説明

昇圧形コンバータ

【課題】 電力効率にほとんど影響を与えることなく入力電圧に対する出力電圧の昇圧率を向上させることができる昇圧形コンバータを提供すること。
【解決手段】 二つの入力端子の間に直列接続された第1のインダクタ4とスイッチ素子5と、スイッチ素子5と閉回路を構成するよう直列接続の第1の逆放電防止用素子7と第1のコンデンサ8と、第1のコンデンサ8と閉回路を構成するように直列接続の第2のインダクタ9と第2の逆放電防止用素子10と第2のコンデンサ11と、第1のインダクタ4とスイッチ素子5との接続点Aと、第2のインダクタ9と第2の逆放電防止用素子10との接続点Bとの間に接続された第3のコンデンサ12と、スイッチ素子5の動作を制御する制御回路6とを備え、前記直流出力電圧は、第1のコンデンサ8の電圧と第3のコンデンサ12の電圧との和にほぼ等しい電圧であることを特徴とする昇圧形コンバータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流入力電圧をそれよりも高い直流出力電圧に変換するのに適した昇圧形コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
負荷が必要とする直流出力電圧よりも直流入力電圧が低い場合には、その直流入力電圧を所望の直流電圧に昇圧する昇圧形コンバータが用いられることが多い。昇圧形コンバータは種々の回路構成のものが既に提案されているが、比較的小型化し易く、電力損失が比較的小さい昇圧形コンバータとしてインダクタとスイッチ素子とコンデンサとを組み合わせた非絶縁型の回路構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成の昇圧形コンバータについて図6により説明すると、入力端子51と52には蓄電池などからなる直流入力電源53が接続されている。入力端子51と52間にはインダクタ54とFETのようなスイッチ素子55が接続されている。スイッチ素子55は制御回路によって所望の時比率でオンオフ制御される。スイッチ素子55と並列になるように逆放電防止用ダイオード57及びコンデンサ58が接続され、また、そのコンデンサ58は出力端子59、60の間に接続されている。出力端子59、60間には負荷61が接続されている。
【0004】
制御回路56により所定の時比率でスイッチ素子55がオンオフ制御される場合、スイッチ素子55がオンのときにインダクタ54にエネルギーが蓄えられる。次に、スイッチ素子55がオフになるとき、直流入力電源53の電圧にインダクタ54の電圧が重畳されてコンデンサ58を充電する。したがって、コンデンサ58は直流入力電源53の電圧とインダクタ54の電圧との和にほぼ等しい電圧まで充電され、コンデンサ58の昇圧された電圧が負荷61に供給される。逆放電防止用ダイオード57は、次にスイッチ素子55がオンするときに、コンデンサ58の充電電荷がスイッチ素子55を通して放電されるのを防止する。
【0005】
ここで、1周期に対するスイッチ素子55のオンの期間の比率、つまり、時比率をDrとし、直流入力電源53の電圧をVi、出力端子59と60との間の出力電圧をVoとすると、出力電圧Voは、Vo=Vi/(1−Dr)の式で表される。この式からも、出力電圧Voの大きさはスイッチ素子55の時比率Drによって制御されることがわかる。また、かかる回路構成の昇圧形コンバータは、同様に第2のインダクタと第2のスイッチ素子と第2のコンデンサからなる2段目の昇圧回路をコンデンサ58の出力側に接続することによって、更に高い直流出力電圧を得ることができるという利便性もある。
【0006】
また、前掲の特許文献1に開示されている昇圧形コンバータに比べて、昇圧率を大きくできるタップ形インダクタ(又はカップリング形インダクタ)方式の昇圧形コンバータが知られている(例えば、特許文献2参照)。このタップ形インダクタ方式の昇圧形コンバータは、図7に示すように、互いに直列で磁気的に結合されている第1の巻線54Aと第2の巻線54Bとを有するインダクタ54を用い、第1の巻線54Aと第2の巻線54Bとの接続点にスイッチ素子55を接続しており、他の構成は図6と同様である。
【0007】
第2の巻線54Bは、第1の巻線54Aの巻数に対して1よりも大きな所定の巻数比Xとなる巻数を有する。したがって、スイッチ素子55が所望の時比率Drでスイッチングし、スイッチ素子55がオンするとき、インダクタ54の第1の巻線54Aに生じる電圧をVL1とすると、スイッチ素子55がオフするときにインダクタ54の巻線54Aと巻線54Bにそれぞれ発生する電圧の和は(1+X)・VL1・Dr/(1−Dr)となり、直流入力電源53の電圧Viによりも高い電圧Vi(1+X・Dr)/(1−Dr)にほぼ等しい電圧が出力端子59、60間に印加される。したがって、特許文献2に開示されている昇圧形コンバータは、特許文献1に開示されている昇圧形コンバータに比べて大きな昇圧比率を得ることができる。
【特許文献1】特開2001−251849号公報
【特許文献2】特開2006−121850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前者の昇圧形コンバータは、前記スイッチ素子の時比率を大きくするほど高い出力電圧を得ることができるが、負荷が要求する電力を供給するように制御されるので、前記スイッチ素子の時比率をあまり大きくすることはできず、通常は最大の時比率を0.5程度に設定することが多い。この場合には、直流入力電圧のほぼ2倍程度の直流出力電圧を得ることができるだけであり、昇圧率をそれ程大きくできないという問題点がある。
【0009】
前述した昇圧形コンバータのうちの後者のものは、大きな昇圧率を得ることができるという利点はあるものの、インダクタ54の第1の巻線54Aと第2の巻線54Bとの間に漏洩インダクタンスが生じてしまい、この漏洩インダクタンスに起因して、スイッチ素子のスイッチング時にサージ電圧が発生したり、効率が低下するという欠点がある。また、第1の巻線54Aと第2の巻線54Bとを有するインダクタを用いるために、コンバータの小型化が難しく、コストアップになるという問題もある。特に、インダクタ54を流れる電流が大きいほど、この欠点は顕著になる。さらに、漏洩インダクタンスに起因するサージ電圧を小さくするためにソフトスイッチング技術を採用することが考えられるが、この場合には設計が難しい、また、動作範囲が限定されるなどの問題がある。
【0010】
本発明は係る従来の欠点を解決することを課題にし、前述した前者の昇圧形コンバータに別途にインダクタとコンデンサとを追加するだけで、昇圧率を向上させることができるところに特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、入力端子間に印加される直流入力電圧に比べて高い直流出力電圧を出力端子間に出力する昇圧形コンバータにおいて、二つの入力端子の間に互いに直列に接続される第1のインダクタとスイッチ素子と、前記スイッチ素子と閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第1の逆放電防止用素子と第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサと閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第2のインダクタと第2の逆放電防止用素子と第2のコンデンサと、前記第1のインダクタの一端と前記スイッチ素子の一端とが接続される点Aと、前記第2のインダクタの一端と前記第2の逆放電防止用素子のアノード側とが接続される点Bとの間に接続される第3のコンデンサと、前記スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御回路とを備え、前記直流出力電圧に等しい電圧を与える前記第2のコンデンサの電圧は、前記第1のコンデンサの電圧と前記第3のコンデンサの電圧との和に相当する電圧であることを特徴とする昇圧形コンバータを提供する。
【0012】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記第1のコンデンサと前記第3のコンデンサのキャパシタンスは実質的に等しいことを特徴とする昇圧形コンバータを提供する。
【0013】
第3の発明は、入力端子間に印加される直流入力電圧に比べて高い直流出力電圧を出力端子間に出力する昇圧形コンバータにおいて、二つの入力端子の間に互いに直列に接続される第1のインダクタとスイッチ素子と、前記スイッチ素子と閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第1の逆放電防止用素子と第1のコンデンサと、互いに直列に接続され、磁気的に結合される第1の巻線と第2の巻線とを有する第2のインダクタと、前記第1のコンデンサと該第1のコンデンサに直列に接続された前記第2のインダクタと閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第2の逆放電防止用素子と第2のコンデンサと、前記第1のインダクタの一端と前記スイッチ素子の一端とが接続される点Aと、前記第2のインダクタの前記第1の巻線と前記第2の巻線とが接続される点Cとの間に接続される第3のコンデンサと、前記スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御回路とを備え、前記直流出力電圧に等しい電圧を与える前記第2のコンデンサの電圧は、前記第1のコンデンサの電圧と前記第3のコンデンサの電圧との和の電圧よりも高い電圧であることを特徴とする昇圧形コンバータを提供する。
【0014】
第4の発明は、前記第3の発明において、前記第2のインダクタの前記第1の巻線の巻数をN1、前記第2の巻線の巻数をN2とし、それらの巻数比(N2/N1)をNとするとき、前記第3のコンデンサのキャパシタンスは、前記第1のコンデンサのキャパシタンスの(1+N)倍であることを特徴とする昇圧形コンバータを提供する。
【0015】
第5の発明は、前記第1の発明ないし前記第4の発明のいずれかにおいて、前記第1の逆放電防止用素子及び前記第2の逆放電防止用素子の双方又はいずれか一方は、ダイオード又はFETであり、該FETは前記スイッチ素子がオンのときにオフ、オフのときにオンするように、前記制御回路により制御されることを特徴とする昇圧形コンバータを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力効率にほとんど影響を与えることなく(効率よく)入力電圧に対する出力電圧の昇圧率を向上させることができる。
【0017】
また、第1のインダクタに比べて流れる電流が小さな第2のインダクタとして、互いに磁気結合された第1の巻線と第2の巻線とを有するインダクタを用いているので、入力電圧に対する出力電圧の昇圧率を更に大きくすることができると共に、昇圧率を高くするのに伴い第2の巻線を流れる電流は小さくなるので、インダクタのリーケージインダクタンスに起因する電力損失やサージ電圧などを抑制できる。
【0018】
また、逆放電防止用素子としてFETを用いることによって、順方向電圧降下を小さくできるので、電力効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
[実施形態1]
本発明に係る実施形態1の第1の昇圧形コンバータ100について、図1により説明する。この昇圧形コンバータ100の二つの入力端子1、2には直流入力電源3が接続される。直流入力電源3は蓄電池、あるいは商用交流電源又は発電機とこれらの交流電圧を直流に変換する整流回路などからなる直流電源である。
【0021】
入力端子1、2間には第1のインダクタ4と電界効果トランジスタ(以下、FETと言う。)のような順方向電圧降下の小さいスイッチ素子5とが互いに直列になるように接続されている。スイッチ素子5の制御端子には、スイッチ素子5のスイッチング動作を時比率で制御する制御回路6が接続されている。スイッチ素子5と閉回路を構成するように、第1の逆放電防止用素子7と第1のコンデンサ8とが互いに直列に接続されている。第1のコンデンサ8と閉回路を構成するように、第2のインダクタ9と第2の逆放電防止用素子10と第2のコンデンサ11とが互いに直列に接続されている。実施形態1では、第1の逆放電防止用素子7及び第2の逆放電防止用素子10としてダイオードを用いている。
【0022】
第1のインダクタ4の一端とスイッチ素子5の一端と第1の逆放電防止用素子7のアノードとが接続された点Aに第3のコンデンサ12の一端が接続され、第2のインダクタ9の一端と第2の逆放電防止用素子10のアノードとが接続された点Bに第3のコンデンサ12の他端が接続されている。また、出力端子13と14との間には第2のコンデンサ11が接続されると共に、負荷15が接続される。この回路の条件として、第1のインダクタ4、第2のインダクタ9は電流源と見做せるほど大きなインダクタンスを有し、また、第2のコンデンサ11は電圧源と見做せるほど大きなキャパシタンスを有する。理由については後述する。第1のコンデンサ8と第3のコンデンサ12のキャパシタンスは実質的に等しいことが好ましい。なお、通常のキャパシタンスの個々のばらつき程度であれば差し支えない。
【0023】
また、以下の動作説明では、スイッチ素子5及び逆放電防止用素子7と10は理想素子で、スイッチング時間はゼロ、順方向電圧降下がゼロであるものと仮定し、第1のインダクタ4及び第2のインダクタ9を流れる電流は直流電流が重畳されて連続的に流れる電流であるものとする。動作の過程で、スイッチ素子5がオフのときには、各コンデンサが図1で図示の極性に充電されており、第1のインダクタ4及び第2のインダクタ9には矢印方向の電流が流れているものとする。物理的性質から、各周期における第1のインダクタ4及び第2のインダクタ9の平均電圧はゼロであり、第1のコンデンサ8と第2のコンデンサ11と第3のコンデンサ12それぞれの平均電流はゼロとなる。
【0024】
スイッチ素子5が時比率Drでスイッチングしているとき、スイッチ素子5がオンすると、電流は入力端子1から第1のインダクタ4及びスイッチ素子5を介して入力端子2へ矢印方向に流れ、入力端子1と2との間の入力電圧Viが第1のインダクタ4に印加され、第1のインダクタ4にエネルギーが蓄えられる。このとき、第1の逆放電防止用素子7の働きによって第1のコンデンサ8の電荷がスイッチ素子5を通して放電されることは無い。次に、スイッチ素子5がオフになると、第1のインダクタ4に蓄えられた前記エネルギーは第1の逆放電防止用素子7を通して放出され、第1のコンデンサ8を充電する。このときの第1のコンデンサ8の電圧をVc1とすると、第1のインダクタ4には(Vc1−Vi)に等しい電圧が印加される。前述したように、各周期の初めと終わりにおける第1のコンデンサ8の電圧変化はゼロであるから、Vi=(1−Dr)Vc1の式が成り立ち、スイッチ素子5がオフのときの第1のコンデンサ8の電圧Vc1は、Vc1=Vi/(1−Dr)の式(1)で表される。
【0025】
他方では、スイッチ素子5がオンになるとき、第1のコンデンサ8と第2のインダクタ9と第3のコンデンサ12とスイッチ素子5とを含む閉回路が構成され、第2のインダクタ9を通して矢印方向に電流が流れる。前記したように第2のインダクタ9を電流源と見做すとき、第3のコンデンサ12は充電となり、第1のコンデンサ8の電荷の一部分が第2のインダクタ9を通して第3のコンデンサ12に移動することになる。このとき第2のインダクタ9にはその右側端を正とする極性の電圧(Vc3−Vc1)が印加される。また、スイッチ素子5がオフのときには、第1の逆放電防止用素子7が導通するので、第3のコンデンサ12と導通している第1の逆放電防止用素子7と第2のインダクタ9とを含む閉回路が形成され、この閉回路では第3のコンデンサ12の電圧Vc3が第2のインダクタ9に印加される。
【0026】
ここで、第2のインダクタ9の電圧に着目すると、スイッチ素子5がオンのときには、第2のインダクタ9に電圧(Vc3−Vc1)が印加され、スイッチ素子5がオフのときには、第2のインダクタ9の電圧は第3のコンデンサ12の電圧Vc3に等しくなる。前述したように、各周期における第2のインダクタ9の平均電圧はゼロであるから、(Vc3−Vc1)Dr+Vc3(1−Dr)=0の式(2)が成り立つ。出力端子13と14間の出力電圧Voは、スイッチ素子5のオフときにおける第1のコンデンサ8の電圧Vc1と第2のインダクタ9の電圧となる第3のコンデンサ12の電圧Vc3との和の電圧であるので、Vo=Vc1+Vc3の式(3)で表せる。つまり、出力端子13と14との間の出力電圧Voは、第1のコンデンサ8の電圧Vc1と第3のコンデンサ12の電圧Vc3との和に相当する電圧になる。
【0027】
前記式(2)に、前記式(1)と前記式(3)を代入することによって、出力電圧Voは、Vo=(1+Dr)Vi/(1−Dr)の式(4)で表される。前掲の特許文献1の発明に開示されている従来の昇圧形コンバータの出力電圧Voは、本明細書の段落(0005)で説明したように、Vo=Vi/(1−Dr)であるので、この昇圧形コンバータ100の昇圧率(出力電圧Vo/入力電圧Vi)は図6の従来の昇圧形コンバータに比べて、(1+Dr)倍大きくなる。
【0028】
前記式(4)に従って算出した本発明の昇圧形コンバータ100の出力電圧Voの一例を図2の曲線Aで示し、Vo=Vi/(1−Dr)の式に従って算出した従来の昇圧形コンバータの出力電圧Voの一例を図2の曲線Bで示す。図2からも明らかなように、入力電圧Viが同じであると、本発明の昇圧形コンバータ100は、図6の従来の昇圧形コンバータに比べて大きな出力電圧を得ることができる。つまり、本発明の昇圧形コンバータ100の昇圧率は図6の従来の昇圧形コンバータよりも大きくなる。
【0029】
ここで、第1のコンデンサ8のキャパシタンスC1と第3のコンデンサ12のキャパシタンスC3とが実質的に等しいことが好ましい理由について説明する。理解し易くするために、第1のインダクタ4のインダクタンスL1及び第2のインダクタ9のインダクタンスL2は電流源と見做せるほど大きな値であるものとして説明する。第1のインダクタ4を流れる電流をI1、第2のインダクタ9を流れる電流をI2とする。
【0030】
前述したように、スイッチ素子5がオンのとき、第1のコンデンサ8→第2のインダクタ9→第3のコンデンサ12→スイッチ素子5→第1のコンデンサ8の閉回路を電流が流れる。この閉回路には第2のインダクタ9のインダクタンスL2が存在し、第1のコンデンサ8と第3のコンデンサ12とには等しい電流I2が流れ、図1に示した極性で、第1のコンデンサ8は放電し、第3のコンデンサ12は充電される。このときの第1のコンデンサ8の放電積分量と第3のコンデンサ12の充電積分量とは、放電電流と充電電流とがI2であり、互いに等しいから当然に等しくなる。
【0031】
次に、スイッチ素子5がオフになると、入力端子1→第1のインダクタ4→点A→第1の逆放電防止用素子7→第1のコンデンサ8→入力端子2→直流入力電源3→入力端子1の閉回路で電流が流れると共に、入力端子1→第1のインダクタ4→点A→第3のコンデンサ12→点B→第2の逆放電防止用素子10→第2のコンデンサ11又は出力端子13→負荷15→出力端子14→入力端子2→直流入力電源3→入力端子1の閉回路で電流が流れる。したがって、スイッチ素子5がオフの区間では、スイッチ素子5がオンの区間とは逆に、第1のコンデンサ8は充電され、第3のコンデンサ12は放電される。
【0032】
前述したように、スイッチ素子5のオン期間では、第1のコンデンサ8の放電積分量と第3のコンデンサ12の充電積分量とが等しいので、スイッチ素子5のオフ期間でも、第1のコンデンサ8の充電積分量と第3のコンデンサ12の放電積分量とは等しくなければならない。したがって、スイッチ素子5のオン期間、オフ期間共にコンデンサ8とコンデンサ12には等しい電流が流れる。前述したVo=Vc1+Vc3の式(3)が成立するには、スイッチ素子5のオン期間の第1のコンデンサ8の電圧低下と第3のコンデンサ12の電圧上昇とがほぼ等しく、また、スイッチ素子5のオフ期間の第1のコンデンサ8の電圧上昇と第3のコンデンサ12の電圧低下とがほぼ等しくなることが必要である。このためには、第1のコンデンサ8のキャパシタンスC1と第3のコンデンサ12のキャパシタンスC3とが実質的に等しいことが好ましい。これらのキャパシタンスC1とC3とが異なると、スイッチ素子5のオン期間では、キャパシタンスの小さなコンデンサの電圧変化が大きくなるのに対して、キャパシタンスの大きなコンデンサの電圧変化は小さくなるので、スイッチ素子5がオフしたときに前記式(3)が成り立たず、第1のコンデンサ8と第3のコンデンサ12とを含む閉回路に大きな過渡的な電流が流れるので好ましくない。なお、通常のコンデンサ個々のキャパシタンスのばらつき程度で差異があっても差し支えない。
【0033】
[実施形態2]
図3に示す本発明の実施形態2にかかる昇圧形コンバータ200は、効率を高めるために、第1の逆放電防止用素子7としてFETを用い、そのFETを制御回路6によってオンオフ制御している。昇圧形コンバータ200の他の回路構成は昇圧形コンバータ100と同様である。この実施形態2の説明では、以下、第1の逆放電防止用素子7をFET7という。制御回路6は、スイッチ素子5がオンのとき、FET7はオフで、スイッチ素子5がオフのとき、FET7がオンであるように制御する。したがって、スイッチ素子5とFET7は同一のスイッチング周波数で相補的に動作を行なう。
【0034】
この昇圧形コンバータ200は、FET7の動作を除いて昇圧形コンバータ100の動作と同じであり、第1の逆放電防止用素子7がダイオードの場合と同様な動作を行なうので、動作についての説明は省略する。昇圧形コンバータ200も出力電圧Voと入力電圧Viとの関係は前記式(4)と同様に、Vo=(1+Dr)Vi/(1−Dr)となり、図6に示した従来の昇圧形コンバータに比べて、入力電圧Viに対する出力電圧Voの昇圧率は(1+Dr)倍大きくなる。また、逆放電防止用素子としてFET7を用いており、第1の逆放電防止用素子7としてダイオードを用いた場合に比べて順方向電圧降下が小さくなるから、この昇圧形コンバータ200は実施形態1の昇圧形コンバータ100に比べて効率が高くなる。
【0035】
[実施形態3]
図4に示す本発明の実施形態3にかかる昇圧形コンバータ300は、更に効率を高めるために、第2の逆放電防止用素子10としてFETを用い、そのFETを制御回路6によってオンオフ制御している。昇圧形コンバータ300の他の回路構成は昇圧形コンバータ100、200と同様である。この実施形態3の説明では、以下、第2の逆放電防止用素子10をFET10という。制御回路6は、スイッチ素子5がオンのとき、FET10はオフで、スイッチ素子5がオフのとき、FET10がオンであるように制御する。したがって、スイッチ素子5とFET10は同一のスイッチング周波数で相補的に動作を行なう。FET7と10はほぼ同時にオンオフ動作を行なうのが高効率を得る上で好ましいが、必ずしも同時にオンオフ動作を行なう必要は無い。
【0036】
この昇圧形コンバータ300は、FET10の動作を除いて昇圧形コンバータ100の動作と同じであり、第2の逆放電防止用素子10がダイオードの場合とほぼ同様な動作を行なうので、動作についての説明は省略する。昇圧形コンバータ300も出力電圧Voと入力電圧Viとの関係は前記式(4)と同様に、Vo=(1+Dr)Vi/(1−Dr)となり、図6に示した従来の昇圧形コンバータに比べて、入力電圧Viに対する出力電圧Voの昇圧率は(1+Dr)倍大きくなる。また、第2の逆放電防止用素子としてFET10を用いており、第2の逆放電防止用素子10としてダイオードを用いた場合に比べて順方向電圧降下が小さくなるから、この昇圧形コンバータ300は実施形態1の昇圧形コンバータ100に比べて効率が高くなり、実施形態2にかかる昇圧形コンバータ200に比べても効率が上昇する。
【0037】
[実施形態4]
図5に示す本発明の実施形態4にかかる昇圧形コンバータ400は、第2のインダクタ9として互いに磁気的に結合されている第1の巻線9Aと第2の巻線9Bとを有するインダクタを用い、第1の巻線9Aと第2の巻線9Bとを接続した点Cに第3のコンデンサ12の一端を接続したことが本発明の実施形態300とは異なる。ここで、第1の巻線9Aの巻数がN1で、第2の巻線9Bの巻数をN2とすると、巻数比NはN2/N1で表せる。昇圧形コンバータ400の動作説明については、第1の巻線9Aと第2の巻線9Bとを有する第2のインダクタ9に関連する部分について説明する。
【0038】
第1のインダクタ4に第1の巻線と第2の巻線とを備えて昇圧しても、昇圧率の大きな昇圧形コンバータを得ることができるが、第1のインダクタ4を流れる電流は第2のインダクタ9を流れる電流よりも大きいので、第2のインダクタ9のリーケージインダクタンスによる電力損失に比べて第1のインダクタ4のリーケージインダクタンスによる電力損失が大きくなる。また、第2のインダクタ9に比べて第1のインダクタ4の方がサージも大きくなり、小型化も難しくなる。したがって、実施形態4にかかる昇圧形コンバータ400では流れる電流が第1のインダクタ4に比べて小さい第2のインダクタ9に第1の巻線9Aと第2の巻線9Bとを設けることによって、リーケージインダクタンスに起因する電力損失、サージ、ノイズを最小限に抑えることができる。
【0039】
前述したように、スイッチ素子5が時比率Drでスイッチングしており、スイッチ素子5がオンのとき、第1のコンデンサ8→第2のインダクタ9の第1の巻線9A→第3のコンデンサ12→スイッチ素子5→第1のコンデンサ8の閉回路を電流が流れる。この閉回路には第2のインダクタ9の第1の巻線9AのインダクタンスL2aが存在し、実施形態1で説明したように、第1のコンデンサ8と第3のコンデンサ12とには等しい電流I2が流れ、第1のコンデンサ8は放電し、第3のコンデンサ12は充電される。このときの第1のコンデンサ8の放電積分量と第3のコンデンサ12の充電積分量とは、放電電流、充電電流がI2であるから当然に等しくなる。
【0040】
次に、スイッチ素子5がオフになると、入力端子1→第1のインダクタ4→点A→FET7→第1のコンデンサ8→入力端子2→直流入力電源3→入力端子1の閉回路を電流が流れると共に、入力端子1→第1のインダクタ4→点A→第3のコンデンサ12→点C→第2のインダクタ9の第2の巻線9B→FET10→第2のコンデンサ11又は出力端子13→負荷15→出力端子14→入力端子2→直流入力電源3→入力端子1の閉回路で電流が流れる。したがって、スイッチ素子5がオフの区間では、スイッチ素子5がオンの区間とは逆に、第1のコンデンサ8は充電され、第3のコンデンサ12は放電される。
【0041】
前述したように、スイッチ素子5のオン期間では、第1のコンデンサ8の放電積分量と第3のコンデンサ12の充電積分量とが等しいので、スイッチ素子5のオフ期間でも、第1のコンデンサ8の充電積分量と第3のコンデンサ12の放電積分量とは等しくなる。ここで、第2のインダクタ9の第1の巻線9Aの電圧に着目すると、入力端子側から出力端子側に電力が供給される期間、つまりスイッチ素子5がオフの期間では、実施形態1で述べたように第3のコンデンサ12の電圧Vc3が印加される。
【0042】
このとき、第2のコンデンサ11は電圧源と見做せるから、その電圧は一定であり、第1のコンデンサ8は充電されるので、その電圧が上昇し、第2のインダクタ9の電圧は減少する。第2のインダクタ9の第1の巻線9Aの電圧変化は、第1のコンデンサ8の上昇分の1/(1+N)となり、第3のコンデンサ12の電圧は放電されて低下する。第3のコンデンサ12の電圧変化は、第2のインダクタ9の第1の巻線9Aの電圧変化と等しいので、第2のインダクタ9の第1の巻線9Aの電圧の減少は第1のコンデンサ8の上昇分の1/(1+N)となる。しかしながら前述したように、第1のコンデンサ8と第3のコンデンサ12の電流は等しいため、それぞれのコンデンサ8と12の充電時の電流積分量と放電時の電流積分量とは等しいので、第3のコンデンサ12のキャパシタンスは第1のコンデンサ8のキャパシタンスのほぼ(1+N)倍であることが好ましい。この場合も、通常のコンデンサの個々のキャパシタンスのばらつき程度で差異があっても差し支えない。
【0043】
入力端子側から出力端子側に電力が供給される期間では、第2のインダクタ9の第1の巻線9Aの電圧は第3のコンデンサ12の電圧Vc3と等しくなる。第2のインダクタ9の第1の巻線9Aに対する第2の巻線9Bの電圧はそれらの巻数比Nで決まるから、第2の巻線9Bの電圧はN・Vc3となる。したがって、出力端子13、14間の第2のコンデンサ11の電圧は、第1のコンデンサ8の電圧Vc1に第3のコンデンサ12の電圧Vc3を加えた電圧に、更に第1の巻線9Aと第2の巻線9Bとの巻数比Nとを乗じたN・Vc3を加えた電圧(Vc1+Vc3+N・Vc3)にほぼ等しくなり、出力電圧Voは、Vo=[(1+Dr)/(1−Dr)+N・Dr/(1−Dr)]×Viの式(5)で表せる。この昇圧形コンバータ400は、前記実施形態1〜3の昇圧形コンバータに比べて、上の式のカッコ内の2項で示す分、つまり、N・Dr・Vi/(1−Dr)、より昇圧することができ、巻数比Nを選択することによって、所望の高い出力電圧を出力することができる。また、第1、第2の巻線を有するインダクタのリーケージインダクタンスによる電力損失やサージ、ノイズなどを小さな値に抑制できる。
【0044】
以上の実施形態では説明していないが、第1の逆放電防止用素子7としてFETを用いた場合、実際にはスイッチ素子5のオフ前にFET7がオンすることがないように、休止期間を設けており、スイッチ素子5のオフ時刻からFET7がオンするまでの短い期間に、FET7のボディダイオードが導通する。したがって、FET7のボディダイオードを導通させないため、FET7のボディダイオードよりも順方向電圧降下の小さなショットキーバリアダイオードをFET7と並列に接続することにより、より損失を低減することが可能である。第2の逆放電防止用素子10についても同様である。また、以上の実施形態では1段形の昇圧形コンバータについて述べたが、必要があれば更に昇圧するために、図1、図3、図4に示した昇圧形コンバータ100〜300の入力端子から出力端子までを1単位の昇圧モジュールとし、同一構成の第2、第3の昇圧モジュールを用意して必要なだけ直列に接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態1にかかる昇圧形コンバータ100の回路構成を示す図面である。
【図2】本発明と従来の昇圧形コンバータの出力電圧―時比率特性の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2にかかる昇圧形コンバータ200の回路構成を示す図面である。
【図4】本発明の実施形態3にかかる昇圧形コンバータ300の回路構成を示す図面である。
【図5】本発明の実施形態4にかかる昇圧形コンバータ400の回路構成を示す図面である。
【図6】従来の昇圧形コンバータの回路構成を示す図面である。
【図7】従来の別の昇圧形コンバータの回路構成を示す図面である。
【符号の説明】
【0046】
1、2・・・入力端子
3・・・直流入力電源
4・・・第1のインダクタ
5・・・スイッチ素子
6・・・制御回路
7・・・第1の逆放電防止用素子
8・・・第1のコンデンサ
9・・・第2のインダクタ
9A・・・第2のインダクタ9の第1の巻線
9B・・・第2のインダクタ9の第2の巻線
10・・・第2の逆放電防止用素子
11・・・第2のコンデンサ
12・・・第3のコンデンサ
13、14・・・出力端子
15・・・負荷
A・・・第1のインダクタ4の一端とスイッチ素子5の一端と第3のコンデンサ12の一端とが接続された点
B・・・第2のインダクタ9の一端と第2の逆放電防止用素子10のアノード側と第3のコンデンサ12の他端とが接続された点
C・・・第2のインダクタ9の第1の巻線9Aと第2の巻線9Bとの接続点と、第3のコンデンサ12の他端とが接続された点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子間に印加される直流入力電圧に比べて高い直流出力電圧を出力端子間に出力する昇圧形コンバータにおいて、
二つの入力端子の間に互いに直列に接続される第1のインダクタとスイッチ素子と、
前記スイッチ素子と閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第1の逆放電防止用素子と第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサと閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第2のインダクタと第2の逆放電防止用素子と第2のコンデンサと、
前記第1のインダクタの一端と前記スイッチ素子の一端とが接続される点Aと、前記第2のインダクタの一端と前記第2の逆放電防止用素子のアノード側とが接続される点Bとの間に接続される第3のコンデンサと、
前記スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記直流出力電圧に等しい電圧を与える前記第2のコンデンサの電圧は、前記第1のコンデンサの電圧と前記第3のコンデンサの電圧との和に相当する電圧であることを特徴とする昇圧形コンバータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のコンデンサと前記第3のコンデンサのキャパシタンスは実質的に等しいことを特徴とする昇圧形コンバータ。
【請求項3】
入力端子間に印加される直流入力電圧に比べて高い直流出力電圧を出力端子間に出力する昇圧形コンバータにおいて、
二つの入力端子の間に互いに直列に接続される第1のインダクタとスイッチ素子と、
前記スイッチ素子と閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第1の逆放電防止用素子と第1のコンデンサと、
互いに直列に接続され、磁気的に結合される第1の巻線と第2の巻線とを有する第2のインダクタと、
前記第1のコンデンサと該第1のコンデンサに直列に接続された前記第2のインダクタと閉回路を構成するよう互いに直列に接続される第2の逆放電防止用素子と第2のコンデンサと、
前記第1のインダクタの一端と前記スイッチ素子の一端とが接続される点Aと、前記第2のインダクタの前記第1の巻線と前記第2の巻線とが接続される点Cとの間に接続される第3のコンデンサと、
前記スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記直流出力電圧に等しい電圧を与える前記第2のコンデンサの電圧は、前記第1のコンデンサの電圧と前記第3のコンデンサの電圧との和の電圧よりも高い電圧であることを特徴とする昇圧形コンバータ。
【請求項4】
請求項3において、
前記第2のインダクタの前記第1の巻線の巻数をN1、前記第2の巻線の巻数をN2とし、それらの巻数比(N2/N1)をNとするとき、前記第3のコンデンサのキャパシタンスは、実質的に前記第1のコンデンサのキャパシタンスの(1+N)倍であることを特徴とする昇圧形コンバータ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
前記第1の逆放電防止用素子及び前記第2の逆放電防止用素子の双方又はいずれか一方は、ダイオード又はFETであり、該FETは前記スイッチ素子がオンのときにオフ、オフのときにオンするように、前記制御回路により制御されることを特徴とする昇圧形コンバータ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−63299(P2010−63299A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228127(P2008−228127)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】