説明

昇降装置の駆動システム及びそれを備えた無動力昇降装置

【課題】回生エネルギの利用効率を向上することができる昇降装置の駆動システムを提供する。
【解決手段】一次電源3が供給される定電圧・定電流電源装置4、電源装置4の出力側に接続された逆流防止手段である逆流防止ダイオード5、逆流防止ダイオード5の二次側に接続され、その二次側に昇降装置の負荷9,11が接続されるスイッチ7、逆流防止ダイオード5とスイッチ7の間に接続された回生エネルギ蓄電用のキャパシタ6、電源装置4を制御する蓄電装置制御部8を備え、一次電源3がオンになると、電源装置4から予め設定された定電流モードにて一定電流でキャパシタ6を充電し、予め設定された電圧値まで充電が進むと、電源装置4から出力電圧が一定の定電圧モードに切り替えてキャパシタ6を充電し、電源装置4が定電圧モードに切り替わると、蓄電装置制御部8がスイッチ7をオンにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置の駆動に適した駆動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降装置の駆動システムは、一般的に、商用交流電源、この交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部(整流回路)、コンバータ部により変換された直流電圧を平滑化する直流リアクトル及び直流コンデンサからなる平滑回路部、平滑回路部により平滑化された直流電圧を所要周波数の交流電圧に変換して電動機に供給するインバータ部、並びに、所定の速度指令及び電動機の回転速度に基づいてインバータ部を制御して速度指令に応じた周波数の交流電圧を出力させる駆動制御部からなる。
このような駆動システムを用いて昇降装置をインバータ制御する場合、昇降装置が下降する際等に電動機が発電機となって回生エネルギ(電力)がインバータ側に帰ってくる。
【0003】
トランジスタインバータの場合、トランジスタに並列に接続された帰還ダイオードが電動機を電源とする整流器として働き、直流母線回路に接続された平滑コンデンサに電動機からの回生電力が流入してくることから、インバータ内部の直流母線回路電圧が引き上げられ、放置すれば回生失効等の問題を招くことになるため、インバータの内部素子を保護する目的で、回生過電圧検知が作動し、事前にアラーム停止するように設計されている。
ここで、決められたシーケンスに従って速度制御するためには、直流母線回路電圧を所定の定電圧に維持するように制御しなければならないため、回生エネルギの処理方法として、直流主回路に制動ユニットを設置し、直流母線回路電圧が一定値以上に上昇した場合に駆動制御部からの指令で制動ユニットのトランジスタをオンにしてこのトランジスタに直列に接続された抵抗器に回生エネルギを流し込み、熱として消費することで直流母線回路の電圧上昇を防止する方法が多用されている。
【0004】
しかしながら、このような用法では、回生エネルギを全て熱として捨ててしまうことから、回生運転で得られる電力を有効に利用できないという問題があるため、回生エネルギを蓄電して再利用するシステムとして、電動機単体ごとに充放電回路とともに設置した電気二重層キャパシタに蓄電する方法があり(例えば、特許文献1参照。)、この方法では、回生電力を制動抵抗で消費させる一般的な昇降装置の駆動システムの構成に対して、新たに、直流母線回路に接続される充放電回路(双方向DC/DCコンバータ)、その充放電回路の出力側に接続され、充電制御時に平滑コンデンサに貯蔵する電気二重層キャパシタ、平滑コンデンサに生ずる電圧を検出する電圧検出手段、及び、この検出電圧と予め設定された充電または放電動作の判断基準電圧を比較して充放電回路を制御する充放電制御部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−263408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の昇降装置の駆動システムの構成では、回生電力を双方向DC/DCコンバータを通して充放電するため、充電時及び放電時ともに電圧変換ロスを伴う欠点がある。
その上、電動機単体ごとに回生蓄電したエネルギを各電動機の力行運転時に使い切ることができれば有効なものであるが、回生運転が主体の昇降装置では、蓄電装置の蓄電量が満杯となった時点で回生電力の行き場がなくなり、直流母線間電圧が予め設定された制動ユニットのトランジスタの起動電圧に到達し、この直流母線間電圧が設定電圧以上の間は抵抗器に放電して熱エネルギとして捨ててしまうことになる。
【0007】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、回生エネルギを有効活用することができる昇降装置の駆動システム及びそれを備えた無動力昇降装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る昇降装置の駆動システムは、前記課題解決のために、一次電源が供給される定電圧・定電流電源装置と、該定電圧・定電流電源装置の出力側に接続された逆流防止手段と、該逆流防止手段の二次側に接続され、その二次側に昇降装置の負荷が接続されるスイッチと、前記逆流防止手段と前記スイッチの間に接続された回生エネルギ蓄電用のキャパシタと、前記定電圧・定電流電源装置を制御する蓄電装置制御部とを備え、前記一次電源がオンになると、前記定電圧・定電流電源装置から予め設定された定電流モードにて一定電流で前記キャパシタを充電し、予め設定された電圧値まで充電が進むと、前記定電圧・定電流電源装置から出力電圧が一定の定電圧モードに切り替えて前記キャパシタを充電し、前記定電圧・定電流電源装置が定電圧モードに切り替わると、前記蓄電装置制御部が前記スイッチをオンにすることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、キャパシタ電位が電源装置出力電圧よりも大きい場合には、電位の高いキャパシタ側の電力から消費されるとともに、回生電力を双方向DC/DCコンバータを通して充放電しないことから双方向DC/DCコンバータによる電圧変換ロスがないため、キャパシタに蓄電された回生電力を有効に活用することができる。
その上、定電圧・定電流電源装置による定電流モード及び定電圧モードを切り替えて行うキャパシタの充電により、電荷が貯まっていない状態でキャパシタに電圧を掛けた際に流れる非常に大きな突入電流を防止することができるため、電源装置の破損を防止することができる。
【0010】
ここで、前記スイッチの負荷側に接続された、昇降装置の電動機駆動用インバータ部と、該インバータ部と同じ直流母線回路に接続された駆動制御部と、該駆動制御部に並列に接続された放熱抵抗及び前記駆動制御部によって制御される放熱抵抗用スイッチとを備え、前記蓄電装置制御部で前記キャパシタの蓄電量を監視しておき、前記駆動制御部で予測される前記昇降装置の電動機の動作並びに前記駆動制御部の消費分で回生エネルギを消費しきれない場合に、予測される回生エネルギ量が前記キャパシタの蓄電可能容量を超えると判断した場合のみ、前記放熱抵抗用スイッチをオンにすると好ましい。
このような構成によれば、昇降装置で発生した回生エネルギを昇降装置の複数の電動機相互間及び駆動制御部等の負荷で相互利用することができるため、回生エネルギの利用効率を向上することができる。
その上、駆動制御部で予測される昇降装置の電動機の動作並びに駆動制御部の消費分で回生エネルギを消費しきれない場合に、予測される回生エネルギ量がキャパシタの蓄電可能容量を超えると判断した場合のみ、放熱抵抗用スイッチをオンにして放熱抵抗により放熱するように構成しており、負荷となる装置の動作を予測して放熱抵抗に電流を流すタイミングを制御しているため、熱エネルギにして捨てる量を抑制することができる。
【0011】
また、前記駆動制御部が通常の蓄電可能量を超えて回生エネルギが発生すると判断した場合に、前記蓄電装置制御部に対して「過大回生予告信号」を出力し、この信号を受けた前記蓄電装置制御部からの「出力電圧・降圧指示」により前記定電圧・定電流電源装置がその定電圧出力値を予め設定された電圧値まで低下させると好ましい。
このような構成によれば、定電圧・定電流電源装置の降圧した定電圧出力値の電圧値までキャパシタの蓄電エネルギが優先的に負荷に供給されてキャパシタの蓄電量が減少することから回生電力の蓄電スペースを増大させることができ、特別な事態を想定して容量の大きなキャパシタを準備する必要がなくなるため製造コストを低減することができる。
【0012】
さらに、前記キャパシタのアシストがないと前記定電圧・定電流電源装置の出力電流定格を超える場合に、前記駆動制御部が前記蓄電装置制御部に対して「アシスト要求信号」を出力し、この信号を受けた前記蓄電装置制御部からの「出力電圧・昇圧指示」により前記定電圧・定電流電源装置がその定電圧出力値を予め設定された電圧値まで上昇させると好ましい。
このような構成によれば、定電圧・定電流電源装置の昇圧した定電圧出力値の電圧値までキャパシタが充電されて蓄電量が増大してキャパシタによるアシスト電力量を増大させることができ、特別な事態を想定して出力電流定格の大きな定電圧・定電流電源装置を準備する必要がなくなるため製造コストを低減することができる。
【0013】
本発明に係る昇降装置の駆動システムを備えた無動力昇降装置は、前記昇降装置の駆動システムを用いて駆動される昇降装置であって、該昇降装置が、前記定電圧・定電流電源装置から前記キャパシタへの初回の充電によりそれ以降は前記定電圧・定電流電源装置への一次電源供給が不要になる回生運転が主体の昇降装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る昇降装置の駆動システム及びそれを備えた無動力昇降装置によれば、キャパシタに効率的に充電した回生エネルギを有効活用することができること、昇降装置で発生した回生エネルギを昇降装置の複数の電動機相互間及び駆動制御部等の負荷で相互利用して回生エネルギの利用効率を向上することができること、負荷となる装置の動作を予測して放熱抵抗に電流を流すタイミングを制御して熱エネルギにして捨てる量を抑制することができること等の顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無動力昇降装置の一例である荷降ろしリフタの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る昇降装置の駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図3】蓄電装置の動作説明用ブロック図である。
【図4】駆動制御部の蓄電装置制御部への「過大回生予告信号」出力により、定電圧・定電流電源装置がその定電圧出力値を低下させてキャパシタの回生電力蓄電スペースを増大させる動作の説明用ブロック図である。
【図5】駆動制御部の蓄電装置制御部への「アシスト要求信号」出力により、定電圧・定電流電源装置がその定電圧出力値を上昇させてキャパシタのアシスト電力量を増大させる動作の説明用ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に概略構成図を示す荷下ろしリフタ1は、スライドフォークにより水平方向に進退することができる荷受け部を備えたケージCを吊り下げた状態で昇降させることができ、高位置にあるワークWを低位置に移載するものである。
一端にケージCが取り付けられたローラーチェーン(ベルト等であってもよい。)Rが、高位置のスプロケットP1、低位置のスプロケットP2及び高位置のスプロケットP3に掛け渡され、ローラーチェーンRの他端にはウェイトBが取り付けられており、スプロケットP2には昇降用電動機M1が連結され、ケージCのスライドフォークはスライドフォーク用電動機M2により駆動される。
このような構成の荷下ろしリフタ1は、高位置でケージCにワークWを積載して下降する動作は勿論、低位置でワークWを受け渡して空荷でケージCが上昇する動作の際にも回生運転となるように重量バランスが設定されている回生運転が主体の昇降装置であり、図2に示す本発明の実施の形態に係る昇降装置の駆動システム2により駆動制御される。
【0017】
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る昇降装置の駆動システム2は、一次電源である例えば三相交流200Vの商用交流電源3を定電圧・定電流電源装置4を介してインバータ部9へ供給しており、蓄電装置Sを構成する定電圧・定電流電源装置4の出力側に逆流防止手段として例えば逆流防止ダイオード5が接続され、回生エネルギ蓄電用のキャパシタであるリチウムイオンキャパシタ6とさらにその二次側(負荷側)のスイッチ7を経由して、昇降用電動機M1駆動用インバータ9A及びスライドフォーク用電動機M2駆動用インバータ9B並びにDC/DCコンバータ10を介して駆動制御部11等が接続され、図1に示す荷下ろしリフタ1で発生した回生エネルギを電動機M1,M2相互間及び駆動制御部11等の負荷で相互利用可能なように接続することにより回生エネルギの有効利用が可能なシステムとなっている。
なお、回生エネルギ蓄電用のキャパシタはリチウムキャパシタ6に限定されるものではなく、このキャパシタには、リチウムイオンキャパシタ6の他、電気二重層キャパシタ及び急速充放電が可能な特性を持った2次電池も含まれる。
【0018】
ここで、図2に示す昇降装置の駆動システム2における従来システムとの主な相違点は、インバータ部9に供給する直流電源を発生させる部分にあり、本発明の昇降装置の駆動システム2では、定電圧・定電流電源装置4を用いて直流電源を発生させている。
すなわち、出力側にダイオードを経由して接続されたリチウムイオンキャパシタ6は内部抵抗が非常に小さいことから、電荷が貯まっていない状態で電圧を掛けると非常に大きな突入電流が流れて電源装置を破損してしまう危険性があるため、定電圧・定電流電源装置4を用いており、最初に電圧を印加するときは予め設定された定電流モードにて一定電流でリチウムイオンキャパシタ6を充電して行き、予め設定された電圧値(例えば、V1=282V)まで充電が進んだときには出力電圧を一定とする定電圧モードに切り替えるようにして突入電流が流れるのを防止している。
また、蓄電装置Sの蓄電装置制御部8は、定電圧・定電流電源装置4から出力される信号が「定電流」から「定電圧」に切り替わったことを判断してスイッチ7をオンにするように制御しており、これによりリチウムイオンキャパシタ6の初期充電中は駆動制御部11が機能しないようにインターフェース12を介してインターロックを取っている。
なお、直流母線の電流及び電圧は、電流計A及び電圧計Vにより測定され、その信号が蓄電装置制御部8へ送られる。
【0019】
図2に示す昇降装置の駆動システムにおいて、大きな回生エネルギを発生するものは昇降用電動機M1であり、昇降用電動機M1により発生した回生エネルギを消費するように、スライドフォーク用電動機M2駆動用インバータ9B及び駆動制御部11が昇降用電動機M1駆動用インバータ9Aと同じ直流母線回路に接続されており、スライドフォーク用電動機M2駆動用インバータ9B及び駆動制御部11の負荷だけでは回生エネルギを完全に消費できない場合には、駆動制御部11によって制御される放熱抵抗用スイッチ13をオンにして駆動制御部11に並列に接続された放熱抵抗14に電流を流して熱エネルギとして消費させる。
ここで、放熱抵抗14に電流を流すタイミングは、蓄電装置制御部8によりリチウムイオンキャパシタ6の電圧(蓄電量)を監視しておき、駆動制御部11で予測される荷下ろしリフタ1の電動機M1及びM2の動作並びに駆動制御部11の消費分で回生エネルギを消費しきれない場合に、予測される回生エネルギ量がリチウムイオンキャパシタ6の蓄電可能容量を超えると判断した場合のみ、放熱抵抗用スイッチ13をオンにする。
このような構成によって、直流母線回路電圧が予め設定された電圧値を超えた場合に必然的に放電(放熱)するのではなく、負荷となる装置の動作を予測して放熱抵抗14に電流を流すタイミングを制御しているため、熱エネルギにして捨てる量を抑制することができる。
【0020】
次に図3に示す電流の流れI1〜I4に関する蓄電装置Sの動作を説明する。
(1)電流の流れI1に関して
定電圧・定電流電源装置4の一次電源投入により、リチウムイオンキャパシタ6の定電流充電が開始され、その後、リチウムイオンキャパシタ6の電位が設定値(例えば、V1=282V)に到達すると、定電圧・定電流電源装置4は定電圧出力に切り替わる。
定電流モードから定電圧モードへの切替りを検出すると、蓄電装置制御部8(図2参照。)でスイッチ7をオンにして負荷側へ電力を供給する。
その後、蓄電装置制御部8はインターフェース12を介して駆動制御部11(図2参照。)に対してインバータ運転可信号を出力する。
【0021】
(2)電流の流れI2に関して
図4において、リチウムイオンキャパシタ6に回生電力が蓄電されていない状態においてはV1=V2となっており、負荷側から回生電力が帰ってくると、リチウムイオンキャパシタ6に蓄電され、リチウムイオンキャパシタ6の電位は定電圧出力値(V1=282V)を超えて上昇する。何らかの状況下で、駆動制御部11(図2参照。)が通常の蓄電可能量を超えて回生エネルギが発生すると判断した場合に、蓄電装置制御部8に対して「過大回生予告信号」を出力し、蓄電装置制御部8からの指令「出力電圧・降圧指示」により定電圧・定電流電源装置4がその定電圧出力値V1を予め設定された電圧値まで例えば数%程度低下させる(例えば、V1を282Vから270Vに変更する)ように構成することができる。
このような構成により、降圧した定電圧出力値V1の電圧値(例えば、270V)までリチウムイオンキャパシタ6の蓄電エネルギが優先的に負荷に供給される(具体的には、電動機M1,M2及びインバータ部9並びに駆動制御部11等の負荷に供給して消費し、それでも足りない場合は、図2の放熱抵抗用スイッチ13をオンにして放熱抵抗14に放電する)ことから、リチウムイオンキャパシタ6の蓄電量が減少するため、回生電力の蓄電スペースを増大させることができる。
よって、特別な事態を想定して容量の大きなリチウムイオンキャパシタ6を準備する必要がなくなるため製造コストを低減することができる。
【0022】
(3)電流の流れI3に関して
回生電力が蓄電された状態(リチウムイオンキャパシタ6の電位がV1=282V以上の状態)で負荷側に電流が流れると、電位の高いリチウムイオンキャパシタ6側の電力から消費されるとともに、回生電力を双方向DC/DCコンバータを通して充放電しないことから双方向DC/DCコンバータによる電圧変換ロスがないため、リチウムイオンキャパシタ6に蓄電された回生電力が有効に活用される。
(4)電流の流れI4に関して
定電圧・定電流電源装置4が定電圧モードで動作中であってリチウムイオンキャパシタ6に蓄電された回生電力が(3)の動作により消費され、さらにキャパシタ電位Vc<電源装置出力電圧Voとなっている状態においては、負荷側へ消費電流が流れた場合は定電圧・定電流電源装置4から電力が供給される。
さらに、負荷電流が定電圧・定電流電源装置4の電流制限値(例えば、25A)を超えて流れた場合を想定すると、定電圧・定電流電源装置4の出力電圧は低下(垂下特性)するので、Vc>Voとなった時点でキャパシタ6側からアシスト電流が負荷側へ流れることになる。
この結果、キャパシタ電位Vcは282Vよりさらに低下することになるため、何らかの原因で設計量を超えるアシスト電流(電力)がキャパシタ6から供給されて直流母線電圧Vdcが設定値(例えば、V3=260V)を下回ると、蓄電装置制御部8がインターフェース12を介して駆動制御部11に対して過放電アラームを出力してインバータ運転可信号をオフにするため電動機M1,M2の運転が停止する。
【0023】
ここで、図5において、リチウムイオンキャパシタ6に回生電力が蓄電されている状態においてはV1<V2となっているが、何らかの原因で回生電力の蓄積がなくなり、V1=V2となっていたとする。
このような状況下で、例えば、負荷に複数の電動機が接続され、これらが同時に起動する場合でリチウムイオンキャパシタ6のアシストがないと定電圧・定電流電源装置4の出力電流定格を超えるような場合、駆動制御部11(図2参照。)から蓄電装置制御部8に対して「アシスト要求信号」を出力し、蓄電装置制御部8からの指令「出力電圧・昇圧指示」により定電圧・定電流電源装置4がその定電圧出力値V1を予め設定された電圧値まで例えば数%程度上昇させる(例えば、V1を282Vから290Vに変更する)ように構成することができる。
このような構成により、昇圧した定電圧出力値V1の電圧値(例えば、290V)までリチウムイオンキャパシタ6が充電されて蓄電量が増大するため、リチウムイオンキャパシタ6によるアシスト電力量を増大させることができる。
よって、特別な事態を想定して出力電流定格の大きな定電圧・定電流電源装置4を準備する必要がなくなるため製造コストを低減することができる。
【0024】
(5)電流の流れI1に関して(再充電)
(4)の動作において、リチウムイオンキャパシタ6がアシストしながら荷下ろしリフタ1の動作が終了すると、キャパシタ電位Vcは定電圧出力値(例えば、V1=282V)より低下している。また、荷下ろしリフタ1の動作が止まれば負荷電流は電源装置の電流制限値(例えば、25A)未満に低下するので、定電圧・定電流電源装置4の出力電圧Voは設定値(例えば、V1=282V)まで回復する。その結果、Vo>Vcとなるので、ここで再度リチウムイオンキャパシタ6への充電が行われる。
【0025】
図1に示す高位置にあるワークWを低位置に移載する荷下ろしリフタ1は、上述のとおり回生運転が主体の昇降装置であり、図2に示す昇降装置の駆動システム2により駆動制御され、昇降用電動機M1により発生した回生エネルギをスライドフォーク用電動機M2及び駆動制御部11で消費しても回生エネルギが残存し、これらの負荷だけでは回生エネルギを完全に消費できない場合には放熱抵抗14により回生エネルギが消費される。
すなわち、定電圧・定電流電源装置4によりリチウムイオンキャパシタ6を最初に1回充電しておくことにより、定電圧・定電流電源装置4に対する一次側からの電源供給がなくても、荷下ろしリフタ1の動作により発生する回生エネルギの再利用により、この装置を連続して運転することができる無動力(無電源)昇降装置が構成される。
【0026】
以上の説明においては、昇降装置の駆動システム2により無動力昇降装置である荷下ろしリフタ1を駆動制御する場合を説明したが、昇降装置の駆動システム2が適用される昇降装置は無動力昇降装置に限定されるものではなく、定電圧・定電流電源装置4からリチウムイオンキャパシタ6への初回充電後にも定電圧・定電流電源装置4に対する一次側からの電源供給が必要な昇降装置も含まれる。
【符号の説明】
【0027】
A 電流計
B ウェイト
C ケージ
M1 昇降用電動機
M2 スライドフォーク用電動機
P1,P2,P3 スプロケット
S 蓄電装置
V 電圧計
R ローラーチェーン
W ワーク
1 荷下ろしリフタ(無動力昇降装置)
2 昇降装置の駆動システム
3 商用交流電源
4 定電圧・定電流電源装置
5 逆流防止ダイオード(逆流防止手段)
6 リチウムイオンキャパシタ(キャパシタ)
7 スイッチ
8 蓄電装置制御部
9 インバータ部
9A,9B インバータ
10 DC/DCコンバータ
11 駆動制御部
12 インターフェース
13 放熱抵抗用スイッチ
14 放熱抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次電源が供給される定電圧・定電流電源装置と、
該定電圧・定電流電源装置の出力側に接続された逆流防止手段と、
該逆流防止手段の二次側に接続され、その二次側に昇降装置の負荷が接続されるスイッチと、
前記逆流防止手段と前記スイッチの間に接続された回生エネルギ蓄電用のキャパシタと、
前記定電圧・定電流電源装置を制御する蓄電装置制御部とを備え、
前記一次電源がオンになると、前記定電圧・定電流電源装置から予め設定された定電流モードにて一定電流で前記キャパシタを充電し、予め設定された電圧値まで充電が進むと、前記定電圧・定電流電源装置から出力電圧が一定の定電圧モードに切り替えて前記キャパシタを充電し、前記定電圧・定電流電源装置が定電圧モードに切り替わると、前記蓄電装置制御部が前記スイッチをオンにすることを特徴とする昇降装置の駆動システム。
【請求項2】
前記スイッチの負荷側に接続された、昇降装置の電動機駆動用インバータ部と、
該インバータ部と同じ直流母線回路に接続された駆動制御部と、
該駆動制御部に並列に接続された放熱抵抗及び前記駆動制御部によって制御される放熱抵抗用スイッチとを備え、
前記蓄電装置制御部で前記キャパシタの蓄電量を監視しておき、前記駆動制御部で予測される前記昇降装置の電動機の動作並びに前記駆動制御部の消費分で回生エネルギを消費しきれない場合に、予測される回生エネルギ量が前記キャパシタの蓄電可能容量を超えると判断した場合のみ、前記放熱抵抗用スイッチをオンにする請求項1記載の昇降装置の駆動システム。
【請求項3】
前記駆動制御部が通常の蓄電可能量を超えて回生エネルギが発生すると判断した場合に、前記蓄電装置制御部に対して「過大回生予告信号」を出力し、この信号を受けた前記蓄電装置制御部からの「出力電圧・降圧指示」により前記定電圧・定電流電源装置がその定電圧出力値を予め設定された電圧値まで低下させる請求項2記載の昇降装置の駆動システム。
【請求項4】
前記キャパシタのアシストがないと前記定電圧・定電流電源装置の出力電流定格を超える場合に、前記駆動制御部が前記蓄電装置制御部に対して「アシスト要求信号」を出力し、この信号を受けた前記蓄電装置制御部からの「出力電圧・昇圧指示」により前記定電圧・定電流電源装置がその定電圧出力値を予め設定された電圧値まで上昇させる請求項2又は3記載の昇降装置の駆動システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項の昇降装置の駆動システムを用いて駆動される昇降装置であって、
該昇降装置が、前記定電圧・定電流電源装置から前記キャパシタへの初回の充電によりそれ以降は前記定電圧・定電流電源装置への一次電源供給が不要になる回生運転が主体の昇降装置である、昇降装置の駆動システムを備えた無動力昇降装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−197157(P2012−197157A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63702(P2011−63702)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】