説明

日射遮蔽装置の操作装置

【課題】居住者等の挙動を妨げず、かつ安全性を向上させ得る日射遮蔽装置の操作装置を提供する。
【解決手段】プーリーを第一及び第二のプーリー片15a,15bで構成し、プーリーから垂下される操作コード7に、通常の操作時に該操作コード7に作用する引張り力以上の超過引っ張り力が作用したとき、第一及び第二のプーリー片15a,15bを離間させて操作コード7をプーリーから脱落可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プーリーに掛装された無端状の操作コードを操作して日射遮蔽材の昇降操作あるいは移送操作を行う日射遮蔽装置の操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横型ブラインドの操作種類の一種類として、ヘッドボックスに回転可能に支持されたプーリーに無端状の操作コードが掛装され、その操作コードの操作によりスラットの昇降操作及び角度調節操作を行うようにしたものがある。
【0003】
このような横型ブラインドでは、ヘッドボックスの一側前面にプーリーが回転可能に支持され、そのプーリーがプーリーケースに覆われている。プーリーから吊下支持された操作コードを操作するとプーリーが回転され、そのプーリーの回転に基づいてヘッドボックス内のギヤボックスを介して駆動軸が回転される。
【0004】
そして、駆動軸が回転されると、昇降コードを介してボトムレールが引き上げられ、あるいは下降してスラットが昇降される。また、ラダーコードを介してスラットが回動される。
【0005】
上記のような横型ブラインドでは、操作コードの無端縁が室内を移動する居住者やその他の家財道具に引っ掛かり、それらの挙動を無用に制限してしまうことがある。
そこで、操作コードが通常の操作時に作用する操作力を超える力で引っ張られたときには、ヘッドボックスからプーリーを脱落させて、居住者等の移動を妨げないようにした操作装置が提案されている。
【0006】
特許文献1には、操作コードに下方への過大な引張り力が作用すると、プーリー及びプーリーケースを落下させて、操作コードの引っ掛かりによる居住者等の挙動を妨げないようにした操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6116325号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された操作装置では、操作コードに下方への過大な引張り力が作用すると、プーリー及びプーリーケースが落下する。従って、プーリーやプーリーケースが金属等の重量物で形成されていると、落下物により床面近傍の器物を損傷させることがあるという問題点がある。
【0009】
この発明の目的は、居住者等の挙動を妨げず、かつ安全性を向上させ得る日射遮蔽装置の操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1では、ヘッドボックスに回転可能に支持されたプーリーから無端状の操作コードを垂下し、前記操作コードの操作によりプーリーを回転駆動して、日射遮蔽材を駆動する日射遮蔽装置において、前記プーリーを第一及び第二のプーリー片で構成し、プーリーから垂下される両操作コードに、通常の操作時に該操作コードに作用する引張り力以上の超過引っ張り力が作用したとき、前記第一及び第二のプーリー片を離間させて前記操作コードを前記プーリーから脱落可能とした。
【0011】
請求項2では、前記第一及び第二のプーリー片を合成樹脂で成形し、両プーリー片に前記超過引張り力で係合が外れる係合手段を設けた。
請求項3では、前記ヘッドボックスの外部に突出される入力軸に前記第一のプーリー片を取着し、前記第一及び第二のプーリー片には、前記超過引張り力の作用に基づいて前記係合手段の係合を解除する分力を発生させる分力発生部を備えた。
【0012】
請求項4では、前記プーリーをケースとカバーとの間に収容し、前記カバーには前記第二のプーリー片の分離時に該第二のプーリー片を保持する保持部を設けた。
請求項5では、前記カバーを前記ケースに対し前記第二のプーリー片の第一のプーリー片からの分離にともなってスライド可能に支持し、前記ケースとカバーには前記カバーのスライド時に前記カバーのケースからの脱落を阻止するストッパーを設けた。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、居住者等の挙動を妨げず、かつ安全性を向上させ得る日射遮蔽装置の操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】横型ブラインドを示す正面図である。
【図2】操作装置を示す断面図である。
【図3】操作装置を示す分解斜視図である。
【図4】プーリーの係合手段を示す断面図である。
【図5】プーリー片の分離動作を示す断面図である。
【図6】カバーのスライド動作を示す側面図である。
【図7】カバーのスライド動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1に示す横型ブラインド(日射遮蔽装置)は、ヘッドボックス1からラダーコード2を介して多数段のスラット(日射遮蔽材)3が吊下支持され、そのラダーコード2の下端にボトムレール4が吊下支持されている。
【0016】
前記各スラット3のラダーコード2による支持位置近傍には、ヘッドボックス1から垂下される昇降コード5が挿通され、その昇降コード5の下端は前記ボトムレール4に接続されている。
【0017】
前記ラダーコード2の上端は、前記ヘッドボックス1内に配設されるラダーコード支持装置に接続され、前記昇降コード5は前記ヘッドボックス1内に配設される昇降コード巻取り装置から吊下支持されている。
【0018】
前記ヘッドボックス1の一側には操作装置6が配設され、その操作装置6から無端状の操作コード7が垂下されている。
図2に示すように、前記操作装置6はヘッドボックス1内に配設されるギヤボックス8と、ヘッドボックス1の前面側に突出された入力軸9に取着されるプーリー10と、そのプーリー10のケース11及びカバー12とで構成される。そして、前記プーリー10に前記操作コード7が掛装されている。
【0019】
前記ギヤボックス8内には傘歯車で構成される入力歯車13と出力歯車(図示しない)が噛み合わされている。そして、前記入力軸9が入力歯車13に相対回転不能に嵌合されている。
【0020】
前記入力軸9は、前記ヘッドボックス1の前面に固定されるベース14に回転可能に支持され、その基端部が前記入力歯車13の中心部に嵌着されている。そして、入力軸9が回転されると入力歯車13及び出力歯車を介して駆動軸(図示しない)が回転される。すると、前記ラダーコード支持装置及びラダーコード2を介してスラット3が回動され、昇降コード巻取り装置および昇降コード5を介してスラット3が昇降される。
【0021】
前記ギヤボックス8は、前後両面に前記入力歯車13を取着可能であり、操作装置6をヘッドボックス1の右端側とするか左端側とするかを転換する場合にも対応可能となっている。
【0022】
前記プーリー10は、入力軸9の先端部に取着される。図3に示すように、前記プーリー10はともに合成樹脂で円板状に成形された第一のプーリー片15aと第二のプーリー片15bとを嵌合して形成される。前記第一のプーリー片15aは、前記入力軸9の先端部に嵌着固定される。
【0023】
前記第一のプーリー片15aの前記第二のプーリー片15bに対向する側面には、4つの位置決め突部16が周方向等間隔に形成されている。各位置決め突部16は、その側面が斜面となる断面台形状に形成されるとともに、その周方向の両側面は第一のプーリー片15aの中心に向かう線分に沿う方向に形成されている。各位置決め突部16の径方向の両側面は第一のプーリー片15aの中心に対する同心円に沿う方向に形成されて、各位置決め突部16の外形はほぼ扇形に形成されている。
【0024】
また、前記各位置決め突部16において第一のプーリー片15aの外周側の側面には、図4に示すように、同位置決め突部16の頂部近傍に返し部17が形成されている。
前記第一のプーリー片15aの外周部には、等間隔に12個の挟持片18が形成され、各挟持片18の前記第二のプーリー片15bに対向する側面には、第一のプーリー片15aの外周側に向かう斜面を備えた摩擦片19が形成されている。
【0025】
前記第二のプーリー片15bの前記第一のプーリー片15aに対向する内側の側面には、前記位置決め突部16を嵌合可能とした4つの位置決め凹部20が形成されている。各位置決め凹部20の開口縁において、第二のプーリー片15bの外周側の側面には、図4に示すように、前記返し部17に係合する返し部21が形成されている。
【0026】
また、各位置決め凹部20の外周側には割り溝34がそれぞれ形成され、各位置決め凹部20の外周側の側面の弾性を確保している。
前記第二のプーリー片15bの外周部には、等間隔に12個の挟持片22が形成され、各挟持片22の前記第一のプーリー片15aに対向する側面には、第二のプーリー片15bの外周側に向かう斜面を備えた摩擦片23が形成されている。
【0027】
そして、第一及び第二のプーリー片15a,15bの位置決め突部16及び位置決め凹部20を互いに嵌合させると、図4に示すように、返し部17,21が互いに係合して第一及び第二のプーリー片15a,15bが一体に保持されてプーリー10が形成される。
【0028】
このとき、第一及び第二のプーリー片15a,15bの挟持片18,22は周方向に互い違いに位置するようになっている。
このように構成されたプーリー10の挟持片18,22間に操作コード7を掛装して操作すると、操作コード7が各挟持片18,22の摩擦片(分力発生部)19,23に係合して、操作コード7の移動にともなってプーリー10が回転される。
【0029】
また、プーリー10に掛装された操作コード7の双方に、通常の操作時に操作コード7に作用する引張り力以上の超過引張り力が作用すると、各プーリー片15a,15bには図2に示す矢印A,B方向への水平方向の分力が作用する。すると、返し部17,21の係合が解除されて、図5に示すように、第一及び第二のプーリー片15a,15bが離間するようになっている。
【0030】
前記第二のプーリー片15bの中央部には円形孔24が形成され、その円形孔24の周縁部には外側に向かってリブ25が形成されている。
前記ケース11は、合成樹脂で前記プーリー10の上方及び側方を覆う箱状に形成され、その背面が前記ベース14を介して前記入力軸9を回動中心として前記ヘッドボックス1に回動可能に支持されている。
【0031】
前記ケース11の下部にはコードゲート26が嵌着され、前記操作コード7が前記ヘッドボックス1の長手方向に沿って斜め方向に引かれると、コードゲート26を介してケース11が斜め方向に回動される。
【0032】
前記カバー12は、前記ケースと同様な合成樹脂で成形され、前記ケース11の前面を覆う形状のカバー片27の両側に、前記ケース11の側片28に沿って延びる係止片29が形成されている。
【0033】
そして、前記カバー12は係止片29をケース11の側片28に沿って摺動させることにより、ケース11に対し前後方向すなわち図2に示す矢印A,B方向に移動可能となっている。
【0034】
前記側片28の表面には一つの第一の係止突起30と、2つの第二の係止突起(ストッパー)31が形成されている。第二の係止突起31は第一の係止突起30より高い突起として形成される。
【0035】
前記カバー12の係止片29には四角孔32が形成されている。そして、カバー12の係止片29をケース11の側片28に嵌合してケース11の前面開口部をカバー12で覆った状態では、図6に示すように、前記四角孔32の一方の側縁が第一の係止突起30に係合して、カバー12がこの状態に保持される。
【0036】
また、カバー12に矢印A方向の押圧力が作用すると、前記四角孔32の側縁が第一の係止突起30を乗り越え、図7に示すように、第二の係止突起31に係合するまでの範囲で、カバー12が移動するようになっている。
【0037】
前記カバー12の前記第二のプーリー片15bに対向する側面には円形のリブ(保持部)33が形成されている。そして、カバー12でケース11の前面を覆っている状態で、リブ33が第二のプーリー片15bのリブ25の周囲に位置するようになっている。
【0038】
また、図5に示すように、第二のプーリー片15bが第一のプーリー片15aから離間するとき、第二のプーリー片15bのリブ25がケース11のリブ33に支持されて、第二のプーリー片15bの脱落が阻止されるようになっている。
【0039】
次に、上記のように構成された操作装置の作用を説明する。
操作コード7を操作すると、プーリー10が回転されて、ギヤボックス8を介して駆動軸が回転される。駆動軸の回転に基づいてラダーコード2を介してスラット3が回動され、昇降コード5を介してスラット3及びボトムレール4が昇降される。
【0040】
操作コード7に居住者等が引っ掛かって、通常操作時の引張り力以上の過大な引っ張り力がプーリー10から垂下される操作コード7の両方に作用すると、図5に示すように、第一及び第二のプーリー片15a,15bの返し部17,21の係合がはずれ、第二のプーリー片15bが第一のプーリー片15aから離間する。
【0041】
すると、カバー12が第二のプーリー片15bとともに矢印A方向に移動して、第一のプーリー片15aと第二のプーリー片15bとの間に操作コード7がすり抜け可能となる隙間が確保される。このとき、カバー12の四角孔32は図7に示す第二の係止突起31に係合する状態となり、それ以上の移動が阻止される。
【0042】
この結果、操作コード7はプーリー10から外れて、第一のプーリー片15aと第二のプーリー片15bとの間から落下するため、居住者等の挙動が妨げられない。
また、落下した操作コード7を第一のプーリー片15aに掛装し、第二のプーリー片15bを第一のプーリー片15aに嵌合しながら、カバー12を矢印B方向に移動させてケース11に保持すると、操作コード7でプーリー10を回転駆動し得る状態に復帰可能となる。
【0043】
上記のように構成されたロールブラインドでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)操作コード7に居住者等が引っ掛かったとき、操作コード7を操作装置からはずすことができる。従って、居住者等の挙動を妨げることはない。
(2)操作コード7を外しても、第二のプーリー片15b及びカバー12が落下しない。従って、安全性を向上させることができる。
(3)第一及び第二のプーリー片15a,15bの返し部17,21を係合させてプーリー10を復元し、そのプーリー10に操作コード7を掛装すると、操作コード7でプーリー10を回転操作し得る状態に容易に復帰させることができる。
【0044】
上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・第二のプーリー片15bを第一のプーリー片15aから分離するとき、第二のプーリー片15bとカバー12を脱落させてもよい。第二のプーリー片15bとカバー12は合成樹脂で軽量であるので、床面近傍の器物を損傷させ難い。
・上記操作装置を、横型ブラインド以外の縦型ブラインド、ロールブラインド、プリーツカーテン等の日射遮蔽装置の操作装置にしようすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1…ヘッドボックス、7…操作コード、9…入力軸、10…プーリー、15a…第一のプーリー片、15b…第二のプーリー片、17,21…係合手段(返し部)、19,23…分力発生部(摩擦片)、30,31…ストッパー(第一及び第二の係止突起)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドボックスに回転可能に支持されたプーリーから無端状の操作コードを垂下し、前記操作コードの操作によりプーリーを回転駆動して、日射遮蔽材を駆動する日射遮蔽装置において、
前記プーリーを第一及び第二のプーリー片で構成し、プーリーから垂下される両操作コードに、通常の操作時に該操作コードに作用する引張り力以上の超過引張り力が作用したとき、前記第一及び第二のプーリー片を離間させて前記操作コードを前記プーリーから脱落可能としたことを特徴とする日射遮蔽装置の操作装置。
【請求項2】
前記第一及び第二のプーリー片を合成樹脂で成形し、両プーリー片に前記超過引張り力で係合が外れる係合手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の日射遮蔽装置の操作装置。
【請求項3】
前記ヘッドボックスの外部に突出される入力軸に前記第一のプーリー片を取着し、前記第一及び第二のプーリー片には、前記超過引張り力の作用に基づいて前記係合手段の係合を解除する分力を発生させる分力発生部を備えたことを特徴とする請求項2記載の日射遮蔽装置の操作装置。
【請求項4】
前記プーリーをケースとカバーとの間に収容し、前記カバーには前記第二のプーリー片の分離時に該第二のプーリー片を保持する保持部を設けたことを特徴とする請求項1記載の日射遮蔽装置の操作装置。
【請求項5】
前記カバーを前記ケースに対し前記第二のプーリー片の第一のプーリー片からの分離にともなってスライド可能に支持し、前記ケースとカバーには前記カバーのスライド時に前記カバーのケースからの脱落を阻止するストッパーを設けたことを特徴とする請求項4記載の日射遮蔽装置の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−132790(P2011−132790A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295722(P2009−295722)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000250672)立川ブラインド工業株式会社 (224)
【Fターム(参考)】