説明

既設杭引抜きの際の地盤安定化工法

【課題】
既設杭の引抜き作業は、掘削穴と軟弱な地盤のため重機の転倒が起き易くきわめて危険が伴う作業である。
【解決手段】
掘削穴に補強用の立方形のボックスAと楔状のボックスBを配置することによって、掘削穴の崩れを防ぎ、重機の重力による圧力を分散させるため安全で迅速な作業が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設杭引抜きの際に引抜き機等の重機の安定化を図るための地盤の安定化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
構築物を撤去した際に残る基礎杭は、通常1〜1.5m位地中に杭頭があり、これを掘り当てて杭頭を露現させ、ここに杭引抜き機を進入させて引抜き作業を開始する。しかし、このような作業現場は、杭引抜きのための注水や建物撤去後の瓦礫等できわめて荒れている。そして前記したように杭頭が地中に埋入されているため、引抜き作業に当っては、地面を逆台形状に掘り下げるため、作業中に斜面が崩れ引抜きのために進入する重機は極めて不安定で、転倒等の事故があり常に危険が伴っている。
【特許文献1】特開2007−138544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
埋設されている既設杭はその現場にもよるが、大体8m程度の長さと、30〜45cm位の直径のあるコンクリート杭が4〜5本一ヶ所に打設されている。このため作業に当っては、この長さに相当する引抜き用のケーシングと、これを垂直に支えるためのリーダーと、作業をするためのキャタピラ付きの引抜き機(以下重機と称する)が必要であり、一般には既設杭の杭頭の周囲に、杭を掘り出した際の土を埋め戻しながらさらに鉄板を敷いて地盤の安定を図っているが、作業機の重量があるため、掘削穴が崩れ鉄板が傾き、ケーシングによる掘り出し穴が傾き、これを修正するためしばしば作業を中断することとなり、工事の遅延があるばかりか、重機の転倒等の危険が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者はこのような危険が伴う原因となっている地盤の安定化について鋭意研究を重ねた結果本発明の工法に到達したものであって、本発明は、掘削穴の中央に補強のための四角形の箱体Aを配設し、この両側辺に楔形状のボックスBを配置して一体とすることによって掘削穴を埋め、この箱体A・B上に掘削した穴を跨いで鉄板Fを敷設することによって杭抜き機の進入地盤を形成した。
【0005】
この形成された進入地盤は図示するように掘削穴(2)の中央に四角形の箱体Aを配置し、この箱体Aの側辺に楔状のボックスBを挿入してB・A・Bと列置することで、掘削穴(2)の斜面は楔状ボックスBの斜面に当接される。図2中の矢印は掘削穴(2)と四角形の箱体A、楔状ブロックBにかかる重力の分布に示すもので、四角形の箱体にかかる
力をS、楔状ブロックBにかかる力Rのように分散されて軽減される。
【0006】
従って鉄板F上で引抜機D(図示では作図上キャタピラのみを示している)が進入して杭引抜作業をしていても堀削穴(2)の傾斜面は楔状ブロックBの斜面に圧えられているため崩れることなく、鉄板Fも安定して杭抜き機Dの安全が保たれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は地味で目立たない作業で、しかも常に危険が伴う既設杭の引抜き作業を安全で確実に行うことを目的とするもので、構造的にも四角形の箱体Aと楔状ブロックBを組合せるのみで重機Dからかかる力を分散させて地盤の安定化が図れるもので安全作業の迅速に貢献し、その効果は極めて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
添付図面により、本考案を実施するための最良の形態を説明すると、図1は、本発明の杭引抜きの際の実施例図であって、Aは杭引抜機(以下重機と称す)であり、キャタピラーにより移動する。この重機Dは既設杭引抜きのためのケーシング及びリーダーを垂直に保つためのリーダーを立設して構成されている。この引抜き工法は、前記特許文献1に示される工法であって、既設杭に対してケーシングを挿入しながらオーガーの回転により作動する排土作用をする回転羽根の回動によって埋設されている杭の周囲を掘りながら羽根を進入させる。この際直立しているリーダーによってケーシングの垂直の進入を保つこととする。したがって、この際重機が傾いた場合には、直立しているケーシングが傾き、これによって杭に沿って進入している掘り出しの羽根が杭に接触して杭の掘出しが不能となる。このため杭引抜き作業を中断するばかりか、重機の転倒による事故も多発している。
【0009】
既設杭の杭頭を露現させるため掘削穴(2)は、図示するように逆台形に形成されているため傾斜面は崩れ易く、したがって穴(2)の上面に鉄板Fを渡しても重量のある重機Dが載った場合にその重量によって斜面が崩れる。このため本発明にあっては掘削穴(2)に四角形の補強箱Aとこれを支える楔形のボックスBを配置し、この上に鉄板Fを掘削穴(2)を跨いで敷設することによって重機にかかる重力は掘削穴(2)の真下方向と傾斜面方向とに分散されて鉄板Fは水平を保つことができる。このため重機の傾きを防ぎ、リーダーやケーシングの傾きをなくして安全で作業の進行を早めることが可能となった。
【0010】
図2は既設杭と掘削穴(2)に配置される四角形の補強箱体A及び楔形ボックスBさらにこの上面に渡す鉄板F、さらにこの上に載る重機(キャタピラのみを示す)の関係図を示す。なお、図中の(3)は補強筋を示している。
【0011】
図3は作業現場に敷設する鉄板Fと露現している既設杭の杭頭を表わす平面図であって、四角形の補強箱Aの先端には半裁の四角形の補強箱A1が配置されていて、引抜作業を容易とし、これと接続をして方形の補強箱A2を配置する。
【0012】
図4は補強箱体A・Bと既設杭との関係を表わす平面図であって、図4の鉄板Fを除いた部分詳細図であって、図にあっては各箱体にフック掛け用の金具を設けてある。図5は補強箱体A・Bの全体を示す斜視図であって、Xは四角形の補強箱A、Yは楔形ボックスBの斜視図であり、ZはB・A・Bの組合せた掘削穴(2)内の配置図を示している。
【実施例】
【0013】
添付図面により本発明工法の実施例を説明すると、図3、図4を参照して、埋設されている既設杭は5本のコンクリート杭で、径は30cm、長さは8mであり、杭間はそれぞれ1.5mである。杭頭は地中1.5m位置に露現している。したがって、この杭頭が露現するように溝穴(2)を掘削する。本発明に用いる杭の引抜き工法は前記特許文献1に示す工法を用いる。即ち螺旋羽根によって杭周囲にケーシングを進入させて掘り、杭を露出させて引抜く工法を用いるもので、ケーシングが杭に沿って垂直に進入することが作業効率を上げる条件である。
【0014】
本発明の地盤安定化工法は、既設杭の杭頭を露現させた掘削穴(2)に四角形の補強箱Aと、この両側に楔形の補強ボックスBを一体として埋設配置してこの上から鉄板Fを掘削穴(2)を跨いで敷設することによって、重機の進入足場とするもので、重機の重量は鉄板Fを介して補強箱Aにより直下方向の力Sと、楔形ボックスBによる傾斜方向の力Rに分散される。特に楔形ボックスBを挿入することにより掘削穴(2)の斜面を圧えるため穴の崩壊を防止する効果があり、鉄板Fの傾きを防いでいる。
【0015】
実施例において使用した補強箱A2の大きさは1250m/m×2300m/m×1250m/m、長方形の補強箱A1は1250m/m×2300m/m×1250m/mとし、楔形ボックスBは方形の補強箱Aに見合う高さ及び幅として一体に結合する。図示していないが、この補強箱の内部には補強のための梁や筋かい(3)を設ける。また掘削穴(2)に渡す鉄板Fは、22m/m×1500m/m×6000m/mであり、重機のキャタピラーの幅4mに十分間に合う大きさとする。
【産業上の利用可能性】
【0016】
上述のように本発明工法は、既設杭の引抜きという地味な作業であるが、常に危険が伴う作業を安全に迅速に遂行できるため、地域の開発等に大いに期待貢献できる点で、この利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明工法の概略図
【図2】本発明の要部である掘削穴の断面図
【図3】掘削穴の鉄板を含む平面図
【図4】掘削穴上部の平面図
【図5】補強箱の斜視図及び組合せ側面図
【符号の説明】
【0018】
2…掘削穴
A…四角形の補強箱
B…楔形の補強箱
F…鉄板
D…杭抜き機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設杭の杭頭を露現させるために掘削した堀削穴の中央部に四角形の補強用箱体Aを配置し、該箱体Aの両側に楔状のボックスBを挿入列置して一体とし、該両箱体A・B上に前記掘削穴を跨いで鉄板を敷設して杭引抜機Dの進入足場としたことを特徴とした既設杭引抜きの際の地盤安定化工法。
【請求項2】
四角形の補強用箱体Aは最前部に長方形の箱体A1を使用し、その後方に正方形の箱体A2を配置することを特徴とした請求項1に記載の既設杭引抜きの際の地盤安定化工法。
【請求項3】
補強用箱体A・Bは構成する内部に筋かい等を設けて補強することを特徴とした請求項1に記載の既設杭引抜きの際の地盤安定化工法。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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