昆虫を分類レベルで識別するためのメルクマールの策定方法
【課題】分類レベルで昆虫を識別するためのメルクマールの策定方法の提供。
【解決手段】(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、(e)上記(d)で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、ある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程を含む、前記方法。
【解決手段】(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、(e)上記(d)で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、ある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫を分類レベルで識別するための基準となるメルクマールの策定方法、及び前記メルクマールを基準として昆虫を分類レベルで同定する方法、並びに昆虫を分類レベルで識別するための解析ソフトに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの飲食品製造業者にとって昆虫の防除は重要な課題である。すなわち、製造工程や原料、製品等への昆虫の混入が疑われた場合、製造業者は詳細な調査を行って昆虫の混入時期や経路、原因を究明し、例えば、もし昆虫の混入が飲食品の製造工程中であったことが明らかになった場合には、全ての製造工程を厳重に確認し、再度このような混入事故がないように対策を講ずる必要がある。この際、まず行わなければならないことが、混入した昆虫の同定である。
【0003】
昆虫をはじめとする生物由来の異物の同定は多くの場合、形態学的同定法に頼っているのが現状である。しかしながらその手法は専門的な知識や経験が必要であり、また変形したり一部位のみ混入している場合、形態に基づく識別が困難であったりする。従ってこれらの問題点を解消するため、異物より抽出したDNAの塩基配列を解析し、データベースと比較することで簡便かつ変形した異物であっても同定可能な手法が確立されている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながらこの手法は、種レベルでの同定であるため、基準となるデータベースは望ましくは全種類の昆虫のデータを保有している必要がある。従ってデータベースが不完全なものであれば当然、DNAがデータベース化されていない昆虫が混入した場合、その昆虫は同定不能となってしまう。
【0005】
一方、昆虫は地球上でもっとも繁栄している生物であり、これまでに知られている種類だけでも80万種くらい、実際には、約150万種以上と推定されている。日本では約10万種もの昆虫が生息しているといわれ、例えば通常一般に見られる双翅目(ハエ目)に属する昆虫は、日本だけでも五千数百もの種に分類されている。
【0006】
従ってこれだけ多数の種が存在する昆虫について全てのデータをデータベース化するには膨大な時間と労力が必要となり現実的でない。一方、ある特定の工場周辺に生息する昆虫に限定してデータベースを構築することもできるが、昆虫混入の同定手法としては汎用的な方法とは言い難い。
【0007】
原因究明や再発防止において飲食品に混入した昆虫を同定する場合、種レベルまで特定できることが理想的ではあるが、上記したように、膨大な時間と労力を要し、現実的でない。従って、混入した昆虫を種レベルの上位分類である目又は科レベルで確実に特定する方法は、非常に有効である。
【0008】
一般的にバクテリア等の微生物の同定においては、塩基配列の相同性に基づく系統関係の解析が行われている。すなわち基準となる塩基配列と比較しそれとの相同性によって、同じ種に属する微生物であるかどうかを判定する。しかしながら昆虫の場合、同じ目に属する科や種であってもその塩基配列は非常に多様性に富んでいるため、相同性に基づく系統関係の解析は困難である。
【非特許文献1】形山ら、塩基配列の解析による食品内生物系異物の同定、日本食品衛生学会第76回学術講演会講演要旨集、p52(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、DNA解析により昆虫を同定する際、数多く存在する種レベルではなく、その上位分類である科レベル、あるいはさらに上位分類である目レベルでの識別を、塩基配列の相同性に基づく系統関係の解析を用いることなく、簡便かつ確実に行える方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究し、個々の塩基配列の違いを忠実に観察したところ、同一の分類(例えば目や科)に属する異なる昆虫間で、共通する塩基が複数存在することを見出し、この共通する複数の塩基から選び出した共通塩基グループから選択される塩基が、他の分類の共通塩基グループから選択される塩基と、及び/又は他の分類に属する昆虫の塩基配列の塩基と、完全には一致しないことを確認した上で、その共通塩基グループから複数の塩基を選択して、その分類に特異的なメルクマールとすることに成功した。さらにそのメルクマールを基準にして未知の昆虫を分類レベルで識別することに成功した。この方法は、塩基配列の相同性に基づいて系統関係の近縁度合を調べる従来の方法とは異なるものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【0012】
前記方法は、上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含んでいてもよい。
【0013】
(2)分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
ここで、上記(1)又は(2)記載の方法の上記ミトコンドリアDNA由来の塩基配列は、ミトコンドリアNADH dehydrogenase subunit 5(ND5)遺伝子由来の塩基配列でもよい。また、上記(1)又は(2)記載の方法の分類は目でもよく、また科でもよい。さらに、上記(1)又は(2)記載の方法の昆虫は、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。さらに、上記(1)又は(2)記載の方法中の工程(a)において用いる塩基配列の長さは20塩基以上を選ぶことができる。また、上記(1)又は(2)記載の方法中の共通塩基グループは、連続及び/又は不連続の複数の部位からなるものでもよい。
【0014】
(3)分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【0015】
前記方法は、上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含んでいてもよい。
【0016】
(4) 分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
・ 同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【0017】
ここで、上記方法(3)及び(4)中の分類は目又は科でもよい。また、上記方法中の昆虫は、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つでもよい。さらに、上記方法中の工程(a)において用いる塩基配列の長さは20塩基以上を選ぶことができる。また、上記方法中の上記共通塩基グループは、連続及び/又は不連続の複数の部位からなるものでもよい。
【0018】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体である昆虫から得られた塩基配列中の前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の前記塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【0019】
(6)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列を解析ソフト上に登録し、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を前記解析ソフトに入力し、前記解析ソフト上で両者の塩基配列をアラインメントすることにより、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基と前記メルクマールの塩基が完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【0020】
(7)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られた、メルクマールを有する塩基配列を1又はそれ以上登録する手段と、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を入力する手段と、前記メルクマールを有する塩基配列及び前記入力された被検体の塩基配列を比較する手段と、前記メルクマール及び前記入力された被検体の塩基配列中の前記メルクマールに相当する部位の塩基とが完全に一致するかを解析する手段と、被検体の分類を識別する手段を実行させるための、被検体である昆虫を分類レベルで同定するための解析ソフト。
【0021】
(8)上記(7)の解析ソフトを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0022】
(9)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマール。
また、本メルクマールは具体的に以下のものでもよい。
【0023】
双翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号1で示されるイエバエ由来の塩基配列の5’末端から、第269番目の塩基がA、第270番目の塩基がA、第272番目の塩基がA、第275番目の塩基がA、第276番目の塩基がA、第278番目の塩基がA、第279番目の塩基がA、第280番目の塩基がT、第284番目の塩基がC、第285番目の塩基がA、第287番目の塩基がG、第288番目の塩基がA、第290番目の塩基がA、第291番目の塩基がT、第293番目の塩基がC、第294番目の塩基がG、第297番目の塩基がT、第299番目の塩基がA、第300番目の塩基がT、第302番目の塩基がG、第303番目の塩基がG、第306番目の塩基がG、第308番目の塩基がT、第309番目の塩基がT、第310番目の塩基がA、第312番目の塩基がG、及び第315番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0024】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がA、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0025】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がT、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0026】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がC、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0027】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がC、第236番目の塩基がA、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がT、第295番目の塩基がA、及び第296番目の塩基がA、第297番目の塩基がT、及び第298番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0028】
膜翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がT、第886番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第897番目の塩基がT、第898番目の塩基がT、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1031番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0029】
膜翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がA、第894番目の塩基がA、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0030】
膜翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がT、第895番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0031】
鱗翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号4で示されるチャノコカクモンハマキ由来の塩基配列の5’末端から、第947番目の塩基がT、第948番目の塩基がA、第950番目の塩基がT、第952番目の塩基がA、第956番目の塩基がA、第958番目の塩基がA、第961番目の塩基がC、第962番目の塩基がA、第964番目の塩基がG、第965番目の塩基がA、第966番目の塩基がT、第967番目の塩基がA、第968番目の塩基がT、第969番目の塩基がT、第970番目の塩基がC、第971番目の塩基がG、第976番目の塩基がA、第977番目の塩基がT、第979番目の塩基がG、第980番目の塩基がG、第982番目の塩基がG、第983番目の塩基がG、第986番目の塩基がT、第988番目の塩基がA、及び第989番目の塩基がG、である、前記メルクマール。
【0032】
鞘翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号80で示されるマゲラニクスチリオサムシ由来の塩基配列の5’末端から、第300番目の塩基がT、第311番目の塩基がC、第312番目の塩基がA、第314番目の塩基がG、第315番目の塩基がA、第316番目の塩基がT、第317番目の塩基がA、第318番目の塩基がT、第320番目の塩基がC、第321番目の塩基がG、第323番目の塩基がT、第325番目の塩基がT、第326番目の塩基がA、第327番目の塩基がT、第329番目の塩基がG、第330番目の塩基がG、第336番目の塩基がT、第338番目の塩基がA、及び第339番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、昆虫を分類レベルで識別するためのメルクマールの策定方法が提供される。本発明のメルクマールを用いることにより、飲食品等の製造工程中で混入した昆虫を目又は科レベルで簡易、確実かつ迅速に識別することが可能となる。従って、本発明のメルクマールは、飲食品等の製造工程中の昆虫混入に関する原因究明及び再発防止に有用である。
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、昆虫を分類レベルで識別するための基準となるメルクマールの策定方法、及び前記メルクマールを用いて昆虫を分類レベルで識別する方法、並びに昆虫を分類レベルで識別するための解析ソフトに関する。
<本発明の概要>
本発明の、昆虫を科又は目レベルの分類レベルで識別することに用いるメルクマールを策定する方法は、所望の分類、例えば、目又は科に属する昆虫由来の塩基配列中の塩基のうち、すべての昆虫で保存されている塩基を抽出し、そこから他の分類と一致しないように塩基を選択し、それをメルクマールとして、被検体である昆虫の分類を識別しようとするものである。具体的には、同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列データをアラインメントして、全ての塩基配列において保存されている塩基の部位を抽出して共通塩基グループとする。このような共通塩基グループを、互いに異なる科又は目等の2以上の分類についても作成する。ついで、これらを互いに比較して、ある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、及び/又はある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類に属する昆虫の塩基配列中の上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とが完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとするものである。このようにして得られたメルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体である昆虫から得られた塩基配列中の前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析することにより、被検体の分類を識別することができる。このように、本発明のメルクマールは、製造品等への混入昆虫を簡易・迅速かつ正確に同定できるものとして有用である。
【0036】
本発明のメルクマールとは、製造品等に混入した昆虫を分類レベルで特定するための指標をいい、下記に詳しく説明するように、選択された塩基の部位及び塩基の種類が他の分類レベルとは、完全に一致しない、1塩基又は複数塩基の組み合わせからなる。本発明のメルクマール策定に用いる昆虫のDNA塩基配列(以下「シークエンスデータ」ともいう)は、ミトコンドリアDNAに由来するものであっても、核DNAに由来するものであってもよい。特にミトコンドリアDNAの場合には核DNAに比べて塩基置換の起こる速度が速く各分類レベル間の差異が多く見出される可能性が高いと考えられ、しかも細胞あたりの数が多く大量に調製できるため、分析が容易であり、好ましい。
【0037】
本発明の分類は、多数の昆虫のうち、特定の性質が相似であること等により体系的にまとめあげられたものであればどのレベルの分類でもよく、具体的には網、目、科、種があげられるが、好ましくは、目又は科である。
【0038】
本発明の昆虫は、節足動物門のうちの、昆虫網の大部分を占める有翅昆虫亜網に属するものであり、好ましくは、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目に属する昆虫であるが、これらに限定されない。なお、双翅目としてはハエ、カ、アブ等を、半翅目としてはセミ、カメムシ、アブラムシ、ウンカ等を、膜翅目としてはハチ、アリ等を、鱗翅目としてはチョウ、ガ等を、鞘翅目としてはカミキリムシ、カブトムシ、ゴミムシ等を、それぞれ例示することができる。
【0039】
本発明の策定方法に用いる昆虫は、例えば昆虫販売業者や昆虫取扱業者から分譲又は購入することもできるし、雑木林や草むら等の野外で採集したものを使用することもできる。採集した昆虫については、好ましくは専門家に同定を依頼する。
【0040】
本発明におけるメルクマール策定には、同じ分類に属しかつ互いに異なる種類の昆虫のシークエンスデータを少なくとも5種類以上、好ましくは7種類以上、さらに好ましくは10種類以上使用する。同じ分類、例えば同じ目あるいは同じ科に属しながらそれぞれ違った種類の昆虫のシークエンスデータを少なくとも5種類以上、好ましくは7種類以上、さらに好ましくは10種類以上使用することにより、共通する塩基に偏りが生じることなく、その目あるいは科に共通する塩基部位を抽出し、その目あるいは科に特異的でかつ信頼性が高いメルクマールを策定することが可能となるからである。
【0041】
本発明のアラインメントとは、個体ごとに得られた複数の塩基配列を横列に並べ、縦列に相同な座がくるように整列させて、互いに塩基配列の異同を調べることをいう。このような操作は、Multiple Alignmentともいい、分子生物学の分野で、ある塩基配列中のモチーフの抽出、特定の塩基配列が有する構造又は機能の予測、進化系統樹の作成に慣用されるものである。従って、本発明のアラインメントは、DNAspace(日立ソフト社製)等の解析ソフトを用いる等、これらの解析に通常用いられるいかなる操作も含まれる。
【0042】
また本発明のメルクマール策定に用いる昆虫のシークエンスデータは、独自に昆虫から抽出したDNAを常法に従って決定した塩基配列であっても、また公開データベースから得られる既知のシークエンスデータを用いてもよい。
【0043】
既知のシークエンスデータは、例えばGenBank(NIH genetic sequence database)や、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)等のデータベースに登録されている昆虫のシークエンスデータを使用することができる。これらのデータベースから検索してダウンロードしたシークエンスデータはそのまま、又は連続した一定領域を取り出してからアラインメント(Multiple Alignment 解析)に供することができる。
【0044】
さらに本発明においてアラインメントに供するシークエンスデータとしては、20塩基以上、好ましくは50塩基以上、より好ましくは20〜10000塩基、さらに好ましくは50〜5000塩基の長さの塩基配列を用いることができる。
【0045】
また本発明において用いる、複数の昆虫由来のシークエンスデータは、上記したようにアラインメントに供するため、共通した領域(以下「共通領域」ともいう)を含有するものでなければならない。この共通領域の選択にあたっては、特に制限はなく、ミトコンドリアND5遺伝子等の特定の機能又は構造を発現する領域であってもよく、遺伝子として機能していない領域であってもよいが、中でもミトコンドリアND5遺伝子は進化速度が速いため、各分類レベル間での差異が多く見出される可能性が高いと考えられ、メルクマール策定のための共通領域として特に好ましい。またPCR法で増幅可能な領域であることが好ましい。具体的には、下記のプライマーを用いて増幅される領域があげられる。また共通領域の大きさは、シークエンスの信頼性が高い約20〜2000塩基、約50〜1000塩基、好ましくは、100〜700塩基、さらに好ましくは100〜500塩基である。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
V1.04-4 GTC ATA CTC TAA ATA TAA GCT A (配列番号6)
核ゲノム由来のプライマーセット(28S-01/28SR-01)、
28S-01 GAC TAC CCC CTG AAT TTA AGC AT (配列番号7)
28SR-01 GAC TCC TTG GTC CGT GTT TCA AG (配列番号8)
核ゲノム由来のプライマーセット(ITS-1/ITS-4)
ITS-1 AAG TCG TAA CAA GGT TTC CG (配列番号9)
ITS-4 TCC TTG TTA GTT TCT TTT CCT C (配列番号10)
なお、1つの分類の識別のために、複数の共通領域を選択することもできる。その場合は、1つの分類に複数のメルクマールが存在することになり、被検体である昆虫の識別精度がより高まるため、好ましい。
【0046】
本発明の共通塩基グループは、同じ分類に属し、かつ、互いに異なる昆虫の塩基配列全てにおいて、保存された塩基の部位の全部又はその一部からなる。この部位に含まれる塩基は、一塩基ごとに単独であっても、また隣接した塩基が複数連なっていてもよい。
また、上記共通塩基グループが複数の部位からなる場合は、その複数の部位は互いに連続してもよく、及び/又は不連続であってもよい。
【0047】
本発明の「ある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように」とは、本発明のメルクマールとして上記共通塩基グループから選択される塩基が全て、各々他のメルクマールに含まれる塩基と同じ部位の同じ種類の塩基を選択するものではないことを意味する。ある分類のためのメルクマールとして選択した塩基が、他の分類のためのメルクマールに含まれる塩基と完全に同じ位置で同じ種類の塩基である場合は、被検体がどの分類に含まれるのか判定ができないため、本発明のメルクマールとしては適さないからである。つまり、本発明のメルクマールとして選択される塩基の部位とその塩基の種類は、他のメルクマールに含まれる塩基の部位とその塩基の種類と完全に一致してはならず、従って、メルクマールに含まれる塩基を選択する場合には、他のメルクマールに含まれる塩基の部位とその部位での塩基が完全に一致していないかを確認する必要がある。確認方法は、選択したメルクマールを比較して、全てが一致していないことが確認できる方法であれば、目視、機械操作等どのような方法を用いてもよい。この確認方法としては、各々の共通塩基グループが同じ領域から選択された部位からなることを前提とし、例えば各分類のメルクマールを含有する塩基配列をアラインメントし、共通塩基グループの各部位が完全一致しないことを解析する方法等があげられる。
【0048】
また、本発明においてメルクマールの信頼性を高めるためには、ある分類のメルクマールとして選択される塩基の部位とその塩基の種類は、他の分類に属する昆虫の塩基配列データと比較して完全に一致しないことが望ましい。具体的にはある分類のメルクマールとして選択される塩基を含有する塩基配列と、該塩基配列に相当する領域を有する他の分類に属する昆虫の塩基配列をアラインメントによって比較し、メルクマールとして選択される塩基が完全に一致しないことを確認する。比較に用いる個々の分類由来の塩基配列の数は、5個以上、好ましくは10個以上である。例えばよく見かける昆虫の多くは五大目といわれる双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目に含まれるため、五大目のうちのある目のメルクマールとして選択される塩基を含有する塩基配列は、残りの4つの目に属する昆虫の塩基配列、すなわち20個以上、好ましくは40個以上と比較するとよい。
【0049】
また、本発明では、上記共通塩基グループに含まれる塩基から少なくとも1以上の塩基、好ましくは3〜50の塩基、より好ましくは5〜30の塩基、さらに好ましくは15〜30の塩基を選択してメルクマールとすることができる。少なくとも1以上の塩基、好ましくは3〜50の塩基、より好ましくは5〜30の塩基、さらに好ましくは15〜30の塩基としたのは、メルクマールとしての操作の簡便性及び信頼性を考慮したためである。
【0050】
<メルクマールの策定方法>
以下に、本発明のメルクマールを策定する方法を記載する。ただし、本発明はこれらの方法に限定されるものではなく、一般的に知られている他の方法を適宜改変して用いてもよい。
【0051】
(1)昆虫の入手
DNA抽出に用いる昆虫は、例えば昆虫販売業者や昆虫取扱業者から分譲又は購入することもできるし、雑木林や草むら等から採集したものを使用することもできる。採集した昆虫は、好ましくは専門家に同定を依頼する。
【0052】
(2)DNAの抽出
DNAの抽出は、昆虫の全体もしくは一部(触角、胸部、翅、脚等)を用いて行うことができる。好ましくは、ノミバエ等の小型昆虫については、1匹又は数匹の個体全体を使用し、イエバエやそれ以上の体長を有する大型昆虫では、昆虫の体の一部(触角、胸部(又はその筋肉)、前翅、後翅、脚等のいずれか)を使用する。
【0053】
DNAの抽出は、CTAB(Cetyltrimethyl ammonium bromide)法や市販キットのQiagen DNeasy Tissue Kit(キアゲン社)やISOPLANTII(ニッポンジーン社)等の当業界で公知の方法を用いて抽出することができる。操作性と経済性の点からCTAB法が好ましい。
【0054】
(3)DNA断片の増幅
PCR法によりDNA断片の増幅を行う。本発明で用いるPCR法は特に限定されず、公知のPCR法に加え、種々の改良方法を含む。以下はその一例である。すなわち、プライマーのセット、鋳型(被検)DNAの他にTris−HCl、KCl、MgCl2、各dNTP、TaqDNAポリメラーゼ等の試薬類を混合してPCR反応液とする。PCRの1サイクルは、熱変性、アニーリング、DNAポリメラーゼによるDNA合成反応の3つのステップからなる。各ステップはそれぞれ異なる、場合により同一の反応温度と反応時間を必要とし、これらは増幅すべきDNA領域の塩基配列、その長さ等により適宜決定される。このような操作は市販のthermal cyclerを用いて行うことができる。
【0055】
本発明に使用するプライマーの一例としては、下記に記載したような、昆虫の系統解析で用いられる既存のミトコンドリアNADH dehydrogenase subunit 5(ND5)遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4(配列番号5及び6)及びEzo-2/AO-3(配列番号11及び12))、cytochrome oxidase subunitI(CoI)遺伝子由来のプライマーセット(SKCOI-7/ SKCOI-2(配列番号13及び14))、又は核ゲノム由来のプライマーセット(28S-01/28SR-01(配列番号7及び8)及びITS-1/ITS-4(配列番号9及び10))を使用することができる。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
V1.04-4 GTC ATA CTC TAA ATA TAA GCT A (配列番号6)
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(Ezo-2/AO-3)
Ezo-2 TTC ATC TTT TAA CTC ATG CA (配列番号11)
AO-3 ATA TTC ATT TCA ACC TTG ATC (配列番号12)
ミトコンドリアCoI遺伝子由来のプライマーセット(SKCOI-7/ SKCOI-2)
SKCOI-7 CGC TCT AGA ACT AGT GGA TCA CNA AYC AYA ARG AYA TYG GNA C (配列番号13)
SKCOI-2 TCG AGG TCG ACG GTA TCA CRT ART GRA ART GNG CNA CNA CNA CRT ART A (配列番号14)
核ゲノム由来のプライマーセット(28S-01/28SR-01)
28S-01 GAC TAC CCC CTG AAT TTA AGC AT (配列番号7)
28SR-01 GAC TCC TTG GTC CGT GTT TCA AG (配列番号8)
核ゲノム由来のプライマーセット(ITS-1/ITS-4)
ITS-1 AAG TCG TAA CAA GGT TTC CG (配列番号9)
ITS-4 TCC TTG TTA GTT TCT TTT CCT C (配列番号10)
また、一部の昆虫種については、既存のプライマーでは目的とするバンドを増幅することができない場合があり、これらについてはメルクマールの塩基をはさむ形で、すなわちメルクマールの塩基を含有する領域をはさむ形で、適切なプライマーを設計し、使用する。
【0056】
例えば、鱗翅目に使用できることが確認されている新たに設計したプライマーとしては、以下のプライマーがあげられるがこれらに限定されない。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/rin-r)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
rin-r GAA TAA AAT CCA GCT AAA AAA GG (配列番号15)
鱗翅目に属するコイガ、ハスモンヨトウについて、上記プライマーを用いると、メルクマールの塩基をはさむ446塩基の断片を増幅することができる。
【0057】
また例えば、膜翅目に使用できることが確認されている新たに設計したプライマーとしては、以下のプライマーがあげられるがこれらに限定されない。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(maku_1-f1又はmaku_1-f2/maku_1-r1)
maku_1-f1 GCT CCW ACT CCT GTK TC (配列番号16)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
又は、
maku_1-f2 GTT CAT TCA TCW ACT TTA G (配列番号18)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
膜翅目に属するマルハナバチについて、上記maku_1-f1及びmaku_1-r1プライマーを用いた場合は、メルクマールの塩基をはさむ439塩基の断片を増幅することができ、膜翅目に属するハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチについて、上記maku_1-f2及びmaku_1-r1プライマーを用いた場合は、メルクマールの塩基をはさむ415塩基の断片を増幅することができる。
【0058】
本発明のプライマーは、より多くの昆虫種で目的とするバンドを増幅することができるものを選択することが好ましい。
【0059】
(4)PCRによる増幅の確認
PCRの結果(PCR産物)の評価方法として、特定のDNA断片を同定しうる任意の方法、例えば、電気泳動、ゲルろ過、ハイブリダイゼーションを用いて目的の大きさのDNA断片(例えば、上記ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセットを使用した場合は、大きさが1080塩基前後のDNA断片)が増幅されていることを確認する。
【0060】
(5)PCR産物の精製
増幅されたPCR産物は、サイクルシークエンス反応の鋳型として用いるために、余剰のプライマー等の反応に用いた成分と分離する。この精製は、例えば、市販のQIAquick PCR Purification Kit(キアゲン社)を使用し、その製品に添付のプロトコールに従って行うことができる。
【0061】
(6)サイクルシークエンス反応及びシークエンス産物の精製
上記のように精製したPCR産物のシークエンスを行うため、それを鋳型にして、サイクルシークエンス反応を実施する。この方法は、PCR法に類似し、thermal cyclerを用いて、熱変性、アニーリング、DNAポリメラーゼによるDNA合成反応の3つのステップを繰り返し実施するが、どちらか1種類のプライマーを用い、塩基ごとに異なる4種類の蛍光色素で標識したターミネーター存在下で長さの異なる種々の1本鎖DNAを合成する方法である。
【0062】
その後、上記で得られた反応液から、シークエンシング産物、すなわち1本鎖DNAの混合液を精製し、以降のシークエンサーに供する試料を調製する。この方法の一例として、CENTRISEP Spin Column(ABI社)を用いる方法があげられ、添付のプロトコールに従って操作し、目的の試料を得る。
【0063】
(7)DNA断片のシークエンス
上記Dye Terminator法で得られたシークエンス産物につき、シークエンスを行う。方法としては電気泳動法を用いるのが一般的であり、一例として、ABI PRISM 310 Genetic Analyzerを用いて電気泳動を行い、標識に用いた蛍光物質が塩基ごとに異なることを利用して、レーザー蛍光検出器により順次塩基配列を決定することがあげられる。
【0064】
(8)塩基配列の解析
決定された塩基配列を解析し、シークエンスデータを得る。例えばミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセットの場合、5’側(プライマーV1.06-1側)と3’側(プライマーV1.04-4側)からそれぞれ300〜600塩基の長さのシークエンスデータが得られる。
【0065】
(9)アラインメント
分類レベルで昆虫を識別するための基準となるメルクマールは以下のようにして策定する。まず上記のようにして得られた実分析の結果や既知データについて、分類ごとに少なくとも5種類の昆虫のシークエンスデータを選択し、上記したアラインメント(Multiple Alignment 解析)を行う。前記シークエンスデータは同じ領域を有するものでなければならないため、例えば、実分析で得られたシークエンスデータすなわち所望のプライマーを用いて増幅されシークエンスされた領域を共通領域と定め、公開データベースからはこの領域を含むシークエンスデータを選択し、そのまま、又は連続した一定領域を取り出して使用する。より具体的には、目や科の名称と遺伝子によってコードされる蛋白質(酵素等)の名称等をキーワードにして検索するか、あるいは、実分析で得られたシークエンスデータに基づいて相同性検索(BLAST検索)を行い、実分析で得られたシークエンスデータの領域を有するシークエンスデータで選択しダウンロードする。ダウンロードしたシークエンスデータはそのまま、又は連続した一定領域を取り出してからアラインメント(Multiple Alignment 解析)に使用することができる。
【0066】
(10)共通塩基グループの抽出
アラインメントにより得られたデータから、全種類の塩基配列において塩基が保存されている部位を抽出する。塩基が保存されているとは、得られたアラインメントデータの縦列が全種類の塩基配列において全て同じ塩基であることを意味する。抽出された部位のうち、その全部又は一部の部位を選択し、共通塩基グループとする。一部の部位を選択する場合は、所望のプライマーを用いて増幅されシークエンスされた領域を共通領域とする場合、好ましくはシークエンスの精度がより高いと考えられるシークエンス開始後(5’末端又は3’末端から)約50番目から約400番目の範囲内に存在する部位を選択する。また選択する部位は連続していても不連続であってもよい。選択する部位の総数は好ましくは1個以上、好ましくは3〜50個、より好ましくは5〜30個、さらに好ましくは15〜30個である。
【0067】
(11)メルクマールの策定
上記したように、共通塩基グループから選択される塩基が、他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基と比較して、及び/又は他の分類の属する昆虫の塩基配列データと比較して、完全に一致していないことを確認する。このようにして、その分類に特異的なメルクマールを策定することができる。
【0068】
このようにして策定されたメルクマールとして、例えば、昆虫の中でも、種類が多いとされるいわゆる五大目(双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目)について、本発明者が選定したメルクマールを表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
このうち、双翅目は27個の共通塩基グループ、半翅目は21個の共通塩基グループ(グループ1)、23個の共通塩基グループ(グループ2及び3)、及び25個の共通塩基グループ(グループ4)からなる4つの共通塩基グループ、膜翅目は34個の共通塩基グループ(グループ1及び2)、及び35個の共通塩基グループ(グループ3)からなる3つの共通塩基グループ、鱗翅目で25個の共通塩基グループ、鞘翅目で19個の共通塩基グループを各「目」のメルクマールとした。
【0071】
なお策定されたメルクマールを使用して蓄積されたデータに基づき、より精度が高いメルクマールを策定することもできる。
【0072】
<昆虫の識別方法>
上記のように策定したメルクマークを用いて混入した昆虫を分類レベルで識別することができる。具体的には、メルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体の、前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の塩基配列中の、メルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析することにより、被検体の分類を識別することができる。
【0073】
以下に、本発明の昆虫の識別方法について解析ソフトを用いた場合について例示する。すなわち、上記の方法により得られたメルクマールを有する領域の塩基配列を予め、SeqScape(ABI社)等の解析ソフト上に登録する。登録する分類は1つでもまたは複数であってもよい。一方、製造工程中に混入した昆虫等の被検体由来の塩基配列を上記解析ソフトに入力する。被検体由来の塩基配列については、上記<メルクマールの策定方法>(2)〜(8)に記載したのと同様の方法で、DNAを抽出し、被検体の塩基配列を解析することにより得ることができる。この場合、被検体の塩基配列は、基準とするメルクマールと同じ領域を含むものを調製する。得られた被検体の塩基配列を入力後、メルクマールを有する領域の塩基配列が予め登録されている分類との比較を行う。比較は、前記解析ソフト上で両者の塩基配列をアラインメントすることにより行うことができる。そして、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基と前記メルクマールの塩基が完全に一致するかを解析し、完全に一致する場合は、被検体は前記メルクマールが属する分類に属する昆虫であるといえる。このように、本発明のメルクマールを用いると、被検体である昆虫を分類レベルで識別することができる。予め複数の分類についてメルクマールを有する領域の塩基配列が登録されている場合は、被検体の塩基配列を各分類の塩基配列と順次、比較・解析を行い、被検体である昆虫を分類レベルで識別することができる。なお、分類のメルクマールとして決定した特定の塩基をマーキングする等の標識することにより、上記した比較を容易に実行することもできる。すなわち、まず、着色された対照の塩基(メルクマール)を有する塩基配列と、被検体由来の塩基配列のアラインメントを行った後に、着色された塩基だけを抜き出して両者を比較した表を作成する。これにより塩基の種類と存在する位置の全てが一致するか否かの識別が容易になり、被検体である昆虫がそのメルクマールの分類に属するか否かということが容易に識別できるため、被検体の分類レベルでの識別が可能となる。なお、この方法は複数の被検体についての解析も同時にできるため好ましい。
【0074】
また、メルクマールを有する領域の塩基配列およびそれを用いて識別を行うプログラムを分類ごとに登録して保存しておくことにより、未知の被検体の分析時に即座に活用でき、各分類において分類レベルの識別が迅速に行える。
【0075】
<解析ソフト>
本発明は、コンピュータを、本発明の昆虫の識別を実行させるための解析ソフトをも提供する。上記のようにメルクマールを用いて昆虫の識別を行う解析ソフトは、解析に用いるホストコンピュータが有する、本発明の方法により得られたメルクマールの記録手段、被検体由来の塩基配列の入力及び記録手段、メルクマール及び被検体由来の塩基配列をアラインメントにより比較する手段、上記比較結果を表示する手段等を、上記昆虫の識別を実行するために相互に協調させて働かせることができるコンピュータ用のプログラムである。この解析ソフトは、サーバに接続された情報記憶手段(ROM、RAM等)に登録され、上記識別に必要な手段を管理して、必要な機能又は処理を実行させる。従って、本発明の解析ソフトは、本発明において使用するコンピュータ上で、又はネットワーク上で機能しうるプログラム言語で記載することができる。具体的には、SeqScape(ABI社)等の解析ソフト上で、分類ごとのメルクマールが登録されたものを用いてもよい。
【0076】
なお、本発明の解析ソフトによる昆虫の識別システムを稼動させるためには、本発明の解析ソフトの他に、通常のコンピュータネットワークに必要なプログラム、例えば周知のオペレーティングシステム(OS)やインターネットブラウザプログラム等も使用される。
【0077】
<コンピュータ読み取り可能な記録媒体>
本発明の解析ソフトは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体又はコンピュータに接続しうる記憶手段に保存することができる。従って、本発明の解析ソフトを含有するコンピュータ用記録媒体又は記憶手段も本発明に包含される。このような記録媒体又は記憶手段には、磁気的媒体(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光学的媒体(CD、DVDなど)、磁気光学的媒体(MO、MD)などがある。
【実施例】
【0078】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.昆虫からのシークエンスデータ
(ア)昆虫
DNA抽出に用いた昆虫は、アース製薬株式会社又は住化テクノサービス株式会社、シーアンドエス株式会社から入手した。取り扱いのない昆虫については、さいたま市見沼区において発明者が採集し、採集した昆虫の写真(デジタル画像)をシーアンドエス株式会社に送信し、同定を依頼した。これらの昆虫(計34種)を表2に記載するが、半翅目として、ツマグロヨコバイ、ワタアブラムシ、トビイロウンカ、クサギカメムシ、モモアカアブラムシの5種、鞘翅目として、タバコシバンムシ、ヒメカツオブシムシ、ヒラタキクイムシ、アズキゾウムシの4種、膜翅目として、アミメアリ、アシナガアリ、キアシナガバチ、ハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチの9種、鱗翅目として、イガ、ノシメマダラメイガ、コイガ、ハスモンヨトウ、シャクガ科の5種、双翅目として、アカイエカ、イエバエ、センチニクバエ、キイロショウジョウバエ、オナジショウジョウバエ、クロショウジョウバエ、ヒョウモンショウジョウバエ、カスリショウジョウバエ、オオショウジョウバエ、オオキモンノミバエ、オオチョウバエ、クロバエ科の12種を用いた。DNAの抽出には表2に記載の通り、これらの昆虫の全体もしくは一部(触角、胸部、翅、脚など)を用いた。
【0079】
【表2】
【0080】
(イ)DNA抽出
DNA抽出にあたっては、CTAB法や市販キットのQiagen DNeasy Tissue KitやISOPLANTII(ニッポンジーン社)を用いて抽出したDNAをPCRで増幅して、シークエンスを行い、シークエンスデータを得た。DNAの抽出に用いた方法を表2に記載するとともに、各抽出方法を以下に記載する。
i) Qiagen DNeasy Tissue Kitを用いる方法
製品に添付の「DNeasy Tissue Handbook」に従って以下のように実施した。クロバエ科のハエ2匹を解剖し、胸部の筋肉を取り出し、それぞれの全量を1.5ml容のマイクロチューブ1本ずつ計2本に入れ、180μlのバッファーATLを加えた。20μlのproteinase Kを加え、チップの先でつぶすようにしながら攪拌した後、55℃のインキュベーターに入れた。時々攪拌を行って、各チューブにつき約20時間後と約48時間後に取り出し、15秒間攪拌し、200μlのバッファーALを加え、十分に攪拌後70℃で10分間インキュベートした。200μlのエタノール(96〜100%)を加え、十分に攪拌した。この液をDNeasy Mini spin columnに入れ、2ml容のコレクションチューブに受けて6000 x g(8000 rpm)で1分間遠心分離を行った。ろ液とコレクションチューブを捨て、DNeasy Mini spin columnを新しい2ml容のコレクションチューブに受けて500μlのバッファーAW1を加えて6000 x g(8000 rpm)で1分間遠心分離を行った。ろ液とコレクションチューブを捨て、DNeasy Mini spin columnを新しい2ml容のコレクションチューブに受けて500μlのバッファーAW2を加えて20,000 x g(14,000 rpm)で3分間遠心分離を行った後、DNeasy membraneを乾燥させた。ろ液とコレクションチューブを捨て、DNeasy Mini spin columnを1.5ml又は2ml容のマイクロチューブに移し、200μlのバッファーAEを直接DNeasy membraneに載せ、室温で1分間インキュベートした後、6,000 x g(8,000 rpm)で1分間遠心分離を行い、DNA溶液を溶出させた。上記と同様な溶出作業をもう一度繰り返したものをDNA試料とした。
ii) ISOPLANTIIを用いる方法
ニッポンジーン社の発行するマニュアルに準じて以下のように行った。マイクロホモジナイザー(Radnoti Tissue Grinder, Catalog# 440612又は440613)に昆虫の検体と300μlのSolutionIを入れ、検体をよく磨砕した。150μlのSolutionIIを入れ、10秒間攪拌(ボルテックス)した後、50℃の恒温水層に10分間漬け込んだ。100μlのSolutionIII-A、続いて120μlのSolutionIII-Bを入れ、1〜2秒間ボルテックスを行い、氷上で10分間冷却した。14K x g、4℃、10分間の遠心分離を行い、上層(水層)を別のチューブに分離し、そこへ2倍量のエタノール(室温保存)を入れ、よく混合した。続いて6K x g、室温にて5分間の遠心分離を行い、得られた沈殿に1mlの70%エタノールを添加して沈殿を舞い上がらせてよく洗浄した。6K x g、室温、1分間の遠心分離を行い、得られた沈殿を遠心エバポレーターにて乾燥させ、20〜50μlのTEバッファー(pH 8.0)によく溶かしてDNA試料とした。
iii) CTAB(Cetyltrimethyl ammonium bromide)法
2%(w/v)CTAB(Calbiochem社製)、100mM Tris-HCl(pH 8.0)、20mM EDTA (pH 8.0)、1.4 M NaCl、1%(w/v)PVP(Polyvinylpyrrolidone)を組成とするCTAB液を調製した。このCTAB液650μlを昆虫の検体と共にマイクロホモジナイザーに入れた。なお、ノミバエなどの小型昆虫については、1匹(又は数匹)の個体全体を使用し、イエバエやそれ以上の体長を有する大型昆虫では、昆虫の体の一部(触角、胸部(又はその筋肉)、前翅、後翅、後脚などのいずれか)を用いた(表2)。次にこの検体とCTAB液の入ったマイクロホモジナイザーを内部の試料が浸るように65℃の恒温水槽に漬けて10分間インキュベートした。続いてマイクロホモジナイザーのガラス管(底が磨りガラス状)とセットになった、先端が球状で磨りガラスになったガラス棒(ガラス管の底に合うように加工されたもの)で検体をすりつぶした後、1mg/ml RNaseA溶液2μlを加え、65℃、1時間インキュベートして昆虫の細胞を破砕した。1.5ml容のマイクロチューブに移し変え、等量(650μl)のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、手で3分間転倒混和した。短時間(遠心機の最大回転数で1分間)の遠心分離を行い、有機溶媒層(下層)と水層(上層)に分画し、水層(約400μl)を新しいチューブに移した。等量のイソプロピルアルコールを加え、転倒混和後、上記と同様に遠心分離を行った。上清を捨て、沈殿を70%エタノールでリンスし、乾燥させたものを、20-50μlのTEバッファーに溶解してDNA試料とした。
(ウ)PCR
DNA断片の増幅は、Takara Ex Taq Polymerase (2.5 units/final 50 μl)を用い、添付のEx Taq Bufferと下記に記載したプライマーセット(各々50 pmoleずつ)、dNTP Mixture(各dNTPをそれぞれ10 nmoleずつ添加)、鋳型DNA(調製したものを1μl)を添加して、滅菌蒸留水で最終50μlになるように調整した(表3)(Su, Z.-H., et. al., 1998, Origin and Diversification of Hindwingless Damaster Ground Beetles Within the Japanese Islands as Deduced from Mitochondrial ND5 Gene Sequences (Coleoptera, Carabidae). Mol. Biol. Evol. 15(8): 1026-1039.)。これを0.2 ml容のマイクロチューブ(PCR用)に入れ、PCR装置(DNA Thermal Cycler GeneAmp PCR System 9600;旧Perkin Elmer社製)にセットして、変性(94℃、30秒)、アニーリング(50℃、30秒)、鎖伸長(70℃、60秒)の反応を35回繰り返した(表4)。なお、反応終了後、サンプルをすぐに取り出せない場合には、サンプルブロックの温度を4℃に下げて保持した。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
V1.04-4 GTC ATA CTC TAA ATA TAA GCT A (配列番号6)
鱗翅目に属するコイガ、ハスモンヨトウについて用いたプライマー
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/rin-r)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
rin-r GAA TAA AAT CCA GCT AAA AAA GG (配列番号15)
膜翅目に属するハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチについて用いたプライマー
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(maku_1-f1又はmaku_1-f2/maku_1-r1)
maku_1-f1 GCT CCW ACT CCT GTK TC (配列番号16)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
又は、
maku_1-f2 GTT CAT TCA TCW ACT TTA G (配列番号18)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
(エ)PCRによる増幅の確認
上記で得られたPCR反応液の5 μlをアガロースゲル電気泳動に供した。この際、ミニゲル電気泳動システム「Mupid」を用いて電気泳動を実施(ゲル;3% NuSieve 3:1 Agarose(FMCバイオプロダクツ社製、またはCambrex Bio Science Rockland社製)、泳動条件;100V、30分)し、2μg/ml臭化エチジウム溶液中で40分間染色後、UV照射下で増幅産物の写真撮影を行い、目的のDNA断片(大きさが1080塩基前後)が増幅されていることを確認した(図1〜9で、丸で囲ったバンド)。そのうち、図1は、目的のDNA増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はツマグロヨコバイを、レーン2はタバコシバンムシを、レーン3はアミメアリを、レーン4はイガを、レーン5はアカイエカを、レーン6はヒメカツオブシムを、レーン7はノシメマダラメイガを、レーン8は鋳型を添加していないブランクを、Mは100塩基のladder markerを、それぞれ示す。図2は、目的とするDNA増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はイエバエを、レーン2はセンチニクバエを、レーン3はオオチョウバエを、レーン4はキイロショウジョウバエを、レーン5はクロショウジョウバエを、レーン6はカスリショウジョウバエを、レーン7はヒョウモンショウジョウバエを、レーン8はオナジショウジョウバエを、レーン9はオオショウジョウバエを、Bは鋳型を添加していないブランクを、Mは100塩基のladder markerを、それぞれ示す。図3は、クロバエ科の検体DNAの電気泳動像を示す。Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、レーン1はクロバエ科検体1のDNA(1μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン2はクロバエ科検体1のDNA(5μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン3はクロバエ科検体2のDNA(1μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン4はクロバエ科検体2のDNA(5μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン5はDNAを添加していないネガティブコントロールを、それぞれ示す。図4は、クロバエ科の検体DNAの電気泳動像を示す。Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、レーン1はクロバエ科検体1のDNA(1μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン2はクロバエ科検体1のDNA(5μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン3はクロバエ科検体2のDNA(1μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン4はクロバエ科検体2のDNA(5μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン5はクロバエ科検体1のDNA(1μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、レーン6はクロバエ科検体1のDNA(5μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、レーン7はクロバエ科検体2のDNA(1μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、レーン8はクロバエ科検体2のDNA(5μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、それぞれ示す。以上、()内に示した数値はPCR反応液への添加量を示す。図5は、異なる分類に属する昆虫由来のDNAの増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はワタアブラムシ1匹から抽出したDNAを、レーン2はワタアブラムシ5匹から抽出したDNAを、レーン3はオオキモンノミバエから抽出したDNAを、BはDNAが添加されていないブランクを、MはDNAサイズマーカーをそれぞれ示す。図6は、異なる分類に属する昆虫由来のDNAの増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はトビイロウンカから抽出したDNAを、レーン2はクサギカメムシから抽出したDNAを、レーン3はモモアカアブラムシから抽出したDNAを、レーン4はヒラタキクイムシから抽出したDNAを、レーン5はアズキゾウムシから抽出したDNAを、レーン6はコイガから抽出したDNAを、レーン7はノシメマダラメイガから抽出したDNAを、レーン8はハスモンヨトウから抽出したDNAを、レーン9はアシナガアリから抽出したDNAを、BはDNAを添加していないブランクを、Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、それぞれ示す。図7は、異なる分類に属する昆虫由来のDNAの増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はキアシナガバチの翅から抽出したDNAを、レーン2はマルハナバチの翅から抽出したDNAを、レーン3はシャクガの翅から抽出したDNAを、レーン4はシャクガの脚から抽出したDNAを、レーン5はDNAを添加していないブランクを、Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、それぞれ示す。図8及び9は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った膜翅目の電気泳動の結果を示す。図10は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った隣翅目の電気泳動の結果を示す。
【0084】
鱗翅目に属するコイガ、ハスモンヨトウについて、上記v1.06-1及びrin-rプライマーを用いると、446塩基の断片が増幅された。さらに、膜翅目に属するマルハナバチについて、上記maku_1-f1及びmaku_1-r1プライマーを用いると、439塩基の断片が増幅され、膜翅目に属するハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチについて、上記maku_1-f2及びmaku_1-r1プライマーを用いると、415塩基の断片が増幅された。
【0085】
(オ)PCR産物の精製
上記PCR産物の精製はQIA quickspin kit(キアゲン社)を使用し、プロトコ−ルに基づいて以下の方法で行った。すなわち、PCR反応液(残量約45μl)にPB Bufferを5倍量(225μl)加えて、混和した。次に、この液をQIA quickspinに入れ、13,000rpmで1分間遠心分離した。ろ液を捨て、750μl PE Bufferを添加した後、13,000rpmで1分間遠心分離した。ろ液を捨て、再度14,000rpmで1分間遠心分離した。ろ液を捨て、新しい1.5mlエッペンチューブにカラムを移し、30μl EB Bufferを添加し、1分間放置後、13,000rpmで2分間遠心分離して、ろ液をサンプルとした。
【0086】
(カ)サイクルシークエンス反応及びシークエンス産物の精製
BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit の日本語版プロトコール(p.22 「1本鎖DNA、2本鎖DNAのサイクルシークエンス」、p.25「GeneAmp PCR System 9700, 9600, 2700, 2400でのサイクルシークエンス」及びp.38-40 「スピンカラム(やスピンプレート)での精製法」)に基づいていて以下のように実施した。なお、用いたプライマーの塩基配列は、目的のDNA断片のPCRによる増幅に用いたものと同じである。すなわち、PCR精製液を5〜20ng/μlになるように滅菌蒸留水で希釈し、このうち2μlにSequence premix(Big dye)を8μlと1μMの上記v1.06-1またはv1.04-4のプライマー1pmole/μlをそれぞれ単独で3.2μl添加し、滅菌蒸留水にて最終20μlに調整したサイクルシークエンス反応液を得た。これを0.2 ml容のマイクロチューブ(PCR用)に入れ、PCR装置(DNA Thermal Cycler GeneAmp PCR System 9600;旧Perkin Elmer社製)にセットして、変性(96℃、1分)を行った後、変性(96℃、10秒)、アニーリング(50℃、5秒)、鎖伸長(60℃、4分)の反応を25回繰り返した。なお、反応終了後、サンプルをすぐに取り出せない場合には、サンプルブロックの温度を4℃に下げて保持した。シークエンス産物は、セントリセップカラムにて精製した。すなわち、充填剤を室温で2時間以上膨潤させて前処理の完了しているセントリセップカラムの中心部に上記シークエンス産物(約20μl)を載せるように添加し、1.5ml容のマイクロチューブを下部に受け、750 x g、2分間遠心分離を行った。マイクロチューブ内に集まった溶液を精製DNAとして回収した。この溶液を減圧下で乾燥させた後、20μlのTSRまたはHi-Di formamideを添加し、10分間程度放置した後、よく混和した。この液を0.2ml容のマイクロチューブ(PCR用)に移し、DNA Thermal Cycler GeneAmp PCR System 9600にて変性(95℃、2分)を行い、直ちに氷中に挿入して急冷し、そのまま10分間以上放置した。
【0087】
(キ)DNAシークエンス
ABI PRISM 310 Genetic Analyzerを使用し、「ABI PRISM 310 Genetic Analyzer操作ガイド」に基づいて実施した。すなわち、上記の急冷後の試料をサンプルチューブに移し、チューブセプタで蓋をし、48穴サンプルトレーにセットした。その後は、操作ガイドに従ってDye Terminator法によりシークエンスを実施した。
【0088】
(ク)塩基配列の解析
得られたシークエンスデータは、5’側(プライマーV1.06-1側)と3’側(プライマーV1.04-4側)からそれぞれ300〜600塩基長であるが、オオキモンノミバエは相補的な箇所を重ね合わせて一続きのデータとして得られた。メルクマール策定には、5’側(プライマーV1.06-1側)の領域を主として用いた。なお、得られた配列データを以下に示した。
・ツマグロヨコバイ
プライマーV1.06-1側(配列番号2)
ACTTATTCGGTTTTTTAACACAAAATATTTTATTAATGATTTTCTAATTTATGTAAGNATTGTAACTCTTATTATATCCTCATTATGTGCTAATTATGAATTTGACTTAAAAAAAATTATTGCATTATCTACTCTTAGTCAATTAGGTTNAATAATAAGAAGTTTATTTATAGGCATAGTGGAGATAACATTTTTCCATCTTCTTTCTCATGCCATATTTAAATCTCTCCTTTTTCTTTGTTCTGGTATTATTATTCATTTAATAGGCGGTTGTCAAGACATCCGATTTATAGGTTCTATTTGTTATTCGATACCCTTAACTAGATGTTGTTTAAATATTNCCAATATATCTTTATGTGGATTCCCTTTTTTGTCTGGGTTNTACTCTAAAGATTTAATTATTGATAGG
プライマーV1.04-4側(配列番号19)
TTAATATTCTAATAAAAAAGAATTTTATAGAGTTTATTCTGTATATCTGTATAAAATTAGATAATTTTTGTAAATAATATGAAATTCCTATACCACCAAAAAATTCTCCTCAATAAATAGAATTATTTATATGATATCCAAAATTATAATTACTTATGAAAATTCAAGTAGAAAAACTATATATAAATCATATTGAACCATTCAATGAATAGAAAGAATTTATATTAATTAGATTTTTATAAAAATGAGAAAATTCATATCCAATAAAAAGACCTAATATTACTATAAATAAAGTTAAAATTTTTAAATAAAACGGTAGTAACAAAAACTTTATATCTAAATTTATAATTCATATATATATACAACCAAATTTCAAAGAAAATATAGACTAAAATTACTACTCTATATTTCATTAAATAAATTTCTTCTCTTATATTTAAATACGAAAAAAACTTAAAATTTTGATATA
・タバコシバンムシ
プライマーV1.06-1側(配列番号20)
ATTAATTCGATTTAGATCAAGATTTAATATACAAATAATAACAATAATATTATTTATTTGTTCAATAACTATATTTATAGCTGGATTAGGGGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAGATTATTGCTCTTTCAACGTTGAGACAACTTGGATTAATAATAAGAATTTTATTTTTAGGAGATTATAAATTAGCTTTTTTTCATCCTTTTAACTCATGCATTATTTAAAGCCTTATTATTTATATGTGCTGGAAATATAATTCATAGATTATTAGGATGTCAAGATATTCGTTTTATAGGATCNTTAATTAATTTAATACCATTAACCTGCTGTTTATTTTCGCATTGCTAACTTATCATTATGNGGTATTCCCTTTCTTTCTGGATTTTACTCTAAAGACTTAATT
プライマーV1.04-4側(配列番号21)
TTACTGTGATTATAAAAAAAATTTTTAAGTGATTGAAATGAATAATTTGTAATAATGAGGAATTCTTTTTTAATATCAAATAAATTCCTTGTGAACCAATAAATTCTGTTCATCCTTGATCAAATAATTTTTTATAAATAAATCCTAAAATTAATGGTAATTTTAAAATAATTCCTGTTGACATGATTGGTAAATTTCATATTAATGACGAAAATATTCTTGATTTATAAAAATTTATTGTCTTTGAGGAATAATATAATGAGAACTTTGAAATTTCATATCCAATAATTGACCCAATAATAATTACTATCAAAGTAGATATTTTTATCATAAATGGTAAATTAATTAAATAAGGAATATCTATAATTAATCAAGATAAAACTTGATCCTATTATAATTACAAACGTAAATAATCCTCTCATTCCTGTTAATATTATTTTTCTATTTTCTCCTAAGTGATTTTAATGAAATAAAATTACAACATTTTCCCTAATAAATAAATTAATATAAA
・イガ
プライマーV1.06-1側(配列番号22)
TTTAGTAACAGCTGGAGTTTATTTATTAATTCGTTTTAATTTAATATTAATAGATACAATTTTTTTTAAAATTTTATTATTAATATCAAGTTTAACTATATTTATAGCTGGAATTTCTGCTAATTATGAATTTGATTTAAAGAAAATTATTGCTTTTTCTACTTTAAGACAATTAGGGTTAATAATAAGAATTTTAAGAATAGGGTTTTCTGATCTTGCTTTTTTCCATTTATTAACTCATGCAATATTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCTGGGGTTATTATTCATATGATAAATGATAGACAAGATATTCGATTTATGGGAGGGATTAGAAAATTTATTCCTTTAACTTCATTATGTTTTAATATTTCAAATTTAGCTTATATTTAGAGTATGACA
プライマーV1.04-4側(配列番号23)
ATTAAAACATAATGAAGTTAAAGGAATAAATTTTCTAATCCCTCCCATAAATCGAATATCTTGTCTATCATTTATCATATGAATAATAACCCCAGCACATATAAATAATAAAGCTTTAAATATTGCATGAGTTAATAAATGGAAAAAAGCAAGATCAGAAAACCCTATTCTTAAAATTCTTATTATTAACCCTAATTGTCTTAAAGTAGAAAAAGCAATAATTTTCTTTAAATCAAATTCATAATTAGCAGAAATTCCAGCTATAAATATAGTTAAACTTGATATTAATAATAAAATTTTAAAAAAAATTGTATCTATTAATATTAAATTAAAACGAATTAATAAATAAACTCCAGCTGTTACTAAAGTAGAAGAATGAACTAAAGCAGAAACAGG
・アカイエカ
プライマーV1.06-1側(配列番号24)
GGGGGTGTTACTTATTAATTCGATTTAATATTTTATTAGGTTGATTCTTTTATAGGACAATTTTTATTATTAATTTCTGGATTAACAATATTTATAGCGGGGTTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATCTAAAAAAAATTATTGCTTTATCAACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGTATTCTATCAATTGGATTTTATAAATTAGCTTTTTTTCATTTATTAACTCACGCTTTATTTAAGGCTTTATTATTTATATGTGCAGGGGTAATTATTCATAATACAAAAAATGCACAAGATATTCGTTTTATAGGAAGATTAAGTATAAGAATACCTTTAACTTGTAGTTGTTTTAATATTGCTAATTTAGCTTTATGTGGTATACCTTTTTTAGCAGGGTTTTATTCAAAGGATTTAATCTTTAGAAGTAGTTATGGTGTCATATATTAAC
プライマーV1.04-4側(配列番号25)
TAAAACTAAACAATTACTCATAATAAATAACTTAATAAATAAATTTTTAAATTATTATTTTGAAATTCTTGAATATATAAAGAATAATTCTTTAATTGATTATATAATATTTGACCTCCAAAAAATTCACTTCATCCTTGATCAAAACTTTTATATCTATATAATCCTAAATTTATTGGAAACTTAATTACACCTAATGTANAAATAACTGGTATAAATCATATTCCTCCTGCAAATCTACTTAAACCATAGTTTATTAAAGATTTATTATAAAAAAATAAAGAAATATTTCTTATTAAATAACCAAATACACCCCCTAAGATACAAACAATTAAAGTTAATATTTTTATATCAAAAGGTAAACAAATTATATCGGTGATTAAAAAATCATTAATCAATTTAACATTCTTCCTCCAATAATAGCTATTACTATTAAAAAAAAAATTCTAAAAC
・イエバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号1)
TTTATTAATTCGATTTAATATTGTATTAAGAACAAGTTGAATGGGTAATTTATTACTATTATTATCAGGTTTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGTGCTAATTATGAATTTGATTTAAAGAAGATTATTGCTTTATCTACTTTAAGACAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTATCTATAGGTTATTATAAATTAGCTTTTTTTCATTTATTAACTCATGCATTATTTAAGGCTTTATTATTTATATGTGCAGGAGCAATTATTCATAATATGAACAATAATCAAGATATTCGTTTAATGGGAAGTTTAAGATTAATAATACCATTAACTTCTTCTTGTTTTAATGTTGCAAATTTAGCATTATGTGGAATACCATTTTTAGCAGGATTTTATTCAAAGGATTTAATTTTGGAAATAGTATCATTTTCTTATATTAATTTAT
プライマーV1.04-4側(配列番号26)
TTTTGAATAAAAACAAATTATATATATGTATAAAATTACAATTCAAAAAATAAAACTTAATAAATAAATTTTTAAATTATTATTTTGTAATATTTGATTAAACTGAGAATTTTTAACTAAATTATAATAAAGTTGTTGACCCCCAAAATATTCAGATCAACCTTGGTCAAATGATTTAATTCTTATTTTACCTAAAATTAAAGGATAATTAATAATTCCATAAGTAGAAATATAAGGTATAAATCATATTGAGCCTAAAAAATAAGAAAAATTATAATTTCTTAAAGCCTTATTTATAAAAAATAAAGATACATTAGAAATTAAATAACCTATTAAACCACCAATAATACATACAAATAAAGTCAATAACTTTAAATTTAAAGGTAAGATAATAACTTCCGGAGTAGGAAAAATTAATCAACTTAATATACTTCCTCCTACAATTCTTAAAATTAATAAACCTATTATACTCTTTAATATTACTCAACCTTCATCATTAAGTATATTTAAAGAAGAAAAATTAGAATCTCCAGTTATCGAATA
・センチニクバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号27)
CTGCAGGAGTTTATTTATTAATTCGATTTAATATTGTTTTAAGAAGATCTCCAATAGGGAATTTTTTATTATTAATTTCTGGATTAACTATATTTATGGCGGGATTAGGGGCTAATTATGAATTTGATTTAAAGAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAGTTGGGTTTAATAATAAGTATTTTATCAATGGGTTATTATAAGTTAGCATTTTTTCATTTATTAACACATGCTTTATTTAAGGCTTTACTATTTATATGTGCAGGAGCTATTATTCATAATATAAATAATTGTCAAGATATTCGATTGATGGGTAGTTTAAGTTTAATAATGCCTTTAACTTCTTCATGTTTA
プライマーV1.04-4側(配列番号28)
TTTGATAAAAACACTATATACATATATATATAACTATAATTCAAAGAATAAAACTTAATAAATAAATCTTTAAATTATTATTTTGTAATACCTGATTTAATTGAGAATTTTTTACTAAATTATAATACAATTGTTGTCCTCCAAAATATTCAGATCAACCCTGATCAAAAGACTTAACGGCTAATTTACCAACAATCAAAGAATAATTTATAATCCCATAAGTAGAAATATAAGGCATAAACCATATTGATCCTAAAAAATAAGATGAATTATAATTATTTAAAGCCTTATTGAAAAAAAATAAAGAAACATTAGAAATTAAGTAACCTATTAATCCTCCTACAATACATACAAATAAAGTTAATAATTTTAAATGAGAAGGTAAAACAATCACCAAAGGGCTTGGAAAAATTAATCAACTTAATATTCTACCCCCCGAAATTCTTAAATTAATAAACCTATTATACTCCTTAATATA
・キイロショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号29)
TTTATTAATTCGATTTAATATTATCTTAAGAACTTCTTGGTTAGGACAATTAATATTATTATTATCTGGATTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTGTCTATAGGATTTTTAAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACCCATGCTTTATTTAAAGCATTATTGTTTATATGTGCTGGGGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGTTTAATAGGGGGGTTAAGAATTCATATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAACGTATCTAA
プライマーV1.04-4側(配列番号30)
TAAAATAATAAAATTAATAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATAATAAATAAATTTTCAAAGAATTATTATGTATTAAAAATAAAGTTTTAGAATATATAGATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTTACAACTAATTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATTATACCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCATATAGACCCTAAAAAAGTTCTTAAATTATATATAAATAAAGATTTATTTAAAAAAAATAAATTTCTTAAAGAAATTAAATATCCAAATAAACCCCCTACAATACATACAAATAATGTTAACAATTTTATATAAATAGGTAAACAAATTATATAAGGAAAAGGAAAAATCAATCAATTTAATATTCTACCT
・オナジショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号31)
TACAGCTGGTGTNTNTTTATTAATTCGATTTAATATTATCTTAAGAACTTCTTGGTTAGGACAATTAATATTATTATTATCTGGATTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTGTCTATAGGATTTTTAAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACCCATGCTTTATTTAAAGCATTATTGTTTATATGTGCTGGGGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGTTTAATAGGGGGGTTAAGAATTCATATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAACGTATCTAATTTAGCTTTATGTGGAATACCTTTTTTAGCT
プライマーV1.04-4側(配列番号32)
TAAAATAATAAAATTAATAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATAATAAATAAATTTTCAAAGAATTATTATGTATTAAAAATAAAGTTTTAGAATATATAGATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTTACAACTAATTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATTATACCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCATATAGACCCTAAAAAAGTTCTTAAATTATATATAAATAAAGATTTATTTAAAAAAAATAAATTTCTTAAAGAAATTAAATATCCAAATAAACCCCCTACAATACATACAAATAATGTTAACAATTT
・クロショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号33)
ATTGGTAACTGCAGGAGTGTATTTATTAATTCGGTTTAATATTTTATTGAGAAATTCTTGAATAGGACAATTTTTACTTTTATTGTCAGGTTTAACTATATTTATAGCAGGTTTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGGCTAATAATAAGAATTTTATCAATAGGTTTTTATAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACTCATGCTTTATTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCAGGAGCAATTATCCATAATATAAATAATTCTCAGGACATTCGTTTAATGGGGGGTTTAAGAATTCACATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAATGTATCAAATTT
プライマーV1.04-4側(配列番号34)
AAAATAATAAAAAATTTACTAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATATTAAATAAATTTTTAAATTATTATTATGAATTAAAAATAAAGTTTGAGAATAATTTAATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTACTAACAATTTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATAACTCCATAAGTTCTAATGTAAGGTATAAATCATATTGAACCTATAAAATTTGTTAAATTGTATAAAATTATTGATTTATTAATTGTATATAAATTTCTTACTGAAATTAAATAACCAAATAAACCTCCAAAAATACAAACAAATAAAGTTAATAATTTTAAAAAAAAAGGTAAACAAATTATATGAGGCACAGGAAAGATTAATCAATTTAATATTCTA
・ヒョウモンショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号35)
CTTTATTAATTCGATTTAATATTATCTTAAGAACTTCTTGGTTAGGACAATTAATATTATTATTATCTGGATTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTGTCTATAGGATTTTTAAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACCCATGCTTTATTTAAAGCATTATTGTTTATATGTGCTGGGGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGTTTAATAGGGGGGTTAAGAATTCATATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAACGTATCTAATTTAGCTTTATGTGGAATACCTTTTTTAGCT
プライマーV1.04-4側(配列番号36)
AAAATAATAAAATTAATAGAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATAATAAATAAATTTTCAAAGAATTATTATGTATTAAAAATAAAGTTTTAGAATATATAGATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTTACAACTAATTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATTATACCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCATATAGACCCTAAAAAAGNNNTTAAATTATATATAAATAAAGATTTATTTAAAAAAAATAAATTTCTTAAAGAAATTAAATATCCAAATAAACCCCCTACAATACATACAAATAATGTTAACAATTTTATATAAATAGGTAAACAAATTATATAAGGAAAAGGAAAAATCAATCA
・カスリショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号37)
CTTTAGTAACAGCGGGTGTATACTTATTAATTCGGTTTAATATTTTATTAGCAAATAGATGGTTAGGCCAATTTTTATTGTTATTATCTGGGTTGACAATATTTATAGCAGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAGATTATTGCTTTATCGACTTTAAGTCAGCTTGGGTTAATAATAAGAATTTTATCTATAGGATTTTATAAATTAGCGATATTTCATTTATTAACTCATGCATTATTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCTGGGGCAATTATTCACAATATAAATAATTCACAAGATATCCGATTAATAGGGGGATTAAGAATTCACATGCCTCTTACTTCTGCTTGTTTTAATGTTTCTAATTTAGCTTTGTGTGGGATGCC
プライマーV1.04-4側(配列番号38)
AAATTATAAAAAATGCTGTTAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATATTAAATAAATTTTTAATCTATTATTATGTATTAAAAATAAAATTTGAGAAGAATCCACTAATTTTTTGTATAAATGTTGCCCCCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTACAAACAATTTGCCCATAATTTAAAGGAAAATAAATTAACCCATAAGTTCTAATATAAGGCATAAATCATATGGAACCTATAAAATTTGTTAATGCATAAAATCTTAAAGATTTATTAATTCTGTATAAATTTCTTAAAGAAATTAGATAACCTATTAATCCTCCTACAATACAAACAAATAAAATTAATAATTTTATATAAATAGGTAAACAAATTATATCCGGAGTTGG
・オオショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号39)
TTTGTAACTGCTGGGGTTTATTTATTAATTCGTTTTAATATTTTATTAAGAAATTCAGTGATTACGGTCAATTATTATTATTATTATCTGGATTAACTATATTTATAGCAGGATTAGGGGCTAATTTTGAGTTTGACTTAAAAAAAATTATTGCCTCTATCAACTTTGAGACAGTTAGGATTGATGATGAGAATTTTATCGATAGGATTTTATAAATTAGCCATATTTCATTTATTAACTCATGCTCTTTTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCAGGAGCAATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGATTAATAGGGGGGTTAAGAATTCCACATACCTTTAACTTCTGCTTGTTTTAATGTTTCTAATTTAGCTCTATGTGGAATACCTTTTTTAGCA
プライマーV1.04-4側(配列番号40)
ATATTAATAAATAAATCTTGTGTAAATTATTATTATGTATAAATAATAAAATTTGAGAATAATTTACTAATTTTTGATATAAATGCTGACCCCCAAAATACTCTGATCAACCTTGATCAAATCTTTTTACAACAATTTGTCCATAATTTAAAGGAAAAAAAATTATTCCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCACATAGAACCTAAAAAAACTGTTAAATTATAATTTTTTAAAGATTTATTTAAACTAAATAATTTTATTAAAGAAATAAAATAACCTCTTAGACCCCCAAAAATACAAACAAATAAAGTTAACATTTTCATAA
・オオキモンノミバエ
プライマーV1.06-1側+プライマーV1.04-4側(配列番号41)
ATTCGGTTTATTTTTTGTTAGTGGAtTCAATAATTGGAAAAATTTTATTGTTAATTTCAGGATTAACAATGTTTATAGCAGGTCTTGGTGCTAACTTTGAATTTGATTTAAAGAAAATTATTGCTTTGTCTACACTTTCTCAGTTAGGGTTAATAATAAGAATTTTATCTATAGGGTATTATAAATTAGCCTTTTTTCATCTTTTAACTCATGCTTTATTTAAGGCCTTATTATTTATATGTGCGGGAAGTATTATTCATAACATAAATAATTTTCAAGATATTCGTGTTATAGGGGGTTTAGGAATTTATATGCCTATTACTACTGCTTGTTTTAATATTTCTAATTTAGCATTATGTGGAATACCTTTTTTAGCCGGATTTTATTCAAAGGATATAATTTTAGAAATTGTATCTATAAGTAATGTAAATATGTTAATTTTCTTTTTATTCTTTTTTTCTACCGGATTAACTGTTTGTTATTCTTTTCGGCTTGTATATTATTCAGTTACTGGAGATTTAAATTGTAGAAGATTAAATGTTTTAAGAGATGAAGGATGAGTAATATTAAAGGGTATAATAGGTTTACTTATTATATCAATTATTGGAGGTAGAATTTTAAATTGATTAATTTTTCCTACTCCTTATATGATTTGTtTACCTATTTATTTAAAACAGTTGACTTTATTTGTTTGTATTACTGGGGGTTTATTTGGTTATTTCATTTCATTGGTTAATTTATACTTTTATAATAAATCTTTAGACTTATATAATATTTCTTATTTTTTAGGATCAATATGATTTATACCTTATATTTCAACTTACGGAATTATtAATTATCCTTTAAATTTTGGTAAAATAATTTATAagtCAATAGATCAaGGTtgatCAGAGTATTTAGGAGGTCAAATAATATTTaAAATATTTATtaATATATCTCAATataATCAaTTTGTTCaAAATAATAaTTTAagaTtTATatGAgagTattTgTtttatGAATTTAT
・クロバエ科
プライマーV1.06-1側(配列番号42)
ACTGCTGGGGTGTATTTATTAATTCGTTTTAATATTTTATTAAGATCATCTTGATTAGGAAATTTATTATTATTATTATCAGGATTAACAATATTTATAGCCGGATTAGGTGCAAATTATGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAGTTAGGGTTGATCAATAAGAATTTTATCTATAGGATATTATAAATTAGCTTTTTTTCATTTATTAACACATGCTTTATTTAAGGCATTATTATTTATATGTGCTGGAGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGATTAATGGGGAGATTAAGATTAATAATACCACTAACTTCTTCATGTTTTAATGTGGCTAATTTAGCTTTATGTGGAATACCTTTTTTAGCAGGATTTTATTCTAAGGATTTAATTTTAGAAACAGTATCTTTATCTTACATTAATATATTTTCTTTTTTTTTATACTTTTTTTCTACAGGATTGACAGTATGTTATTCTTTTC
プライマーV1.04-4側(配列番号43)
ATTATATATATGTATAAAATTATAATTCAAAAAATAAAACTTAATAAATAAATTTTTAAATTATNNATTCTGTAGTATTTGATTTAATTGAGAATTTTTTACTAAATTTGAATAAAGCTGTTGTCCCCCAAAATATTCTGATCATCCTTGATCAAAAGATTTAACTGTTATTCTACCAATAATTAAAGAATAATTAATAATTCCATATGTAGAAATATAAGGTATAAATCATATTGATCCTAAAAAATAAGAAGAATTATAGTTATTTAAAGCCTTATTATAAAAAAATAAAGAAATATTAGAAATTAAATACCCTCTAATACCTCCTACAATACAAACAAATAAAGTTAATAACTTTAAATAAAAAGGAAGAACTACTACTACTGGTGTAGGAAAAATTAATCAACTTAATATACTACCCCCAAAATACTTAAAATTAATACGCCCTATCTATACTCTTTAACATAACTCAACCTTCATCATTTAATATA
以下のデータは、上記プライマーのうち、maku_1-f2(配列番号18)及びmaku_1-r1(配列番号17)を使用してシークエンスした結果を示す。得られた配列は全て、5’側から読んだものと3’側から読んだものを合わせた結果である。
・マルハナバチ(配列番号44)
ACTTTAGTTACTGCTGGTGTTTATTTATTAATTAATTATGAAATAATAATTGATTTAAAGTATAAAAATTTAATTTTAATAATTTCAAGAATAACAATATTAATTTCAGGTATTATAGCTAATTTTGAAATAGATTTTAAAAAAATTATTGCTTTATCAACATTAAGACAATTAGGATTTATAATAAGAATTTATTCTTTAGGTATAGTAGATTTAACATTTTTGCATTTATTTATTCATGCATTTTTTAAATCTATGATATTTATATGTGCTGGAAGATTAATTCATTATATAAATGGAATTCAAAATTTTCGTTTTTATTCTGGTATATTTTATTTATATCCAATAAAAGGATTATTAATAATATTTTCATTATTAATATTATGTGGATT
・ヒメハラナガツチバチ(配列番号45)
ATCAACTTTAGTTACTGCTGGGATTTACATTTTAATTCGTTATAGAGAATATTTTTATAATTCTTTATTTATAAATTTTATATTTTTTATTGGGGGATTAACAATATTTATATCTGGTTTTTTGGCTAATTTCGAAAATGATATTAAAAAAATTATTGCTCTTTCTACTCTAAGTCAATTAGGTTTAATTTTTTCTGTTTTAGGGATTGGATTTAGAGATTTAGCTTATTTTCATCTTTTAAGACATGCAATATTTAAATCTGTTTTATTCATATGTGCAGGAAAATTTATTTATTCTTTAAAAGGAATTCAAGATATTCGTTATTATAGAAATTTATTTAAAATATTACCTATTACTAGAATGATTTTTATTAGATCTACATTTTCACTATGTGGATT
・ジガバチ(配列番号46)
ACTTTAGTTACAGCGGGAATTTATTTATTAATTCGTTATGGTGAAATAATAAATATATATTCAAGTATATTGTTGTTTATTTTATCTTTGCTTACTTCATTAATAGCTGGTTTTAGAGCTTTATGTGAATATGATTTAAAGAAAATTGTTGCTTTATCAACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATGATAATGGTTAGATTAAATAATTATATATTAGCTTTTTATCATTTAATAACTCATGCATTATTTAAGTCTTTATTATTTTTATGTGCTGGAAAATTTATTCATTTTAGTATATGTAATCAGGATATTCGTAAGTTTGGAGGTTTATTTTTTTTTTTTCCAATCACTAGAATTATATTTTTAATTTCTATTTTAAGGTTGTGTGGTT
・オオスズメバチ(配列番号47)
ACTTTAGTAACAGCTGGAGTTTATTTATTAATACGATATAATAGGTATTTGATAAGAAATCATTTAATAAGTTTAATATTATTTATTTCTAGGTCTACAATAATAATATCTGGATTAATAGCTAATTTTGAAAATGATTTAAAGAAGATTATTGCATTATCTACATTAAGACAATTAGGGTTAATAATGAGAATTTTGAGGTTAGGAGAAGTAGATTTGGGGTTTATACATTTATTAATTCATGCTTTATTTAAATCTTTATTATTTATATGTAGAGGGGTATTAATTCATCAAATAAATAATAATCAGGATATTCGATTTATAGGGAGATTAGTTAGATATTATCCTTTTGTTAGGCTTGTATTTTTTGTATCGTTATTatCATTATGTGGATT
・ハバチ(配列番号48)
GTTCATTCATCTACTTTAGTTACTGCTGGTGTATATTTATTAATTCGATTTGAAAATTTATTTAATAATAATTATAATCTAATCAAATGATTTTTATTAATTTCTATTTTAACTATATTTATATCTGGATTAAATGCTAATTTTGAGTATGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCAACATTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTATTTTTAGGTTTTAGAAAATTAGCTTTTTTTCATCTTTTAACTCATGCTTTATTTAAGGCTTTATTATTTATATGTGCTGGTATTTTTATTCATAATTTAATTAATTTTCAAGATATTCGTTATATAGGATCTATTAGGCTACAAATACCTTTAGTATGTTTATGTTTTAATTTTGCAAATTTTGCTTTATGTGGATTTCCTTTTTT
・ヒメバチ(配列番号49)
CATCTACTTTAGTTACGGCTGGAGTATATTTATTAATTCGATTTAATAATTTAATAGAAAGAAATATTTTATTTTTAATAATAATTTTATCAATTTTAACTATATTTTTATCTGGATTAGGGGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCACTATCAACTTTAAGTCAATTAGGAGTAATAATTTTTTGTTTATCAATAAAGTTACCAGAAATTTCATTTTTTCATTTATCAACTCATGCAATATTTAAATCAATATTATTCATATGTTCTGGAGTAATTATTCATAATATATTAAACAATCAAGATATACGATTTATTAGAATAGTTATATATAAAATACCTTTAATTTCTTTATTATTTAATTGTTCTTCTATATCTTTATGTGGATTTC
【0089】
2.公開データベースからのシークエンスデータ
既知のシークエンスデータを取得するために、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のホームページのAll databaseで、キーワード検索を行った。すなわち、Search across databasesにキーワード(各「目」の名称と「ND5」)を入力し、得られた検索結果をFASTA形式で保存した。保存したシークエンスデータはそのまま、又は連続した一定領域を取り出してからアラインメント(Multiple Alignment 解析)に使用した。
【0090】
3.メルクマールの策定
「目」に特異的な塩基(配列)の抽出は、DNAspace(日立ソフト社製)の解析ソフトを用いて、各シークエンスデータ(実分析の結果と公開データを合わせ、「目」毎に選んだ10種類の昆虫種のシークエンスデータで、これらは共通領域として5’側(ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーV1.06-1側)から300〜600塩基長の領域を有する)につき、アラインメント(Multiple Alignment 解析)を行い、10種類のシークエンスデータのすべてに共通に存在する塩基を確定し、これらの中でシークエンスの精度がより高いと考えられるシークエンス開始後約50番目から約400番目の範囲内に存在する塩基配列から複数個の共通塩基を選択した。次に選択された共通塩基を含む各「目」のシークエンスデータをアラインメントし、五大目のシークエンスデータの間で共通塩基の全てが一致することがないことを確認した上で、また選択された共通塩基を含む各「目」のシークエンスデータそれぞれについて、メルクマール策定に用いた他の「目」に属する昆虫のシークエンスデータ40種とアラインメントすることによって比較し、選択された共通塩基においてすべて一致するものがないことを確認した上で、それぞれの共通塩基が各「目」に特異的なメルクマールとした。すなわち、表1に示したように、双翅目は27個の共通塩基グループ、半翅目は21個の共通塩基グループ(グループ1)、23個の共通塩基グループ(グループ2及び3)、及び25個の共通塩基グループ(グループ4)からなる4つの共通塩基グループ、膜翅目は34個の共通塩基グループ(グループ1及び2)、及び35個の共通塩基グループ(グループ3)からなる3つの共通塩基グループ、鱗翅目で25個の共通塩基グループ、鞘翅目で19個の共通塩基グループを各「目」のメルクマールとした。
【0091】
なお、アラインメントに用いたDNAの起源の昆虫を表5に記載する。アクセッションNo.欄が空白の昆虫は本発明者が新たに塩基配列を決定したことを示す。また各「目」ごとに行ったアラインメントの結果を図11〜図15に、五大目間でのアラインメントの結果を図16に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
4.「目」識別メルクマールの活用
SeqScape(v2.5、ABI社)の解析ソフト上で、「目」毎に登録しておいた上記塩基部位と未知データを比較し、両者の一致度を解析することにより「目」レベルでの識別を可能にした。以下に方法の概略を記した。
【0094】
まず、「目」識別用に策定したメルクマールを登録するための作業を実施した。すなわち、SeqScapeを立ち上げ、各「目」に属する代表的な昆虫から得られたシークエンスデータを表示させ、その目のメルクマールとして決定した特定の塩基をマーキングした。こうして色付けされた対照の塩基を有する塩基配列と、識別したい塩基配列のアラインメントを行い、色付けした塩基だけを抜き出して両者を比較した表を作成した。これにより、塩基の種類と存在する位置の全てが一致するか否かが容易に識別できる。このため、被検体である昆虫が比較したメルクマールの目に属するか否かを容易に解析することができ、被検体である昆虫の分類レベルでの識別が可能となった。なお、複数の被検体を同時に解析することもできた。さらに、標識したメルクマールを有する塩基配列およびそれを用いて識別を行うプログラムを各「目」ごとに保存(登録)した場合、未知の試料の分析時に即座に活用でき、五大目において「目」レベルの識別が迅速に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図2】図2は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図3】図3は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図4】図4は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図5】図5は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図6】図6は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図7】図7は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図8】図8は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った膜翅目の電気泳動の結果を示す。
【図9】図9は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った膜翅目の電気泳動の結果を示す。
【図10】図10は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った隣翅目の電気泳動の結果を示す。
【図11】図11は、双翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図12】図12は、半翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図13】図13は、膜翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図14】図14は、鞘翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図15】図15は、鱗翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図16】図16は、五大目間に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号8:プライマー
配列番号9:プライマー
配列番号10:プライマー
配列番号11:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー
配列番号15:プライマー
配列番号16:プライマー
配列番号17:プライマー
配列番号18:プライマー
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫を分類レベルで識別するための基準となるメルクマールの策定方法、及び前記メルクマールを基準として昆虫を分類レベルで同定する方法、並びに昆虫を分類レベルで識別するための解析ソフトに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの飲食品製造業者にとって昆虫の防除は重要な課題である。すなわち、製造工程や原料、製品等への昆虫の混入が疑われた場合、製造業者は詳細な調査を行って昆虫の混入時期や経路、原因を究明し、例えば、もし昆虫の混入が飲食品の製造工程中であったことが明らかになった場合には、全ての製造工程を厳重に確認し、再度このような混入事故がないように対策を講ずる必要がある。この際、まず行わなければならないことが、混入した昆虫の同定である。
【0003】
昆虫をはじめとする生物由来の異物の同定は多くの場合、形態学的同定法に頼っているのが現状である。しかしながらその手法は専門的な知識や経験が必要であり、また変形したり一部位のみ混入している場合、形態に基づく識別が困難であったりする。従ってこれらの問題点を解消するため、異物より抽出したDNAの塩基配列を解析し、データベースと比較することで簡便かつ変形した異物であっても同定可能な手法が確立されている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながらこの手法は、種レベルでの同定であるため、基準となるデータベースは望ましくは全種類の昆虫のデータを保有している必要がある。従ってデータベースが不完全なものであれば当然、DNAがデータベース化されていない昆虫が混入した場合、その昆虫は同定不能となってしまう。
【0005】
一方、昆虫は地球上でもっとも繁栄している生物であり、これまでに知られている種類だけでも80万種くらい、実際には、約150万種以上と推定されている。日本では約10万種もの昆虫が生息しているといわれ、例えば通常一般に見られる双翅目(ハエ目)に属する昆虫は、日本だけでも五千数百もの種に分類されている。
【0006】
従ってこれだけ多数の種が存在する昆虫について全てのデータをデータベース化するには膨大な時間と労力が必要となり現実的でない。一方、ある特定の工場周辺に生息する昆虫に限定してデータベースを構築することもできるが、昆虫混入の同定手法としては汎用的な方法とは言い難い。
【0007】
原因究明や再発防止において飲食品に混入した昆虫を同定する場合、種レベルまで特定できることが理想的ではあるが、上記したように、膨大な時間と労力を要し、現実的でない。従って、混入した昆虫を種レベルの上位分類である目又は科レベルで確実に特定する方法は、非常に有効である。
【0008】
一般的にバクテリア等の微生物の同定においては、塩基配列の相同性に基づく系統関係の解析が行われている。すなわち基準となる塩基配列と比較しそれとの相同性によって、同じ種に属する微生物であるかどうかを判定する。しかしながら昆虫の場合、同じ目に属する科や種であってもその塩基配列は非常に多様性に富んでいるため、相同性に基づく系統関係の解析は困難である。
【非特許文献1】形山ら、塩基配列の解析による食品内生物系異物の同定、日本食品衛生学会第76回学術講演会講演要旨集、p52(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、DNA解析により昆虫を同定する際、数多く存在する種レベルではなく、その上位分類である科レベル、あるいはさらに上位分類である目レベルでの識別を、塩基配列の相同性に基づく系統関係の解析を用いることなく、簡便かつ確実に行える方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究し、個々の塩基配列の違いを忠実に観察したところ、同一の分類(例えば目や科)に属する異なる昆虫間で、共通する塩基が複数存在することを見出し、この共通する複数の塩基から選び出した共通塩基グループから選択される塩基が、他の分類の共通塩基グループから選択される塩基と、及び/又は他の分類に属する昆虫の塩基配列の塩基と、完全には一致しないことを確認した上で、その共通塩基グループから複数の塩基を選択して、その分類に特異的なメルクマールとすることに成功した。さらにそのメルクマールを基準にして未知の昆虫を分類レベルで識別することに成功した。この方法は、塩基配列の相同性に基づいて系統関係の近縁度合を調べる従来の方法とは異なるものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【0012】
前記方法は、上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含んでいてもよい。
【0013】
(2)分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
ここで、上記(1)又は(2)記載の方法の上記ミトコンドリアDNA由来の塩基配列は、ミトコンドリアNADH dehydrogenase subunit 5(ND5)遺伝子由来の塩基配列でもよい。また、上記(1)又は(2)記載の方法の分類は目でもよく、また科でもよい。さらに、上記(1)又は(2)記載の方法の昆虫は、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。さらに、上記(1)又は(2)記載の方法中の工程(a)において用いる塩基配列の長さは20塩基以上を選ぶことができる。また、上記(1)又は(2)記載の方法中の共通塩基グループは、連続及び/又は不連続の複数の部位からなるものでもよい。
【0014】
(3)分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【0015】
前記方法は、上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含んでいてもよい。
【0016】
(4) 分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
・ 同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【0017】
ここで、上記方法(3)及び(4)中の分類は目又は科でもよい。また、上記方法中の昆虫は、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つでもよい。さらに、上記方法中の工程(a)において用いる塩基配列の長さは20塩基以上を選ぶことができる。また、上記方法中の上記共通塩基グループは、連続及び/又は不連続の複数の部位からなるものでもよい。
【0018】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体である昆虫から得られた塩基配列中の前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の前記塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【0019】
(6)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列を解析ソフト上に登録し、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を前記解析ソフトに入力し、前記解析ソフト上で両者の塩基配列をアラインメントすることにより、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基と前記メルクマールの塩基が完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【0020】
(7)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られた、メルクマールを有する塩基配列を1又はそれ以上登録する手段と、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を入力する手段と、前記メルクマールを有する塩基配列及び前記入力された被検体の塩基配列を比較する手段と、前記メルクマール及び前記入力された被検体の塩基配列中の前記メルクマールに相当する部位の塩基とが完全に一致するかを解析する手段と、被検体の分類を識別する手段を実行させるための、被検体である昆虫を分類レベルで同定するための解析ソフト。
【0021】
(8)上記(7)の解析ソフトを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0022】
(9)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマール。
また、本メルクマールは具体的に以下のものでもよい。
【0023】
双翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号1で示されるイエバエ由来の塩基配列の5’末端から、第269番目の塩基がA、第270番目の塩基がA、第272番目の塩基がA、第275番目の塩基がA、第276番目の塩基がA、第278番目の塩基がA、第279番目の塩基がA、第280番目の塩基がT、第284番目の塩基がC、第285番目の塩基がA、第287番目の塩基がG、第288番目の塩基がA、第290番目の塩基がA、第291番目の塩基がT、第293番目の塩基がC、第294番目の塩基がG、第297番目の塩基がT、第299番目の塩基がA、第300番目の塩基がT、第302番目の塩基がG、第303番目の塩基がG、第306番目の塩基がG、第308番目の塩基がT、第309番目の塩基がT、第310番目の塩基がA、第312番目の塩基がG、及び第315番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0024】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がA、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0025】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がT、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0026】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がC、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【0027】
半翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がC、第236番目の塩基がA、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がT、第295番目の塩基がA、及び第296番目の塩基がA、第297番目の塩基がT、及び第298番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0028】
膜翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がT、第886番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第897番目の塩基がT、第898番目の塩基がT、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1031番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0029】
膜翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がA、第894番目の塩基がA、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0030】
膜翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がT、第895番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【0031】
鱗翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号4で示されるチャノコカクモンハマキ由来の塩基配列の5’末端から、第947番目の塩基がT、第948番目の塩基がA、第950番目の塩基がT、第952番目の塩基がA、第956番目の塩基がA、第958番目の塩基がA、第961番目の塩基がC、第962番目の塩基がA、第964番目の塩基がG、第965番目の塩基がA、第966番目の塩基がT、第967番目の塩基がA、第968番目の塩基がT、第969番目の塩基がT、第970番目の塩基がC、第971番目の塩基がG、第976番目の塩基がA、第977番目の塩基がT、第979番目の塩基がG、第980番目の塩基がG、第982番目の塩基がG、第983番目の塩基がG、第986番目の塩基がT、第988番目の塩基がA、及び第989番目の塩基がG、である、前記メルクマール。
【0032】
鞘翅目に特異的である上記(9)記載のメルクマールであって、配列番号80で示されるマゲラニクスチリオサムシ由来の塩基配列の5’末端から、第300番目の塩基がT、第311番目の塩基がC、第312番目の塩基がA、第314番目の塩基がG、第315番目の塩基がA、第316番目の塩基がT、第317番目の塩基がA、第318番目の塩基がT、第320番目の塩基がC、第321番目の塩基がG、第323番目の塩基がT、第325番目の塩基がT、第326番目の塩基がA、第327番目の塩基がT、第329番目の塩基がG、第330番目の塩基がG、第336番目の塩基がT、第338番目の塩基がA、及び第339番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、昆虫を分類レベルで識別するためのメルクマールの策定方法が提供される。本発明のメルクマールを用いることにより、飲食品等の製造工程中で混入した昆虫を目又は科レベルで簡易、確実かつ迅速に識別することが可能となる。従って、本発明のメルクマールは、飲食品等の製造工程中の昆虫混入に関する原因究明及び再発防止に有用である。
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、昆虫を分類レベルで識別するための基準となるメルクマールの策定方法、及び前記メルクマールを用いて昆虫を分類レベルで識別する方法、並びに昆虫を分類レベルで識別するための解析ソフトに関する。
<本発明の概要>
本発明の、昆虫を科又は目レベルの分類レベルで識別することに用いるメルクマールを策定する方法は、所望の分類、例えば、目又は科に属する昆虫由来の塩基配列中の塩基のうち、すべての昆虫で保存されている塩基を抽出し、そこから他の分類と一致しないように塩基を選択し、それをメルクマールとして、被検体である昆虫の分類を識別しようとするものである。具体的には、同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列データをアラインメントして、全ての塩基配列において保存されている塩基の部位を抽出して共通塩基グループとする。このような共通塩基グループを、互いに異なる科又は目等の2以上の分類についても作成する。ついで、これらを互いに比較して、ある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、及び/又はある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類に属する昆虫の塩基配列中の上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とが完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとするものである。このようにして得られたメルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体である昆虫から得られた塩基配列中の前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析することにより、被検体の分類を識別することができる。このように、本発明のメルクマールは、製造品等への混入昆虫を簡易・迅速かつ正確に同定できるものとして有用である。
【0036】
本発明のメルクマールとは、製造品等に混入した昆虫を分類レベルで特定するための指標をいい、下記に詳しく説明するように、選択された塩基の部位及び塩基の種類が他の分類レベルとは、完全に一致しない、1塩基又は複数塩基の組み合わせからなる。本発明のメルクマール策定に用いる昆虫のDNA塩基配列(以下「シークエンスデータ」ともいう)は、ミトコンドリアDNAに由来するものであっても、核DNAに由来するものであってもよい。特にミトコンドリアDNAの場合には核DNAに比べて塩基置換の起こる速度が速く各分類レベル間の差異が多く見出される可能性が高いと考えられ、しかも細胞あたりの数が多く大量に調製できるため、分析が容易であり、好ましい。
【0037】
本発明の分類は、多数の昆虫のうち、特定の性質が相似であること等により体系的にまとめあげられたものであればどのレベルの分類でもよく、具体的には網、目、科、種があげられるが、好ましくは、目又は科である。
【0038】
本発明の昆虫は、節足動物門のうちの、昆虫網の大部分を占める有翅昆虫亜網に属するものであり、好ましくは、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目に属する昆虫であるが、これらに限定されない。なお、双翅目としてはハエ、カ、アブ等を、半翅目としてはセミ、カメムシ、アブラムシ、ウンカ等を、膜翅目としてはハチ、アリ等を、鱗翅目としてはチョウ、ガ等を、鞘翅目としてはカミキリムシ、カブトムシ、ゴミムシ等を、それぞれ例示することができる。
【0039】
本発明の策定方法に用いる昆虫は、例えば昆虫販売業者や昆虫取扱業者から分譲又は購入することもできるし、雑木林や草むら等の野外で採集したものを使用することもできる。採集した昆虫については、好ましくは専門家に同定を依頼する。
【0040】
本発明におけるメルクマール策定には、同じ分類に属しかつ互いに異なる種類の昆虫のシークエンスデータを少なくとも5種類以上、好ましくは7種類以上、さらに好ましくは10種類以上使用する。同じ分類、例えば同じ目あるいは同じ科に属しながらそれぞれ違った種類の昆虫のシークエンスデータを少なくとも5種類以上、好ましくは7種類以上、さらに好ましくは10種類以上使用することにより、共通する塩基に偏りが生じることなく、その目あるいは科に共通する塩基部位を抽出し、その目あるいは科に特異的でかつ信頼性が高いメルクマールを策定することが可能となるからである。
【0041】
本発明のアラインメントとは、個体ごとに得られた複数の塩基配列を横列に並べ、縦列に相同な座がくるように整列させて、互いに塩基配列の異同を調べることをいう。このような操作は、Multiple Alignmentともいい、分子生物学の分野で、ある塩基配列中のモチーフの抽出、特定の塩基配列が有する構造又は機能の予測、進化系統樹の作成に慣用されるものである。従って、本発明のアラインメントは、DNAspace(日立ソフト社製)等の解析ソフトを用いる等、これらの解析に通常用いられるいかなる操作も含まれる。
【0042】
また本発明のメルクマール策定に用いる昆虫のシークエンスデータは、独自に昆虫から抽出したDNAを常法に従って決定した塩基配列であっても、また公開データベースから得られる既知のシークエンスデータを用いてもよい。
【0043】
既知のシークエンスデータは、例えばGenBank(NIH genetic sequence database)や、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)等のデータベースに登録されている昆虫のシークエンスデータを使用することができる。これらのデータベースから検索してダウンロードしたシークエンスデータはそのまま、又は連続した一定領域を取り出してからアラインメント(Multiple Alignment 解析)に供することができる。
【0044】
さらに本発明においてアラインメントに供するシークエンスデータとしては、20塩基以上、好ましくは50塩基以上、より好ましくは20〜10000塩基、さらに好ましくは50〜5000塩基の長さの塩基配列を用いることができる。
【0045】
また本発明において用いる、複数の昆虫由来のシークエンスデータは、上記したようにアラインメントに供するため、共通した領域(以下「共通領域」ともいう)を含有するものでなければならない。この共通領域の選択にあたっては、特に制限はなく、ミトコンドリアND5遺伝子等の特定の機能又は構造を発現する領域であってもよく、遺伝子として機能していない領域であってもよいが、中でもミトコンドリアND5遺伝子は進化速度が速いため、各分類レベル間での差異が多く見出される可能性が高いと考えられ、メルクマール策定のための共通領域として特に好ましい。またPCR法で増幅可能な領域であることが好ましい。具体的には、下記のプライマーを用いて増幅される領域があげられる。また共通領域の大きさは、シークエンスの信頼性が高い約20〜2000塩基、約50〜1000塩基、好ましくは、100〜700塩基、さらに好ましくは100〜500塩基である。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
V1.04-4 GTC ATA CTC TAA ATA TAA GCT A (配列番号6)
核ゲノム由来のプライマーセット(28S-01/28SR-01)、
28S-01 GAC TAC CCC CTG AAT TTA AGC AT (配列番号7)
28SR-01 GAC TCC TTG GTC CGT GTT TCA AG (配列番号8)
核ゲノム由来のプライマーセット(ITS-1/ITS-4)
ITS-1 AAG TCG TAA CAA GGT TTC CG (配列番号9)
ITS-4 TCC TTG TTA GTT TCT TTT CCT C (配列番号10)
なお、1つの分類の識別のために、複数の共通領域を選択することもできる。その場合は、1つの分類に複数のメルクマールが存在することになり、被検体である昆虫の識別精度がより高まるため、好ましい。
【0046】
本発明の共通塩基グループは、同じ分類に属し、かつ、互いに異なる昆虫の塩基配列全てにおいて、保存された塩基の部位の全部又はその一部からなる。この部位に含まれる塩基は、一塩基ごとに単独であっても、また隣接した塩基が複数連なっていてもよい。
また、上記共通塩基グループが複数の部位からなる場合は、その複数の部位は互いに連続してもよく、及び/又は不連続であってもよい。
【0047】
本発明の「ある分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基と他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように」とは、本発明のメルクマールとして上記共通塩基グループから選択される塩基が全て、各々他のメルクマールに含まれる塩基と同じ部位の同じ種類の塩基を選択するものではないことを意味する。ある分類のためのメルクマールとして選択した塩基が、他の分類のためのメルクマールに含まれる塩基と完全に同じ位置で同じ種類の塩基である場合は、被検体がどの分類に含まれるのか判定ができないため、本発明のメルクマールとしては適さないからである。つまり、本発明のメルクマールとして選択される塩基の部位とその塩基の種類は、他のメルクマールに含まれる塩基の部位とその塩基の種類と完全に一致してはならず、従って、メルクマールに含まれる塩基を選択する場合には、他のメルクマールに含まれる塩基の部位とその部位での塩基が完全に一致していないかを確認する必要がある。確認方法は、選択したメルクマールを比較して、全てが一致していないことが確認できる方法であれば、目視、機械操作等どのような方法を用いてもよい。この確認方法としては、各々の共通塩基グループが同じ領域から選択された部位からなることを前提とし、例えば各分類のメルクマールを含有する塩基配列をアラインメントし、共通塩基グループの各部位が完全一致しないことを解析する方法等があげられる。
【0048】
また、本発明においてメルクマールの信頼性を高めるためには、ある分類のメルクマールとして選択される塩基の部位とその塩基の種類は、他の分類に属する昆虫の塩基配列データと比較して完全に一致しないことが望ましい。具体的にはある分類のメルクマールとして選択される塩基を含有する塩基配列と、該塩基配列に相当する領域を有する他の分類に属する昆虫の塩基配列をアラインメントによって比較し、メルクマールとして選択される塩基が完全に一致しないことを確認する。比較に用いる個々の分類由来の塩基配列の数は、5個以上、好ましくは10個以上である。例えばよく見かける昆虫の多くは五大目といわれる双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目に含まれるため、五大目のうちのある目のメルクマールとして選択される塩基を含有する塩基配列は、残りの4つの目に属する昆虫の塩基配列、すなわち20個以上、好ましくは40個以上と比較するとよい。
【0049】
また、本発明では、上記共通塩基グループに含まれる塩基から少なくとも1以上の塩基、好ましくは3〜50の塩基、より好ましくは5〜30の塩基、さらに好ましくは15〜30の塩基を選択してメルクマールとすることができる。少なくとも1以上の塩基、好ましくは3〜50の塩基、より好ましくは5〜30の塩基、さらに好ましくは15〜30の塩基としたのは、メルクマールとしての操作の簡便性及び信頼性を考慮したためである。
【0050】
<メルクマールの策定方法>
以下に、本発明のメルクマールを策定する方法を記載する。ただし、本発明はこれらの方法に限定されるものではなく、一般的に知られている他の方法を適宜改変して用いてもよい。
【0051】
(1)昆虫の入手
DNA抽出に用いる昆虫は、例えば昆虫販売業者や昆虫取扱業者から分譲又は購入することもできるし、雑木林や草むら等から採集したものを使用することもできる。採集した昆虫は、好ましくは専門家に同定を依頼する。
【0052】
(2)DNAの抽出
DNAの抽出は、昆虫の全体もしくは一部(触角、胸部、翅、脚等)を用いて行うことができる。好ましくは、ノミバエ等の小型昆虫については、1匹又は数匹の個体全体を使用し、イエバエやそれ以上の体長を有する大型昆虫では、昆虫の体の一部(触角、胸部(又はその筋肉)、前翅、後翅、脚等のいずれか)を使用する。
【0053】
DNAの抽出は、CTAB(Cetyltrimethyl ammonium bromide)法や市販キットのQiagen DNeasy Tissue Kit(キアゲン社)やISOPLANTII(ニッポンジーン社)等の当業界で公知の方法を用いて抽出することができる。操作性と経済性の点からCTAB法が好ましい。
【0054】
(3)DNA断片の増幅
PCR法によりDNA断片の増幅を行う。本発明で用いるPCR法は特に限定されず、公知のPCR法に加え、種々の改良方法を含む。以下はその一例である。すなわち、プライマーのセット、鋳型(被検)DNAの他にTris−HCl、KCl、MgCl2、各dNTP、TaqDNAポリメラーゼ等の試薬類を混合してPCR反応液とする。PCRの1サイクルは、熱変性、アニーリング、DNAポリメラーゼによるDNA合成反応の3つのステップからなる。各ステップはそれぞれ異なる、場合により同一の反応温度と反応時間を必要とし、これらは増幅すべきDNA領域の塩基配列、その長さ等により適宜決定される。このような操作は市販のthermal cyclerを用いて行うことができる。
【0055】
本発明に使用するプライマーの一例としては、下記に記載したような、昆虫の系統解析で用いられる既存のミトコンドリアNADH dehydrogenase subunit 5(ND5)遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4(配列番号5及び6)及びEzo-2/AO-3(配列番号11及び12))、cytochrome oxidase subunitI(CoI)遺伝子由来のプライマーセット(SKCOI-7/ SKCOI-2(配列番号13及び14))、又は核ゲノム由来のプライマーセット(28S-01/28SR-01(配列番号7及び8)及びITS-1/ITS-4(配列番号9及び10))を使用することができる。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
V1.04-4 GTC ATA CTC TAA ATA TAA GCT A (配列番号6)
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(Ezo-2/AO-3)
Ezo-2 TTC ATC TTT TAA CTC ATG CA (配列番号11)
AO-3 ATA TTC ATT TCA ACC TTG ATC (配列番号12)
ミトコンドリアCoI遺伝子由来のプライマーセット(SKCOI-7/ SKCOI-2)
SKCOI-7 CGC TCT AGA ACT AGT GGA TCA CNA AYC AYA ARG AYA TYG GNA C (配列番号13)
SKCOI-2 TCG AGG TCG ACG GTA TCA CRT ART GRA ART GNG CNA CNA CNA CRT ART A (配列番号14)
核ゲノム由来のプライマーセット(28S-01/28SR-01)
28S-01 GAC TAC CCC CTG AAT TTA AGC AT (配列番号7)
28SR-01 GAC TCC TTG GTC CGT GTT TCA AG (配列番号8)
核ゲノム由来のプライマーセット(ITS-1/ITS-4)
ITS-1 AAG TCG TAA CAA GGT TTC CG (配列番号9)
ITS-4 TCC TTG TTA GTT TCT TTT CCT C (配列番号10)
また、一部の昆虫種については、既存のプライマーでは目的とするバンドを増幅することができない場合があり、これらについてはメルクマールの塩基をはさむ形で、すなわちメルクマールの塩基を含有する領域をはさむ形で、適切なプライマーを設計し、使用する。
【0056】
例えば、鱗翅目に使用できることが確認されている新たに設計したプライマーとしては、以下のプライマーがあげられるがこれらに限定されない。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/rin-r)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
rin-r GAA TAA AAT CCA GCT AAA AAA GG (配列番号15)
鱗翅目に属するコイガ、ハスモンヨトウについて、上記プライマーを用いると、メルクマールの塩基をはさむ446塩基の断片を増幅することができる。
【0057】
また例えば、膜翅目に使用できることが確認されている新たに設計したプライマーとしては、以下のプライマーがあげられるがこれらに限定されない。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(maku_1-f1又はmaku_1-f2/maku_1-r1)
maku_1-f1 GCT CCW ACT CCT GTK TC (配列番号16)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
又は、
maku_1-f2 GTT CAT TCA TCW ACT TTA G (配列番号18)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
膜翅目に属するマルハナバチについて、上記maku_1-f1及びmaku_1-r1プライマーを用いた場合は、メルクマールの塩基をはさむ439塩基の断片を増幅することができ、膜翅目に属するハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチについて、上記maku_1-f2及びmaku_1-r1プライマーを用いた場合は、メルクマールの塩基をはさむ415塩基の断片を増幅することができる。
【0058】
本発明のプライマーは、より多くの昆虫種で目的とするバンドを増幅することができるものを選択することが好ましい。
【0059】
(4)PCRによる増幅の確認
PCRの結果(PCR産物)の評価方法として、特定のDNA断片を同定しうる任意の方法、例えば、電気泳動、ゲルろ過、ハイブリダイゼーションを用いて目的の大きさのDNA断片(例えば、上記ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセットを使用した場合は、大きさが1080塩基前後のDNA断片)が増幅されていることを確認する。
【0060】
(5)PCR産物の精製
増幅されたPCR産物は、サイクルシークエンス反応の鋳型として用いるために、余剰のプライマー等の反応に用いた成分と分離する。この精製は、例えば、市販のQIAquick PCR Purification Kit(キアゲン社)を使用し、その製品に添付のプロトコールに従って行うことができる。
【0061】
(6)サイクルシークエンス反応及びシークエンス産物の精製
上記のように精製したPCR産物のシークエンスを行うため、それを鋳型にして、サイクルシークエンス反応を実施する。この方法は、PCR法に類似し、thermal cyclerを用いて、熱変性、アニーリング、DNAポリメラーゼによるDNA合成反応の3つのステップを繰り返し実施するが、どちらか1種類のプライマーを用い、塩基ごとに異なる4種類の蛍光色素で標識したターミネーター存在下で長さの異なる種々の1本鎖DNAを合成する方法である。
【0062】
その後、上記で得られた反応液から、シークエンシング産物、すなわち1本鎖DNAの混合液を精製し、以降のシークエンサーに供する試料を調製する。この方法の一例として、CENTRISEP Spin Column(ABI社)を用いる方法があげられ、添付のプロトコールに従って操作し、目的の試料を得る。
【0063】
(7)DNA断片のシークエンス
上記Dye Terminator法で得られたシークエンス産物につき、シークエンスを行う。方法としては電気泳動法を用いるのが一般的であり、一例として、ABI PRISM 310 Genetic Analyzerを用いて電気泳動を行い、標識に用いた蛍光物質が塩基ごとに異なることを利用して、レーザー蛍光検出器により順次塩基配列を決定することがあげられる。
【0064】
(8)塩基配列の解析
決定された塩基配列を解析し、シークエンスデータを得る。例えばミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセットの場合、5’側(プライマーV1.06-1側)と3’側(プライマーV1.04-4側)からそれぞれ300〜600塩基の長さのシークエンスデータが得られる。
【0065】
(9)アラインメント
分類レベルで昆虫を識別するための基準となるメルクマールは以下のようにして策定する。まず上記のようにして得られた実分析の結果や既知データについて、分類ごとに少なくとも5種類の昆虫のシークエンスデータを選択し、上記したアラインメント(Multiple Alignment 解析)を行う。前記シークエンスデータは同じ領域を有するものでなければならないため、例えば、実分析で得られたシークエンスデータすなわち所望のプライマーを用いて増幅されシークエンスされた領域を共通領域と定め、公開データベースからはこの領域を含むシークエンスデータを選択し、そのまま、又は連続した一定領域を取り出して使用する。より具体的には、目や科の名称と遺伝子によってコードされる蛋白質(酵素等)の名称等をキーワードにして検索するか、あるいは、実分析で得られたシークエンスデータに基づいて相同性検索(BLAST検索)を行い、実分析で得られたシークエンスデータの領域を有するシークエンスデータで選択しダウンロードする。ダウンロードしたシークエンスデータはそのまま、又は連続した一定領域を取り出してからアラインメント(Multiple Alignment 解析)に使用することができる。
【0066】
(10)共通塩基グループの抽出
アラインメントにより得られたデータから、全種類の塩基配列において塩基が保存されている部位を抽出する。塩基が保存されているとは、得られたアラインメントデータの縦列が全種類の塩基配列において全て同じ塩基であることを意味する。抽出された部位のうち、その全部又は一部の部位を選択し、共通塩基グループとする。一部の部位を選択する場合は、所望のプライマーを用いて増幅されシークエンスされた領域を共通領域とする場合、好ましくはシークエンスの精度がより高いと考えられるシークエンス開始後(5’末端又は3’末端から)約50番目から約400番目の範囲内に存在する部位を選択する。また選択する部位は連続していても不連続であってもよい。選択する部位の総数は好ましくは1個以上、好ましくは3〜50個、より好ましくは5〜30個、さらに好ましくは15〜30個である。
【0067】
(11)メルクマールの策定
上記したように、共通塩基グループから選択される塩基が、他の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基と比較して、及び/又は他の分類の属する昆虫の塩基配列データと比較して、完全に一致していないことを確認する。このようにして、その分類に特異的なメルクマールを策定することができる。
【0068】
このようにして策定されたメルクマールとして、例えば、昆虫の中でも、種類が多いとされるいわゆる五大目(双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目)について、本発明者が選定したメルクマールを表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
このうち、双翅目は27個の共通塩基グループ、半翅目は21個の共通塩基グループ(グループ1)、23個の共通塩基グループ(グループ2及び3)、及び25個の共通塩基グループ(グループ4)からなる4つの共通塩基グループ、膜翅目は34個の共通塩基グループ(グループ1及び2)、及び35個の共通塩基グループ(グループ3)からなる3つの共通塩基グループ、鱗翅目で25個の共通塩基グループ、鞘翅目で19個の共通塩基グループを各「目」のメルクマールとした。
【0071】
なお策定されたメルクマールを使用して蓄積されたデータに基づき、より精度が高いメルクマールを策定することもできる。
【0072】
<昆虫の識別方法>
上記のように策定したメルクマークを用いて混入した昆虫を分類レベルで識別することができる。具体的には、メルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体の、前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の塩基配列中の、メルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析することにより、被検体の分類を識別することができる。
【0073】
以下に、本発明の昆虫の識別方法について解析ソフトを用いた場合について例示する。すなわち、上記の方法により得られたメルクマールを有する領域の塩基配列を予め、SeqScape(ABI社)等の解析ソフト上に登録する。登録する分類は1つでもまたは複数であってもよい。一方、製造工程中に混入した昆虫等の被検体由来の塩基配列を上記解析ソフトに入力する。被検体由来の塩基配列については、上記<メルクマールの策定方法>(2)〜(8)に記載したのと同様の方法で、DNAを抽出し、被検体の塩基配列を解析することにより得ることができる。この場合、被検体の塩基配列は、基準とするメルクマールと同じ領域を含むものを調製する。得られた被検体の塩基配列を入力後、メルクマールを有する領域の塩基配列が予め登録されている分類との比較を行う。比較は、前記解析ソフト上で両者の塩基配列をアラインメントすることにより行うことができる。そして、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基と前記メルクマールの塩基が完全に一致するかを解析し、完全に一致する場合は、被検体は前記メルクマールが属する分類に属する昆虫であるといえる。このように、本発明のメルクマールを用いると、被検体である昆虫を分類レベルで識別することができる。予め複数の分類についてメルクマールを有する領域の塩基配列が登録されている場合は、被検体の塩基配列を各分類の塩基配列と順次、比較・解析を行い、被検体である昆虫を分類レベルで識別することができる。なお、分類のメルクマールとして決定した特定の塩基をマーキングする等の標識することにより、上記した比較を容易に実行することもできる。すなわち、まず、着色された対照の塩基(メルクマール)を有する塩基配列と、被検体由来の塩基配列のアラインメントを行った後に、着色された塩基だけを抜き出して両者を比較した表を作成する。これにより塩基の種類と存在する位置の全てが一致するか否かの識別が容易になり、被検体である昆虫がそのメルクマールの分類に属するか否かということが容易に識別できるため、被検体の分類レベルでの識別が可能となる。なお、この方法は複数の被検体についての解析も同時にできるため好ましい。
【0074】
また、メルクマールを有する領域の塩基配列およびそれを用いて識別を行うプログラムを分類ごとに登録して保存しておくことにより、未知の被検体の分析時に即座に活用でき、各分類において分類レベルの識別が迅速に行える。
【0075】
<解析ソフト>
本発明は、コンピュータを、本発明の昆虫の識別を実行させるための解析ソフトをも提供する。上記のようにメルクマールを用いて昆虫の識別を行う解析ソフトは、解析に用いるホストコンピュータが有する、本発明の方法により得られたメルクマールの記録手段、被検体由来の塩基配列の入力及び記録手段、メルクマール及び被検体由来の塩基配列をアラインメントにより比較する手段、上記比較結果を表示する手段等を、上記昆虫の識別を実行するために相互に協調させて働かせることができるコンピュータ用のプログラムである。この解析ソフトは、サーバに接続された情報記憶手段(ROM、RAM等)に登録され、上記識別に必要な手段を管理して、必要な機能又は処理を実行させる。従って、本発明の解析ソフトは、本発明において使用するコンピュータ上で、又はネットワーク上で機能しうるプログラム言語で記載することができる。具体的には、SeqScape(ABI社)等の解析ソフト上で、分類ごとのメルクマールが登録されたものを用いてもよい。
【0076】
なお、本発明の解析ソフトによる昆虫の識別システムを稼動させるためには、本発明の解析ソフトの他に、通常のコンピュータネットワークに必要なプログラム、例えば周知のオペレーティングシステム(OS)やインターネットブラウザプログラム等も使用される。
【0077】
<コンピュータ読み取り可能な記録媒体>
本発明の解析ソフトは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体又はコンピュータに接続しうる記憶手段に保存することができる。従って、本発明の解析ソフトを含有するコンピュータ用記録媒体又は記憶手段も本発明に包含される。このような記録媒体又は記憶手段には、磁気的媒体(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光学的媒体(CD、DVDなど)、磁気光学的媒体(MO、MD)などがある。
【実施例】
【0078】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.昆虫からのシークエンスデータ
(ア)昆虫
DNA抽出に用いた昆虫は、アース製薬株式会社又は住化テクノサービス株式会社、シーアンドエス株式会社から入手した。取り扱いのない昆虫については、さいたま市見沼区において発明者が採集し、採集した昆虫の写真(デジタル画像)をシーアンドエス株式会社に送信し、同定を依頼した。これらの昆虫(計34種)を表2に記載するが、半翅目として、ツマグロヨコバイ、ワタアブラムシ、トビイロウンカ、クサギカメムシ、モモアカアブラムシの5種、鞘翅目として、タバコシバンムシ、ヒメカツオブシムシ、ヒラタキクイムシ、アズキゾウムシの4種、膜翅目として、アミメアリ、アシナガアリ、キアシナガバチ、ハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチの9種、鱗翅目として、イガ、ノシメマダラメイガ、コイガ、ハスモンヨトウ、シャクガ科の5種、双翅目として、アカイエカ、イエバエ、センチニクバエ、キイロショウジョウバエ、オナジショウジョウバエ、クロショウジョウバエ、ヒョウモンショウジョウバエ、カスリショウジョウバエ、オオショウジョウバエ、オオキモンノミバエ、オオチョウバエ、クロバエ科の12種を用いた。DNAの抽出には表2に記載の通り、これらの昆虫の全体もしくは一部(触角、胸部、翅、脚など)を用いた。
【0079】
【表2】
【0080】
(イ)DNA抽出
DNA抽出にあたっては、CTAB法や市販キットのQiagen DNeasy Tissue KitやISOPLANTII(ニッポンジーン社)を用いて抽出したDNAをPCRで増幅して、シークエンスを行い、シークエンスデータを得た。DNAの抽出に用いた方法を表2に記載するとともに、各抽出方法を以下に記載する。
i) Qiagen DNeasy Tissue Kitを用いる方法
製品に添付の「DNeasy Tissue Handbook」に従って以下のように実施した。クロバエ科のハエ2匹を解剖し、胸部の筋肉を取り出し、それぞれの全量を1.5ml容のマイクロチューブ1本ずつ計2本に入れ、180μlのバッファーATLを加えた。20μlのproteinase Kを加え、チップの先でつぶすようにしながら攪拌した後、55℃のインキュベーターに入れた。時々攪拌を行って、各チューブにつき約20時間後と約48時間後に取り出し、15秒間攪拌し、200μlのバッファーALを加え、十分に攪拌後70℃で10分間インキュベートした。200μlのエタノール(96〜100%)を加え、十分に攪拌した。この液をDNeasy Mini spin columnに入れ、2ml容のコレクションチューブに受けて6000 x g(8000 rpm)で1分間遠心分離を行った。ろ液とコレクションチューブを捨て、DNeasy Mini spin columnを新しい2ml容のコレクションチューブに受けて500μlのバッファーAW1を加えて6000 x g(8000 rpm)で1分間遠心分離を行った。ろ液とコレクションチューブを捨て、DNeasy Mini spin columnを新しい2ml容のコレクションチューブに受けて500μlのバッファーAW2を加えて20,000 x g(14,000 rpm)で3分間遠心分離を行った後、DNeasy membraneを乾燥させた。ろ液とコレクションチューブを捨て、DNeasy Mini spin columnを1.5ml又は2ml容のマイクロチューブに移し、200μlのバッファーAEを直接DNeasy membraneに載せ、室温で1分間インキュベートした後、6,000 x g(8,000 rpm)で1分間遠心分離を行い、DNA溶液を溶出させた。上記と同様な溶出作業をもう一度繰り返したものをDNA試料とした。
ii) ISOPLANTIIを用いる方法
ニッポンジーン社の発行するマニュアルに準じて以下のように行った。マイクロホモジナイザー(Radnoti Tissue Grinder, Catalog# 440612又は440613)に昆虫の検体と300μlのSolutionIを入れ、検体をよく磨砕した。150μlのSolutionIIを入れ、10秒間攪拌(ボルテックス)した後、50℃の恒温水層に10分間漬け込んだ。100μlのSolutionIII-A、続いて120μlのSolutionIII-Bを入れ、1〜2秒間ボルテックスを行い、氷上で10分間冷却した。14K x g、4℃、10分間の遠心分離を行い、上層(水層)を別のチューブに分離し、そこへ2倍量のエタノール(室温保存)を入れ、よく混合した。続いて6K x g、室温にて5分間の遠心分離を行い、得られた沈殿に1mlの70%エタノールを添加して沈殿を舞い上がらせてよく洗浄した。6K x g、室温、1分間の遠心分離を行い、得られた沈殿を遠心エバポレーターにて乾燥させ、20〜50μlのTEバッファー(pH 8.0)によく溶かしてDNA試料とした。
iii) CTAB(Cetyltrimethyl ammonium bromide)法
2%(w/v)CTAB(Calbiochem社製)、100mM Tris-HCl(pH 8.0)、20mM EDTA (pH 8.0)、1.4 M NaCl、1%(w/v)PVP(Polyvinylpyrrolidone)を組成とするCTAB液を調製した。このCTAB液650μlを昆虫の検体と共にマイクロホモジナイザーに入れた。なお、ノミバエなどの小型昆虫については、1匹(又は数匹)の個体全体を使用し、イエバエやそれ以上の体長を有する大型昆虫では、昆虫の体の一部(触角、胸部(又はその筋肉)、前翅、後翅、後脚などのいずれか)を用いた(表2)。次にこの検体とCTAB液の入ったマイクロホモジナイザーを内部の試料が浸るように65℃の恒温水槽に漬けて10分間インキュベートした。続いてマイクロホモジナイザーのガラス管(底が磨りガラス状)とセットになった、先端が球状で磨りガラスになったガラス棒(ガラス管の底に合うように加工されたもの)で検体をすりつぶした後、1mg/ml RNaseA溶液2μlを加え、65℃、1時間インキュベートして昆虫の細胞を破砕した。1.5ml容のマイクロチューブに移し変え、等量(650μl)のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え、手で3分間転倒混和した。短時間(遠心機の最大回転数で1分間)の遠心分離を行い、有機溶媒層(下層)と水層(上層)に分画し、水層(約400μl)を新しいチューブに移した。等量のイソプロピルアルコールを加え、転倒混和後、上記と同様に遠心分離を行った。上清を捨て、沈殿を70%エタノールでリンスし、乾燥させたものを、20-50μlのTEバッファーに溶解してDNA試料とした。
(ウ)PCR
DNA断片の増幅は、Takara Ex Taq Polymerase (2.5 units/final 50 μl)を用い、添付のEx Taq Bufferと下記に記載したプライマーセット(各々50 pmoleずつ)、dNTP Mixture(各dNTPをそれぞれ10 nmoleずつ添加)、鋳型DNA(調製したものを1μl)を添加して、滅菌蒸留水で最終50μlになるように調整した(表3)(Su, Z.-H., et. al., 1998, Origin and Diversification of Hindwingless Damaster Ground Beetles Within the Japanese Islands as Deduced from Mitochondrial ND5 Gene Sequences (Coleoptera, Carabidae). Mol. Biol. Evol. 15(8): 1026-1039.)。これを0.2 ml容のマイクロチューブ(PCR用)に入れ、PCR装置(DNA Thermal Cycler GeneAmp PCR System 9600;旧Perkin Elmer社製)にセットして、変性(94℃、30秒)、アニーリング(50℃、30秒)、鎖伸長(70℃、60秒)の反応を35回繰り返した(表4)。なお、反応終了後、サンプルをすぐに取り出せない場合には、サンプルブロックの温度を4℃に下げて保持した。
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/v1.04-4)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
V1.04-4 GTC ATA CTC TAA ATA TAA GCT A (配列番号6)
鱗翅目に属するコイガ、ハスモンヨトウについて用いたプライマー
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(v1.06-1/rin-r)
V1.06-1 CCT GTT TCT GCT TTA GTT CA (配列番号5)
rin-r GAA TAA AAT CCA GCT AAA AAA GG (配列番号15)
膜翅目に属するハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチについて用いたプライマー
ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーセット(maku_1-f1又はmaku_1-f2/maku_1-r1)
maku_1-f1 GCT CCW ACT CCT GTK TC (配列番号16)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
又は、
maku_1-f2 GTT CAT TCA TCW ACT TTA G (配列番号18)
maku_1-r1 CTA AAA AAG GAA AWC CAC (配列番号17)
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
(エ)PCRによる増幅の確認
上記で得られたPCR反応液の5 μlをアガロースゲル電気泳動に供した。この際、ミニゲル電気泳動システム「Mupid」を用いて電気泳動を実施(ゲル;3% NuSieve 3:1 Agarose(FMCバイオプロダクツ社製、またはCambrex Bio Science Rockland社製)、泳動条件;100V、30分)し、2μg/ml臭化エチジウム溶液中で40分間染色後、UV照射下で増幅産物の写真撮影を行い、目的のDNA断片(大きさが1080塩基前後)が増幅されていることを確認した(図1〜9で、丸で囲ったバンド)。そのうち、図1は、目的のDNA増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はツマグロヨコバイを、レーン2はタバコシバンムシを、レーン3はアミメアリを、レーン4はイガを、レーン5はアカイエカを、レーン6はヒメカツオブシムを、レーン7はノシメマダラメイガを、レーン8は鋳型を添加していないブランクを、Mは100塩基のladder markerを、それぞれ示す。図2は、目的とするDNA増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はイエバエを、レーン2はセンチニクバエを、レーン3はオオチョウバエを、レーン4はキイロショウジョウバエを、レーン5はクロショウジョウバエを、レーン6はカスリショウジョウバエを、レーン7はヒョウモンショウジョウバエを、レーン8はオナジショウジョウバエを、レーン9はオオショウジョウバエを、Bは鋳型を添加していないブランクを、Mは100塩基のladder markerを、それぞれ示す。図3は、クロバエ科の検体DNAの電気泳動像を示す。Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、レーン1はクロバエ科検体1のDNA(1μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン2はクロバエ科検体1のDNA(5μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン3はクロバエ科検体2のDNA(1μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン4はクロバエ科検体2のDNA(5μl/100μl添加)5μlをアプライしたものを、レーン5はDNAを添加していないネガティブコントロールを、それぞれ示す。図4は、クロバエ科の検体DNAの電気泳動像を示す。Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、レーン1はクロバエ科検体1のDNA(1μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン2はクロバエ科検体1のDNA(5μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン3はクロバエ科検体2のDNA(1μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン4はクロバエ科検体2のDNA(5μl/100μl添加)を0.1μl相当量をアプライしたものを、レーン5はクロバエ科検体1のDNA(1μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、レーン6はクロバエ科検体1のDNA(5μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、レーン7はクロバエ科検体2のDNA(1μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、レーン8はクロバエ科検体2のDNA(5μl/100μl添加)を0.5μl相当量をアプライしたものを、それぞれ示す。以上、()内に示した数値はPCR反応液への添加量を示す。図5は、異なる分類に属する昆虫由来のDNAの増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はワタアブラムシ1匹から抽出したDNAを、レーン2はワタアブラムシ5匹から抽出したDNAを、レーン3はオオキモンノミバエから抽出したDNAを、BはDNAが添加されていないブランクを、MはDNAサイズマーカーをそれぞれ示す。図6は、異なる分類に属する昆虫由来のDNAの増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はトビイロウンカから抽出したDNAを、レーン2はクサギカメムシから抽出したDNAを、レーン3はモモアカアブラムシから抽出したDNAを、レーン4はヒラタキクイムシから抽出したDNAを、レーン5はアズキゾウムシから抽出したDNAを、レーン6はコイガから抽出したDNAを、レーン7はノシメマダラメイガから抽出したDNAを、レーン8はハスモンヨトウから抽出したDNAを、レーン9はアシナガアリから抽出したDNAを、BはDNAを添加していないブランクを、Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、それぞれ示す。図7は、異なる分類に属する昆虫由来のDNAの増幅断片の電気泳動の結果を示す。レーン1はキアシナガバチの翅から抽出したDNAを、レーン2はマルハナバチの翅から抽出したDNAを、レーン3はシャクガの翅から抽出したDNAを、レーン4はシャクガの脚から抽出したDNAを、レーン5はDNAを添加していないブランクを、Mはサイズマーカー(100-bp ladder)を、それぞれ示す。図8及び9は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った膜翅目の電気泳動の結果を示す。図10は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った隣翅目の電気泳動の結果を示す。
【0084】
鱗翅目に属するコイガ、ハスモンヨトウについて、上記v1.06-1及びrin-rプライマーを用いると、446塩基の断片が増幅された。さらに、膜翅目に属するマルハナバチについて、上記maku_1-f1及びmaku_1-r1プライマーを用いると、439塩基の断片が増幅され、膜翅目に属するハバチ科、ヒメバチ科、ヒメハラナガツチバチ、ジガバチ、オオスズメバチ、マルハナバチについて、上記maku_1-f2及びmaku_1-r1プライマーを用いると、415塩基の断片が増幅された。
【0085】
(オ)PCR産物の精製
上記PCR産物の精製はQIA quickspin kit(キアゲン社)を使用し、プロトコ−ルに基づいて以下の方法で行った。すなわち、PCR反応液(残量約45μl)にPB Bufferを5倍量(225μl)加えて、混和した。次に、この液をQIA quickspinに入れ、13,000rpmで1分間遠心分離した。ろ液を捨て、750μl PE Bufferを添加した後、13,000rpmで1分間遠心分離した。ろ液を捨て、再度14,000rpmで1分間遠心分離した。ろ液を捨て、新しい1.5mlエッペンチューブにカラムを移し、30μl EB Bufferを添加し、1分間放置後、13,000rpmで2分間遠心分離して、ろ液をサンプルとした。
【0086】
(カ)サイクルシークエンス反応及びシークエンス産物の精製
BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit の日本語版プロトコール(p.22 「1本鎖DNA、2本鎖DNAのサイクルシークエンス」、p.25「GeneAmp PCR System 9700, 9600, 2700, 2400でのサイクルシークエンス」及びp.38-40 「スピンカラム(やスピンプレート)での精製法」)に基づいていて以下のように実施した。なお、用いたプライマーの塩基配列は、目的のDNA断片のPCRによる増幅に用いたものと同じである。すなわち、PCR精製液を5〜20ng/μlになるように滅菌蒸留水で希釈し、このうち2μlにSequence premix(Big dye)を8μlと1μMの上記v1.06-1またはv1.04-4のプライマー1pmole/μlをそれぞれ単独で3.2μl添加し、滅菌蒸留水にて最終20μlに調整したサイクルシークエンス反応液を得た。これを0.2 ml容のマイクロチューブ(PCR用)に入れ、PCR装置(DNA Thermal Cycler GeneAmp PCR System 9600;旧Perkin Elmer社製)にセットして、変性(96℃、1分)を行った後、変性(96℃、10秒)、アニーリング(50℃、5秒)、鎖伸長(60℃、4分)の反応を25回繰り返した。なお、反応終了後、サンプルをすぐに取り出せない場合には、サンプルブロックの温度を4℃に下げて保持した。シークエンス産物は、セントリセップカラムにて精製した。すなわち、充填剤を室温で2時間以上膨潤させて前処理の完了しているセントリセップカラムの中心部に上記シークエンス産物(約20μl)を載せるように添加し、1.5ml容のマイクロチューブを下部に受け、750 x g、2分間遠心分離を行った。マイクロチューブ内に集まった溶液を精製DNAとして回収した。この溶液を減圧下で乾燥させた後、20μlのTSRまたはHi-Di formamideを添加し、10分間程度放置した後、よく混和した。この液を0.2ml容のマイクロチューブ(PCR用)に移し、DNA Thermal Cycler GeneAmp PCR System 9600にて変性(95℃、2分)を行い、直ちに氷中に挿入して急冷し、そのまま10分間以上放置した。
【0087】
(キ)DNAシークエンス
ABI PRISM 310 Genetic Analyzerを使用し、「ABI PRISM 310 Genetic Analyzer操作ガイド」に基づいて実施した。すなわち、上記の急冷後の試料をサンプルチューブに移し、チューブセプタで蓋をし、48穴サンプルトレーにセットした。その後は、操作ガイドに従ってDye Terminator法によりシークエンスを実施した。
【0088】
(ク)塩基配列の解析
得られたシークエンスデータは、5’側(プライマーV1.06-1側)と3’側(プライマーV1.04-4側)からそれぞれ300〜600塩基長であるが、オオキモンノミバエは相補的な箇所を重ね合わせて一続きのデータとして得られた。メルクマール策定には、5’側(プライマーV1.06-1側)の領域を主として用いた。なお、得られた配列データを以下に示した。
・ツマグロヨコバイ
プライマーV1.06-1側(配列番号2)
ACTTATTCGGTTTTTTAACACAAAATATTTTATTAATGATTTTCTAATTTATGTAAGNATTGTAACTCTTATTATATCCTCATTATGTGCTAATTATGAATTTGACTTAAAAAAAATTATTGCATTATCTACTCTTAGTCAATTAGGTTNAATAATAAGAAGTTTATTTATAGGCATAGTGGAGATAACATTTTTCCATCTTCTTTCTCATGCCATATTTAAATCTCTCCTTTTTCTTTGTTCTGGTATTATTATTCATTTAATAGGCGGTTGTCAAGACATCCGATTTATAGGTTCTATTTGTTATTCGATACCCTTAACTAGATGTTGTTTAAATATTNCCAATATATCTTTATGTGGATTCCCTTTTTTGTCTGGGTTNTACTCTAAAGATTTAATTATTGATAGG
プライマーV1.04-4側(配列番号19)
TTAATATTCTAATAAAAAAGAATTTTATAGAGTTTATTCTGTATATCTGTATAAAATTAGATAATTTTTGTAAATAATATGAAATTCCTATACCACCAAAAAATTCTCCTCAATAAATAGAATTATTTATATGATATCCAAAATTATAATTACTTATGAAAATTCAAGTAGAAAAACTATATATAAATCATATTGAACCATTCAATGAATAGAAAGAATTTATATTAATTAGATTTTTATAAAAATGAGAAAATTCATATCCAATAAAAAGACCTAATATTACTATAAATAAAGTTAAAATTTTTAAATAAAACGGTAGTAACAAAAACTTTATATCTAAATTTATAATTCATATATATATACAACCAAATTTCAAAGAAAATATAGACTAAAATTACTACTCTATATTTCATTAAATAAATTTCTTCTCTTATATTTAAATACGAAAAAAACTTAAAATTTTGATATA
・タバコシバンムシ
プライマーV1.06-1側(配列番号20)
ATTAATTCGATTTAGATCAAGATTTAATATACAAATAATAACAATAATATTATTTATTTGTTCAATAACTATATTTATAGCTGGATTAGGGGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAGATTATTGCTCTTTCAACGTTGAGACAACTTGGATTAATAATAAGAATTTTATTTTTAGGAGATTATAAATTAGCTTTTTTTCATCCTTTTAACTCATGCATTATTTAAAGCCTTATTATTTATATGTGCTGGAAATATAATTCATAGATTATTAGGATGTCAAGATATTCGTTTTATAGGATCNTTAATTAATTTAATACCATTAACCTGCTGTTTATTTTCGCATTGCTAACTTATCATTATGNGGTATTCCCTTTCTTTCTGGATTTTACTCTAAAGACTTAATT
プライマーV1.04-4側(配列番号21)
TTACTGTGATTATAAAAAAAATTTTTAAGTGATTGAAATGAATAATTTGTAATAATGAGGAATTCTTTTTTAATATCAAATAAATTCCTTGTGAACCAATAAATTCTGTTCATCCTTGATCAAATAATTTTTTATAAATAAATCCTAAAATTAATGGTAATTTTAAAATAATTCCTGTTGACATGATTGGTAAATTTCATATTAATGACGAAAATATTCTTGATTTATAAAAATTTATTGTCTTTGAGGAATAATATAATGAGAACTTTGAAATTTCATATCCAATAATTGACCCAATAATAATTACTATCAAAGTAGATATTTTTATCATAAATGGTAAATTAATTAAATAAGGAATATCTATAATTAATCAAGATAAAACTTGATCCTATTATAATTACAAACGTAAATAATCCTCTCATTCCTGTTAATATTATTTTTCTATTTTCTCCTAAGTGATTTTAATGAAATAAAATTACAACATTTTCCCTAATAAATAAATTAATATAAA
・イガ
プライマーV1.06-1側(配列番号22)
TTTAGTAACAGCTGGAGTTTATTTATTAATTCGTTTTAATTTAATATTAATAGATACAATTTTTTTTAAAATTTTATTATTAATATCAAGTTTAACTATATTTATAGCTGGAATTTCTGCTAATTATGAATTTGATTTAAAGAAAATTATTGCTTTTTCTACTTTAAGACAATTAGGGTTAATAATAAGAATTTTAAGAATAGGGTTTTCTGATCTTGCTTTTTTCCATTTATTAACTCATGCAATATTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCTGGGGTTATTATTCATATGATAAATGATAGACAAGATATTCGATTTATGGGAGGGATTAGAAAATTTATTCCTTTAACTTCATTATGTTTTAATATTTCAAATTTAGCTTATATTTAGAGTATGACA
プライマーV1.04-4側(配列番号23)
ATTAAAACATAATGAAGTTAAAGGAATAAATTTTCTAATCCCTCCCATAAATCGAATATCTTGTCTATCATTTATCATATGAATAATAACCCCAGCACATATAAATAATAAAGCTTTAAATATTGCATGAGTTAATAAATGGAAAAAAGCAAGATCAGAAAACCCTATTCTTAAAATTCTTATTATTAACCCTAATTGTCTTAAAGTAGAAAAAGCAATAATTTTCTTTAAATCAAATTCATAATTAGCAGAAATTCCAGCTATAAATATAGTTAAACTTGATATTAATAATAAAATTTTAAAAAAAATTGTATCTATTAATATTAAATTAAAACGAATTAATAAATAAACTCCAGCTGTTACTAAAGTAGAAGAATGAACTAAAGCAGAAACAGG
・アカイエカ
プライマーV1.06-1側(配列番号24)
GGGGGTGTTACTTATTAATTCGATTTAATATTTTATTAGGTTGATTCTTTTATAGGACAATTTTTATTATTAATTTCTGGATTAACAATATTTATAGCGGGGTTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATCTAAAAAAAATTATTGCTTTATCAACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGTATTCTATCAATTGGATTTTATAAATTAGCTTTTTTTCATTTATTAACTCACGCTTTATTTAAGGCTTTATTATTTATATGTGCAGGGGTAATTATTCATAATACAAAAAATGCACAAGATATTCGTTTTATAGGAAGATTAAGTATAAGAATACCTTTAACTTGTAGTTGTTTTAATATTGCTAATTTAGCTTTATGTGGTATACCTTTTTTAGCAGGGTTTTATTCAAAGGATTTAATCTTTAGAAGTAGTTATGGTGTCATATATTAAC
プライマーV1.04-4側(配列番号25)
TAAAACTAAACAATTACTCATAATAAATAACTTAATAAATAAATTTTTAAATTATTATTTTGAAATTCTTGAATATATAAAGAATAATTCTTTAATTGATTATATAATATTTGACCTCCAAAAAATTCACTTCATCCTTGATCAAAACTTTTATATCTATATAATCCTAAATTTATTGGAAACTTAATTACACCTAATGTANAAATAACTGGTATAAATCATATTCCTCCTGCAAATCTACTTAAACCATAGTTTATTAAAGATTTATTATAAAAAAATAAAGAAATATTTCTTATTAAATAACCAAATACACCCCCTAAGATACAAACAATTAAAGTTAATATTTTTATATCAAAAGGTAAACAAATTATATCGGTGATTAAAAAATCATTAATCAATTTAACATTCTTCCTCCAATAATAGCTATTACTATTAAAAAAAAAATTCTAAAAC
・イエバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号1)
TTTATTAATTCGATTTAATATTGTATTAAGAACAAGTTGAATGGGTAATTTATTACTATTATTATCAGGTTTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGTGCTAATTATGAATTTGATTTAAAGAAGATTATTGCTTTATCTACTTTAAGACAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTATCTATAGGTTATTATAAATTAGCTTTTTTTCATTTATTAACTCATGCATTATTTAAGGCTTTATTATTTATATGTGCAGGAGCAATTATTCATAATATGAACAATAATCAAGATATTCGTTTAATGGGAAGTTTAAGATTAATAATACCATTAACTTCTTCTTGTTTTAATGTTGCAAATTTAGCATTATGTGGAATACCATTTTTAGCAGGATTTTATTCAAAGGATTTAATTTTGGAAATAGTATCATTTTCTTATATTAATTTAT
プライマーV1.04-4側(配列番号26)
TTTTGAATAAAAACAAATTATATATATGTATAAAATTACAATTCAAAAAATAAAACTTAATAAATAAATTTTTAAATTATTATTTTGTAATATTTGATTAAACTGAGAATTTTTAACTAAATTATAATAAAGTTGTTGACCCCCAAAATATTCAGATCAACCTTGGTCAAATGATTTAATTCTTATTTTACCTAAAATTAAAGGATAATTAATAATTCCATAAGTAGAAATATAAGGTATAAATCATATTGAGCCTAAAAAATAAGAAAAATTATAATTTCTTAAAGCCTTATTTATAAAAAATAAAGATACATTAGAAATTAAATAACCTATTAAACCACCAATAATACATACAAATAAAGTCAATAACTTTAAATTTAAAGGTAAGATAATAACTTCCGGAGTAGGAAAAATTAATCAACTTAATATACTTCCTCCTACAATTCTTAAAATTAATAAACCTATTATACTCTTTAATATTACTCAACCTTCATCATTAAGTATATTTAAAGAAGAAAAATTAGAATCTCCAGTTATCGAATA
・センチニクバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号27)
CTGCAGGAGTTTATTTATTAATTCGATTTAATATTGTTTTAAGAAGATCTCCAATAGGGAATTTTTTATTATTAATTTCTGGATTAACTATATTTATGGCGGGATTAGGGGCTAATTATGAATTTGATTTAAAGAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAGTTGGGTTTAATAATAAGTATTTTATCAATGGGTTATTATAAGTTAGCATTTTTTCATTTATTAACACATGCTTTATTTAAGGCTTTACTATTTATATGTGCAGGAGCTATTATTCATAATATAAATAATTGTCAAGATATTCGATTGATGGGTAGTTTAAGTTTAATAATGCCTTTAACTTCTTCATGTTTA
プライマーV1.04-4側(配列番号28)
TTTGATAAAAACACTATATACATATATATATAACTATAATTCAAAGAATAAAACTTAATAAATAAATCTTTAAATTATTATTTTGTAATACCTGATTTAATTGAGAATTTTTTACTAAATTATAATACAATTGTTGTCCTCCAAAATATTCAGATCAACCCTGATCAAAAGACTTAACGGCTAATTTACCAACAATCAAAGAATAATTTATAATCCCATAAGTAGAAATATAAGGCATAAACCATATTGATCCTAAAAAATAAGATGAATTATAATTATTTAAAGCCTTATTGAAAAAAAATAAAGAAACATTAGAAATTAAGTAACCTATTAATCCTCCTACAATACATACAAATAAAGTTAATAATTTTAAATGAGAAGGTAAAACAATCACCAAAGGGCTTGGAAAAATTAATCAACTTAATATTCTACCCCCCGAAATTCTTAAATTAATAAACCTATTATACTCCTTAATATA
・キイロショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号29)
TTTATTAATTCGATTTAATATTATCTTAAGAACTTCTTGGTTAGGACAATTAATATTATTATTATCTGGATTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTGTCTATAGGATTTTTAAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACCCATGCTTTATTTAAAGCATTATTGTTTATATGTGCTGGGGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGTTTAATAGGGGGGTTAAGAATTCATATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAACGTATCTAA
プライマーV1.04-4側(配列番号30)
TAAAATAATAAAATTAATAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATAATAAATAAATTTTCAAAGAATTATTATGTATTAAAAATAAAGTTTTAGAATATATAGATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTTACAACTAATTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATTATACCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCATATAGACCCTAAAAAAGTTCTTAAATTATATATAAATAAAGATTTATTTAAAAAAAATAAATTTCTTAAAGAAATTAAATATCCAAATAAACCCCCTACAATACATACAAATAATGTTAACAATTTTATATAAATAGGTAAACAAATTATATAAGGAAAAGGAAAAATCAATCAATTTAATATTCTACCT
・オナジショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号31)
TACAGCTGGTGTNTNTTTATTAATTCGATTTAATATTATCTTAAGAACTTCTTGGTTAGGACAATTAATATTATTATTATCTGGATTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTGTCTATAGGATTTTTAAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACCCATGCTTTATTTAAAGCATTATTGTTTATATGTGCTGGGGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGTTTAATAGGGGGGTTAAGAATTCATATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAACGTATCTAATTTAGCTTTATGTGGAATACCTTTTTTAGCT
プライマーV1.04-4側(配列番号32)
TAAAATAATAAAATTAATAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATAATAAATAAATTTTCAAAGAATTATTATGTATTAAAAATAAAGTTTTAGAATATATAGATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTTACAACTAATTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATTATACCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCATATAGACCCTAAAAAAGTTCTTAAATTATATATAAATAAAGATTTATTTAAAAAAAATAAATTTCTTAAAGAAATTAAATATCCAAATAAACCCCCTACAATACATACAAATAATGTTAACAATTT
・クロショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号33)
ATTGGTAACTGCAGGAGTGTATTTATTAATTCGGTTTAATATTTTATTGAGAAATTCTTGAATAGGACAATTTTTACTTTTATTGTCAGGTTTAACTATATTTATAGCAGGTTTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGGCTAATAATAAGAATTTTATCAATAGGTTTTTATAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACTCATGCTTTATTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCAGGAGCAATTATCCATAATATAAATAATTCTCAGGACATTCGTTTAATGGGGGGTTTAAGAATTCACATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAATGTATCAAATTT
プライマーV1.04-4側(配列番号34)
AAAATAATAAAAAATTTACTAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATATTAAATAAATTTTTAAATTATTATTATGAATTAAAAATAAAGTTTGAGAATAATTTAATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTACTAACAATTTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATAACTCCATAAGTTCTAATGTAAGGTATAAATCATATTGAACCTATAAAATTTGTTAAATTGTATAAAATTATTGATTTATTAATTGTATATAAATTTCTTACTGAAATTAAATAACCAAATAAACCTCCAAAAATACAAACAAATAAAGTTAATAATTTTAAAAAAAAAGGTAAACAAATTATATGAGGCACAGGAAAGATTAATCAATTTAATATTCTA
・ヒョウモンショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号35)
CTTTATTAATTCGATTTAATATTATCTTAAGAACTTCTTGGTTAGGACAATTAATATTATTATTATCTGGATTAACAATATTTATAGCTGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTGTCTATAGGATTTTTAAAATTAGCTATATTTCATTTATTAACCCATGCTTTATTTAAAGCATTATTGTTTATATGTGCTGGGGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGTTTAATAGGGGGGTTAAGAATTCATATACCTTTAACTTCAGCTTGTTTTAACGTATCTAATTTAGCTTTATGTGGAATACCTTTTTTAGCT
プライマーV1.04-4側(配列番号36)
AAAATAATAAAATTAATAGAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATAATAAATAAATTTTCAAAGAATTATTATGTATTAAAAATAAAGTTTTAGAATATATAGATAATTTTTGATATAAATGTTGACCTCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTTACAACTAATTGACCATAATTTAAAGGATAAAAAATTATACCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCATATAGACCCTAAAAAAGNNNTTAAATTATATATAAATAAAGATTTATTTAAAAAAAATAAATTTCTTAAAGAAATTAAATATCCAAATAAACCCCCTACAATACATACAAATAATGTTAACAATTTTATATAAATAGGTAAACAAATTATATAAGGAAAAGGAAAAATCAATCA
・カスリショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号37)
CTTTAGTAACAGCGGGTGTATACTTATTAATTCGGTTTAATATTTTATTAGCAAATAGATGGTTAGGCCAATTTTTATTGTTATTATCTGGGTTGACAATATTTATAGCAGGATTAGGAGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAGATTATTGCTTTATCGACTTTAAGTCAGCTTGGGTTAATAATAAGAATTTTATCTATAGGATTTTATAAATTAGCGATATTTCATTTATTAACTCATGCATTATTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCTGGGGCAATTATTCACAATATAAATAATTCACAAGATATCCGATTAATAGGGGGATTAAGAATTCACATGCCTCTTACTTCTGCTTGTTTTAATGTTTCTAATTTAGCTTTGTGTGGGATGCC
プライマーV1.04-4側(配列番号38)
AAATTATAAAAAATGCTGTTAAAATTAAAATTCAAAATACAAATAATATTAAATAAATTTTTAATCTATTATTATGTATTAAAAATAAAATTTGAGAAGAATCCACTAATTTTTTGTATAAATGTTGCCCCCCAAAATATTCTGATCAACCTTGATCAAAACTTTTACAAACAATTTGCCCATAATTTAAAGGAAAATAAATTAACCCATAAGTTCTAATATAAGGCATAAATCATATGGAACCTATAAAATTTGTTAATGCATAAAATCTTAAAGATTTATTAATTCTGTATAAATTTCTTAAAGAAATTAGATAACCTATTAATCCTCCTACAATACAAACAAATAAAATTAATAATTTTATATAAATAGGTAAACAAATTATATCCGGAGTTGG
・オオショウジョウバエ
プライマーV1.06-1側(配列番号39)
TTTGTAACTGCTGGGGTTTATTTATTAATTCGTTTTAATATTTTATTAAGAAATTCAGTGATTACGGTCAATTATTATTATTATTATCTGGATTAACTATATTTATAGCAGGATTAGGGGCTAATTTTGAGTTTGACTTAAAAAAAATTATTGCCTCTATCAACTTTGAGACAGTTAGGATTGATGATGAGAATTTTATCGATAGGATTTTATAAATTAGCCATATTTCATTTATTAACTCATGCTCTTTTTAAAGCTTTATTATTTATATGTGCAGGAGCAATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGATTAATAGGGGGGTTAAGAATTCCACATACCTTTAACTTCTGCTTGTTTTAATGTTTCTAATTTAGCTCTATGTGGAATACCTTTTTTAGCA
プライマーV1.04-4側(配列番号40)
ATATTAATAAATAAATCTTGTGTAAATTATTATTATGTATAAATAATAAAATTTGAGAATAATTTACTAATTTTTGATATAAATGCTGACCCCCAAAATACTCTGATCAACCTTGATCAAATCTTTTTACAACAATTTGTCCATAATTTAAAGGAAAAAAAATTATTCCATAAGTTCTAATATAAGGTATAAATCACATAGAACCTAAAAAAACTGTTAAATTATAATTTTTTAAAGATTTATTTAAACTAAATAATTTTATTAAAGAAATAAAATAACCTCTTAGACCCCCAAAAATACAAACAAATAAAGTTAACATTTTCATAA
・オオキモンノミバエ
プライマーV1.06-1側+プライマーV1.04-4側(配列番号41)
ATTCGGTTTATTTTTTGTTAGTGGAtTCAATAATTGGAAAAATTTTATTGTTAATTTCAGGATTAACAATGTTTATAGCAGGTCTTGGTGCTAACTTTGAATTTGATTTAAAGAAAATTATTGCTTTGTCTACACTTTCTCAGTTAGGGTTAATAATAAGAATTTTATCTATAGGGTATTATAAATTAGCCTTTTTTCATCTTTTAACTCATGCTTTATTTAAGGCCTTATTATTTATATGTGCGGGAAGTATTATTCATAACATAAATAATTTTCAAGATATTCGTGTTATAGGGGGTTTAGGAATTTATATGCCTATTACTACTGCTTGTTTTAATATTTCTAATTTAGCATTATGTGGAATACCTTTTTTAGCCGGATTTTATTCAAAGGATATAATTTTAGAAATTGTATCTATAAGTAATGTAAATATGTTAATTTTCTTTTTATTCTTTTTTTCTACCGGATTAACTGTTTGTTATTCTTTTCGGCTTGTATATTATTCAGTTACTGGAGATTTAAATTGTAGAAGATTAAATGTTTTAAGAGATGAAGGATGAGTAATATTAAAGGGTATAATAGGTTTACTTATTATATCAATTATTGGAGGTAGAATTTTAAATTGATTAATTTTTCCTACTCCTTATATGATTTGTtTACCTATTTATTTAAAACAGTTGACTTTATTTGTTTGTATTACTGGGGGTTTATTTGGTTATTTCATTTCATTGGTTAATTTATACTTTTATAATAAATCTTTAGACTTATATAATATTTCTTATTTTTTAGGATCAATATGATTTATACCTTATATTTCAACTTACGGAATTATtAATTATCCTTTAAATTTTGGTAAAATAATTTATAagtCAATAGATCAaGGTtgatCAGAGTATTTAGGAGGTCAAATAATATTTaAAATATTTATtaATATATCTCAATataATCAaTTTGTTCaAAATAATAaTTTAagaTtTATatGAgagTattTgTtttatGAATTTAT
・クロバエ科
プライマーV1.06-1側(配列番号42)
ACTGCTGGGGTGTATTTATTAATTCGTTTTAATATTTTATTAAGATCATCTTGATTAGGAAATTTATTATTATTATTATCAGGATTAACAATATTTATAGCCGGATTAGGTGCAAATTATGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCTACTTTAAGTCAGTTAGGGTTGATCAATAAGAATTTTATCTATAGGATATTATAAATTAGCTTTTTTTCATTTATTAACACATGCTTTATTTAAGGCATTATTATTTATATGTGCTGGAGCTATTATTCATAATATAAATAATTCTCAAGATATTCGATTAATGGGGAGATTAAGATTAATAATACCACTAACTTCTTCATGTTTTAATGTGGCTAATTTAGCTTTATGTGGAATACCTTTTTTAGCAGGATTTTATTCTAAGGATTTAATTTTAGAAACAGTATCTTTATCTTACATTAATATATTTTCTTTTTTTTTATACTTTTTTTCTACAGGATTGACAGTATGTTATTCTTTTC
プライマーV1.04-4側(配列番号43)
ATTATATATATGTATAAAATTATAATTCAAAAAATAAAACTTAATAAATAAATTTTTAAATTATNNATTCTGTAGTATTTGATTTAATTGAGAATTTTTTACTAAATTTGAATAAAGCTGTTGTCCCCCAAAATATTCTGATCATCCTTGATCAAAAGATTTAACTGTTATTCTACCAATAATTAAAGAATAATTAATAATTCCATATGTAGAAATATAAGGTATAAATCATATTGATCCTAAAAAATAAGAAGAATTATAGTTATTTAAAGCCTTATTATAAAAAAATAAAGAAATATTAGAAATTAAATACCCTCTAATACCTCCTACAATACAAACAAATAAAGTTAATAACTTTAAATAAAAAGGAAGAACTACTACTACTGGTGTAGGAAAAATTAATCAACTTAATATACTACCCCCAAAATACTTAAAATTAATACGCCCTATCTATACTCTTTAACATAACTCAACCTTCATCATTTAATATA
以下のデータは、上記プライマーのうち、maku_1-f2(配列番号18)及びmaku_1-r1(配列番号17)を使用してシークエンスした結果を示す。得られた配列は全て、5’側から読んだものと3’側から読んだものを合わせた結果である。
・マルハナバチ(配列番号44)
ACTTTAGTTACTGCTGGTGTTTATTTATTAATTAATTATGAAATAATAATTGATTTAAAGTATAAAAATTTAATTTTAATAATTTCAAGAATAACAATATTAATTTCAGGTATTATAGCTAATTTTGAAATAGATTTTAAAAAAATTATTGCTTTATCAACATTAAGACAATTAGGATTTATAATAAGAATTTATTCTTTAGGTATAGTAGATTTAACATTTTTGCATTTATTTATTCATGCATTTTTTAAATCTATGATATTTATATGTGCTGGAAGATTAATTCATTATATAAATGGAATTCAAAATTTTCGTTTTTATTCTGGTATATTTTATTTATATCCAATAAAAGGATTATTAATAATATTTTCATTATTAATATTATGTGGATT
・ヒメハラナガツチバチ(配列番号45)
ATCAACTTTAGTTACTGCTGGGATTTACATTTTAATTCGTTATAGAGAATATTTTTATAATTCTTTATTTATAAATTTTATATTTTTTATTGGGGGATTAACAATATTTATATCTGGTTTTTTGGCTAATTTCGAAAATGATATTAAAAAAATTATTGCTCTTTCTACTCTAAGTCAATTAGGTTTAATTTTTTCTGTTTTAGGGATTGGATTTAGAGATTTAGCTTATTTTCATCTTTTAAGACATGCAATATTTAAATCTGTTTTATTCATATGTGCAGGAAAATTTATTTATTCTTTAAAAGGAATTCAAGATATTCGTTATTATAGAAATTTATTTAAAATATTACCTATTACTAGAATGATTTTTATTAGATCTACATTTTCACTATGTGGATT
・ジガバチ(配列番号46)
ACTTTAGTTACAGCGGGAATTTATTTATTAATTCGTTATGGTGAAATAATAAATATATATTCAAGTATATTGTTGTTTATTTTATCTTTGCTTACTTCATTAATAGCTGGTTTTAGAGCTTTATGTGAATATGATTTAAAGAAAATTGTTGCTTTATCAACTTTAAGTCAATTAGGTTTAATAATGATAATGGTTAGATTAAATAATTATATATTAGCTTTTTATCATTTAATAACTCATGCATTATTTAAGTCTTTATTATTTTTATGTGCTGGAAAATTTATTCATTTTAGTATATGTAATCAGGATATTCGTAAGTTTGGAGGTTTATTTTTTTTTTTTCCAATCACTAGAATTATATTTTTAATTTCTATTTTAAGGTTGTGTGGTT
・オオスズメバチ(配列番号47)
ACTTTAGTAACAGCTGGAGTTTATTTATTAATACGATATAATAGGTATTTGATAAGAAATCATTTAATAAGTTTAATATTATTTATTTCTAGGTCTACAATAATAATATCTGGATTAATAGCTAATTTTGAAAATGATTTAAAGAAGATTATTGCATTATCTACATTAAGACAATTAGGGTTAATAATGAGAATTTTGAGGTTAGGAGAAGTAGATTTGGGGTTTATACATTTATTAATTCATGCTTTATTTAAATCTTTATTATTTATATGTAGAGGGGTATTAATTCATCAAATAAATAATAATCAGGATATTCGATTTATAGGGAGATTAGTTAGATATTATCCTTTTGTTAGGCTTGTATTTTTTGTATCGTTATTatCATTATGTGGATT
・ハバチ(配列番号48)
GTTCATTCATCTACTTTAGTTACTGCTGGTGTATATTTATTAATTCGATTTGAAAATTTATTTAATAATAATTATAATCTAATCAAATGATTTTTATTAATTTCTATTTTAACTATATTTATATCTGGATTAAATGCTAATTTTGAGTATGATTTAAAAAAAATTATTGCTTTATCAACATTAAGTCAATTAGGTTTAATAATAAGAATTTTATTTTTAGGTTTTAGAAAATTAGCTTTTTTTCATCTTTTAACTCATGCTTTATTTAAGGCTTTATTATTTATATGTGCTGGTATTTTTATTCATAATTTAATTAATTTTCAAGATATTCGTTATATAGGATCTATTAGGCTACAAATACCTTTAGTATGTTTATGTTTTAATTTTGCAAATTTTGCTTTATGTGGATTTCCTTTTTT
・ヒメバチ(配列番号49)
CATCTACTTTAGTTACGGCTGGAGTATATTTATTAATTCGATTTAATAATTTAATAGAAAGAAATATTTTATTTTTAATAATAATTTTATCAATTTTAACTATATTTTTATCTGGATTAGGGGCTAATTTTGAATTTGATTTAAAAAAAATTATTGCACTATCAACTTTAAGTCAATTAGGAGTAATAATTTTTTGTTTATCAATAAAGTTACCAGAAATTTCATTTTTTCATTTATCAACTCATGCAATATTTAAATCAATATTATTCATATGTTCTGGAGTAATTATTCATAATATATTAAACAATCAAGATATACGATTTATTAGAATAGTTATATATAAAATACCTTTAATTTCTTTATTATTTAATTGTTCTTCTATATCTTTATGTGGATTTC
【0089】
2.公開データベースからのシークエンスデータ
既知のシークエンスデータを取得するために、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のホームページのAll databaseで、キーワード検索を行った。すなわち、Search across databasesにキーワード(各「目」の名称と「ND5」)を入力し、得られた検索結果をFASTA形式で保存した。保存したシークエンスデータはそのまま、又は連続した一定領域を取り出してからアラインメント(Multiple Alignment 解析)に使用した。
【0090】
3.メルクマールの策定
「目」に特異的な塩基(配列)の抽出は、DNAspace(日立ソフト社製)の解析ソフトを用いて、各シークエンスデータ(実分析の結果と公開データを合わせ、「目」毎に選んだ10種類の昆虫種のシークエンスデータで、これらは共通領域として5’側(ミトコンドリアND5遺伝子由来のプライマーV1.06-1側)から300〜600塩基長の領域を有する)につき、アラインメント(Multiple Alignment 解析)を行い、10種類のシークエンスデータのすべてに共通に存在する塩基を確定し、これらの中でシークエンスの精度がより高いと考えられるシークエンス開始後約50番目から約400番目の範囲内に存在する塩基配列から複数個の共通塩基を選択した。次に選択された共通塩基を含む各「目」のシークエンスデータをアラインメントし、五大目のシークエンスデータの間で共通塩基の全てが一致することがないことを確認した上で、また選択された共通塩基を含む各「目」のシークエンスデータそれぞれについて、メルクマール策定に用いた他の「目」に属する昆虫のシークエンスデータ40種とアラインメントすることによって比較し、選択された共通塩基においてすべて一致するものがないことを確認した上で、それぞれの共通塩基が各「目」に特異的なメルクマールとした。すなわち、表1に示したように、双翅目は27個の共通塩基グループ、半翅目は21個の共通塩基グループ(グループ1)、23個の共通塩基グループ(グループ2及び3)、及び25個の共通塩基グループ(グループ4)からなる4つの共通塩基グループ、膜翅目は34個の共通塩基グループ(グループ1及び2)、及び35個の共通塩基グループ(グループ3)からなる3つの共通塩基グループ、鱗翅目で25個の共通塩基グループ、鞘翅目で19個の共通塩基グループを各「目」のメルクマールとした。
【0091】
なお、アラインメントに用いたDNAの起源の昆虫を表5に記載する。アクセッションNo.欄が空白の昆虫は本発明者が新たに塩基配列を決定したことを示す。また各「目」ごとに行ったアラインメントの結果を図11〜図15に、五大目間でのアラインメントの結果を図16に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
4.「目」識別メルクマールの活用
SeqScape(v2.5、ABI社)の解析ソフト上で、「目」毎に登録しておいた上記塩基部位と未知データを比較し、両者の一致度を解析することにより「目」レベルでの識別を可能にした。以下に方法の概略を記した。
【0094】
まず、「目」識別用に策定したメルクマールを登録するための作業を実施した。すなわち、SeqScapeを立ち上げ、各「目」に属する代表的な昆虫から得られたシークエンスデータを表示させ、その目のメルクマールとして決定した特定の塩基をマーキングした。こうして色付けされた対照の塩基を有する塩基配列と、識別したい塩基配列のアラインメントを行い、色付けした塩基だけを抜き出して両者を比較した表を作成した。これにより、塩基の種類と存在する位置の全てが一致するか否かが容易に識別できる。このため、被検体である昆虫が比較したメルクマールの目に属するか否かを容易に解析することができ、被検体である昆虫の分類レベルでの識別が可能となった。なお、複数の被検体を同時に解析することもできた。さらに、標識したメルクマールを有する塩基配列およびそれを用いて識別を行うプログラムを各「目」ごとに保存(登録)した場合、未知の試料の分析時に即座に活用でき、五大目において「目」レベルの識別が迅速に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図2】図2は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図3】図3は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図4】図4は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図5】図5は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図6】図6は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図7】図7は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った電気泳動の結果を示す。
【図8】図8は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った膜翅目の電気泳動の結果を示す。
【図9】図9は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った膜翅目の電気泳動の結果を示す。
【図10】図10は、PCRで増幅した昆虫由来のDNA断片を確認するために行った隣翅目の電気泳動の結果を示す。
【図11】図11は、双翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図12】図12は、半翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図13】図13は、膜翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図14】図14は、鞘翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図15】図15は、鱗翅目に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【図16】図16は、五大目間に属する昆虫由来の塩基配列で行ったアラインメントの結果を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号8:プライマー
配列番号9:プライマー
配列番号10:プライマー
配列番号11:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー
配列番号15:プライマー
配列番号16:プライマー
配列番号17:プライマー
配列番号18:プライマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項3】
上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
上記ミトコンドリアDNA由来の塩基配列が、ミトコンドリアNADH dehydrogenase subunit 5(ND5)遺伝子由来の塩基配列である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
上記分類が目である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
上記分類が科である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
昆虫が、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
上記工程(a)において用いる塩基配列の長さが20塩基以上である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
上記共通塩基グループが連続及び/又は不連続の複数の部位からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項11】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項12】
上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
上記分類が目である請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
上記分類が科である請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
昆虫が、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項10〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
上記工程(a)において用いる塩基配列の長さが20塩基以上である、請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
上記共通塩基グループが連続及び/又は不連続の複数の部位からなる、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体である昆虫から得られた塩基配列中の前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の前記塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列を解析ソフト上に登録し、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を前記解析ソフトに入力し、前記解析ソフト上で両者の塩基配列をアラインメントすることにより、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基と前記メルクマールの塩基が完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られた、メルクマールを有する塩基配列を1又はそれ以上登録する手段と、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を入力する手段と、前記メルクマールを有する塩基配列及び前記入力された被検体の塩基配列を比較する手段と、前記メルクマール及び前記入力された被検体の塩基配列中の前記メルクマールに相当する部位の塩基とが完全に一致するかを解析する手段と、被検体の分類を識別する手段を実行させるための、被検体である昆虫を分類レベルで同定するための解析ソフト。
【請求項21】
請求項20記載の解析ソフトを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマール。
【請求項23】
双翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号1で示されるイエバエ由来の塩基配列の5’末端から、第269番目の塩基がA、第270番目の塩基がA、第272番目の塩基がA、第275番目の塩基がA、第276番目の塩基がA、第278番目の塩基がA、第279番目の塩基がA、第280番目の塩基がT、第284番目の塩基がC、第285番目の塩基がA、第287番目の塩基がG、第288番目の塩基がA、第290番目の塩基がA、第291番目の塩基がT、第293番目の塩基がC、第294番目の塩基がG、第297番目の塩基がT、第299番目の塩基がA、第300番目の塩基がT、第302番目の塩基がG、第303番目の塩基がG、第306番目の塩基がG、第308番目の塩基がT、第309番目の塩基がT、第310番目の塩基がA、第312番目の塩基がG、及び第315番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項24】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がA、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項25】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がT、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項26】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がC、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項27】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がC、第236番目の塩基がA、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がT、第295番目の塩基がA、及び第296番目の塩基がA、第297番目の塩基がT、及び第298番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項28】
膜翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がT、第886番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第897番目の塩基がT、第898番目の塩基がT、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1031番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項29】
膜翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がA、第894番目の塩基がA、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項30】
膜翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がT、第895番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項31】
鱗翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号4で示されるチャノコカクモンハマキ由来の塩基配列の5’末端から、第947番目の塩基がT、第948番目の塩基がA、第950番目の塩基がT、第952番目の塩基がA、第956番目の塩基がA、第958番目の塩基がA、第961番目の塩基がC、第962番目の塩基がA、第964番目の塩基がG、第965番目の塩基がA、第966番目の塩基がT、第967番目の塩基がA、第968番目の塩基がT、第969番目の塩基がT、第970番目の塩基がC、第971番目の塩基がG、第976番目の塩基がA、第977番目の塩基がT、第979番目の塩基がG、第980番目の塩基がG、第982番目の塩基がG、第983番目の塩基がG、第986番目の塩基がT、第988番目の塩基がA、及び第989番目の塩基がG、である、前記メルクマール。
【請求項32】
鞘翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号80で示されるマゲラニクスチリオサムシ由来の塩基配列の5’末端から、第300番目の塩基がT、第311番目の塩基がC、第312番目の塩基がA、第314番目の塩基がG、第315番目の塩基がA、第316番目の塩基がT、第317番目の塩基がA、第318番目の塩基がT、第320番目の塩基がC、第321番目の塩基がG、第323番目の塩基がT、第325番目の塩基がT、第326番目の塩基がA、第327番目の塩基がT、第329番目の塩基がG、第330番目の塩基がG、第336番目の塩基がT、第338番目の塩基がA、及び第339番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項1】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫のミトコンドリアDNA由来の塩基配列をアラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項3】
上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
上記ミトコンドリアDNA由来の塩基配列が、ミトコンドリアNADH dehydrogenase subunit 5(ND5)遺伝子由来の塩基配列である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
上記分類が目である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
上記分類が科である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
昆虫が、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
上記工程(a)において用いる塩基配列の長さが20塩基以上である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
上記共通塩基グループが連続及び/又は不連続の複数の部位からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記で得られた複数の共通塩基グループを互いに比較し、1つの分類から得られた上記共通塩基グループから選択される塩基とそれ以外の分類から得られた共通塩基グループから選択される塩基が完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項11】
分類レベルで昆虫を識別するための1又はそれ以上のメルクマールの策定方法であって、以下の工程:
(a)同じ分類に属し、かつ、互いに異なる少なくとも5以上の昆虫の核DNA由来の塩基配列を、アラインメントする工程、
(b)上記アラインメントの結果、上記塩基配列から、全ての上記塩基配列において保存されている、1又はそれ以上の塩基からなる部位を抽出する工程、
(c)上記部位の全部又はその一部を共通塩基グループとする工程、
(d)少なくとも2以上の分類について上記工程(a)〜(c)を行う工程、
(e)上記(d)で得られた1の共通塩基グループと、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基とを互いに比較し、上記共通塩基グループから選択される塩基が、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列の対応する塩基と完全に一致しないように、上記共通塩基グループから、少なくとも1以上の塩基を選択してメルクマールとする工程
を含む、前記方法。
【請求項12】
上記工程(e)において、上記(d)で得られた1の共通塩基グループを、上記(d)で得られた複数の共通塩基グループと互いに比較したのち、さらに、前記共通塩基グループが属する分類とは異なる少なくとも1以上の分類に属する昆虫由来の塩基配列のうち上記共通塩基グループから選択される塩基に対応する塩基と互いに比較することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
上記分類が目である請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
上記分類が科である請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
昆虫が、双翅目、半翅目、膜翅目、鱗翅目、鞘翅目からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項10〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
上記工程(a)において用いる塩基配列の長さが20塩基以上である、請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
上記共通塩基グループが連続及び/又は不連続の複数の部位からなる、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列と、被検体である昆虫から得られた塩基配列中の前記メルクマールを有する領域の塩基配列に相当する塩基配列を比較し、被検体の前記塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基がメルクマールの塩基と完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマールを有する領域の塩基配列を解析ソフト上に登録し、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を前記解析ソフトに入力し、前記解析ソフト上で両者の塩基配列をアラインメントすることにより、被検体の塩基配列中のメルクマールに相当する部位の塩基と前記メルクマールの塩基が完全に一致するかを解析し、被検体の分類を識別することからなる、被検体である昆虫を分類レベルで識別するための方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られた、メルクマールを有する塩基配列を1又はそれ以上登録する手段と、被検体である昆虫から得られた、前記メルクマールと同じ領域を含む塩基配列を入力する手段と、前記メルクマールを有する塩基配列及び前記入力された被検体の塩基配列を比較する手段と、前記メルクマール及び前記入力された被検体の塩基配列中の前記メルクマールに相当する部位の塩基とが完全に一致するかを解析する手段と、被検体の分類を識別する手段を実行させるための、被検体である昆虫を分類レベルで同定するための解析ソフト。
【請求項21】
請求項20記載の解析ソフトを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたメルクマール。
【請求項23】
双翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号1で示されるイエバエ由来の塩基配列の5’末端から、第269番目の塩基がA、第270番目の塩基がA、第272番目の塩基がA、第275番目の塩基がA、第276番目の塩基がA、第278番目の塩基がA、第279番目の塩基がA、第280番目の塩基がT、第284番目の塩基がC、第285番目の塩基がA、第287番目の塩基がG、第288番目の塩基がA、第290番目の塩基がA、第291番目の塩基がT、第293番目の塩基がC、第294番目の塩基がG、第297番目の塩基がT、第299番目の塩基がA、第300番目の塩基がT、第302番目の塩基がG、第303番目の塩基がG、第306番目の塩基がG、第308番目の塩基がT、第309番目の塩基がT、第310番目の塩基がA、第312番目の塩基がG、及び第315番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項24】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がA、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項25】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第195番目の塩基がT、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がT、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第247番目の塩基がT、第254番目の塩基がA、及び第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項26】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がT、第236番目の塩基がC、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【請求項27】
半翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号2で示されるツマグロヨコバイ由来の塩基配列の5’末端から、第209番目の塩基がC、第210番目の塩基がA、第212番目の塩基がG、第213番目の塩基がC、第218番目の塩基がT、第219番目の塩基がT、第221番目の塩基がA、第222番目の塩基がA、第225番目の塩基がC、第228番目の塩基がT、第231番目の塩基がT、第233番目の塩基がT、第234番目の塩基がT、第235番目の塩基がC、第236番目の塩基がA、第237番目の塩基がT、第239番目の塩基がT、第240番目の塩基がG、第246番目の塩基がG、第254番目の塩基がA、第255番目の塩基がT、第295番目の塩基がA、及び第296番目の塩基がA、第297番目の塩基がT、及び第298番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項28】
膜翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がT、第886番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第897番目の塩基がT、第898番目の塩基がT、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1031番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項29】
膜翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がA、第894番目の塩基がA、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項30】
膜翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号3で示されるヒメハナバチ由来の塩基配列の5’末端から、第885番目の塩基がA、第886番目の塩基がT、第895番目の塩基がT、第896番目の塩基がC、第899番目の塩基がT、第902番目の塩基がT、第904番目の塩基がT、第905番目の塩基がT、第908番目の塩基がT、第910番目の塩基がT、第911番目の塩基がG、第912番目の塩基がT、第916番目の塩基がG、第917番目の塩基がG、第925番目の塩基がA、第926番目の塩基がT、第929番目の塩基がA、第930番目の塩基がT、第945番目の塩基がT、第946番目の塩基がC、第947番目の塩基がA、第950番目の塩基がA、第951番目の塩基がT、第953番目の塩基がT、第955番目の塩基がC、第956番目の塩基がG、第971番目の塩基がT、第985番目の塩基がC、第986番目の塩基がC、第989番目の塩基がT、第998番目の塩基がT、第1004番目の塩基がT、第1013番目の塩基がC、及び第1019番目の塩基がT、である、前記メルクマール。
【請求項31】
鱗翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号4で示されるチャノコカクモンハマキ由来の塩基配列の5’末端から、第947番目の塩基がT、第948番目の塩基がA、第950番目の塩基がT、第952番目の塩基がA、第956番目の塩基がA、第958番目の塩基がA、第961番目の塩基がC、第962番目の塩基がA、第964番目の塩基がG、第965番目の塩基がA、第966番目の塩基がT、第967番目の塩基がA、第968番目の塩基がT、第969番目の塩基がT、第970番目の塩基がC、第971番目の塩基がG、第976番目の塩基がA、第977番目の塩基がT、第979番目の塩基がG、第980番目の塩基がG、第982番目の塩基がG、第983番目の塩基がG、第986番目の塩基がT、第988番目の塩基がA、及び第989番目の塩基がG、である、前記メルクマール。
【請求項32】
鞘翅目に特異的である請求項22記載のメルクマールであって、配列番号80で示されるマゲラニクスチリオサムシ由来の塩基配列の5’末端から、第300番目の塩基がT、第311番目の塩基がC、第312番目の塩基がA、第314番目の塩基がG、第315番目の塩基がA、第316番目の塩基がT、第317番目の塩基がA、第318番目の塩基がT、第320番目の塩基がC、第321番目の塩基がG、第323番目の塩基がT、第325番目の塩基がT、第326番目の塩基がA、第327番目の塩基がT、第329番目の塩基がG、第330番目の塩基がG、第336番目の塩基がT、第338番目の塩基がA、及び第339番目の塩基がTである、前記メルクマール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図10】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−99644(P2008−99644A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286905(P2006−286905)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
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