説明

昇降梯子固定金具

【課題】建設工事現場等の地下ピットへの作業者の昇降手段となる昇降用梯子を、地下ピットの山留め材等の固定物を利用して固定できるようにし、作業者の安全を図ることができる昇降用梯子固定金具を提供する。
【解決手段】本体部3に、現場の固定物40に取り外し可能に固着する固着手段2と、昇降用梯子30を取り外し可能に保持する保持手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降梯子固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事現場等の地下ピットで作業を行う際に、作業者の地下ピットへの昇降手段として昇降用梯子が使用されている。
【0003】
該昇降用梯子は地下ピットの底面より地上面に向けて起立して設置されるもので、この起立状態を固定する手段として、従来、単管をピット上部の地上部分に打ち込んで固定し、該単管を地上部分から上方に突出させ、この単管に前記昇降用梯子を番線で結束して固定していた。
【0004】
しかし、番線での固定では、単管と昇降用梯子との結束力が弱く、番線の緩み等で昇降用梯子がズレることがあり、昇降用梯子が不安定になる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、地下ピットの山留め材等の固定物を利用して昇降用梯子を固定できるようにし、作業者の安全を図ることができる昇降用梯子固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、本体部に、現場の固定物に取り外し可能に固着する固着手段と、昇降用梯子を取り外し可能に保持する保持手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記保持手段を、前記本体部の左右方向に位置して昇降用梯子の脚を保持する脚保持部材を設けるとともに、該一対の脚保持部材の相互の左右方向の間隔を調節できる左右幅調節手段を設けて構成したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記保持手段に、昇降用梯子が前方へ抜け外れることを防止する抜け止め部材を設けるとともに、該抜け止め部材の装着位置を前後方向に調節できる前後幅調節手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記左右幅調節手段を、前記本体部に形成されて、前記脚保持部材を左右方向に案内するガイドレール部と、本体部の両側部に設けた左右方向の第1長穴と第2長穴に前記脚保持部材を係止させて構成したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記各脚保持部材を、昇降用梯子の各脚の両側に位置する右板と左板を設けるとともに、これら両板の間に形成した挟持空間の前方を開口して構成し、前記前後幅調節手段を、前記右板と左板の先部に前後方向の第3長穴を設け、該第3長穴に前記抜け止め部材を係止させて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、本体部を固着手段で現場の固定物である山留め材などに固着し、昇降用梯子を保持手段により本体部に保持させることができることから、昇降用梯子の起立状態を強固に保持でき、昇降梯子の使用時におけるズレ等でを防止して、作業者の地下ピット等からの昇降の安全性を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、脚の相互の間隔が異なる種々の昇降用梯子においても、適宜適応させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、前後幅調節手段により、脚の前後幅が異なる昇降用梯子にも対応でき、かつ、昇降用梯子の起立傾斜角が異なる場合にも対応できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、ガイドレールによって脚保持部材の回転を防止し、昇降用梯子の安定を図り、かつ、脚保持部材の左右方向の調節も容易になる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、昇降用梯子の脚を、保持部材の前方から容易に保持部材へ挿入でき、かつ、抜け止め部材で、挿入した脚の外脱を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例における昇降梯子固定金具を山留め材に設置し、これに昇降用梯子を装着した状態を示す斜視図。
【図2】図1のE−E線断面図。
【図3】本発明の実施例における昇降梯子固定金具を山留め材に設置した斜視図。
【図4】本発明の実施例における昇降梯子固定金具を示す側面図。
【図5】図4の平面図。
【図6】図4の後面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を図1乃至図6に示す実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の昇降梯子固定金具1の実施例を示すもので、建築現場や土木現場(以下現場という)の固定物である山留め鋼材40に昇降梯子固定金具1を固定し、これに昇降用梯子30を保持させた状態を示す斜視図で、図2はそのE−E線断面図である。
【0018】
昇降梯子固定金具1は、図1,2に示すように、固着手段である固着部材2と、本体部3と、昇降用梯子30の保持手段である脚保持部材4からなり、本体部3の後面側に固着部材2が設けられ、本体部3の前面側に脚保持部材4が設けられている。本実施例では、本体部3に対し、固着部材2側を後面側A、脚保持部材4側を前面側B、左側をC、右側をDとして説明する。
【0019】
図3乃至5に示すように、固着部材2は基部5とクランプ部6からなり、基部5は、基板5aと両側板5bとで平面視が、後方が開口するコ字状に形成され、その基板5aが本体部3と溶接等で一体的に接合され、該基部5に設けられた回転軸7を軸として、クランプ部6が、前記両側板5b、5b内において上下方向に回動可能に連結されている。
【0020】
前記クランプ部6には挟持ボルト8が備えられており、図2に示すように、クランプ部6を後方へ倒し、クランプ部6に固設した挟持片6aと挟持ボルト8間に前記山留め鋼材(H鋼やシートパイル)40等の上端を介在させて、該挟持ボルト8を締め付けることにより、挟持片6aと挟持ボルト8で前記山留め鋼材40の上端部を挟持できるようになっている。
【0021】
前記本体部3は、図3に示すように、水平方向に長い長尺な基板10と、該基板10の上端から基板10と直交して前面側Bに突出する上板11と、前記基板10の下端から基板10と直交して前面側Bに突出する下板12からなり、これらが左右方向(C−D方向)全域に亘って一体成形されてガイドレール部13を構成している。
【0022】
なお、図5に示すように、前記本体部3の左右端間の寸法D1は、図1に示すように、昇降用梯子30の両側端間の幅D2より長尺に設定されている。
【0023】
また、図6に示すように、前記固着部材2の接合位置は、本体部3の左右方向における略中央部に設定されている。
【0024】
前記基板10の両端部には、図6に示すように、左右方向(C−D方向)を長手方向とする左右幅調節手段である第1長穴15と第2長穴16が夫々形成され、この第1長穴15と第2長穴16に後述するスタッドボルト23,23が、左右方向において摺動可能に挿通できるようになっている。
【0025】
図3に示すように、本体部3の前面側Bには、前記の第1長穴15と第2長穴16の前面側Bに位置して脚保持部材4,4が左右方向に摺動可能に夫々取付けられている。
【0026】
前記一対の脚保持部材4,4は、夫々固定用基板20と、該固定基板20の右端から固定基板20と直交して前面側Bに突出した右板21と、固定基板20の左端から固定基板20と直交して前面側Bに突出した左板22とからなり、右板21と左板22は、これらの間に、上下と前側が開口する挟持空間4Aが形成されるように、相互に平行して形成されている。
【0027】
これら固定基板20と右板21と左板22は、その上下幅を上板11と下板12の内のり寸法D3と略同一に設定され、上板11と下板12間の開口部よりガイドレール部13内に挿入でき、かつ、摺動可能になっている。
【0028】
前記固定基板20の後側面には、図4に示すように、脚保持部材4,4の後側方向に突出するスタッドボルト23,23が溶着され、該スタッドボルト23,23を前記第1長穴15及び第2長穴16に前面側Bから挿通して、これにナット24,24を締め付けることにより、脚保持部材4,4をガイドレール部13内において、左右方向(C−D方向)に摺動可能に装着されるとともに、その所望の位置を保持することができるようになっている。
【0029】
前記右板21と左板22の前後方向(A−B方向)における長さの寸法D4は、図2に示すように、昇降用梯子30の脚31、31における前後方向(A−B方向)の幅D5より長尺に設定され、更に、図1,5に示すように、右板21と左板22との挟持空間4Aの内のり寸法D6は、昇降用梯子30の脚31,31の左右方向(C−D方向)の幅D7より広く設定されている。
【0030】
図3に示すように、前記右板21と左板22の先端部、すなわち、前面側B方向に突設された先端部付近には、前後幅調節手段である第3長穴25,25がそれぞれ前後方向(A−B方向)を長手方向として貫通形成され、右板21側の第3長穴25と左板22側の第3長穴25は左右方向において、相互の位置が重なるように対峙している。
【0031】
この第3長穴25,25には、抜け止め部材である抜け止めボルト26が、第3長穴25,25内を前後方向(A−B方向)に摺動可能に挿通されるとともに、該抜け止めボルト26にナット26aを締め付けることにより、その抜け止めボルト26の所望の位置を保持することができるようになっている。
【0032】
なお、左右に一対設置される脚保持部材4,4の各部の説明については、双方同一であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
次に使用状態について説明する。
なお、図1,図2において、山留め鋼材40としてH鋼を用い、これに横矢板41が嵌合されている。
【0034】
まず、図4に示すように、昇降梯子固定金具1の固着部材2における起立した状態のクランプ部6(挟持ボルト8)を倒し、図2,3に示すように、該挟持ボルト8と挟持片6a間に、地下ピットの山留め鋼材40における上端部を入れ、クランプ部6の挟持ボルト8を締め付けて、挟持ボルト8と挟持片6aによって昇降梯子固定金具1を山留め鋼材40の上端部に固着する。なお、この時点では、抜け止めボルト26は装着されていない。
【0035】
次に、図2に示すように、昇降用梯子30の脚31,31を地下ピットの底面に起立させ、その上部を前記の昇降梯子固定金具1に向って傾倒させる。
【0036】
このとき、図1に示すように、両脚保持部材4,4の挟持空間4A,4Aが昇降用梯子30の脚31,31に位置するように、スタッドボルト23、23の位置を第1長穴15と第2長穴16内において移動して、脚保持部材4,4の位置を調節し、挟持空間4A内に、その前側の開口部から昇降用梯子30の脚31,31を挿入させる。
【0037】
その後、抜け止めボルト26、26を昇降用梯子30の前面側Bにおいて、第3長穴25,25に挿通させるとともに、該抜け止めボルト26、26の側面を昇降用梯子30の脚31,31の前面に当接させ、その位置において抜け止めボルト26、26をナット26aで固定する。これにより、昇降用梯子30の脚31は、その後面が本体部3に当り、前面が抜け止めボルト26に当って支持される。
【0038】
以上により、昇降用梯子30が昇降梯子固定金具1を介して山留め鋼材40に固定保持される。
【0039】
なお、昇降用梯子30を外す場合は、上記と逆の作業で行う。
前記の構成により本発明によれば、昇降用梯子30を山留め鋼材40(H鋼やシートパイル)に強固に、かつ、容易に固設できる。
【0040】
また、昇降用梯子30の使用時におけるズレ等を防止し、作業者の昇降時の安全性を確保できる。
【0041】
また、第1長穴15と第2長穴16により脚保持部材4,4を左右方向に移動調節可能に設けたことから、脚31,31の相互の間隔が異なる種々の昇降用梯子30においても、対応させることができる。
【0042】
更に、上板11と下板12によりガイドレール部13を構成したことから、前記脚保持部材4,4の左右方向における固定位置を直線上に保持できるほか、脚保持部材4,4の右板21,21と左板22,22を回転しないように保つことができ、かつ、右板21,21及び左板22,22の垂直姿勢を確保して脚31,31を容易に挟持空間4Aに挿入でき、かつ、脚31の左右方向の傾きも防止できる。
【0043】
更に、該抜け止めボルト26、26を第3長穴25,25に摺動可能に設けたことから、脚31,31の前後方向(A−B方向)の幅が異なる種々の昇降用梯子30においても、適宜適応させることができるとともに、昇降用梯子30の起立時の傾倒角度が変化して、挟持空間4A,4A内での前後方法(A−B方向)の幅が拡大、縮小したとしても、その幅に合わせて調節することができる。
【0044】
また、本発明において、仮に昇降用梯子30における脚31,31の底面が前面側Bへ移動して、昇降用梯子30が下降することがあっても、昇降用梯子30のステップが脚保持部材4,4に係止して、その下降を阻止することができる。
【0045】
なお、前記実施例は、現場の固定物をH鋼やシートパイルなどの山留め鋼材としたが、この固定物はその他の山留め材であってもよい。
【0046】
なお、本実施例では、固着部材2をクランプとしたが、これをキャッチクランプ等の適宜な固着部材を用い、山留め材の種類に合わせるようにしてもよい。また、現場に設けられた単管に固着するようにしてもよい。
【0047】
また、固着部材2を選択することにより、本発明は地下ピットだけでなく土木における法面に昇降用梯子を設ける場合にも適用でき、建築や土木の現場に使用できるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 昇降梯子固定金具
2 固着手段
3 本体部
4 脚保持部材(保持手段)
4A 挟持空間
13 ガイドレール部
15 第1長穴(左右幅調節手段)
16 第2長穴(左右幅調節手段)
21 右板
22 左板
25 第3長穴(前後幅調節手段)
26 抜け止め部材(抜け止めボルト)
30 昇降用梯子
31 脚
40 山留め鋼材(現場の固定物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に、現場の固定物に取り外し可能に固着する固着手段と、昇降用梯子を取り外し可能に保持する保持手段とを備えたことを特徴とする昇降梯子固定金具。
【請求項2】
前記保持手段を、前記本体部の左右方向に位置して昇降用梯子の脚を保持する脚保持部材を設けるとともに、該一対の脚保持部材の相互の左右方向の間隔を調節できる左右幅調節手段を設けて構成したことを特徴とする請求項1記載の昇降梯子固定金具。
【請求項3】
前記保持手段に、昇降用梯子が前方へ抜け外れることを防止する抜け止め部材を設けるとともに、該抜け止め部材の装着位置を前後方向に調節できる前後幅調節手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の昇降梯子固定金具。
【請求項4】
前記左右幅調節手段を、前記本体部に形成されて、前記脚保持部材を左右方向に案内するガイドレール部と、本体部の両側部に設けた左右方向の第1長穴と第2長穴に前記脚保持部材を係止させて構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の昇降梯子固定金具。
【請求項5】
前記各脚保持部材を、昇降用梯子の各脚の両側に位置する右板と左板を設けるとともに、これら両板の間に形成した挟持空間の前方を開口して構成し、前記前後幅調節手段を、前記右板と左板の先部に前後方向の第3長穴を設け、該第3長穴に前記抜け止め部材を係止させて構成したことを特徴とする請求項3又は4記載の昇降梯子固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−32762(P2011−32762A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180854(P2009−180854)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000241474)トヨタT&S建設株式会社 (52)
【Fターム(参考)】