説明

既設埋設管更新装置および更新方法

【課題】金属製のカラーで接続された既設埋設管を容易に破砕できる既設埋設管の更新装置および更新方法を提供する。
【解決手段】本発明の更新装置および更新方法は、金属製のカラーの円周方向の複数箇所を切断手段によって予め切断するとともに、既設埋設管の周囲の地盤に掘削液を噴射して軟化させた後、円錐状の破砕手段によって既設埋設管のコンクリート部分を内周側から破砕しつつ、カラーを半径方向外側に押動して既設埋設管の周囲に変位させてそこに放置する。切断手段として、既設埋設管の内部からコンクリート部分および金属製カラーを一体に破断する回転刃あるいは突刺刃を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて老朽化した既設埋設管を新しい埋設管に更新する装置および方法に関し、より詳しくは、金属製のカラーで接続されている既設埋設管を容易に破砕できるようにして更新作業を効率よく行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道等を含む各種用途に供される地中埋設管は、経年変化によって老朽化が進むため、適切な時期に新しい埋設管(更新管)に交換する必要がある。
この場合、既設埋設管が埋設されている個所の地盤を地表面から開削して既設埋設管を掘り出した後に新たな管を吊り込んで埋設し直す方法、あるいは図13に示したように地表面に掘設した立坑から水平方向に掘進しつつ既設埋設管を撤去して更新管に交換する方法が用いられる。
【0003】
図13に示した従来の既設埋設管更新方法においては、既設埋設管1を更新管2に交換するべく地表面Gに発進坑3を掘設するとともに、この発進坑3の底部に推進機4を設置する。
そして、推進機4の駆動モータおよび減速機5によってスクリュコンベア6およびその先端に設けられているカッタヘッド7を一体に回転駆動し、カッタヘッド7から前方に突出している掘削ビットやカッタ8により既設埋設管1を破砕しつつその周囲の地盤を掘削する。
さらに、破砕した既設埋設管1の破片および掘削した周囲の地盤の土砂は、スクリュコンベア6およびケーシング9によって後方に移送し、発進坑3側に取り出して地表面G側に除去する。
これと同時に、推進機4によってスクリュコンベア6,カッタヘッド7,更新管2,先導管10を一体に前方に推進し、既設埋設管1を更新管2に順次交換する(下記特許文献1を参照)。
【0004】
一方、既設埋設管更新方法のなかには、既設埋設管の内部に挿入した挿入体を拡径することにより既設埋設管を破壊して半径方向外側に押しのけるとともに、既設埋設管が埋設されていたスペースに更新管を推進することによって既設埋設管を更新するものがある(下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−98323号公報
【特許文献2】特開2007−277974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、既設埋設管のなかには、コンクリート管の端部同士を金属製のカラーで接続したものがある。
この場合、図13に示した既設埋設管更新装置においては、カッタヘッド7に設けた掘削ビットやカッタ8によって金属製のカラーを破壊することになるが、破壊効率が低いことに加えて掘削ビットやカッタ8の寿命が低下するという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載した既設埋設管更新装置は、既設埋設管1を半径方向外側に拡大して破壊するものであるため、既設埋設管1の周囲に設けられている他の埋設管に悪影響を及ぼすばかりでなく、土被りが浅い場合には地上の道路表面を隆起させたりクラックを生じさせたりする場合がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、金属製のカラーで接続されている既設埋設管をも容易に破砕して既設埋設管の更新作業を効率よく行うことができる既設埋設管の更新装置および更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
金属製のカラーによって管体が接続されている既設埋設管を破砕しつつ、更新管を順次推進して前記既設埋設管を更新する装置であって、
前記カラーをその円周方向の複数箇所において切断する切断手段と、
前記既設埋設管の周囲の地盤に液体を噴射する液体噴射手段と、
前記既設埋設管の内部に向かって先細でかつその基端が前記既設埋設管より大径な円錐状であるとともに、その円錐斜面に前記既設埋設管を破砕するカッタが配設されている破砕手段と、
前記既設埋設管の破片および前記地盤の土砂を後方に搬送するコンベアスクリュと、
前記破砕手段および前記スクリュコンベアを回転駆動しつつ前記更新管と共に前方に推進する推進手段と、を備え、
前記破砕手段を前記既設埋設管と同軸に回転駆動して前記カッタにより前記既設埋設管を破砕しつつ前記外周面により前記カラーを半径方向外側に押動するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するための請求項11に記載した手段は、
請求項1に記載した既設埋設管更新装置を用いることにより、金属製のカラーによって管体が接続されている既設埋設管を更新管に更新する方法であって、
前記切断手段により前記カラーをその円周方向の複数箇所において切断し、
前記液体噴射手段により液体を噴射して前記既設埋設管の周囲の地盤を軟化させ、
前記推進機によって前記破砕手段を回転駆動しつつ前方に推進して前記既設埋設管を破砕しながら前記カラーを半径方向外側に押動し、
前記既設埋設管の破片および前記地盤の土砂を前記コンベアスクリュによって後方に搬送しつつ、
前記推進機により前記更新管を順次推進して既設埋設管を更新することを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1に記載した既設埋設管の更新装置および請求項11に記載した既設埋設管の更新方法は、既設埋設管のコンクリート製の管体を接続している金属製のカラーを、掘削ビットやカッタによって破壊するのではなく、切断手段によって予め切断して円周方向に複数の部分に分割した後、分割したカラーを半径方向外側に押動して既設埋設管の周囲に変位させるものである。
そのため、既設埋設管の周囲の地盤に液体を噴射して予め軟化させておくとともに、円錐状の破砕手段を回転駆動して、その外周面に設けたカッタによって既設埋設管をその内周側から破砕しつつ、この破砕手段を前方に推進して分割されたカラーを半径方向外側に押動する。
これにより、掘削ビットやカッタによってカラーを破壊することに起因する掘削作業の効率低下や、掘削ビットやカッタの寿命低下といった問題は発生しない。
さらに、既設埋設管の周囲の地盤を軟化させてから肉厚の薄いカラーのみを半径方向外側に押動する構造であるから、既設埋設管の周囲に設けられている他の埋設管に悪影響を及ぼしたり、地上の道路表面を隆起させたりすることがない。
【0012】
なお、請求項1に記載した既設埋設管更新装置においては、前記破砕手段の前端に案内手段を接続することにより、前記破砕手段が前記既設埋設管と同軸にあるいは更新管の計画中心線と同軸に前進するように案内することができる。
【0013】
また、前記切断手段は、既設埋設管の管体およびカラーを既設埋設管の内部から一体に切断する回転刃と、この回転刃を回転駆動する回転駆動手段とを有することができる。
すなわち、既設埋設管の内部から回転刃によって管体と共にカラーを切断する構造であるから、カラーをその円周方向の複数の箇所において容易に切断することができる。
なお、回転駆動手段として電動モータや油圧モータを用いることができる。
【0014】
このとき、前記切断手段は、既設埋設管のコンクリート製の管体を切断する第1の回転刃および金属製のカラーを切断する第2の回転刃と、第1および第2の回転刃をそれぞれ回転駆動する第1および第2の回転駆動手段と、を有することができる。
これにより、コンクリート製の管体を切断するのに適した第1の回転刃によって管体に切り溝を加工した後、金属製のカラーの切断に適した第2の回転刃をこの切り溝に挿入することにより金属製のカラーを効率よく切断することができる。
なお、回転駆動手段として電動モータや油圧モータを用いることができる。
【0015】
また、前記切断手段には、既設埋設管の内部においてその直径方向に回転刃を揺動させる揺動手段を設けることができる。
これにより、既設埋設管のカラーをその円周方向の一ヶ所において切断した後、回転刃を直径方向に揺動させることにより、円周方向に180度離れた箇所を直ちに切断することができる。
【0016】
また、前記切断手段は、既設埋設管の管体およびカラーを既設埋設管の内部からその直径方向に突き刺して破断する突刺刃と、既設埋設管の内部においてその直径方向に伸縮して突刺刃を直径方向に変位させる伸縮手段とを有することができる。
伸縮手段として、油圧ジャッキやスクリュージャッキ等を用いることができる。
すなわち、既設埋設管の内部から例えば槍の穂先状に形成した突刺刃によって管体と共にカラーを切断するから、簡単な構造でありながらカラーをその円周方向の複数の箇所において容易に切断することができる。
【0017】
また、請求項3乃至6のいずれかに記載した既設埋設管更新装置は、切断手段を既設埋設管の軸線の回りに一体に回動させる回動手段をさらに備えることができる。
すなわち、回転刃や突刺刃によってカラーをその円周方向の一ヶ所において切断した後、回動手段を用いてこれらの回転刃や突刺刃を既設埋設管の軸線の回りに回動させることにより、カラーをその円周方向の別の箇所において切断することができる。
したがって、回転刃や突刺刃を用いてカラーをその円周方向の複数の箇所で切断する作業を容易に行うことができる。
【0018】
なお、前記切断手段は、破砕手段と分離して設けることができる。
すなわち、切断手段を発進坑から既設埋設管の内部に投入し、到達坑へと移動させながらカラーを切断した後、破砕手段を用いて既設埋設管を破砕しつつカラーを既設埋設管の周囲へと半径方向に押動することができる。
【0019】
一方、前記切断手段を前記案内手段に設けるとともに、前記案内手段と前記破砕手段との間に軸受手段を介装して、前記案内手段と前記破砕手段とが一体に回転しないようにすることができる。
これにより、切断手段と破砕手段を一体に前進させることができるから、カラーを破断する作業と既設埋設管を破砕する作業を同時に効率よく行うことができる。
なお、切断手段を用いてカラーを円周方向の複数箇所で切断するときには、回動手段を用いて切断手段を既設埋設管の軸線の回りに一体に回動させる。
【0020】
他方、前記切断手段を前記案内手段に設けるとともに、前記案内手段と前記破砕手段との間にクラッチ手段を介装し、かつ前記クラッチ手段は前記案内手段が前記破砕手段と一体に回転する状態と回転しない状態とに切り換え可能に構成することができる。
これにより、切断手段を破砕手段と一体に前進させることができるから、カラーを破断する作業と既設埋設管を破砕する作業を同時に効率よく行うことができる。
なお、切断手段を用いてカラーを円周方向の複数箇所において切断するときには、クラッチを接続状態として破砕手段を回動させることにより案内手段を一体に回動させ、切断手段を既設埋設管の軸線の回りに一体に回動させることができる。
したがって、切断手段に回動手段を設ける必要がなく、その構造を簡単なものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属製のカラーでコンクリート製の管体が接続されている既設埋設管の更新作業を効率よく行うことができる既設埋設管の更新装置および更新方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の既設埋設管更新装置を示す全体断面図。
【図2】破砕手段を拡大して示す斜視図。
【図3】切断手段を示す断面図。
【図4】切断手段の作動を示す断面図。
【図5】(A)カラーを切断する前の既設埋設管の断面図、および(B)カラーを切断した後の既設埋設管の断面図。
【図6】図1に示した既設埋設管更新装置の作動を示す断面図。
【図7】図1に示した既設埋設管更新装置の作動を示す断面図。
【図8】図1に示した既設埋設管更新装置の作動を示す断面図。
【図9】カラーを半径方向外側に変位させた状態の既設埋設管を示す断面図。
【図10】第2実施形態の既設埋設管更新装置を示す断面図。
【図11】第3実施形態の既設埋設管更新装置の切断手段を示す断面図。
【図12】第4実施形態の既設埋設管更新装置の切断手段を示す断面図。
【図13】従来の既設埋設管更新装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1〜図12を参照し、本発明の既設埋設管の更新装置および更新方法の各実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の参照符号を用いて重複した説明を省略する。
【0024】
第1実施形態
まず最初に図1〜図9を参照し、第1実施形態の既設埋設管の更新装置について説明する。
【0025】
図1に示した本第1実施形態の既設埋設管の更新装置100は、図13に示した従来の既設埋設管更新装置のカッタヘッド7に、既設埋設管13の内部に向かって先細であり、かつその基端が既設埋設管13より大径な円錐状の破砕コーン(破砕手段)21を取り付けた構造となっている。
【0026】
この破砕コーン21は、図2に示したように、既設埋設管13を破砕するための複数のカッタ22をその円錐外周面21a上に有している。
また、円錐外周面21aには、カッタ22が破砕した既設埋設管13の破片をスクリュコンベア6の側に取り込むための複数の開口23が貫設されている。
さらに、円錐外周面21aのうち基端側の部分には、既設埋設管13の周囲の地盤に掘削液を噴射するための噴射孔24が貫設されており、スクリュコンベア6の内部に挿通された図示されない配管から高圧の掘削液が供給されるようになっている。
【0027】
また、破砕コーン21の前端には、軸受25aを有した円筒状の接続部材25を介して案内手段26が接続されている。
この案内手段26は、既設埋設管13の内周面上を摺動する複数の摺動部材26aと、これらの摺動部材26aを連結する前後の連結部材26bとから構成されている。
そして、後側の連結部材26bの直径方向の中央部に接続部材25の前端が軸支されるとともに、この連結部材26bの直径方向の端部と接続部材25との間に伸縮自在な油圧シリンダ27が介装されている。
なお、この油圧シリンダ27には、到達坑の側から延びる図示されない油圧配管が接続されていて、到達坑の側からその伸縮動作を制御できるようになっている。
【0028】
これにより、発進坑3の内部に設けられている推進機4を用いてスクリュコンベア6を回転駆動すると、カッタヘッド7および破砕コーン21が一体に回転するが、軸受25aの作用によって案内手段26が回転することはない。
また、到達坑の側から油圧シリンダ27の伸縮を制御することにより、破砕コーン21が更新管の計画中心と常に同軸となるように制御することができる。
【0029】
一方、本第1実施形態の既設埋設管更新装置100は、破砕コーン21とは別体に設けられた切断手段30を備えている。
この切断手段30は、図3に示したように、既設埋設管13の内部に挿入される管状の本体部分31と、この本体部分31の外周にそれぞれ脚32を介して取り付けられた複数の摺動体33とを有しており、発進坑3の側から既設埋設管13の内部に投入された後、到達坑の側から牽引されて既設埋設管13の内部を前進するようになっている。
【0030】
また、この切断手段30は、本体部分31の一端側の内部に軸受34,34によって支持された、本体部分31の軸線の回りに回動自在な管状体35を有している。
そして、この管状体35の後端側の内周面に突設されたブラケット36には、側面視でL字形の揺動アーム37の基端が揺動自在に軸支されている。
さらに、揺動アーム37の揺動端には、電動モータ38が取り付けられ、既設埋設管13の管体および鋼製カラー14を既設埋設管13の内部から切断可能な回転刃39を回転駆動するようになっている。
【0031】
一方、管状体35の前端側の内周面に突設されたブラケット41には、油圧シリンダ42の基端が軸支されている。
そして、この油圧シリンダ42のピストン42aの先端は、L字形揺動アーム37の一端37aに軸支されている。
これにより、油圧シリンダ42のピストン42aを伸縮させることによって、回転刃39を既設埋設管13の内部においてその直径方向に往復揺動させることができる。
【0032】
他方、本体部分31の前端側の内部には、減速機付きモータ43が設けられており、その回転軸44は、管状体35の前端側に固着された蓋体45に接続されている。
これにより、減速機付きモータ43を作動させることによって、管状体35をその軸線の回りに正逆両方向に回動させることができる。
【0033】
なお、電動モータ38、油圧シリンダ42、および減速機付きモータ43は、到達坑の側から延びる電線および油圧配管46が接続された制御手段47によってその作動が制御されるようになっている。
【0034】
次に図4〜図9を参照し、本第1実施形態の既設埋設管更新装置100を用いて既設埋設管13を更新管2に更新する方法について説明する。
【0035】
本第1実施形態の更新装置100を用いて既設埋設管13を更新する際には、まず最初に発進坑3の側から既設埋設管13の内部に切断手段30を投入した後、到達坑の側から牽引することによって既設埋設管13の内部で徐々に前進させる。
【0036】
そして、既設埋設管13の単位長さに等しい所定距離だけ切断手段30が移動する毎に、電動モータ38を作動させて回転刃39を回転駆動するとともに、油圧シリンダ42のピストン42aを伸縮させることによって揺動アーム37の揺動端を上下方向に揺動させる。
すると、回転刃39は、既設埋設管13の内部で上下方向に往復変位し、既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製のカラー14のうち上下方向に対向する2箇所をそれぞれ切断する。
【0037】
次いで、減速機付きモータ43を作動させて、管状体35をその軸線の回りに例えば90度回動させる。
そして、電動モータ38を再び作動させて回転刃39を回転駆動するとともに、油圧シリンダ42のピストン42aを伸縮させることによって揺動アーム37の揺動端を左右方向に揺動させる。
すると、回転刃39は、既設埋設管13の内部で左右方向に往復変位し、既設埋設管13の管体およびカラー14のうち水平方向に対向する2箇所をそれぞれ切断する。
【0038】
これにより、既設埋設管13のコンクリート製の管体を接続している金属製のカラー14は、円周方向の4箇所で切断され、図5(A)に示した最初の状態から図5(B)に示した切断完了状態となる。
なお、減速機付きモータ43の作動を制御することにより、カラーを円周方向の8箇所で切断することもできるし、より多くの箇所で切断することもできる。
【0039】
金属製カラー14の切断が完了すると、切断手段30を既設埋設管13の内部でさらに前進させた後、発進坑3の内部の推進機4を用いてスクリュコンベア6、カッタヘッド7および破砕コーン21を一体に回転させながら前方に推進する。
同時に、図6に示したように、破砕コーン21の円錐外周面21aに設けられている複数の噴射孔24から掘削液Wを噴射することにより、既設埋設管13の周囲の地盤を軟化させる。
【0040】
すると、図7に示したように、破砕コーン21の円錐外周面21aに設けられている複数のカッタ22は、既設埋設管13のうちコンクリート製の管体をその内周側から破砕しつつ、金属製カラー14を既設埋設管13に対してその半径方向外側に押動する。
このとき、金属製カラー14は、図5(B)に示したようにその円周方向の複数箇所が切断されており、かつ既設埋設管13の周囲の地盤は噴射孔24から噴射された掘削液によってある程度除去されつつ軟化している。
これにより、複数のカッタ22は、金属製カラー14を破壊することなく、図8および図9に示したように、既設埋設管13の周囲の地盤に向かって金属製カラー14を半径方向外側に容易に押動することができる。
【0041】
すなわち、本第1実施形態の既設埋設管更新装置100においては、カッタ22が金属製カラー14を破壊しあるいは切削することがないから、既設埋設管13を破砕する作業の効率が低下したりカッタ22の寿命が低下したりすることがない。
さらに、既設埋設管13の周囲の地盤に高圧の掘削液Wを噴射し、この地盤をある程度除去しつつ軟化させてから厚みの薄いカラー14を半径方向外側に押動するので、既設埋設管13の周囲に設けられている他の埋設管に悪影響を及ぼしたり、地上の道路表面を隆起させたりすることがない。
【0042】
なお、金属製カラー14は、推進した更新管2の周囲に残置することになるが、破砕した既設埋設管13の破片や土砂と共に、スクリュコンベア6によって発進坑3の側に回収することもできる。
【0043】
第2実施形態
次に図10を参照し、第2実施形態の既設埋設管更新装置について説明する。
【0044】
上述した第1実施形態の更新装置100においては、切断手段30が破砕コーン21とは別体に設けられていた。
これに対し、本第2実施形態の更新装置200における切断手段50は、接続部材51およびクラッチ52を介して破砕コーン21に接続されて、スクリュコンベア6、カッタヘッド7および破砕コーン21と一体に既設埋設管13の内部で前進する構造となっている。
【0045】
具体的に説明すると、切断手段50は、既設埋設管13の内部に挿入される有底円筒状の本体部分53を有しており、その底壁53aにクラッチ52が連結されている。
また、本体部分53の外周には複数の摺動体53bが設けられており、既設埋設管13の内部を摺動して前進するようになっている。
【0046】
また、本体部分53の後端側の内周面に突設されたブラケット54には、油圧シリンダ55の基端が軸支されている。
さらに、本体部分53の前端側の内周面に突設されたブラケット56には、側面視でL字形の揺動アーム57の基端が揺動自在に軸支されている。
そして、この揺動アーム57の揺動端には、電動モータ58が取り付けられ、既設埋設管13の管体および鋼製カラー14を既設埋設管13の内部から切断可能な回転刃59を回転駆動するようになっている。
これにより、油圧シリンダ55を伸縮させることによって、回転刃59を既設埋設管13の内部においてその直径方向に往復揺動させることができる。
【0047】
一方、この切断手段50の本体部分53は、クラッチ52の作動を制御することにより、既設埋設管13の軸線の回りに破砕コーン21と一体に回動させることができる。
これにより、回転刃59によって既設埋設管13のカラー14を切断する位置を変更するときには、クラッチ52を接続状態とした後、発進坑3に設けた推進機4を作動させて破砕コーン21を例えば90度だけ回動させると、切断手段50の本体部分53もまた90度回動することになる。
なお、破砕コーン21を用いて既設埋設管13を破砕するときには、クラッチ52を接続解除状態とし、切断手段50が破砕コーン21と一体に回転しないようにする。
【0048】
なお、クラッチ52、油圧シリンダ55、および電動モータ58は、到達坑の側から延びる電線および油圧配管が接続された図示されない制御手段によってその作動が制御されるようになっている。
【0049】
すなわち、本第2実施形態の既設埋設管更新装置200は、切断手段50を破砕コーン21に接続したものである。
これにより、切断手段50を用いて既設埋設管13のコンクリート製の管体や金属製カラー14を切断する作業と、破砕コーン21を用いて既設埋設管13を内周側から破砕する作業およびカラー14を半径方向外側に押動する作業とを同時に実施できるから、既設埋設管の更新作業を効率よく行うことができる。
また、切断手段50は、既設埋設管13の軸線の回りに回動するための機構を有していないので、その構造を簡単なものとすることができる。
【0050】
第3実施形態
次に図11を参照し、第3実施形態の既設埋設管更新装置について説明する。
【0051】
上述した第2実施形態の更新装置200においては、切断手段50に設けた一枚の回転刃59によって既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製のカラー14を切断するようになっていた。
これに対して、本第3実施形態の既設埋設管更新装置300の切断手段60は、コンクリート製の管体を切断するための回転刃と、金属製のカラー14を切断するための回転刃の両方を備えている。
【0052】
具体的に説明すると、ブラケット56にその基端が軸支されている揺動腕61の揺動端はT字形となっており、その一方に端部に設けた第1の電動モータ62が第1の回転刃63を回転駆動するとともに、その他方の端部に設けらた第2の電動モータ64が第2の回転刃65を回転駆動するようになっている。
そして、第1の回転刃63はコンクリート製の管体を切断するのに最適な構造となっており、第2の回転刃65は金属製のカラー14を切断するのに最適な構造となっている。
【0053】
この切断手段60を用いて既設埋設管13のカラー14を切断する際には、まず最初に第1の回転刃63を上方に変位させて既設埋設管13のコンクリート製の管体に上側の切り溝を加工する。
次いで、クラッチ52を接続した状態で破砕コーン21を90度回動させることにより、切断手段60を既設埋設管13の軸線の回りで90度回動させた後、第1の回転刃63を水平に変位させて、既設埋設管13のコンクリート製の管体に水平方向左側の切り溝を加工する。
同様に、切断手段60を既設埋設管13の軸線の回りでさらに90度回動させた後、第1の回転刃63を下方に変位させて、既設埋設管13のコンクリート製の管体に下側の切り溝を加工する。
このとき、揺動アーム61を上方に揺動させて第2の回転刃65を上側の切り溝内に挿入した後、第2の電動モータ64を作動させて第2の回転刃65を回転駆動しつつ、揺動アーム61をさらに上方に揺動させることにより、金属製のカラー14の上側部分を切断することができる。
【0054】
その後、切断手段60を既設埋設管13の軸線の回りでさらに90度回動させた後、第1の回転刃63を水平に変位させて、既設埋設管13のコンクリート製の管体に水平方向右側の切り溝を加工する。
このとき、揺動アーム61を水平方向左側に揺動させて第2の回転刃65を水平方向左側の切り溝内に挿入した後、第2の電動モータ64を作動させて第2の回転刃65を回転駆動しつつ、揺動アーム61をさらに水平方向左側に揺動させることにより、金属製のカラー14の右側部分を切断することができる。
以下、同様の操作を繰り返すことにより、図5(B)に示したように既設埋設管13のカラー14の上下左右の4箇所を切断することができる。
【0055】
すなわち、本第3実施形態の既設埋設管更新装置300における切断手段60は、既設埋設管13のうちコンクリート製の管体を切断するための第1の回転刃63と、金属製のカラー14を切断するための第2の回転刃65の両方を備えている。
これにより、既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製カラー14をそれぞれ容易に切断することができるから、既設埋設管の更新作業を効率よく行うことができる。
【0056】
第4実施形態
次に図12を参照し、第4実施形態の既設埋設管更新装置について説明する。
【0057】
上述した第1〜第3実施形態の更新装置100,200,300の各切断手段30,50,60は、いずれも回転刃を用いて既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製カラー14を切断する構造となっていた。
これに対して、本第4実施形態の既設埋設管更新装置400の切断手段70は、既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製カラー14に、既設埋設管13の内部からその直径方向に突刺刃を突き刺して破断する構造となっている。
【0058】
具体的に説明すると、切断手段70の揺動腕71の先端には油圧ジャッキ72が取り付けられている。
そして、この油圧ジャッキ72のピストン73の先端には、槍の穂先のような側面視で三角形状の薄い突刺刃74が固定されている。
これにより、既設埋設管13の内部において油圧ジャッキ72を伸長させてピストン73を上昇させると、突刺刃74が既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製のカラー14に突き刺さり、カラー14の上側部分を破断する。
【0059】
次いで、ピストン73を降下させて油圧ジャッキ72の全長を短縮させた後、クラッチ52を接続した状態で破砕コーン21を90度回動させることにより、油圧ジャッキ72が水平方向に延びるようにする。
そして、油圧ジャッキ72を伸長させると、既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製のカラー14に突刺刃74が突き刺さり、カラー14の水平方向左側の部分を破断する。
以下、同様の操作を繰り返すことにより、図5(B)に示したように既設埋設管13のカラー14の上下左右の4箇所を切断することができる。
【0060】
すなわち、本第4実施形態の既設埋設管更新装置400における切断手段70は、油圧ジャッキ72と突刺刃74とを組み合わせたものであり、その構造が極めて簡単である。
これにより、既設埋設管13のうち金属製カラー14の厚みが薄いものについては、これを容易に破断できるから、既設埋設管の更新作業を効率よく行うことができる。
【0061】
以上、本発明による既設埋設管の更新装置および更新方法の各実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した第1実施形態の既設埋設管更新装置10の切断手段30においては、その後端側に一枚の回転刃39を設ける構造となっていた。
これに対して、この切断手段30を改造し、その前端側に第1の回転刃を揺動自在に設けるとともに、その後端側に第2の回転刃を設ける構造とすることにより、既設埋設管13のコンクリート製の管体および金属製のカラー14をそれぞれ個別に効率よく切断する構造とすることもできる。
また、切断手段30,50,60における電動モータ38、58、62、64は、いずれも油圧モータに置き換えることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 既設埋設管
2 更新管
3 発進坑
4 推進機
5 駆動モータおよび減速機
6 スクリュコンベア
7 カッタヘッド
8 掘削ビット
9 ケーシング
10 先導管
11 刃口
13 既設埋設管
14 カラー
21 破砕コーン(破砕手段)
22 カッタ
24 噴射孔
25 接続部材
25a クラッチ
30 切断手段
50 切断手段
60 切断手段
100 第1実施形態の既設埋設管更新装置
200 第2実施形態の既設埋設管更新装置
300 第3実施形態の既設埋設管更新装置
400 第4実施形態の既設埋設管更新装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のカラーによって管体が接続されている既設埋設管を破砕しつつ、更新管を順次推進して前記既設埋設管を更新する装置であって、
前記カラーをその円周方向の複数箇所において切断する切断手段と、
前記既設埋設管の周囲の地盤に液体を噴射する液体噴射手段と、
前記既設埋設管の内部に向かって先細でかつその基端が前記既設埋設管より大径な円錐状であるとともに、その円錐斜面に前記既設埋設管を破砕するカッタが配設されている破砕手段と、
前記既設埋設管の破片および前記地盤の土砂を後方に搬送するコンベアスクリュと、
前記破砕手段および前記スクリュコンベアを回転駆動しつつ前記更新管と共に前方に推進する推進手段と、を備え、
前記破砕手段を前記既設埋設管と同軸に回転駆動して前記カッタにより前記既設埋設管を破砕しつつ前記外周面により前記カラーを半径方向外側に押動するように構成されていることを特徴とする既設埋設管更新装置。
【請求項2】
前記破砕手段の前端に接続されて前記既設埋設管の内部に位置し、前記破砕手段が前記既設埋設管と同軸に前進するように案内する案内手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載した既設埋設管更新装置。
【請求項3】
前記切断手段は、前記既設埋設管の管体およびカラーを前記既設埋設管の内部から一体に切断する回転刃と、この回転刃を回転駆動する回転駆動手段とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載した既設埋設管更新装置。
【請求項4】
前記切断手段は、前記既設埋設管のコンクリート製の管体を切断する第1の回転刃および金属製の前記カラーを切断する第2の回転刃と、前記第1および第2の回転刃をそれぞれ回転駆動する第1および第2の回転駆動手段と、を有していることを特徴とする請求項3に記載した既設埋設管更新装置。
【請求項5】
前記切断手段は、前記既設埋設管の内部においてその直径方向に前記回転刃を揺動させる揺動手段を有していることを特徴とする請求項3または4に記載した既設埋設管更新装置。
【請求項6】
前記切断手段は、前記既設埋設管の管体およびカラーを前記既設埋設管の内部からその直径方向に突き刺して破断する突刺刃と、前記既設埋設管の内部においてその直径方向に伸縮して前記突刺刃を変位させる伸縮手段とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載した既設埋設管更新装置。
【請求項7】
前記切断手段を前記既設埋設管の軸線の回りに一体に回動させる回動手段をさらに備えることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載した既設埋設管更新装置。
【請求項8】
前記切断手段は、前記破砕手段と分離して設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載した既設埋設管更新装置。
【請求項9】
前記切断手段は、前記案内手段に設けられており、
かつ前記案内手段と前記破砕手段との間に軸受手段が介装されて、前記案内手段と前記破砕手段とが一体に回転しないようになっていることを特徴とする請求項9に記載した既設埋設管更新装置。
【請求項10】
前記切断手段は、前記案内手段に設けられており、
かつ前記案内手段と前記破砕手段との間にクラッチ手段が介装されて、
前記クラッチ手段は、前記案内手段が前記破砕手段と一体に回転する状態と回転しない状態とに切り換え可能に構成されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載した既設埋設管更新装置。
【請求項11】
請求項1に記載した既設埋設管更新装置を用いることにより、金属製のカラーによって管体が接続されている既設埋設管を更新管に更新する方法であって、
前記切断手段により前記カラーをその円周方向の複数箇所において切断し、
前記液体噴射手段により液体を噴射して前記既設埋設管の周囲の地盤を軟化させ、
前記推進機によって前記破砕手段を回転駆動しつつ前方に推進して前記既設埋設管を破砕しながら前記カラーを半径方向外側に押動し、
前記既設埋設管の破片および前記地盤の土砂を前記コンベアスクリュによって後方に搬送しつつ、
前記推進機により前記更新管を順次推進して既設埋設管を更新することを特徴とする既設埋設管の更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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