説明

昇華性染料の再昇華を阻止する機能をもつ熱圧着タイプのマーク

【課題】昇華性染料で染色した生地で作ったユニホームに、熱圧着タイプのマークを貼着する作業を行うとき、ユニホームの生地を染色した昇華性染料が再昇華しても、再昇華した昇華性染料によって、前記熱圧着タイプのマークのマーク地が変色するようなことがない熱圧着タイプのマークを提供する。
【解決手段】剥離材面1に、所望の色彩に着色した熱可塑性合成樹脂層から成るマーク地面2を形成し、マーク地面に、ホットメルト系樹脂の接着層6を形成した構成形式のマークにおいて、マーク地と接着層の間にガスバリアフィルム4を、マーク地側にはマーク地の構成成分である熱可塑性合成樹脂とガスバリアフィルムの構成成分と親和性のある熱可塑性合成樹脂から成る第1介在層3を配し、接着層側には、ホットメルト系樹脂とガスバリアフィルムの構成成分と親和性のある熱可塑性合成樹脂から成る第2介在層5を配した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として昇華性染料で染色された生地で作ったユニホーム等に、これを着用する競技者が所属するチームのチーム名や競技者の背番号を表示する手段として貼着される熱圧着タイプのマークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の熱圧着タイプのマークにはいろいろの構成のものがあるが、その中でも代表的なものとして、柔軟性に富み、且つ所望の色彩に着色した熱可塑性合成樹脂層をマーク地とし、そのマーク地にホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層を裏打ちしてマーク用生地とし、これをユニホームを着用する競技者の所属するチーム名や競技者背番号等の所望の形状に型取りして構成したものが一般に使用されている。
【0003】
上記した構成の従来型の熱圧着タイプのマークを、昇華性染料で染色された生地で作られたユニホームに熱圧着しようとするときは、前記した構成の熱圧着タイプのマークのホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層をユニホームに重ねて加熱加圧手段を講じて行うが、その加熱加圧時の加熱加圧により、ユニホームの生地を染色した昇華性染料が再昇華して、マークのホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層を染色し、更に再昇華した染料がマーク地までも染色し、マーク地の色彩を再昇華した染料によって混合色としてしまいマーク地本来の色彩を変色してしまうと言う不都合を引き起こすことがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、昇華性染料で染色した生地で作ったユニホームに、チーム名や背番号を表示するための熱圧着タイプのマークを貼着する作業を行うときの加熱加圧作業により、ユニホームの生地を染色した昇華性染料が再昇華しても、再昇華した昇華性染料によって、前記熱圧着タイプのマークのマーク地が変色するようなことがない熱圧着タイプのマークを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
剥離材面に、柔軟性に富み且つ所望の色彩に着色した熱圧着した熱可塑性合成樹脂層から成るマーク地面を形成し、該マーク地面に、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層を形成した構成形式のマークにおいて、前記マーク地と前記接着層の間にガスバリアフィルムを、マーク地側にはマーク地の構成成分である熱可塑性合成樹脂とガスバリアフィルムの構成成分と親和性のある熱可塑性合成樹脂から成る第1介在層を配し、接着層側には、接着層の構成成分であるホットメルト系の熱可塑性合成樹脂とガスバリアフィルムの構成成分と親和性のある熱可塑性合成樹脂から成る第2介在層を配した積層体として構成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる熱圧着マークは、剥離材、マーク地、第1の介在層、ガスバリアフィルム、第2の介在層、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層を一体に積層して成るものであるから、この熱圧着タイプのマークを以て、昇華性染料で染色した生地で作ったユニホーム等に熱圧着する際、前記ユニホームの生地を染色した昇華性染料が再昇華しても、その再昇華した染料により、マークのマーク地を変色するようなことを阻止でき、マークのマーク地本来の色彩を保持できる。
【実施例1】
【0007】
本発明に係る熱圧着マークは、図2に示すように、剥離材1の上に、マーク地2、第1の介在層3、ガスバスバリアフィルム4、第2の介在層5、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂層6を一体に重ね合わせた重合体としてマーク用生地を構成し、このマーク用生地から所望の図柄に打ち抜き、或いは切り取って図1に示すマークとして構成するものである。以下その手順、構成の詳細について説明する。
【0008】
剥離材1の面に所望の色彩に着色した柔軟性に富む熱可塑性合成樹脂から成るインクをコーティングし、或いは前記熱可塑性合成樹脂から成るフィルムをラミネートして前記熱可塑性合成樹脂から成る層を作り、これをマーク地2とする。
前記したマーク地2を作る合成樹脂は、例えば従来通りポリウレタンや(ポリエステル)ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルの共重合体などの熱可塑性樹脂に顔料を配合した着色樹脂インクをコーディング法により、或いは前記着色熱可塑性合成樹脂から成るフィルムをラミネート法により層として形成する。
【0009】
本発明では、マーク地2を作るのに日本ポリウレタン工業の商品名ニッポラン#5115と称するポリウレタン樹脂に帝国インキ社のウレタン系インク・セリコールSGを顔料として配分して使用した。
また、ポリエステル樹脂の着色層にする場合は、東洋紡社の商品名バイロン103と称する顔料などを使用した。
【0010】
本発明の基本的な構想は、前記したマーク地2とする着色合成樹脂層とホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層6の間に、ユニホームの生地を染色した昇華性染料の再昇華を阻止するための層を介在させようとするもので、その介在層としては近年レトルト食品の包装材として近年研究開発が進められているガスバリアフィルム4が最適であることをつきとめ、このガスバリアフィルム4を活用すると言うものである。
【0011】
このガスバリアフィルムには、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ONY(2軸延伸ナイロン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)などを主材料としたものがある。その中、OPPにPVDC(ポリ塩化ビニリデン)をコートしたフィルムや、PET・OPPにアルミニウムを蒸着したフィルムなどがある。
このガスバリアフィルムは、ガス遮断性に優れている。従って、昇華性染料の再昇華による着色ガスの透過を阻止する機能に優れている。しかも、極薄であるがせん断強度に優れ、透明性に優れ、マーク地に馴染んでマーク地の柔軟性を阻害せず最適であることをつきとめた。
【0012】
上記した性質をもつガスバリアフィルムの中、本発明を構成するために用いるガスバリアフィルムとして、東セロ社製の商品名TL−PETと呼ばれる透明ガスバリアフィルムを用いる。東セロ社製の透明ガスバリアフィルム TL−PETは、PETフィルムにアルミナ(酸化アルミ)を蒸着させたもので、厚さ12μの透明ガスバリアフィルムである。バリアフィルムの厚さは、10μ〜15μが好適であり、それより薄いとせん断強度が脆弱になり、厚いと柔軟性に欠けてしまうこともつきとめた。
【0013】
本発明の基本的な構想は、前記したとおり、マーク地2とガスバリアフィルム4とホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層6とを積層させるという考え方から出た物である。従って、前記した三者が親和性のある成分からできているときは、マーク地2面に重ねられた前記ガスバリアフィルム4の面にホットメルト系の熱可塑合成樹脂から成る接着層6をコーティング法、或いはラミネート法によって形成すると言う考え方を実行すればよい。
【0014】
ところが、マーク地2を作る熱可塑性合成樹脂層の成分とガスバリアフィルム4の成分とが相性が合わないことがある。この場合には、前記したマーク地2を作る熱可塑性合成樹脂層とガスバリアフィルム4とは一体化しないと言う不都合が生じる。
【0015】
また、ガスバリアフィルム4の成分と接着層6を作るホットメルト系の熱可塑性合成樹脂との相性が合わないことがある。この場合には、前記した接着層6を作るホットメルト系の熱可塑性合成樹脂とガスバリアフィルム4とは一体化しないと言う不都合が生じる。
【0016】
本発明は、上記した不都合を解消した熱圧着タイプのマークを完成しようとして、上記各層を一体化させるために、剥離材1面にマーク地2を作る前記熱可塑性合成樹脂層と、ガスバリアフィルム4の間に、両者の構成成分と相性のよい熱可塑性合成樹脂を選んで第1の介在層3を作ることにした。
その第1の介在層を作る熱可塑性合成樹脂について説明する。
本発明に係る熱圧着タイプのマークのマーク地2を作る熱可塑性合成樹脂層を作るのに日本ポリウレタン工業の商品名ニッポラン#5115と称するポリウレタン樹脂を使用し、ガスバリアフィルム4として東セロ社製のTL−PET(PET)を使用したときは、両者の間に、大日本インキ社製の商品名SF1208Gや、日本ポリウレタン工業社の商品名ニッポラン#3113と呼ばれるポリウレタン樹脂が好適であることに気が付いた。
また、マーク地2を作る合成樹脂層を東洋紡社の商品名バイロン103と称されるポリエステル樹脂で構成し、東セロ社製の商品名TL−PET(PET)と呼ばれるガスバリアフィルムの間に、両者の構成成分と相性のよい熱可塑性合成樹脂を選んで介在層とする場合は、大日本インキ社製の商品名SFプライマー#930と呼ばれるポリエステル樹脂が好適であることに気が付いた。
【0017】
更に前記ガスバリアフィルム4と接着層6を形成するホットメルト系の熱可塑性合成樹脂と相性のよい熱可塑性合成樹脂を選んで第2の介在層5を作ることにした。
その第2の介在層を作る熱可塑性合成樹脂とは、前記ガスバリアフィルムの東セロ社製のTL−PET(PET)とホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層6を形成するダイセル化学工業社製のポリウレタン系ホットメルト樹脂と相性のよい熱可塑性合成樹脂を選んで介在層とする場合は、ポリウレタン樹脂とPETに親和性のある、商品名ニッポラン#3113(日本ポリウレタン工業社)と称するポリウレタン樹脂が好適である。
また、ポリエステル樹脂のホットメルト(例えば、東洋紡・バイロン550やユニチカ・エリテール3400など)を採用した場合は、介在樹脂としてはポリエステル樹脂とPETに親和性のある、商品名SFプライマー#930(大日本インキ社)と称するポリエステル樹脂が好適である。
【0018】
即ち、マーク地2とホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層6との間に、ガスバリアフィルム4を挟んで第1の介在層と第2の介在層を形成する。
【0019】
前記操作を行って図2に示すマーク用生地を作る。
前記図2に示すマーク用生地から所望の形状に打ち抜き、或いは切り取って図1に示すマークを作る。
【0020】
昇華性染料で染色された生地を用いて作ったユニホーム等に、本発明にかかる図1に示す熱圧着タイプのマークを貼着する作業について説明する。
【0021】
載台に載せられた昇華性染料で染色された生地から成るユニホーム等の貼着対象物の面に、図2に示すマーク用生地から打ち抜き、或いは切り取った図1に示すマークの接着層を重ねる。
【0022】
その状態で、常法に従って加熱加圧機具を以て加熱加圧操作を施す。
【0023】
この操作により、マークの接着層6を形成するホットメルト系の熱可塑性合成樹脂の構成成分は溶融して、前記ユニホーム等の生地に融着する。
【0024】
このとき、前記ユニホーム等の生地を染色した昇華性染料は、前記加熱加圧操作によって再昇華現象を呈する。
この現象により、再昇華した昇華性染料は、接着層6を構成する溶融したホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る層を染色することになる。
該再昇華した昇華性染料は、熱圧着タイプのマークにガスバリアフィルム4を配置していないときはマーク地2までも染色してしまう。
従って、前記操作を終了して剥離材をマークのマーク地面から引きはがしたときは、マークのマーク地は、本来の色彩に昇華性染料を混合して変色した色彩を呈することになる。
【0025】
ところが、本発明に係る熱圧着タイプのマークは、前記不都合を阻止するためマーク地2、第1の介在層3、ガスバリアフィルム4、第2の介在層5、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層6を積層として成る構成としたから、前記操作を行うとき、マーク地2とガスバリアフィルム4とを第1の介在層3で融着し、ガスバリアフィルム4と接着層6とも第2の介在層5で融着し、本発明に係る熱圧着タイプのマークはユニホームに接着する。前記操作中にユニホームを染色した昇華性染料は 再昇華し、その染料は、接着層6を通過して第2の介在層5までを染色したとしても、ガスバリアフィルム4によって、再昇華した染料はその通過を阻止され、第1の介在層3、並びにマーク地2を染色してマーク地を変色することを阻止することができる。
【0026】
本発明で用いるガスバリアフィルム4は、透明のものとして作られているので、図2に示すマーク用生地から図1に示すマークを裁断したとき、マークの裁断面は透明となる。ガスバリアフィルム4が着色されたものであるときは、マークの裁断面にガスバリアフィルム4の着色がのぞき見ることができる裁断面となり、このマークを用いてユニホームに接着したときは、あたかも縁取りされたマークとなる嫌いがある。本発明では透明のガスバリアフィルム4を用いたので前記したような嫌いが生じることはない。
【0027】
上記操作終了後、剥離材1をマーク地2面から剥がしたときは、ユニホームに、マーク地2、第1の介在層3、ガスバリアフィルム4、第2の介在層5、接着層6が一体層となり、マーク地2は本来の着色を保持したマークとしてユニホーム等に貼着できる接着層がユニホームにしっかりと貼着される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】マーク用生地から所望の形状に打ち抜き、或いは切り取って形成した本発明にかかるマーク
【図2】マーク用生地の斜視図
【符号の説明】
【0029】
1 剥離剤
2 マーク地
3 第1の介在層
4 ガスバリアフィルム
5 第2の介在層
6 接着層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離材面に、柔軟性に富み且つ所望の色彩に着色した熱圧着した熱可塑性合成樹脂層から成るマーク地面を形成し、該マーク地面に、ホットメルト系の熱可塑性合成樹脂から成る接着層を形成した構成形式のマークにおいて、前記マーク地と前記接着層の間にガスバリアフィルムを、マーク地側にはマーク地の構成成分である熱可塑性合成樹脂とガスバリアフィルムの構成成分と親和性のある熱可塑性合成樹脂から成る第1介在層を配し、接着層側には、接着層の構成成分であるホットメルト系の熱可塑性合成樹脂とガスバリアフィルムの構成成分と親和性のある熱可塑性合成樹脂から成る第2介在層を配した積層体として構成したことを特徴とする昇華性染料の再昇華を阻止する機能をもつ熱圧着タイプのマーク。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−26768(P2008−26768A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201648(P2006−201648)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(399132386)株式会社宝來社 (12)
【Fターム(参考)】