説明

既製コンクリート杭及び杭頭内部の軸方向剪断補強構造

【課題】特別な追加工事を行わないでも、杭頭に打設した中詰めコンクリートとの一体性を十分に高めることができ、それにより軸力伝達を可能とし、軸方向剪断補強効果が得られる既製コンクリート杭を提供する。
【解決手段】中空の杭頭の内周部に多数のシヤコネクタ27を配設し、該各シヤコネクタ27の先端を杭体コンクリート21の内周面より突き出させた。詳しくは、円筒籠状の支持部材25の内周部に円周方向及び軸線方向に間隔的に多数のシヤコネクタ27を接合し、杭製作時に型枠内にその支持部材25をセットして杭体コンクリートを遠心打設することにより、杭体コンクリート21中に支持部材25を埋設するとともにその内周面より各シヤコネクタ27の先端を突出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製コンクリート杭及び該既製コンクリート杭の杭頭内部の軸方向剪断補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PHC杭(遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)、SC杭(外殻鋼管付きコンクリート杭)、PRC杭(プレストレスト鉄筋コンクリート杭)などの既製コンクリート杭は、遠心工法による製造上、中空形状で製品化されている。
【0003】
このような中空の既製コンクリート杭の杭頭に構造物躯体の基礎底版を結合する場合、杭頭の中空部に中詰めコンクリートを打設し、その上に基礎底版を設置する形態を採るのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図2はそのように結合した従来の結合構造の例を示している。図において、10は地盤に立設された既製コンクリート杭(図示例はPHC杭)、11はその杭10を構成している杭体コンクリート、12は杭端面に配された端板、13は端板12と一体化された状態で杭端部外周に配された補強プレート、15は現場での杭施工時に注入されたセメントミルクと掘削土を攪拌混合したソイルセメントである。
【0005】
建物等の構造物躯体の基礎底版2を、この既製コンクリート杭10の杭頭に結合する場合、杭頭の中空部に必要に応じて鉄筋籠3を挿入し、その上で中詰めコンクリート16を打設している。
【特許文献1】特開平11−21915号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、遠心工法により製作した既製コンクリート杭10の杭体コンクリート11の内周面11aは滑らかであるため、杭頭中空部に中詰めコンクリート16を打設しただけであると、付着強度が十分に確保できない。そのため、杭頭で杭芯に柱や支承等を設置して中空部に軸力を作用させることで既製コンクリート杭10へ鉛直方向の荷重伝達を行う場合、中詰めコンクリート16に鉛直方向反力を期待することが難しかった。従って、中詰めコンクリートを介して軸カ伝達を行う場合は、現場で相応の追加工事を行う必要があり、工事費用が高騰する問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮し、特別な追加工事を行わないでも、杭頭に打設した中詰めコンクリートとの一体性を十分に高めることができ、それにより軸力伝達を可能にする既製コンクリート杭、及び、杭頭内部の軸方向剪断補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の既製コンクリート杭は、中空の杭頭の内周部に多数のシヤコネクタを配設し、該各シヤコネクタの先端を杭体コンクリート内周面より突き出させたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の既製コンクリート杭であって、円筒籠状の支持部材の内周部に円周方向及び軸線方向に間隔的に多数の前記シヤコネクタを接合し、杭製作時に型枠内に該支持部材をセットして杭体コンクリートを遠心打設することにより、杭体コンクリート中に前記支持部材を埋設して、杭体コンクリート内周面より前記各シヤコネクタの先端を突出させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の既製コンクリート杭であって、前記支持部材を、杭の軸線方向に延び且つ一端が杭頭の端板に接合された複数の固定プレートと、該固定プレートを円周方向に間隔的に保持するフープ状の組立筋とで構成し、前記各固定プレートに、軸線方向に間隔的に前記各シヤコネクタの基端を接合したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の既製コンクリート杭であって、前記杭体コンクリートの外周に外殻鋼管を配し、その外殻鋼管の内周に前記各シヤコネクタの基端を接合した状態で、前記杭体コンクリートを遠心打設してなることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の既製コンクリート杭であって、前記杭体コンクリートの内部に鉄筋を配し、その鉄筋に直接または別の部材を介して前記各シヤコネクタの基端を接合したことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の杭頭内部の軸方向剪断補強構造は、請求項1〜5のいずれかに記載の既製コンクリート杭を地盤に立設し、その杭頭に構造物躯体と結合するための中詰めコンクリートを打設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、中空の杭頭の内周部に多数のシヤコネクタを配設し、各シヤコネクタの先端を杭体コンクリート内周面より突き出させたので、その中に中詰めコンクリートを打設することにより、シヤコネクタの剪断抵抗力によって、中詰めコンクリートと杭の一体性を高めることができる。従って、特別な追加工事を行わないでも(つまり、鉛直荷重を伝達するための現場での追加工事を行わないでも)、中詰めコンクリートを介して、杭と構造物躯体との間の確実な軸カ伝達を行うことができ、工事費用の削減が図れる。また、中空部に構造物躯体と一体化する鋼材(アンカー部材など)を設けることで、杭の引っ張り力にも抵抗できる。
【0015】
この場合、既製コンクリート杭の杭頭の中空部にはシヤコネクタの先端が突出することになるが、杭施工方法として、埋め込み工法(プレボーリング形式)や打撃工法を採用したとしても、このシヤコネクタが施工の障害になることはなく、従来の施工方法をそのまま踏襲することができる。また、シヤコネクタの設置、杭体コンクリートの打設は全て工場で行えるため、品質管理が容易になる。また、製造上も、シヤコネクタ関連のわずかな部品を追加するだけなので、従来の遠心打設による製造工程をほぼそのまま踏襲することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、円筒籠状の支持部材の内周部に円周方向及び軸線方向に間隔的に多数の前記シヤコネクタを接合し、杭製作時に型枠内に該支持部材をセットして杭体コンクリートを遠心打設することにより、杭体コンクリート中に前記支持部材を埋設して、杭体コンクリート内周面より前記各シヤコネクタの先端を突出させたので、SC杭やPRC杭ではないPHC杭の場合でも、シヤコネクタの組み付けが簡単にでき、製作が容易である。また、費用的には支持部材とその組立費程度の追加で済むため、従来の既製コンクリート杭を使用した場合に比べ、工費・工期の大幅な削減が可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記支持部材を、杭の軸線方向に延び且つ一端が杭頭の端板に接合された複数の固定プレートと、該固定プレートを円周方向に間隔的に保持するフープ状の組立筋とでフレーム状に構成し、各固定プレートに、軸線方向に間隔的に各シヤコネクタの基端を接合しているので、型枠内への支持部材のセットが容易にできる。
【0018】
請求項4及び請求項5の発明によれば、外殻鋼管の内周や内部鉄筋にシヤコネクタの基端を接合したので、固定プレートやフープ状の組立筋などの支持部材を省略しながら、シヤコネクタの組み付けが容易にできる。
【0019】
請求項6の発明によれば、請求項1〜5のいずれかに記載の既製コンクリート杭の杭頭中空部に構造物躯体と結合するための中詰めコンクリートを打設したので、中詰めコンクリートを介して杭と構造物躯体との間の確実な軸カ伝達を行うことができ、杭頭内部の軸方向の剪断補強効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1(a)は実施形態の既製コンクリート杭20の杭頭の半断面図、(b)は杭頭に配設された支持部材25の平面図である。
【0021】
この既製コンクリート杭20は、PHC杭(遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)であり、基本的には、中空の杭頭の内周部に多数のシヤコネクタ(頭付きスタッド)27を配設し、各シヤコネクタ27の先端を杭体コンクリート21の内周面より突き出させた構成を有している。
【0022】
この既製コンクリート杭(PHC杭)20の端面には端板12が配され、端板12の外周縁には杭端外周部を覆う補強プレート13が一体化されている。15は杭施工時に注入されたセメントミルクと掘削土を攪拌混合したソイルセメント、16は構造物躯体の基礎底版と接合するために杭頭内部に打設された中詰めコンクリートである。
【0023】
符号25は円筒籠状の支持部材であり、これは杭の軸線方向に延び且つ一端が杭頭の端板12に接合された複数の固定プレート26と、固定プレート26を円周方向に間隔的に保持するフープ状の組立筋28とで構成されており、各固定プレート26の内面に上記のシヤコネクタ27の基端が接合されることで一体のフレーム状の支持部材25が形成されている。
【0024】
そして、杭製作時に型枠内に支持部材25をセットして、杭体コンクリートを遠心打設することにより、杭体コンクリート21中に支持部材25が埋設され、その杭体コンクリート21の内周面より各シヤコネクタ27の先端が突出した既製コンクリート杭20が形成されている。
【0025】
この既製コンクリート杭20を用いて構造物躯体を支持する場合は、まず、既製コンクリート杭20を地盤に立設し、その杭頭に構造物躯体と結合するための中詰めコンクリート16を打設する。この際、必要に応じて杭頭の中空部に補強用の鉄筋を建て込む。
【0026】
このように構成することにより、シヤコネクタ27を介して、中詰めコンクリート16と既製コンクリート杭20との一体性を高めることができる。従って、特別な追加工事を行わないでも、中詰めコンクリート16を介して、既製コンクリート杭20と構造物躯体との間の確実な軸カ伝達を行うことができ、工事費用の削減が図れる。また、杭頭の内周部に、多数のシヤコネクタ27を有した支持部材25を配設するだけであるから、杭体コンクリートの遠心打設に特別な支障を生じることもなく、通常通りに製作できる。また、支持部材25を用いてシヤコネクタ27を配設したことにより、製作が容易にできる。
【0027】
なお、上記実施形態では、PHC杭に本発明を適用した場合を説明したが、SC杭やPRC杭に本発明を適用してもよい。
杭体コンクリート21の外周に外殻鋼管を配したSC杭に本発明を適用する場合は、外殻鋼管の内周に前記シヤコネクタ27の基端を接合した状態で、杭体コンクリートを遠心打設すればよい。また、杭体コンクリート21の内部に鉄筋を配したPRC杭に本発明を適用する場合は、鉄筋に直接または別の部材を介してシヤコネクタ27の基端を接合した状態で、杭体コンクリートを遠心打設すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の実施形態の既製コンクリート杭の杭頭の半断面図、(b)は杭頭に配設された支持部材の平面図である。
【図2】従来の既製コンクリート杭の杭頭と構造物躯体の基礎底版との結合構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
12 端板
16 中詰めコンクリート
20 既製コンクリート杭
21 杭体コンクリート
25 支持部材
26 固定プレート
27 シヤコネクタ
28 組立筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の杭頭の内周部に多数のシヤコネクタを配設し、該各シヤコネクタの先端を杭体コンクリート内周面より突き出させたことを特徴とする既製コンクリート杭。
【請求項2】
円筒籠状の支持部材の内周部に円周方向及び軸線方向に間隔的に多数の前記シヤコネクタを接合し、杭製作時に型枠内に該支持部材をセットして杭体コンクリートを遠心打設することにより、杭体コンクリート中に前記支持部材を埋設して、杭体コンクリート内周面より前記各シヤコネクタの先端を突出させたことを特徴とする請求項1に記載の既製コンクリート杭。
【請求項3】
前記支持部材を、杭の軸線方向に延び且つ一端が杭頭の端板に接合された複数の固定プレートと、該固定プレートを円周方向に間隔的に保持するフープ状の組立筋とで構成し、前記各固定プレートに、軸線方向に間隔的に前記各シヤコネクタの基端を接合したことを特徴とする請求項2に記載の既製コンクリート杭。
【請求項4】
前記杭体コンクリートの外周に外殻鋼管を配し、その外殻鋼管の内周に前記各シヤコネクタの基端を接合した状態で、前記杭体コンクリートを遠心打設してなることを特徴とする請求項1に記載の既製コンクリート杭。
【請求項5】
前記杭体コンクリートの内部に鉄筋を配し、その鉄筋に直接または別の部材を介して前記各シヤコネクタの基端を接合したことを特徴とする請求項1に記載の既製コンクリート杭。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の既製コンクリート杭を地盤に立設し、その杭頭に構造物躯体と結合するための中詰めコンクリートを打設したことを特徴とする杭頭内部の軸方向剪断補強構造。

【図1】
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【図2】
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