説明

昇圧コンバータ制御装置

【課題】 適切な電流制御を可能とする昇圧コンバータ制御装置を提供する。
【解決手段】 昇圧コンバータ制御装置1は、リアクトル電流ILのサンプリングを所定のタイミングで行うことによりリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得するAD変換器123と、デッドタイムDTにおけるリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態を判定する電流状態判定部122bと、電流状態判定部122bの判定結果に応じて、リアクトル電流ILのサンプリングのタイミングを修正する起動タイミング生成部122aと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子とリアクトルとを有する昇圧コンバータを制御するための昇圧コンバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野の従来の技術として、特許文献1に記載の昇圧コンバータ制御装置が知られている。この昇圧コンバータ制御装置は、第1及び第2のスイッチング素子のオン・オフの切り替えを制御するための制御信号を出力する信号出力手段と、第2のスイッチング素子の出力電圧を検出する検出手段と、制御信号が反転してから第2のスイッチング素子の出力電圧が変化するまでの遅延時間に基づいて、制御信号のデューティを補正する補正手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−278766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の昇圧コンバータ制御装置は、上述したように、遅延時間に基づいて制御信号のデューティを補正することによって、昇圧コンバータからの電圧出力の安定化を図っている。このような昇圧コンバータ制御装置においては、昇圧コンバータからの電圧出力のさらなる安定化のため、昇圧コンバータにおける適切な電流制御を可能とすることが望まれている。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、昇圧コンバータにおける適切な電流制御を可能とする昇圧コンバータ制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の昇圧コンバータ制御装置は、第1及び第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続部に接続されたリアクトルとを有する昇圧コンバータを制御するための昇圧コンバータ制御装置であって、リアクトルに流れるリアクトル電流のサンプリングを所定のタイミングで行うことによりリアクトル電流の平均値を取得する平均値取得手段と、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する電流状態判定手段と、電流状態判定手段の判定結果に応じて所定のタイミングを修正するタイミング修正手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この昇圧コンバータ制御装置は、リアクトル電流を所定のタイミングでサンプリングすることにより、リアクトル電流の平均値を取得するので、その平均値を用いることにより、昇圧コンバータにおける電流制御を行うことが可能となる。特に、この昇圧コンバータ制御装置は、リアクトル電流の電流状態を判定し、その電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかに応じて、リアクトル電流のサンプリングのタイミングを修正する。このため、正確なリアクトル電流の平均値を得ることができる。したがって、この昇圧コンバータ制御装置によれば、正確な平均値を用いることによって、昇圧コンバータにおける適切な電流制御が可能となる。
【0008】
本発明の昇圧コンバータ制御装置は、電流状態判定手段が、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子が共にオフであるときのリアクトル電流に基づいて、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する態様とすることができる。或いは、本発明の昇圧コンバータ制御装置は、電流状態判定手段が、リアクトル電流の時間変化の割合に基づいて、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する態様としてもよい。これらの場合、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを確実に判定することができる。
【0009】
ここで、本発明の昇圧コンバータ制御装置は、第1及び第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との接続部に接続されたリアクトルとを有する昇圧コンバータを制御するための昇圧コンバータ制御装置であって、リアクトルに流れるリアクトル電流のサンプリングを行うことによりリアクトル電流の電流値を取得する電流値取得手段と、電流値取得手段が取得したリアクトル電流の電流値に基づいて、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する電流状態判定手段と、電流状態判定手段の判定の結果に応じて、電流値取得手段が取得したリアクトル電流の電流値からリアクトル電流の電流値の平均値を取得する平均値取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この昇圧コンバータ制御装置は、電流値取得手段が取得したリアクトル電流の電流値に基づいて、リアクトル電流の電流状態を判定し、その判定の結果に応じて、電流値取得手段が取得したリアクトル電流の電流値からリアクトル電流の電流値の平均値を取得する。このため、リアクトル電流の電流値の正確な平均値を得ることができる。したがって、この昇圧コンバータ制御装置によれば、正確な平均値を用いることによって、昇圧コンバータにおける適切な電流制御が可能となる。また、例えば、電流状態を判定した後に改めてリアクトル電流をサンプリングして平均値を取得する場合に比べて、電流状態を判定してから平均値を得るまでの時間を短縮することができるので、実際の電流状態に即した平均値を得ることができる。
【0011】
本発明の昇圧コンバータ制御装置は、電流値取得手段が、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子が共にオフであるデッドタイムのうちの第1のデットタイムの開始及び終了と、デッドタイムのうちの第1のデッドタイムの次の第2のデッドタイムの開始及び終了との各時間において、リアクトル電流のサンプリングを行うことにより、各時間におけるリアクトル電流の電流値を取得する態様とすることができる。この場合、第1のデットタイムの開始及び終了と第2のデッドタイムの開始及び終了との各時間におけるリアクトル電流の電流値に基づいて電流状態を判定することとなるので、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを確実に判定することができる。
【0012】
或いは、本発明の昇圧コンバータ制御装置は、電流値取得手段が取得したリアクトル電流の電流値に基づいて、リアクトル電流の時間変化の割合を算出する算出手段をさらに備え、電流状態判定手段は、算出手段が算出したリアクトル電流の時間変化の割合に基づいて、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する態様とすることができる。この場合、リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを確実に判定することができる。
【0013】
このとき、本発明の昇圧コンバータ制御装置は、電流値取得手段が、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子が共にオフであるデットタイムのうちの第1のデッドタイムの終了の時間におけるリアクトル電流の電流値が予め取得されている場合には、デッドタイムのうちの第1のデッドタイムの次の第2のデッドタイムと第1のデッドタイムとの間の所定の時間においてリアクトル電流のサンプリングを行うことにより、所定の時間におけるリアクトル電流の電流値を取得し、算出手段は、第1のデッドタイムの終了の時間におけるリアクトル電流の電流値が予め得られている場合には、第1のデッドタイムの終了の時間におけるリアクトル電流の電流値と所定の時間におけるリアクトル電流の電流値とに基づいて、リアクトル電流の電流値の時間変化の割合を算出し、所定の時間は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子のスイッチングのタイミングの基準となる基準信号の頂点の時間である態様とすることができる。この場合、リアクトル電流の時間変化の割合を算出するに際して、第1のデッドタイムの終了の時間におけるリアクトル電流の電流値が予め取得されている場合には、基準信号の頂点の時間のみでサンプリングを行えばよい。このため、例えば、リアクトル電流の時間変化の割合を算出するたびに、基準信号の頂点の時間と、その時間から所定の時間だけ遅れた時間との2点でサンプリングする場合に比べて、制御周期を高速化することができると共に、デューティを拡張することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、適切な電流制御を可能とする昇圧コンバータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】キャリア、ゲート信号及びリアクトル電流の時間変化を示すグラフである。
【図3】リアクトル電流の時間変化を示すグラフである。
【図4】キャリア、ゲート信号、中点電位、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図5】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図6】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図7】本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【図8】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図9】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図10】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図11】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図12】本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第3実施形態の構成を示す図である。
【図13】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図14】本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第4実施形態の構成を示す図である。
【図15】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図16】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【図17】キャリア、ゲート信号、及びリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
【0018】
図1は、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第1実施形態の構成を示す図である。図1に示されるように、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1は、昇圧コンバータ2を制御するためのものである。
【0019】
昇圧コンバータ2は、バッテリ3とインバータ4との間に接続されている。昇圧コンバータ2は、インバータ4の電源ライン41とアースライン42との間において互いに直列に接続された上アームトランジスタ(第1のスイッチング素子)21及び下アームトランジスタ(第2のスイッチング素子)22とを備えている。上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とすることができる。
【0020】
上アームトランジスタ21のコレクタ21cはインバータ4の電源ライン41に接続されており、上アームトランジスタ21のエミッタ21eは下アームトランジスタ22のコレクタ22cに接続されている。また、下アームトランジスタ22のエミッタ22eは、インバータ4のアースライン42及びバッテリ3の負極に接続されている。
【0021】
昇圧コンバータ2は、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22の接続部P0に一端が接続されたリアクトル23をさらに備えている。このリアクトル23の他端は、バッテリ3の正極に接続されている。したがって、上アームトランジスタ21のエミッタ21e及び下アームトランジスタ22のコレクタ22cは、リアクトル23を介してバッテリ3の正極に接続されている。
【0022】
昇圧コンバータ2は、上アームトランジスタ21のコレクタ21cからエミッタ21eに逆方向に接続されたダイオード24と、下アームトランジスタ22のコレクタ22cからエミッタ22eに逆方向に接続されたダイオード25とをさらに備えている。
【0023】
また、昇圧コンバータ2は、インバータ4の電源ライン41とアースライン42との間において上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22に並列に接続されたメインコンデンサ26と、バッテリ3の正極と負極との間に接続されたフィルタコンデンサ27とをさらに備えている。
【0024】
このように構成される昇圧コンバータ2は、昇圧コンバータ制御装置1の制御のもとで、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングを繰り返すことにより、バッテリ3からの電圧を昇圧したり、インバータ4からの電圧を降圧したりすることができる。
【0025】
昇圧コンバータ制御装置1は、リアクトル23に流れるリアクトル電流ILを検出(モニタ)する電流検出部11と、電流検出部11の検出結果を利用して上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングを制御する制御部12とを備えている。電流検出部11は、リアクトル電流ILを検出可能であればよく、例えば周知の電流センサとすることができる。
【0026】
制御部12は、キャリア生成部121と、AD制御部122と、AD変換器123と、フィードバック制御部124と、ゲート信号生成部125とを備えている。このような制御部12は、CPU、RAM及びROM等を含むコンピュータシステムを主体として構成される。また、制御部12の各部の処理は、そのコンピュータシステムにおいて所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0027】
キャリア生成部121は、図2に示されるように、キャリアと呼ばれる所定の周波数の基準信号(基準三角波)を生成する。キャリア生成部121で生成されるキャリアは、例えば、所定のデューティで上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22をスイッチング制御するための基準として用いることができる。キャリア生成部121は、生成したキャリアをAD制御部122及びゲート信号生成部125に送信する。
【0028】
AD制御部122は、キャリア生成部121から送信されるキャリアに基づいて、リアクトル電流ILのサンプリング(検出)を行うためのサンプリングタイミングを生成し、生成したサンプリングタイミングを示す信号をAD変換器123に送信する。サンプリングタイミングは、例えば、図2に示されるように、キャリアの頂点のタイミング(換言すれば、キャリアの山及び谷のそれぞれのタイミング、さらに換言すれば、キャリアが最大値及び最小値となるそれぞれのタイミング)とすることができる。
【0029】
AD変換器123は、AD制御部122が生成したサンプリングタイミングに応じて起動し、電流検出部11を用いたリアクトル電流ILのサンプリングを行う。サンプリングタイミングがキャリアの頂点であれば、このサンプリングにより得られるリアクトル電流ILの電流値は、図2に示されるように、概ねリアクトル電流ILの電流値の平均値となる。
【0030】
つまり、AD変換器123は、AD制御部122の制御のもとで、リアクトル電流ILのサンプリングを所定のタイミング(例えばキャリアの頂点)で行うことにより、リアクトル電流ILの電流値の平均値を取得する。そして、AD変換器123は、取得した平均値を示すデジタル信号(ILAD値)をフィードバック制御部124に送信する。
【0031】
フィードバック制御部124は、AD変換器123が取得したリアクトル電流ILの電流値の平均値を利用して、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のデューティを所望の値とするための補正値を算出する。そして、フィードバック制御部124は、算出した補正値を示す信号(Duty)をゲート信号生成部125に送信する。
【0032】
ゲート信号生成部125は、キャリア生成部121からのキャリアと、フィードバック制御部124からのデューティの補正値とに基づいて、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングの制御をするためのゲート信号Q1,Q2を生成する。そして、ゲート信号生成部125は、生成したゲート信号Q1及びゲート信号Q2のそれぞれを、上アームトランジスタ21のゲート21g及び下アームトランジスタ22のゲート22gのそれぞれに送信する。
【0033】
このように、昇圧コンバータ制御装置1は、リアクトル電流ILを所定のタイミングでサンプリングすることにより、リアクトル電流ILの電流値の平均値を取得し、その平均値を用いて昇圧コンバータ2における電流制御を行う。
【0034】
ここで、リアクトル電流ILの電流状態は、力行状態、回生状態及びゼロクロス状態の複数の状態がある。力行状態は、昇圧コンバータ2が昇圧動作中の電流状態であり、図3(a)に示されるように、リアクトル電流ILの電流値が常に正となる状態である。回生状態は、昇圧コンバータ2が降圧動作中の電流状態であり、図3(c)に示されるようにリアクトル電流ILの電流値が常に負となる状態である。
【0035】
ゼロクロス状態は、昇圧コンバータ2が昇圧動作から降圧動作へ(或いは降圧動作から昇圧動作へ)切り替わる際の電流状態であり、図3(b)に示されるように、リアクトル電流ILの電流値が、0Aを横切って変化し、0A付近で正と負とを交互に繰り返す状態である。なお、ここでは、バッテリ3からインバータ4へ向かう方向の電流値を正とし、その逆を負とする。
【0036】
上述したように、キャリアの頂点のサンプリングタイミングでリアクトル電流ILのサンプリングを行えば、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態である場合には正確な平均値が得られる。一方で、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態及び回生状態である場合には、キャリアの頂点のサンプリングタイミングでリアクトル電流ILのサンプリングを行うと、得られる電流値が平均値とならないことがある。
【0037】
つまり、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態及び回生状態である場合には、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングが、キャリアの頂点のタイミングからずれることがある。
【0038】
リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングのずれについて、図4を参照してより具体的に説明する。図4に示されるように、ここでは、キャリアが谷となる時間Cをサンプリングタイミングとする。なお、図4に示される中点電位とは、接続部P0の電位(すなわち、上アームトランジスタ21と下アームトランジスタ22との間の電圧)である。
【0039】
図4に示されるように、ここでのサンプリングタイミングを示す時間Cは、時間Aと時間Dとの中間点となっている。なお、時間Aは、上アームトランジスタ21がオフの状態において下アームトランジスタ22をオフとする時間であり、時間Dは、下アームトランジスタ22がオフの状態において上アームトランジスタ21をオフとする時間である。
【0040】
図4(b)〜図4(c)に示されるように、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態(図4(b)参照)、ゼロクロス状態(図4(c)参照)、及び回生状態(図4(d)参照)のいずれであるかによって、デッドタイムDT(上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフである期間)における中点電位の動きが異なる。
【0041】
このため、リアクトル電流ILの電流値の上昇・下降が切り替わるタイミングも、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかによって変化する。その結果、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングが、キャリアが谷である時間Cとならないことがある。
【0042】
リアクトル電流ILの電流状態が力行状態である場合には、図4(b)に示されるように、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングが、時間Aと時間Eとの中間点となる。なお、時間Eは、時間Dで上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22を共にオフとした後に下アームトランジスタ22をオンとする時間である。
【0043】
このため、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態である場合には、時間Cでリアクトル電流ILのサンプリングを行うと、そのサンプリングにより得られる電流値が、リアクトル電流ILの電流値の平均値よりも僅かに大きな値となる。
【0044】
一方、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態である場合には、図4(c)に示されるように、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングが、時間Aと時間Dの中間点(時間C)となる。
【0045】
このため、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態である場合には、時間Cでリアクトル電流ILのサンプリングを行えば、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られる。
【0046】
他方、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態である場合には、図4(d)に示されるように、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングが、時間Bと時間Dとの中間点となる。なお、時間Bは、時間Aで上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22を共にオフとした後に上アームトランジスタ21をオンとする時間である。
【0047】
このため、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態である場合には、時間Cでリアクトル電流ILのサンプリングを行うと、そのサンプリングにより得られる電流値が、リアクトル電流ILの電流値の平均値よりも僅かに大きな値となる。
【0048】
リアクトル電流ILの電流状態が力行状態及び回生状態である場合において、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングの時間Cからのずれの程度は、デッドタイムDTによって決まっている。
【0049】
すなわち、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態及び回生状態である場合において、リアクトル電流ILの電流値の平均値が得られるサンプリングタイミングの時間Cからのずれは、DT/2となる。
【0050】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1は、上述したようなサンプリングタイミングのキャリアの頂点からのずれを修正するための構成を備えている。すなわち、昇圧コンバータ制御装置1において、AD制御部122は、図1に示されるように、起動タイミング生成部122aと電流状態判定部122bとを備えている。
【0051】
起動タイミング生成部122aは、キャリア生成部121からのキャリアに基づき、AD変換器123を起動してリアクトル電流ILのサンプリング行うためのサンプリングタイミングを生成し、生成したサンプリングタイミングを示す信号をAD変換器123に送信する。
【0052】
サンプリングタイミングのずれの修正時には、起動タイミング生成部122aは、例えば、図5に示されるように、互いに隣あう2つのデッドタイムDT中の時間α及び時間βにおいてリアクトル電流ILのサンプリングを行うように、サンプリングタイミングを生成する。
【0053】
これにより、AD変換器123は、時間α及び時間βにおいてリアクトル電流ILのサンプリングを行い、時間α及び時間βにおけるリアクトル電流ILの電流値IL(α)及び電流値IL(β)を取得することとなる。そして、AD変換器123は、取得した電流値IL(α)及び電流値IL(β)を示す電気信号(ILAD値)を電流状態判定部122bに送信する。
【0054】
電流状態判定部122bは、AD変換器123からのリアクトル電流ILの電流値IL(α)及び電流値IL(β)に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態及び回生状態のいずれであるかを判定する。
【0055】
リアクトル電流ILの電流状態が力行状態である場合には、図5(b)に示されるように、電流値IL(α)及び電流値IL(β)は、共に0A以上となる。一方、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態である場合には、図5(c)に示されるように、電流値IL(α)が0A未満となり、電流値IL(β)が0A以上となる。他方、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態である場合には、図5(d)に示されるように、電流値IL(α)及び電流値IL(β)は、共に0A未満となる。
【0056】
したがって、電流状態判定部122bは、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A以上であるときに、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態であると判定し、電流値IL(α)が0A未満であり電流値IL(β)が0A以上であるときに、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態であると判定し、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A未満であるときに、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態であると判定することができる。
【0057】
そして、電流状態判定部122bは、このようにして判定したリアクトル電流ILの電流状態の判定結果を示す信号を、起動タイミング生成部122aに送信する。
【0058】
起動タイミング生成部122aは、電流状態判定部122bによるリアクトル電流ILの電流状態の判定結果に応じて、リアクトル電流ILの電流値の平均値を取得するために、サンプリングタイミングを修正(変更)する。
【0059】
より具体的には、起動タイミング生成部122aは、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態及び回生状態である場合には、キャリアの頂点からDT/2だけ遅らせてリアクトル電流ILのサンプリングを行うように、サンプリングタイミングを修正する。
【0060】
また、起動タイミング生成部122aは、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態である場合には、サンプリングタイミングの修正を行わない(すなわち、キャリアの頂点をサンプリングタイミングとする)。
【0061】
これにより、リアクトル電流ILのサンプリングタイミングは、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかに応じて変更されることとなる。
【0062】
そして、起動タイミング生成部122aは、サンプリングタイミングを示す信号をAD変換器123に送信する。これにより、AD変換器123は、リアクトル電流ILの電流状態に応じて変更(修正)されたサンプリングタイミングで起動し、リアクトル電流ILのサンプリングを行うこととなる。その結果、AD変換器123により得られる平均値が正確なものとなる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1は、リアクトル電流ILを所定のサンプリングタイミングでサンプリングすることにより、リアクトル電流ILの電流値の平均値を取得することができる。このため、取得した平均値を用いることにより、昇圧コンバータ2におけるフィードバック電流制御を行うことが可能となる。
【0064】
特に、この昇圧コンバータ制御装置1は、リアクトル電流ILの電流状態を判定し、その電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかに応じて、リアクトル電流ILのサンプリングタイミングをキャリアの頂点から修正したり、修正せずにキャリアの頂点をサンプリングタイミングとしたりする。このため、正確なリアクトル電流ILの平均値を得ることができる。したがって、この昇圧コンバータ制御装置1によれば、正確な平均値を用いることによって、昇圧コンバータ2における適切な電流制御が可能となる。
【0065】
なお、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態である場合には、図6(a)に示されるように、時間αに向かってリアクトル電流ILの電流値が徐々に小さくなり、時間αを越えた後にデッドタイムDT中(時間αと時間βとの間)でリアクトル電流ILの電流値が0Aになることがある。
【0066】
そのような場合、リアクトル電流ILの電流値が、破線で示されるように0Aを横切って変化すると、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A以上であるにもかかわらず、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態となる。
【0067】
しかしながら、実際には、リアクトル電流ILの電流値は、実線で示されるように変化するため(0Aを横切らないため)、リアクトル電流ILの電流状態はゼロクロス状態とはならない。したがって、リアクトル電流ILの電流状態は、電流値IL(α)が0A未満となるまでゼロクロス状態とならず、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A以上であれば、力行状態であると判定できる。
【0068】
同様に、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態である場合には、図6(b)に示されるように、時間βに向かってリアクトル電流ILの電流値の絶対値が徐々に小さくなり、時間βを越えた後にデッドタイムDT中でリアクトル電流ILの電流値が0Aに近くなることがある。
【0069】
そのような場合、リアクトル電流ILの電流値が、破線で示されるように0Aを横切って変化すると、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A未満であるにもかかわらず、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態となる場合がある。
【0070】
しかしながら、実際には、リアクトル電流ILの電流値は、実線で示されるように変化するため(0Aを横切らないため)、リアクトル電流ILの電流状態はゼロクロス状態とはならない。したがって、リアクトル電流ILの電流状態は、電流値IL(α)が0A以上となるまでゼロクロス状態とならず、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A未満であれば、回生状態であると判定できる。
【0071】
[第2実施形態]
【0072】
図7は、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第2実施形態の構成を示す図である。図7に示されるように、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置5は、昇圧コンバータ2を制御するためのものである。
【0073】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置5は、制御部12に換えて制御部52を備える点で、第1実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1と異なる。また、制御部52は、AD制御部122に換えてAD制御部522を備える点で、制御部12と異なる。
【0074】
AD制御部522は、キャリア生成部121から送信されるキャリアに基づいて、リアクトル電流ILのサンプリングを行うためのサンプリングタイミングを生成し、生成したサンプリングタイミングを示す信号をAD変換器123に送信する。
【0075】
AD変換器123は、AD制御部522が生成したサンプリングタイミングに応じて起動し、電流検出部11を用いたリアクトル電流ILのサンプリングを行う。そして、AD変換器123は、そのサンプリングにより得られたリアクトル電流ILの電流値を示すデジタル信号(ILAD値)を、AD制御部522に送信する。
【0076】
AD制御部522は、AD変換器123からのリアクトル電流ILの電流値に基づいてリアクトル電流ILの電流値の平均値を算出する。そして、AD制御部522は、算出した平均値を示す信号をフィードバック制御部124へ送信する。
【0077】
ここで、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置5においても、リアクトル電流ILの電流値の正確な平均値を得るためには、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する必要がある。
【0078】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置5も、リアクトル電流ILの電流状態を判定するための構成を備えている。すなわち、昇圧コンバータ制御装置5において、AD制御部522は、図7に示されるように、起動タイミング生成部522aと算出部522bと電流状態判定部522cとを備えている。
【0079】
起動タイミング生成部522aは、キャリア生成部121からのキャリアに基づき、AD変換器123を起動してリアクトル電流ILのサンプリングを行うためのサンプリングタイミングを生成する。
【0080】
より具体的には、起動タイミング生成部522aは、キャリアの頂点をサンプリングタイミングとし、そのサンプリングタイミングを示す信号を生成してAD変換器123に送信する。さらに、起動タイミング生成部522aは、キャリアの頂点から時間Tだけ遅れた時間を別のサンプリングタイミングとし、その別のサンプリングタイミングを示す信号を生成してAD変換器123へさらに送信する。
【0081】
ここでは、図8に示されるように、キャリアの山の時間F及びキャリアの谷の時間Hを上記のサンプリングタイミングとし、時間Fから時間Tだけ遅れた時間G及び時間Hから時間Tだけ遅れた時間Jを、上記の別のサンプリングタイミングとする。なお、時間Tは、例えば、キャリアの周期TS(例えば10kHz程度)の1/8程度(例えば12μs程度)とすることができる。
【0082】
したがって、AD変換器123は、時間F、時間G、時間H及び時間Jで起動して、リアクトル電流ILのサンプリングを行うこととなる。AD変換器123は、時間F、時間G、時間H及び時間Jのそれぞれにおけるサンプリングにより得られた電流値IL(F)、電流値IL(G)、電流値IL(H)、及び電流値IL(J)を示すデジタル信号を算出部522bへ送信する。
【0083】
算出部522bは、AD変換器123が取得したリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの時間変化の割合(すなわち、図8におけるリアクトル電流ILの傾き)を算出する。リアクトル電流ILの傾きの算出は、例えば、(電流値IL(G)−電流値IL(F))/(時間G−時間F)を求めることにより行うことができる。
【0084】
そして、算出部522bは、上記のようにして算出したリアクトル電流ILの傾きに基づいて、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングの各タイミングにおけるリアクトル電流ILの電流値と、キャリアの各頂点からDT/2だけ遅れたタイミングにおけるリアクトル電流ILの電流値とを算出する。
【0085】
より具体的には、図9に示されるように、算出部522bは、リアクトル電流ILの傾きに基づいて、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングのタイミングの時間K、時間L、時間Q(時間S)、時間R(時間U)、時間Y、及び時間Zにおけるリアクトル電流ILの電流値をそれぞれ算出すると共に、キャリアの谷の時間MからDT/2だけ遅れた時間N及びキャリアの山の時間VからDT/2だけ遅れた時間Wにおけるリアクトル電流ILの電流値を算出する。
【0086】
なお、時間Kは、上アームトランジスタ21がオフの状態において下アームトランジスタ22をオフとする時間である。時間Lは、時間Kで下アームトランジスタ22をオフとした後に、上アームトランジスタ21をオンとする時間である。時間Q及び時間Sは、時間Lで上アームトランジスタ21をオンとした後に、上アームトランジスタ21を再びオフとする時間である。
【0087】
また、時間R及び時間Uは、時間Q及び時間Sで上アームトランジスタ21をオフとした後に、下アームトランジスタ22をオンとする時間である。時間Yは、時間R及び時間Uで下アームトランジスタ22をオンとした後に、下アームトランジスタ22を再びオフとする時間である。時間Zは、時間Yで下アームトランジスタ22をオフとした後に、上アームトランジスタ21をオンとする時間である。
【0088】
キャリアの谷の時間M、時間Mから時間Tだけ遅れた時間P、キャリアの山の時間V、及び時間Vから時間Tだけ遅れた時間Xにおけるリアクトル電流ILの電流値は、上記のサンプリングにより予め取得されている。
【0089】
したがって、算出部522bは、図9に示される時間K〜時間Zの全てにおけるリアクトル電流ILの電流値を取得することとなる。そして、算出部522bは、取得した電流値を示す信号を、電流状態判定部522cに送信する。
【0090】
電流状態判定部522cは、算出部522bが取得したリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定すると共に、その判定結果に応じて、時間M、時間N、時間V及び時間Wのうちのいずれの時間におけるリアクトル電流ILの電流値を平均値とするかを決定する。電流状態判定部522cのこの動作について、より具体的に説明する。
【0091】
電流状態判定部522cは、図9(b)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0未満であるときに、時間Rにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A以上であれば、リアクトル電流ILの電流状態を力行状態と判定する。そして、その場合には、電流状態判定部522cは、キャリアの谷の時間MからDT/2だけ遅れた時間Nにおけるリアクトル電流ILの電流値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として決定する。
【0092】
また、電流状態判定部522cは、図9(c)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0より大きいときに、時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A以上であれば、リアクトル電流ILの電流状態を力行状態と判定する。そして、その場合には、電流状態判定部522cは、キャリアの山の時間VからDT/2だけ遅れた時間Wにおけるリアクトル電流ILの電流値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として決定する。
【0093】
一方、電流状態判定部522cは、図10(b)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0未満であるときに、時間Kにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号と時間Qにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号とが異なれば、リアクトル電流ILの電流状態をゼロクロス状態と判定する。そして、その場合には、電流状態判定部522cは、キャリアの谷の時間M(=時間N)におけるリアクトル電流ILの電流値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として決定する。
【0094】
また、電流状態判定部522cは、図10(c)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きいときに、時間Sにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号と時間Yにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号とが異なれば、リアクトル電流ILの電流状態をゼロクロス状態と判定する。そして、その場合には、電流状態判定部522cは、キャリアの山の時間V(=時間W)におけるリアクトル電流ILの電流値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として決定する。
【0095】
他方、電流状態判定部522cは、図11(b)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0未満であるとき、時間Lにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A未満であれば、リアクトル電流ILの電流状態を回生状態と判定する。そして、その場合には、電流状態判定部522cは、キャリアの谷の時間MからDT/2だけ遅れた時間Nにおけるリアクトル電流ILの電流値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として決定する。
【0096】
また、電流状態判定部522cは、図11(c)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きいとき、時間Zにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A未満であれば、リアクトル電流ILの電流状態を回生状態と判定する。そして、その場合には、電流状態判定部522cは、キャリアの山の時間VからDT/2だけ遅れた時間Wにおけるリアクトル電流ILの電流値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として決定する。
【0097】
このように、電流状態判定部522cは、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定して、その判定結果に応じてリアクトル電流ILの電流値の平均値を決定するので、正確な平均値を得ることができる。そして、電流状態判定部522cは、決定した平均値を示す信号をフィードバック制御部124に送信する。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置5においても、第1実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1と同様に、正確な平均値を用いることによって、昇圧コンバータ2における適切な電流制御が可能となる。
【0099】
以上の第1及び第2実施形態は、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の一実施形態を説明したものであり、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置は、上記の昇圧コンバータ制御装置1及び昇圧コンバータ制御装置5に限定されるものではない。本発明に係る昇圧コンバータ制御装置は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、昇圧コンバータ制御装置1及び昇圧コンバータ制御装置5を変形することができる。
【0100】
例えば、第1実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1において、電流状態判定部122bは、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフであるとき(デッドタイムDT)のリアクトル電流ILの電流値(電流値IL(α)及び電流値IL(β))に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態を判定するものとしたが、これに限定されない。
【0101】
例えば、電流状態判定部122bは、第2実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置5の電流状態判定部522cと同様の態様とすることができる。より具体的には、電流状態判定部122bは、電流状態判定部522cと同様に、リアクトル電流ILの時間変化の割合に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する態様とすることができる。そのために必要であれば、昇圧コンバータ制御装置1は、起動タイミング生成部122aを起動タイミング生成部522aと同様とし、算出部522bをさらに備えるような態様としてもよい。
【0102】
[第3実施形態]
【0103】
図12は、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第3実施形態の構成を示す図である。図12に示されるように、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置7は、昇圧コンバータ2を制御するためのものである。
【0104】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置7は、制御部12に換えて制御部72を備える点で、第1実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1と異なる。また、制御部72は、AD制御部122に換えてAD制御部722を備える点で、制御部12と異なる。
【0105】
AD制御部722は、キャリア生成部121から送信されるキャリアに基づいて、リアクトル電流ILのサンプリングを行うためのサンプリングタイミングを生成し、生成したサンプリングタイミングを示す信号をAD変換器123に送信する。
【0106】
AD変換器123は、AD制御部722が生成したサンプリングタイミングに応じて起動し、電流検出部11を用いたリアクトル電流ILのサンプリングを行う。そして、AD変換器123は、そのサンプリングにより得られたリアクトル電流ILの電流値を示すデジタル信号(ILAD値)を、AD制御部722に送信する。
【0107】
AD制御部722は、AD変換器123からのリアクトル電流ILの電流値に基づいてリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得する。そして、AD制御部722は、取得した平均値を示す信号をフィードバック制御部124へ送信する。
【0108】
ここで、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置7においても、リアクトル電流ILの電流値の正確な平均値を得るためには、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する必要がある。
【0109】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置7は、リアクトル電流ILの電流状態を判定してリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得するための構成を備えている。すなわち、昇圧コンバータ制御装置7において、AD制御部722は、図12に示されるように、起動タイミング生成部722aと電流状態判定部722bと平均値取得部722cとを備えている。
【0110】
起動タイミング生成部722aは、キャリア生成部121からのキャリアに基づき、AD変換器123を起動してリアクトル電流ILのサンプリングを行うためのサンプリングタイミングを生成する。
【0111】
より具体的には、図13に示されるように、起動タイミング生成部722aは、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフであるデッドタイムのうちの第1のデッドタイムDT1の開始の時間α及び終了の時間γと、デッドタイムのうちの第1のデッドタイムDT1の次のデッドタイムである第2のデッドタイムDT2の開始の時間β及び終了の時間δと、をサンプリングタイミングとする。
【0112】
時間αでは、上アームトランジスタ21がオンであり下アームトランジスタ22がオフである状態から、上アームトランジスタ21がオフされることにより、第1のデッドタイムDT1が開始される。時間γでは、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフである状態から、下アームトランジスタ22がオンされることにより、第1のデッドタイムDT1が終了する。
【0113】
また、時間βでは、上アームトランジスタ21がオフであり下アームトランジスタ22がオンである状態から、下アームトランジスタ22がオフされることにより、第2のデッドタイムDT2が開始される。時間δでは、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフである状態から、上アームトランジスタ21がオンされることにより、第2のデッドタイムDT2が終了する。
【0114】
起動タイミング生成部722aは、そのようなサンプリングタイミングを示す信号を生成してAD変換器123へ送信する。したがって、AD変換器123は、時間α、時間γ、時間β、及び時間δで起動して、リアクトル電流ILのサンプリングを行うこととなる。AD変換器123は、時間α、時間γ、時間β、及び時間δのそれぞれにおける電流値IL(α)、電流値IL(γ)、電流値IL(β)、及び電流値IL(δ)を取得し、それらを示すデジタル信号(ILAD値)を電流状態判定部722b及び平均値取得部722cに送信する。
【0115】
電流状態判定部722bは、AD変換器123からのリアクトル電流ILの電流値IL(α)、電流値IL(γ)、電流値IL(β)、及び電流値IL(δ)のうちの電流値IL(α)と電流値IL(β)とに基づいて、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態及び回生状態のいずれであるかを判定する。
【0116】
電流状態判定部722bにおける電流状態の判定の態様は、第1実施形態に係る電流状態判定部122bと同様である。すなわち、電流状態判定部722bは、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A以上であるときに、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態であると判定し、電流値IL(α)が0A未満であり電流値IL(β)が0A以上であるときに、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態であると判定し、電流値IL(α)及び電流値IL(β)が共に0A未満であるときに、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態であると判定する。
【0117】
そして、電流状態判定部722bは、このようにして判定したリアクトル電流ILの電流状態の判定結果を示す信号を、平均値取得部722cに送信する。平均値取得部722cは、電流状態判定部722bの電流状態の判定の結果に応じて、AD変換器123からのリアクトル電流ILの電流値IL(α)、電流値IL(γ)、電流値IL(β)、及び電流値IL(δ)から、リアクトル電流ILの電流値の平均値を算出(取得)する。
【0118】
平均値取得部722cにおける平均値の算出についてより具体的に説明する。平均値取得部722cは、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態である場合(図15(b)参照)には、電流値IL(γ)と電流値IL(β)との平均値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。
【0119】
また、平均値取得部722cは、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態である場合(図15(c)参照)には、電流値IL(α)と電流値IL(β)との平均値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。
【0120】
さらに、平均値取得部722cは、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態である場合(図15(d)参照)には、電流値IL(α)と電流値IL(δ)との平均値を、リアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。
【0121】
そして、平均値取得部722cは、上記のようにして算出したリアクトル電流ILの電流値の平均値を示す信号をフィードバック制御部124に送信する。
【0122】
以上説明したように、昇圧コンバータ制御装置7は、起動タイミング生成部722a及びAD変換器123が取得したリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態を判定し、その判定の結果に応じて、起動タイミング生成部722a及びAD変換器123が取得したリアクトル電流ILの電流値からリアクトル電流ILの電流値の平均値を算出する。
【0123】
このため、リアクトル電流ILの電流値の正確な平均値を得ることができる。したがって、この昇圧コンバータ制御装置7によれば、正確な平均値を用いることによって、昇圧コンバータにおける適切な電流制御が可能となる。また、昇圧コンバータ制御装置7によれば、起動タイミング生成部722a及びAD変換器123によって取得したリアクトル電流ILの電流値から、リアクトル電流ILの電流状態を判定すると共に、リアクトル電流ILの電流値の平均値を算出する。このため、例えば、リアクトル電流ILの電流状態を判定した後に改めてリアクトル電流ILをサンプリングしてその電流値の平均値を算出する場合に比べて、リアクトル電流ILの電流状態を判定してから平均値を得るまでの時間を短縮することができる。その結果、リアクトル電流ILの実際の電流状態に即した平均値を得ることが可能となる。
【0124】
[第4実施形態]
【0125】
図14は、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の第4実施形態の構成を示す図である。図14に示されるように、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置9は、昇圧コンバータ2を制御するためのものである。
【0126】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置9は、制御部12に換えて制御部92を備える点で、第1実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1と異なる。また、制御部92は、AD制御部122に換えてAD制御部922を備える点で、制御部12と異なる。
【0127】
AD制御部922は、キャリア生成部121から送信されるキャリアに基づいて、リアクトル電流ILのサンプリングを行うためのサンプリングタイミングを生成し、生成したサンプリングタイミングを示す信号をAD変換器123に送信する。
【0128】
AD変換器123は、AD制御部922が生成したサンプリングタイミングに応じて起動し、電流検出部11を用いたリアクトル電流ILのサンプリングを行う。そして、AD変換器123は、そのサンプリングにより得られたリアクトル電流ILの電流値を示すデジタル信号(ILAD値)を、AD制御部922に送信する。
【0129】
AD制御部922は、AD変換器123からのリアクトル電流ILの電流値に基づいてリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得する。そして、AD制御部922は、取得した平均値を示す信号をフィードバック制御部124へ送信する。
【0130】
ここで、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置9においても、リアクトル電流ILの電流値の正確な平均値を得るためには、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する必要がある。
【0131】
本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置9も、リアクトル電流ILの電流状態を判定してリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得するための構成を備えている。すなわち、昇圧コンバータ制御装置9において、AD制御部922は、図14に示されるように、起動タイミング生成部922aと算出部922bと電流状態判定部922cと平均値取得部922dとを備えている。
【0132】
起動タイミング生成部922aは、キャリア生成部121からのキャリアに基づき、AD変換器123を起動してリアクトル電流ILのサンプリングを行うためのサンプリングタイミングを生成する。
【0133】
より具体的には、起動タイミング生成部922aは、キャリアの頂点の時間をサンプリングタイミングとし、そのサンプリングタイミングを示す信号を生成してAD変換器123に送信する。さらに、起動タイミング生成部922aは、必要に応じて、キャリアの頂点の時間から時間Tだけ遅れた時間を別のサンプリングタイミングとし、その別のサンプリングタイミングを示す信号を生成してAD変換器123へさらに送信する。時間Tは、例えば、図15(a)に示されるように、キャリアの周期TS(例えば10kHz程度)の1/8程度(例えば12μs程度)とすることができる。
【0134】
ここで、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置9は、後述するように、リアクトル電流ILの時間変化の割合に基づいてリアクトル電流ILの電流状態を判定する。リアクトル電流ILの時間変化の割合を算出するためには、少なくとも2つの異なる時間におけるリアクトル電流ILの電流値を取得する必要がある。
【0135】
このため、2つの異なる時間におけるリアクトル電流ILの電流値がいずれも得られていない場合と、2つの異なる時間におけるリアクトル電流ILの電流値の一方が予め得られている場合とによって動作が異なる。
【0136】
2つの異なる時間におけるリアクトル電流ILの電流値がいずれも得られていない場合には、例えば図15(b)に示されるように、起動タイミング生成部922aは、キャリアの谷の時間Mと、その時間Mから時間Tだけ遅れた時間Pとの2つ時間をサンプリングタイミングとして、AD変換器123に送信する。
【0137】
AD変換器123は、それらの2つの時間M,Pで起動して、リアクトル電流ILのサンプリングを行なうことにより、それらの2つの時間M,Pにおけるリアクトル電流ILの電流値を取得する。そして、算出部922bは、それらの2つの時間M,Pにおけるリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの電流値の時間変化の割合(すなわち図15(b)におけるリアクトル電流ILの傾き)を算出する。
【0138】
より具体的には、算出部922bは、(時間Pにおける電流値−時間Mにおける電流値)/(時間P−時間M)を求めることにより、リアクトル電流ILの傾きを算出する。算出部922bは、算出したリアクトル電流ILの傾きに基づいて、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングの各タイミング、すなわち、時間K、時間L、時間Q(時間S)、及び時間R(時間U)におけるリアクトル電流ILの電流値を算出する。
【0139】
一方、2つの異なる時間におけるリアクトル電流ILの電流値の一方が予め得られている場合、すなわち、図15(c)に示される時間U(時間R)におけるリアクトル電流ILの電流値が、上記のようにして既に得られている場合には、キャリアの山の時間Vにおけるリアクトル電流ILの電流値のみを新たに取得すればよい。
【0140】
このため、起動タイミング生成部922aは、キャリアの山の時間Vをサンプリングタイミングとして、AD変換器123に送信する。AD変換器123は、その時間Vで起動してリアクトル電流ILのサンプリングを行うことにより、時間Vにおけるリアクトル電流ILの電流値を取得する。
【0141】
そして、算出部922bは、既に得られている時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値と、新たに取得した時間Vにおけるリアクトル電流ILの電流値とに基づいて、リアクトル電流ILの傾きを算出する。より具体的には、算出部922bは、(時間Vにおける電流値−時間Uにおける電流値)/(時間V−時間U)を求めることにより、リアクトル電流ILの傾きを算出する。
【0142】
算出部922bは、算出したリアクトル電流ILの傾きに基づいて、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22のスイッチングの各タイミング、すなわち、時間Y及び時間Zにおけるリアクトル電流ILの電流値を算出する。算出部922bは、算出したリアクトル電流ILの電流値を示す信号を電流状態判定部922cに送信する。
【0143】
ここで、時間Uは、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフとなるデッドタイムのうちの第1のデッドタイムDT1の終了の時間である。そして、時間Vは、第1のデッドタイムDT1の次のデッドタイムである第2のデッドタイムDT2と、第1のデッドタイムDT1との間におけるキャリアの頂点の時間である。
【0144】
したがって、AD変換器123及び起動タイミング生成部922aは、上アームトランジスタ21及び下アームトランジスタ22が共にオフであるデットタイムのうちの第1のデッドタイムDT1の終了の時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値が予め取得されている場合には、デッドタイムのうちの第1のデッドタイムDT1の次の第2のデッドタイムDT2と第1のデッドタイムDT1との間のキャリアの頂点の時間Vのみにおいてリアクトル電流ILのサンプリングを行うことにより、その時間Vにおけるリアクトル電流ILの電流値を取得する。
【0145】
また、算出部922bは、第1のデッドタイムDT1の終了の時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値が予め得られている場合には、第1のデッドタイムDT1の終了の時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値と時間Vにおけるリアクトル電流ILの電流値とに基づいて、リアクトル電流ILの電流値の時間変化の割合を算出する。
【0146】
電流状態判定部922cは、算出部922bが取得したリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定し、判定の結果を示す信号を平均値取得部922dに送信する。電流状態判定部922cの動作について、より具体的に説明する。
【0147】
電流状態判定部922cは、図15(b)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0未満であるときに、時間Rにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A以上であれば、リアクトル電流ILの電流状態を力行状態と判定する。また、電流状態判定部522cは、図15(c)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0より大きいときに、時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A以上であれば、リアクトル電流ILの電流状態を力行状態と判定する。
【0148】
一方、電流状態判定部922cは、図16(b)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0未満であるときに、時間Kにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号と時間Qにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号とが異なれば、リアクトル電流ILの電流状態をゼロクロス状態と判定する。また、電流状態判定部922cは、図16(c)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きいときに、時間Sにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号と時間Yにおけるリアクトル電流ILの電流値の符号とが異なれば、リアクトル電流ILの電流状態をゼロクロス状態と判定する。
【0149】
他方、電流状態判定部922cは、図17(b)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0未満であるとき、時間Lにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A未満であれば、リアクトル電流ILの電流状態を回生状態と判定する。また、電流状態判定部922cは、図17(c)に示されるように、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きいとき、時間Zにおけるリアクトル電流ILの電流値が0A未満であれば、リアクトル電流ILの電流状態を回生状態と判定する。
【0150】
電流状態判定部922cは、以上のようにして判定したリアクトル電流ILの電流状態を示す信号を平均値取得部922dに送信する。
【0151】
平均値取得部922dは、電流状態判定部922cの判定の結果に応じて、算出部922bが算出したリアクトル電流ILの電流値からリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得する。平均値取得部922dの動作についてより具体的に説明する。
【0152】
平均値取得部922dは、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態であり、リアクトル電流ILの傾きが0未満である場合(図15(b)参照)には、(時間Kにおけるリアクトル電流ILの電流値)+(リアクトル電流ILの傾き)×(時間R−時間K)/2をリアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。また、平均値取得部922dは、リアクトル電流ILの電流状態が力行状態であり、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きい場合(図15(c)参照)には、(時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値)+(リアクトル電流ILの傾き)×(時間Y−時間U)/2をリアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。
【0153】
一方、平均値取得部922dは、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態であり、リアクトル電流ILの傾きが0未満である場合(図16(b)参照)には、(時間Kにおけるリアクトル電流ILの電流値)+(リアクトル電流ILの傾き)×(時間Q−時間K)/2をリアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。また、平均値取得部922dは、リアクトル電流ILの電流状態がゼロクロス状態であり、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きい場合(図16(c参照))には、(時間Sにおけるリアクトル電流ILの電流値)+(リアクトル電流ILの傾き)×(時間Y−時間S)/2をリアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。
【0154】
他方、平均値取得部922dは、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態であり、リアクトル電流ILの傾きが0未満である場合(図17(b)参照)には、(時間Lにおけるリアクトル電流ILの電流値)+(リアクトル電流ILの傾き)×(時間Q−時間L)/2をリアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。また、平均値取得部922dは、リアクトル電流ILの電流状態が回生状態であり、リアクトル電流ILの傾きが0よりも大きい場合(図17(c)参照)には、(時間Sにおけるリアクトル電流ILの電流値)+(リアクトル電流ILの傾き)×(時間Z−時間S)/2をリアクトル電流ILの電流値の平均値として算出する。
【0155】
平均値取得部922dは、以上のようにして算出したリアクトル電流ILの電流値の平均値を示す信号をフィードバック制御部124に送信する。
【0156】
以上説明したように、昇圧コンバータ制御装置9は、起動タイミング生成部922a及びAD変換器123が取得したリアクトル電流ILの電流値に基づいて、リアクトル電流ILの電流状態を判定し、その判定の結果に応じて、起動タイミング生成部922a及びAD変換器123が取得したリアクトル電流ILの電流値からリアクトル電流ILの電流値の平均値を取得する。このため、リアクトル電流ILの電流値の正確な平均値を得ることができる。したがって、この昇圧コンバータ制御装置9によれば、正確な平均値を用いることによって、昇圧コンバータ2における適切な電流制御が可能となる。
【0157】
また、昇圧コンバータ制御装置9によれば、リアクトル電流ILの時間変化の割合を算出するに際して、第1のデッドタイムDT1の終了の時間Uにおけるリアクトル電流ILの電流値が予め取得されている場合には、キャリアの頂点の時間Vでのみサンプリングを行えばよい。このため、例えば、リアクトル電流ILの時間変化の割合を算出するたびに、キャリアの頂点の時間とその時間から時間Tだけ遅れた時間との2点でサンプリングする場合に比べて、制御周期を高速化することができると共に、デューティを拡張することが可能となる。
【0158】
以上の第3及び第4実施形態は、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置の一実施形態を説明したものであり、本発明に係る昇圧コンバータ制御装置は、上記の昇圧コンバータ制御装置7及び昇圧コンバータ制御装置9に限定されるものではない。本発明に係る昇圧コンバータ制御装置は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、昇圧コンバータ制御装置7及び昇圧コンバータ制御装置9を変形することができる。
【符号の説明】
【0159】
1,5,7,9…昇圧コンバータ制御装置、2…昇圧コンバータ、21…上アームトランジスタ、22…下アームトランジスタ、23…リアクトル、122a…起動タイミング生成部(平均値取得手段、タイミング修正手段)、122b…電流状態判定部(電流状態判定手段)、123…AD変換器(平均値取得手段、電流値取得手段)、522a…起動タイミング生成部(平均値取得手段、電流値取得手段)、522b…算出部(算出手段、平均値取得手段)、522c…電流状態判定部(平均値取得手段、電流状態判定手段)、722a…起動タイミング生成部(電流値取得手段)、722b…電流状態判定部(電流状態判定手段)、722c…平均値取得部(平均値取得手段)、922a…起動タイミング生成部(電流値取得手段)、922b…算出部(算出手段)、922c…電流状態判定部(電流状態判定手段)、922d…平均値取得部(平均値取得手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続部に接続されたリアクトルとを有する昇圧コンバータを制御するための昇圧コンバータ制御装置であって、
前記リアクトルに流れるリアクトル電流のサンプリングを所定のタイミングで行うことにより前記リアクトル電流の平均値を取得する平均値取得手段と、
前記リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する電流状態判定手段と、
前記電流状態判定手段の判定結果に応じて前記所定のタイミングを修正するタイミング修正手段と、
を備える昇圧コンバータ制御装置。
【請求項2】
前記電流状態判定手段は、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子が共にオフであるときの前記リアクトル電流に基づいて、前記リアクトル電流の前記電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する請求項1に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項3】
前記電流状態判定手段は、前記リアクトル電流の時間変化の割合に基づいて、前記リアクトル電流の前記電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する請求項1に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項4】
第1及び第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との接続部に接続されたリアクトルとを有する昇圧コンバータを制御するための昇圧コンバータ制御装置であって、
前記リアクトルに流れるリアクトル電流のサンプリングを行うことにより前記リアクトル電流の電流値を取得する電流値取得手段と、
前記電流値取得手段が取得した前記リアクトル電流の電流値に基づいて、前記リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する電流状態判定手段と、
前記電流状態判定手段の判定の結果に応じて、前記電流値取得手段が取得した前記リアクトル電流の電流値から前記リアクトル電流の電流値の平均値を取得する平均値取得手段と、
を備える昇圧コンバータ制御装置。
【請求項5】
前記電流値取得手段は、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子が共にオフであるデッドタイムのうちの第1のデットタイムの開始及び終了と、前記デッドタイムのうちの前記第1のデッドタイムの次の第2のデッドタイムの開始及び終了との各時間において、前記リアクトル電流のサンプリングを行うことにより、前記各時間における前記リアクトル電流の電流値を取得する請求項4に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項6】
前記電流値取得手段が取得した前記リアクトル電流の電流値に基づいて、前記リアクトル電流の時間変化の割合を算出する算出手段をさらに備え、
前記電流状態判定手段は、前記算出手段が算出した前記リアクトル電流の時間変化の割合に基づいて、前記リアクトル電流の電流状態が、力行状態、ゼロクロス状態、及び回生状態のいずれであるかを判定する請求項4に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項7】
前記電流値取得手段は、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子が共にオフであるデットタイムのうちの第1のデッドタイムの終了の時間における前記リアクトル電流の電流値が予め取得されている場合には、前記デッドタイムのうちの前記第1のデッドタイムの次の第2のデッドタイムと前記第1のデッドタイムとの間の所定の時間において前記リアクトル電流のサンプリングを行うことにより、前記所定の時間における前記リアクトル電流の電流値を取得し、
前記算出手段は、前記第1のデッドタイムの終了の時間における前記リアクトル電流の電流値が予め得られている場合には、前記第1のデッドタイムの終了の時間における前記リアクトル電流の電流値と前記所定の時間における前記リアクトル電流の電流値とに基づいて、前記リアクトル電流の電流値の時間変化の割合を算出し、
前記所定の時間は、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子のスイッチングのタイミングの基準となる基準信号の頂点の時間である請求項6に記載の昇圧コンバータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−139084(P2012−139084A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97436(P2011−97436)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】