説明

昇降機システム

【課題】乗客によるエレベータおよび他の交通手段のうちいずれを利用するかの適切な判断を支援するための案内を行なうことで乗客の移動の効率を向上させる。
【解決手段】エレベータ所要時間算出部13は、乗客がエレベータを利用した場合の各階までの所要時間を算出する。エスカレータ所要時間算出部14は、乗客がエスカレータを利用した場合の各階までの所要時間を算出する。判定処理部17は、算出結果をもとにある階床への移動にエスカレータが適していると判定した場合には、該当階床への移動にエスカレータの利用を勧めるメッセージを、エレベータの到着予想時間、混雑度および乗客の現在位置から各交通手段の乗場までの経路の案内情報とともに案内表示装置2に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータが設置される建物内において乗客への案内を行なう昇降機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客が建物内の階間をエレベータを用いて移動する際、この乗客に対する情報案内のために、例えば特許文献1に開示されるように、乗場呼びに対する乗りかご到着までの待ち時間の予測値を案内表示するものがあり、また、例えば特許文献2に開示されるように、乗車負荷と降車負荷とをチェックすることで乗りかご内の混雑度情報を案内表示するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−21031号公報
【特許文献2】国際公開第06/006205号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物内、例えばデパートや大規模量販店等では、各階床への交通手段として、エレベータの他にエスカレータが設置される場合がある。このような場合で、建物内の乗客が現在のフロアから別のフロアに移動したい場合には、乗客は移動先である行先階までエレベータおよびエスカレータの何れかを用いて移動する事になる。
【0005】
ここで、エスカレータのフロア間の昇降所要時間は一定だが昇降速度はエレベータより遅い。一方、エレベータの乗りかごの昇降速度はエスカレータより速いためエレベータのフロア間の昇降所要時間の期待値はエスカレータより短い。しかし、乗りかごが乗客のいるフロアに到着するまでの時間、および当該フロアに乗りかごが到着してから行先階までの昇降に要する時間は、かご位置や呼び登録の状況等によりばらつきが生じ、フロア間の昇降所要時間がエスカレータより遅くなることがある。
【0006】
このため、乗客は現在いるフロアから行先階への移動のためにエスカレータおよびエレベータの何れを利用すべきかを適切に判断することは困難である。前述したようにエレベータの待ち時間や混雑度が案内表示される場合、乗客はこれらの情報を参照すれば、エスカレータおよびエレベータの何れを利用すべきかの判断を行なうが、この判断結果は乗客による主観に左右される可能性が高く、行先階への移動にエスカレータを利用した方が行先階までの所要時間が短い場合でもエレベータを利用すべきと判断してしまうことで、そのままエレベータ乗場で待ち続ける可能性があり、エレベータが混雑してしまい、乗客の移動の効率の低下の要因となっていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、乗客によるエレベータおよび他の交通手段のうちいずれを利用するかの適切な判断を支援するための案内を行なうことで乗客の移動の効率を向上させることが可能になる昇降機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の請求項1に係る昇降機システムは、各階床に設けられる案内出力装置と、乗場呼び登録に対する前記案内出力装置が設けられる階床への乗りかごの到着への予想待ち時間を算出する待ち時間算出手段と、前記乗りかごの混雑度を算出する混雑度算出手段と、乗客が前記乗りかごを用いて他の階床まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記他の階床までの移動所要時間を各階床について算出する第1の所要時間算出手段と、前記乗客が他の交通手段を用いて他の階床まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記他の階床までの移動所要時間を各階床について算出する第2の所要時間算出手段と、前記第1および第2の所要時間算出手段による算出結果をもとに、各階床のうち、前記乗りかごおよび前記他の交通手段のうち、前記乗客の移動のための利用に適切な交通手段が前記他の交通手段である階床が存在するか否かを判定する判定手段と、前記待ち時間算出手段による算出結果、前記混雑度算出手段による算出結果、および前記判定手段により前記存在すると判定した階床への移動のための前記他の交通手段の利用の案内情報を前記案内出力装置により出力する案内出力制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る昇降機システムは、請求項1に記載の昇降機システムにおいて、前記判定手段は、各階床のうち、前記第1の所要時間算出手段により算出した移動所要時間より前記第2の所要時間算出手段により算出した移動所要時間の方が短い階床を、前記乗客の移動のための利用に適切な交通手段が前記他の交通手段である階床と判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る昇降機システムは、請求項1に記載の昇降機システムにおいて、前記第1の所要時間算出手段は、前記案内出力装置の設置箇所から最寄のエレベータ乗場までの前記乗客の移動所要時間、当該乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間の和を前記移動所要時間として算出することを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る昇降機システムは、請求項1に記載の昇降機システムにおいて、前記他の交通手段はエスカレータであり、前記第2の所要時間算出手段は、前記案内出力装置の設置箇所から最寄の前記エスカレータの乗場までの前記乗客の移動所要時間および当該乗客が当該乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間の和を前記移動所要時間として算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る昇降機システムは、請求項3に記載の昇降機システムにおいて、前記第1の所要時間算出手段は、各階床の乗場呼び登録情報、かご呼び登録情報および前記乗りかごの乗客の荷重をもとに、前記移動所要時間のうち、前記乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る昇降機システムは、請求項5に記載の昇降機システムにおいて、各階床の乗場にいる乗客の人数を検出する乗場人数検出手段をさらに備え、前記第1の所要時間算出手段は、各階床の乗場呼び登録情報、かご呼び登録情報、前記乗りかごの乗客の荷重、および前記乗場人数検出手段による検出結果をもとに、前記移動所要時間のうち、前記乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る昇降機システムは、請求項1に記載の昇降機システムにおいて、前記案内出力制御手段は、前記案内出力装置の設置箇所から前記他の交通手段の乗場までの経路を前記案内出力装置によりさらに出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乗客によるエレベータおよび他の交通手段のうちいずれを利用するかの適切な判断を支援するための案内を行なうことで乗客の移動の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの設置建物の玄関口、エレベータ乗場およびエスカレータ乗場の位置関係の一例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第1の例を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第2の例を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
本実施形態における昇降機システムの建物内にはエレベータおよびエスカレータが備えられる。この建物内にはエレベータの乗りかご3の昇降を制御するエレベータ制御装置1が備えられる。エレベータ制御装置1は、図示しないホール呼び釦やかご呼び釦により新規に入力された呼びに乗りかご3を応答させる。
【0018】
また、図1に示すように、本実施形態における昇降機システムは建物内交通案内機能を有する昇降機システムであり、案内表示装置2を備える。案内表示装置2は、建物の玄関階である1階を含む各フロアの特定の箇所において隣接して設置される。
【0019】
また、案内表示装置2は例えば液晶ディスプレイであり、エレベータやエスカレータといった交通手段の利用のための案内メッセージを表示したり、当該交通手段の乗場までの経路の案内マップ情報を表示したりする。
【0020】
図2は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの設置建物の玄関口、エレベータ乗場およびエスカレータ乗場の位置関係の一例を示す図である。
図2に示した例では、玄関階フロア30の玄関口31の側に案内表示装置2が設けられ、当該玄関口31、エレベータ乗場32、およびエスカレータ乗場33は互いに離れた箇所に設けられており、乗客は、それぞれの箇所の間を店舗エリア34で隔てられた通路35を介して徒歩で移動できるようになっている。
また、図示はしないが、乗りかご3は当該乗りかご3に対応して設けられるシーブに巻き掛けられたロープを介してカウンタウェイトと連結されており、エレベータ制御装置1からの制御にしたがった巻上機の駆動によるシーブの回転に伴い、カウンタウェイトとともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0021】
また、乗りかご3は、かご内の乗客の荷重値を検出するための荷重検出装置4を備える。荷重検出装置4により検出された荷重値を示す荷重信号は図示しないテールコードを介してエレベータ制御装置1に出力される。
【0022】
また、エレベータ制御装置1は、記憶装置11、現在時刻を計時する計時部12、エレベータ所要時間算出部13、エスカレータ所要時間算出部14、所要時間比較部15、混雑度算出部16、判定処理部17、および案内処理部18を備える。
記憶装置11は、不揮発性メモリなどの記憶媒体であり、計時部12、エレベータ所要時間算出部13、エスカレータ所要時間算出部14、所要時間比較部15、混雑度算出部16、判定処理部17、案内処理部18といった各部による処理動作のためのプログラムを記憶する他、荷重情報記憶部21、かご呼び情報記憶部22、乗場呼び情報記憶部23、エスカレータ情報記憶部24および学習情報記憶部25を有する。
【0023】
エレベータ所要時間算出部13は、案内表示装置2の設置箇所にいる乗客が各階床のそれぞれまでエレベータを用いて移動すると仮定した場合の、行先階到着までの所要時間であるエレベータ利用所要時間を階床ごとに算出する。
【0024】
このエレベータ利用所要時間は、乗客が案内表示装置2の設置箇所から同フロアのエレベータ乗場までの徒歩移動に要する時間の予想値である移動所要時間と、計時部12により計時する現在時刻から乗りかご3が前述した設置箇所の階床に到着するまでの待ち時間の予想値である到着予想時間と、乗りかご3が到着してから行先階と仮定した階床へ到着するまでの時間の予想値である出発後所要時間との和である。各フロアの、案内表示装置2の設置箇所から同フロアのエレベータ乗場までの徒歩移動に要する時間の予想値は記憶装置11に記憶されている。
【0025】
エスカレータ所要時間算出部14は、案内表示装置2の設置箇所にいる乗客が各階床のそれぞれまでエスカレータを用いて移動すると仮定した場合の、行先階到着までの所要時間であるエスカレータ利用所要時間を階床ごとに算出する。
【0026】
このエスカレータ利用所要時間は、乗客が案内表示装置2の設置箇所から同フロアのエスカレータ乗場までの徒歩移動に要する時間の予想値と、乗客がエスカレータ乗場に到着してからエスカレータに乗って行先階へ到着するまでの時間の予想値である乗車所要時間との和である。
【0027】
所要時間比較部15は、エレベータ所要時間算出部13により算出したエレベータ利用所要時間とエスカレータ所要時間算出部14により算出したエレベータ利用所要時間とを比較する。
【0028】
混雑度算出部16は、荷重検出装置4からの荷重信号で示される荷重値と乗りかご3の最大積載重量とをもとに当該乗りかご3の混雑度を算出する。乗りかご3の最大積載重量は記憶装置11に記憶されている。混雑度の算出結果は、乗りかご3内が混雑している事を示す「混雑」と当該乗りかご3内が混雑していない事を示す「平常」とが挙げられる。
【0029】
判定処理部17は、所要時間比較部15による比較結果をもとに、各階床のそれぞれを行先階と仮定した場合に、エレベータおよびエスカレータのうち当該行先階への乗客の移動に適した交通手段がエスカレータであるか否かを階床ごとに判定することで、各階床のうち、乗客による当該行先階への移動に適した交通手段がエスカレータである階床が存在するか否かを判定する。
【0030】
案内処理部18は、エレベータ所要時間算出部13により算出した到着予想時間および混雑度算出部16により算出した混雑度を案内表示装置2に表示させる案内出力制御手段である。加えて、案内処理部18は、ある階床への移動に適した交通手段がエスカレータである判定処理部17が判定した場合には、当該階床への移動のためにエスカレータの利用を勧める旨のメッセージを案内表示装置2に表示させる。
【0031】
記憶装置11の荷重情報記憶部21は、荷重検出装置4からの荷重信号で示される荷重値を記憶する。かご呼び情報記憶部22は、既登録のかご呼び情報を記憶する。乗場呼び情報記憶部23は、既登録の乗場呼び情報を記憶する。エスカレータ情報記憶部24は、各フロアの案内表示装置2の設置箇所から同フロアのエスカレータ乗場までの徒歩移動に要する時間の予想値である移動所要時間情報、および、エスカレータの各フロア間の乗車所要時間情報を記憶する。
【0032】
学習情報記憶部25は、各フロアのエレベータ乗場からの乗りかご3への上下方向の乗車人数や乗りかご3からの降車人数などを曜日や時間帯ごとに関連付けた情報を記憶する。この情報は学習情報であり、かご呼び情報や乗場呼び情報などをもとにエレベータ制御装置1により逐次更新することが可能である。
【0033】
次に、図1に示した構成の昇降機システムの動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。この実施形態では、玄関階フロア30の玄関口31に設けられた案内表示装置2を用いた場合の処理を説明するが、他のフロアに設けられる案内表示装置2を用いた場合の処理も同様である。
【0034】
まず、エレベータ制御装置1は、荷重検出装置4からの荷重信号で示される荷重値を記憶装置11の荷重情報記憶部21から読み出すことで取得し(ステップS1)、かご呼び登録情報を記憶装置11のかご呼び情報記憶部22から読み出すことで取得し(ステップS2)、乗場呼び登録情報を記憶装置11の乗場呼び情報記憶部23から読み出すことで取得する(ステップS3)。混雑度算出部16は、取得済みの荷重値および乗りかご3の最大積載重量をもとに当該乗りかご3の混雑度を算出する(ステップS4)。
【0035】
そして、エレベータ所要時間算出部13は、案内表示装置2の設置階床である玄関階フロア30の玄関口31玄関階のエレベータ乗場32までの徒歩移動に要する時間である移動所要時間を記憶装置11から読み出すことで取得する(ステップS5)。
【0036】
次に、エレベータ所要時間算出部13は、乗客がエレベータ乗場32に到着してから乗りかご3が玄関階に到着するまでの到着予想時間を、かご位置、既登録の呼び登録情報、学習情報記憶部25に記憶される情報、および計時部12により計時した現在時刻などをもとに算出する(ステップS6)。
また、エレベータ所要時間算出部13は、乗りかご3が玄関階に到着してから行先階と仮定した各階床へ到着するまでの出発後所要時間を、既登録の呼び登録情報、学習情報記憶部25に記憶される情報、および計時部12により計時した現在時刻などをもとに算出し(ステップS7)、同一の行先階についてステップS5,S6,S7の処理でそれぞれ求めた時間の和であるエレベータ利用所要時間を行先階ごとに算出する(ステップS8)。
【0037】
次に、エスカレータ所要時間算出部14は、乗客がエレベータではなくエスカレータを利用した場合の行先階と仮定した各階床までの所要時間であるエスカレータ利用所要時間を算出するために、案内表示装置2の設置階床である玄関階フロア30の玄関口31から同フロアのエスカレータ乗場33までの徒歩移動に要する時間である移動所要時間を記憶装置11のエスカレータ情報記憶部24から読み出すことで取得する(ステップS9)。
【0038】
そして、エスカレータ所要時間算出部14は、乗客がエレベータ乗場32に到着してからエスカレータに乗って行先階と仮定した各階床へ到着するまでの乗車所要時間を記憶装置11のエスカレータ情報記憶部24に記憶される乗車所要時間情報をもとに算出し(ステップS10)、同一の行先階についてステップS9,S10の処理でそれぞれ求めた時間の和であるエスカレータ利用所要時間を行先階ごとに算出する(ステップS11)。
【0039】
次に、所要時間比較部15は、同一の行先階についてエレベータ所要時間算出部13がステップS8の処理にて算出したエレベータ利用所要時間およびエスカレータ所要時間算出部14がステップS11の処理にて算出したエスカレータ利用所要時間を比較する(ステップS12)。
【0040】
判定処理部17は、所要時間比較部15による比較結果をもとに、各階床を行先階と仮定した場合の、当該行先階への移動に適した交通手段がエスカレータであるか否かを判定する(ステップS13)。
【0041】
この処理の具体例としては、判定処理部17は、ある階床についての所要時間比較部15による比較の結果、エスカレータ利用所要時間がエレベータ利用所要時間より短くない場合には、当該階床への移動に適した交通手段がエレベータであると判定し、エスカレータ利用所要時間がエレベータ利用所要時間より短い場合には、当該階床への移動に適した交通手段がエスカレータであると判定する。
【0042】
案内処理部18は、ある単一または複数の階床について、当該階床への移動に適した交通手段がエスカレータであると判定処理部17が判定した場合には(ステップS13のYES)、当該階床への移動についてエスカレータの利用を勧めるエスカレータ利用案内メッセージを生成する(ステップS14)。
【0043】
ステップS14の処理の終了後、案内処理部18は、ステップS4の処理により算出した混雑度、およびステップS6の処理により算出した到着予想時間を案内するための到着予想時間、混雑度案内メッセージを生成し(ステップS15)、これら到着予想時間、混雑度案内メッセージ、エスカレータ利用案内メッセージ、および乗客の現在位置である案内表示装置2の設置箇所からエレベータ乗場32までの経路およびエスカレータ乗場33までの経路を案内するための案内マップ情報を案内表示装置2に表示させる(ステップS16)。
【0044】
一方、案内処理部18は、いずれの階床についても、移動に適した交通手段がエレベータであると判定処理部17が判定した場合には(ステップS13のNO)、ステップS14の処理は省略し、ステップS4の処理により算出した混雑度、およびステップS6の処理により算出した到着予想時間を案内するための到着予想時間、混雑度案内メッセージを生成し、これら到着予想時間、混雑度案内メッセージ、および乗客の現在位置である案内表示装置2の設置箇所からエレベータ乗場32までの経路を案内するための案内マップ情報を案内表示装置2に表示させる。
【0045】
図4は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第1の例を示す図である。図5は、本発明の第1の実施形態における昇降機システムの案内表示装置に表示される建物内交通案内画面の第2の例を示す図である。
図4に示した画面は、玄関階からある階床への移動に適した交通手段がエスカレータであると判定された場合の建物内交通案内画面であり、乗客の現在位置からエレベータ乗場32およびエスカレータ乗場33までの案内マップ情報、エレベータの乗りかご3の到着予想時間、混雑度の案内メッセージ、およびエスカレータ利用案内メッセージがあわせて表示される。
【0046】
また、図4に示すように、建物内交通案内画面で表示される案内マップ情報におけるエレベータ乗場32までの経路の表示形態とエスカレータ乗場33までの経路の表示形態は異なっており、乗客が違いを視認できるようになっている。
【0047】
また、図5に示した画面は、玄関階から各階床への移動に適した交通手段が全てエレベータであると判定された場合の建物内交通案内画面であり、乗客の現在位置からエレベータ乗場32までの案内マップ情報、エレベータの乗りかご3の到着予想時間、混雑度の案内メッセージがあわせて表示される。
【0048】
以上のように、本発明の第1の実施形態における昇降機システムでは、エレベータの到着予想時間および混雑度を表示するのに加え、ある階床について、当該階床への移動に適した交通手段がエスカレータであると判定した場合は、当該階床への移動にエスカレータの利用を勧めるメッセージを表示する。これにより乗客は、自身の行先階までの移動に適した交通手段がエレベータである場合に当該エレベータの運行状況や混雑状況を把握できる事に加え、自身の行先階までの移動に適した交通手段がエスカレータである場合に、これを容易に把握することができるので、各乗客について、エレベータからエスカレータへの適切な利用分散を図ることができ、エレベータの混雑を低減できる。
また、乗客は、現在位置からエレベータやエスカレータの乗場までの経路を把握できるので、実際に利用する交通手段の乗場までの移動距離を短くすることができる。
【0049】
よって、乗客の行先階までの移動の効率を向上させることができ、乗客は時間を有効に活用できるようになる。また、建物の上層階への交通利便性が向上するので、上層階の資産価値が向上する。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、この実施形態に係る昇降機システムの構成のうち図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
図6は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの構成例を示す図である。
本発明の第2の実施形態における昇降機システムは、第1の実施形態と比較して、ホール人数検出装置5をさらに備える。
【0051】
ホール人数検出装置5は各階床のエレベータ乗場に設けられており、画像撮影などの手法により、設置箇所の乗場の乗客の人数を検出して、検出結果をエレベータ制御装置1へ出力する。
【0052】
図7は、本発明の第2の実施形態における昇降機システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
この実施形態では、第1の実施形態で説明したステップS1からS3の処理がなされた後、エレベータ制御装置1は、各フロアのホール人数検出装置5からの検出結果を取得する(ステップS21)。
【0053】
次に、混雑度算出部16は、荷重検出装置4からの荷重信号で示される荷重値、乗りかご3の最大積載重量、および各フロアのホール人数検出装置5からの検出結果をもとに当該乗りかご3の混雑度を算出する(ステップS22)。
【0054】
そして、エレベータ所要時間算出部13は、第1の実施形態で説明したステップS5の処理、つまりエレベータの乗場への移動所要時間の取得を行なう。
次に、エレベータ所要時間算出部13は、乗客がエレベータ乗場32に到着してから乗りかご3が玄関階に到着するまでの到着予想時間を、かご位置、既登録の呼び登録情報、学習情報記憶部25に記憶される情報、計時部12により計時する現在時刻およびホール人数検出装置5からの検出結果などをもとに算出する(ステップS23)。
また、エレベータ所要時間算出部13は、乗りかご3が玄関階に到着してから行先階と仮定した各階床へ到着するまでの出発後所要時間を、既登録の呼び登録情報、学習情報記憶部25に記憶される情報、計時部12により計時する現在時刻およびホール人数検出装置5からの検出結果などをもとに算出し(ステップS24)、ステップS5,S23,S24の処理でそれぞれ求めた時間の和であるエレベータ利用所要時間を算出する(ステップS25)。以後は、第1の実施形態で説明したステップS9以降の処理がなされる。
【0055】
以上のように、本発明の第2の実施形態における昇降機システムでは、第1の実施形態で説明した特徴に加え、各フロアのホール人数検出装置5からの検出結果をもとに乗りかご3の混雑度、エレベータの到着予想時間およびエレベータ利用所要時間を算出するので、判定処理部17による判定の精度および案内表示装置2に表示される情報の精度が向上する。
【0056】
また、各実施形態において、建物内のエレベータ以外の交通手段はエスカレータに限らず階段などであってもよい。
また、各フロアの案内表示装置2の設置箇所からエスカレータ乗場33までの徒歩移動に要する時間の予想値などの、記憶装置11に予め記憶される各種情報は、当該情報の変更のための所定の操作により変更できるようにしてもよい。
【0057】
また、各種情報の案内の形態は、案内表示装置2を用いた形態に限らず、音声出力装置を用いた形態であってもよい。
また、エスカレータ本体とエレベータ制御装置1を通信線で接続してエスカレータの運行状況を定期的に記憶装置11に記憶させ、運行していないエスカレータを経由する行先階にはエスカレータを交通手段として利用者に案内しないようにしてもよい。
【0058】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…エレベータ制御装置、2…案内表示装置、3…乗りかご、4…荷重検出装置、11…記憶装置、12…計時部、13…エレベータ所要時間算出部、14…エスカレータ所要時間算出部、15…所要時間比較部、16…混雑度算出部、17…判定処理部、18…案内処理部、21…荷重情報記憶部、22…かご呼び情報記憶部、23…乗場呼び情報記憶部、24…エスカレータ情報記憶部、25…学習情報記憶部、30…玄関階フロア、31…玄関口、32…エレベータ乗場、33…エスカレータ乗場、34…店舗エリア、35…通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階床に設けられる案内出力装置と、
乗場呼び登録に対する前記案内出力装置が設けられる階床への乗りかごの到着の予想待ち時間を算出する待ち時間算出手段と、
前記乗りかごの混雑度を算出する混雑度算出手段と、
乗客が前記乗りかごを用いて他の階床まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記他の階床までの移動所要時間を各階床について算出する第1の所要時間算出手段と、
前記乗客が他の交通手段を用いて他の階床まで移動すると仮定した場合の当該乗客の前記他の階床までの移動所要時間を各階床について算出する第2の所要時間算出手段と、
前記第1および第2の所要時間算出手段による算出結果をもとに、前記乗りかごおよび前記他の交通手段のうち、前記乗客の移動のための利用に適切な交通手段が前記他の交通手段である階床が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記待ち時間算出手段による算出結果、前記混雑度算出手段による算出結果、および前記判定手段により前記存在すると判定した階床への移動のための前記他の交通手段の利用の案内情報を前記案内出力装置により出力する案内出力制御手段と
を備えたことを特徴とする昇降機システム。
【請求項2】
前記判定手段は、
各階床のうち、前記第1の所要時間算出手段により算出した移動所要時間より前記第2の所要時間算出手段により算出した移動所要時間の方が短い階床を、前記乗客の移動のための利用に適切な交通手段が前記他の交通手段である階床と判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項3】
前記第1の所要時間算出手段は、
前記案内出力装置の設置箇所から最寄のエレベータ乗場までの前記乗客の移動所要時間、当該乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間の和を前記移動所要時間として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項4】
前記他の交通手段はエスカレータであり、
前記第2の所要時間算出手段は、
前記案内出力装置の設置箇所から最寄の前記エスカレータの乗場までの前記乗客の移動所要時間および当該乗客が当該乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間の和を前記移動所要時間として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。
【請求項5】
前記第1の所要時間算出手段は、
各階床の乗場呼び登録情報、かご呼び登録情報および前記乗りかごの乗客の荷重をもとに、前記移動所要時間のうち、前記乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の昇降機システム。
【請求項6】
各階床の乗場にいる乗客の人数を検出する乗場人数検出手段をさらに備え、
前記第1の所要時間算出手段は、
各階床の乗場呼び登録情報、かご呼び登録情報、前記乗りかごの乗客の荷重、および前記乗場人数検出手段による検出結果をもとに、前記移動所要時間のうち、前記乗客が前記エレベータ乗場に到着してから当該エレベータ乗場に乗りかごが到着するまでの所要時間、および前記乗りかごが前記エレベータ乗場に到着してから前記他の階床に到着するまでの所要時間を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の昇降機システム。
【請求項7】
前記案内出力制御手段は、
前記案内出力装置の設置箇所から前記他の交通手段の乗場までの経路を当該案内出力装置によりさらに出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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