説明

昇降設備

【課題】簡易かつ容易に、及び広範な分野にわたって使用可能であるとともに、ユーザが他の手段を用いずに運搬することが可能な、特に比較的高所に対して適した昇降設備を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つのレール状の支柱1と、該支柱に沿って延設された少なくとも1つのガイド部材17と、前記支柱及び/又は前記ガイド部材に作用する力を受け止めるための係合部材3,5,15と、各々足載せ面23及び前記ガイド部材17に結合されたガイド要素を有する2つの踏み台21を備えた昇降補助具と、前記係合部材3,5,15を力の受け止めのために密接させるのに適するとともに、少なくとも部分的に前記ガイド要素と対向し、かつ、前記支柱に設置された支持部材33とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体に沿って人が昇降するための、請求項1の上位概念に基づく昇降設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば煙突、高層ビル、貯蔵室(サイロ)、ケーブル用鉄塔、放送用アンテナ、風力発電用プロペラ、高圧送電線用鉄塔、クレーン等の高いものには、これらに登って例えばメンテナンス作業及び修理作業ができるよう、通常ははしごがこれらに固定して設けられている。ドイツ国内には数十万本の高圧送電線用鉄塔が使用されており、これらの多くにははしごが固設されている。
【0003】
はしご及び踏み台における事故統計によれば、ドイツ国内では毎年40000件もの事故が発生しており、そのうち40件は死亡事故となっている。ダルムシュタット工科専門大学(Technische Hochschule Darmstadt)の調査において、事故のうち約70%は、固定されたはしごにおいてユーザが足を滑らせたことによるものである、という結果が出ているほどはしごにおける昇降は危険なものである。
【0004】
ところで、はしごには様々な種類が存在し、これらの多くは段状に形成されている。ユーザは、昇降時に自身の手及び足によって次の段に進んでいく。そのため、次の段には常に手が届くようになっている。
【0005】
特許文献1には、ユーザの両足を載せる足載せ部と、両手で保持する把持部とを備えた昇降補助具が開示されている。これら足載せ部及び把持部はレールにおいて保持されており、このレールは、例えばヨットのマストに取り付けられるものである。このような昇降補助具は、比較的低いものにおいて昇降する場合には適しているものの、上昇時に両手で足載せ部を上方へ引き上げた後この足載せ部を更にレールに固定しなければならないため、比較的高いものに使用する場合には適していない。
【0006】
また、特許文献2には、上方へ垂直に上昇するための装置が提案されている。この特許文献2には、固定されたはしごにおいてキャタピラ状の昇降補助具を筋力によって上下方向へ移動させることが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、物体に沿って人が昇降するための昇降設備あるいは昇降補助具が開示されている。この昇降補助具は、手動又はモータによってユーザを高い位置へともたらすことが可能なものである。
【特許文献1】米国特許第3968858号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10201965号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/016461号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載された昇降補助具は、比較的大型かつ重量が大きいため、他の手段なしに人だけで運搬することが不可能である。このような昇降補助具は、むしろ、他の装置等が必要となる比較的大規模な修理作業時に一緒に運搬する必要があり、例えば検査員が定期的に検査するような比較的簡単な作業に用いるには適していないという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、簡易かつ容易に、及び広範な分野にわたって使用可能であるとともに、ユーザが他の手段を用いずに運搬することが可能な、特に比較的高所に対して適した昇降設備を提供することにある。
【0010】
こうすることで、例えば、リュックサックあるいは他の運搬用容器内に入れて通行困難な位置においても使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、請求項1記載の発明によって達成される。
【0012】
本発明による昇降設備は、基本的に2つの構成部材、すなわちレール状の支柱及び実際の昇降補助具から成っている。このレール状の支柱は、例えば高圧送電線用鉄塔、ヨットのマスト等の物体に固定されるできる限り簡単な構造のものである。この支柱は、この支柱に沿って延設されつつ昇降補助具の保持及び案内に適した少なくとも1つのガイド部材と、少なくとも1つの昇降補助具を係合させるのに適した部材とを備えたものとなっている。
【0013】
本発明の核心は、レール状の支柱に設置するのに適し、かつ、例えば高圧送電線用鉄塔の支柱に沿って人の昇降を可能にする2つの踏み台にある。これら両踏み台は、それぞれ足載せ面と、ガイド部材を支柱において包囲するガイド要素と、該ガイド要素に対向しつつ支柱に設けられ、かつ、係合部材を係合させるのに適した支持部材とを備えている。
【0014】
また、ガイド要素は、踏み台を例えばその片側で脱落しないよう支柱に確実に保持する一方、ユーザの昇降時には踏み台を支柱に沿って確実に案内する役割を担うものである。そして、支持部材は、踏み台が動かないよう該踏み台を支柱に固定するとともに、足載せ面上にいるユーザが該足載せ面から落下しないようにするものである。
【0015】
ここで、少なくとも支持部材と係止部の係合を解除して踏み台が支柱に沿って移動できるよう、ガイド要素及び支持部材を、支柱における踏み台を傾斜させることができるようそれぞれ2つの踏み台に配置するとともに、これらガイド要素及び支持部材を互いに離間させて配置している。
【0016】
また、ガイド要素及び支持部材を、足載せ面を傾動させることなく昇降できるよう平行四辺形状かつ互いに可動に支柱に設けることも考えられる。
【0017】
また、本発明の一実施形態によれば、例えば枢軸を介して各踏み台に結合されたスライダ又は台車状のガイドローラとしてのガイド要素を、支柱において摺動するよう複数設けている。さらに、各踏み台の傾倒時には支持部材が支柱から分離し、ユーザの足が静止状態にあるときには支持部材が支柱に係合するよう、少なくとも1つの支持部材を、少なくとも1つのガイド要素によって各踏み台に結合させている。
【0018】
また、本発明の一実施形態においては、2つの支持部材を設けて、これら支持部材によって支柱の各側部を挟着するように包囲している。なお、レール状の支柱の断面を、例えばU字状、H字状、T字状、L字状又はこれらに類似した形状とするとともに、支柱の側部に少なくとも1つの脚状及び/又はパイプ状のガイド部材を設け、該ガイド部材をそれぞれ2つの踏み台のいずれかのガイド要素によって挟持することも可能である。
【0019】
支柱が例えば特許文献3に記載されているようなラック状のガイド部あるいは開口部を備えている場合には、例えば、支持部材に、突出する係合部材又はレバー状の係止部材を設けたり、支持部材におけるガイド面に凸部を設けて、踏み台の固定時に支柱の開口部に例えば係合させることが可能である。また、支持部材におけるガイド面の表面粗さを十分に粗くするか、又は部分的にゴム弾性的に形成して、摩擦力によって踏み台を保持することも可能である。
【0020】
なお、本発明の特に踏み台についての他の実施形態は従属請求項に記載されている。
【0021】
本発明による踏み台は例えば特許文献3に記載されているようなレール状の支柱と共に使用するのに適したものとなっており、この本発明による踏み台によれば、特許文献3に記載された、足載せ面、把持部、駆動機構等を備えた高水準の踏み台(Highstandard-Steigkonsolen)の代わりとして、例えば支柱に沿って高圧送電線用鉄塔に登る際に使用できるよう、例えば持ち運び用のかばん、リュックサック等に入れて一般に人が運搬できる簡易なものとすることが可能である。
【0022】
さらに、本発明による踏み台に更に保持部材を設けることが可能であり、この保持部材によって昇降するユーザを支柱又は高圧送電線用鉄塔に保持することが可能となる。なお、この保持部材は、部分的には従来の昇降装置によってよく知られたものである。
【0023】
この保持部材は、支柱に取り付けられるスリーブ状のものであったり、例えば高圧送電線用鉄塔に設置されるロープ状のものであったり、様々なものがある。
【0024】
昇降するユーザを手によって保持するか、又はユーザを背面において若しくは腹部におけるベルトに設けられた安全要素によって保護するこのようなよく知られた保持部材は、本発明における重要な構成要素ではないため、この保持部材についての更なる説明は省略する。
【0025】
一方、本発明は、本発明による踏み台と共に使用するのに適した、請求項18に係る発明による安全装置(転落防止装置)にも関するものである。
【0026】
すなわち、支柱の外面において少なくとも部分的に包囲しつつ該支柱に沿って自由に摺動する台車状又はスライダ状の転落防止装置を設けるとともに、該転落防止装置に係止部材を設け、該係止部材を、昇降するユーザがスリップして不意の動作をした場合に転落防止装置を支柱に固定するよう係止させるように構成している。
【0027】
また、支柱に係合する係止爪を設け、保護すべきユーザの動きに連動した支柱から直角外方又は下方への力の発生時に、この係止爪を迅速に支柱に係合させてユーザの転落を阻止するようになっている。
【発明の効果】
【0028】
簡易かつ容易に、及び広範な分野にわたって使用可能であるとともに、ユーザが他の手段を用いずに運搬することが可能な、特に比較的高所に対して適した昇降設備を提供することが可能である。また、例えば、リュックサックあるいは他の運搬用容器内に入れて通行困難な位置においても使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図1には、例えば高圧送電線用鉄塔における人間用の昇降具の斜視図が示されている。この高圧送電線用鉄塔(不図示)には長手方向に延設されたU字状の支柱1が設けられており、この支柱1は、そのベース面3にラック状の係合孔5を備えて構成されている。なお、この係合孔5の機能については後述する。
【0031】
しかして、支柱1の側部7には複数の開口部9が設けられており、この開口部9内には、固定部材13によって支柱1を高圧送電線用鉄塔に固設するための取付部材11を固定することが可能となっている。また、支柱1には、可動かつ着脱可能な踏み台21を設けることができるようになっている。この踏み台21は、その足載せ面23上に、例えばユーザが滑らないようにするための突起25を備えている。
【0032】
また、足載せ面23の下方には補強板27が設けられており、この補強板27は、固定用ウェブ29を介して不図示の延長部に結合されている。そして、支柱1の前面部には補強具31が設けられており、その支柱1側の面には、ラック状の係合孔5と係合する支持部材33が設けられている。さらに、特に踏み台21の支柱1に沿った確実な摺動を確保するために、支持部材33の上部に更にガイドローラ35が設けられている。
【0033】
なお、図面には1つの踏み台21のみしか図示していないが、昇降用それぞれに2つずつの踏み台21を使用することも考えられる。
【0034】
図2には図1に示す踏み台21及び支柱1の側面図が示されており、ここでも、補強具31及びこれに取り付けられた支持部材33が記載されている。この図2から分かるように、支柱1の側部7における両側には管状のガイドパイプ15,17が設けられている。そして、これらガイドパイプ15,17にそれぞれ係合する例えば2つのガイドローラ35,37が踏み台21に設けられている。また、固定用ウェブ29は、その端部において側部7に設けられたガイドパイプ17に2つの挟持部41,43を介して係合している。なお、挟持部43は、踏み台21が支柱1から脱落しないよう側部7の背面まで折り曲げられている。
【0035】
ところで、人が支柱1に沿って高圧送電線用鉄塔に登れるようにするために、図3に示すように踏み台21を支柱1に向けて立ち上がらせる(上方へ傾斜させる)ことが可能となっている。このように踏み台21を立ち上がらせることによって、ベース面3におけるラック状の係合孔5に係合している支持部材33の係合が解除されるとともに、踏み台21が支柱1に沿って確実に摺動できるよう、ガイドローラ35,37がガイドパイプ15,17に十分係合する位置へもたらされるようになっている。
【0036】
なお、ガイドローラ35,37を、ガイドパイプ15,17と十分に係合できるよう弾性的に付勢するのが望ましい。また、側部7を包囲するように折り曲げられている挟持部43を、踏み台21がその側方から脱落しないよう形成するのが好ましい。
【0037】
図1〜図3においては、例えば自転車又はスノーボードのビンディングに見られるような、ユーザの足を足載せ面に固定する例えば留め具、保持部、クイック継手等は省略してある。しかし、このような留め具等は踏み台21をユーザと“同伴”させるのに有効あるいは必要なものである。
【0038】
図4には、支柱1の断面図が踏み台21の支持部分及びガイド部分と共に示されている。この図4に示すように、両ガイドローラ35,37によって踏み台21のガイドパイプ15,17に沿った確実な摺動が達成されることになる。
【0039】
<実施の形態2>
図5には、例えば高圧送電線用鉄塔へ登るための支柱に設けられた本発明の第2の実施形態による踏み台の斜視図が示されている。この図5にも、踏み台21及び支柱1の半分についてのみが図示されている。本実施形態においても、上記同様、踏み台21には突起25を備えた足載せ面23が設けられている。ただし、踏み台21には、例えば足用の固定ベルトを設置するための固定部材32,34が更に設けられている。
【0040】
そして、足載せ面23は、補強板27、固定用ウェブ29及び補強具31を介して適当な部材に結合されることによって支柱1に保持されている。また、支柱1には側部7と、両ガイドパイプ15,17と、係合孔5を有するベース面3とが設けられているのが分かる。さらに、ガイドパイプ17は、固定用ウェブ29の延長部において上述の両挟持部41,43によって包囲されている。しかし、図5においては、ガイドローラについては図示していない。その代わりに、両挟持部41,43の内側にはガイド面51が設けられており、さらに、支持部材へ向けて折り曲げられて延設された第1のスライド部53も設けられている。
【0041】
また、これに対応して、図5では視認できない支持部材57がガイドパイプ15を包囲するように設けられている。さらに、その上方には、このガイドパイプ15に対して角度をもって第2のスライド部55が設けられている。これら支持部材57及び第2のスライド部55は、固定用ウェブ29に対して摺動可能なカバー部材58に内包されている。このようなカバー部材58の摺動は、例えば踏み台21を支柱1の側部7に対して着脱する場合に有効である。
【0042】
ところで、例えばロックピン59を引き抜くことによってカバー部材58をガイドパイプ15から取り外すことが可能であり、これにより踏み台21を側部7から撤去することが可能となる。逆に、踏み台21が脱落しないようロックピン59によってカバー部材58を固定することも可能である。
【0043】
さらに、カバー部材58を固定用ウェブ29に固設することも可能であり、ロックピン59を引き抜くことによって支持部材57をカバー部材58から上方又は下方へ引き出して踏み台29を撤去するように構成することも可能である。逆に、踏み台21を設置する場合には、支持部材57をガイドパイプ15とカバー部材58の間へ上方又は下方から挿入し、ロックピン59によって該支持部材57を固定すればよい。
【0044】
なお、図5に示してある係止爪56については図6に基づき後述する。
【0045】
ここで、図5に示した特に支柱1に沿って上下する踏み台21の機能について図6に基づき詳細に説明する。
【0046】
図6には踏み台21の支持部材57付近の断面が示されており、この支持部材57は、ガイドパイプ15,17に係合している。図示では、ガイドパイプ17を包囲している背面側のガイド面51が視認できるようガイド部材15,17にそれぞれ係合する挟持部41,43は省略してある。また、ガイド面51の前面側におけるガイドパイプ17と接触する面には、特殊な耐摩耗性を有する第1のコーティング部52及び/又は例えば耐摩耗性を有する適当なポリマーから成り、特に良好に接着される挿入部材が配されている。
【0047】
なお、これには、例えばブレーキパッドに用いられる部分的に架橋されたポリウレタン(PU)等、又はポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン(PU)等の炭素繊維若しくはアラミド繊維によって強化されたポリマーが考えられる。
【0048】
前記ガイド面51は、傾斜が付けられつつ下方に向けて延設された第1のスライド部53を備えている。この第1のスライド部53は、対向する位置にある支持部材57における同様に上方に向けて傾斜が付けられた第2のスライド部55と共に踏み台21の上方への立ち上がり(傾斜)を実現させるものである。
【0049】
また、支持部材57におけるガイドパイプ15と対向する位置には耐摩耗性の第2のコーティング部61が形成されており、この第2のコーティング部61は、上記同様、例えば上述のような材料又は他の適当なポリマーから成るものである。第1及び第2のコーティング部52,61は、更に、踏み台21の中立位置(静止位置)においてガイドパイプ15,17に対して良好な接着性を有していると好ましい。
【0050】
こうすることで、踏み台21がその中立位置において下方へ移動することがない。さらに、図5に示すように、係止爪56を係合孔5に係合させるのが望ましい。この係止爪56を例えばラック状の係合孔5の方向へ弾性的に軽く付勢して、踏み台21の水平位置で係止爪56が自動的に係合孔5に係合するように構成するのが好ましい。なお、ユーザが昇降しない場合、すなわち踏み台21を傾斜させている場合には、この踏み台21の傾斜によって係止爪56の係合孔5への係合が解除されるようになっている。
【0051】
また、図6にもロックピン59が示されており、該ロックピン59によって、踏み台21を支柱1の側方へ撤去するようにカバー部材58及びこれに結合された支持部材57をガイドパイプ15から取り外すことができるようになっている。
【0052】
<実施の形態3>
図7には、支柱1に設けられた踏み台21の第3の実施形態の斜視図が示されている。本実施形態においては、前記2つの実施形態と異なり、支柱1の側部7に沿って、あるいはガイドパイプ15,17に沿って長手方向に自由に移動可能な3つのガイドローラ35,37が設けられている。そして、ガイドローラ35,37を互いに結合している台車状の連結部材44はその中央部にスリーブ状の回転体46を備えており、該回転体46を貫通して枢軸連結部79が延設されている。この枢軸連結部79によって踏み台21が挟着部73,75を有する平行四辺形状の挟持部材71に結合されている。
【0053】
これら2つの挟着部73,75は、踏み台21が図7に示すような中立位置にある場合には、その外方でガイドパイプ15,17に固定されるようになっている。また、枢軸連結部79は適当な支持部28内で支持されており、この支持部28は、補強板27の前端部に位置している。なお、踏み台21の他の部材は図1〜図6において示したものと同様の符号によって示されている。ただし、図7においては、踏み台21上で昇降するユーザの足を保持するための側方支持板22が追加して示されている。
【0054】
図8には、図7に示した踏み台21の側面図が示されている。この状態は、図7と同様、踏み台21の中立位置が示されており、この踏み台21は支柱1に固定保持されている。
【0055】
この図8から分かるように、このような中立位置は挟持部材71によって生じ、この挟持部材71は、踏み台21上にいるユーザによる図中矢印A方向への力(体重)によって機能する。すなわち、A方向へ力が作用することによって挟着部73,75により挟持部材71が支柱1に固定されることになる。
【0056】
図9は図7に示した人の昇降に適した踏み台21を上方へ傾斜して示した側面図であり、踏み台21を図示のように傾斜させることによって挟持部材71が図中の矢印B方向へ傾倒し、両挟着部材73,75もガイドパイプ15,17から離間する方向へ傾動することになる。このとき、上記連結部材44は、ガイドローラ35,37により支柱1に沿って摺動できるようになる。
【0057】
そして、ユーザが足を踏み台21上に載せると、踏み台21は、図8に示す位置に復帰し、支柱1に固定されるようになっている。ここで、踏み台21のその中立位置への復帰動作は、例えばユーザの足によって踏み台21にいかなる負荷も加えられていない場合に、踏み台21が中立位置へ自動的に復帰するよう特に枢軸連結部79を弾性的に付勢することによってなされている。
【0058】
ところで、図7〜図9に示した踏み台21は、更に例えば挟持部材48を押すことによってガイドローラ37が側方へ移動するようにも設定されている。ただし、この挟持部材48はその挟持方向へ弾性的に付勢されているため、例えばユーザが昇降する際にはガイドローラ37の自動的な離間がなされないようになっている。
【0059】
図10〜図13には、図1〜図9に示す上記踏み台21と共に使用するのに特に適した転落防止装置が示されている。しかし、本発明のような支柱があれば、このような転落防止装置を他の昇降具に用いることも可能である。
【0060】
図10には、前面側において軸連結部材88によって結合された側部83,85を備えた転落防止装置81の前方から見た斜視図が示されている。また、側部83,85の背面には、ガイドパイプ17に沿って転落防止装置81を摺動させるためのローラ93が設けられている。このローラ93は、枢軸92を介して側部83,85に保持されている。さらに、前面側には、2つのガイドパイプ15に沿った案内のための更なるローラ91が軸連結部材88に沿って配置されている。
【0061】
また、軸連結部材88の中央部には、支柱1に沿って例えば上述の踏み台21を使用して昇降するユーザのための命綱を通す留め輪98を備えた係止部材97が設けられている。さらに、この係止部材97には、スリーブ87を介して該係止部材97に回転不可能に固定された係止爪99が設けられている。
【0062】
図11には支柱1を切断した場合の転落防止装置81が示されており、支柱1の両側部7を包囲するローラ91,93が詳細に記載されている。
【0063】
また、図12は転落防止装置81の側面図であり、ここでは、係止部材97の機能を分かりやすくするため、側部83,85は透明であるかのように記載されている。
【0064】
しかして、仮に支柱1に沿って人が通常どおり昇降する場合には、命綱101は、図12に示すように、係止部材97の留め輪98内の上方に位置することになる。ここで、係止爪99は係止部材97と共に回転するため、該係止爪99はラック状の係合孔5と係合しない位置へもたらされており、転落防止装置81は上下に自由に摺動できる状態となっている。
【0065】
一方、昇降している人が何らかの理由によって踏み台21から転落したり、あるいは踏み台21が支柱1に対して十分に固定されていないような場合には、命綱101が図13に示すように自動的に下方へ移動するようになっている。そして、例えばバネによる弾性力によって係止部材97及びこれに結合された係止爪99が支柱1方向へ回動し、係止爪99が係合孔5に係合することになる。このようにして、命綱101に係留されている人の転落防止がなされている。
【0066】
なお、転落防止装置81を支柱1に設置するために、例えば背面側のローラ93を、例えば該ローラ93を固定する固定部材95を操作することにより外方へ向けて傾倒させることが可能である。
【0067】
ところで、図10〜図13に示したローラを備えた側部83,85の代わりに、転落防止装置81を上下方向に摺動させることが可能なスライド面を設けることが可能である。また、3つのローラの代わりに、例えば支柱1の両側にそれぞれ2つのガイド面を設けてもよい。重要なのは、係合孔と係合する係止爪を備える係止部材が設けられており、転落時にこの係止部材が人の転落を自動的に阻止するようになっていることである。
【0068】
なお、図1〜図13に示したものは単に例であり、本発明の範囲を逸脱しない限り、他の幾多の形態に適宜変更することが可能である。また、材料の選択については特に触れなかったが、足載せ面及び補強具には鋼、アルミニウム等の金属を用いることが考えられ、一方、ガイドローラ、支持部、ガイド部材には、金属のほか、高い耐磨耗性を有する熱可塑性樹脂、部分的に架橋されたポリウレタン、高度に架橋されたシリコン等のポリマー材料が考えられる。
【0069】
さらに、支柱についてもU字状、T字状、H字状、L字状等の様々な形態のものを用いることが可能であり、また、支柱に係合孔等の開口部を設けずに、例えば支柱の表面部の粗さを粗く形成することも考えられる。支柱に関して、特許文献3に記載されている内容は、支柱に関するものに限って、本発明に一部適用できる。
【0070】
また、踏み台又は転落防止装置を、支持部、挟着部又は係止爪が支柱の側部及び/又はガイドパイプにおいて踏み台を固定するよう係合するように構成することも当然可能である。
【0071】
さらに、上述のように、他の保安部材は省略して説明したが、ユーザが例えば高圧送電線用鉄塔に沿って登る際の更なる安全のためにその他の保安部材を用いるのは当然好ましい。これに加えて、支柱に係合するスリーブ状の保持部材を設けたり、高圧送電線用鉄塔に巻回させて使用するロープ状又はベルト状の部材を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】支柱に設けられた本発明による踏み台の斜視図である。
【図2】中立状態における本発明による踏み台の側面図である。
【図3】ユーザが昇降する際の本発明による踏み台の位置を示す側面図である。
【図4】支柱をガイド部材、支持部材等が係合した状態で示す断面図である。
【図5】本発明の他の形態による踏み台の斜視図である。
【図6】支柱における保持部分を断面で示した図5に基づく斜視図である。
【図7】本発明の更に他の形態による踏み台の斜視図である。
【図8】図7に示す踏み台の中立位置における側面図である。
【図9】ユーザが昇降する際の図7に示す踏み台の側面図である。
【図10】本発明による安全装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10に示す安全装置の非作動状態での断面図である。
【図12】図10に示す安全装置の非作動状態での側面図である。
【図13】図10に示す安全装置の作動状態での側面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 支柱
3 ベース面
5 係合孔
7 側面
9 開口部
11 取付部材
13 固定部材
15,17 ガイドパイプ
21 踏み台
22 側方支持板
23 足載せ面
25 突起
27 補強板
28 支持部
29 固定用ウェブ
31 補強具
32,34 固定部材
33 支持部材
35,37 ガイドローラ
41,43 挟持部
44 連結部材
46 回転体
48 挟持部材
51 ガイド面
52 第1のコーティング部
53 第1のスライド部
55 第2のスライド部
56 係止爪
57 支持部材
58 カバー部材
59 ロックピン
61 第2のコーティング部
71 挟持部材
73,75 挟着部
79 枢軸連結部
81 転落防止装置
83,85 側部
87 スリーブ
88 軸連結部材
91,93 ローラ
92 枢軸
95 固定部材
97 係止部材
98 留め輪
99 係止爪
101 命綱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降設備であって、
少なくとも1つのレール状の支柱(1,3,5,15,17)と、
該支柱に沿って延設された少なくとも1つのガイド部材(17)と、
前記支柱及び/又は前記ガイド部材に作用する力を受け止めるための係合部材(3,5,15)と、
各々足載せ面(23)及び前記ガイド部材(17)に結合されたガイド要素(37,41,51,52)を有する2つの踏み台(21)を備えた昇降補助具と、
前記係合部材(3,5,15)を力の受け止めのために密接させるのに適するとともに、少なくとも部分的に前記ガイド要素と対向し、かつ、前記支柱に設置された支持部材(33,57,61)と
で構成したことを特徴とする昇降設備。
【請求項2】
少なくとも前記支持部材(33,57,61)と係止部(5)の係合を解除して前記踏み台が前記支柱に沿って移動できるよう、前記ガイド要素(37,41,51,52)及び支持部材(33)を、前記支柱(1,3,5,15,17)における前記踏み台を傾斜させることができるようそれぞれ前記2つの踏み台(21)に配置するとともに、これらガイド要素(37,41,51,52)及び支持部材(33)を互いに離間させて配置したことを特徴とする請求項1記載の昇降設備。
【請求項3】
前記支柱(1)の断面をU字状、H字状、T字状、L字状又はこれらに類似した形状とするとともに、前記支柱の側部に少なくとも1つ、好ましくは2つの脚状及び/又はパイプ状の前記ガイド部材(15,17)を設け、該ガイド部材をそれぞれ前記2つの踏み台のいずれかの前記ガイド要素(33,37,41,51,52)によって挟持したことを特徴とする請求項1又は2記載の昇降設備。
【請求項4】
前記ガイド部材(17)及び/又は前記係合部材(15)をパイプ状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇降設備。
【請求項5】
U字状、T字状、H字状又はL字状に形成された前記支柱をその側部のU字状脚部、H字状脚部又はパイプ状に形成された前記ガイド部材(17)又は前記係合部材(15)に設けるとともに、このガイド部材(17)又は係合部材(15)に前記踏み台(21)の少なくとも1つのガイドローラ(35,37)を係合させて前記踏み台の前記支柱に沿った移動を確実にさせたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇降設備。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガイドローラ(35,37)を、前記ガイド部材(17)又は前記係合部材(15)に対して弾性的に付勢して設けたことを特徴とする請求項5記載の昇降設備。
【請求項7】
別の支持部材としても機能する前記各踏み台のガイド要素(51,52)と、前記支持要素(57,61)とを前記支柱(1,15,17)の長さ方向に互いにずらして該支柱に設けるとともに、前記ガイド部材(17)又は前記係合部材(15)の前記ガイド要素又は前記支持要素と対向する範囲に、前記踏み台における前記支柱に係合する部分を形成しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の昇降設備。
【請求項8】
前記支柱、又は別の係合部材としても機能する前記ガイド部材(17)に係合する前記各踏み台の前記ガイド要素(51,52)を前記係合部材(15)に係合する前記支持要素(57,61)の登る方向に見た上方に設けるとともに、前記ガイド要素と対向しつつ前記ガイド部材(17)又は前記係合部材(15)に係合しないいわゆる前記各踏み台のスライド部を、該スライド部が前記支柱に対して鋭角に傾倒することができるよう傾斜させて延設したことを特徴とする請求項7記載の昇降設備。
【請求項9】
前記ガイド要素に、例えば耐摩擦性を有するとともに接着性を有するゴム部材、部分的に架橋されたポリウレタン(PU)、繊維強化性ポリマー等の、耐摩擦性を有し、かつ、前記各ガイド部材若しくは各係合部材との接着性を有するコーティング部又は挿入部材を設けたことを特徴とする請求項7又は8記載の昇降設備。
【請求項10】
前記ガイド要素(51,52)及び/又は前記支持要素(57,61)を前記ガイド部材又は前記係合部材から離間するように移動可能に構成して、前記踏み台を前記支柱の側方から分離できるようにしたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の昇降設備。
【請求項11】
前記踏み台を上方へ45°より大きく傾斜させることによって該踏み台が前記支柱から分離することができるよう、前記ガイド要素(37,41,51,52)及び前記支持要素(33,57,61)を互いに離間させつつ前記踏み台に設けたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記ガイド部材及び/又は前記係合部材(5)を少なくとも1つのラック状若しくは格子板状の垂直方向への案内部として形成したことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項13】
前記足載せ面(23)に固定部材(22,32,34)を設けて、ユーザを前記足載せ面に保持することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項14】
前記各踏み台(21)に挟持部材(71)の一部としての少なくとも2つの挟着部(73,75)を設け、
これら挟着部を、平行四辺形状に形成した挟持部として形成するとともに前記支柱(1)の前記ガイド部材(17)又は前記係合部材(15)に圧着されるように設定し、
前記踏み台の傾斜時には前記挟持部が前記支柱における各部材から離間し、前記踏み台が中立位置にあるときには前記挟持部が前記支柱に圧着されるように前記挟持部を前記踏み台と連動させたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか又は請求項12若しくは請求項13記載の昇降装置。
【請求項15】
前記各踏み台に少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのガイドローラ(35,37)又はガイド面を設け、
これらガイドローラ又はガイド面をスライダ状又は台車状の連結部材(44)に設け、
該連結部材を前記支柱に沿って摺動可能に形成し、
前記少なくとも2つのガイドローラ又はガイド面を、前記連結部材が前記支柱に確実に保持されるよう互いに対向させて設けた
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項又は請求項12〜14のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項16】
前記踏み台の上方への傾斜させると同時に前記挟持部を前記支柱から離間させるよう、前記挟持部材(71)及び前記踏み台(21)を前記連結部材(44)における枢軸回りに回動可能に構成し、
前記踏み台を中立位置にもたらすか、あるいは前記挟持部を挟持位置にもたらすよう前記枢軸を付勢した
ことを特徴とする請求項15記載の昇降装置。
【請求項17】
前記ガイドローラ又は前記ガイド面のうち少なくとも1つ(37)を前記踏み台を前記支柱から分離させることができるよう傾倒可能に構成し、
前記ガイドローラ又はガイド面を、操作可能な挟持部材(48)によって前記支柱に圧着される位置に保持した
ことを特徴とする請求項15又は16記載の昇降装置。
【請求項18】
物体、特に支柱(1)に沿って昇降する人のための安全装置において、
前記支柱の外面において少なくとも部分的に包囲しつつ該支柱に沿って摺動する台車状又はスライダ状の転落防止装置(81)を設けるとともに、該転落防止装置に係止部材(97)を設け、
該係止部材を、人が例えばスリップして不意の動作をした場合に前記転落防止装置(81)を前記支柱に固定するよう係止させるように構成した
ことを特徴とする安全装置。
【請求項19】
前記係止部材(97)に特に係止爪(99)を設け、該係止爪を、前記支柱(1)の外面又は内部に設けられた格子状又はラック状の係合部に付勢力によって自動的に係合させて前記転落防止装置を係止することを特徴とする請求項18記載の安全装置。
【請求項20】
前記転落防止装置(81)を特に前記支柱に沿って設けられたパイプにローラ支持状に設けるための複数のローラ(93)を該転落防止装置に設け、
前記転落防止装置を前記支柱から分離させることができるようこれら複数のローラのうち少なくとも幾つかを側方に傾倒可能に構成し、
これら傾倒可能な各ローラを前記支柱に固定するために、該各ローラに固定部材(95)を設けた
ことを特徴とする請求項18又は19記載の安全装置。
【請求項21】
前記支柱を特に請求項1〜17のいずれかに記載の支柱としたことを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の安全装置。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれかに記載の安全装置を設けたことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか若しくは請求項22に記載の昇降装置及び請求項18〜21のいずれかに記載の安全装置の、高圧送電線用鉄塔、ケーブル用鉄塔、貯蔵室、建築物壁面等への昇降への使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−515065(P2009−515065A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538246(P2008−538246)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000622
【国際公開番号】WO2007/051341
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(506044672)エム・ウント・エフ・インジェニエール・ベラートゥングス・アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】