブ、フーチング、或いはパイルキャップについても同様に実施可能である。因みに、図中の符号3は柱を示している。
【0021】
本発明の方法を実施するには、先ず、既存構造物2の基礎杭1のうち施工対象の基礎杭1の直近位置から、図1に示すように、基礎梁4及びその直下の地盤を小型重機等の掘削機械を用いて掘削し、基礎杭1の杭上端部1’を露出させて、その周りに作業空間Aを確保する。次に、作業者が前記作業空間Aへ進入し、ワイヤーカッター等の切断手段を用いて、前記杭上端部1’の外周へ水平方向にスリット状の切り欠き5…を設ける切断作業を行う。前記切り欠き5…の深さは、基礎杭1の杭径が2m程度の場合に10cm程度の深さで、5mm程度の溝幅に切り込むことが望ましい。しかも、切り欠む深さは下方位置の切り欠きほど小さく設ける(請求項3記載の発明)。図2A(ロ)に示す従来の圧縮応力と比して、同図(イ)のように、長期鉛直荷重(上載荷重)による負担を中心位置から放射方向へ滑らかに減少させて、水平力負荷(地震力)に対する曲げ耐力を向上させるためである。但し、同じ深さの切り欠き5…を複数設けて実施してもよい。また、前記切り欠き5…を設ける範囲は、最上位の切り欠きから最下位の切り欠きまでの高さ範囲が杭径の半分以下、つまり杭径が2m程度の場合は1m程度の高さ範囲に設ける。既存構造物2の長期鉛直荷重に対する基礎杭1本来の支持力(安定性)を確保する(又は毀損しない)ためである。斯くすることにより、図2Aに示すように、杭上端部1’の外周は長期鉛直荷重(上載荷重)による圧縮歪を解放でき、構造物2の長期鉛直荷重(上載荷重)の負担(圧縮応力σ2A)は、杭上端部1’の主に中心部分へ、集中する状態を実現できる。このような接合状態となった杭上端部1’は、図2Bに示すように、曲げ荷重による曲げモーメントσ2Bが、通常の杭の場合と同じでも、前記圧縮応力σ2Aによる負荷状態へ曲げモーメントσ2Bが合成された合成応力σ2cは、図9Bの合成応力σ9Bと比べて小さくなり、その分、杭上端部1’の曲げ耐力が増強され、構造物2としての安全性を確保できる。この接合状態は正にピン接合に近く、σ2Bは、通常の杭の場合よりも小さくなりやすい。
【実施例2】
【0022】
図3は、前記杭上端部1’へ切り欠き5…を設けた後、該切り欠き5…へ無収縮のグラウト等の補修剤6を充填し、長期鉛直荷重(上載荷重)を負担する有効断面積を若干回復させた実施例を示している。補修剤6を充填することで、構造物2の長期鉛直荷重による基礎杭1本来の安定した支持力を確保できると共に、長期鉛直荷重による杭上端部1’の外周に生じる圧壊を防止できる。因みに、前記グラウト剤とは、柔らかいセメントペースト又はモルタル、ベントナイト水、薬液等の総称であり、主にひび割れや空洞等の間隙へ注入又は充填する補修剤である(請求項2記載の発明)。
【実施例3】
【0023】
また、図4に示すように、上記切り欠き5…と異なり、前記杭上端部1’の外周部分を削り取った欠き込み7を設けて実施しても同様の効果を得ることができる。図5は、長期鉛直荷重(上載荷重)による前記欠き込み7を設けた杭上端部1’の応力分布図である。図中のσは、長期鉛直荷重(上載荷重)に働く圧縮応力である。
【0024】
上記欠き込み7へは、無収縮のグラウト等の補修剤6を充填する他に、例えば欠き込みから削り取ったブロック若しくは別途用意したブロックを埋め込んで、長期鉛直加重を負担する有効断面積を若干回復することができる(請求項2記載の発明)。
【実施例4】
【0025】
次に、請求項4〜8に記載した発明に係る既存構造物の柱の上下端部の曲げ耐力増強方法の実施例を、図6〜図8に基づいて説明する。但し、実施例1〜3と重複する内容に関しては説明を省略する。
【0026】
図6は、増築、増量した既存構造物2の梁8(又はスラブ、以下、同じ。)の上面又は下面相当位置である柱3の上・下の端部3a、3bの外周へスリット状の切り欠き5…を設けた実施例を示している。柱3の上端部3aの外周へ設けた切り欠き5…の深さは、やはり、下方位置のものほど小さく設ける。また、前記柱3の下端部3bの外周へ設けた切り欠き5…の深さは、上方位置のものほど小さく設けるのが好ましい(請求項8記載の発明)。しかし、同じ深さの切り欠き5…を複数設けて実施してもよい。
更に、前記切り欠き5…へ無収縮のグラウト等の補修剤6を充填する(請求項7記載の発明。)。但し、図示は省略したが、前記切り欠き5…へ前記補修材6を充填せずに実施することもできる。
【0027】
また、図示は省略したが、前記切り欠き5…とは異なり、上記柱の上・下の端部3a、3bの外周部分を削り取った欠き込み7を設けて実施することもでき、その構成及び作用効果は、上記段落番号[0022]〜[0024]で記載した内容と同様であるから、更なる説明は省略する。
【0028】
勿論、梁8の下面相当位置である柱3の上端部3aの外周のみに切り欠き5…又は欠き込みを設けて実施しても良く(図7参照、請求項4記載の発明)、或いは梁8の上面相当位置である柱3の下端部3bの外周にのみ切り欠き5…又は欠き込みを設けて実施してもよい(図8参照、請求項5記載の発明)。
【0029】
以上要するに、この実施例4は、柱3の上・下の端部3a、3bの外周の長期鉛直荷重(上載荷重)による圧縮歪を解放し、柱端部3a、3bの主に中心部分へ、構造物2の長期鉛直荷重(上載荷重)の負担(圧縮応力)を集中させる状態を実現できる。したがって、上述した実施例1とほぼ同様の作用効果(上記段落番号[0021]を参照)を発揮する。
【0030】
以上に本発明の実施例を図示と共に説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】杭上端部へ切り欠きを設けた実施例を示す立面図である。
【図2】Aは長期鉛直荷重による切り欠きを設けた杭上端部の応力分布図であり、Bは曲げ荷重による切り欠きを設けた杭上端部の応力分布図であり、Cは長期鉛直荷重及び曲げ荷重による切り欠きを設けた杭上端部の応力分布図である。
【図3】杭上端部へ設けた切り欠きへ補修剤を充填した実施例を示す立面図である。
【図4】杭上端部へ欠き込みを設けた実施例を示す立面図である。
【図5】長期鉛直荷重による欠き込みを設けた杭上端部の応力分布図である。
【図6】柱の上下端部へ切り欠きを設けた実施例を示す立面図である。
【図7】柱の上端部へ切り欠きを設けた実施例を示す立面図である。
【図8】柱の下端部へ切り欠きを設けた実施例を示す立面図である。
【図9】Aは従来技術に係る長期鉛直荷重よる杭上端部の応力分布図であり、Bは従来技術に係る長期鉛直荷重及び曲げ荷重による杭上端部の応力分布図である。
【符号の説明】
【0032】
1 基礎杭
1’ 杭上端部
3 柱
3a 柱の上端部
3b 柱の下端部
4 基礎構造体(基礎梁)
5 切り欠き
6 補修剤
7 欠き込み
8 梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震等の水平力が作用する既存構造物の増築、増量に対して基礎杭の上端部の曲げ耐力を増強する方法であって、
既存構造物の基礎構造体の下面相当位置である基礎杭の上端部外周へ水平方向にスリット状の切り欠きを設け、又は前記杭上端部の外周部分を削り取った欠き込みを設けて、前記杭上端部の中心部分へ構造物の長期鉛直荷重の負担を集中させ、杭上端部の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、杭上端部の曲げ耐力を増強させることを特徴とする、既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項2】
杭上端部外周へ設けた切り欠き又は欠き込みへ無収縮のグラウト等の補修剤を充填し、又は欠き込みから削り取ったブロック若しくは別途用意したブロックで埋めることにより、長期鉛直荷重を負担する有効断面積を回復させることを特徴とする、請求項1に記載した既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項3】
杭上端部外周へ設けた切り欠きの深さは、下方位置のものほど小さく設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載した既存構造物の基礎杭上端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項4】
地震等の水平力が作用する既存構造物の増築、増量に対して柱の上端部の曲げ耐力を増強する方法であって、
梁又はスラブの下面相当位置である柱の上端部外周へ水平方向にスリット状の切り欠きを設け、又は前記柱の上端部の外周部分を削り取った欠き込みを設けて、前記上端部の中心部分へ構造物の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱上端部の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の上端部の曲げ耐力を増強させることを特徴とする、既存構造物の柱の上端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項5】
地震等の水平力が作用する既存構造物の増築、増量に対して柱の下端部の曲げ耐力を増強する方法であって、
梁又はスラブの上面相当位置である柱の下端部外周へ水平方向にスリット状の切り欠きを設け、又は前記柱の下端部の外周部分を削り取った欠き込みを設けて、前記下端部の中心部分へ構造物の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱下端部の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の下端部の曲げ耐力を増強させることを特徴とする、既存構造物の柱の下端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項6】
地震等の水平力が作用する既存構造物の増築、増量に対して柱の上下の端部の曲げ耐力を増強する方法であって、
梁又はスラブの上面又は下面相当位置である柱の上下の端部外周へ水平方向にスリット状の切り欠きを設け、又は前記柱の上下端部の外周部分を削り取った欠き込みを設けて、前記上下端部の中心部分へ構造物の長期鉛直荷重の負担を集中させ、柱上下端部の外周縁に作用する常時の応力を低減させ、柱の上下端部の曲げ耐力を増強させることを特徴とする、既存構造物の柱の上下端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項7】
柱の端部外周へ設けた切り欠き又は欠き込みへ無収縮のグラウト等の補修剤を充填し、又は欠き込みから削り取ったブロック若しくは別途用意したブロックで埋めることにより、長期鉛直荷重を負担する有効断面積を回復させることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一に記載した既存構造物の柱の端部の曲げ耐力増強方法。
【請求項8】
柱の上端部外周へ設けた切り欠きの深さは、下方位置のものほど小さく設け、前記柱の下端部外周へ設けた切り欠きの深さは、上方位置のものほど小さく設けることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一に記載した既存構造物の柱の端部の曲げ耐力増強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−328850(P2006−328850A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155545(P2005−155545)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】