説明

既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法及びその試料採取器

【課題】既設構造物の直下やその周囲における地盤改良の工事において、所定深度から地盤表面までに造成される固結体を確実に早期に硬化させて所望の強度になるようにした高圧噴射系地盤改良工法を提供する。
【解決手段】地盤中の硬化前の固結体の一部を試料採取器10によって採取し、この試料採取器10で採取した硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって硬化促進剤の添加量を決定すると共に、管ロッド5を地盤中の所定深度まで挿入して、この管ロッド5から簡易配合試験によって決定した添加量の硬化促進剤を、所定深度から地盤表面までの地盤中に造成している硬化前の固結体に噴射して添加することにより、地盤中の所定深度から地盤表面までに造成される固結体を早期に硬化するようにした既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港における滑走路や誘導路、自動車の通る道路、あるいは貯油槽施設や港湾施設などの既設構造物の直下やその周囲の地盤において、地震などにより引き起こされる液状化現象を防止するための地盤改良を行う既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法及びその試料採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物の直下やその周囲の地盤において、この地盤の液状化現象を防止するための高圧噴射系地盤改良工法の一例であるクロスジェット式高圧噴射系地盤改良工法としては、高圧噴射系地盤改良施工機械を用いて、図8に示すように、ケーシングパイプにて掘削した孔に三重管構造の管ロッド21を挿入し、挿入後、この管ロッド21を回転させつつ管ロッド21を徐々に上方に引き抜きながらその先端の上下二段となる箇所から高圧ジェット水wjを交差するように噴射して、この交差する2本の高圧ジェット水wjにより地盤を破壊するように切削して行く。また、この交差する2本の高圧ジェット水wjにあっては交差すなわち衝突した後はその地盤破壊エネルギーが急激に減少することにより地盤の切削がなくなり、これによって所望の大きさでの切削が行われる。そして、この高圧ジェット水wjによって切削された場所に、管ロッド21の先端からセメントミルクなどの硬化材saを噴射して、ここに硬化材saを充填することにより地盤中に円柱状の固結体Kを造成する。このように地盤中に所望の大きさの円柱状の固結体Kを造成して、地盤を強固なものにすることで、既設構造物直下やその周囲の地盤における液状化現象を防止する工法が知られていた。
【0003】
また、このようなクロスジェット式高圧噴射系地盤改良工法としては、特開平8−41859号公報にも同様のものが示されており、これも、地盤中に挿入した管ロッドから交差する2本の高圧ジェット水をwj噴射して地盤を切削して行き、そこにセメントミルクなどの硬化材saを噴射して充填し、地盤中に円柱状の固結体Kを造成するものである。
【0004】
そして、このクロスジェット式高圧噴射系地盤改良工法を採用した空港における滑走路や誘導路などの既設構造物における地盤改良の工事では、飛行機の発着に支障が来さないように、日中の飛行機の発着時間帯を避けて、深夜から早朝にかけての決められた時間内での作業となっていたが、早朝の飛行機の発着に間に合わせるため、地盤中の固結体Kにあって所定深度Aから地盤表面までに造成される固結体Kを早期に硬化させて所望の強度を有するようにしていた。
【0005】
このクロスジェット式高圧噴射系地盤改良工法としては、図9(a)に示すように、まず、高圧噴射系地盤改良施工機械22を配置すると共に、超高圧水ポンプ23や空気圧縮機24及びセメントプラント25を配置する。そして、これらを用いて、地盤中に挿入した管ロッド21から交差する2本の高圧ジェット水wjを噴射して地盤を破壊するように切削して行くと共に、この切削された場所に、セメントプラント25から供給されたセメントミルクなどの硬化材saを管ロッド21の先端から噴射して、ここに硬化材saを充填して行くが、このとき、図9(b)に示すように、所定深度Aに達すると、図9(c)に示すように、一旦管ロッド21を引き抜いて、管ロッド21内の硬化材saを排出して内部を洗浄する。そして、図9(d)に示すように、早期に硬化するように配合した早期硬化材ssをセメントプラント25から新たに管ロッド21内に供給して、管ロッド21を再び挿入し、所定深度Aより、図9(e)に示すように、この早期硬化材ssを噴射して充填して行く。これにより、所定深度Aから地盤表面までは早期硬化材ssが充填されて、ここを早期に硬化させて、所望の強度を有する固結体Kを造成するようにしていた。なお、この固結体Kの造成において、通常、硬化材saでは硬化して所望の強度になるまでが数日から三、四週間かかるものであるが、早期硬化材ssでは数時間である。
【0006】
また、硬化材saや早期硬化材ssにはセメントミルクに硬化促進剤などを配合しているが、特に、早期硬化材ssでは、その硬化促進剤を配合する量が多量となるものである。なお、この硬化促進剤だけでは硬化の進行が一定になりにくいため、硬化促進剤と共に硬化遅延材も配合するが、これは極めて少量である。
【0007】
一方、この早期硬化材ssにおけるセメントミルクへの硬化促進剤の配合については、あらかじめ地盤を採取しておき、この採取した地盤を用いて事前に室内配合試験を行い、その室内配合試験の結果に基づいて硬化促進剤の量を決定していたが、このとき、実際の施工場所にて確実に早期硬化させるため、決定した硬化促進剤の量に安全率をかけるように、具体的には安全のため5割増しで硬化促進剤を配合するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−41859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる従来の高圧噴射系地盤改良方法において使用する早期硬化材にあっては、実際の施工場所で確実に早期硬化させるため、室内配合試験よって決定した硬化促進剤の量に安全率をかけるようにして、極めて多量の硬化促進剤を配合する必要があった。しかしながら、この硬化促進剤は、セメントミルクなどと異なり非常に高価なものであったため、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物における地盤改良の工事では、数百本から数千本の固結体を造成する必要があることから、その工費が膨大なものになってしまうという問題があった。
【0010】
一方、この早期硬化材では、室内配合試験よって決定した硬化促進剤の量に安全率をかけるようにしてはいるものの、実際の施工場所での外気温、水温、地盤改良工事中の水量や地盤温度、改良後の地盤土質などの不確定要因によって、早期に硬化させることができない、要するに、所定深度から地盤表面までに造成される固結体が所望の強度にならないとう要求品質を満たさないといった問題があった。これは、室内配合試験よって決定した硬化促進剤の量に安全率をかけても、施工場所での不確定要因により、硬化促進剤の量が足りない場合があり、これにより、早期の硬化ができなくなるという問題が発生し、また逆に、硬化促進剤の量が多すぎる場合もあり、これにより、早期の硬化がさらに速くなると、今度はセメントプラント内や管ロッド内にて早期硬化材が硬化してしまい、作業が全くできなくなるという問題が発生していた。このため、空港における滑走路や誘導路などの既設構造物における地盤改良の工事では、深夜から早朝にかけての決められた時間内で作業を完了させることができなくなり、空港における飛行機の発着を止めてしまうといった極めて重大な事態を招くおそれがあった。
【0011】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、既設構造物の直下やその周囲における地盤改良の工事において、非常に高価なものとなる硬化促進剤の使用量を極力減らして、工費が膨れ上がるのを抑えるようにすると共に、所定深度から地盤表面までに造成される固結体を確実に早期に硬化させて所望の強度になるようにすることで、地盤改良の工事を決められた時間内で問題なく行えるようにして、既設構造物、たとえば空港における滑走路や誘導路において、使用ができなくなるといった極めて重大な事態を招くのをなくすようにして、既設構造物を速やかに利用可能にした既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法及びその試料採取器を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の発明は、既設構造物直下やその周囲の地盤中に挿入した管ロッドから高圧ジェット水を噴射し、この高圧ジェット水により地盤を切削して行くと共に、この高圧ジェット水によって切削された場所に管ロッドの先端から硬化材を噴射して、硬化材を充填することにより地盤中に固結体を造成する地盤改良工法において、地盤中の硬化前の固結体の一部を試料採取器によって採取し、この試料採取器で採取した硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって硬化促進剤の添加量を決定すると共に、管ロッドを地盤中の所定深度まで挿入して、この管ロッドの先端から簡易配合試験によって決定した添加量の硬化促進剤を、所定深度から地盤表面までの地盤中に造成している硬化前の固結体に噴射して添加することにより、地盤中の所定深度から地盤表面までに造成される固結体を早期に硬化して、既設構造物を速やかに利用可能にした既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法である。
【0013】
第二の発明は、第一に発明において、硬化促進剤の添加量を、試料採取器で採取した硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって決定することにより、この硬化促進剤の添加量の度合いを適正なものにして、要求品質を満たしつつ経済的に安価に、地盤中に固結体を造成できるようにした既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法である。
【0014】
第三の発明は、前述の第一の発明に記載した試料採取器にあっては、地盤中に挿入される管ロッドの先端に取り付けられて、すぐに硬化しない固結体の性質を利用することにより、地盤中の所定深度における硬化前の固結体を採取可能にすると共に、その上下に開閉蓋を備えた構造にした高圧噴射系地盤改良工法の試料採取器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地盤中に固結体を造成する際、地盤中の硬化前の固結体の一部を試料採取器によって採取し、この採取した硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって硬化促進剤の添加量を決定することで、硬化促進剤の添加量を、実際の施工場所に応じた必要最小限となる最適な量にすることができ、これにより、非常に高価なものとなる硬化促進剤の使用量を減らして、この硬化促進剤の費用を少なくすることにより、工費を大幅に抑えることができる。
【0016】
しかも、試料採取器で採取した地盤中の硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって硬化促進剤の添加量を決定するようにしたことから、実際の施工場所での不確定要因(外気温、水温、地盤改良工事中の水量や地盤温度、改良後の地盤土質など)も加味するようになり、硬化促進剤の量が多すぎたり、また逆に足りなかったりといったことがなく、常に最適な硬化促進剤の量にすることができる。これにより、地盤中の固結体において所定深度から地盤表面までに造成される固結体を確実に早期に硬化させて所望の強度になるようにすることができ、地盤改良の工事を決められた時間内で問題なく行えるようにして、既設構造物、たとえば空港における滑走路や誘導路を速やかに利用可能にすることにより、これらが使用できなくなるといった極めて重大な事態を招くのをなくすことができる。
【0017】
また、試料採取器にあっては、その上下に開閉蓋を備えた構造にしたことにより、地盤中に造成した固結体の一部を採取する際、上下の両方が開閉蓋によって塞がれることで、試料採取器の内部にほかのものが一切混入しないようにすることができ、固結体を最良な状態で採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法に用いる高圧噴射系地盤改良施工機械の正面図である。
【図2】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法に用いる高圧噴射系地盤改良施工機械の側面図である。
【図3】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法に用いる試料採取器の斜視図である。
【図4】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法に用いる試料採取器の側面断面図である。
【図5】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法に用いる他の試料採取器の斜視図である。
【図6】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法を説明した工程図である。
【図7】本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法を説明した工程図である。
【図8】高圧噴射系地盤改良方法を説明する概略図である。
【図9】従来の既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良方工法を説明した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法及びその試料採取器の一実施形態について説明する。なお、この一実施形態において、高圧噴射系地盤改良工法としてはクロスジェット式高圧噴射系地盤改良工法であるが、これに限定されるものではなく、ジェットグラウト式高圧噴射系地盤改良工法などの他のもので良い。また、既設構造物としては空港における滑走路や誘導路であるが、これらの場所に限定されるものではない。
【0020】
まず、既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法に用いる高圧噴射系地盤改良施工機械、そして試料採取器について述べると、図1、図2に示すように、高圧噴射系地盤改良施工機械1としては、架台2の上に機械本体3を載置したもので、機械本体3には各種の動力源を備えていると共に、回転装置や推進装置なども備えており、この機械本体3によってケーシングパイプや三重管構造の管ロッド5を地盤に挿入して作業を行うようにしている。また、この高圧噴射系地盤改良施工機械1の架台2の下部には作業時に孔より噴出する排泥を取り込むようになる排泥受槽6も配置している。なお、図示していないが、この高圧噴射系地盤改良施工機械1の周囲にはセメントプラントを配置すると共に、超高圧水ポンプや空気圧縮機も配置している。
【0021】
また、試料採取器10としては、地盤に挿入する管ロッド5の先端に取り付けて、地盤中に造成している硬化前の固結体Kの一部を採取するものであって、図3、図4に示すように、内部に採取する固結体Kを収容可能とする上下両端が開口した円筒状のパイプ11を備え、このパイプ11の下端に内開き式(上方にのみ開く)の開閉蓋12を取り付けると共に、パイプ11の上端を一対の薄板状の板フレーム13を介して吊り下げ用ロッド14の下端に固着しており、この吊り下げ用ロッド14が管ロッド5の先端に着脱自在に取り付けるようにしている。また、この試料採取器10にあっては、パイプ11の下端に内開き式の開閉蓋12を取り付けているが、図5に示すように、この下端の開閉蓋12と共に、パイプ11の上部にも外開き式(上方にのみ開く)の開閉蓋19を取り付け、要するに、パイプ11の上下に開閉蓋12,19を備えた構造にしても良い。
【0022】
次に、本発明による既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法について述べると、既設構造物である空港における滑走路や誘導路の地盤表面に高圧噴射系地盤改良施工機械1を配置すると共に、その周辺にセメントプラント15を配置すると共に、超高圧水ポンプ16や空気圧縮機17も配置する。
【0023】
そして、地盤に掘削した孔内に管ロッド5を挿入し、図6(a)に示すように、この管ロッド5から交差する2本の高圧ジェット水wjを噴射して地盤を破壊するように切削して行くと共に、この切削された場所に、セメントプラント15から供給されたセメントミルクなどの硬化材saを管ロッド5の先端から噴射する。なお、この硬化材saは、従来と同様、セメントミルクに硬化促進剤などを配合したものである。
【0024】
そして、図6(b)に示すように、管ロッド5を引き抜きながら、地盤を切削した場所全体に硬化材saを噴射し、ここに硬化材saを充填して、地盤中に下層深度方向から固結体Kを造成して行く。
【0025】
次に、図6(c)に示すように、引き抜いた管ロッド5の先端に試料採取器10を取り付けて、この試料採取器10を取り付けた管ロッド5を孔の内部に挿入する。
【0026】
そして、図6(d)に示すように、試料採取器10を地盤中の固結体Kを早期に硬化させようとする箇所である所定深度Aまで挿入して、この試料採取器10によって地盤中の所定深度Aにおける硬化前の固結体Kの一部を採取する。
【0027】
この試料採取器10による固結体Kの採取としては、管ロッド5によって試料採取器10を挿入して行くと、試料採取器10のパイプ11の下端の開閉蓋12が上方に開いた状態となり、ここからパイプ11の内部にまだ硬化前の固結体Kが下方より進入すると共に、内部に入った固結体Kがパイプ11の上方から外に抜けるようになっている。そして、管ロッド5による試料採取器10の挿入を停止し、今度はこれを上方に引き抜くと、このとき、試料採取器10のパイプ11の下端の開閉蓋12が閉じて、パイプ11の内部に硬化前の固結体Kを収容した状態で、上方に引き抜くことができ、これにより、所望位置の硬化前の固結体Kを採取できるようにしている。なお、この試料採取器10において、パイプ11の上部にも外開き式の開閉蓋19を取り付けると、この開閉蓋19によって、上方に引き抜くとき、上部も塞がれることで、ほかのものを一切混入させることなく、所望位置の硬化前の固結体Kのみを採取することができる。
【0028】
そして、この試料採取器10で採取した硬化前の固結体Kに基づいて硬化促進剤xの添加量を決定する。この硬化促進剤xの添加量は、施工場所にて実施する簡易配合試験によって決定するものである。
【0029】
この簡易配合試験としては、あらかじめ採取した地盤を用いて事前に室内配合試験を行い、その室内配合試験の結果に基づいて決定した早期硬化材ssにおけるセメントミルクに配合する硬化促進剤の量に相当するものを標準促進タイプとすると共に、この標準促進タイプに対し硬化促進剤の量を増やした(安全率をかけたものと同等)ものを高促進タイプとし、逆に、標準タイプに対し硬化促進剤の量を減らしたものを低促進タイプとして、このような硬化促進剤の量を異ならせた三つのタイプを用意する。そして、この三つのタイプ(標準促進タイプ・高促進タイプ・低促進タイプ)を、試料採取器10にて採取した硬化前の固結体Kに添加して所定時間後に確実に硬化するかを確認する試験である。そして、確実に硬化する中で、硬化促進剤の量が最も少ないタイプを選択する。この選択したタイプの硬化促進剤の量が簡易配合試験によって決定する硬化促進剤xの添加量である。
【0030】
なお、前述した簡易配合試験では、標準促進タイプと高促進タイプと低促進タイプの三つのタイプを用意するようにしていたが、これに限定するものではなく、さらに複数のタイプを用意して試験を行うようにしても良い。また、一回目の試験により硬化促進剤xの添加量を決定した後、さらにこれに基づいて、硬化促進剤の量を微妙に異ならせた複数のタイプを用意し、二回目の試験を行って、さらに良好な硬化促進剤xの添加量を求めるように、要するに、簡易配合試験を繰り返し行って、試験結果を積み重ねて行くことにより、その精度を高め、硬化促進剤xの添加量を絞り込んで行くことで、最終的に一番良い硬化促進剤xの添加量を求めるようにしても良い。
【0031】
また、この簡易配合試験にあっては、実際の固結体Kの造成とは別に行うようしていたが、初期の施工での固結体Kの造成にあっては、時間的に余裕があることから、この初期の施工での固結体Kを造成するとき、この固結体Kの造成を兼ねて簡易配合試験を行うようにしても良い。
【0032】
このように硬化促進剤xの添加量を、試料採取器で採取した硬化前の固結体Kに基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって決定することにより、この硬化促進剤xの添加量の度合いを適正なものにしている。
【0033】
そして、図7(e)に示すように、管ロッド5の先端に取り付けた試料採取器10を取り除いて、再び管ロッド5を孔の内部に挿入する。
【0034】
次に、図7(f)に示すように、管ロッド5を地盤中の固結体Kを早期に硬化させようとする箇所である所定深度Aまで挿入する。
【0035】
挿入後、図7(g)に示すように、管ロッド5の先端から簡易配合試験によって決定した添加量の硬化促進剤xを、地盤中に造成している硬化前の固結体Kに噴射しながら、この管ロッド5を徐々に上方に引き抜く。
【0036】
そして、図7(h)に示すように、簡易配合試験によって決定した添加量の硬化促進剤xを、所定深度Aから地盤表面までの地盤中に造成している硬化前の固結体Kに噴射して添加して行く。
【0037】
このように地盤を切削して行きながら、ここに硬化材saを充填することにより、地盤中に固結体Kを造成することで、地震などにより引き起こされる液状化現象を防止するための地盤改良を行うと共に、この地盤中に固結体Kを造成する際、簡易配合試験によって決定した添加量の硬化促進剤xを、所定深度Aから地盤表面までの地盤中に造成している硬化前の固結体Kに噴射して添加することにより、地盤中の所定深度Aから地盤表面までに造成される固結体Kを確実に早期に硬化させて所望の強度になるようにして、既設構造物を速やかに利用可能にする。これにより、地盤改良の工事を決められた時間内で問題なく行えるようにして、既設構造物である空港における滑走路や誘導路を速やかに利用可能にすることで、これらが使用できなくなるといった極めて重大な事態を招くのをなくすことができる。
【0038】
また、所定深度Aから地盤表面までの地盤中に造成している硬化前の固結体Kに噴射して添加する硬化促進剤xにおいて、試料採取器10で採取した硬化前の固結体Kに基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって決定することにより、この硬化促進剤xの添加量が多すぎたり、また逆に足りなかったりといったことがなく、実際の施工場所に応じた必要最小限となる最適な量にすることで、非常に高価となる硬化促進剤xの使用する量を減らして、この硬化促進剤xにおける費用を少なくすることができる。これにより、この硬化促進剤xの添加量の度合いを適正なものにして、要求品質を満たしつつ経済的に安価に、地盤中に所望の強度を有する固結体Kを造成することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…高圧噴射系地盤改良施工機械、2…架台、3…機械本体、5…管ロッド、6…排泥受槽、10…試料採取器、11…パイプ、12…開閉蓋、13…板フレーム、14…吊り下げ用ロッド、15…セメントプラント、16…超高圧水ポンプ、17…空気圧縮機、19…開閉蓋、21…管ロッド、22…高圧噴射系地盤改良施工機械、23…超高圧水ポンプ、24…空気圧縮機、25…セメントプラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物直下やその周囲の地盤中に挿入した管ロッドから高圧ジェット水を噴射し、この高圧ジェット水により地盤を切削して行くと共に、この高圧ジェット水によって切削された場所に管ロッドの先端から硬化材を噴射して、硬化材を充填することにより地盤中に固結体を造成する地盤改良工法において、
地盤中の硬化前の固結体の一部を試料採取器によって採取し、この試料採取器で採取した硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって硬化促進剤の添加量を決定すると共に、管ロッドを地盤中の所定深度まで挿入して、この管ロッドの先端から簡易配合試験によって決定した添加量の硬化促進剤を、所定深度から地盤表面までの地盤中に造成している硬化前の固結体に噴射して添加することにより、地盤中の所定深度から地盤表面までに造成される固結体を早期に硬化して、既設構造物を速やかに利用可能にしたことを特徴とする既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法。
【請求項2】
硬化促進剤の添加量を、試料採取器で採取した硬化前の固結体に基づいて施工場所にて実施する簡易配合試験によって決定することにより、この硬化促進剤の添加量の度合いを適正なものにして、要求品質を満たしつつ経済的に安価に、地盤中に固結体を造成できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の既設構造物直下やその周囲の地盤における高圧噴射系地盤改良工法。
【請求項3】
前述の請求項1に記載した試料採取器にあっては、地盤中に挿入される管ロッドの先端に取り付けられて、すぐに硬化しない固結体の性質を利用することにより、地盤中の所定深度における硬化前の固結体を採取可能にすると共に、その上下に開閉蓋を備えた構造にしたことを特徴とする高圧噴射系地盤改良工法の試料採取器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−236192(P2010−236192A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82447(P2009−82447)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】