説明

昇塔用足場装置

【課題】送電鉄塔の脚部に常設されているために携行、運搬が不要である一方で、正規の作業員の昇塔時には脚部から突出させて足場として利用することができる昇塔用足場装置を提供する。
【解決手段】被昇塔物の取付け穴51内に挿通固定され、挿通穴3の内周に雌螺子部4を有したアダプター2と、挿通穴内に進退自在に支持され、挿通穴からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材22を備えると共に雌螺子部と螺合する雄螺子部24を備えた棒状部材20、及び棒状部材の他端側に設けられた頭部26を有した足場ボルト30と、を備え、棒状部材を挿通穴内部に没入させている時には雄螺子部を雌螺子部に螺着させて棒状部材が該挿通穴外へ突出することを阻止する一方で、該螺着を解除することによって棒状部材を挿通穴の外側に突出させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔の脚部に常設されて正規の作業員等の関係者以外の昇塔を効果的に制限するための足場ボルトに関し、特に鉄塔脚部に常備された足場ボルトを関係者以外の者が突出させて利用できないように制限した昇塔用足場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔により支持された送電線等を正規の作業員が保守、点検するためには作業員が鉄塔に昇塔可能な構造とする必要がある一方で、安全対策上、作業員以外の非関係者が昇塔できないように構成する必要がある。
送電鉄塔には、作業員等が昇塔する場合に備えて足場ボルトが所定の上下間隔で常時突設されている。足場ボルトは、先端の雄螺子部と、雄螺子部から延びる長尺の足場部とから構成され、鉄塔を構成するL型アングル材に設けた丸穴内に表面側から雄螺子部を挿通し、裏面側から突出した雄螺子部をナットにより締結することにより固定される。アングル材の表面から突出した足場部は作業員等が昇塔する際の足場となる。
一方、地上から2m以内の鉄塔脚部の部位には、関係者以外の昇塔を制限するために足場ボルトは常設しないのが一般である。このため、従来、作業員が昇塔する際には足場ボルトとナットを複数対持参し、これらを鉄塔脚部に設けた複数の取付け穴内に工具を用いて取付けていた。作業終了後には、ナットを緩めて足場ボルトを取り外して持ち歩く必要がある。
【0003】
しかし、複数対の足場ボルト及びナットは重量物であるためこれらを常時携行するのは煩雑であり、山岳地帯にある送電鉄塔での作業においては、作業員の労苦を増やす原因となっている。また、持参するのを忘れた場合には作業ができなくなる。更に、足場ボルトを着脱するたびに必要とされるナットの締結作業や取外し作業は繁雑であり、作業員の労力を増大させる原因となっている。
このような不具合に対処するために、特許文献1(特開2006−63605公報)、特許文献2(特開2009−174130公報)には、着脱容易な昇塔用ステップボルトが提案されている。
しかし、これらの昇塔用ステップボルトは、あくまで作業員が携行する必要のある着脱式であり、携行に伴う上記不利不便を解消することはできない。
また、脚部に設けた回動軸によって足場となる部材を上下方向に回動自在に軸支し、非使用時には脚部側に収納する一方で、使用時には水平に突出させるようにした足場装置も知られているが、足場部材を突出させるための操作が容易であるため、関係者以外の利用を制限する手段としては役に立っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−63605公報
【特許文献2】特開2009−174130公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の昇塔用足場ボルトは、鉄塔脚部に設けた取付け穴内に着脱するタイプが大半であり、着脱作業が繁雑となるばかりでなく、重量物である足場ボルトを複数個携行して徒歩で山岳地帯等を移動するのは作業員の疲労を徒に促進する結果をもたらす。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、送電鉄塔の脚部に常設されているために携行、運搬が不要である一方で、正規の作業員の昇塔時には脚部から突出させて足場として利用することができる昇塔用足場装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る昇塔用足場装置は、被昇塔物に設けた取付け穴内に挿通固定され、軸方向を貫通する挿通穴の内周に雌螺子部を有したアダプターと、該アダプターの挿通穴内に軸方向へ進退自在に支持され、一端側に該挿通穴からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材を備えると共に他端側に前記雌螺子部と螺合する雄螺子部を備えた棒状部材、及び該棒状部材の他端側に設けられた抜け落ち防止用の頭部を有した足場ボルトと、を備え、前記足場ボルトの棒状部材を前記挿通穴内部に没入させている時には該雄螺子部を該雌螺子部に螺着させて該棒状部材が該挿通穴外へ突出することを阻止し、前記アダプターは、前記棒状部材が前記挿通穴内に没入している時に前記頭部を包囲して操作されることを阻止する操作阻止部材を備えていることを特徴とする。
各種建造物、塔、柱等の被昇塔物の外壁には、メンテナンス、修理等に際して作業員が登るのに便利なように足場となるボルト、金具を突設する必要がある。しかし、人間の手が届く低所に足場を設けておくと非関係者がこれを利用して登るなどの虞がある。そこで、本発明では、足場ボルト、特に低所に位置する足場ボルトを被昇塔物の外壁に出没自在に支持し、没入した足場ボルトを引き出すためには足場ボルトを特殊な工具によって操作する必要があるように構成した。
【0007】
請求項2の発明は、送電鉄塔の脚部に設けた取付け穴内に挿通固定され、軸方向を貫通する挿通穴の内周に雌螺子部を有したアダプターと、該アダプターの挿通穴内に軸方向へ進退自在に支持され、前記雌螺子部と螺着する第1の雄螺子部を一端側に備えると共に他端側に第2の雄螺子部を備えた棒状部材、及び該棒状部材の他端側に大径の頭部を備えた足場ボルトと、該足場ボルトの第2の雄螺子部と螺着される抜け落ち防止用のナットと、を備え、前記アダプターの挿通穴内に外側から前記足場ボルトの棒状部材を挿入することにより前記挿通穴の反対側から突出した前記第2の雄螺子部に締結固定した前記ナットと前記頭部とによって該足場ボルトを抜け落ち不能に支持し、前記足場ボルトを前記アダプターの挿通穴内に没入させる際に前記第1の雄螺子部を前記雌螺子部に螺着させることによって前記足場ボルトの突出を阻止し、前記アダプターは、前記棒状部材が前記挿通穴内に没入している時に前記頭部を包囲して操作されることを阻止する操作阻止部材を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、送電鉄塔等を構成するアングル材に設けた取付け穴に対して後付けすることが容易となる。即ち、足場ボルトの先端に設ける抜け落ち防止部材をナットとし、ナットを足場ボルト先端に設けた第2の雄螺子部に固定するように構成したので、後付けが可能となる。
【0008】
請求項3の発明では、前記棒状部材の一端側には、前記棒状部材の突出時に前記雌螺子部と螺合可能な他の雄螺子部が設けられていることを特徴とする。
足場ボルトが突出した状態を雄螺子と雌螺子との締結によって維持することができる。
請求項4の発明では、前記アダプターは、前記取付け穴内に挿通される小径筒状部、該小径筒状部の外側端部に一体化された大径筒状部、及び該小径筒状部及び該大径筒状部を貫通する前記挿通穴を備えた段付き中空筒状のアダプター本体と、該挿通穴の反対側から突出した前記小径筒状部の端部に設けたナット用雄螺子部に螺着される抜け落ち防止用のアダプター側ナットと、を備え、前記小径筒状部を前記取付け穴に挿通した時に該取付け穴の反対側から突出する前記アダプター側雄螺子部に前記アダプター側ナットを締結することによって、前記アダプターは前記取付け穴に固定されることを特徴とする。
アダプターをアダプター本体と、アダプター側ナットから構成したので、取付け穴に対して後付け固定することができる。取付け穴に固定したアダプターは取付け対象物に対して常設される。また、アダプターに挿通される足場ボルトも常設され、必要な時だけ引き出されて足場として利用される。
【0009】
請求項5の発明では、前記大径筒状部は、前記雌螺子部を内周に備えた厚肉筒状部と、該厚肉筒状部の外周縁から外側へ突設した筒状の前記操作阻止部材と、を備えていることを特徴とする。
請求項6の発明では、コンクリート製電柱の外面から内部にかけて固定される中空ケースから成り、その外面を貫通する挿通穴の内周に雌螺子部を有したアダプターと、アダプターの挿通穴内に軸方向へ進退自在に支持され、一端側に該挿通穴からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材を備えると共に他端側に前記雌螺子部と螺合する雄螺子部を備えた棒状部材、及び該棒状部材の他端側に設けられた抜け落ち防止用の頭部を有した足場ボルトと、前記挿通穴を包囲するように前記中空ケース外面に突設された筒状の操作阻止部材と、を備えたことを特徴とする。
昇塔用足場装置は、取付け対象物に対して後付けするのみならず、被昇塔物の製造時に組み込むことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の昇塔用足場装置では、送電鉄塔の脚部等の取付け対象物に常設されているために携行、運搬が不要である一方で、正規の作業員の昇塔時には脚部から突出させて足場として利用することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態としての昇塔用足場装置の構成を説明するための分解斜視図、及び組付け状態を示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は鉄塔脚部の取付け穴にアダプターを取り付ける手順を示す縦断面図である。
【図3】(a)(b)及び(c)は鉄塔脚部に固定されたアダプターに埋め込み式の足場ボルトを装着した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の昇塔用足場装置をコンクリート製の電柱に適用した構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態としての昇塔用足場装置の構成を説明するための分解斜視図、及び組付け状態を示す斜視図であり、図2(a)及び(b)は鉄塔脚部の取付け穴にアダプターを取り付ける手順を示す縦断面図であり、図3(a)(b)及び(c)は鉄塔脚部に固定されたアダプターに埋め込み式の足場ボルトを装着した状態を示す断面図である。
本発明に係る昇塔用足場装置1の基本構成は次の如くである。
即ち、昇塔用足場装置1は、送電鉄塔、電柱等の被昇塔物50の外面に設けた取付け穴51内に挿通固定され、軸方向を貫通する挿通穴3の内周に雌螺子部4を有したアダプター2と、アダプターの挿通穴3内に軸方向へ進退自在に支持され、且つ一端側(先端側)に挿通穴からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材22を備えると共に他端側(後端側)にアダプターの雌螺子部4と螺合する雄螺子部24を備えた棒状部材20、及び棒状部材の他端側に設けられた抜け落ち防止用の頭部26を有した埋め込み式の足場ボルト30と、を概略備えている。
足場ボルト30の棒状部材20を挿通穴3の内部に没入させている時には雄螺子部24を雌螺子部4に螺着させて棒状部材が不用意に挿通穴外へ突出することを阻止する一方で、足場ボルトを螺着解除方向へ回転させて雄螺子部24と雌螺子部4との螺着を解除することによって棒状部材20を挿通穴3の外側に突出させて足場として利用することが可能となる。
【0013】
次に、本発明の昇塔用足場装置1を送電鉄塔(被昇塔物)の脚部55を構成するアングル材56に設けた取付け穴51に組み付ける場合の具体的構成例について図1乃至図3に基づいて説明する。
昇塔用足場装置1は、送電鉄塔の脚部55を構成するアングル材56に貫通形成された取付け穴51内に挿通固定され、軸方向を貫通する挿通穴3の内周に雌螺子部4を有した金属製のアダプター2と、アダプターの挿通穴3内に挿通され雌螺子部4と螺着する第1の雄螺子部24を他端側(後端側)に備えると共に一端側(先端側)に第2の雄螺子部25を備えた金属製の棒状部材20、及び棒状部材20の他端側に設けられた大径の頭部26を備えた埋め込み式の足場ボルト30と、足場ボルトの第2の雄螺子部25と螺着される抜け落ち防止用のナット40(抜け落ち防止部材22)と、を備える。
アダプター2は、取付け穴51内に挿通される小径筒状部6、小径筒状部の外側端部に一体化された大径筒状部8、及び小径筒状部及び大径筒状部を貫通する挿通穴3を備えた段付き中空筒状のアダプター本体7と、取付け穴51の反対側から突出した小径筒状部6の端部に設けたアダプター側雄螺子部6aに螺着される抜け落ち防止用のアダプター側ナット10と、を備える。そして、小径筒状部6を取付け穴51に挿通した時に取付け穴の反対側から突出するアダプター側雄螺子部6aにアダプター側ナット10を締結することによってアダプターは取付け穴に固定される。
更に、大径筒状部8は、雌螺子部4を内周に備えた厚肉筒状部8aと、厚肉筒状部の外周縁から外側へ突設した筒状(袴状)の操作阻止部材8bと、を備えている。
【0014】
次に、アダプターを取付け穴に取り付ける手順を図2に基づいて説明する。
アダプター2を取付け穴51に取り付けるに際しては、アダプター本体7の小径筒状部6を取付け穴内にその外側から差込み、取付け穴の反対側(内側)から小径筒状部6の端部に設けたアダプター側雄螺子部6aを突出させる(図2(a))。次いで、図2(b)のようにアダプター側雄螺子部6aに対してアダプター側ナット10を螺着することにより、アダプターを取付け穴に締結固定することができる。
【0015】
次に、アダプター2に対して足場ボルト30を組み付ける手順を図3に基づいて説明する。
アダプター2の挿通穴3内に足場ボルト30を組み付ける場合には、まず挿通穴3内に表面側(外側)から足場ボルトの棒状部材20を挿入することにより足場ボルト30を挿通穴内から外側へ出没自在に支持する。次いで、挿通穴3の反対側(内側)から突出した第2の雄螺子部2にナット40を締結固定することにより、ナット40と頭部26とによって、足場ボルトを挿通穴から抜け落ち不能にする。
また、足場ボルト30をアダプターの挿通穴3内に没入させる際に第1の雄螺子部24を雌螺子部4に螺着させることによって、足場ボルトが不用意に外部に突出することを阻止するように構成している。
足場ボルト30が挿通穴から突出した際の突出長は、抜け落ち防止部材22が棒状部材20の先端部に固定される位置によって決定される。
【0016】
なお、図3(b)のように棒状部材が挿通穴内に没入している時に、足場ボルト30の頭部26全体が外部に露出していると、誰でもペンチ等の一般の工具を用いて頭部26を挟持して回転操作することによって足場ボルトを突出させることが可能となる。
このような不具合に対処するために、アダプター2には、棒状部材20が挿通穴3内に没入している時に頭部26の外周を包囲することによって、一般の工具を用いて操作されることを阻止する筒状の操作阻止部材8bを設けている。頭部26の形状を、特殊な工具、例えばラチェットレンチRのソケットによってのみ挟持して回転操作することが可能な形状とする一方で、図3(b)の状態において操作阻止部材8bの内面と頭部26の外周面との間に設けた隙間Gを、ラチェットレンチRのソケットが嵌合し、且つ回転することができるように寸法設定する。
このように構成することにより、特殊工具を用いる以外に足場ボルトを突出させることができないようにして、関係者以外が足場ボルトを突出させて昇塔することを阻止できる。
なお、棒状部材20の一端側(先端側)に、棒状部材の突出時に雌螺子部4と螺合可能な他の雄螺子部27を設けることによって、図3(c)に示した突出時の姿勢を固定することが可能となる。即ち、雄螺子部27がない場合には、図3(c)のように棒状部材20を外部に突出させたとしても、引っ込める方向の力が加わると棒状部材が挿通穴内に没入してしまう虞があるが、他の雄螺子部27と雌螺子部4と螺着しておくことにより、外力が作用しても突出状態を維持することができる。
【0017】
また、図3(b)のように足場ボルト30をアダプター2内に没入させた状態で、足場ボルトの先端部をペンチ等で挟圧保持して回転させることによって足場ボルトを突出させることを阻止するために雄螺子部24と雌螺子部4との締結強度を一定以上に高めておくことが有効である。即ち、ラチェットレンチによって頭部26を確実に挟圧保持して回転させる場合には雄螺子部24と雌螺子部4との締結を緩めることができるように設定する一方で、足場ボルト先端の棒状部材をペンチによって挟圧保持しただけでは足場ボルトを回転させることができない程度に強い締結力に設定する。
なお、ペンチ、モンキースパナ等を用いて棒状部材先端に締結されたナット40を挟圧保持して雄螺子部24と雌螺子部4との締結を緩めることを阻止するために、ナットを第2の雄螺子部25に締結するための回転方向と、雄螺子部24と雌螺子部4とを締結するための回転方向とが一致するように各螺子部のねじ切り方向を設定しておくのが好ましい。
本実施形態に係る昇塔用足場装置は、アングル材等に設けた取付け穴内に後付けによって組み付けることができる点も大きなメリットである。
【0018】
次に、本発明の昇塔用足場装置1は、送電鉄塔のアングル材からなる脚部以外にも適用することができる。また、昇塔用足場装置1は被昇塔物に対して後付けするばかりでなく、製造時に組み込むこともできる。
図4は本発明の昇塔用足場装置をコンクリート製の電柱に適用した構成例を示している。
コンクリート製の電柱に本発明の昇塔用足場装置を適用する場合には、電柱の製造工程において組み込みを行うこととなる。
昇塔用足場装置1は、被昇塔物としてのコンクリート製電柱60の外面から内部にかけて固定され、軸方向を貫通する挿通穴66の内周に雌螺子部67を有したアダプター65と、アダプターの挿通穴66内に軸方向へ進退自在に支持され、一端側に挿通穴66からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材82を備えると共に他端側に雌螺子部67と螺合する雄螺子部84を備えた棒状部材81、及び棒状部材81の他端側に設けられた抜け落ち防止用の頭部86を有した埋め込み式の足場ボルト80と、を備えている。
【0019】
アダプター65は、金属製の中空ケースから成るアダプター本体68の外壁に挿通穴66を設けた構成を備え、電柱を製造する際にコンクリート内に埋め込まれる。アダプター本体68の外面には、挿通穴66を包囲するように筒状の操作阻止部材69を一体的に突設し、足場ボルト80を挿通穴66内に没入状態にした時に頭部86が操作阻止部材69内に入り込んで外部から操作することができないように構成する。なお、図3(b)で説明したように、操作阻止部材69の内壁と頭部86の外周面との間のギャップGを利用してラチェットレンチ等の特殊な工具のソケットを差し込んで頭部86を回転させるように構成する。
足場ボルトの棒状部材81を挿通穴66内部に没入させている時には雄螺子部84を雌螺子部67に螺着させて棒状部材が挿通穴外へ突出することを阻止する一方で、足場ボルトを回転させて雄螺子部84と雌螺子部67との螺着を解除することによって棒状部材を挿通穴の外側に突出させて足場として利用することが可能となる。
なお、足場ボルトが挿通穴の外部へ突出した状態を維持するために、棒状部材81の先端部に雌螺子部67と螺合する雄螺子部89を設けても良い。
本実施形態に係る昇塔足場装置1はユニット化されているため、コンクリート製電柱60を金型を利用して成形する際に、コンクリート部分に一体的に組み込むことができる。
【0020】
以上のように、本発明の昇塔用足場装置によれば、送電鉄塔の脚部等の取付け対象物に常設されているために携行、運搬が不要である一方で、正規の作業員の昇塔時には脚部から突出させて足場として利用することができることとなる。
即ち、各種建造物、塔、柱等の被昇塔物の外壁には、メンテナンス、修理等に際して作業員が登るのに便利なように足場となるボルト、金具を突設する必要がある。しかし、人間の手が届く低所に足場を設けておくと非関係者がこれを利用して登るなどの保安上の問題が生じる虞がある。そこで、本発明では、足場ボルト、特に低所に位置する足場ボルトを被昇塔物の外壁に出没自在に支持し、没入した足場ボルトを引き出すためには足場ボルトを特殊な工具によって操作する必要があるように構成した。
【0021】
また、送電鉄塔等を構成するアングル材に設けた取付け穴に対して後付けすることが容易となる。即ち、足場ボルトの先端に設ける抜け落ち防止部材をナットとし、ナットを足場ボルト先端に設けた第2の雄螺子部に固定するように構成したので、後付けが可能となる。
また、棒状部材の一端側に棒状部材の突出時に雌螺子部と螺合可能な他の雄螺子部を設けたので、足場ボルトが突出した状態を雄螺子と雌螺子との締結によって維持することができる。このため、昇塔中に足場ボルトが引っ込んでしまう虞がない。
また、アダプターをアダプター本体と、アダプター側ナットから構成した場合には、取付け穴に対して後付け固定することができる。取付け穴に固定したアダプターは取付け対象物に対して常設される。また、アダプターに挿通される足場ボルトも常設され、必要な時だけ引き出されて足場として利用される。
また、昇塔用足場装置は、取付け対象物に対して後付けするのみならず、被昇塔物の製造時に組み込むことができる。
本発明の昇塔足場装置を適用する対象物としての被昇塔物は、送電鉄塔、電柱に限らず、建造物、鉄塔、柱等、昇塔することが必要とされる塔類に適用することができる。例えば、建造物の屋上に設けたタンク、ペントハウスの外壁等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…昇塔用足場装置、2…アダプター、3…挿通穴、4…雌螺子部、6…小径筒状部、7…アダプター本体、8…大径筒状部、8a…厚肉筒状部、8b…操作阻止部材、10…アダプター側ナット、20…棒状部材、22…抜け落ち防止部材、24…雄螺子部、25…雄螺子部、26…頭部、27…雄螺子部、30…足場ボルト、40…ナット、50…被昇塔物、51…取付け穴、55…脚部、56…アングル材、60…コンクリート製電柱、65…アダプター、66…挿通穴、67…雌螺子部、68…アダプター本体、69…操作阻止部材、6a…アダプター側雄螺子部、80…足場ボルト、81…棒状部材、82…防止部材、84…雄螺子部、86…頭部、89…雄螺子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被昇塔物に設けた取付け穴内に挿通固定され、軸方向を貫通する挿通穴の内周に雌螺子部を有したアダプターと、該アダプターの挿通穴内に軸方向へ進退自在に支持され、一端側に該挿通穴からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材を備えると共に他端側に前記雌螺子部と螺合する雄螺子部を備えた棒状部材、及び該棒状部材の他端側に設けられた抜け落ち防止用の頭部を有した足場ボルトと、を備え、
前記足場ボルトの棒状部材を前記挿通穴内部に没入させている時には該雄螺子部を該雌螺子部に螺着させて該棒状部材が該挿通穴外へ突出することを阻止し、
前記アダプターは、前記棒状部材が前記挿通穴内に没入している時に前記頭部を包囲して操作されることを阻止する操作阻止部材を備えていることを特徴とする昇塔用足場装置。
【請求項2】
送電鉄塔の脚部に設けた取付け穴内に挿通固定され、軸方向を貫通する挿通穴の内周に雌螺子部を有したアダプターと、該アダプターの挿通穴内に軸方向へ進退自在に支持され、前記雌螺子部と螺着する第1の雄螺子部を一端側に備えると共に他端側に第2の雄螺子部を備えた棒状部材、及び該棒状部材の他端側に大径の頭部を備えた足場ボルトと、該足場ボルトの第2の雄螺子部と螺着される抜け落ち防止用のナットと、を備え、
前記アダプターの挿通穴内に外側から前記足場ボルトの棒状部材を挿入することにより前記挿通穴の反対側から突出した前記第2の雄螺子部に締結固定した前記ナットと前記頭部とによって該足場ボルトを抜け落ち不能に支持し、
前記足場ボルトを前記アダプターの挿通穴内に没入させる際に前記第1の雄螺子部を前記雌螺子部に螺着させることによって前記足場ボルトの突出を阻止し、
前記アダプターは、前記棒状部材が前記挿通穴内に没入している時に前記頭部を包囲して操作されることを阻止する操作阻止部材を備えていることを特徴とする昇塔用足場装置。
【請求項3】
前記棒状部材の一端側には、前記棒状部材の突出時に前記雌螺子部と螺合可能な他の雄螺子部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の昇塔用足場装置。
【請求項4】
前記アダプターは、前記取付け穴内に挿通される小径筒状部、該小径筒状部の外側端部に一体化された大径筒状部、及び該小径筒状部及び該大径筒状部を貫通する前記挿通穴を備えた段付き中空筒状のアダプター本体と、該挿通穴の反対側から突出した前記小径筒状部の端部に設けたナット用雄螺子部に螺着される抜け落ち防止用のアダプター側ナットと、を備え、
前記小径筒状部を前記取付け穴に挿通した時に該取付け穴の反対側から突出する前記アダプター側雄螺子部に前記アダプター側ナットを締結することによって、前記アダプターは前記取付け穴に固定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の昇塔用足場装置。
【請求項5】
前記大径筒状部は、前記雌螺子部を内周に備えた厚肉筒状部と、該厚肉筒状部の外周縁から外側へ突設した筒状の前記操作阻止部材と、を備えていることを特徴とする請求項4に記載の昇塔用足場装置。
【請求項6】
コンクリート製電柱の外面から内部にかけて固定される中空ケースから成り、その外面を貫通する挿通穴の内周に雌螺子部を有したアダプターと、アダプターの挿通穴内に軸方向へ進退自在に支持され、一端側に該挿通穴からの抜け落ちを防止する抜け落ち防止部材を備えると共に他端側に前記雌螺子部と螺合する雄螺子部を備えた棒状部材、及び該棒状部材の他端側に設けられた抜け落ち防止用の頭部を有した足場ボルトと、前記挿通穴を包囲するように前記中空ケース外面に突設された筒状の操作阻止部材と、を備えたことを特徴とする昇塔用足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−95394(P2012−95394A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238855(P2010−238855)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】