説明

昇降型の搬送受け渡し装置

【課題】 搬送物を載置する台を、搬送物を搬出する搬送路に対応する位置に移動させるのに応じて、搬出する搬送路側が低くなるように傾斜させて、搬入した被搬送物を、最小限の動力設備を用いて昇降搬送し、自重により搬出する昇降型の搬送受け渡し装置の提供する。
【解決手段】 第1搬送路から供給された被搬送物を、ガイド手段に案内されて降下する支持台と、当該支持台上に保持された載置部とを備える転送台を用いて、第1搬送路より低位置に設けられた第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、前記支持台(22)と前記載置部(21)とを回転自在に連結する結合部材(24)と、載置部における第2搬送路の反対側に設けられた延出可能なスライドレバー(23)と、当該スライドレバーを前記第2搬送路よりも高位置に固定するための係止部材(51)とを有する傾斜駆動構造を備えた昇降型の搬送受け渡し装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を、上下方向に搬送するための昇降型の搬送受け渡し装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従前より、あらゆる物品の製造工程には、ベルトコンベア等を使用して、物品を搬送するラインが設けられている。この搬送ラインが途中段差を有する場合には、この段差の間に、物品を垂直方向に搬送する装置が必要になる。
【0003】
このため、例えば特許文献1に示すような、鉛直方向及び水平方向に搬送可能な垂直搬送装置が設けられている。
しかしながら、この垂直搬送装置は、水平方向に搬送するために水平搬出ベルトを用いていることから、水平搬出ベルトを作動させるために動力設備を必要とし、構造が複雑であるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−187632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、搬送物を載置する台を、搬送物を搬出する搬送路に対応する位置に移動させるのに応じて、搬出する搬送路側が低くなるように傾斜させて、搬入した被搬送物を、最小限の動力設備を用いて昇降搬送し、自重により搬出する昇降型の搬送受け渡し装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記請求項1に記載の発明は、第1搬送路から供給された被搬送物を、昇降駆動する載置部を設けた転送台を用いて、当該第1搬送路と段差を有する第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、前記載置部は、前記第2搬送路に対応する位置に移動するのに応じて、前記第2搬送路側が低くなるように傾斜して、被搬送物を自重により第2搬送路へ供給する傾斜駆動構造を備えている昇降型の搬送受け渡し装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の昇降型の搬送受け渡し装置において、第1搬送路から供給された被搬送物を、ガイド手段に案内されて降下する支持台と、当該支持台上に保持された載置部とを備える転送台を用いて、前記第1搬送路より低位置に設けられた前記第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、前記傾斜駆動構造は、前記支持台と前記載置部とを第2搬送路側の端部で回転自在に連結する結合部材と、前記載置部における第2搬送路の反対側に設けられた延出可能なスライドレバーと、当該スライドレバーを前記第2搬送路よりも高位置に保持するための係止部材とを有する昇降型の搬送受け渡し装置である。
【0008】
上記請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の昇降型の搬送受け渡し装置において、第1搬送路から供給された被搬送物を、ガイド手段に案内されて上昇する支持台と、当該支持台上に保持された載置部とを備える転送台を用いて、前記第1搬送路より高位置に設けられた前記第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、前記傾斜駆動構造は、前記支持台と前記載置部とを第2搬送路側の端部で回転自在に連結する結合部材と、当該支持台の上側に回転自在に支持された回転体と、前記載置部の第2搬送路の反対側端部に連結され、当該回転体に巻回されて下方へ延在する牽引材及びその下端部に設けられたフックを備えるフック部材と、当該フックを係止して、前記支持台及び前記滑車を上昇させることにより前記第2搬送路の反対側が高くなるように前記載置部を傾斜させる係止部材とを有する昇降型の搬送受け渡し装置である。
【発明の効果】
【0009】
上記の請求項1に記載の発明によれば、載置部は、第2搬送路側が低くなるように傾斜して、被搬送物を自重により第2搬送路へ供給する傾斜駆動構造を備えているため、水平搬出するための動力設備を不要とし、これにより設備構造を簡易化することができる。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、第2搬送路の反対側に、係止部材に固定するための延出可能なスライドレバーが設けられており、当該スライドレバーを係止部材に保持することによって、載置部を、第2搬送路側が低くなるように傾斜させられるため、請求項1に記載の昇降型の搬送受け渡し装置に好適である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、支持台と載置部とを連結させる結合部材と、当該支持台に接続された回転体と、当該前記載置部の第2搬送路の反対側の端部に連結され当該回転体に巻回されて下方へ延在する牽引材及びその下端部に設けられたフックを備えるフック部材と、当該フックを係止して、前記支持台及び前記滑車を上昇させることにより前記第2搬送路の反対側が高くなるように前記載置部を傾斜させる係止部材とを有するため、請求項1に記載の昇降型の搬送受け渡し装置に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る垂直搬送受け渡し装置の第1実施形態を、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
本実施形態における垂直搬送受け渡し装置は、図1に示すように、第1搬送路1から供給された被搬送物wを載置する転送台2と、転送台2を垂直方向に案内するためのガイド手段3と、転送台2上に載置された被搬送物wを第2搬送路4へ供給するための傾斜駆動構造とを備えている。
【0014】
この転送台2は、被搬送物wを載置する載置部21及びこの載置部21を下面から保持する支持台22とからなり、第2搬送路側の端部において結合部材としての軸受け部材24により、連結されている。この軸受け部材24は、支持台22に設けられた軸24aが載置部21に設けられた軸受け24bに挿入されており、軸24aが内部に挿入された軸受け24bを備える載置部21が回転自在になるように連結されている。
【0015】
また、この載置部21は、第2搬送路4の反対側の端面に、延出可能であるスライドレバー23を備えている。
このスライドレバー23を保持させるため係止部材として棒状部材51が、図中奥側に設けられた支柱5から図中手前側に向けて設けられている。
このスライドレバー23及び棒状部材51は、上述の軸受け部材24とともに、前記傾斜駆動構造を構成している。
【0016】
この載置部21の被搬送物wの載置表面には、自由回転ローラが設けられており、傾斜駆動構造により載置部21を傾斜させることによって、被搬送物wを傾斜方向の下側に移動させるようになっている。
【0017】
上述の載置部21を下面から保持する支持台22は、図2に示すように、載置部21の右端下面及び左端下面に設けられ、各々ガイド手段3の側面に設けられた凹部に対応した凸部を有するL字構造の棒状部材である。エアーシリンダ(図示を略す)により下方から支持されつつ、このガイド手段3の側面に設けられた凹部に沿って昇降する。
【0018】
前記ガイド手段3は、転送台2の右端外部及び左端外部に垂直に設けられた軸部材であり、上述のように支持台22を案内して、転送台2を昇降可能とする凹部を有している。
【0019】
次に、本発明に係る垂直搬送受け渡し装置の第2実施形態を、図3及び図4を用いて、説明する。
この垂直搬送受け渡し装置は、図3に示すように、第1搬送路1から供給された被搬送物wを載置する転送台20と、転送台20を垂直方向に案内するためのガイド手段3と、転送台20上に載置された被搬送物wを第2搬送路4へ供給するための傾斜駆動構造とを備えている。
【0020】
この転送台20は、被搬送物wを載置する載置部21及びこの載置部21を下面から保持する支持台22とからなり、第2搬送路の反対側において結合部材としての軸受け部材24により連結されている。この軸受け部材24は、支持台22に設けられた軸24aが載置部21に設けられた傾斜方向に一定の幅を有する軸受け24cに挿入されている。
【0021】
この載置部21の被搬送物wの載置表面には、第1実施形態と同様に自由回転ローラが設けられている。
【0022】
この載置部21は、図4に示すように、その上方右端及び上方左端に支持台22と連動する回転体としての滑車25が設けられている。
そして、第2搬送路4の反対側の右端及び左端から設けられている牽引部材としてのロープ25bが、各々滑車25に巻回されて下方へと延在している。このロープ25bの下端部には、L字型のフック25cが設けられており、このロープ25b及びフック25cによりフック部材を構成している。
【0023】
上述の載置部21を下面から保持する支持台22は、その上側に連結具25aを用いて滑車25を支持している外は第1実施形態と同様である。
【0024】
前記ガイド手段3は、転送台20の右端外部及び左端外部に垂直に設けられた軸部材であり、上述の支持台22を案内して転送台20を昇降可能とする凹部を有している。また、この凹部の図中上側側面に、転送台20が第2搬送路4に対応する位置に移動した際、フック25cを係止させる位置に棒状部材からなる係止部材3aが設けられている。
【0025】
前記傾斜駆動構造とは、上述の支持台22と載置部21とを連結させる結合部材、当該支持台から接続された滑車25、ロープ25b及びフック25cを備えたフック部材並びに当該フック部材を係止させる係止部材3aからなる。
【0026】
上述のように第1実施形態により構成された垂直搬送受け渡し装置は、以下のように作用する。
第1搬送路1から供給された被搬送物wを、載置面が同等の高さにある転送台2に載置する。次いで、転送台2を、重力により降下させる。この際、支持台の下面が、エアーシリンダ(図示を略す)により保持されているため、徐々に降下するとともに、スライドレバー23が延出する。
【0027】
次いで、転送台2は、第2搬送路4の反対側に設けられたスライドレバー23が棒状部材51上に支持されて、載置部21が傾斜角度5〜20°となり、かつ、第2搬送路4と同等の高さになるまで支持台22が降下する。これにより、第2搬送路4に対応する位置に移動しながら、第2搬送路側を下端とする傾斜角が形成される。
【0028】
すると、被搬送物wは、重力により、自由回転ローラを回転させつつ移動して、第2搬送路4へと供給される。
【0029】
このようにして、転送台2は、第2搬送路4に対応する位置に移動することにより、載置部21に傾斜角が形成されるため、自重により被搬送物wを第2搬送路4へ供給する。このため、搬送受け渡し装置は、第2搬送路4へ供給するための動力構造を不要とする。
【0030】
次に、空になった転送台2を、エアーシリンダを用いて第1搬送路に対応する位置まで上昇させる。次いで、被搬送物wを転送台2に供給することにより、繰り返し、第1搬送路から搬入された被搬送物wを、第2搬送路4へと搬出する。なお、空になった転送台2を上昇させるための動力としては、エアーシリンダに限られず、例えば油圧式シリンダー等の他の動力を用いることができる。
【0031】
また、上述の第2実施形態により構成された垂直搬送装置は、以下のように作用する。
第1搬送路1から供給された被搬送物wを、載置面が同等の高さにある転送台20に載置する。
【0032】
次いで、転送台20は、支持台22の下面に設けられたエアーシリンダにより押し上げられて、上昇する。
【0033】
その後、支持台22が、載置面が第2搬送路4と同等の高さになる位置において停止する。これと並行して、フック25cが上昇して、係止部材3aに係止して固定される。
次いで、支持台22及び滑車25が上昇して、滑車25の上に巻回されたロープ25bが引っ張られて、載置部21の傾斜角度が5〜20°となる位置まで載置部21の第2搬送路4の反対側が上昇する。これにより、載置部21には、第2搬送路側を下端とする傾斜が設けられる。
【0034】
すると、被搬送物wは、重力により、自由回転ローラを回転させて、第2搬送路4へと供給される。
このようにして、転送台20は、第2搬送路4に対応する位置に移動することにより、載置部21に傾斜角が形成されるため、自重により被搬送物wを第2搬送路4へ供給する。このため搬送受け渡し装置は、第2搬送路4へ供給するための動力構造を不要とする。
【0035】
次に、空になった転送台20を、支持台22をエアーシリンダで保持しながら重力により、第1搬送路に対応する位置まで降下させる。次いで、被搬送物wを転送台20に供給することにより、繰り返し、第1搬送路から搬入された被搬送物wを、第2搬送路4へと搬出する。
【0036】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、水平な転送台(2,20)を、第2搬送路側に落下防止用のピンを設けて、同側に傾斜させて被搬送物を載置する転送台(2,20)としてもよい。また、垂直搬送する昇降型の搬送受け渡し装置を、斜めに搬送する昇降型の搬送受け渡し装置としてもよい。さらに、回転体は、滑車(25)に限定されず、スプロケットであってもよいし、牽引材は、ロープ(25b)に限定されず、ワイヤーやチェーンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態として示した垂直搬送受け渡し装置の断面模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態として示した垂直搬送受け渡し装置の平面模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態として示した垂直搬送受け渡し装置の断面模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態として示した垂直搬送受け渡し装置の平面模式図である。
【符号の説明】
【0038】
w・・・被搬送物
1・・・第1搬送路
2、20・・・転送台
21・・・載置部
22・・・支持台
23・・・スライドレバー
24・・・結合部材
25・・・滑車(回転体)
25a・・・連結具
25b・・・ロープ(牽引材)
25c・・・フック
3・・・ガイド手段
3a、51・・・棒状部材(係止部材)
4・・・第2搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1搬送路から供給された被搬送物を、昇降駆動する載置部を設けた転送台を用いて、当該第1搬送路と段差を有する第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、前記載置部は、前記第2搬送路に対応する位置に移動するのに応じて、前記第2搬送路側が低くなるように傾斜して、被搬送物を自重により第2搬送路へ供給する傾斜駆動構造を備えていることを特徴とする昇降型の搬送受け渡し装置。
【請求項2】
第1搬送路から供給された被搬送物を、ガイド手段に案内されて降下する支持台と、当該支持台上に保持された載置部とを備える転送台を用いて、前記第1搬送路より低位置に設けられた前記第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、
前記傾斜駆動構造は、
前記支持台と前記載置部とを第2搬送路側の端部で回転自在に連結する結合部材と、
前記載置部における第2搬送路の反対側に設けられた延出可能なスライドレバーと、
当該スライドレバーを前記第2搬送路よりも高位置に保持するための係止部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の昇降型の搬送受け渡し装置。
【請求項3】
第1搬送路から供給された被搬送物を、ガイド手段に案内されて上昇する支持台と、当該支持台上に保持された載置部とを備える転送台を用いて、前記第1搬送路より高位置に設けられた前記第2搬送路へ供給する昇降型の搬送受け渡し装置であって、
前記傾斜駆動構造は、
前記支持台と前記載置部とを第2搬送路側の端部で回転自在に連結する結合部材と、
当該支持台の上側に回転自在に支持された回転体と、
前記載置部の第2搬送路の反対側端部に連結され、当該回転体に巻回されて下方へ延在する牽引材及びその下端部に設けられたフックを備えるフック部材と、
当該フックを係止して、前記支持台及び前記滑車を上昇させることにより前記第2搬送路の反対側が高くなるように前記載置部を傾斜させる係止部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の昇降型の搬送受け渡し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−151524(P2006−151524A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340114(P2004−340114)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】