説明

早茹中華麺用の麺生地製造方法

【課題】 短時間で茹で上がりながら通常の中華麺と何ら変わらぬコシと風味を有する中華麺を製造する。
【解決手段】 中華麺用の麺生地を製造するに際し、小麦粉及びカンスイ,水,塩,その他必要とするph調整剤等からなる通常の中華麺生地材料に小麦粉の1%〜15%(重量比)の生澱粉を添加した生地原料を、底部を半円筒状に形成した攪拌槽と、回転軸に対しロ字状又は放射状に設けた攪拌体により構成した横型ミキサーでミキシングする混練工程において、上記生地原料をミキサーに投入後、混練開始時に攪拌体先端の周速度が1.5m/秒以上となる回転数で1分間以上回転させ、その後所望の回転数に落して混練するするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、30秒〜40秒程度で茹で上がる早茹の生中華麺用の麺生地の製造方法に関するものであり、特に生澱粉を添加した麺生地原料を使用し、ミキシング開始時のミキサーの回転速度を従来の倍以上とすることにより、短時間で茹で上がりながら通常の中華麺と何ら変わらぬコシと風味を有する中華麺が製造できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
ごく短時間に多量の中華麺を茹でる必要がある食堂、例えばドライブインの食堂や社員食堂のように来客が集中するような所では、予め茹でてある冷凍麺を使用し、客へ提供する時にこれを茹で槽で解凍加熱するようにしているのが一般的である。この場合、茹で槽に約30秒〜40秒程度入れて解凍することにより、客へ提供することができる。
【0003】
また、中華麺に限らず生麺一般(うどん,そば,中華麺など)について茹で時間を短くするために、α化澱粉や生澱粉を麺生地原料に添加し、これで麺類を製造するようなものについても各種提案されている。
【特許文献1】特開昭60−120952号公報
【特許文献2】特開平4−262753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍麺を使用すれば確かに短時間で客に提供することは可能であるが、特に中華麺の場合は一旦茹でた後に冷凍することにより、解凍した場合に麺にコシがなく、その上カンスイによる中華麺独特の風味も消滅してしまい、生麺をその場で茹でたものとは全く異なったものとなっている。うどんのように麺自体が太いものであれば冷凍麺でもそれなりの歯ごたえも残るが、中華麺の場合は細いのでコシがなくなってしまい、また中華麺に欠くことができない風味も呈しなくなってしまうのである。
【0005】
一方、α化澱粉を加えたりして生麺が早く茹で上がるようにしたものの場合、確かに茹で時間は短縮されるが、中華麺で特に重要なコシがなく、通常の生中華麺と同等の食感を有するとは言えないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明に係る早茹中華麺用の麺生地製造方法は前記の課題を解決するために、中華麺用の麺生地を製造するに際し、小麦粉及びカンスイ,水,塩,その他必要とするph調整剤等からなる通常の中華麺生地材料に小麦粉の1%〜15%(重量比)の生澱粉を添加した生地原料を、底部を半円筒状に形成した攪拌槽と、回転軸に対しロ字状又は放射状に設けた攪拌体により構成した横型ミキサーでミキシングする混練工程において、上記生地原料をミキサーに投入後、混練開始時に攪拌体先端の周速度が1.5m/秒以上となる回転数で1分間以上回転させ、その後所望の回転数に落して混練するするようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
通常の中華麺生地材料に小麦粉の1%〜15%(重量比)の生澱粉を添加した生地原料を使用し、これをミキシング開始時に高速で混練することにより、この麺生地を使用して常法により生中華麺を製造すると、30秒〜40秒程度で茹で上がりながら、通常の生中華麺に何ら遜色がないコシと風味を有する中華麺となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
麺生地原料としては通常の中華麺生地材料(小麦粉及びカンスイ,水,塩,その他必要とするph調整剤等)に、小麦粉の1%〜15%(重量比)(好ましくは3%〜10%)の生澱粉を添加したものを使用する。
【0009】
一方、これをミキシングするミキサーとしては、底部を半円筒状に形成した攪拌槽と、回転軸に対しロ字状又は放射状に設けた攪拌体により構成した横型ミキサーを使用する。なお、ミキシング開始時には従来の倍以上の回転速度でミキシングを行うので、ミキサーを駆動するモーターには十分な出力を有するものを使用する。
【0010】
そして、上記麺生地原料をミキサーに投入後、混練開始時に攪拌体先端の周速度が1.5m/秒以上となる回転数で1分間以上回転させ、その後所望の回転数に落して混練して麺生地を製造する。その後、常法により麺帯とした後に中華麺とする。
【0011】
また、小麦粉に添加する生澱粉としては、馬鈴薯澱粉,タピオカ澱粉,小麦粉澱粉,米澱粉,トウモロコシ澱粉等各種澱粉類が使用可能であり、これらを単独であるいは混合して使用するようにしてもよい。
【実施例1】
【0012】
まず、本発明で使用する横型ミキサーの一実施例を図1と図2に基づいて述べる。1は底部2を半円筒状に形成した攪拌槽であり、3は攪拌槽1の左右の側壁である。左右の側壁3には側壁3を貫通してそれぞれの端部が攪拌槽1内に若干突出するようにした回転軸4が回転自在に支持してある。そして、左右の回転軸4はその軸心が一致するようにしてある。
【0013】
5はこの回転軸4に取り付けたロ字状の攪拌体であり、回転軸4に対して垂直な腕木6と回転軸4に対して並行な攪拌棒7より構成してある。なお、腕木6は両方向でその長さを変え、二本の攪拌棒7の回転軌跡が異なるようにしてもよい。また、腕木6は両方向へ直線状(180度)に設けることを基本とするが、従来公知のように両方向の腕木6を直線状とせずに角度(140度〜160度)をもたしてもよい。なお、攪拌体5は回転軸4と一体的に形成したものであっても、個別の部品を組み立てたものであってもどちらでもよい。
【0014】
8は攪拌槽1の底部2付近の所望位置に配設した突起であり、攪拌棒7との間で混練を補助するとともに、グルテンの発生を促進する役割をする。
【0015】
なお、左右の回転軸4はその回転を同期させるために、それぞれの回転軸4を動力源に連結し、左右の回転軸4(腕木6)が同位相で回転するようする。また、回転軸4を左右に分割せずに、左右を連通した一本の回転軸に攪拌体5を取り付けるようにしたものであってもよい。この場合、攪拌体5の中心に回転軸4が通るため、攪拌体は見た目ではロ字状でなく日字状となる。
【0016】
また、所望の高速回転を実現するために、駆動源としては従来このような用途のミキサーの約2倍の出力のモーターを使用する。従来のミキサーは小麦粉1袋用でも2袋用でも回転数は50rpm〜60rpmであるが、本発明においてはミキサーの大きさにもよるが、おおよそ80rpm以上をミキシング開始時に必要とするからである。
【0017】
図3と図4は本発明で使用する横型ミキサーの他例を示したものであり、回転軸4に攪拌軸9を位相を変えて配設し、攪拌軸9は図4に示すように放射状となるようにしたものである。なお、攪拌軸9は図3に示すように位相を変えずに、回転軸4に間隔を設けてそれぞれの箇所に攪拌軸9を複数本放射状に配設したものでもよい。
【実施例2】
【0018】
次に、上記した横型ミキサーを使用した本発明の早茹中華麺用の麺生地製造方法を以下に説明する。なお、以下のミキシング方法における回転数と時間は小麦粉2袋(50kg)用のミキサー(攪拌槽の大きさ:半径300mm、横幅800mm)の例を示したものである。なお、攪拌体5は図1に示すようにロ字状をしており、腕木6の長さ(回転軸4より攪拌体5先端までの長さ)は回転軸中心より一方が255mmで、他方が240mmである。
【0019】
上記、ミキサーに小麦粉50kgを初めとして、通常使用されている中華麺の原料、卵白や小麦粉蛋白や牛乳やカンスイや着色料を入れ、さらに馬鈴薯の生澱粉を2.5kg加える。そして、これをミキサーに投入して水22kgを加え、以下(1)〜(4)の要領で混練して中華麺生地を製造した。
【0020】
(1)110rpmで2分
(2) 60rpmで3分
(3) 30rpmで3分
(4) 10rpmで4分
【0021】
110rpmで回転させると腕木の長い方の周速度は約2.94m/秒となり、短い方の周速度は約2.76m/秒となる。
【0022】
そして、上記過程により製造した中華麺生地は、通常と同様に麺帯機や製麺機などを利用して、常法により中華麺を製造する。このようにして製造した生中華麺は30秒で食べ頃の茹で具合となり、食した結果コシの強さや風味も通常の生麺を茹でたものと変わらないものであった。
【実施例3】
【0023】
次に、小麦粉1袋(25kg)用のミキサー(攪拌槽の大きさ:半径228mm、横幅750mm)の例について説明する。攪拌体5は図1に示すようにロ字状をしており、腕木6の長さ(回転軸4より攪拌体5先端までの長さ)は回転軸中心より一方が170mmで、他方が160mmである。
【0024】
上記、ミキサーに小麦粉25kgを初めとして、通常使用されている中華麺の原料、卵白や小麦粉蛋白や牛乳やカンスイや着色料を入れ、さらに馬鈴薯の生澱粉を0.5kg加える。そして、これをミキサーに投入して水8kgを加え、以下(1)〜(4)の要領で混練して中華麺生地を製造した。
【0025】
(1)120rpmで1分
(2)100rpmで1分
(3) 60rpmで3分
(4) 40rpmで3分
【0026】
120rpmで回転させると腕木の長い方の周速度は約2.14m/秒となり、短い方の周速度は約2.01m/秒となる。また、100rpmで回転させると腕木の長い方の周速度は約1.78m/秒となり、短い方の周速度は約1.67m/秒となる。
【0027】
そして、上記過程により製造した中華麺生地は、通常と同様に麺帯機や製麺機などを利用して、常法により中華麺を製造する。このようにして製造した生中華麺は30秒で食べ頃の茹で具合となり、食した結果コシの強さや風味も通常の生麺を茹でたものと変わらないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る早茹中華麺用の麺生地製造方法は、麺生地製造時にこのような方法で麺生地を製造しておけば、後は常法により中華麺を製造することにより早茹麺とすることが可能となり、その適用範囲は極めて広いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明で使用する麺生地用ミキサーの攪拌槽の側面断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明で使用する麺生地用ミキサーの他例を示す攪拌槽の側面断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 攪拌槽
2 底部
3 側壁
4 回転軸
5 攪拌体
6 腕木
7 攪拌棒
8 突起
9 攪拌軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中華麺用の麺生地を製造するに際し、小麦粉及びカンスイ,水,塩,その他必要とするph調整剤等からなる通常の中華麺生地材料に小麦粉の1%〜15%(重量比)の生澱粉を添加した生地原料を、底部を半円筒状に形成した攪拌槽と、回転軸に対しロ字状又は放射状に設けた攪拌体により構成した横型ミキサーでミキシングする混練工程において、上記生地原料をミキサーに投入後、混練開始時に攪拌体先端の周速度が1.5m/秒以上となる回転数で1分間以上回転させ、その後所望の回転数に落して混練するするようにしたことを特徴とする早茹中華麺用の麺生地製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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